JP4264482B2 - 消火剤、消火用水及び消火方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被消火物等の表面に消火用の水を保持させることのできる消火剤、消火用水及びこれを使用する消火方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より消火には「水」が主に使用されている。わが国では水資源が比較的豊富でかつ上水道が普及しているため、消火には上水道が主として使用され、防火水槽や河川の水が補助的に用いられている。しかし、阪神・淡路大震災のような大地震などによって水道管の破裂や防火水槽の損壊などが生じた場合には限られた水で消火しなければならない。また、山林の火災などの場合も同様である。これらの場合の消火方法として、例えば、消火用の化学薬品を用いるとか砂を掛けるなど方法が採られているが、前者は水に比べて高価であるとか使用に注意が必要であるなどの問題点を有し、後者は重くてかつ流動性が無いため消火地点に容易に送れないなどの問題点を有している。
【0003】
燃焼物に掛けられた水は、その蒸発潜熱によって燃焼物を着火点又は発火点以下に冷却する作用や酸素の遮断作用などにより消火するが、用いられた水の多くは燃焼物面より流れ落ちてしまうため、効率の悪い結果となっている。消火に使用した水が燃焼物の表面に残留すれば、上記の消火作用がより十分に得られるものと考えられる。
その対策の一つとして、高吸水性ポリマーの使用が研究されている。このポリマーは水に接すると数秒で自量の数百ないし数千倍の量の水を固形化するが、水に溶けている物質等によって固形化が著しく阻害されるとともに紫外線で分解され固形化した水が容易に流失するという欠点がある。また、該ポリマーは消火水とは別個に取扱わなければならないという問題点を有する。また、セルロース誘導体等の熱ゲル化剤と高吸水性樹脂を添加させた薬剤も報告されているが(例えば、特開平1−56070号公報等)、水溶液ではないため消防ポンプ等に付着しその除去が容易でないという問題点があった。
【0004】
一方、一般家庭の火災発生原因として、天ぷら油火災によるものが、近年ますます増加している傾向がある。都市部の住宅事情を考えると、一般家庭の火災についても甚大な災害の原因となり得ることから、火災の初期段階での確実且つより安全な消火方法を必要とするところである。
従来、広く使用されている消火薬剤として、粉末系の消火薬剤、ガス系の消火薬剤、水系の消火薬剤があるが、天ぷら油火災の場合は油の発火点以下に冷却しないと再着火するため、水系の消火薬剤が好ましいと考えられている。しかし、従来の水系の消火薬剤では、突沸を起こしたり、消火液が高いアルカリ性を示したり、炎が高く上がるなどの問題点を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの点に鑑み、従来の消火水と同様に取扱いができ、かつ、噴射した消火水が燃焼物面に残留する消火剤、消火用水を提供せんとするものである。
更に、天ぷら油火災等の油火災に対しても優れた消火作用を有する消火剤、消火用水を提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、消火用の「水」に添加してもその水は常温では液体のままで、粘度も比較的小さく流動性を有し既存の消防ポンプ等で充分に使用でき、燃焼物面で水を多量に含有し固形化し、空気を遮断すると共に冷却効果をも有する。更に油火災に対しても優れた消火作用を持つ物質を求めて種々研究した結果、感温性ポリマーがその目的に達成し得ることを見出して本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、(1)特定の設定温度以下では水溶性で、設定温度以上では水を含んで固形化する感温性ポリマーを含むことを特徴とする消火剤、
(2)感温性ポリマーの固形化が、ハイドロゲルであることを特徴とする上記(1)記載の消火剤、
(3)感温性ポリマーが、水溶性アクリルアミド系ポリマーであることを特徴とする上記(1)及び(2)記載の消火剤、
(4)感温性ポリマーが、N−イソプロピルアクリルアミドを主成分とするポリマーであることを特徴とする上記(1)〜(3)記載の消火剤、
(5)感温性ポリマーが、N−イソプロピルアクリルアミド75〜99モル%とアクリル酸ナトリウム1〜25モル%を共重合してなるポリマーであることを特徴とする上記(1)〜(4)記載の消火剤、
(6)上記(1)〜(5)に記載の消火剤を水に溶解することを特徴とする消火用水、
(7)感温性ポリマーのほかに、消火剤、防炎剤並びに必要に応じてこれら薬剤の浸透剤を含むことを特徴とする上記(6)記載の消火用水、
(8)水溶液の粘度が20〜2000mPa・s(30℃)であることを特徴とする上記(6)及び(7)記載の消火用水、
(9)請求項(6)〜(8)に記載の消火用水を使用することを特徴とする消火方法、
(10)感温性ポリマーを予め所定濃度に溶解した感温性ポリマー水溶液を消火用の水に添加しつつ噴射等することを特徴とする上記(9)記載の消火方法、
を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる感温性ポリマーは、「特定の設定温度(以下感温点と記述する)以下では水溶性で、感温点以上では固形化(水不溶のハイドロゲルとなる)する温度感応性ポリマー」と定義されるものである。
本発明は、この感温性ポリマーを消火剤として消防用の水に添加して、その水溶液が常温時には流動性を有し消火水と同様に従来の消防ポンプ等の消防器具で消火に使用でき、火災物(燃焼物)に噴射又は噴霧したとき、燃焼による熱で水を含んだ状態でゲル化ないしは固形化して燃焼物面に残留し、消火、延焼及び再着火を防止するようにしたものである。
【0009】
本発明の感温性ポリマーは、例えば、
(1)そのホモポリマーが水中で下限臨界共溶温度を有するビニルモノマー(a)と、(a)と共重合可能な他のビニルモノマー(b)とを共重合する方法、及び
(2)メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースのごとき水中で下限臨界共溶温度を有するポリマーにアクリル酸ナトリウムのようなイオン基を有するビニルモノマーをグラフト重合する方法
などの製法によって得ることができる。上記の製法のうち(1)の方法が、得られるポリマーの感温点を容易に調整できることからより好ましい。
ビニルモノマー(a)としては、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリロイルピペリジン、アクリロイルピロリジン、ビニルカプロラクタム等のN−置換アクリルアミド及びその誘導体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル、N−ビニルイソブチルアミド等のN−ビニルアルキルアミドなどが挙げられる。
【0010】
ビニルモノマー(b)としては、アクリル酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等)、2−アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等)、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びその塩(硫酸塩、モノメチル硫酸塩、ジメチル硫酸塩、塩化メチル塩等)、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びその塩(硫酸塩、モノメチル硫酸塩、ジメチル硫酸塩、塩化メチル塩等)等のイオン性基を有するビニルモノマー、アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、tert−ブチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0011】
感温性ポリマーの固形化温度は特に限定されないが、常温ないしは火災現場での温度で、また盛夏時の温度でゲル化しない温度以上とすることが必要である。冬期及び火災現場での温度を考慮して10〜140℃(100℃以上は、加圧下で測定した値)、好ましくは50〜100℃の温度範囲で設定するとよい。
具体的な感温性ポリマーとしては、ビニルモノマー(a)としてN−イソプロピルアクリルアミドを主成分とし、他のビニルモノマー(b)と共重合させたポリマーが好ましく、特にN−イソプロピルアクリルアミド75〜99モル%とビニルモノマー(b)としてアクリル酸ナトリウム1〜25モル%とを共重合させたポリマーが天ぷら油火災、石油ストーブ火災にも優れた消火性能を持つためより好ましい。
【0012】
本発明では、更に、感温性ポリマーを含んだ消火剤を水に溶解させた消火用水が提供される。
感温性ポリマーの分子量並びに水への溶解濃度については、消火に用いる水溶液の状態でかつ、感温性ポリマーが水溶性を示す温度範囲において、感温性ポリマーを含む水が20〜2000mPa・s(30の℃)の粘度を有する量であることが望ましい。この範囲より粘度が低い場合、消火用水を十分にハイドロゲル状とすることができず高い消火並びに延焼防止効果を期待できない。また、この範囲より高い粘度の場合、輸送・放水操作が困難となり好ましくない。
感温性ポリマーの種類、分子量等によって異なるが、水に対して0.1〜10重量%、好ましくは、0.5〜2重量%程度の水溶液とするとよい。濃度が、0.1重量%未満であると熱による固形化が十分でなく、10重量%を越えると水溶液の粘度が高くなり流動性に乏しくなる場合があり好ましくない。
【0013】
感温性ポリマーを含む消火用水には、必要に応じて、従来より消火用薬剤として使用されている薬剤を添加することもできる。例えば、燐酸第1アンモニウム、燐酸第2アンモニウムのごとき消火剤、防炎剤や、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムのごとき浸透剤としての界面活性剤等を混合溶解して使用しても何ら差し支えないばかりか、感温性ポリマーの固形化作用により防炎剤等の飛散・流出を防止できるため、より効果的に消火並びに延焼防止を行うことができる。
これら消火剤、防炎剤、浸透剤等は、消火用水に対して0.05〜5重量%の濃度で使用することが望ましい。濃度が0.05重量%以下であると防炎剤あるいは浸透剤の効果が乏しく、5重量%以上の添加は感温性ポリマーの析出等を招くため好ましくない。
【0014】
本発明の消火用水は、そのまま一般的な消火方法と同様の方法で放水し消火に用いることができる。例えば、噴霧状又は水滴状にホースより噴出させて、火炎中で固形化して燃焼物面に落下・付着するようにしてもよく、また、従来の消防ホースで噴射させて燃焼物面で固形化するようにしてもよい。
この他、予め感温性ポリマーの濃厚水溶液を調整しておき、消火時に消火用の水に添加しつつ放水するようにしてもよい。
【0015】
【実施例及び試験例】
以下に感温性ポリマーの製造例及び消火剤、消火用水の試験例を示すが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下の例において、特記しない限り%は重量%を示す。
【0016】
製造例1:感温性ポリマーAの製造
2L容量のガラス製セパラブルフラスコに脱塩水1360gを入れ、N−イソプロピルアクリルアミド222.6gを加えて攪拌下溶解した。溶解した溶液を10℃に冷却した後、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸35.5gを加え、攪拌下溶解した。この溶解液の温度を15℃以下に保ちながら、48%苛性ソーダ水溶液を徐々に添加し、溶液のpHを7.0とし、モノマー調整液とした。モノマー調整液を0℃まで冷却した後、窒素ガスをバブリングして脱気した。脱気終了後、重合開始剤として、N,N,N′、N′−テトラメチルエチレンジアミンの10%水溶液14.7ml、ペルオキソ2硫酸アンモニウムの10%水溶液7.4mlを順に加え、重合反応を開始させた。目視にてモノマー調整液の粘度が上昇してきたことを確認し、攪拌並びに窒素ガスバブリングを停止し、密栓状態にて、室温下16時間重合反応を行った。重合終了後、反応容器よりポリマーを取り出し、約5mm角に裁断し、40℃にて真空乾燥、粉砕、分級の後、粒子径1mm以下の感温性ポリマーA260.4gを得た。
得られたポリマーAの1%水溶液の粘度を30℃にて、B型粘度計を用いて測定したところ、1600mPa・sであった。また、ポリマー1%、防炎剤として燐酸第2アンモニウム1%を含む水溶液の場合、30℃下、B型粘度計を用いて測定したところ、140mPa・sであった。感温点55℃〜60℃
【0017】
製造例2:感温性ポリマーBの製造
2L容量のガラス製セパラブルフラスコに脱塩水1360g、N−イソプロピルアクリルアミド208.5g、アクリル酸80%水溶液26.6gを入れ、攪拌下モノマーを溶解した。攪拌下、モノマーを溶解した溶液を15〜20℃に保ちながら、48%苛性ソーダ水溶液を徐々に添加し、溶液のpHを7.0とし、モノマー調整液とした。モノマー調整液を0℃まで冷却の後、窒素ガスをバブリングし脱気した。脱気終了後、重合開始剤として、N,N,N′、N′−テトラメチルエチレンジアミンの10%水溶液14.7ml、ペルオキソ2硫酸アンモニウムの10%水溶液7.4mlを順に加え、重合反応を開始させた。目視にてモノマー調整液の粘度が上昇してきたことを確認し、攪拌並びに窒素ガスバブリングを停止し、密栓状態にて、室温下16時間重合反応を行った。重合終了後、反応容器よりポリマーを取り出し、約5mm角に裁断し、40℃にて真空乾燥、粉砕、分級の後、粒子径1mm以下の感温性ポリマーB230gを得た。
得られたポリマーBの1%水溶液の粘度を30℃下、B型粘度計を用いて測定したところ、1600mPa・sであった。また、ポリマー1%、防炎剤として燐酸第2アンモニウム1%を含む水溶液の場合、30℃下、B型粘度計を用いて測定した該水溶液の粘度は、200mPa・sであった。感温点55℃〜60℃。
【0018】
製造例3:感温性ポリマーCの製造
感温性ポリマーCは、アクリル酸80%水溶液を29.3gとした以外は、製造例2と同様の操作を行い製造した。
得られたポリマーCの1%水溶液の粘度を30℃下、B型粘度計を用いて測定したところ、2000mPa・sであった。また、ポリマー1%、防炎剤として燐酸第2アンモニウム1%を含む水溶液の場合、30℃下、B型粘度計を用いて測定した該水溶液の粘度は、200mPa・sであった。感温点60℃〜70℃
。
【0019】
製造例4:感温性ポリマーDの製造
重合開始剤を投入前のモノマー調整液温度を20℃とした以外は、製造例2と同様の操作を行い感温性ポリマーD229gを得た。
得られたポリマーDの1%水溶液の粘度を30℃下、B型粘度計を用いて測定したところ、600mPa・sであった。また、ポリマー1%、防炎剤として燐酸第2アンモニウム1%を含む水溶液の場合、30℃下、B型粘度計を用いて測定した該水溶液の粘度は、150mPa・sであった。感温点60〜70℃。
【0020】
試験例1
防災剤として燐酸第2アンモニウム0.5%を含む水99gに感温性ポリマーB1gを混合溶解した。得られたポリマー水溶液20mlを、内径18mm、長さ180mmのガラス製ねじ口試験管に入れ、密栓の後、任意の温度に溶液を加温し、溶液の流動性の有無を目視にて確認した。結果を表1に示す。
表中:
○:溶液全体が固形状態(ハイドロゲルを形成した状態)で試験管を傾けても液が全く流動しない。
△:かなり溶液が増粘状態であるが、まだ流動性が認められる状態。
×:流動性のある液体状態を示す。
【0021】
表1:温度感応性試験結果
【0022】
なお、感温性ポリマーBを使用せずに、燐酸第2アンモニウムのみを溶解させた燐酸第2アンモニウム0.5%水溶液の粘度をB型粘度計にて上記の各温度条件下で測定した結果、75℃以下の温度において溶液は、10mPa・s以下の粘度を有する液体状態であった。
【0023】
試験例2
1)感温性ポリマー水溶液の組成
表2に本試験に供した感温性ポリマー水溶液の組成を示す。水としてイオン交換水を使用し、これに各成分(重量%)を加えて100とした。
表中、DOSS・Naはジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを示す。
【0024】
表2
【0025】
2)各溶液の粘度の測定
表2に示した溶液1及び2、並びに溶液3に燐酸水素二アンモニウムを1%加えたもの(溶液3A)、燐酸水素アンモニウム1%とジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.1%を加えた水溶液(溶液3B)の各粘度を表3に示す。
【0026】
表3
【0027】
3)各溶液の感温性試験
試験方法:
▲1▼ 直径13cmの金属製平皿を250℃に均一に加熱した上に試験すべき溶液(試料)を10g、20g、50gを滴下して、状態変化を観測する。
▲2▼ 感温点付近で恒温槽中で試料が均一温度になるまで加温しゲル化又は完全に固形化した状況を観測する。
▲3▼ 試料の加熱・冷却を繰り返すことによりその状態を観察する。
【0028】
結果1:
試験方法▲1▼及び▲2▼の結果を表4に示す。加熱平皿に溶液(試料)を滴下してから水分が蒸発するまでの時間(試験方法▲1▼)と金属製平皿に入れた試料を加温して固形化するか否かを測定した(試験方法▲2▼)。
【0029】
表4:250℃の加熱平皿に滴下して蒸発するまでの時間及び状況
注:○は完全固化する。△は固化するがぶよぶよする。×は固化しない。
なお、平皿滴下時、水は飛散するがその他の溶液は飛散しない。
【0030】
上記表の結果から分かるように、感温性ポリマー2%水溶液に対して4倍程度の水を加えた溶液も加温によって固形化する。そのため、感温性ポリマー量の250倍程度の水を保水することができる。
【0031】
結果2:
試験方法▲3▼の試料として、上記溶液3A(溶液3に燐酸二水素アンモニウム1%を加えたもの)に水を等量加えた溶液(溶液3A:水=1:1)を用い、250℃に加熱して固形化した試料を常温放置して、温度低下による変化を観察した。その結果を表5に示す。
【0032】
表5
【0033】
表5の結果からわかるように、本発明の消火用水は一旦固形化した後は常温付近まで冷却しても燃焼物面に残留し、流出することがない。
【0034】
試験例3
本発明の消火剤、消火用水と従来より使用されている防火薬剤及び他の混入物との併用について検討した。
感温性ポリマーとして製造例3の感温性ポリマーCを用い、表6に示す割合の水溶液として各温度での固形化状態を観察した。結果を表6に示す。
【0035】
表6
注:◎は完全な固形、○は固形(◎より劣る)、*固形化するが分離等あり、△は柔らかい(固形と言えない)、×は全くの液体。
【0036】
表6の結果からわかるように、他の防火薬剤(燐安)及び無機物(炭酸ナトリウム)が溶解していても本発明の消火用水は固形化する。このことは、河川の水に対しても適用できることを示している。
【0037】
試験例4
消火剤として、製造例1で合成した感温性ポリマー100gを用い、燐酸第2アンモニウム50g、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム5gとともに水道水4845gに溶解し消火用水とした。作製した消火用水3Lを水消火器に入れ、圧搾空気を用いて消火器内の圧力を5×105 Paに加圧し、3cm角、長さ50cmの松材5本を1段とし、20段を格子状に積み上げた櫓に着火し、櫓全体が、独立燃焼状態となった後、消火器より消火用水を放水し、消火試験を行った。同一条件での消火試験を10回行い、放水開始から鎮火までに要した平均時間(秒)と使用した消火用水の平均使用量(kg)の積算値を使用した消火用水の消火効率とし、その値を算出したところ、96.7kg・秒であった。更に、消火作業中並びに鎮火直後、放水した消火用水の飛散・流出は認められなかった。
【0038】
試験例5
消火用水として、製造例1で合成した感温性ポリマー50g、燐酸第2アンモニウム50g、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム5gを水道水4845gに溶解したものを用いた以外は、試験例4と同様の操作にて消火試験を行った。その結果、消火効率は100.0kg・秒であった。更に、消火作業中並びに鎮火直後において、放水した消火用水の飛散・流失は認められなかった。
【0039】
比較試験例1
消火用水として、燐酸第2アンモニウム50g、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム5gを水道水4945gに溶解したものを用いた以外は、試験例4と同様の操作にて消火試験を行った。その結果、消火効率は132.2kg・秒であった。更に、消火作業中並びに鎮火直後において、放水した消火用水の飛散・流失が認められた。
【0040】
比較試験例2
水道水を消火用水として用いた以外は、試験例4と同様の操作にて消火試験を行った。その結果、消火効率は255.2kg・秒であった。更に、消火作業中並びに鎮火直後において、放水した消火用水の飛散・流出が認められた。
【0041】
試験例6
直径250mm、深さ70mmの中華鍋に500mlの大豆油を入れガスコンロにて加熱発火させた。発火30秒後に、消火液(消火用水)として、製造例2で合成した感温性ポリマーBの1%水溶液300mlを柄付きのステンレス製ジョッキを用い中華鍋に一括投入し、投入から鎮火に至る時間を測定すると共に、炎の様子を目視にて確認した。その結果、鎮火迄に要した時間は3秒であり、消火液投入時から鎮火に至るまで炎が高く上がる現象は観察されなかった。更に、鎮火後、消火剤がハイドロゲルの膜状となり鍋上部を覆っていることが確認でき、再発火もなかった。
【0042】
試験例7
感温性ポリマーB1%、燐酸アンモニ第2アンモニウム1%、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.1%の水溶液を消火液として用いた以外は、試験例6と同様の評価を行った。その結果、鎮火迄に要した時間は7秒であり、消火液投入時から鎮火に至るまで、炎が高く上がる現象はほとんど観察されなかった。更に、鎮火後、ハイドロゲルの固まりとなった消火剤が、油中に存在することが確認でき、再発火もなかった。
【0043】
試験例8
製造例4で合成した感温性ポリマーD1%の水溶液を消火液として用いた以外は、試験例6と同様の評価を行った。その結果、鎮火迄に要した時間は2秒であり、消火液投入時から鎮火に至るまで、炎が高く上がる現象はほとんど観察されなかった。更に、鎮火後、消火剤がハイドロゲルの膜状となり鍋上部を覆っていることが確認でき、再発火もなかった。
【0044】
比較試験例3
酢酸カリウム25%、四ホウ酸カリウム5%の割合で溶解した水溶液を消火液として用いた以外は、試験例6と同様の評価を行った。その結果、鎮火迄に要した時間は9秒であったが、消火液投入直後に炎が高く上がり、周辺に油が飛散した。鎮火後、再発火については認められなかった。
【0045】
試験例9
消火剤として、製造例4で合成した感温性ポリマーD100gを用い、その1%水溶液3kgを直径2mmφのノズルのついた消火器(ハッタ製:消火訓練用消火器、テスター7)に入れ、窒素ガスを用いて消火器内の圧力を5×105 Paに加圧し、3cm角、長さ50cmの松材5本を1段とし、20段を格子状に積み上げた櫓に着火し、櫓全体が、独立燃焼状態となった後、消火器より消火用水を放水し、消火試験を行った。同一条件での消火試験を10回行い、放水開始から鎮火までに要した平均時間(秒)と使用した消火用水の平均使用量(kg)の積算値を使用した消火用水の消火効率とし、その値を算出したところ、97.6kg・秒であった。更に、消火作業中並びに鎮火直後、放水した消火用水の飛散・流出は認められず、消火後、櫓を1時間放置したが再燃も認められなかった。
【0046】
試験例10
消火用水として、製造例4で合成した感温性ポリマー50g、燐酸第2アンモニウム50g、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム5gを水道水4845gに溶解したものを用いた以外は、試験例9と同様の操作にて消火試験を行った。その結果、消火効率は58.3kg・秒であった。更に、消火作業中並びに鎮火直後において、放水した消火用水の飛散・流出は認められなかった。
【0047】
比較試験例4
消火用水として水道水を使用した以外は試験例9と同様の操作にて消火試験を行った。その結果、消火効率は242.3kg・秒であった。更に、消火終了の後、約20分で再び当初の燃焼状態に近い状態まで再燃した。
【0048】
【発明の効果】
本発明の感温性ポリマーを含む水を消火用水として使用するためには、
▲1▼ 消防に使用する水であるから常温ないし常温より若干高めの温度は液体のままであること、
▲2▼ 火災時の燃焼熱のみで瞬時に水が固まること、
▲3▼ 火災熱に曝されても容易に分解しないこと、
▲4▼ 鎮火後可燃物が冷却して常温になった時にも流動しないこと、
等のことが必要であるが、上記各試験例によって本発明の消火剤、これを水に溶解した消火用水はこれらの条件を満足し、充分に消火・延焼防止能力を有することが認められた。
【0049】
調整原液としての感温性ポリマー2%を含む溶液は、水に比べ60〜300倍の粘度を有するが60℃位までは液体で安定しており、濃厚液として火災現場で固形化することなく消火用の水に供給できる。また、これらの感熱性ポリマーは消火能力のある燐酸第2アンモニウム等を添加することにより感温点を明瞭化することができる。この他、河川の水を使用しても同様に固形化することができるので、都市部の火災のみならず、山林火災等にも使用することができる。
更に、感温性ポリマーとしてN−イソプロピルアクリルアミドを主成分とするポリマー、特にN−イソプロピルアクリルアミド75〜99モル%とアクリル酸ナトリウム1〜25モル%を共重合してなるポリマーを消火剤として用いることにより、天ぷら油火災に対しても、より安全にかつ効率的に使用することができる。
Claims (6)
- 特定の設定温度以下では水溶性で、設定温度以上では水を含んで固形化し、かつ該設定温度が50〜100℃である感温性ポリマーを含む消火剤であって、前記感温性ポリマーが、N−イソプロピルアクリルアミドと他のビニルモノマーを共重合してなるポリマーであり、他のビニルモノマーが、アクリル酸及びその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びその塩、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びその塩のうちのいずれか一種以上であることを特徴とする消火剤。
- 前記感温性ポリマーが、N−イソプロピルアクリルアミド75〜99モル%とアクリル酸ナトリウム1〜25モル%を共重合してなるポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の消火剤。
- 請求項1又は2に記載の消火剤を水に溶解させたことを特徴とする消火用水。
- 前記感温性ポリマーのほかに、前記感温性ポリマーを含む消火剤以外の消火剤、もしくは防炎剤を含むことを特徴とする、請求項3記載の消火用水。
- 水溶液の粘度が20〜2000mPa・s(30℃)であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の消火用水。
- 請求項3〜5いずれかに記載の消火用水を使用することを特徴とする消火方法。
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