JP4239300B2 - 冷間金型用鋼 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷間金型用鋼、詳しくは被削性に優れた冷間金型用鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、冷間金型用鋼としてJIS SKD11(C:1.40〜1.60%、Si:0.40%以下、Mn:0.6%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:11.00〜13.00%、Mo:0.80〜1.20%、V:0.20〜0.50%、残部がFe)が用いられていた。
しかし、このSKD11の鋼は、C含有量が高いため焼鈍硬さが高いので、被削性が悪く、さらにC含有量が高いため溶接性が悪く、また焼入れ焼戻し後の放電加工性も悪い、すなわち硬さを高くするため低温焼戻しをするが、オーステナイトが多く残存するため、放電加工により割れが発生するという問題点がある。
【0003】
上記SKD11の鋼の欠点を改善した冷間金型用鋼として、C:0.9〜1.3%、Si:0.5〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:5.0〜11.0%、Mo:1.3〜4.0%およびV:0.10〜0.35%を含有し、さらに必要に応じてS:0.20%以下、Pb:0.4%以下、Bi:0.50%以下およびCa:0.002〜0.010%の一種または二種以上を含有し、残部が実質的にFeからなる冷間ダイス鋼(特公昭64─5100号公報)が知られている。
【0004】
この冷間金型用鋼は、高温で焼入れした後、高温で焼戻しすることにより、焼入れ時の残留応力が除去されて組織が安定化するとともに二次硬化硬さが増大し、硬さおよび靱性が共に優れ、工具としての使用時のかじりを起こすことがなく、また放電加工などより工具に熱が生じる場合にも割れを生ずることがなく工具寿命が延長され、加工性が大幅に向上されるようになるものである。
しかし、この冷間金型用鋼は、焼なまし後の硬さが高い(HRB96)ため、被削性が悪く、また焼入れ焼戻し後の硬さ(HRC62程度)も高過ぎるため、焼入れ焼戻し後の変形を修正する加工、例えば放電加工(ワイヤーカット)のための穴開けが困難であるとともに溶接性も十分でないという問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、被削性および溶接性が上記特公昭64─5100号公報に記載されている冷間ダイス鋼より優れているとともに、高温焼入れ焼戻しによって発生する変形を容易に整形加工することができる程度の硬さ(HRC58〜61)を有する冷間金型用鋼を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは、従来の冷間金型用鋼について種々検討したところ、被削性を改善するために快削元素を含有させるとともにC含有量を減少させることが必要であること、低温焼戻しをすると、焼入れ時の応力が残留するとともにオーステナイトが5%以上残留し、放電加工時に割れが発生すること、高温焼戻しをすると高温焼入れ時の残留応力が除去されて安定な組織を得ることができるとともに放電加工による割れを防止することができること、高温焼戻しをしてもC,Cr,MoおよびVのバランスを調整すれば、HRC58〜61の高硬度を得ることができるとの知見を得て本発明をなしたものである。
【0007】
すなわち、本発明の冷間金型用鋼においては、C:0.70〜0.80%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.10〜1.00%、Cr:6.50〜7.50%、MoとWを単独または複合で2Mo+W:1.00〜3.00%、V:0.10〜0.80%、S:0.030〜0.100%、O:0.0050%以下およびN:0.020%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものとすることである。
【0008】
さらに、本発明の冷間金型用鋼においては、C:0.70〜0.80%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.10〜1.00%、Cr:6.50〜7.50%、MoとWを単独または複合で2Mo+W:1.00〜3.00%、V:0.10〜0.80%、S:0.030〜0.100%、Ca: 0.0003〜0.0050%、O:0.0050%以下およびN:0.020%以下を含有し、さらに必要に応じてTe:0.01〜0.06%、Pb:0.03〜0.10%およびBi:0.02〜0.10%のうちの1種または2種以上を含有するものとすることである。
【0009】
【作用】
次に、本発明の成分組成を限定した理由を説明する。
C:0.70〜0.80%
Cは、マルテンサイトの硬さを高め、高温焼戻しにより特殊炭化物を形成して2次硬化に寄与し、さらにCr,Mo,Vと炭化物を形成して耐摩耗性に寄与する元素である。これらの効果を得るためには0.70%以上含有させる必要があるが、0.80%を超えて含有させると焼なまし後の硬さが高くなり過ぎる(HRB96程度)ため、被削性が悪くなり、また高温焼戻し後の硬さが高くなり過ぎて金型の変形を修正する加工が困難になるとともに溶接性も悪くなるので、その含有量を0.70〜0.80%とする。
【0010】
Si:0.10〜0.60%
Siは、脱酸剤としても作用するとともに、高温焼戻し硬さの向上に有効な元素である。これらの効果を得るためには0.10%以上含有させる必要があるが、0.60%を超えて含有させると熱間加工性および靱性が低下するとともに、カーバイト中にSiが入るためカーバイト量が多くなり、被削性が悪くなるので、その含有量を0.10〜0.60%とする。
Mn:0.10〜1.00%
Mnは、脱酸剤としても作用し、また焼入れ性を高めて硬度および強度を向上させる元素である。これらの効果を得るためには0.10%以上含有させる必要があるが、1.00%を超えて含有させると熱間加工性を低下するので、その含有量を0.10〜1.00%とする。
【0011】
Cr:6.50〜7.50%
Crは、焼入れ時に基地中に固溶して焼入性を高めるとともにCr炭化物を形成して耐摩耗性を向上させる元素である。これらの効果を得るためには6.50%以上含有させる必要があるが、7.50%を超えて含有させると焼きなまし後および高温焼戻し後の硬度が高くなり過ぎるとともに、炭化物が粗大になるので、その含有量を6.50〜7.50%とする。
2Mo+W:1.00〜3.00%
MoとWは、焼入れ時に基地に固溶するとともに炭化物を形成して耐摩耗性を向上させ、焼入れ焼戻しにおける軟化抵抗性を高めさせるのに有効な元素である。これらの効果を得るためには2Mo+Wで1.00%以上含有させる必要があるが、3.00%を超えて含有させると熱間加工性および靱性を低下するので、その含有量を2Mo+Wで1.00〜3.00%とする。
【0012】
V:0.10〜0.80%
Vは、基地のオーステナイト結晶粒の粗大化を防止するとともに、微細な炭化物を形成して耐摩耗性および焼入性の向上に寄与する元素である。これらの効果を得るためには0.10以上含有させる必要があるが、0.80%を超えて含有させると熱間加工性および被削性を低下するので、その含有量を0.10〜0.80%とする。好ましくは、0.10〜0.45%である。
S:0.030〜0.100%
Sは、被削性を向上させるために有効な元素である。この効果を得るためには0.030%以上含有させる必要があるが、0.100%を超えて含有させると熱間加工性および靱性を低下するので、その含有量を0.030〜0.100%とする。
【0013】
Ca:0.0003〜0.050%
Caは、MnSに固溶し、また酸化物としてMnSの核となることによりMnSを均一微細に分散させ、靱性の劣化を抑制するとともに被削性を向上させるために含有させる元素で、0.0003%より少ないとその効果がなく、0.050%を超えると靱性が低下するので、その含有量を0.0003〜0.050%とする。
O:0.0050%以下
Oは、不純物であるが、Ca酸化物を形成してMnSが凝固する時の核となり、MnSがコロニー状に晶出するのを防止し、MnSを均一微細に分散させる効果がある元素である。しかし、0.050%を超えるとAl2 O3 ,SiO2 などの介在物を生成し、Caを添加する効果が減少するため被削性および靱性が低下するので、その含有量を0.0050%以下とする。
【0014】
N:0.020%以下
Nは、C、Cr、Mo、V、などと結合して炭窒化物を生成し、結晶粒を微細にするが、0.020%を超えると炭窒化物が多くなり過ぎて被削性および靱性の低下の原因となるので、N:0.020%以下とする。
【0015】
Te:0.01〜0.06%,Pb:0.03〜0.10%,Bi:0.02〜0.10%
Te,PbおよびBiは、被削性を向上させるために有効な元素である。この効果を得るためにはTeを0.010%以上、Pbを0.03%以上、Biを0.02%以上含有させる必要があるが、Teを0.06%、Pbを0.10%、Biを0.10%を超えて含有させると熱間加工性および靱性を低下するので、その含有量を上記のとおりとする。
Cu:0.25%以下,Ni:0.50%以下
CuおよびNiは、原料の屑鉄から混入する不純物であるが、Cuが0.25%以下,Niが0.50%以下であれば本発明の冷間金型用鋼の性質に与える影響が少ないので、その許容含有量を上記のとおりとする。
【0016】
次に、本発明の冷間金型用鋼の製造方法および熱処理方法の一例を説明する。本発明の冷間金型用鋼は、真空誘導溶解炉、真空脱ガス炉、真空ESR、VAR、AOD、取鍋精錬などのO,Nを減少することができ炉などを用いて溶製し、普通の方法で鋳塊、連続鋳造片とし、分塊鍛造または分塊圧延、鍛造または圧延などによって製造することができる。また熱処理は、鍛造若しくは圧延後後再加熱して1030℃付近から空冷して焼入れをし、530℃付近で1時間程度加熱した後空冷して焼戻し、好ましくはこの焼戻しを2回実施することなどによって行うことができる。
また、本発明の冷間金型用鋼は、プレス型、曲げ型、抜き型、絞り型、ダイ、パンチ、転造ダイスなどのに使用することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の冷間金型用鋼の実施例ついて説明する。
下記表1に記載する成分組成の本発明例鋼および比較例鋼を真空誘導溶解炉で溶製して鋼塊を製造し、この鋼塊を分塊鍛造し、その後熱間圧延によって50mm×250mmの平角材を製造した。この熱間圧延時の加工性を評価した結果を下記表2の熱間加工性の欄に記載した。上記角材を860℃で1時間加熱した後炉冷する焼なましをした。この焼なまし(焼鈍)した角材から硬さおよび被削性を測定するための試験片を切り出し、硬さおよび下記の条件でドリルによる被削性を測定した。この結果を下記表2に記載する。
なお、熱間圧延時の加工性の評価方法は、○;疵無し △;一部手直し ×;全面グラインダーにて疵取りである。
【0018】
被削性の試験条件
工具;SKH51、φ5mmドリル
ドリルの送り速度;20m/分(0.10mm/rev)
穴深さ;15mm 切削油;無し
測定条件; ドリルが摩耗して穿孔できなくなるまでの合計穿孔深さ
試験結果の評価方法
○;3000mm以上 △;1000〜<3000mm ×;<1000 mm
【0019】
上記焼なましをした角材から硬さ、シャルピー衝撃試験片、溶接性および放電加工性を測定する試験片を切り出し、1030℃で15分間加熱した後空冷して焼入れをし、530℃で1時間加熱した後空冷する焼戻しを2回行った。
この熱処理を行った試験片の硬さおよびシャルピー衝撃試験値を下記表2に記載する。
また、下記条件での溶接性および放電加工性を測定し、その結果を下記表2に記載する。
【0020】
【表1】
【0021】
溶接性
溶接性の試験条件
溶接方法;TIG手動
予熱方法;バーナー加熱 予熱温度;200℃、300℃、400℃
溶接電流;110〜120A/3相交流
試験結果の評価方法
○;何れ予熱温度でも割れが無し △;割れの長さが30%未満 ×;割れの長さが30%以上
【0022】
放電加工性
放電加工試験
図1に示す形状の試験片に放電加工により図のa,b,cおよびdの寸法で示す形状の孔を明けた場合のひび割れの発生の有無で評価
試験結果の評価方法
○;割れが無し ×;ひび割れが有り
【0023】
【表2】
【0024】
上記結果より、本発明の実施例は、熱間加工性がいずれも手直しをする疵が発生しておらず、焼鈍後の硬さがいずれもHRB92〜93の範囲内であり、被削性がいずれも3000mm以上であった。さらに焼入れ焼戻し後の硬さが何れもHRC59.3〜60.2の範囲内であって、孔明けなどの機械加工が困難なく実施できる程度であった。またシャルピー衝撃値が何れも1.9〜2.3kgm/mm2 の範囲内であって、金型として必要な靱性を有していた。また溶接および放電加工においても割れが発生しなかった。
【0025】
一方、本発明よりO含有量が多い比較例1および本発明よりN含有量が多い比較例2は、いずれも被削性およびシャルピー衝撃値が本発明の実施例より劣っていた。
さらに、本発明よりC含有量が多い比較例3(上記特公昭64─5100号公報に記載されている冷間ダイス鋼)は、焼鈍後の硬さがHRB96と実施例のものより高く、被削性が1000mm以下と劣っており、さらに焼入れ焼戻し後の硬さがHRC92.3であって、孔明けなどの機械加工が困難な硬さであり、また溶接性もやや劣っていた。
また、本発明よりSi含有量が多い比較例4は、被削性が1000mm以下と劣っており、熱間加工性も劣っていた。またシャルピー衝撃値も本発明の実施例よりやや劣っていた。
【0026】
また、本発明よりCr含有量が多い比較例5およびMoが多い比較例6は、シャルピー衝撃値および熱間加工性が、また本発明よりV含有量が多い比較例7は、被削性および熱間加工性が本発明の実施例よりやや劣っていた。
また、本発明よりS含有量が多い比較例8は、シャルピー衝撃値および熱間加工性が、また本発明よりCおよびCr含有量が多く、S含有量が少ない比較例9(上記JIS SKD11)は、被削性および放電加工性が本発明の実施例より劣っており、またシャルピー衝撃値および溶接性もやや劣っていた。
【0027】
【発明の効果】
本発明は、冷間金型用鋼の成分組成を上記の構成にしたことにより、次のような優れた効果を奏する。
(1)焼鈍硬さが適度に低くなるとともに被削性元素を適度に含有させているの
で、被削性が向上する。
(2)高温焼入れ焼戻し後のシャルピー衝撃値を大幅に低下することなく、高温焼入れ焼戻し後の硬さを機械加工が困難なく実施できる程度に低くすることができる。
(3)溶接性、熱間加工性および放電加工性が冷間金型用鋼に必要な条件を満たしたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】放電加工試験の試験片および試験で明ける穴の形状を示す斜視図である。
Claims (3)
- 重量%で(以下同じ)、C:0.70〜0.80%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.10〜1.00%、Cr:6.50〜7.50%、MoとWを単独または複合で2Mo+W:1.00〜3.00%、V:0.10〜0.80%、S:0.030〜0.100%、O:0.0050%以下およびN:0.020%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする冷間金型用鋼。
- C:0.70〜0.80%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.10〜1.00%、Cr:6.50〜7.50%、MoとWを単独または複合で2Mo+W:1.00〜3.00%、V:0.10〜0.80%、S:0.030〜0.100%、Ca:0.0003〜0.0050%、O:0.0050%以下およびN:0.020%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする冷間金型用鋼。
- C:0.70〜0.80%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.10〜1.00%、Cr:6.50〜7.50%、MoとWを単独または複合で2Mo+W:1.00〜3.00%、V:0.10〜0.80%、S:0.030〜0.100%、Ca:0.0003〜0.0050%、O:0.0050%以下およびN:0.020%以下を含有し、さらにTe:0.01〜0.06%、Pb:0.03〜0.10%およびBi:0.02〜0.10%のうちの1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする冷間金型用鋼。
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