JP4236506B2 - 鉄道車両用ブレーキディスク及びブレーキディスク付鉄道車両用車輪 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、新幹線等の高速鉄道車両の制動装置を構成する鉄道車両用ブレーキディスク及びブレーキディスク付鉄道車両用車輪の改良に関し、制動の繰り返しに拘らず亀裂等の損傷が発生しない鉄道車両用ブレーキディスクの実現を図るものである。
【0002】
【従来の技術】
新幹線等の高速鉄道車両の制動装置を構成する鉄道車両用ブレーキディスク及びブレーキディスク付鉄道車両用車輪として従来から、特許文献1に記載されたものが知られている。この特許文献1には、図13に示す様に、内周縁部で円周方向に関する位相が取付孔3、3の間部分に、切り欠き10、10を形成した、鉄道車両用のブレーキディスク1aが記載されている。この様な特許文献1に記載された構造の場合、上記各切り欠き10、10の形状は、単一円弧状であり、これら各切り欠き10、10の頂部(奥端部)は、上記各取付孔3、3のピッチ円よりも径方向内方に存在する。
【0003】
ところで、鉄道車両用の制動装置の作動時間は、自動車用の制動装置の作動時間に比べて遥かに長い。しかも、作動時に摩擦材とブレーキディスクとの摩擦に基づく、単位時間当たりの発熱量も多くなる。従って、鉄道車両用の制動装置を構成するブレーキディスクに制動の繰り返しに伴って加わる応力は、自動車用のブレーキディスクとは異なり、熱膨張、収縮に基づく応力(熱応力)が支配的になる。
【0004】
図14は、新幹線等の高速鉄道車両で急制動を行ない、100秒間で車両を停止させたと仮定した場合に於ける、ブレーキディスクに加わる応力の大きさと経過時間との関係を、応力の種類毎に示している。上記図14の実線aが、上記熱応力を、破線bが、遠心力に基づく応力を、鎖線cが、摩擦材との摩擦に起因するブレーキトルクに基づく応力を、それぞれ示している。この様な図14から明らかな通り、鉄道車両のブレーキディスクに加わる応力は、熱応力が支配的である。因に、制動の繰り返しに伴ってブレーキディスクに加わる応力の凡その構成比は、上記熱応力が88%、遠心力に基づく応力が6%、ブレーキトルクに基づく応力が6%である。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−89389号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図13に示す様な従来の鉄道車両用ブレーキディスク及びブレーキディスク付鉄道車両用車輪の場合、鉄道車両がより高速化し、制動時にブレーキディスクに加わる応力がより大きくなった場合の、より高い要求性能に対応できない可能性がある。即ち、制動時に上記ブレーキディスクは、摩擦材と摩擦し合う外径側半部が著しく温度上昇するのに対し、この摩擦材と摩擦せず、しかも低温の鉄道車両用車輪2に当接している内径側半部の温度上昇は限られたものとなる。この結果、上記ブレーキディスクの内径側と外径側との間で大きな温度差を生じ、このブレーキディスクの一部に大きな熱応力が発生する。
【0007】
この様にして生じる大きな熱応力に対し、図13に示した従来構造の場合には、内周縁部に切り欠き10、10を形成しているとは言え、その形状及び形成位置を特に工夫していない為、使用条件が厳しくなると、これら各切り欠き10、10の周縁部に、図15に示す様に、亀裂18等の損傷を発生する可能性がある。
本発明の鉄道車両用ブレーキディスク及びブレーキディスク付鉄道車両用車輪は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の鉄道車両用ブレーキディスク及びブレーキディスク付鉄道車両用車輪のうち、請求項1に記載した鉄道車両用ブレーキディスクは、アルミニウム又はアルミニウム合金をマトリックス材とする複合材料(アルミニウム又はアルミニウム合金中に、SiC、Al2 O3 等のセラミック粒子或はセラミック繊維等の強化材を分散させた複合材)製で全体を円輪状とされ、内周縁に複数の切り欠きを形成すると共に、円周方向に隣り合う切り欠きの間に取付用のボルトを挿通する為の取付孔を設けている。
【0009】
特に、本発明の鉄道車両用ブレーキディスクに於いては、上記各切り欠き及び上記各取付孔の数はそれぞれ6個ずつで、円周方向に亙って等間隔に形成されている。又、このうちの各切り欠きは、その頂部を構成する、全長に亙り曲率半径が一定であってこの曲率の中心が上記各取付孔のピッチ円よりも内径側に存在する第一円弧部と、円周方向端部を構成する、全長に亙り曲率半径が一定の第二円弧部とを滑らかに連続させた複合円弧である。そして、上記第一円弧部を延長した仮想円弧は上記各取付孔を通過し、且つ、上記第一円弧部の曲率半径r1 に対する上記各第二円弧部の曲率半径r2 の比r2 /r1 が0.42〜0.47である。
【0010】
又、好ましい構成によれば、請求項2に記載した様に、上記ブレーキディスクの摩擦面と反対側で上記鉄道車両用車輪の側面に対向する部分に、上記アルミニウム又はアルミニウム合金をマトリックス材とする複合材料よりも熱伝導率の大きな材料製の伝熱皮膜を形成している。
【0011】
更に、請求項3に記載したブレーキディスク付鉄道車両用車輪は、それぞれが請求項1又は請求項2に記載した構成を有する1対の鉄道車両用ブレーキディスクにより鉄道車両用車輪をサンドイッチ状に挟持している。そして、これら各鉄道車両用ブレーキディスクに形成した上記各取付孔と、上記鉄道車両用車輪の一部でこれら各取付孔に整合する6個所に形成した第二の取付孔とに挿通した第一の弾性部材により、少なくとも制動時に上記鉄道車両用ブレーキディスクの熱膨張量が所定値を越えた状態で上記各鉄道車両用ブレーキディスクに、直径方向の弾性を付与している。これと共に、上記第一の弾性部材に上記ボルトを挿通し、このボルトの頭部及びこのボルトに螺合したナットと上記各鉄道車両用ブレーキディスクとの間に第二の弾性部材を挟持して、これら各鉄道車両用ブレーキディスクを上記鉄道車両用車輪の側面に向け弾性的に押し付けている。この構成により、制動に伴うこれら各鉄道車両用ブレーキディスクの熱膨張に基づく、これら各鉄道車両用ブレーキディスクと上記鉄道車両用車輪との間の寸法差を吸収自在としている。
【0012】
【作用】
上述の様に構成する鉄道車両用ブレーキディスク及びブレーキディスク付鉄道車両用車輪によれば、制動の繰り返しに伴って各部に加わる熱応力に拘らず、ブレーキディスクに亀裂等の損傷が発生しにくくできる。特に、切り欠きの形状及び形成位置を規制する事により、従来構造の場合に最も強度的に弱い部分であった各取付孔部分に作用する熱応力を抑えられる為、これら各取付孔部分に、上記損傷が発生しにくくできる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1〜7は、請求項1に対応する、本発明の鉄道車両用ブレーキディスクの実施の形態の1例を示している。本例のブレーキディスク1bは、アルミニウム合金をマトリックス材とし、これにSiCを分散配合した複合材料製で、全体を円輪状とされている。本例の場合、上記ブレーキディスク1bは、片面(図2、4の上面、図3の下面)の外径側半部を、制動時に摩擦材を押し付ける為の摩擦面11としている。これに対して上記ブレーキディスク1bの内径寄り部分に形成した、後述する凸部13、13は、鉄道車両用車輪2(後述する図8〜9参照)の側面に固定できる様に、この側面にがたつきなく突き当て自在な形状としている。
【0014】
又、本例の場合には、上記ブレーキディスク1bの他面外径寄り半部を、それぞれが放射状に形成された凸部と凹部とを円周方向に亙って交互に配置した形状としている。これにより、上記ブレーキディスク1bの凸部13、13を上記鉄道車両用車輪2の側面に突き当てた状態で、これら両面同士の間(上記凹部と側面との間)に、冷却用の空気が流通自在な通路14、14(後述する図8〜9参照)が形成される様にしている。
【0015】
これに対して上記ブレーキディスク1bの内径側半部には、それぞれがこのブレーキディスク1bの内周縁に開口する6個の切り欠き10a、10aを、円周方向に亙って等間隔に形成している。尚、これら各切り欠き10a、10aの一部が、上記摩擦面11にまで達する事はない。言い換えれば、これら各切り欠き10a、10aは、この摩擦面11よりも内径寄り部分に形成している。又、円周方向に隣り合う上記各切り欠き10a、10a同士の間部分12、12に、それぞれ取付用のボルト5、5(後述する図8〜9参照)を挿通する為の取付孔3、3を設けている。
【0016】
尚、上記鉄道車両用車輪2の側面に対向する上記各間部分12、12の片面(図2の下面)で、上記各取付孔3、3を囲む部分には、他の部分よりも突出した、前記凸部13、13を形成している。上記ブレーキディスク1bを上記鉄道車両用車輪2の側面に添設した状態では、上記各凸部13、13が、この側面に突き当たる。この状態では、上記各間部分12、12と上記鉄道車両用車輪2の側面との間で上記各凸部13、13から外れた部分には、冷却用の空気が流通自在な隙間が形成される。従って、上記各切り欠き10a、10aの存在と相まって、上記両面同士の間に存在する通路14、14に冷却用の空気を効率良く流通させる事ができる。
【0017】
更に、上記各切り欠き10a、10aを軸方向から見た形状は、これら各切り欠き10a、10aの頂部(最も奥まった部分で、図示の場合には円周方向に関して中央部)を含む円周方向中間部分を構成する第一円弧部15の両端部と、円周方向両側部分を構成する第二円弧部16、16の端部とを滑らかに連続させた複合円弧である。そして、これら第一円弧部15と第二円弧部16、16との曲率半径r 1 、r 2 を、上記各切り欠き10a、10a並びに上記各取付孔3、3の形成位置との関係で、次の様に規制している。尚、上記第一、第二両円弧部15、16の曲率半径r 1 、r 2 は、次述する図5、6から明らかな通り、それぞれの全長に亙り一定である。
【0018】
先ず第一に、上記第一円弧部15を上記各切り欠き10a、10a外にまで延長した仮想円弧は、上記各取付孔3、3を通過する(横切る)様にしている(第一の条件)。この点に就いて、図5により説明する。この図5には、上記各第二円弧部16、16の曲率半径r2 を一定としたまま上記第一円弧部15の曲率半径r1 を種々変えた場合に於ける、この第一円弧部15を延長した場合に得られる仮想円弧の5例を示している。この様な図5に示した5本の仮想円弧のうち、左側2本の仮想円弧は、上記取付孔3を通過しない。これに対して、右側3本の仮想円弧は、この取付孔3を通過する。従って、この右側3本の仮想円弧は、上記第一の条件を満たし、本発明の技術的範囲に属し得るが、左側2本の仮想円弧は、この第一の条件を満たさず、本発明の技術的範囲からは外れる。
【0019】
第二に、上記第一円弧部15の曲率半径r1 に対する上記各第二円弧部16、16の曲率半径r2 の比r2 /r1 を、0.42〜0.47としている。この点に就いて、図6により説明する。上記各切り欠き10a、10aの形状は、曲率半径が比較的大きなr1 である上記第一円弧部15と、曲率半径が比較的小さなr2 である上記各第二円弧部16、16とを滑らかに連続させた形状を有する。これら各第二円弧部16、16の曲率半径r2 、並びにその曲率中心の位置を一定と仮定した場合には、上記比r2 /r1 が大きい(上記第一円弧部15の曲率半径r1 小さい)程、上記各切り欠き10a、10aの深さD10は深くなる。又、これら各切り欠き10a、10aの頂部の曲率が大きくなる。逆に、上記比r2 /r1 が小さい(上記第一円弧部15の曲率半径r1 大きい)程、上記各切り欠き10a、10aの深さD10は浅くなる。又、これら各切り欠き10a、10aの頂部の曲率が小さくなる。本例の場合、上記比r2 /r1 を0.42〜0.47の範囲内に規制して、上記深さD10と頂部の曲率とを所定の範囲内に納めている。
【0020】
上述の様に構成する本例のブレーキディスク1bによれば、制動の繰り返しに伴って各部に加わる熱応力に拘らず、このブレーキディスク1bに亀裂等の損傷が発生しにくくできる。特に、上記各切り欠き10a、10aの形状及び形成位置を規制する事により、従来構造の場合に最も強度的に弱い部分であった上記各取付孔3、3部分に作用する熱応力を抑えられる為、これら各取付孔3、3部分に、上記損傷が発生しにくくできる。この点に就いて、図7を参照しつつ説明する。
【0021】
制動時に上記ブレーキディスク1bの温度は、前記摩擦面11と摩擦材との摩擦によって上昇する。但し、周速が早いこの摩擦面11の外径寄り部分と、周速が遅いこの摩擦面11の内径寄り部分とでは、摩擦により生じる熱量が相違し、温度上昇にも違いが生じる。更に、上記ブレーキディスク1bのうちで、上記摩擦面11と、この摩擦面11よりも更に内径寄り部分に存在する前記各間部分12、12との間では、更に著しい温度上昇の相違が生じる。これら各間部分12、12の温度上昇の遅れは、径方向外方に隣接する、上記摩擦面11の内径寄り部分の温度上昇にも影響を与える(この内径寄り部分の温度上昇を遅らせる)。
【0022】
具体的には、この摩擦面11の外径寄り部分の温度上昇が、内径寄り部分の温度上昇よりも著しくなる。そして、この外径寄り部分が、図7に矢印αで示す様に、径方向外方に膨張する傾向になって、この外径寄り部分に比べて膨張量が少ない内径寄り部分を引っ張る。この様にして上記摩擦面11の内径寄り部分に加わる引っ張り応力に基づき、この内径寄り部分に引っ張り応力が、図7に矢印βで示す様に、円周方向に亙って加わる。因に、膨張量が多くなる外径寄り部分には、圧縮応力が加わる。圧縮応力は、亀裂等の損傷に結び付かない為、特に考慮する必要はない。これに対して引っ張り応力の場合には、この応力が加わる部分である、上記ブレーキディスク1bの内径寄り部分に、強度的に弱い部分が存在すると、当該部分から亀裂等の損傷が発生する原因となる。
【0023】
これに対して本例のブレーキディスク1bの場合には、上記摩擦面11よりも内径寄り部分に6個の切り欠き10a、10aを形成している為、上記亀裂等の損傷が発生する事を有効に防止できる。
先ず、制動時に於ける温度上昇に基づいて最も大きな引っ張り応力が加わる内径寄り部分で、円周方向に隣り合う取付孔3、3同士の間に、切り欠き10a、10aを形成しているので、これら各切り欠き10a、10aにより、力の流線(上記引っ張り応力が大きくなっている応力分布)が切られる。この結果、上記ブレーキディスク1bの径方向に関する断面内での応力分布が変化する。具体的には、熱膨張に基づく引っ張り応力並びに歪みが最大となる部分が、上記各切り欠き10a、10aの頂点部分となる。尚、この為には、上記ブレーキディスク1bの径方向に関して、これら各切り欠き10a、10aの頂点が上記各取付孔3、3のピッチ円よりも外側に存在させる事が必要である。この頂点がこれら各取付孔3、3のピッチ円よりも内側に存在した場合には、上記力の流線を切る事が不十分で、これら各取付孔3、3の周縁部に、大きな引っ張り応力が作用する事になる。
【0024】
本例のブレーキディスク1bの場合には、上述の様な切り欠き10a、10aを形成する事により、従来構造の場合に亀裂等の損傷が発生し易かった、上記各取付孔3、3部分に加わる引っ張り応力を緩和し、この部分に上記損傷を発生しにくくできる。尚、上記各切り欠き10a、10a部分に関しては、上記頂点部分を前記摩擦面11に近付ける程、この頂点部分に加わる引っ張り応力並びに歪みが小さくなる。この理由は、この摩擦面11側程、制動時に温度上昇する為、上記頂点部分との間での温度差を小さくできる為である。但し、上記頂点部分を上記摩擦面11に入り込ませる事は、摩擦材との摩擦面を不連続にする為、好ましくない。従って、上記頂点部分を上記摩擦面11の内周縁にできるだけ近付ける事が、この頂点部分の引っ張り応力並びに歪みを小さくし、この頂点部分に亀裂等の損傷が発生しにくくする面からは好ましい事になる。
【0025】
本例の場合には、上記各切り欠き10a、10aの頂部を構成する前記第一円弧部15をこれら各切り欠き10a、10a外にまで延長した仮想円弧が上記各取付孔3、3を通過し、且つ、上記第一円弧部15の曲率半径r1 に対する、上記各切り欠き10a、10aの両側部分を構成する前記各第二円弧部16、16の曲率半径r2 の比r2 /r1 を0.42〜0.47としたので、上記頂点部分に加わる引っ張り応力及び歪みを小さくできる。この結果、上記各取付孔3、3部分だけでなく、上記各切り欠き10a、10a部分にも亀裂等の損傷を発生しにくいブレーキディスク1bを得られる。即ち、上記仮想円弧が上記各取付孔3、3を通過する構成を採用する事が、熱応力を小さくする為の必要条件であるが、更に比r2 /r1 を0.42〜0.47とする事で、上記熱応力を十分に小さくできる。
【0026】
尚、上記比r2 /r1 を0.47よりも大きくする(第一円弧部15の曲率半径r1 を小さくし過ぎる)と、上記各第二円弧部16、16に加わる熱応力が大きくなって、これら第二円弧部16、16と上記各取付孔3、3との間に、亀裂等の損傷を発生し易くなる。これに対して、上記比r2 /r1 を0.42よりも小さくする(第一円弧部15の曲率半径r1 を大きくし過ぎる)と、この第一円弧部15に加わる熱応力が大きくなり、この第一円弧部から前記摩擦面11部分に掛けて、亀裂等の損傷を発生し易くなる。
【0027】
次に、図8〜10は、請求項2、3に対応する、本発明のブレーキディスク付鉄道車両用車輪の実施の形態の1例を示している。本例のブレーキディスク付鉄道車両用車輪は、それぞれが上述の様な構成を有する鉄道車両用のブレーキディスク1b、1bにより、鉄道車両用車輪2をサンドイッチ状に挟持している。そして、これら両ブレーキディスク1b、1bに形成した各取付孔3、3と、上記鉄道車両用車輪2の一部でこれら各取付孔3、3に整合する6個所に形成した第二の取付孔4とに挿通した、第一の弾性部材である欠円筒状のスプリングピン7により、少なくとも制動時に上記各ブレーキディスク1b、1bの熱膨張量が所定値を越えた状態でこれら各ブレーキディスク1b、1bに、直径方向の弾性を付与している。これと共に、上記スプリングピン7にボルト5を挿通し、このボルト5の頭部8及びこのボルト5に螺合したナット6と上記各ブレーキディスク1b、1bとの間に、第二の弾性部材である皿ばね9、9を、ワッシャ19、19と共に挟持して、これら各ブレーキディスク1b、1bを上記鉄道車両用車輪2の側面に向け、弾性的に押し付けている。
【0028】
この構成により、制動に伴うこれら各ブレーキディスク1b、1bの熱膨張に基づく、これら各ブレーキディスク1b、1bと上記鉄道車両用車輪2との間の寸法差を吸収自在としている。即ち、常温時には上記ボルト5及びスプリングピン7が、図10(A)に示す様に、上記第二の取付孔4の内側で上記鉄道車両用車輪2の径方向内側(図の下側)部分に存在するのに対して、制動に基づく発熱によって上記各ブレーキディスク1b、1bが膨張した場合には、図10(B)に示す様に、上記第二の取付孔4の内側で上記鉄道車両用車輪2の径方向外側(図の上側)部分に移動する。そして、上記各ブレーキディスク1b、1bが更に膨張すると、図10(C)に示す様に、上記スプリングピン7が弾性的に圧縮され、このスプリングピン7から上記各ブレーキディスク1b、1bに、直径方向の弾性が付与される。この移動の際、上記ワッシャ19、19或は各皿ばね9、9は、上記鉄道車両用車輪2の側面或はこのワッシャ19、19に対し摺動する。
【0029】
更に本例の場合には、上記各ブレーキディスク1b、1bの外径側半部で摩擦面11と反対側に位置し、上記鉄道車両用車輪2の側面に対向する部分に、上記各ブレーキディスク1b、1bを構成するアルミニウム合金マトリックス複合材料よりも熱伝導率の大きな材料製の伝熱皮膜17を形成している。この伝熱皮膜として、銅又は銅合金を10μm程度の厚さに溶射する。この様な伝熱皮膜17を形成する事により、制動時に前記摩擦面11と摩擦材との摩擦に伴う熱エネルギを上記鉄道車両用車輪2に対し、効率良く伝達して、上記各ブレーキディスク1b、1bの外径側半部の温度上昇を抑えられる。この結果、これら各ブレーキディスク1b、1bの外径側半部と内径寄り部分との温度差を小さくして、これら各ブレーキディスク1b、1bの各部に加わる応力を一層低減し、これら各ブレーキディスク1b、1bの耐久性のより一層の向上を図れる。
【0030】
【実施例】
次に、本発明の効果を確認する為に行なった有限要素法による解析(FEM解析)及び実験の結果に就いて説明する。この解析及び実験は、外径が720mm、内径が295mmで、ボルト挿通用の取付孔が6個(次述する表1に示す試料8は12個)存在する、下記の表1に示す8種類のブレーキディスクに就いて行なった。そして、各切り欠きの形状の違いが、これら各切り欠きの第一円弧部に加わる熱応力に及ぼす影響に就いて、FEM解析と実際の測定とにより検討した。
【0031】
【表1】
【0032】
上記表1に示した8種類の試料のうち、試料1〜6に就いては、第二円弧部の曲率半径r2 を40mmとし、第一円弧部の曲率半径r1 を変える事で、これら両曲率半径r2 、r1 の比r2 /r1 を、0.40〜0.54の間で変化させた。又、試料7、8に就いては、第二円弧部を設けず、第一円弧部のみで、曲率半径を55mm(試料7)又は35mm(試料8)とした。尚、上記試料1〜8中、試料1〜3が本発明の技術的範囲に属する実施例であり、試料4〜8は本発明の技術的範囲から外れる比較例である。又、試料8に就いては、各切り欠きの頂点位置をボルト挿通用の取付孔のピッチ円よりも内径側とした。
【0033】
上述の様な条件の下で行なったFEM解析と実際の測定とのうち、FEM解析の結果を図11に、実際の測定の結果を図12に、それぞれ示した。これら図11、12から明らかな通り、上記両曲率半径r2 、r1 の比r2 /r1 を0.42〜0.47の範囲にすれば、ブレーキディスクの温度上昇時に、このブレーキディスクの各切り欠きの第一円弧部に生じる熱応力を低く抑える事ができる。
【0034】
更に本発明者は、上記試料1〜8を実際に制動に使用した場合に於ける耐久性を知る為の実験を行なった。この実験では、新幹線の台車に模した車両試験機を用い、初速300km/hで非常ブレーキを作動させ、停止(0km/h)させる動作を、1000回、繰り返し行なった。ブレーキディスクの摩擦面と摩擦させる摩擦材(ブレーキライニング)は、レジン系のものを使用した。又、ボルト挿通用の取付孔若しくは切り欠きに亀裂等の損傷が発生した場合には、その時点で実験を中止した。この様な条件で行なった実験の結果を、前記表1に示した。この様な、実際に行なった制動試験の結果からも、本発明が、ブレーキディスクの耐久性向上の面から効果がある事が分かる。
【0035】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた様に構成し作用する為、優れた耐久性を有する鉄道車両用ブレーキディスク及びブレーキディスク付鉄道車両用車輪を実現して、定期検査のサイクルを長くする事が可能になる等、高速鉄道車両の安全運行に要するコストの低減に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す、ブレーキディスクの部分正面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】図1のB部矢視図。
【図4】同C矢視図。
【図5】切り欠きの形状を説明する為の部分正面図。
【図6】同じく部分拡大正面図。
【図7】制動時に加わる熱応力を説明する為の部分正面図。
【図8】本発明の実施の形態の1例を示す、ブレーキディスク付鉄道車両用車輪の断面図。
【図9】図8の右方から見た半部正面図。
【図10】常温時の状態と温度上昇時の状態とを示す、図8の拡大D−D断面図。
【図11】制動に基づく温度上昇に伴ってブレーキディスクに加わる熱応力の大きさを求めたFEM解析の結果を示す線図。
【図12】同じく、実際の測定値を示す棒グラフ。
【図13】従来のブレーキディスクの別例を示す、部分正面図及び半部断面図。
【図14】制動時にブレーキディスクに加わる各応力の大きさと経過時間との関係を示す線図。
【図15】従来のブレーキディスクに亀裂が生じる状況の1例を示す半部正面図。
【符号の説明】
1、1a、1b ブレーキディスク
2 鉄道車両用車輪
3 取付孔
4 第二の取付孔
5 ボルト
6 ナット
7 スプリングピン
8 頭部
9 皿ばね
10、10a 切り欠き
11 摩擦面
12 間部分
13 凸部
14 通路
15 第一円弧部
16 第二円弧部
17 伝熱被膜
18 亀裂
19 ワッシャ
Claims (3)
- アルミニウム又はアルミニウム合金をマトリックス材とする複合材料製で全体を円輪状とされ、内周縁に複数の切り欠きが形成されると共に、円周方向に隣り合う切り欠きの間に取付用のボルトを挿通する為の取付孔が設けられて車輪の側面に固定される鉄道車両用ブレーキディスクに於いて、上記各切り欠き及び上記各取付孔の数はそれぞれ6個ずつで、円周方向に亙って等間隔に形成されており、このうちの各切り欠きは、その頂部を構成する、全長に亙り曲率半径が一定であって曲率の中心が上記各取付孔のピッチ円よりも内径側に存在する第一円弧部と、円周方向端部を構成する、全長に亙り曲率半径が一定の第二円弧部とを滑らかに連続させた複合円弧であり、上記第一円弧部を延長した仮想円弧は上記各取付孔を通過し、且つ、上記第一円弧部の曲率半径r1 に対する上記各第二円弧部の曲率半径r2 の比r2 /r1 が0.42〜0.47である事を特徴とする鉄道車両用ブレーキディスク。
- 上記鉄道車両用ブレーキディスクの車輪の側面に対向する部分に、上記アルミニウム又はアルミニウム合金をマトリックス材とする複合材料よりも熱伝導率の大きな材料製の皮膜が形成されている、請求項1に記載の鉄道車両用ブレーキディスク。
- 請求項1又は請求項2に記載した構成を有する1対の鉄道車両用ブレーキディスクに形成した上記各取付孔と、車輪に形成した第二の取付孔とに第一の弾性部材を挿通すると共に、この第一の弾性部材に挿通される上記ボルトの頭部及びこのボルトに螺合されるナットのそれぞれと上記各ブレーキディスクとの間に第二の弾性部材を嵌装して、制動に伴う上記各ブレーキディスクの熱膨張に基づく、上記各ブレーキディスクと上記車輪との間の寸法差を吸収自在とした、ブレーキディスク付鉄道車両用車輪。
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