JP4227431B2 - 高強度高延性鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建材、家電製品、自動車などに適する延性に優れた高強度高延性鋼板および及びその製造方法に関する。なお、本発明の鋼板は熱延鋼板、冷延鋼板,Znめっき鋼板、合金化Znめっき鋼板を含むものである。
【0002】
【従来の技術】
高強度鋼板は、建材、家電製品、自動車など広範囲に使用されている。近年、特に自動車車体において軽量化や衝突安全性の向上の観点から、高強度鋼板が用いられるようになってきた。しかし、高強度ゆえ、加工性が強度と共に劣化してしまう。高強度鋼板の延性を向上させるためには、複合組織の活用が挙げられる。すなわち、軟質なフェライト相と第2相として硬質のマルテンサイト相を複合させたDual-Phase鋼(DP鋼)、または、第2相として加工により硬質のマルテンサイトに変態するオーステナイト相を複合させた残留オーステナイト鋼が開発されてきた。しかし、それ以降、高延性に対する画期的な技術は開発されておらず、高強度化と更なる延性向上をこれら複合組織化以上に達成される技術はない。
【0003】
本発明者らの一部は特許文献1および特許文献2等にREMを含有するDP鋼又はTRIP鋼に溶融Znめっきを施した溶融Znめっき鋼板を開示した。しかし、特許文献1および特許文献2に開示された発明は上述した複合組織化による高延性化を亜鉛めっき鋼板で実現する技術であり、更なる延性の向上を図るような技術ではない。
【0004】
【特許文献1】
特願2001−304034号
【特許文献2】
特願2001−304036号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決し、さらなる高延性化を達成する高強度鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、種々検討を行った結果、鋼中の酸化物および硫化物を制御することで種々の鋼種の高延性化が可能であることを見出した。これまでにも、介在物を制御して加工性を向上させる技術は開示されているが、そのほとんどが局部伸び向上に関するものであり、均一伸びを向上させるものではなかった。すなわち、Remおよび/またはYを添加して酸化物および硫化物の形態を制御することで均一伸びが向上する技術を見出した。
【0007】
ここで、REMはRera Earth Metalの略でLaから始まるランタノイド系の元素を示す。工業的はミッシュメタルの形で添加されることがおおく、この場合には中でもLaおよびCeの含有が主体となる。
【0008】
また、この効果は、冷延や熱延、めっきといった異なる製品についても有効で、式(1)および(2)を満たすことで均一伸びの向上が達成される。
【0009】
本発明は、上記知見に基づいて完成されたもので、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、
C :0.0001〜0.3%、
Si:0.001〜2.5%、
Mn:0.01〜3%、
P :0.0001〜0.3%、
Al:0.0001〜4%、
S :0.0001〜0.1%、
N :0.0001〜0.3%、
O :0.0001〜0.1%、
を含有し、
Rem:0.0005〜0.3%、
Y :0.0005〜0.3%、
の一方又は両方を式(2)を満たす範囲で含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、RemまたはYの酸化物および/または硫化物が、
平均粒子径d:0.01〜10.0μm、
密度ρ:1平方mあたり107〜109個、
平均粒子径dと主相平均粒径dmとの比d/dm; 10-4〜100、
を満たす分布形態を有することを特徴とする高強度高延性鋼板。
(O/16+S/32+N/14) /(Rem/140+Y/89)=0〜10 …(2)
【0010】
(2) さらに、質量%で、
Ti:0.0001〜1%、
Zr:0.0001〜1%、
Hf:0.0001〜1%、
Ca:0.0001〜1%、
の1種又は2種以上を式(1)を満たす範囲で含有することを特徴とする(1)記載の高強度高延性鋼板。
(Ti/48+Zr/91+Hf/178+Ca/40)/(Rem/140+Y/89)=0〜20 …(1)
(3)鋼板のミクロ組織が、主相としてフェライト又はフェライト及びベイナイトを面積分率で50〜97%含有し、第2相としてマルテンサイト、オーステナイトの一方又は両方を、面積分率で合計3〜50%未満含むことを特徴とする(1)又は(2)記載の高強度高延性鋼板。
(4)さらに質量%で、
Cr:0.001〜5%、
Mo:0.001〜5%、
Ni:0.001〜5%、
Cu:0.001〜5%、
Co:0.001〜5%、
W :0.001〜5%、
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の高強度高延性鋼板。
(5)さらに質量%で、
Nb:0.001〜1%、
V :0.001〜1%、
Ta:0.001〜1%、
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の高強度高延性鋼板。
(6)さらに質量%で、B:0.0001〜0.1%を含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の高強度高延性鋼板。
(7)鋼板の表面にZnめっきが施されていることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の高強度高延性鋼板。
(8)溶鋼に、Al、Ti、Si、Mnの1種以上を添加して脱酸した後、Remおよび/またはYを添加し、(1)、(2)、(4)〜(6)の何れか1項に記載の成分からなる溶鋼に調整した後0.1〜5m/min の鋳造速度で鋳込み、その鋼片を鋳造まま又は一旦700℃以下に冷却した後に、1150〜1280℃に加熱し、1150〜1280℃に加熱し、続いて熱延を行う際に、1000℃以上の圧延時の1パス当たり圧下率を30%以下とすることを特徴とする高強度高延性鋼板の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
発明者らは、質量%で、C:0.0001〜0.3%、Si:0.001〜2.5%、Mn:0.01〜3%、P:0.001〜0.3%、Al:0.0001〜4%、S:0.0001〜0.03%、N:0.0001〜0.03%、O:0.0001〜0.05%を含有し、さらに、Rem、Y、Ti、Zr、Hf,Caの1種又は2種以上を含有する種々の溶綱を鋳造速度およびRem、Y、Ti、Zr、Hf,Caの添加タイミングを変化させて鋳造して、熱延鋼板、冷延鋼板およびめっき鋼板を作製した。それらの鋼板の引張り試験を行い、機械的性質を比較評価した。
【0013】
その結果、Rem、Yの添加に伴う酸化物および硫化物の形態制御により均一伸びおよび破断延性が向上することを見出した。
【0014】
すなわち、鋼板の成分でRem、Y、Ti、Zr,HfおよびCaの添加量の関係が次の2つの式を満たすことで均一伸びおよび破断延性が向上する。
【0015】
(Ti/48+Zr/91+Hf/178+Ca/40)/(Rem/140+Y/89)=0〜20 …(1)
(O/16+S/32+N/14) /(Rem/140+Y/89)=0〜10 …(2)
本発明では、Remおよび/またはYの酸化物および/または硫化物の形態を制御することで複合組織化による高延性化に加えてさらに延性を向上させることを目的としている。したがって、(1)式にあるように他の酸化物および/または硫化物形成元素との関係が重要で、RemおよびY以外の元素添加量との比率が大きいことが形態制御には重要であることを見出した。また、(2)式では酸素および/またはSと窒素の関係も形態制御には必要不可欠で、これら元素との比も形態制御には重要であることも併せて見出した。すなわち、上記2式を満たし、RemおよびYの酸化物および硫化物が下記の形態をとることが延性向上に重要である。
平均粒子径d:0.01〜10.0μm
密度ρ:1平方mmあたり107〜109個
平均粒子径dと主相平均粒径dmとの比d/dm; 10-4〜100
すなわち、Rem,Yの酸化物および硫化物を活用して他の延性に悪影響を及ぼすアルミナやシリカ、MnS等の介在物を軽減することで、破断延性のみならず均一伸びをも向上させることができることを見出した。
【0016】
ここで、上述したような酸化物および硫化物の同定・観察や面積率測定は、光学顕微鏡、EPMAやFE-SEMなどを用いて行うことができる。本発明においては、500〜20000倍で50視野以上を測定し、画像解析により面積率を求めた。また、酸化物の同定には、抽出レプリカ試料を作成してTEMを用いたり、EBSP、EDXおよびEPMAを用いた。また、ここでいう、Rem,Yの酸化物および硫化物は、他の原子を含む複合物であったり、欠陥を多く含む場合があるが、元素分析及び構造同定からRem,Yを主体とした化合物で、例えば、Y2O3,La2O3,Ce2O3,CeO2,La2S3,LaS,Ce2S3,CeS,Ce3S4などの複合あるいは単独の化合物である。面積率測定は、上記形態観察やEPMAやFE-SEMなどを用い各成分の面分析を行うことで求めることができる。この場合には、個々の正確な構造の同定は難しいものの、上述した構造解析の結果と併せて形態やその組成から判断し得る。その後面分析の画像解析から各面面積率を求めることができる。
【0017】
次に、鋼板のミクロ組織について述べる。基本的には、上記酸化物および硫化物を制御することで、いずれの鋼板組織においてもその延性向上効果を得ることができる。しかし、鋼板の延性自体を十分に確保する目的から、主相をフェライト相とするのが望ましい。しかし、さらに高強度化を指向する場合にはベイナイト相を含んでも良いが、延性を確保する観点から主相としては、フェライトの単独相、又はフェライト及びベイナイトの複合相(本明細書中「フェライト又はフェライト及びベイナイト」と表記する場合も特段断らない限り同様の意味である)を、面積分率で50%以上含むことが望ましい。フェライト及びベイナイトの複合相とする場合も、フェライトは延性を確保するために、面積分率で50%以上含有することが好ましい。一方、高強度化と高延性をバランスさせるためには、フェライト又はフェライト及びベイナイトを面積分率で97%以下とすることが好ましい。
【0018】
さらに高強度と高延性を両立させるため、残留オーステナイトおよび/またはマルテンサイトを含む複合組織とすることも望ましい。高強度と高延性のために、残留オーステナイト相および/またはマルテンサイトは、面積分率で合計3%以上含有することが好ましいが面積分率が合計50%以上になると脆化傾向を示すので50%未満とすることが好ましい。
【0019】
上記の他にミクロ組織の残部組織として、炭化物、窒化物、硫化物、酸化物の1又は2以上を面積分率5%以下で含有する場合も本発明の範囲とする鋼板である。
【0020】
なお、上記ミクロ組織の各相、フェライト、ベイナイト、オーステナイト、マルテンサイト、界面酸化相および残部組織の同定、存在位置の観察および平均粒径(平均円相当径)と占積率の測定は、ナイタール試薬および特開昭59−219473号公報に開示された試薬により鋼板圧延方向断面または圧延直角方向断面を腐食して500倍〜10000倍の光学顕微鏡およびSEM観察により定量化が可能である。
【0021】
次に、本発明における鋼板成分の好適な範囲の限定理由について述べる。
【0022】
Cは、良好な強度延性バランスを確保するための第2相の面積分率を十分確保する目的で添加する元素である。特に第2相がオーステナイトである場合には、面積分率のみならずその安定性向上にも寄与して延性を大きく向上させる。強度および各第2相の面積分率を確保するために下限を0.0001質量%(以下、同じ)とし、溶接性を保持可能な上限として0.3質量%とした。
【0023】
Siは、主相であるフェライト生成を促進させることおよび強度延性バランスを劣化させる炭化物の生成を抑制する目的で添加する元素であり、その下限を0.001質量%とした。また、過剰添加は溶接性およびめっき濡れ性に悪影響を及ぼす。このため、上限を2.5質量%とした。
【0024】
Mnは、めっき濡れ性および密着性の制御に加えて、高強度化の目的で添加する。また、マルテンサイトやオーステナイトなどの第2相を含む場合には、強度低下と延性劣化の1つの原因である炭化物析出やパーライト生成を抑制する目的で添加する。これらのことから、0.01質量%以上とした。一方では、第2相がオーステナイトの場合に延性向上に寄与するベイナイト変態を遅滞させることや溶接性を劣化させることから3質量%を上限とした。
【0025】
P量を0.0001〜0.05質量%の範囲としたのは、0.0001質量%以上で強化効果が現れることや極低化は経済的にも不利であることからこれを下限とした。また、0.3質量%を上限としたのは、これを超える量の添加では、溶接性や鋳造時や熱延時の製造性に悪影響を及ぼすためである。
【0026】
Alは、Rem,Yの酸化物および硫化物を制御する上で重要な脱酸添加元素である。Rem,Y添加前の酸素量を制御して、これら元素の酸化物および硫化物形態を制御する目的から、0.0001質量%以上の添加とした。一方過剰添加は溶接性およびめっき濡れ性を損なうため4%を上限とした。
【0027】
SはRem,Yの硫化物を制御する観点から添加量を0.0001〜0.1質量%の範囲とした。また、Rem,Y添加の延性改善効果を得るために上述の式(2)を満たす範囲での添加とした。一方で、極低化は経済的にも不利である。また、0.1質量%を超える量の添加では、溶接性や鋳造時や熱延時の製造性に悪影響を及ぼすだけでなく、本発明のRem,Y添加効果が認められなくなることからこれを上限とした。
【0028】
NはC同様良好な強度延性バランスを確保するための第2相の面積分率を十分確保するためや、Rem,Yの酸化物および硫化物形成に影響するTi,Zr,Hfと窒化物を形成してRem,Yの酸化物および硫化物形成を間接的に促す役割がある元素であるために下限を0.0001%とし、さらに上記理由から式(2)を満たす範囲とした。一方で、溶接性を保持可能な上限として0.3質量%とした。
【0029】
OはSと同様にRem,Yの酸化物を制御する観点から添加量を0.0001〜0.1質量%の範囲とした。また、Rem,Y添加の延性改善効果を得るために上述の式(2)を満たす範囲での添加とした。一方で、極低化は経済的にも不利である。また、0.1質量%を超える量の添加では、延性や溶接性や鋳造時や熱延時の製造性に悪影響を及ぼすだけでなく、本発明のRem,Y添加効果が認められなくなることからこれを上限とした。
【0030】
Rem、Yは、本発明における酸化物および硫化物の形態制御による延性改善に重要な元素である。これらの元素を主成分とする酸化物および硫化物を形成させることで破断延性および均一伸びを向上させることができる。このため、それぞれ0.0005%を下限とした。また一方で過剰添加は鋳造性や熱間加工性などの製造性および鋼板製品の延性を低下させるため、それぞれ0.3質量%を上限とした。
【0031】
Ti,Zr,Hf,CaはAl同様、Rem,Yの酸化物および硫化物を制御する上で重要な脱酸添加元素であるが、添加量と添加タイミングによっては、Rem,Yの酸化物および硫化物の良好な形態形成を阻害する。阻害しない範囲として、それぞれ0.0001質量%以上1%以下とし、更に上記式(1)を満たす添加とした。
【0032】
さらに、本発明が対象とする鋼は、強度のさらなる向上を目的としてCr、Mo,Ni、Cu、Co、Wの1種または2種以上を含有できる。
【0033】
Crは、強化目的および炭化物生成の抑制の目的から添加する元素で、0.001質量%以上とし、5質量%を超える量の添加では、加工性に悪影響を及ぼすため、これを上限とした。
【0034】
Moは、強度延性バランスを劣化させる炭化物やパーライトの生成を抑制する目的で添加できる元素であり、良好な強度延性バランスを得るために重要な添加元素である。その下限を0.001質量%とした。また、過剰添加は、延性劣化を招くことから、上限を5%とした。
【0035】
Niは、組織強化の目的で0.001質量%以上とし、5質量%を超える量の添加では、加工性に悪影響を及ぼすため、これを上限とした。
【0036】
Cuは、強化目的で0.001質量%以上の添加とし、5質量%を超える量の添加では、加工性に悪影響を及ぼす。
【0037】
Coは、強度延性バランスの向上のため、0.001質量%以上の添加とした。一方、高価な元素であるため多量添加は経済性を損なうため、5質量%以下にすることが望ましい。
【0038】
W量を0.001〜5質量%の範囲としたのは、0.001質量%以上で強化効果が現れること、5質量%を上限としたのは、これを超える量の添加では、加工性に悪影響を及ぼすためである。
【0039】
さらに、本発明が対象とする鋼は、強度のさらなる向上を目的として強炭化物形成元素であるNb,V、Taの1種または2種以上を含有できる。
【0040】
これらの元素は、微細な炭化物、窒化物または炭窒化物を形成して、鋼板の強化に極めて有効であるため、必要に応じて1種または2種以上をそれぞれ0.001質量%以上の添加とした。一方で、延性劣化や残留オーステナイト中へのCの濃化を阻害することから、それぞれの添加量の上限として1質量%とした。
【0041】
Bもまた、必要に応じて添加できる。Bは、0.0001質量%以上の添加で粒界の強化や鋼材の高強度化に有効ではあるが、その添加量が0.1質量%を超えるとその効果が飽和するばかりでなく、必要以上に鋼板強度を上昇させ、加工性が低下するため、上限を0.1質量%とした。
【0042】
不可避的不純物として、例えばSnなどがあるがこれら元素をSn≦0.01質量%以下の範囲で含有しても本発明の効果を損なうものではない。
【0043】
本発明の鋼板は、熱延鋼板、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板および合金化亜鉛めっき鋼板についてその効果の発現を見出したものである。
【0044】
これらの鋼板を製造する場合には、所定の成分に調整された溶鋼を最終的に成分調整するにあたり、Rem,La,Yを添加する前にはAl,Ti、Si、Mnなどの強脱酸元素で十分に溶鋼中の酸素を低下させておく必要がある。その後、Rem,La,Yの1種又は2種以上を添加して鋳造するが、鋳造速度としては0.1〜5m/minが望ましい。この様に精錬および鋳造方法を制御することでRem,La,Yを主成分とする酸化物および硫化物の形態を制御して、延性向上効果を出現させるものであり、脱酸元素の添加順序は本発明において重要である。
【0045】
鋳造速度は0.01m/minより遅いかまたは5m/minより速いとRemやYの酸化物および/または硫化物形態が延性向上に寄与する形態とならずに延性向上硬化が得られない。
【0046】
その後、鋳造ままもしくは一旦700℃以下まで冷却した後、鋼片を再加熱して熱延を行う。鋳造ままの鋼片をそのまま加熱して熱延することは加熱原単位の減少になり好ましく、また鋼片を700℃以下まで冷却することはスラブ表面の手入れの必要な場合には好ましい。
【0047】
このとき、粒界酸化相の多量生成を抑制するために加熱温度を1150℃以上または1280℃以下とすることが望ましい。加熱温度が1150℃以上の高温になると全面に比較的均一に酸化スケールが形成され粒界酸化は抑制される傾向に有る。また、1150℃より低温加熱では熱延での変形抵抗が高くなり、傷や割れ発生の原因にもなる。一方、加熱温度が1280℃を超えると酸化スケールが多量発生したり粒径の粗大化を招くため、上記の範囲とすることが好ましい。また、1000℃以上の圧延時の1パス当たり圧下率を30%以下とすることで、熱間での割れを防止することおよび延性向上に寄与する酸化物および/または硫化物形態を形成させることができる。
【0048】
この時、熱延完了温度は鋼の化学成分によって決まるAr3 変態温度以上で行うのが一般的であるが、Ar3 から10℃程度低温までであれば最終的な鋼板の特性を劣化させない。また、冷却後の巻取温度は鋼の化学成分によって決まるベイナイト変態開始温度以上とすることで、冷延時の荷重を必要以上に高めることがさけられるが、冷延の全圧下率が小さい場合にはこの限りでなく、鋼のベイナイト変態温度以下で巻き取られても最終的な鋼板の特性を劣化させない。
【0049】
その後、必要に応じ、冷延後焼鈍したり、さらにめっき工程を経ることで各種の最終製品とする。冷延の全圧下率は、最終板厚と冷延荷重の関係から設定されるが、50%以上であれば製品での良好な強度延性のバランスを得やすい。
【0050】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0051】
製鋼段階は、Al、Ti,Si,Mnで先に脱酸した後にRem、Yを添加し、最終的に表1、表2(表1のつづき)に示すような組成の溶鋼に調整し、0.05〜3m/minで鋳造した。鋳造後の鋼片を鋳造まま又は700℃以下に冷却した後、1020〜1250℃に加熱し、1000℃以上での圧下率を10〜30%ととしてAr3 変態温度以上で熱延を完了し、900℃で巻き取った鋼帯を酸洗後、各試験に供した。各製品はすべて1.4mm厚とした。冷延およびめっき鋼板用の熱延原板は3mmとし、1.4mmに冷延後、冷延用は連続焼鈍に、めっき用は溶融亜鉛めっき工程にてそれぞれ製品を作成した。
【0052】
表3、表4(表3のつづき)に示すように、発明鋼は均一伸びおよび全伸びの値が同様の成分・組織構成・強度を有する比較鋼に比べて2〜5%程度高い値を示す。
【0053】
また、表5、表6(表5のつづき)に幾つかの鋼材について、鋳造速度および熱延の加熱温度を変化させた場合の機械的特性およびRem,Yの酸化物および硫化物形態に及ぼす影響を示す。鋳造速度が速くなると介在物密度が大きくなり、遅くなると介在物密度が小さくなってしまう。その結果、延性改善効果が十分でないことが分かる。また、加熱温度が低い場合には、十分な強度が得られない。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
【発明の効果】
本発明により、鋼成分を特定の範囲とし、それらの量的関係を特定の関係式を満足するように調整することにより延性に優れた高強度高延性鋼板を得ることができる。
Claims (8)
- 質量%で、
C :0.0001〜0.3%、
Si:0.001〜2.5%、
Mn:0.01〜3%、
P :0.0001〜0.3%、
Al:0.0001〜4%、
S :0.0001〜0.1%、
N :0.0001〜0.3%、
O :0.0001〜0.1%、
を含有し、
Rem:0.0005〜0.3%、
Y :0.0005〜0.3%、
の一方又は両方を式(2)を満たす範囲で含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、RemまたはYの酸化物および/または硫化物が、
平均粒子径d:0.01〜10.0μm、
密度ρ:1平方mあたり107〜109個、
平均粒子径dと主相平均粒径dmとの比d/dm; 10-4〜100、
を満たす分布形態を有することを特徴とする高強度高延性鋼板。
(O/16+S/32+N/14) /(Rem/140+Y/89)=0〜10 …(2) - さらに、質量%で、
Ti:0.0001〜1%、
Zr:0.0001〜1%、
Hf:0.0001〜1%、
Ca:0.0001〜1%、
の1種又は2種以上を式(1)を満たす範囲で含有することを特徴とする請求項1記載の高強度高延性鋼板。
(Ti/48+Zr/91+Hf/178+Ca/40)/(Rem/140+Y/89)=0〜20 …(1) - 鋼板のミクロ組織が、主相としてフェライト又はフェライト及びベイナイトを面積分率で50〜97%含有し、第2相としてマルテンサイト、オーステナイトの一方又は両方を、面積分率で合計3〜50%未満含むことを特徴とする請求項1又は2記載の高強度高延性鋼板。
- さらに、質量%で、
Cr:0.001〜5%、
Mo:0.001〜5%、
Ni:0.001〜5%、
Cu:0.001〜5%、
Co:0.001〜5%、
W :0.001〜5%、
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度高延性鋼板。 - さらに質量%で、
Nb:0.001〜1%、
V :0.001〜1%、
Ta:0.001〜1%、
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度高延性鋼板。 - さらに質量%で、B:0.0001〜0.1%を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高強度高延性鋼板。
- 鋼板の表面にZnめっきが施されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高強度高延性鋼板。
- 溶鋼にAl、Ti、Si、Mnの1種以上を添加して脱酸した後Remおよび/またはYを添加し、請求項1、2、4〜6の何れか1項に記載の成分からなる溶鋼に調整した後、0.01〜5m/minの鋳造速度で鋳込み、その鋼片を鋳造まま又は一旦700℃以下まで冷却した後に、1150〜1280℃に加熱し、続いて熱延を行う際に、1000℃以上の圧延時の1パス当たり圧下率を30%以下とすることを特徴とする高強度高延性鋼板の製造方法。
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| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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