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JP4260465B2 - 電動機の絶縁寿命推定方法及び絶縁寿命推定システム - Google Patents
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電動機の絶縁寿命推定方法及び絶縁寿命推定システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばエレベータの昇降機に用いられる電動機の絶縁寿命を推定する絶縁寿命推定方法及び絶縁寿命推定システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、エレベータの昇降機に用いられる電動機は、10年以上に渡る長期間の継続使用および設置場所の環境等の影響を受け、絶縁特性が徐々に低下してくる。このため、電動機の絶縁劣化により焼損して、昇降機を長時間停止することのないように、絶縁劣化度合いの判定や絶縁寿命を推定し、電動機の機能停止前に絶縁回復処理を施すとか、新品電動機と交換するとかの予防保全的対応に努めなければならない。
【0003】
ここで、絶縁劣化の判定方法としては、電動機絶縁対の絶縁特性、すなわち、絶縁抵抗、成極指数(PI値)、誘電正接(tanδ)、誘電正接の電圧依存性(Δtanδ)、静電容量等を測定することにより、例えば絶縁抵抗であれば、「JIS A 4302」の「昇降機の検査基準」で提示されている「電動機主回路300V以下0.2MΩ、300V以上0.4MΩ以上」等を基準にして判定するのが一般的である。
【0004】
しかし、このような絶縁特性の測定値は、電動機の設置場所の温度・湿度、電動機自体の温度等の環境条件によって大きく異なる。そのため、同じ電動機でありながら、測定日によって測定値が異なることがあり、劣化の判定に苦慮することが多い。通常、絶縁特性は湿度との相関性が高く、例えば絶縁抵抗であれば、湿度が低いと大きく、湿度が高くなると小さくなる。したがって、例えば湿度30%のときには、その測定値が0.2MΩ以上であっても、湿度が70%とか80%になれば、0.2MΩを下回ってしまう。
【0005】
なお、従来、電動機などの絶縁寿命を推定する方法として、絶縁破壊抵抗で評価する方法が知られている(例えば特許文献1)。しかし、絶縁破壊抵抗を測定するためには機器の破壊を必要とし、しかも、この特許文献1に開示されている方法では、環境条件、特に絶縁特性と大きく関係する湿度の状態をまったく考慮していないため、絶縁寿命を正確には推定できないなどの問題がある。
【0006】
【特許文献1】
特開20001−37167号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、電動機の絶縁特性は、温度、湿度等の環境変化に左右されるため、測定値から絶縁寿命を正確に推定することは難しい。この場合、電動機の温度や湿度を一定にして測定すれば、それも解消されるであろうが、昇降機の点検においては、稼働中の昇降機を停止して限られた時間内での点検作業が必要なため、電動機温度が設置場所温度までさめるまで待つとか、気象条件を選択し、晴れた日または雨の日だけ点検するというようなことは不可能である。
【0008】
本発明は上記のような点に鑑みなされたもので、どのような条件下で測定しても絶縁寿命を正確に推定することのできる電動機の絶縁寿命推定方法及び絶縁寿命推定システムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の電動機の絶縁寿命推定方法は、電動機の絶縁体の絶縁寿命を推定する絶縁寿命推定方法であって、電動機絶縁体の初期時における絶縁特性と相対湿度との相関関係を表わす近似式に基づいて作成された初期特性曲線と、限界時における予め定められた低湿度域での絶縁特性と相対湿度との相関関係を表わす近似式と予め定められた高湿度域での絶縁特性と相対湿度との相関関係を表わす近似式とに基づいて作成された限界特性曲線を寿命推定の基準曲線として入力し、上記基準曲線として入力された上記限界特性曲線の低湿度域または高湿度域に対応した近似式を用いて、絶縁寿命推定対象となる電動機の絶縁特性とその電動機の相対湿度との特性点を通り、上記限界特性曲線に平行な現特性曲線を算出し、上記現特性曲線と、上記現特性曲線から得られる絶縁特性と使用年数との相関関係を示す特性曲線と、使用年数と汚損速度との相関関係を示す特性曲線とから寿命推定のための演算式を算出して対象電動機の絶縁寿命を推定することを特徴とする。
【0010】
このような絶縁寿命推定方法によれば、環境変化として絶縁特性への影響が大きい湿度に着目し、その湿度との相対関係に基づいて作成された初期特性曲線と限界特性曲線が寿命推定の基準曲線として用いられる。そして、この基準曲線の限界特性曲線に基づいて絶縁寿命推定対象となる電動機の絶縁特性とその電動機の相対湿度との特性点を通る現特性曲線が算出され、その現特性曲線と使用年数、汚損速度に基づいて対象電動機の絶縁寿命が推定される。このように、絶縁特性と湿度との相対関係を示す特性曲線を用いることで、どのような条件下で測定しても絶縁寿命を正確に推定することができる。
【0011】
また、対象電動機の温度が電動機設置場所の温度と異なる場合に、温度と飽和蒸気量との相関関係を示す特性曲線を用いて、上記対象電動機と上記電動機設置場所との温度差から絶縁体周辺の相対湿度を推定し、上記電動機の相対湿度を上記絶縁体周辺の相対湿度に補正することで、絶縁寿命をより正確に推定することができる。
【0012】
【本発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0013】
本発明は、例えばエレベータの昇降機に用いられる電動機の絶縁寿命を推定するものである。既に述べたように、電動機の絶縁特性は、温度、湿度等の環境変化に左右されるため、正確な絶縁寿命を推定することは難しい。そこで、本発明では、このような環境変化を考慮して電動機の絶縁寿命を正確に推定する方法を提案するものである。
【0014】
まず、図3乃至図5を参照して本発明における電動機の絶縁寿命推定方法について詳しく説明する。図3は電動機の絶縁体の相対湿度H(%)と絶縁特性A(MΩ)との対応関係を示す図、図4は使用年数N(年)と定数A01qとの対応関係を示す図、図5は電動機設置場所の汚損速度Vと傾きβとの対応関係を示す図である。
【0015】
図3では、電動機絶縁体の初期時(製造時)における絶縁特性と相対湿度との相関関係に基づく初期特性曲線Fと、限界時における絶縁特性と相対湿度との相関関係に基づく限界特性曲線Fを基準曲線として、絶縁寿命推定対象となる電動機の絶縁特性Aと対象電動機の相対湿度Hの特性点AHを通る対象電動機の現特性曲線Fおよび相対湿度Hにおける限界特性値Ab1を算出した結果を示している。
【0016】
なお、本実施形態では、絶縁特性として、一例として絶縁抵抗を用いることにする。これは、絶縁特性を表す各種指標のうち、絶縁抵抗が最も信頼できるからである。絶縁抵抗とは、電動機の固定子(コイル)と対地間との電気抵抗のことである。
【0017】
初期特性曲線Fは、新品の電動機を用いて、環境実験室等により周囲の湿度を3〜5条件に設定し、それぞれに湿度と絶縁抵抗の関係を調査して作成する。ここで、絶縁特性Aと相対湿度Hには相関関係があり、次式のように近似できる。すなわち、これが初期特性曲線Fの近似式となる。
【0018】
A=A0a・еβaH …(1)
ここで、A:絶縁抵抗値
0a:定数
е:2.718
β:特性曲線Fの傾き
H:相対湿度
限界特性曲線Fは、強制的に絶縁劣化させた電動機(使用限界に近い電動機)を用いて、上記新品電動機と同様に、環境実験室等により周囲の湿度を6〜8条件に設定し、それぞれに湿度と絶縁抵抗の関係を調査して作成する。または、フィールドの電動機により測定日を変えて広い湿度範囲にて湿度と絶縁抵抗の関係を調査し作成する。あるいは、フィールドからの引取り品を使って、環境実験室等により湿度を6〜8条件に設定して湿度と絶縁抵抗の関係を調査し作成する。
【0019】
湿度と絶縁抵抗の関係は、ある程度劣化が進展すると、絶縁抵抗は低湿度域(図中のQ域)と高湿度域(図中のS域)では傾きの異なる曲線となる。すなわち、高湿度域では湿度に対して敏感になり、絶縁抵抗の特性が極端に低くなる。したがって、湿度と絶縁抵抗との関係を示した特性曲線は、図3に示す如くQ域とS域の境で折れ曲がったものとなる。
【0020】
ここで、上記調査結果および絶縁劣化により焼損を起こした電動機の焼損直前データ等を基にして限界特性曲線Fを作成する。絶縁特性Aと相対湿度Hには相関関係があり、次式のように近似できる。すなわち、これが限界特性曲線Fの近似式となる。
【0021】
Q域 A=A0bq・еβbqH …(2)
S域 A=A0bs・еβbsH …(3)
ここで、A0bq:Q域における定数
0bs:S域における定数
βbq:Q域における特性曲線Fの傾き
βbs:S域における特性曲線Fの傾き
このようにして作成した初期特性曲線Fおよび限界特性曲線Fを劣化判定の基準曲線とする。
【0022】
次に、絶縁寿命推定対象の電動機の絶縁特性Aと対象電動機の相対湿度Hの特性点AHを通る対象電動機の現特性曲線Fおよび相対湿度Hにおける限界特性値Ab1を算出する方法について説明する。
【0023】
今、図3に示すように、相対湿度Hの特性点AHがQ域にあるとすると、まず、この特性点AHを通り、限界特性曲線Fに平行な現特性曲線Fと、その現特性曲線FにおけるY軸切片値の定数A01qを上記式(2)により算出する。また、相対湿度Hにおける限界特性値Ab1を上記式(2)より算出する。このときの絶縁特性Aと相対湿度Hとの相関関係は、次式のように表せる。
【0024】
=A01q・еβbqH1 …(4)
次に、対象電動機の使用年数Nを確認し、図4に示すように、使用年数Nと現特性曲線Fの定数A01qとの相関関係に基づく特性曲線Fna0の近似式を算出する。
【0025】
01q=A01n・еβnN …(5)
ここで、A01n:定数
β:特性曲線Fna0の傾き
次に、図5に示すように、式(5)の傾きβと対象電動機の設置場所における汚損速度Vとの相関関係に基づく特性曲線Fnvを算出する。
【0026】
β=γV−βn0 …(6)
ここで、γ:特性曲線Fnvの傾き
βn0:定数
汚損速度とは、絶縁体を劣化させるイオン性物質の堆積速度のことをいう。イオン性物質としては、例えば塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン等が含まれる。
【0027】
以上、式(2)、(5)、(6)で示される特性曲線F、Fna0、Fnvに基づいて、推定絶縁寿命値Nを算出する近似式を求めると、式(7)のようになる。また、この推定絶縁寿命値Nにより、電動機の余寿命Nを求めることができる。
【0028】
=[1/(γV−βn0)]log(Ab1/A01nеβbqH)…(7)
=N−N …(8)
このように、環境変化、特に絶縁特性への影響が大きい湿度に着目し、電動機絶縁体の初期時における絶縁特性と相対湿度との相関関係に基づく初期特性曲線Fと、限界時における絶縁特性と相対湿度との相関関係に基づく限界特性曲線Fを劣化判定の基準曲線として用いることで、湿度条件が変化した場合でも、推定対象となる電動機の測定値(絶縁特性値A1)からその電動機の絶縁寿命値Nとその余寿命Nを簡単かつ正確に求めることができる。
【0029】
ところで、上述した電動機の相対湿度Hは、電動機設置場所の湿度のことであり、電動機絶縁体(コイル)の湿度を直接表したものではない。したがって、例えば電動機温度が電動機設置場所の周囲の温度に比べて高い場合、あるいは、電動機温度が電動機設置場所の周囲の温度に比べて低い場合、さらに、電動機が開放形などにより湿度差が大きくなる場合には、推定寿命の算出に影響が出てしまう。そこで、絶縁寿命をより正確に推定するには、電動機絶縁体周辺の相対湿度を推定する必要がある。
【0030】
そのためには、まず、図6に示すように、温度Tと飽和蒸気量mとの対応関係を示す特性曲線Ftmを求める。このときの特性曲線Ftmの関係式を式(9)に示す。
【0031】
=exp0.0527(T−T)H …(9)
ここで、H:絶縁体周辺の湿度(相対湿度)
:電動機設置場所の湿度(相対湿度)
:電動機設置場所の温度
:電動機温度
これにより、電動機の絶縁体周辺の相対湿度Hを推定し、寿命推定演算に用いる湿度の値をHからHに代えることで、上記同様にして限界特性値Ab1を算出する。そして、この限界特性値Ab1を用いて推定絶縁寿命値Nを算出する。このように、寿命推定演算に用いる湿度を電動機絶縁体の湿度に補正することで、より正確な絶縁寿命を推定することができる。
【0032】
次に、上述した絶縁寿命推定方法を実現するためのシステムについて説明する。
【0033】
図1は本発明の一実施形態に係る電動機の絶縁寿命推定システムの概略構成を示す図である。本システムは、エレベータの昇降機に用いられる電動機を対象として、その電動機の絶縁寿命を推定するものであり、磁気ディスク等の記録媒体に記録されたプログラムによってその動作が制御されるコンピュータによって構成される。
【0034】
図1に示すように、本実施形態における絶縁寿命推定システム10は、入力部11、記憶部12、制御部13、出力部14を備える。入力部11は、例えばキーボードやマウス、タブレットなどを含む入力デバイスからなり、絶縁寿命の推定に必要な各種データの入力を行う。記憶部12は、例えばROM、RAMなどを含むメモリデバイスからなり、本発明を実現するためのプログラムの他、絶縁寿命の演算に必要な各種データを記憶する。制御部13は、マイクロプロセッサ(CPU)からなり、記憶部12に記憶されたプログラムを読み込むことにより、そのプログラムに記述された手順に従って絶縁寿命の算出に関する処理を実行する。出力部14は、例えば表示デバイスからなり、絶縁寿命の算出結果を出力する。
【0035】
このような構成において、まず、電動機絶縁体の初期特性曲線Fおよび限界特性曲線Fの各データを入力部11により入力して記憶部12に記憶させておく。そして、絶縁寿命推定対象となる電動機に関する各パラメータとして、絶縁特性値A、電動機設置場所の温度T、相対湿度H、電動機温度T、使用時間N、汚損速度Vを入力部11により入力すると、これらのデータが記憶部12に保持された後、制御部13によって以下のような手順で絶縁寿命が求められる。
【0036】
(1)まず、対象電動機の特性値Aと絶縁体周辺湿度Hの関係点AHを通り、限界曲線Fに平行な現特性曲線Fおよび相対湿度Hにおける限界特性値Ab1を演算する。
(2)次に、使用年数Nと現特性曲線FのY軸切片値の定数A01qとの相関関係に基づく特性曲線Fna0を演算する。
(3)次に、特性曲線Fna0の傾きβと絶縁寿命推定対象の電動機設置場所の汚損速度Vとの相関関係に基づく特性曲線Fnvを演算する。
(4)以上の特性曲線F、Fna0、Fnvに基づいて推定絶縁寿命値Nおよび余寿命Nを演算する。
【0037】
ここで、上述した絶縁寿命推定処理について図2を参照してさらに詳しく説明する。
【0038】
図2は本発明の絶縁寿命推定システムにおける絶縁寿命推定処理の動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートで示される各処理は、図1に示す制御部13がプログラムを読み込むことにより実行される。
【0039】
まず、制御部13は、例えばキーボードなどからなる入力部11を通じて入力される絶縁寿命の推定に必要な各データを読み込み、これらを記憶部12に格納する(ステップS11)。絶縁寿命の推定に必要な各データとは、電動機絶縁体の初期特性曲線Fおよび限界特性曲線Fに関するデータ、そして、絶縁寿命推定対象の電動機に関する各パラメータ値、つまり、絶縁特性値A、電動機設置場所の温度T、相対湿度H、電動機温度T、使用時間N、汚損速度Vである。
【0040】
既に説明したように、初期特性曲線Fと限界特性曲線Fは劣化判定の基準曲線であって、予め実験により求められている。すなわち、初期特性曲線Fは、電動機絶縁体の初期時(製造時)における絶縁特性と相対湿度ととの相関関係を示す特性曲線であって、新品の電動機を用い、実験により湿度条件を変えて作成される。これに対し、限界特性曲線Fは、限界時における絶縁特性と相対湿度との相関関係を示す特性曲線であって、強制的に絶縁劣化させた電動機を用い、実験により湿度条件を変えて作成される。
【0041】
なお、このような特性曲線を含む各種データは、入力部11から直接入力しても良いし、何らかのメモリを介して入力することでも良く、その入力形態については特に限定されるものではない。
【0042】
次いで、制御部13は、上記各入力データを記憶部12から呼び出し(ステップS12)、必要に応じて湿度補正を行った後、寿命推定に必要な相関関係式や、相関関係式からの定数、関係式の傾き等を導出する(ステップS13〜S20)。
【0043】
具体的に説明すると、制御部13は、まず、電動機設置場所の温度Tと電動機温度Tとの差から湿度補正の必要性を判断する(ステップS13のYes)。この場合、両者の温度差が予め設定された値以上であれば、湿度補正の必要性ありと判断され(ステップS14のYes)、上記式(9)で説明したように、温度Tと飽和蒸気量mとの対応関係を示す特性曲線Ftmを用いて電動機設置場所の相対湿度Hに対応した絶縁体周辺の相対湿度Hへの補正処理が施される(ステップS14)。
【0044】
以下では、説明を簡単にするため、湿度の補正処理なしで相対湿度Hをそのまま用いるものとして説明する。また、この相対湿度HはQ域に存在するものとするものとして説明する。
【0045】
ここで、制御部13は、対象電動機の絶縁特性値Aと電動機設置場所の相対湿度Hに基づいて、A、Hの相関関係式(2)を導出し、図3に示すように相対湿度Hの特性点AHを通り、限界特性曲線Fに平行な現特性曲線Fおよび現特性曲線FにおけるY軸切片値の定数A01qを算出する(ステップS15)。
【0046】
次に、制御部13は、対象電動機の使用年数Nを確認し、図4に示すように、この使用年数Nと現特性曲線Fの定数A01qとの相関関係式(5)を導出する(ステップS16)。また、制御部13は、図5に示すように、式(5)の傾きβと対象電動機の設置場所における汚損速度Vとの相関関係式(6)を導出する(ステップS17)。
【0047】
このようにして、式(2)、式(5)、式(6)が導出されると、制御部13はこれらの式で示される特性曲線F、Fna0、Fnvに基づいて、寿命推定式である式(7)と式(8)を導出する(ステップS18)。
【0048】
そして、制御部13は、設置場所の相対湿度Hおよび限界特性値Ab1を呼び出し、式(7)と式(8)に従って絶縁寿命Nおよび余寿命Nを算出し(ステップS19)、その算出結果を例えば表示デバイスである出力部14に出力する(ステップS20)。
【0049】
なお、上記ステップS13において、電動機設置場所の温度Tと電動機温度Tとの差が所定値以上あって湿度補正の必要性ありと判断され、上記ステップS14において、相対湿度Hから相対湿度Hへの補正処理が施された場合には、その補正後の相対湿度Hの値を用いて上記同様の推定処理が実行されることになる。
【0050】
また、湿度(相対湿度Hあるいは補正後の相対湿度H)の値が図3に示すQ域(低湿度域)にある場合を想定して説明したが、そのときの湿度の値がS域(高湿度域)にある場合には、上述したS域に対応した式(3)を用いることで、上記同様の推定処理により絶縁寿命Nおよび余寿命Nを算出することができる。
【0051】
また、絶縁特性としては絶縁抵抗に限らず、他の特性要素であっても本発明の手法を適用することができ、上記同様に絶縁寿命を正確に推定することができる。
【0052】
さらに、上記実施形態では、エレベータの昇降機に用いられる巻上機用誘導電動機の絶縁寿命を推定する場合について説明したが、エレベータの昇降機に限らず、他の用途に使用される電動機であっても良い。
【0053】
要するに、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態で示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、「発明が解決しようとする課題」で述べた効果が解決でき、「発明の効果」の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0054】
【発明の効果】
以上詳記したように本発明によれば、絶縁特性と湿度との相対関係を示す特性曲線を用いることで、どのような条件下で測定しても、その測定値から電動機の絶縁寿命を正確に推定することができる。したがって、例えばエレベータの昇降機に用いられる電動機であれば、その電動機の劣化によりエレベータとして機能が停止する前に交換等の対策を施すなどの保守管理を効率的に行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動機の絶縁寿命推定システムの概略構成を示す図。
【図2】上記絶縁寿命推定システムにおける絶縁寿命推定処理の動作を示すフローチャート。
【図3】電動機の絶縁体の相対湿度H(%)と絶縁特性A(MΩ)との対応関係を示す図。
【図4】使用年数N(年)と定数A01qとの対応関係を示す図。
【図5】電動機設置場所の汚損速度Vと傾きβとの対応関係を示す図。
【図6】温度Tと飽和蒸気量mとの対応関係を示す図。
【符号の説明】
10…絶縁寿命推定システム
11…入力部
12…記憶部
13…制御部
14…出力部
Fa…初期特性曲線
Fb…限界特性曲線
…現特性曲線
…相対湿度
A …絶縁特性

Claims (6)

  1. 電動機の絶縁体の絶縁寿命を推定する絶縁寿命推定方法であって、
    電動機絶縁体の初期時における絶縁特性と相対湿度との相関関係を表わす近似式に基づいて作成された初期特性曲線と、限界時における予め定められた低湿度域での絶縁特性と相対湿度との相関関係を表わす近似式と予め定められた高湿度域での絶縁特性と相対湿度との相関関係を表わす近似式とに基づいて作成された限界特性曲線を寿命推定の基準曲線として入力し、
    上記基準曲線として入力された上記限界特性曲線の低湿度域または高湿度域に対応した近似式を用いて、絶縁寿命推定対象となる電動機の絶縁特性とその電動機の相対湿度との特性点を通り、上記限界特性曲線に平行な現特性曲線を算出し、
    上記現特性曲線と、上記現特性曲線から得られる絶縁特性と使用年数との相関関係を示す特性曲線と、使用年数と汚損速度との相関関係を示す特性曲線とから寿命推定のための演算式を算出して対象電動機の絶縁寿命を推定することを特徴とする電動機の絶縁寿命推定方法。
  2. 対象電動機の温度が電動機設置場所の温度と異なる場合に、温度と飽和蒸気量との相関関係を示す特性曲線を用いて、上記対象電動機と上記電動機設置場所との温度差から絶縁体周辺の相対湿度を推定し、上記電動機の相対湿度を上記絶縁体周辺の相対湿度に補正することで絶縁寿命を推定することを特徴とする請求項1記載の電動機の絶縁寿命推定方法。
  3. 上記絶縁特性は、電動機絶縁体の絶縁抵抗であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電動機の絶縁寿命推定方法。
  4. 電動機の絶縁体の絶縁寿命を推定する絶縁寿命推定システムであって、
    電動機絶縁体の初期時における絶縁特性と相対湿度との相関関係を表わす近似式に基づいて作成された初期特性曲線と、限界時における予め定められた低湿度域での絶縁特性と相対湿度との相関関係を表わす近似式と予め定められた高湿度域での絶縁特性と相対湿度との相関関係を表わす近似式とに基づいて作成された限界特性曲線を寿命推定の基準曲線として入力する入力手段と、
    この入力手段によって上記基準曲線として入力された上記限界特性曲線の低湿度域または高湿度域に対応した近似式を用いて、絶縁寿命推定対象となる電動機の絶縁特性とその電動機の相対湿度との特性点を通り、上記限界特性曲線に平行な現特性曲線を算出する現特性曲線算出手段と、
    この現特性曲線算出手段によって算出された上記現特性曲線と、上記現特性曲線から得られる絶縁特性と使用年数との相関関係を示す特性曲線と、使用年数と汚損速度との相関関係を示す特性曲線とから寿命推定のための演算式を算出し、その演算式に従って対象電動機の絶縁寿命を演算する絶縁寿命演算手段と、
    この絶縁寿命演算手段によって得られた絶縁寿命の演算結果を出力する出力手段と
    を具備したことを特徴とする電動機の絶縁寿命推定システム。
  5. 対象電動機の温度と電動機設置場所の温度とを比較する温度比較手段と、
    この温度比較手段によって両者の温度差が所定値以上であった場合に、温度と飽和蒸気量との相関関係を示す特性曲線を用いて、上記対象電動機と上記電動機設置場所との温度差から絶縁体周辺の相対湿度を推定し、上記電動機の相対湿度を上記絶縁体周辺の相対湿度に補正する湿度補正手段とをさらに備え、
    上記湿度補正手段によって得られた上記絶縁体周辺の相対湿度に基づいて絶縁寿命を推定することを特徴とする請求項4記載の電動機の絶縁寿命推定システム。
  6. 上記絶縁特性は、電動機絶縁体の絶縁抵抗であることを特徴とする請求項4または請求項5記載の電動機の絶縁寿命推定システム。
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