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JP4257969B2 - コガネムシ科昆虫の生育抑制又は殺虫活性を有するポリペプチド及びそれをコードするポリヌクレオチド - Google Patents
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JP4257969B2 - コガネムシ科昆虫の生育抑制又は殺虫活性を有するポリペプチド及びそれをコードするポリヌクレオチド - Google Patents

コガネムシ科昆虫の生育抑制又は殺虫活性を有するポリペプチド及びそれをコードするポリヌクレオチド Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コガネムシ科昆虫に対し生育抑制あるいは殺虫活性を有するポリペプチド、それをコードするポリヌクレオチド、該ポリペプチドを有効成分とするコガネムシ科昆虫の防除剤、及び該ポリペプチドを用いるコガネムシ科昆虫の防除方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コガネムシ科昆虫の幼虫は、芝や農作物や園芸作物及び樹木等の広範な植物の根を食餌し、これらに深刻な被害をもたらす。中でもドウガネブイブイ、セマダラコガネ、マメコガネによる被害はゴルフ場の芝やサツマイモ畑及び落花生畑において数多く報告されており、とりわけ大型なドウガネブイブイはその旺盛な食欲ゆえ甚大な被害を及ぼしている。
【0003】
しかし、従来の化学農薬による地上散布では、これらの幼虫が地中に棲息していることから存在位置が特定しにくいため防除効果を得にくく、地表に広範囲に多量の化学農薬を散布し、地中に農薬を浸透させる必要があった。そのため、自然環境や人体に対し悪影響を及ぼす懸念があり、化学農薬を代替しうる生物的防除方法が切望されていた。
【0004】
生物的防除方法の一つとして、コガネムシ科昆虫の駆除にバチルス・ポピリエ(Bacillus popilliae)に属する菌を利用しようとする試みが古くから行われてきた。該菌はコガネムシ科昆虫の幼虫を寄生宿主とし、通常胞子嚢の形態で経口的に感染し、血リンパ中で大量に増殖、乳化病を引き起こして最終的に幼虫を死に至らしめる。
【0005】
最近、バチルス・ポピリエに属する菌株、バチルス・ポピリエ・メロロンサH1(Bacillus popilliae subsp. melolonthae H1)のパラスポラルボディを構成するポリペプチドのアミノ酸配列及びそれをコードするポリヌクレオチド塩基配列が一部明らかにされ(J. Bacteriol. vol.179 p.4336-4341(1997))、バチルス・ポピリエ・メロロンサH1のパラスポラルボディを構成するポリペプチドは、コフキコガネ(Melolontha melolontha)に対して防除効果を示すことが報告されている(WO97/14798号公報)。しかし、該菌株及びそのポリペプチドが、種の異なるドウガネブイブイ(Anomala cuprea)、セマダラコガネ(Blitopertha orientalis)及びマメコガネ(Popillia japonica)に対して防除効果を呈するか明らかにされていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、コガネムシ科昆虫、特にドウガネブイブイ、セマダラコガネ及びマメコガネの生育抑制又は殺虫活性を有するポリペプチド、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを導入した形質転換体、該ポリペプチドを有効成分とするコガネムシ科昆虫の防除剤、該ポリペプチドとバチルス・ポピリエの胞子嚢とを用いるコガネムシ科昆虫の防除剤、及び該防除剤を用いるコガネムシ科昆虫の防除方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、バチルス・ポピリエに属する特定の菌株の胞子嚢がコガネムシ科昆虫の生育抑制又は殺虫活性を有することを見出し、次いで、胞子とパラスポラルボディとを含むバチルス・ポピリエの胞子嚢(図1)からパラスポラルボディを取り出し、さらにパラスポラルボディを構成するポリペプチドに対する抗体を用いたスクリーニングにより該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを単離し、その塩基配列とアミノ酸配列を決定するに至った。ベクターを利用して該ポリヌクレオチドを導入した形質転換体により前記ポリペプチドの大量生産を可能にした。更に、形質転換体で生産した該ポリペプチドに、ドウガネブイブイの防除効果があることを明らかにし、更に胞子嚢と併用することにより防除効果が増強されることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列を有することを特徴とするポリペプチドを提供するものである。
また本発明は、配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸残基の置換、欠失、もしくは挿入を含むアミノ酸配列を有し、かつ、コガネムシ科昆虫の生育抑制又は殺虫活性を有することを特徴とするポリペプチドを提供するものである。
【0009】
また本発明は、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供するものである。
また本発明は、前記ポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを含むベクターが導入された形質転換体を提供するものである。
【0010】
また本発明は、前記ポリペプチドを有効成分として含むコガネムシ科昆虫防除剤を提供するものである。
また本発明は、前記ポリペプチドとバチルス・ポピリエに属する菌の胞子嚢とを有効成分とするコガネムシ科昆虫防除剤を提供するものである。
また本発明は、前記コガネムシ科昆虫防除剤をコガネムシ科昆虫に作用させるコガネムシ科昆虫の防除方法を提供するものである。
【0011】
本発明において「ポリペプチド」とは、複数のアミノ酸がペプチド結合により連結したペプチド、並びに糖タンパク質等、他の分子が結合したポリペプチド、及び多量体構造をとるタンパク質等を含む。
【0012】
【発明の実施の形態】
バチルス・ポピリエに属する菌の胞子嚢に含まれるパラスポラルボディ(図1)はタンパク質性の凝集体であり(福原俊彦著、昆虫病理学、57頁、1979年)、該凝集体は1種類あるいは複数種のポリペプチドによって構成されている。本発明のポリペプチドは後述するバチルス・ポピリエ・セマダラ等の胞子嚢中のパラスポラルボディを構成するポリペプチドの1つ又はそれ以上であるが、WO97/14798号公報に記載されたパラスポラルボディを構成するポリペプチドとはアミノ酸配列が異なっており、本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドは新規であると判断される。
【0013】
本発明のポリペプチドは、配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列を有し、かつ、コガネムシ科昆虫に対し生育抑制又は殺虫活性を有するポリペプチドである。
【0014】
上記の本発明のポリペプチドは、コガネムシ科昆虫に対し生育抑制又は殺虫活性を有する限り、1又は数個のアミノ酸残基の置換、欠失、もしくは挿入を含むポリペプチドであってもよい。ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のポリペプチドの立体構造における位置や種類によっても異なるが、具体的には2から100個、好ましくは2から50個、より好ましくは2から9個である。これらの1又は数個のアミノ酸残基の置換、欠失、もしくは挿入を含むポリペプチドは、例えば該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに部位特異的変異によって変異を導入し、転写、翻訳することによって得ることができる。また、これらの本発明のポリペプチドは、他のポリペプチドとの融合ポリペプチドであってもよい。また、本発明のポリペプチドは、コガネムシ科昆虫に対し生育抑制又は殺虫活性を有する限り、上記アミノ酸配列と50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上の相同性を示すアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもよい。更に、本発明のポリペプチドは、コガネムシ科昆虫に対し生育抑制又は殺虫活性を有する限り、配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列の一部を有するポリペプチドであってもよい。
【0015】
本発明のポリヌクレオチドは、上記本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。コードされるアミノ酸配列が同一であれば、それぞれのアミン酸残基のコドンは特に制限されない。本発明のポリヌクレオチドとして具体的には、配列番号1又は3で示される塩基配列のうちそれぞれのコード領域の塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。配列番号1で示される塩基配列におけるコード領域は、塩基番号250〜4245であり、配列番号3で示される塩基配列におけるコード領域は、塩基番号224〜4255である(但し、終止コドンを除く)。
【0016】
本発明のポリヌクレオチドは、コガネムシ科昆虫に対し生育抑制又は殺虫活性を有するポリペプチドをコードする限り、前記の各ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであってもよい。
【0017】
本発明のポリヌクレオチドは、例えばバチルス・ポピリエに属する菌、更に具体的にはバチルス・ポピリエ・セマダラ(Bacillus popilliae semadara, FERM BP-8068)、バチルス・ポピリエ・マメ(Bacillus popilliae var. popilliae Mame, FERM BP-8069)、バチルス・ポピリエ・ヒメ(Bacillus popilliae var. popilliae Hime, FERM P-17660)、バチルス・ポピリエ・サクラ(Bacillus popilliae var. popilliae Sakura, FERM P-17662)、バチルス・ポピリエ・デュトキ(Bacillus popilliae Dutky, American Type Culture Collection No.14706)から以下の方法により取得できる。
前記バチルス・ポピリエ・セマダラ(FERM BP-8068)は、平成10年5月21日に、工業技術院生命工学工業技術研究所(現 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)に受託番号FERM P-16818で寄託され、平成14年5月21日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-8068が付与されている。また、バチルス・ポピリエ・マメ(FERM BP-8069)は、平成11年11月25日に、工業技術院生命工学工業技術研究所(現 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)に受託番号FERM P-17661で寄託され、平成14年6月10日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-8069が付与されている。
【0018】
取得方法の一つとして、抗体を利用したスクリーニング法が挙げられる。予め精製したパラスポラルボディに対する抗体を作製しておく。一方で前記菌株の染色体DNAを採取し、適当な制限酵素で切断した後、発現ベクターに挿入して染色体DNAライブラリーを作製する。次に大腸菌等で該ライブラリーを展開し、これと上記抗体とを利用したウェスタンブロッティングによりスクリーニングを行う。
【0019】
別の取得方法として、PCR法が挙げられる。配列番号7、8の塩基配列もしくはそれらに修飾を加えた塩基配列、又は配列番号1、3の一部の塩基配列、の中から適当なものを選択し、互いに逆方向のポリヌクレオチドを2種類用意する。該ポリヌクレオチドをプライマーとし、染色体DNAを鋳型としたPCRを行う。増幅したDNA断片をクローニングすることで本発明のポリヌクレオチドを取得することができる。
【0020】
尚、上記配列番号7、8のそれぞれの塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとし、バチルス・ポピリエ・セマダラ(Bacillus popilliae semadara)の染色体DNAを鋳型とするPCRによって、配列番号1に示す塩基配列を有する約4.2kbのポリヌクレオチド増幅断片が得られる。これらポリヌクレオチドの塩基配列はバチルス・ポピリエ・セマダラの染色体DNA上に隣接して存在していること、及び、該ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号2及び4)は互いに約73%の相同性を有していることから、両者は類似の機能を有していることが強く示唆される。
【0021】
更に別の取得方法として、ハイブリダイゼーション法が挙げられる。染色体DNAを適当な制限酵素などで切断後、プラスミドベクターやファージベクターなどを利用してゲノムライブラリーを作製する。一方では配列番号7、8の塩基配列もしくはそれらに修飾を加えた塩基配列、又は配列番号1、3の一部の塩基配列を有する適当なポリヌクレオチドプローブを用意する。ベクターを用いて大腸菌等で作製したライブラリーから、標識したプローブでスクリーニングするコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションにより本発明のポリヌクレオチドを取得することができる。
【0022】
本発明で使用されるベクターとしては、プラスミドベクター、Tiプラスミドベクター、ファージベクター、ファージミドベクター、YACベクター、ウイルスベクター等が挙げられる。これらベクターには本発明のポリヌクレオチドの他に、ポリペプチドの発現を調節・補助する配列(例えば、プロモーター、オペレーター、ターミネーター、エンハンサー、SD配列)や形質転換宿主を選抜するための遺伝子マーカー(例えば、アンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子)などを含んでいても良い。また、このベクターは本発明のポリヌクレオチドを複数種類、あるいは同一種を複数個含んでいても良い。
【0023】
本発明で使用される宿主としては、微生物(例えば、大腸菌やシュードモナスやバチルスのような細菌類、ストレプトマイセスのような放線菌類、カビや酵母のような真菌類)、植物(例えば、シバ、サツマイモ、タバコ、イネ、トウモロコシ)、培養細胞(例えば、タバコ培養細胞のような植物培養細胞、カイコガ培養細胞のような昆虫培養細胞、マウス培養細胞のような動物培養細胞)などが挙げられる。
【0024】
本発明におけるベクターの構築手順、及び該ベクターによる宿主の形質転換操作は、遺伝子工学の分野で慣用されている方法が使用できる。例えば形質転換の方法としては、微生物宿主に対しては塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法、PEG法などが挙げられ、培養細胞及び植物宿主に対してはエレクトロポレーション法、パーティクルガン法、アグロバクテリウム法などが挙げられる。
【0025】
本発明のポリペプチドの製造方法として、例えば宿主が微生物や培養細胞などの場合、これを適当な培地で培養し、その培養物から回収することが可能である。形質転換された宿主の培養方法は、使用される宿主の培養方法と本質的に同様であってよい。培養物からポリペプチドを抽出、精製する必要がある場合は通常用いられる方法によって行うことができる。一方、宿主が植物の場合、形質転換植物を通常と同様の方法にて栽培し、植物体からポリペプチドを抽出することができる。また、別の視点から捉えれば形質転換植物及びその種子はそのまま耐虫性の栽培種として提供することが可能である。その他、形質転換体を使わない製造方法もある。例えば、小麦胚芽抽出物や大腸菌抽出物などを利用したin vitro無細胞転写・翻訳系である。本発明のポリヌクレオチドを含むDNA断片あるいはRNA断片あるいはベクターを転写・翻訳系に添加し、常法に従ってポリペプチドを生産することができる。
【0026】
本発明のポリペプチドはコガネムシ科昆虫、特に幼虫に対する生育抑制あるいは殺虫活性を有し防除効果を示す。このため該ポリペプチドはコガネムシ科昆虫を防除する目的で防除剤あるいはその有効成分として、芝、農園芸用作物又は樹木等に施用することができる。また、本発明のポリペプチドをバチルス・ポピリエに属する菌の胞子または胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢と併用することで、さらにコガネムシ科昆虫に対する生育抑制または殺虫活性を増大させることができる。
【0027】
本発明のポリペプチドの防除対象コガネムシ科昆虫としては、ドウガネブイブイ(Anomala cuprea)、セマダラコガネ(Blitopertha orientalis)、マメコガネ(Popillia japonica)、ウスチャコガネ(Phyllopertha diversa)、チャイロコガネ(Adoretus tenuimaculatus)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)等が挙げられ、これらのうち本発明のポリペプチドは特にドウガネブイブイ(Anomala cuprea)、セマダラコガネ(Blitopertha orientalis)の防除に有効である。
【0028】
本発明の防除剤は、上記製造方法にて生産したポリペプチドを形質転換体のまま、あるいは単離して精製物として使用してもよいし、これらと培養・反応系の物質との混合物として用いてもよい。また、農薬に用いられる公知慣用の賦形剤、担体、栄養剤、安定化剤などを添加し、粉剤、水和剤、フロアブル剤など任意の剤型にして使用してもよい。
【0029】
上記任意成分としては、固体担体として、カオリンクレー、ベントナイト、モンモリロナイト、珪藻土、酸性白土、タルク類、パーライト、バーミキュライト等の鉱物質微粉末、硫酸アンモニウム、尿素、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機塩、フスマ、キチン、多糖類、米糠、小麦粉等の有機物微粉末等を、また、補助剤として、カゼイン、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸、糖類、合成高分子(ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸類等)、ベントナイト等の固着剤や分散剤、その他の成分としてプロピレングリコール、エチレングリコール等の凍結防止剤、キサンタンガム等の天然多糖類、ポリアクリル酸類等の増粘剤を挙げることができる。
【0030】
防除剤に含まれる本発明のポリペプチドの含有割合は、コガネムシ科昆虫に対して防除効果を呈する範囲であれば特に限定されないが、0.0001〜100質量%が好ましい。
【0031】
施用の方法としては、剤型等の使用形態、作物等によって適宜選択され、例えば、地上液剤散布、地上固形散布、空中液剤散布、空中固形散布、施設内施用、土壌混和施用、土壌潅注施用等の方法を挙げることができる。
【0032】
また、他の薬剤、すなわち殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、除草剤、殺菌剤、植物生長調節剤、肥料、又は土壌改良資材(泥炭、腐植酸資材、ポリビニルアルコール系資材等)等と混合して施用、あるいは混合せずに交互施用、または同時施用することも可能である。
【0033】
本発明の防除剤の施用量は、コガネムシ科昆虫の種類、適用植物の種類、剤型等によって異なるため一概には規定できないが、例えば、地上散布する場合、ポリペプチドペプチドの施用量が、0.01〜100g/m2、好ましくは0.1〜50g/m2程度となるようにすればよい。
【0034】
更に、本発明の防除剤と他の生物農薬や微生物由来ポリペプチド(例えばバチルス・ポピリエの別菌株のパラスポラルボディやバチルス・チューリンゲンシスのパラスポラルボディ)や微生物胞子(例えばバチルス・ポピリエやバチルス・チューリンゲンシスやバチルス・ズブチリスの胞子)を混合して用いることも可能である。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
ドウガネブイブイの乳化病感染幼虫より調製したバチルス・ポピリエの胞子嚢懸濁液をフレンチプレス処理し、胞子嚢から胞子とパラスポラルボディとを取り出した。デキストラン硫酸ナトリウム(Sodium Dextran Sulfate、SIGMA社製)、ポリエチレングリコール6000(Polyethylene Glycol 6000、和光純薬社製)及びNaClを用いた二層分配法によりパラスポラルボディのみを回収し、これを0.1M NaOHで可溶化した後、SDS-PAGEに供した。約135kDのバンドを切り出し、細かく砕いた後、アジュバントと混合して皮内注射することによりウサギを免疫した。
【0037】
抗体を用いてパラスポラルボディを構成するポリペプチド遺伝子クローンをスクリーニングする際のバックグラウンドを低減するため、得られた抗血清に対して、大腸菌破砕物を用いた吸収操作を3回繰り返し行い、大腸菌自体に吸着する抗体を除去して、目的とするパラスポラルボディを構成するポリペプチドに吸着する抗体のみを採取した。
【0038】
(実施例2)
バチルス・ポピリエ・セマダラ(Bacillus popilliae semadara)の菌体から常法により染色体DNAを採取し、制限酵素EcoRIで切断した。これをフォスファターゼ処理したpBluescript SK(+)とライゲーションし、大腸菌DH5αを形質転換した。LB寒天培地上にコロニーが2000〜3000個出るように塗布した。
【0039】
ニトロセルロースメンブレンを寒天培地に密着させ、コロニーを写し取り、メンブレンのコロニー面を上にして新たな寒天培地に乗せて37℃で2時間インキュベートした。メンブレン上の菌体を溶菌させる目的で以下の操作を行った。10% SDSを染み込ませた濾紙上にメンブレンを移し5分間放置、次に0.2M NaOH, 0.15M NaCl, 1% β-メルカプトエタノールを染み込ませた濾紙上に5分間放置、最後に0.15M NaCl, 0.5M Tris-HCl pH7.5を染み込ませた濾紙上に10分間放置した。メンブレンを除菌緩衝液(0.1M Tris-HCl pH7.8, 0.15M NaCl, 5mM MgCl2, 40μg/ml リゾチーム, 5% スキムミルク)に移し、2時間振盪して菌体を除去した。
【0040】
メンブレンをTBST(0.02M Tris-HCl pH7.2, 0.5M NaCl, 0.05% Tween20)で5分間洗浄した後、抗体希釈液(5% スキムミルクを含むTBST)で8000倍に希釈した抗パラスポラルボディ抗血清液中で1.5時間振盪した。TBSTで10分間、3回洗浄後、2000倍に希釈したAnti-Rabbit IgG(H&L)、HRP-Linked(New England Biolabs, Inc.製)液中に移した後、HRP用発色基質(4CN, NEN Life Science Products社製)中で発色が見られるまでインキュベートした。
【0041】
強い発色、即ち抗パラスポラルボディ抗血清が吸着した箇所付近のコロニーを一つ一つマスタープレートから採取し、これらについて前述と同様操作の二次スクリーニングを行い陽性クローンを取得した。
【0042】
得られた陽性クローンからプラスミドを採取し、常法に従いインサート部分の塩基配列を決定したところ、バチルス・ポピリエのパラスポラルボディを構成するポリペプチド遺伝子2つ(配列番号1及び3、各々翻訳したものが配列番号2及び4)を単一のクローン化断片中に含んでいることが判明した。配列番号2に示すアミノ酸配列及び配列番号4に示すアミノ酸配列は、互いに約73%の相同性を有していた。但し、相同性検索には、遺伝情報処理ソフトウェアGENETYX-WIN(Software Development Co.,Ltd.)を使用した。
【0043】
(実施例3)
前記陽性クローンのプラスミドをテンプレートとし、配列番号3及びその相補鎖の一部に相当する塩基配列を含むポリヌクレオチド(配列番号5及び6)をプライマーとしたPCRを行った。反応液を電気泳動後、増幅した約4kbの断片を回収・精製し、制限酵素EcoRI及びPstIで切断した。これを、予めEcoRI及びPstIで切断しておいたベクターpTrc99A(Amersham Pharmacia Biotech社製)とライゲーションし、その反応液で大腸菌BL21(DE3)を形質転換した。得られた形質転換体を50mg/L アンピシリンを含む2×YT液体培地で一晩振盪培養した後、最終濃度1mMとなるようにIPTG(イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド)を添加して更に2時間培養したところ、顕微鏡観察で菌体内にインクルージョンボディ(封入体)の形成が認められた。よって、該クローンを発現クローンとした。
【0044】
(実施例4)
2Lのバッフル付き三角フラスコに50mg/Lのアンピシリンを含む750mlの2×YT液体培地を入れ、実施例3で得られた発現クローンを植菌して37℃で振盪培養した。16時間後、最終濃度1mMとなるようにIPTGを添加し、更に2時間培養した。遠心分離により培養液から菌体を回収し、10mMリン酸カリウム緩衝液pH7.0でこれを洗浄した。再び遠心分離で集菌し、最終的に120mlとなるように前記緩衝液に懸濁した。
【0045】
直径6cmのプラスチック製フードカップ40個に腐葉土10gを量り取り、その内の20個には発現クローンの懸濁液を、残りの20個にはブランクとして水をそれぞれ1ml散布し、よく混和した。各フードカップにドウガネブイブイ1令幼虫を1頭ずつ放虫し、25℃の条件下で飼育した。経時的に幼虫の死亡率及び生存幼虫の平均体重を測定し、発現クローンの殺虫活性及び生育抑制活性を検証した。
【0046】
結果を表1と図2に示す。ブランクテストに対し、発現クローンを散布した区においては死亡率の上昇が見られ、5週目では実に95%の死亡率が得られた。また、発現クローン散布区の生存幼虫の平均体重はほとんど増加しておらず、ブランクに比べ低い水準を維持していた。以上の結果から、発現クローン、即ち本発明のポリペプチドは生育抑制又は殺虫活性を有していることが確認された。
【0047】
【表1】
Figure 0004257969
【0048】
(実施例5)
2Lのバッフル付き三角フラスコに50mg/Lのアンピシリンを含む750mlの2×YT液体培地を入れ、実施例3で得られた発現クローンを植菌して37℃で振盪培養した。16時間後、最終濃度1mMとなるようにIPTGを添加し、更に2時間培養した。遠心分離により培養液から菌体を回収し、10mMリン酸カリウム緩衝液pH7.0でこれを洗浄した。再び遠心分離で集菌し、最終的に75mlとなるように前記緩衝液に懸濁してこれを発現クローン懸濁液とした。
【0049】
一方、ドウガネブイブイの乳化病感染幼虫からバチルス・ポピリエ・セマダラの胞子嚢を採取し、水で洗浄した。再び水に1ml当たり8×107個となるよう懸濁して、これを胞子嚢懸濁液とした。
【0050】
腐葉土25gを量り入れた直径6cmのプラスチック製フードカップ80個を用意した。その内の20個には発現クローン懸濁液1mlを、別の20個には胞子嚢懸濁液を0.5ml、更に別の20個には発現クローン懸濁液1mlと共に胞子嚢懸濁液を0.5mlを、残りの20個には水1mlをそれぞれ散布し、よく混和した。各フードカップにドウガネブイブイ2令幼虫を1頭ずつ放虫し、25℃の条件下で21日間飼育した。経時的に幼虫の死亡率及び生存幼虫の平均体重を測定し、発現クローンと胞子嚢を併用した際の殺虫活性及び生育抑制活性相乗効果を検証した。なお、胞子嚢との併用の有無よる殺虫活性及び生育抑制活性の差を明確にするため、本実施例では、フードカップに腐葉土を実施例4で用いた量の2.5倍量の25gを入れ、さらに、1令幼虫が成長して一度脱皮したドウガネブイブイ2令幼虫を用い、より効果が効きにくい条件で実験を行った。
【0051】
結果を図3と図4に示す。発現クローンあるいは胞子嚢のみの懸濁液散布では生育抑制効果は発揮するものの、十分な殺虫活性が得られなかった。これに対し、発現クローンと胞子嚢を併用散布した場合には殺虫活性及び生育抑制効果に顕著な死亡率の増加が見られ、発現クローンと胞子嚢とを併用する相乗効果が認められた。
【0052】
(実施例6)
配列番号1及び3の相補鎖の一部に相当する配列番号8記載の塩基配列及び配列番号7記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドを化学合成により用意した。該ポリヌクレオチドをプライマーとし、Bacillus popilliae semadaraの染色体DNAをテンプレートとしたPCRを試みたところ、約4.2kbの断片の増幅が認められた。この断片をTAクローニングし、多数のクローンを得、その内のいくつかについてシークエンシングによるインサート部分の塩基配列の決定を行った結果、配列番号1及び3に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドを得た。よって、配列番号7及び8の塩基配列を有するポリヌクレオチドを用いたPCRによっても、本発明のポリヌクレオチドが取得可能であることがわかった。
【0053】
【発明の効果】
本発明により、コガネムシ科昆虫、特にドウガネブイブイ、セマダラコガネ及びマメコガネの生育抑制又は殺虫活性を有するポリペプチド、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入した形質転換体、該ポリペプチドを有効成分とするコガネムシ科昆虫の防除剤及び該ポリペプチドとバチルス・ポピリエの胞子嚢とを用いるコガネムシ科昆虫の防除方法を提供することができる。
【0054】
【配列表】
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【0055】
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【0056】
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【0057】
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【0058】
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【0059】
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【0060】
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【0061】
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【0062】
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【図面の簡単な説明】
【図1】 胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢の模式図である。
【図2】 実施例4の本発明のポリヌクレオチドから生産されたポリペプチドによるコガネムシ科昆虫(ドウガネブイブイ幼虫)の生育抑制効果を示す図である。
【図3】 実施例5で行った生物試験の殺虫活性を示す図である。
【図4】 実施例5で行った生物試験の生育抑制効果を示す図である。

Claims (11)

  1. 配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列を有することを特徴とするポリペプチド。
  2. 配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸残基の置換、欠失、もしくは挿入を含むアミノ酸配列を有し、かつ、コガネムシ科昆虫の生育抑制又は殺虫活性を有することを特徴とするポリペプチド。
  3. 請求項1又は2に記載のポリペプチドをコードすることを特徴とするポリヌクレオチド。
  4. 配列番号1又は3で示される塩基配列のうちそれぞれのコード領域の塩基配列を有するポリヌクレオチドである請求項3に記載のポリヌクレオチド。
  5. 配列番号1又は3で示される塩基配列のうちそれぞれのコード領域の塩基配列を有するポリヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、該ストリンジェントな条件は、90%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性の低いDNA同士がハイブリダイズしないことである、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
  6. 請求項3〜5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とするベクター。
  7. 請求項3〜5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、又は請求項6に記載のベクターが導入されたことを特徴とする形質転換体。
  8. 宿主が微生物、植物又は培養細胞である請求項7に記載の形質転換体。
  9. 請求項1又は2に記載のポリペプチドを有効成分として含有することを特徴とするコガネムシ科昆虫防除剤。
  10. 請求項1又は2に記載のポリペプチドとバチルス・ポピリエに属する菌の胞子嚢とを有効成分として含有することを特徴とするコガネムシ科昆虫防除剤。
  11. 請求項9又は10に記載の防除剤をコガネムシ科昆虫に作用させることを特徴とするコガネムシ科昆虫の防除方法。
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