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JP4248743B2 - シリコン溶湯の精製方法 - Google Patents
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、たとえば太陽電池用に適する程度の高純度シリコンを得るためのシリコン精製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近い将来に予想されるエネルギ危機に対処する新しいエネルギ源として、また、地球環境を悪化させることのないクリーンなエネルギ源として、太陽光発電は世界的に期待されている。日本においては、国の助成策もあって、住宅用の太陽光発電設備を中心とした太陽電池の生産は、近年では年率で10%以上の伸びを示している。太陽電池のコストを下げて広くその普及を図るため、光エネルギから電気エネルギへの変換効率の向上などのように種々の技術開発がなし遂げられつつある。しかし、古くから叫ばれて取り組まれてきた技術課題として、太陽電池に使用する半導体としての原料問題がある。半導体集積回路用原料としてのシリコンは極めて高純度であることを必要とし、現在では、その大部分がシーメンス法によって製造されている。シーメンス法では、99%純度のシリコンを原料としてトリクロロシランガスを作り、これを蒸留精製によって純度の高いガスにした後に、水素ガスを使用する還元析出処理によって極めて高純度のシリコンを製造する。このような高純度のシリコンは太陽電池用の原料としては過剰な品質(過剰な高純度)を有していてコストも高いので、太陽電池用のシリコンの多くは半導体集積回路用シリコンの製造工程(単結晶引上げ工程)で生じる端材が使用されてきた。
【0003】
他方、シーメンス法に代わるべき低コストの太陽電池用級純度のシリコン(SOG−Si)の製造技術の開発研究が、1980年頃から現在に至るまで続けられている。冶金学的には、シリコン中のFeやAlなどの金属不純物元素は、液相シリコン中を基準にした固相シリコン中の平衡分配係数が極めて小さい。したがって、溶融シリコンを一方向に徐冷凝固させることによって金属不純物元素が融液中に排出され、固相シリコンからその不純物が効率的に除去され得ることがわかっている。しかし、非金属の軽元素不純物であるBとPは、シリコン中のそれらの平衡分配係数がそれぞれかなり大きな0.8と0.35であるので、固液分配による除去が困難になっている。これらの不純物のうちで、Pについては真空溶解によって蒸発させて除去することが可能であるが、Bの除去についてはSOG−Si製造技術の最大の課題となっている。
【0004】
Bの除去技術のヒントはTheuererの実験結果(Journal of Metals, October 1956,pp.1316−1319)によって与えられ、加湿水素ガス雰囲気中でシリコンを帯融精製処理することによってB除去効果が得られるとされている。
【0005】
このTheuererの実験結果をもとにして、水素と水蒸気を含む不活性ガスをシリコン溶湯中に吹き込んでBを除去する方法が、米国特許第4,097,584号、米国特許第5,972,107号、および特開平4−193706などに開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの方法のいずれの1つも工業化されるに至っていない理由として、本発明者らの実験から明らかになった2つの事実が挙げられる。その1つはいずれの方法においてもBの減少速度が小さいことであり、もう1つはシリコン溶湯中へのガス吹き込みによるシリコン液滴のスプラッシュ(飛び散り)によってシリコンの歩留まりが低下することである。シリコン溶湯のバブリング処理時のスプラッシュは、シリコン融液の物理的性質に起因するのか予想以上に大きい。飛散したシリコン液滴はシリカなどのるつぼ壁や処理槽の天井部に付着し、精製処理後のシリコン歩留まりを低下させるとともに、処理槽のメンテナンスを難しくさせる。
【0007】
そこで、本発明は、水蒸気と水素を含む処理ガスとシリコン溶湯との反応によるシリコン中のB除去速度を高めるとともに、シリコン融液のスプラッシュを起こすことなくその処理ガスとシリコン溶湯との反応が進行し得るようにすることを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によるシリコン溶湯の精製方法においては、処理槽内のシリコン溶湯を強制攪拌しつつ、その溶湯液面上に水蒸気と水素を含む処理ガスを吹き込み、シリコン溶湯は回転する羽車によって強制攪拌され、処理ガスは羽車の回転軸とこれを覆う外管との隙間を通して吹き込まれることを特徴としている。この処理ガスは、シリコン溶湯の液面直下に上方から吹き込まれてもよい。
【0009】
リコン溶湯中にバッフル板を挿入することによって、強制攪拌されたシリコン溶湯中に乱流を生じさせることができ、これによって処理ガスとシリコン溶湯との反応をより高めることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
Theuerer(Journal of Metals, October 1956,pp.1316−1319)によれば、加湿水素ガスと帯融シリコンとの反応によって帯融シリコン中のBが蒸発物質(この蒸発物質は特定されていない)となって除かれて減少する。このような気液間の反応効率を高めるためには気液界面の面積を大きくすることが望まれ、上述の複数の特許文献におけるように、処理ガスを気泡にしてシリコン溶湯中に吹き込むシリコン精製方法が提案されてきた。すなわち、処理ガスと反応して蒸発ガスの成分となったBは気相成分として液相シリコンから抜け出すので、気液界面の近傍におけるシリコン中のB濃度が減少する。
【0011】
しかし、溶融シリコン中のB原子の移動が主に拡散による場合、気液界面へのB原子の移動に時間がかかるので、気泡の微細化によって気液界面面積を大きくしても、脱B速度が期待されるほどには向上しない。したがって、脱B速度向上のためには、液相シリコンの攪拌が望まれる。ここで、従来では液相中にガスを吹き込むバブリングによって液の流動が起こるので、バブリング方法自体が液の攪拌作用を有すると考えられていた。しかし、実際にはバブリング時においても人為的な強制的攪拌を併用することによって脱B速度が顕著に向上することが、初めて本発明者たちによって見出された。
【0012】
また、バブリング処理時においては、溶融シリコンの液相としての物理的性質に起因するのか予想以上にシリコン液滴の飛散が多く、シリカなどのるつぼ壁や処理槽の天井部に飛散したシリコン液滴の付着が起こる。このように付着して凝固したシリコンを剥がし取ることは難しいので、本発明者たちはスプラッシュを生じさせることなく気液反応を活用する方法を考えた。そして、シリコン溶湯面直上に処理ガスを吹き付ける方法はスプラッシュを生じさせず、シリコン溶湯面直下に上方から処理ガスを吹き込む方法ではそれによるスプラッシュの程度が実質的に処理後のシリコン歩留まりを低下させることがなくて、処理槽のメンテナンスを妨げることにならないことがわかった。このような気液反応方法と液相の強制的攪拌との組合せによって、シリコン溶湯中のBの減少速度を高めることが可能となった。
【0013】
図1、図2、および図3は、本発明によるつの実施形態および本発明に密接に関連する1つの参考形態の例をそれぞれ説明するために、シリコン精製装置の模式的断面図を示している。なお、本願の各図において、同一符号は同一部分または相当部分を表わしている。
【0014】
図1および図2に示されたシリコン精製装置は、電磁誘導加熱装置4を含むシリコン溶解炉、シリコン溶湯12を強制攪拌するために回転軸6に取付けられた羽車(インペラ)7、処理ガスをシリコン溶湯液面上または液面直下に上方から吹き込むために回転軸6と同軸でそれを覆う外管8、シリコン溶湯12の強制攪拌効果を高めるために乱流を生じさせる細長いバッフル板9、および処理済みの廃ガスを溶解炉から排出する排出管11を備え、シリコン溶湯を取り囲む雰囲気は気密性が保たれている。
【0015】
溶解炉では、アルミナのような耐火材3の内側に黒鉛製の保護るつぼ1が設置され、さらにその内側にシリカるつぼ2が設置されている。シリカるつぼ2内に装入された原料シリコンは、不活性ガスの雰囲気中で電磁誘導により加熱される黒鉛るつぼ1から生じる熱で溶解してシリコン溶湯12になる。その後、シリコン溶湯12は導電性を有するので電磁誘導によって直接加熱を受けることができ、所定の精製処理温度に保持される。
【0016】
シリコン精製に用いられる処理ガスは、シリコン溶湯12を強制攪拌する羽車(インペラ)7を回転するシャフト6とこれを覆う外管8との隙間を通って処理ガス吹き出し口13に至り、溶湯面上の上方から(図1)または溶湯面直下の位置へ上方から(図2)吹き出される。羽車7を回転するシャフト6と処理ガス通路を構成するための被覆管8は一体化されており、同時に上下に昇降し得る。このような強制攪拌装置および処理ガス吹き込み装置は、黒鉛や窒化珪素などの耐火材料で作製され得る。
【0017】
転羽車7による溶湯強制攪拌効果は黒鉛などの耐火材料で作製され得るバッフル板9の使用による溶湯乱流の生成によって高められ、シリコン溶湯12中の気液反応によるBの除去速度が高められ得る。気液反応後の廃ガスはガス排出管11から排出されるが、排出管11からの減圧吸引によって処理槽内を減圧雰囲気に保持することも可能である。
【0018】
本発明に密接に関連する参考形態としての図3においてはシリコン溶湯12の強制攪拌のためにローレンツ力を使用するための回転磁界発生コイル16が配置され、これは図示されていない回転磁界発生用三相交流変圧器に接続されている。このコイル16を使用するために、シリコンの加熱溶解方法としては抵抗発熱体15が使用される。加熱溶解されたシリコン溶湯12はローレンツ力によって回転運動するように強制攪拌されるが、バッフル板9による乱流作用によって溶湯の上下方向の強制攪拌も加わり、より強い強制攪拌力が得られる。シリコン溶湯面に対しては、ガス吹き込み管14から処理ガスがその溶湯面直上に吹き付けられる。気液反応後の廃ガスはガス排出管11から排出されるが、前述のように排出管11からの減圧吸引によって処理槽内を減圧雰囲気に保持することも可能である。
【0019】
(実施例1)
図1に示されたシリカるつぼ2内において、7ppmのBが添加された半導体集積回路用級高純度シリコン(SEG−Si)の3kgが装入された。その精製装置内をAr+3%H2+3%H2Oガス雰囲気にし、電磁誘導コイル4による黒鉛保護るつぼ1の発熱によってそのシリコンが溶融させられた。1480℃に保持されたシリコン溶湯12中へ強制攪拌用のインペラ7とバッフル板9を天井部から降下させて挿入し、処理ガス吹き出し口13を溶湯面直上にセットした。その後、処理ガスとしてAr+3%H2+3%H2Oガスを2(l/min)の流量率で吹き出し口13から溶湯面に向けて吹き付けながら、強制攪拌用インペラ7を300rpmの速度で回転させ、この処理が2時間続けられた。処理後のシリコン中のB濃度を分析したところ、3.5ppmまで減少していた。なお、この精製処理中に、シリコン液滴の飛び跳ねは生じなかった。
【0020】
(実施例2)
図2に示されたシリカるつぼ2内において、7ppmのBが添加されたSEG−Siの3kgが装入された。その精製装置内をAr+3%H2+3%H2Oガス雰囲気にし、電磁誘導コイル4による黒鉛保護るつぼ1の発熱によってそのシリコンが溶融させられた。1480℃に保持されたシリコン溶湯12中へ強制攪拌用のインペラ7とバッフル板9を天井部から降下させて挿入し、処理ガスを吹き出し口13から吹き出しながら、その吹き出し口13を上方から溶湯面直下にセットした(僅かにバブリングが生じる程度)。そして、処理ガスとしてAr+3%H2+3%H2Oガスを2(l/min)の流量率で吹き出し口13から吹き出しながら、強制攪拌用インペラ7を300rpmの速度で回転させ、この処理が2時間続けられた。その処理後のシリコン中のB濃度を分析したところ、3.0ppmまで低下していた。なお、この精製処理中において、溶融シリコンの飛び跳ねは僅かであった。
【0021】
参考例1
本発明に密接に関連する参考例1では、図3に示されたシリカるつぼ2内において、7ppmのBが添加されたSEG−Siの3kgが装入された。その精製装置内をAr+3%H2+3%H2Oガス雰囲気にし、黒鉛ヒータ15によってシリコンを溶融させて1480℃に保持した。そして、コイル16に三相交流電流を供給して5000エルステッドの回転磁界を発生させつつ、Ar+3%H2+3%H2Oガスを2(l/min)の流量率でシリコン溶湯面に吹き付けながら、2時間の精製処理が続けられた。その処理後のシリコン中のB濃度を分析したところ、4.0ppmまで低下していた。なお、この精製処理中に、シリコン液滴の飛び跳ねは生じなかった。
【0022】
(実施例
バッフル板9が使用されなかったこと以外は実施例1と同一の条件の下で、2時間の精製処理が行なわれた。その処理後におけるシリコン中のB濃度を分析したところ、4.2ppmまで低下していた。なお、この精製処理中において、シリコン液滴の飛び跳ねは生じなかった。
【0023】
(比較例1)
図4において、比較例1として強制攪拌のないシリコン溶湯面に処理ガスを吹き付ける方法が模式的断面図で示されており、図1や図2におけるような加熱炉構造は省略されて示されている。この比較例1においては、強制攪拌のないことを除けば参考例1と同一の条件の下で、2時間の精製処理が続けられた。その処理後のシリコン中におけるB濃度を分析したところ、6.3ppmまでしか低下していなかった。なお、この精製処理中において、シリコン液滴の飛び跳ねは生じなかった。
【0024】
(比較例2)
図5において、比較例2として強制攪拌のないシリコン溶湯12内に処理ガスを吹き込んでバブリングさせる方法が模式的断面図で示されており、図1や図2におけるような加熱炉構造は省略されて示されている。この比較例2においては、強制攪拌することなく処理ガスがシリコン溶湯12内深くに吹き込まれてバブリングさせたことを除けば参考例1と同一の条件の下で、2時間の精製処理が続けられた。その処理後におけるシリコン中のB濃度を分析したところ、5.3ppmまでしか低下していなかった。なお、この精製処理中においてはシリコン液滴の飛び跳ねが多く、シリカるつぼ2の内面はいうまでもなく精製装置の天井部まで達していた。
【0025】
【発明の効果】
以上のように、本発明の方法によれば、水蒸気と水素を含む処理ガスによるシリコン溶湯の脱Bのための精製において、シリコン溶湯からのシリコン液滴の飛び跳ねを生じることなく従来に比べて効率的な精製が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるシリコン溶湯の精製方法において用いられ得る精製装置の一例を示す模式的な断面図である。
【図2】 本発明によるシリコン溶湯の精製方法において用いられ得る精製装置の他の例を示す模式的な断面図である。
【図3】 本発明に密接に関連するシリコン溶湯の精製方法において用いられ得る精製装置の例を示す模式的な断面図である。
【図4】 比較例としてのシリコン溶湯の精製方法を説明するための模式的な断面図である。
【図5】 もう1つの比較例としてのシリコン溶湯の精製方法を説明するための模式的な断面図である。
【符号の説明】
1 黒鉛製の保護るつぼ、2 シリカるつぼ、3 アルミナ質耐火材、4 電磁誘導コイル、5 炉殻、6 回転軸、7 羽車(インペラ)、8 回転軸を覆う外管、9 バッフル板、10 天井板、11 処理済みガス排出管、12 シリコン溶湯、13 処理ガス吹き出し口、14 処理ガス吹き込み管、15 抵抗発熱体、16 回転磁界発生用コイル。

Claims (3)

  1. 処理槽内のシリコン溶湯を強制攪拌しつつ、その溶湯液面上に水蒸気と水素を含む処理ガスを吹き込むシリコン溶湯の精製方法であって、
    前記シリコン溶湯は回転する羽車によって強制攪拌され、
    前記処理ガスは前記羽車の回転軸とこれを覆う外管との隙間を通して吹き込まれることを特徴とするシリコン溶湯の精製方法。
  2. 処理槽内のシリコン溶湯を強制攪拌しつつ、その溶湯の液面直下に水蒸気と水素を含む処理ガスを上方から吹き込むシリコン溶湯の精製方法であって、
    前記シリコン溶湯は回転する羽車によって強制攪拌され、
    前記処理ガスは前記羽車の回転軸とこれを覆う外管との隙間を通して吹き込まれることを特徴とするシリコン溶湯の精製方法。
  3. 前記シリコン溶湯中にバッフル板が挿入されており、前記強制攪拌されたシリコン溶湯はこれによって乱流を生じることを特徴とする請求項1または2に記載のシリコン溶湯の精製方法。
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