JP4273608B2 - 高結晶性の多孔質黒鉛膜及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、高結晶性の多孔質黒鉛化膜、特に結晶化度が75%以上で、微細な連続孔を有する多孔質黒鉛化膜及びその製造方法に関し、この発明の高結晶性の多孔質黒鉛化膜膜は膜の片面から他の面に物質を容易に透過し得る。
【0002】
【従来の技術】
近年、高分子膜を炭化させて炭化膜として使用する技術が提案されている。これにはセルロ−ス、熱硬化性樹脂、ピッチタ−ルを前駆体に用いたものが多い。
【0003】
また、グラファイトの製造方法として、特開昭61−275114号公報、特開昭61−275115号公報、特開昭61−275117号公報になど特定の耐熱性高分子フィルムを熱処理するグラファイトの製造方法が開示されている。
【0004】
また、配向黒鉛については、特開平1−105199号公報、特開平5−17115〜特開平5−17118号公報に開示され、X線モノクロメ−タ−、中性子線モノクロメ−タ−などの放射線光学素子として有用な配向黒鉛結晶体の製造方法が示されている。そこでは、耐熱性高分子フィルムをブロック内部で配向し、フィルム内部で結晶配列がされ、かつフィルム同士が接着していることが重要とされる。そのために、グラファイトに至る熱挙動と構造変化を考慮して、温度領域によって、加圧を調節し、配向歪みの少ない黒鉛ブロックを得ている。
【0005】
従来から炭素類にホウ素化合物を加えて熱処理を行なえば黒鉛化が促進されることがよく知られている。また、特開平8−119613号公報には、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂フィルムあるいは炭化フィルムにホウ素化合物を添加すると、加熱下によって配向度の高い黒鉛体を得られることが開示されている。
【0006】
粉末状の黒鉛、繊維状の黒鉛などをホウ素系化合物の存在下で行う方法が公知である。例えば、粉末の黒鉛は、特開52−106395号公報などに開示されている。また特公昭53−31978号公報、特開47−562号公報には炭素繊維にホウ素化合物を添加して黒鉛繊維を製造する方法が記載されている。
これら公知の方法はいずれも炭素にホウ素化合物を添加して熱処理を行うもので、ホウ素の働きにより黒鉛結晶が発達した炭素体とするものである。
【0007】
また、多孔性炭化膜の製造に関して、本発明者らにより、特願平11−148174号として、平均孔径0.1〜10μmの連続孔を有する多孔質炭化膜に関する発明を特許出願している。この発明によれば、無定形炭化膜から黒鉛化膜にいたる多孔性炭化膜が得られる。しかしながら、黒鉛膜である多孔性炭化膜の結晶化度が約50%程度とかなり低かった。
一方、燃料電池用電極としては、結晶化度の高い良質の黒鉛であることにより、電導性が高く、その結果電池性能がよいために、また、セパレ−タ−として用いる時は黒鉛化していると、加工性がよく、かつ機械的強度、折り曲げ強度が強いために、結晶化度のさらに高い多孔質黒鉛膜が必要となっている
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、膜の片面から他の面に物質を透過し得る高結晶性の多孔質黒鉛化膜及びその製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は、微細な連続孔を有する高耐熱性樹脂製の多孔膜に、ホウ素、ホウ素の酸化物、ホウ素の水酸化物、ホウ素塩あるいはホウ素の炭化物であるホウ素化合物を固体で添加し、あるいはホウ素、ホウ素の酸化物、ホウ素の水酸化物、ホウ素塩あるいはホウ素の炭化物であるホウ素化合物の懸濁液を塗布後乾燥して添加し、嫌気性雰囲気下に加熱して黒鉛化することを特徴とする結晶化度が75%以上で、微細な連続孔を有する多孔質黒鉛化膜の製造方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を次に示す。
1)平均孔径が0.05〜10μmである上記の多孔質黒鉛化膜。
2)結晶化度が90%以上である上記の多孔質黒鉛化膜。
【0011】
3)高耐熱性樹脂がポリイミドである上記の製造方法。
4)多孔膜に、ホウ素、ホウ素の酸化物、ホウ素の水酸化物、ホウ素塩あるいはホウ素の炭化物であるホウ素化合物を固体で添加するか、これらを溶媒に溶解した溶液あるいは懸濁液を塗布後乾燥するか、または金属ホウ素を蒸着してホウ素化合物を添加する上記の製造方法。
5)2600〜3500℃で加熱して黒鉛化する上記の製造方法。
6)等方圧下で加熱して、黒鉛化する上記の製造方法。
この明細書において、連続孔とは任意の表面から細孔が通路状に他の表面まで伸びるいわゆる開放孔をいい、好適には細孔が曲がりくねった通路を通して非直線的に通じているものをいう。
【0012】
この発明の多孔質黒鉛化膜は、結晶化度が75%以上、好適には90%以上で、微細な連続孔を有する有するものであり、特に平均孔径0.05〜10μmの連続孔を有するものである。平均孔径が0.05μm未満では、溶液、特に粘度が高い溶液の浸透性、透過性の機能が発揮しにくいので好ましくない。また、平均孔径が10μmを越えると可撓性が劣るので好ましくない。この発明の多孔質炭化膜の平均孔径は、炭化を行うポリイミド膜の空孔率あるいは加熱温度によって調節することが可能である。そして、細孔は少なくともその一部が連続孔である。
【0013】
この発明の微細な連続孔を有する多孔質黒鉛化膜は、例えば微細な連続孔を有する高耐熱性樹脂製の多孔膜にホウ素化合物を添加し、嫌気性雰囲気下に加熱して黒鉛化することによって得ることができる。
【0014】
前記の微細な連続孔を有する高耐熱性樹脂製の多孔膜としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミドなどの高耐熱性樹脂製の多孔膜(フィルム)、好適には有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを重合したポリイミド前駆体(ポリアミック酸ともいう)溶液を出発材料とするポリイミドの多孔膜からなる。
【0015】
以下、この発明における高耐熱性樹脂の多孔膜の代表例である多孔性ポリイミドフィルムは、例えば次の方法によって製造することができる。他の高耐熱性樹脂の多孔膜も2種の酸成分とアミン成分とから同様にして得ることができる。
ポリイミド前駆体は流延物を溶媒置換速度調節材を介して凝固溶媒と接触させてポリイミド前駆体の析出、多孔質化をおこない、次いで多孔化されたポリイミド前駆体フィルムを熱イミド化あるいは化学イミド化して多孔質ポリイミドフィルムを製造する。
【0016】
前記のポリイミド前駆体とは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分の好ましくは芳香族化合物に属するモノマ−を重合して得られたポリアミック酸或いはその部分的にイミド化したものであり、化学イミド化剤の不存在下あるいは存在下に熱処理(熱処理或いは化学処理)してポリイミドとすることができる。
【0017】
前記のテトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分は、有機溶媒中に大略等モル溶解、重合して、対数粘度(30℃、濃度;0.5g/100mL NMP)が0.3以上、特に0.5〜7であるポリアミック酸であるポリイミド前駆体が製造される。また、重合を約80℃以上の温度で行った場合に、部分的に閉環した部分イミド化であるポリイミド前駆体が製造される。
【0018】
前記のテトラカルボン酸成分としては、3,3’,4,4’− ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、s−BPDAと略記することもある)が好ましいが、2,3,3’,4’− ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、a−BPDAと略記することもある)、2,3,3’,4’− 又は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、あるいは2,3,3’,4’− 又は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸の塩またはそれらのエステル化誘導体であってもよい。ビフェニルテトラカルボン酸成分は、上記の各ビフェニルテトラカルボン酸類の混合物であってもよい。
【0019】
また、前記のテトラカルボン酸成分は、前述のビフェニルテトラカルボン酸類のほかに、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)チオエ−テル、ブタンテトラカルボン酸、あるいはそれらの酸無水物、塩またはエステル化誘導体などのテトラカルボン酸類であってもよい。
【0020】
前記の芳香族ジアミンとしては、例えば、一般式(1)
H2N−R(R1)m−A−(R2)nR‘−NH2 (1)
(ただし、前記一般式において、R及びR‘は直接結合あるいは二価の芳香族環でその少なく1つが二価の芳香族環であり、R1またはR2は、水素、低級アルキル、低級アルコキシなどの置換基であり、Aは、直接結合、O、S、CO、SO2、SO、CH2、C(CH3)2などの二価の基である)で示される芳香族ジアミン化合物が好ましい。
【0021】
前記芳香族ジアミンの具体的な化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル(以下、DADEと略記することもある)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルなどが好ましい。
【0022】
また、前記の芳香族ジアミン成分としては、ジアミノピリジンであってもよく、具体的には、2,6−ジアミノピリジン、3,6−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジンなどが挙げられる。
芳香族ジアミン成分は上記の各芳香族ジアミンを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0023】
前記ポリイミド前駆体は、前記有機溶媒に0.3〜60重量%、好ましくは1%〜30重量%の割合で溶解されているポリイミド前駆体溶液として調製される(重合溶液をそのまま用いても良い)。ポリイミド前駆体の割合が0.3重量%より小さいと多孔質膜を作製した際のフィルム強度が低下するので適当でなく、60重量%より大きいと均一な溶液になりにくいので上記範囲の割合が好適である。また、調製されたポリイミド前駆体溶液の溶液粘度は10〜10000ポイズ、好ましくは40〜3000ポイズである。溶液粘度が10ポイズより小さいと溶液を流延した際に流動により流延厚みが容易に変化してしまい、均一な厚みのフィルムを得るのが容易ではないので適当でなく、10000ポイズより大きいとフィルム状に流延することが困難となるので、上記範囲が好適である。
【0024】
前記のポリイミド前駆体の溶媒として用いる有機溶媒は、パラクロロフェノール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ピリジン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、フェノ−ル、クレゾ−ルなどが挙げられる。
【0025】
ポリイミド前駆体溶液は、フィルム状に流延された後、例えば、少なくとも片面に溶媒置換速度調整材を配した積層フィルムとされ、溶媒置換速度調整材を介して凝固溶媒と接触させることでポリイミド前駆体の析出、多孔質化が行われるる。
前記の積層フィルムを得る方法としては特に制限はないが、該ポリイミド前駆体溶液を基台となるガラス等の板上或いは可動式のベルト上に流延した後、流延物表面を溶媒置換速度調整材で覆う方法、該ポリイミド前駆体溶液をスプレ−法或いはドクタ−ブレ−ド法を用いて溶媒置換速度調整材上に薄くコ−ティングする方法、該ポリイミド前駆体溶液をTダイから押出して溶媒置換速度調整材間に挟み込み、両面に溶媒置換速度調整材を配した3層積層フィルムを得る方法などの手法を用いることができる。
【0026】
前記の溶媒置換速度調整材としては、前記多層フィルムを凝固溶媒と接触させてポリイミド前駆体を析出させる際に、ポリイミド前駆体の溶媒及び凝固溶媒が適切な速度で透過する事が出来る程度の透過性を有するものが好ましい。溶媒置換速度調整材の膜厚は5〜500μm、好ましくは10〜100μmであり、フィルム断面方向に連続した平均径0.01〜10μm、好ましくは0.02〜2μmの孔が十分な密度で分散しているものが好適である。溶媒置換速度調整材の膜厚が上記範囲より小さいと溶媒置換速度が速すぎる為に析出したポリイミド前駆体表面に緻密層が形成されるだけでなく凝固溶媒と接触させる際にシワが発生する場合があるので適当でなく、上記範囲より大きいと溶媒置換速度が遅くなる為にポリイミド前駆体内部に形成される孔構造が不均一となる。
【0027】
前記の溶媒置換速度調整材としては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、セルロ−ス、テフロンなどを材料とした不織布或いは多孔膜などが用いられ、特にポリオレフィン製の微多孔質膜を用いた際に、製造されたポリイミド多孔質フィルム表面の平滑性に優れるので好適である。
【0028】
この溶媒置換速度調整材と積層されたポリイミド前駆体流延物は、溶媒置換速度調整材を介して凝固溶媒と接触させることでポリイミド前駆体の析出、多孔質化が行われる。ポリイミド前駆体の凝固溶媒としては、エタノ−ル、メタノ−ル等のアルコ−ル類、アセトン、水等のポリイミド前駆体の非溶媒またはこれら非溶媒99.9〜50重量%と前記ポリイミド前駆体の溶媒0.1〜50重量%とのの混合溶媒を用いることができる。非溶媒及び溶媒の組合わせには特に制限はないが、凝固溶媒に非溶媒と溶媒からなる混合溶媒を用いた場合に析出したポリイミド前駆体の多孔質構造が均一となるので好適である。
【0029】
または、特願平11−265347号明細書に記載のように、相容性パラメ−タ−が特定の範囲の非溶媒を含む混合溶媒を使用してポリイミド多孔膜を製造してもよい。前記の方法としては、例えば、ポリイミド前駆体0.3〜60重量%と溶媒99.7〜40重量%からなる溶液をフィルム状に流延し、前記ポリイミド前駆体の非溶媒の蒸気に曝露する処理を行った後、凝固溶媒に浸漬もしくは接触させてポリイミド前駆体の多孔質膜とし、得られたポリイミド前駆体の多孔質膜を熱処理或いは化学処理してポリイミド多孔質フィルムとすることができる。
【0030】
前記の非溶媒蒸気へ曝露する処理としては、エタノ−ル、メタノ−ル等のアルコ−ル類、アセトン、水等のポリイミド前駆体の非溶媒を気相として含む気体を該ポリイミド前駆体溶液表面に吹き付け上記非溶媒蒸気を該前駆体溶液中に取り込ませる方法、上記気体を充たした処理槽内で該ポリイミド前駆体溶液を所定時間保持乃至はベルトなどで通過させ上記非溶媒蒸気を該前駆体溶液上で凝縮させる方法などの手法をとることができる。
【0031】
上記非溶媒蒸気曝露処理工程は、該前駆体溶液表面1平方メ−トル当たり非溶媒蒸気が約0.1モル以上凝縮する程度持続させると緻密層の形成阻害に好適である。上記非溶媒蒸気曝露処理を継続する時間に特に上限はないが、該前駆体溶液表面における凝縮した上記非溶媒の量の増加により該前駆体が析出し該前駆体溶液が白濁する直前に終了させると、均質な多孔質構造を得るのに好適である。
【0032】
上記非溶媒蒸気曝露処理工程において該前駆体溶液の温度は室温でよいが、該非溶媒蒸気のポリイミド前駆体溶液表面における凝縮が生じる条件が充たされれば、これに限られない。
上記非溶媒蒸気曝露処理工程において該前駆体溶液の雰囲気は、大気圧の空気中でよいが、該非溶媒蒸気のポリイミド前駆体溶液表面における凝縮が生じる条件が充たされれば、これに限られない。
【0033】
上記非溶媒蒸気曝露処理工程で処理されたポリイミド前駆体溶液の膜は、凝固溶媒と接触させることでポリイミド前駆体の析出、多孔質化を行う。ポリイミド前駆体の凝固溶媒としては、エタノ−ル、メタノ−ル等のアルコ−ル類、アセトン、水等のポリイミド前駆体の非溶媒またはこれら非溶媒99.9〜50重量%と前記ポリイミド前駆体の溶媒0.1〜50重量%との混合溶媒を用いることができる。
【0034】
前記のいずれかの方法によって多孔質化されたポリイミド前駆体の膜は、ついで熱処理或いは化学処理が施されてポリイミドの多孔質膜とされる。ポリイミド前駆体膜の熱処理は、該ポリイミド前駆体多孔質膜をピン、チャック或いはピンチロ−ル等を用いて熱収縮が生じないように固定し、大気中にて280〜500℃で5〜60分間行わうことが好ましい。
【0035】
このようにして製造されるポリイミド多孔質フィルムは、前記製造条件の選択によっても多少異なるが、空孔率30〜85%、好ましくは40〜70%、平均孔径0.1〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、その中でも好ましくは0.1〜1μmで、最大孔径10μm以下である。空孔率が低すぎると、炭化膜として、有効面積が小さくなったり、溶液、特に粘度が高い溶液の浸透性、透過性の機能が発揮しにくいので好ましくない。また空孔率が高すぎると、機械的強度が低下するので好ましくない。平均孔径が0.1μmよりも小さいと、溶液、特に粘度が高い溶液の浸透性、透過性の機能が発揮しにくいので好ましくない。平均孔径が10μmより大きいと燃料電池のセパレ−タ−に用いる場合、反応ガスや排ガスが均一な流れにならず不均一なガスの流れになるから好ましくない。
【0036】
前記の多孔ポリイミドフィルムに添加するホウ素系化合物としては、ホウ素あるいはホウ素の酸化物、水酸化物、炭化物である。これはホウ素が、六角網面の炭素と固溶体を形成し、該網面内を拡散移動することにより、網面の持つ歪みを解消するためであると考えられている。たとえば、炭化ホウ素は2700℃前後で液相を生じ、炭素の六角網目構造中のC位置にB原子がある程度の濃度範囲で置換可能であることから結晶化を促進すると考えられる。
【0037】
ホウ素系化合物の添加方法は、耐熱性樹脂フィルムに、固体で添加する。塗布法によりフィルム面上に塗布する。塗布法による場合は、例えばホウ素においてはホウ酸をエタノールで溶かして用いるなど、塩や塩化物などの化合物として適当な溶媒で溶解させ液状物として塗布することができる。また、金属ホウ素を蒸着することもできる。ホウ素添加量は、2〜20重量%が好ましい。
粒状の炭化ホウ素を添加し、後の焼成の工程に供する。
【0038】
この発明の多孔質黒鉛化膜を得るには、多孔ポリイミドフィルムにホウ素系化合物を添加した多孔性ポリイミドフィルム組成物を、嫌気性雰囲気下で、好適には温度2600〜3500℃まで加熱し、黒鉛化すればよい。このとき加熱と同時に圧力を加えながら処理するのが望ましい。等方加圧の装置で加熱するのが好ましい。等方加圧処理すると、結晶化に伴う収縮に対し等方的に圧力が追従する為に、初期形状を保持しながら等方的に試料全体が収縮するので、前駆体フィルムの形状、例えば多孔質体、複雑形状のものを反映した構造のグラファイト構造物を作製したい場合には、特に好ましい。
【0039】
前記の黒鉛化における嫌気性雰囲気とは、酸素など酸化活性の期待がないことが必要であり、嫌気性気体には、アルゴン、ヘリウム、窒素などが適当である。特に黒鉛化には、アルゴンが好ましい。
【0040】
前駆体を黒鉛化する際、分解物がスム−ズに留去するように、また、いったん蒸発した分解物が再び沈着しないように、不活性ガスの気流中で行うのが好ましい。そのためには、1段目は、温度1000〜1500℃の範囲まで、不活性ガスの気流中で焼成をおこなう。
【0041】
この温度範囲は、多孔性ポリイミドフィルムが徐々に炭化するのが好ましく、分解物を急激に逸散すると、炭素分が留去してしまい、炭化収率が低くなることがあって好ましくない。また構造の欠陥もできやすい。そのためには、昇温速度20℃/分以下、特に0.5〜10℃/分程度の十分遅い速度で昇温することが好ましい。
【0042】
前記の温度1000〜1500℃より高い温度で焼成して、熱分解で蒸発物が無くなったならば、2段目は、等方圧装置で加熱するのがよい。アルゴンガスで、圧力50〜200MPaを印加する。
また、温度範囲1000〜1500℃に昇温した後、ホウ素系化合物を炭化膜に添加して、再び昇温し黒鉛化温度まで加熱してもよい。
【0043】
前記のように加熱と同時に圧力を加えると炭化、あるいは黒鉛化処理することが好ましく、それによって、炭化の際に起こる収縮に伴う形状の変化を抑え、炭化中の前駆体が配向しやすいために、強度の強い炭化物、引いては黒鉛化物ができる。また、ホウ素系化合物の存在と相まって、結晶化度の高い黒鉛構造をもたらす。
また、多孔膜の初期形状を反映するには等方圧が重要である。フィルム面に圧力を加える方法としては、加熱しながら、耐熱性の多孔板、またはフィルムシ−トに挟み込み、炭化及び黒鉛膜の形状に整えるのに好適である。例えば、炭素板、炭素フィルムに挟むのがよい。
【0044】
この発明によれば、好適には、平均孔径0.1〜10μmの連続孔を有する多孔質ポリイミドフィルムを嫌気性雰囲気下で、2600〜3500℃で加熱して結晶化度の高い多孔質黒鉛膜を製造することができる。
この発明の多孔質黒鉛膜は、結晶子サイズが大きく、好適には(002)面方向は100A(オングストロ−ム)以上、特に100〜1000A、(101)面方向は75A以上、特に75〜200Aである。
【0045】
この発明の多孔性黒鉛膜は、微細な連続孔を有していて、結晶化度が75%以上、好適には90%以上、特に95%以上あり、放熱体、伝導体、電池の電極など高品位の黒鉛材料として用いることができる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の各例において、透気度、空孔率、平均孔径、結晶化度は以下によって求めたものである。
【0047】
▲1▼透気度
JIS P8117に準じて測定した。
測定装置としてB型ガ−レ−デンソメ−タ−(東洋精機社製)を使用した。
試料片を直径28.6mm、面積645mm2の円孔に締付ける。内筒重量567gにより、筒内の空気を試験円孔部から筒外へ通過させる。空気100ccが通過する時間を測定し、透気度(ガ−レ−値)とした。
【0048】
▲2▼空孔率
所定の大きさに切取った多孔質フィルムの膜厚、面積及び重量からフィルムのみかけの密度を算出して、次の式(1)によって求めた。式(1)のSは多孔質フィルムの面積、dは膜厚、Wは測定した重量、Dはポリイミド、黒鉛の密度を意味し、ポリイミドの密度は1340kg/m3、黒鉛の密度は1810kg/m3とした。
空孔率(%)=100−100×(W/D)/(S×d)
【0049】
▲3▼平均孔径
多孔質フィルム表面の走査型電子顕微鏡写真より、50点以上の開孔部について孔面積を測定し、該孔面積の平均値から式(2)に従って孔形状が真円であるとした際の平均直径を計算より求めた。式(2)のSaは孔面積の平均値を意味する。
平均孔径=2×(Sa/π)1/2
【0050】
▲4▼結晶化度
黒鉛膜の結晶化度は、黒鉛化膜を粉にして、X線回折を測定し、Ruland法により測定した。
▲5▼格子定数
(002)面、(101)面の面間隔より、黒鉛結晶の格子定数を求めた。
▲6▼結晶子サイズ
(002)面、(101)面のピ−クの半値幅より、Shellerの式に従って求めた。
【0051】
(参考例1)(前駆体多孔ポリイミドフィルムの製造)
テトラカルボン酸成分としてs−BPDAを、ジアミン成分としてDADEを用い、s−BPDAに対するDADEのモル比が0.994で且つ該モノマー成分の合計重量が20重量%になるようにNMPに溶解し、温度40℃、6時間重合を行ってポリイミド前駆体を得た。ポリイミド前駆体溶液の溶液粘度は500ポイズであった。
【0052】
得られたポリイミド前駆体溶液を、ガラス板上に厚みが約150μmになるように流延し、溶媒置換速度調整材として透気度550秒/100ccのポリオレフィン微多孔膜(宇部興産社製、ユ−ポアUP2015)でシワの生じないように表面を覆った。該積層物をメタノ−ル中に5分間浸漬し、溶媒置換速度調整材を介して溶媒置換を行うことでポリイミド前駆体の析出、多孔質化を行った。
析出したポリイミド前駆体多孔質フィルムを水中に15分間浸漬した後、ガラス板及び溶媒置換速度調整材から剥離し、ピンテンタ−に固定した状態で、大気中にて温度300℃、10分間熱処理を行った。ポリイミド多孔質フィルムのイミド化率は80%であり、フィルム断面方向に連続孔を有していた。
【0053】
得られたポリイミド多孔質フィルムの膜厚、透気度、空孔率、平均孔径の測定結果は次の通りである。
測定結果:
膜厚 55μm
透気度 220秒/cc
空孔率 67%
平均孔 0.8μm
【0054】
実施例1
上記ポリイミドフィルムに、平均粒径50μmの粉末状炭化ホウ素を10重量%添加した組成物とし、アルゴンガスの雰囲気中で、通気性の炭素シ−トに挟み込み、昇温速度10℃/分で、1200℃まで昇温した。続いて、熱間等方圧装置(HIP)により、アルゴンガス中、昇温速度5℃/分、圧力150MPaで、温度3000℃まで昇温し、120分保持した。
降温後、得られた黒鉛膜は、光沢のある多孔質膜を呈していた。この多孔質黒鉛膜は、炭化前の空孔より少し小さくなっており、平均孔径は0.2μmであった。走査型電子顕微鏡写真の結果及びメタノ−ルが通過したことより微細な連続孔を有していることが確認された。
【0055】
また、X線回折より、黒鉛の結晶化度は、95%以上であり、格子定数はa軸が2.46A、c軸が6.69A、結晶子サイズは、(002)面方向は420A、(101)面方向は100Aであった。なお、JCPDSのX線カードによると黒鉛の格子定数はa軸2.47A、c軸6.72Aである。
これらの結果より、ほとんど黒鉛の格子定数と一致し、結晶子サイズも十分に大きなものであった。結晶化度もかなり高いものであった。
【0056】
比較例1
ホウ素系化合物を添加せず、参考例1の多孔ポリイミドを使用して、温度1800℃まで昇温し、続いて、アルゴン気流下で温度3000℃まで昇温した。降温後、得られた黒鉛膜は、光沢の多孔質膜を呈していた。
また、X線回折より、黒鉛の結晶化度は65%であり、格子定数はa軸が2.55A、c軸が6.77A、結晶子サイズは、(002)面方向は50A、(101)面間隔は60Aであった。これらの結果より、黒鉛の格子定数に対して、a軸は大きく、結晶子サイズも小さなものに過ぎなかった。
【0057】
【発明の効果】
この発明によれば、膜の片面から他の面に物質を透過し得る、高結晶化度の多孔質黒鉛膜を得ることができる。
また、この発明の方法によれば、高耐熱性樹脂製の多孔膜に特定の材料を添加して黒鉛化するという簡単な操作で高収率で高結晶化度の多孔質黒鉛膜を得ることができる。
Claims (12)
- 微細な連続孔を有する高耐熱性樹脂製の多孔膜に、ホウ素、ホウ素の酸化物、ホウ素の水酸化物、ホウ素塩あるいはホウ素の炭化物であるホウ素化合物を固体で添加し、あるいはホウ素、ホウ素の酸化物、ホウ素の水酸化物、ホウ素塩あるいはホウ素の炭化物であるホウ素化合物の懸濁液を塗布後乾燥して添加し、嫌気性雰囲気下に加熱して黒鉛化することを特徴とする結晶化度が75%以上で、微細な連続孔を有する多孔質黒鉛化膜の製造方法。
- ホウ素添加量は、高耐熱性樹脂製の多孔膜の2〜20質量%である請求項1に記載の多孔質黒鉛化膜の製造方法。
- ホウ素化合物は、ホウ素の炭化物である請求項1又は請求項2に記載の多孔質黒鉛化膜の製造方法。
- 高耐熱性樹脂製の多孔膜がポリイミドの多孔膜である請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質黒鉛化膜の製造方法。
- 高耐熱性樹脂製の多孔膜が、平均孔径0.1〜10μmで、空孔率40〜85%のポリイミドの多孔膜である請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質黒鉛化膜の製造方法。
- 高耐熱性樹脂が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物より選ばれるビフェニルテトラカルボン酸成分を含むテトラカルボン酸成分と、
p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル及び3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルより選ばれる芳香族ジアミン成分とから製造されるポリイミドである請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質黒鉛化膜の製造方法。 - 高耐熱性樹脂が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物より選ばれるビフェニルテトラカルボン酸成分を含むテトラカルボン酸成分と、p−フェニレンジアミンを含む芳香族ジアミン成分とから製造されるポリイミドである請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質黒鉛化膜の製造方法。
- 2600〜3500℃で加熱して黒鉛化する請求項1〜7のいずれかに記載の多孔質黒鉛化膜の製造方法。
- 等方圧下で加熱して、黒鉛化する請求項1〜8のいずれかに記載の多孔質黒鉛化膜の製造方法。
- 多孔質黒鉛化膜の結晶子サイズは、(002)面方向が100A(オングストロ−ム)以上であり、(101)面方向が75A以上である請求項1〜9のいずれかに記載の多孔質黒鉛化膜の製造方法。
- 多孔質黒鉛化膜の平均孔径が0.05〜10μmである請求項1〜10のいずれかに記載の多孔質黒鉛化膜の製造方法。
- 多孔質黒鉛化膜は、放熱体、伝導体又は電池の電極の黒鉛材料用である請求項1〜11のいずれかに記載の多孔質黒鉛化膜の製造方法。
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