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JP4279221B2 - 複合金属材料及びその製造方法、キャリパボディ、ブラケット、ディスクロータ、ドラム並びにナックル - Google Patents
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JP4279221B2 - 複合金属材料及びその製造方法、キャリパボディ、ブラケット、ディスクロータ、ドラム並びにナックル - Google Patents

複合金属材料及びその製造方法、キャリパボディ、ブラケット、ディスクロータ、ドラム並びにナックル Download PDF

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Description

本発明は、複合金属材料及びその製造方法、車両用のキャリパボディ、ブラケット、ディスクロータ、ドラム並びにナックルに関する。
近年、カーボンナノファイバーを用いた複合材料が注目されている。このような複合材料は、カーボンナノファイバーを含むことで、機械的強度などの向上が期待されている。
また、金属の複合材料の鋳造方法として、酸化物系セラミックスからなる多孔質成形体内にマグネシウム蒸気を浸透、分散させ、同時に窒素ガスを導入することで、多孔質成形体内に金属溶湯を浸透させるようにした鋳造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、カーボンナノファイバーは相互に強い凝集性を有するため、複合材料の基材にカーボンナノファイバーを均一に分散させることが非常に困難とされている。また、カーボンナノファイバーは、基材となる例えば金属材料との濡れ性が充分ではない。そのため、現状では、所望の特性を有するカーボンナノファイバーの複合材料を得ることが難しく、また、高価なカーボンナノファイバーを効率よく利用することができない。
また、従来の酸化物系セラミックスからなる多孔質成形体に金属溶湯を浸透させる鋳造方法は、複雑な処理を行うため、工業上の生産は困難である。
特開平10−183269号公報
そこで、本発明の目的は、表面の濡れ性が改善された炭素系材料を含む複合金属材料を及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、複合金属材料を含む材料によって形成された、車両用のキャリパボディ、ブラケット、ディスクロータ、ドラム並びにナックルを提供することにある。
本発明にかかる複合金属材料は、
金属系材料のマトリクス中に炭素系材料を含む複合金属材料であって、
前記炭素系材料は、炭素材料の表面を構成する炭素原子に、元素Xが結合した第1の結合構造を有し、
前記マトリクスは、前記炭素系材料の周囲に、アルミニウム、窒素及び酸素を含む非晶質の周辺相を含み、
前記元素Xは、ホウ素、窒素、酸素、リンから選ばれた少なくとも一つである
本発明の複合金属材料によれば、炭素材料の表面に第1の結合構造を有することによって、金属材料Zと炭素材料との濡れ性を改善することができる。また、第1の結合構造を有することによって、マトリクスのアルミニウムと炭素とが直接反応することを防止し、アルミニウムカーバイト(Al)の生成を防ぐことができる。
本発明にかかる複合金属材料の製造方法は、
エラストマーに、少なくとも炭素材料を混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、
元素Xを有する物質の存在下で、前記複合エラストマーを熱処理し、該複合エラストマー中に含まれる前記エラストマーを気化させて炭素系材料を得る工程(b)と、
元素Wを有する物質の存在下で、溶融した金属材料Zを、炭素系材料の間に浸透させた後、固化させる工程(c−1)と、
を含み、
前記元素Xは、ホウ素、窒素、酸素、リンから選ばれた少なくとも一つであり、
前記元素Wは、窒素及び/または酸素であり、
前記金属材料Zは、アルミニウムであることを特徴とする。
本発明にかかる複合金属材料の製造方法は、
エラストマーに、少なくとも炭素材料を混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、
元素Xを有する物質の存在下で、前記複合エラストマーを熱処理し、該複合エラストマー中に含まれる前記エラストマーを気化させて炭素系材料を得る工程(b)と、
元素Wを有する物質の存在下で、炭素系材料を金属材料Zと共に粉末成形させる工程(c−2)と、
を含み、
前記元素Xは、ホウ素、窒素、酸素、リンから選ばれた少なくとも一つであり、
前記元素Wは、窒素及び/または酸素であり、
前記金属材料Zは、アルミニウムであることを特徴とする。
本発明の製造方法の工程(a)によれば、エラストマーの不飽和結合または基が、炭素材料の活性な部分、特に炭素材料がカーボンナノファイバーの場合、その末端のラジカルと結合することにより、カーボンナノファイバーの凝集力を弱め、その分散性を高めることができる。また、剪断力によって剪断されたエラストマーに形成されたフリーラジカルが、炭素材料の表面を攻撃することで、炭素材料の表面は活性化される。
そして、本発明の製造方法の工程(b)によれば、熱処理によってエラストマーが気化することで、炭素材料の表面に炭素原子と元素Xとが結合した構造を有する炭素系材料が得られる。このような炭素系材料は、工程(c)において、溶融した金属材料Zと結合しやすく、炭素材料と金属材料Zとの濡れ性が改善された複合金属材料が得られる。また、工程(c)において、元素Wと金属材料Zとの非晶質の周辺相が生成されることで、複合金属材料の強度を向上させることができる。
また、本発明にかかる複合金属材料の製造方法は、前記工程(b)で得られた前記炭素系材料を、前記炭素材料よりも融点が低い元素Yを有する物質と共に熱処理し、該元素Yを有する物質を気化させて元素Xに該元素Yが結合する工程(b’)を含むことができる。
本発明の複合金属材料の製造方法の工程(b’)によれば、炭素材料の表面に元素Xと元素Yとが結合した構造を有する炭素系材料が得られる。元素Xと元素Yとの結合構造を有するため、金属材料Zと結合しやすく、炭素材料と金属材料Zとの濡れ性をさらに改善することができる。
本発明におけるエラストマーは、ゴム系エラストマーあるいは熱可塑性エラストマーのいずれであってもよい。また、ゴム系エラストマーの場合、エラストマーは架橋体あるいは未架橋体のいずれであってもよい。原料エラストマーとしては、ゴム系エラストマーの場合、未架橋体が用いられる。
前記エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させる工程(a)は、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール法、密閉式混練法、多軸押出し混練法などを用いて行うことができる。
本発明にかかる複合金属材料の製造方法は、工程(c)として、金属材料Zを前記炭素系材料の上方に配置させた状態で該金属材料Zを溶融させることができる。
本発明にかかる複合金属材料を含む材料によって、車両用ディスクブレーキのキャリパボディ、車両用ディスクブレーキのブラケット、車両用ディスクブレーキのディスクロータ、車両用ドラムブレーキのブレーキドラム及び自動車用ナックルを形成することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施の形態にかかる表面の濡れ性が改善された炭素系材料を含む複合金属材料の製造方法は、エラストマーに、少なくとも炭素材料を混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、元素Xを有する物質の存在下で、複合エラストマーを熱処理し、該複合エラストマー中に含まれるエラストマーを気化させて炭素系材料を得る工程(b)と、元素Wを有する物質の存在下で、溶融した金属材料Zを、炭素系材料の間に浸透させた後、固化させる工程(c−1)と、を含み、前記元素Xは、ホウ素、窒素、酸素、リンから選ばれた少なくとも一つであり、元素Wは、窒素及び/または酸素であり、前記金属材料Zは、アルミニウムである。
本実施の形態にかかる表面の濡れ性が改善された炭素系材料を含む複合金属材料の製造方法は、エラストマーに、少なくとも炭素材料を混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、元素Xを有する物質の存在下で、複合エラストマーを熱処理し、該複合エラストマー中に含まれるエラストマーを気化させて炭素系材料を得る工程(b)と、元素Wを有する物質の存在下で、炭素系材料を金属材料Zと共に粉末成形させる工程(c−2)と、を含み、前記元素Xは、ホウ素、窒素、酸素、リンから選ばれた少なくとも一つであり、元素Wは、窒素及び/または酸素であり、前記金属材料Zは、アルミニウムである。
また、前記工程(b)で得られた前記炭素系材料を、炭素材料よりも融点が低い元素Yを有する物質と共に熱処理し、該元素Yを有する物質を気化させて元素Xに該元素Yが結合する工程(b’)を含むことができる。
本実施の形態にかかる表面の濡れ性が改善された炭素系材料を含む複合金属材料は、金属系材料のマトリクス中に炭素系材料を含む複合金属材料であって、炭素系材料は、炭素材料の表面を構成する炭素原子に、元素Xが結合した第1の結合構造を有し、前記マトリクスは、前記炭素系材料の周囲に、アルミニウム、窒素及び酸素を含む非晶質の周辺相を含み、元素Xは、ホウ素、窒素、酸素、リンから選ばれた少なくとも一つである構造である。
(A)まず、エラストマーについて説明する。
エラストマーは、分子量が好ましくは5000ないし500万、さらに好ましくは2万ないし300万である。エラストマーの分子量がこの範囲であると、エラストマー分子が互いに絡み合い、相互につながっているので、エラストマーは、凝集した炭素材料例えばカーボンナノファイバーの相互に侵入しやすく、したがってカーボンナノファイバー同士を分離する効果が大きい。エラストマーの分子量が5000より小さいと、エラストマー分子が相互に充分に絡み合うことができず、後の工程で剪断力をかけても炭素材料例えばカーボンナノファイバーを分散させる効果が小さくなる。また、エラストマーの分子量が500万より大きいと、エラストマーが固くなりすぎて加工が困難となる。
エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって、30℃で測定した、未架橋体におけるネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が好ましくは100ないし3000μ秒、より好ましくは200ないし1000μ秒である。上記範囲のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)を有することにより、エラストマーは、柔軟で充分に高い分子運動性を有することができる。このことにより、エラストマーと炭素材料例えばカーボンナノファイバーとを混合したときに、エラストマーは高い分子運動によりカーボンナノファイバー相互の隙間に容易に侵入することができる。スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が100μ秒より短いと、エラストマーが充分な分子運動性を有することができない。また、スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が3000μ秒より長いと、エラストマーが液体のように流れやすくなり、炭素材料例えばカーボンナノファイバーを分散させることが困難となる。
また、エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし2000μ秒であることが好ましい。その理由は、上述した未架橋体と同様である。すなわち、上記の条件を有する未架橋体を本発明の製造方法によって架橋化すると、得られる架橋体のT2nはおおよそ上記範囲に含まれる。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法によって得られるスピン−スピン緩和時間は、物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、パルス法NMRを用いたハーンエコー法によりエラストマーのスピン−スピン緩和時間を測定すると、緩和時間の短い第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)を有する第1の成分と、緩和時間のより長い第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する第2の成分とが検出される。第1の成分は高分子のネットワーク成分(骨格分子)に相当し、第2の成分は高分子の非ネットワーク成分(末端鎖などの枝葉の成分)に相当する。そして、第1のスピン−スピン緩和時間が短いほど分子運動性が低く、エラストマーは固いといえる。また、第1のスピン−スピン緩和時間が長いほど分子運動性が高く、エラストマーは柔らかいといえる。
パルス法NMRにおける測定法としては、ハーンエコー法でなくてもソリッドエコー法、CPMG法(カー・パーセル・メイブーム・ギル法)あるいは90゜パルス法でも適用できる。ただし、本発明にかかるエラストマーは中程度のスピン−スピン緩和時間(T2)を有するので、ハーンエコー法が最も適している。一般的に、ソリッドエコー法および90゜パルス法は、短いT2の測定に適し、ハーンエコー法は、中程度のT2の測定に適し、CPMG法は、長いT2の測定に適している。
エラストマーは、主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、炭素材料、例えばカーボンナノファイバーの場合、特にその末端のラジカルに対して親和性を有する不飽和結合または基を有するか、もしくは、このようなラジカルまたは基を生成しやすい性質を有する。かかる不飽和結合または基としては、二重結合、三重結合及び官能基から選択される少なくともひとつであることができる。このような官能基としては、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ニトリル基、ケトン基、アミド基、エポキシ基、エステル基、ビニル基、ハロゲン基、ウレタン基、ビューレット基、アロファネート基および尿素基などがある。
カーボンナノファイバーは、通常、側面は炭素原子の6員環で構成され、先端は5員環が導入されて閉じた構造となっているが、構造的に無理があるため、実際上は欠陥を生じやすく、その部分にラジカルや官能基を生成しやすくなっている。本実施の形態では、エラストマーの主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバーのラジカルと親和性(反応性または極性)が高い不飽和結合や基を有することにより、エラストマーとカーボンナノファイバーとを結合することができる。このことにより、カーボンナノファイバーの凝集力にうち勝ってその分散を容易にすることができる。そして、エラストマーと、炭素材料例えばカーボンナノファイバーと、を混練する際に、エラストマーの分子鎖が切断されて生成したフリーラジカルは、カーボンナノファイバーの欠陥を攻撃し、カーボンナノファイバーの表面にラジカルを生成すると推測できる。
エラストマーとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPR,EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、ブタジエンゴム(BR)、エポキシ化ブタジエンゴム(EBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,CEO)、ウレタンゴム(U)、ポリスルフィドゴム(T)などのエラストマー類;オレフィン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリエステル系(TPEE)、ポリウレタン系(TPU)、ポリアミド系(TPEA)、スチレン系(SBS)、などの熱可塑性エラストマー;およびこれらの混合物を用いることができる。特に、エラストマーの混練の際にフリーラジカルを生成しやすい極性の高いエラストマー、例えば、天然ゴム(NR)、ニトリルゴム(NBR)などが好ましい。また、極性の低いエラストマー、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)であっても、混練の温度を比較的高温(例えばEPDMの場合、50℃〜150℃)とすることで、フリーラジカルを生成するので本発明に用いることができる。
(B)次に、炭素材料について説明する。
炭素材料は、炭素同素体を用いることができ、例えば炭素繊維、カーボンブラック、アモルファスカーボン、グラファイト、ダイヤモンド及びフラーレンなどから選択することができる。ここでいう炭素繊維には、カーボンナノファイバーが含まれる。カーボンブラックの場合、安価で多くのグレードが市場に流通しているため、比較的容易に利用可能である。また、微小物質の炭素材料、例えばカーボンナノファイバーやフラーレンのようなナノマテリアルであれば、少ない配合量であっても高い補強効果などを得ることができる。
炭素材料の配合量は、複合金属材料の種類や用途に応じて設定できる。
本発明におけるカーボンブラックは、種々の原材料を用いた種々のグレードのカーボンブラックを用いることができる。その基本構成粒子(いわゆる一次粒子)単体もしくはそれらが融着して連結したアグリゲート(いわゆる二次凝集体)と呼ばれる状態でもよいが、アグリゲートが発達した比較的高いストラクチャーを有するものが補強用充填剤として用いる場合には好ましい。
本発明に用いられるカーボンブラックは、基本構成粒子の平均粒径が100nm以下、さらに好ましくは50nm以下とすることがさらに好ましい。カーボンブラックの粒子が小さいほど体積効果や補強効果が大きくなるが、実用上、平均粒径が10nm〜30nmが好ましい。
また、カーボンブラックの粒子の大きさは、窒素吸着比表面積によっても表されるが、その場合は、JIS:K6217−2(2001)「ゴム用カーボンブラック−基本特性−第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」の窒素吸着比表面積(m/g)で測定して、10m/g以上、好ましくは40m/g以上である。
また、本発明に用いられるカーボンブラックは、その基本構成粒子が融着したアグリゲートが発達したストラクチャーの高低によって補強効果が影響を受けるため、DBP吸収量が50cm/100g以上、好ましくは100cm/100g以上とすると補強効果が大きい。これは、DBP吸収量が多いと、アグリゲートがより発達したストラクチャーを構成するためである。
本発明に用いられるカーボンブラックは、例えばSAF-HS(N134,N121)、SAF(N110,N115)、ISAF-HS(N234)、ISAF(N220,N220M)、ISAF-LS(N219,N231)、ISAF-HS(N285,N229)、HAF-HS(N339,N347)、HAF(N330)、HAF−LS(N326)、T−HS(N351,N299)、T−NS(N330T)、MAF(N550M)、FEF(N550)、GPF(N660,N630,N650,N683)、SRF−HS−HM(N762,N774)、SRF−LM(N760M,N754,N772,N762)、FT、HCC、HCF、MCC、MCF、LEF、MFF、RCF、RCCなどのグレードの他、トーカブラック、HS−500、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを用いることができる。
炭素材料が炭素繊維、特にカーボンナノファイバーの場合、本実施の形態の複合エラストマーは、カーボンナノファイバーを0.01〜50重量%の割合で含むことが好ましい。
カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmであることが好ましいく、複合エラストマーの強度を向上させるためには0.5ないし30nmであることがさらに好ましい。さらに、カーボンナノファイバーは、ストレート繊維状であっても、湾曲繊維状であってもよい。
カーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラフェンシートが円筒状に閉じた単層構造あるいはこれらの円筒構造が入れ子状に配置された多層構造を有する。すなわち、カーボンナノチューブは、単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていても良く、単層構造と多層構造が混在していてもかまわない。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブといった名称で称されることもある。
単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。
アーク放電法は、大気圧よりもやや低い圧力のアルゴンや水素雰囲気下で、炭素棒でできた電極材料の間にアーク放電を行うことで、陰極に堆積した多層カーボンナノチューブを得る方法である。また、単層カーボンナノチューブは、前記炭素棒中にニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜてアーク放電を行い、処理容器の内側面に付着するすすから得られる。
レーザーアブレーション法は、希ガス(例えばアルゴン)中で、ターゲットであるニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜた炭素表面に、YAGレーザーの強いパルスレーザー光を照射することによって炭素表面を溶融・蒸発させて、単層カーボンナノチューブを得る方法である。
気相成長法は、ベンゼンやトルエン等の炭化水素を気相で熱分解し、カーボンナノチューブを合成するもので、より具体的には、流動触媒法やゼオライト担持触媒法などが例示できる。
炭素材料は、エラストマーと混練される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、エラストマーとの接着性やぬれ性を改善することができる。
(C)次に、元素Xと元素Yについて説明する。
元素Xは、炭素材料と結びつきやすい元素であり、また軽い元素であって、2価以上が好ましく、例えばホウ素、窒素、酸素、リンから選ばれた少なくとも一つであることができる。元素Xは、酸素または窒素であることが好ましい。特に、酸素は、空気中に存在するため、工程(b)の熱処理において容易に用いることができ、活性化した炭素材料、例えばカーボンナノファイバーのラジカルと反応し易いため、元素Xを有する物質として用いることが好ましい。また、酸素は他の金属材料例えばマグネシウムなどと結合し易く、酸素の結合した炭素系材料は金属もしくは半金属の元素Yと容易に結合することができる。
元素Xとして酸素を用いる場合には、工程(b)の熱処理の際の雰囲気中に酸素を含ませておけばよく、元素Xとして窒素を用いる場合には、アンモニウムガス雰囲気で工程(b)を行なえばよい。また、ホウ素、リンなどを元素Xとする場合には、エラストマーに工程(b)に先立ってこれらの元素Xを有する物質を混合させておけばよい。その場合、例えば、工程(a)の混練時に元素Xを有する物質を一緒に混合することができる。
元素Yは、炭素系材料の表面の元素Xに結合してマトリクスとの濡れ性を改善させるものである。通常、炭素材料は、金属材料例えばアルミニウムとの濡れ性がよくないが、元素Yを表面に有する炭素系材料を用いることで濡れ性が改善される。また、工程(a)において、粒子状の元素Yを有する物質をエラストマー中に混合し、あらかじめ分散させておいて、工程(a)において炭素材料をさらに良好に分散させるものとして用いることができる。その場合、工程(a)において、元素Yを有する物質は、炭素材料より前にエラストマーに混合させてもよいし、炭素材料と同時でもよい。
元素Yを有する物質は、使用する炭素材料の平均直径よりも大きい平均粒径であることが好ましい。また、元素Yを有する物質の平均粒径は500μm以下、好ましくは1〜300μmである。また、元素Yを有する物質の形状は、球形粒状に限らず、混合時に元素Yを有する物質のまわりに乱流状の流動が発生する形状であれば平板状、りん片状であってもよい。
元素Yを有する物質としては、元素Yを有する物質が炭素材料より融点の低い金属もしくは半金属であることが好ましく、より好ましくは融点が1000℃以下の低融点(高蒸気圧)金属もしくは半金属が好ましい。元素Yを有する物質の融点が上記の条件を満たせば、工程(c)における熱処理によって炭素材料に損傷を与えることなく元素Yを有する物質を気化させることができる。
元素Yとしては、炭素系材料がアルミニウムからなるマトリクス材料に対して混合されるものである場合、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、カルシウム、チタン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウムから選ばれた少なくとも一つである、ことが好ましい。したがって、元素Yを有する物質としては、これらの元素から選ばれた少なくとも一つの元素Yを含むことができる。これらの元素は、いわゆるアルミニウム合金を構成する元素として用いられるものであり、アルミニウムに対して結合し易く、アルミニウムと結合した状態で安定して存在することができるため好ましい。特に、元素Yとしては、マトリクス材料に含まれるアルミニウムとの結合性が特に良好な、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムなどを用いることができる。特に、炭素材料の表面に元素Xとして酸素が結合した場合には、酸素と結びつきやすいマグネシウムを元素Yとすることが好ましい。したがって、このようにして得られた炭素系材料は、炭素材料の表面に、第1の結合構造と、第2の結合構造と、を有し、第1の結合構造は、炭素材料を構成する炭素原子に、元素Xが結合した構造であり、第2の結合構造は、元素Xに、元素Yが結合した構造である。特に、第1の結合構造が炭素材料を構成する炭素原子に酸素が結合した構造である場合には、前記第2の結合構造は酸素にマグネシウムが結合した構造であることが好ましい。
なお、ここでは、元素Yを有する物質を工程(a)でエラストマーと混練する場合について述べたが、これに限らず、元素Yを有する物質が工程(b’)において、炭素系材料と共に熱処理される状態にあればよい。例えば、工程(b’)において、炭素系材料と共に、元素Yを有する物質を熱処理炉内に配置させ、熱処理によって気化させてもよい。このような場合には、元素Yを有する物質は粒子状でなくてもよい。また、ガス化した元素Yを有する物質を熱処理炉内に導入してもよい。
また、ここでマトリクス材料となるアルミニウムは、主成分がアルミニウムの合金を含むものである。
(D)次に、金属材料Zと元素Wについて説明する。
金属材料Zは、複合金属材料のマトリクスとなる金属系材料を構成するものである。
金属材料Zは、工程(c)において、元素Wを有する物質の存在下で、溶融させて、炭素系材料の間に浸透させた後、固化される。工程(c)については、後述する。
金属材料Zとしては、炭素材料より融点の低い金属であり、かつ元素Yを有する物質よりも融点の高い金属であることが好ましい。金属材料Zは、より好ましくは融点が800℃以下であり、原子量が100以下のいわゆる軽金属が好ましい。このような金属材料Zとしては、アルミニウムがある。
また、工程(a)において、エラストマーにあらかじめ粒子状もしくは繊維状の金属材料Zを混合させておくこともできる。粒子状の金属材料Zの場合には、工程(a)において、炭素材料をさらに良好に分散させることができる。その場合、金属材料Zは、炭素材料より前にエラストマーに混合させてもよいし、炭素材料と同時でもよい。工程(a)でエラストマーと混合される粒子状の金属材料Zは、使用する炭素材料の平均直径よりも大きい平均粒径であることが好ましい。また、金属材料Zの平均粒径は500μm以下、好ましくは1〜300μmである。また、金属材料Zの形状は、球形粒状に限らず、混合時に金属材料Zのまわりに乱流状の流動が発生する形状であれば平板状、りん片状であってもよい。
なお、金属材料Zは、少なくとも前記工程(b’)よりも前に炭素系材料と混合され、前記工程(b’)において、炭素系材料と混合された状態で熱処理炉内に配置されることもできる。例えば、工程(b)で得られた炭素系材料と金属材料Zとをボールミルなどで混合した後、工程(b’)もしくは工程(c)を行なってもよい。このような場合には、金属材料Zは粒子状でなくてもよい。
元素Wは、窒素及び/または酸素であって、元素Wを有する物質を工程(c)における雰囲気ガスとして用いることができる。元素Wは、金属材料Zと結合して、複合金属材料のマトリクスの一部を構成する。元素Wとして窒素及び酸素を用いた場合、複合金属材料のマトリクスは、炭素系材料の周囲にアルミニウム、窒素及び酸素を含む非晶質の周辺相を形成することができる。
(E)次に、エラストマーに炭素材料を混合させ、かつ剪断力によって分散させる工程(a)について説明する。
記工程(a)は、オープンロール法、密閉式混練法、多軸押出し混練法、などを用いて行うことができる。
本実施の形態では、エラストマーに元素Yを有する物質、金属材料Z及び炭素材料を混合させる工程として、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール法を用いた例について述べる。
図1は、2本のロールを用いたオープンロール法を模式的に示す図である。図1において、符号10は第1のロールを示し、符号20は第2のロールを示す。第1のロール10と第2のロール20とは、所定の間隔d、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.1ないし0.5mmの間隔で配置されている。第1および第2のロールは、正転あるいは逆転で回転する。図示の例では、第1のロール10および第2のロール20は、矢印で示す方向に回転している。第1のロール10の表面速度をV1、第2のロール20の表面速度をV2とすると、両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05ないし3.00であることが好ましく、さらに1.05ないし1.2であることが好ましい。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。まず、第1,第2のロール10,20が回転した状態で、第2のロール20に、エラストマー30を巻き付けると、ロール10,20間にエラストマーがたまった、いわゆるバンク32が形成される。このバンク32内に元素Yを有する物質41及び金属材料Z42を加えて、さらに第1,第2のロール10,20を回転させることにより、エラストマー30と、元素Yを有する物質41と、金属材料Z42と、を混合する工程が行われる。ついで、このエラストマー30と元素Yを有する物質41及び金属材料Z42とが混合されたバンク32内に炭素材料40を加えて、第1、第2のロール10,20を回転させる。さらに、第1,第2ロール10,20の間隔を狭めて前述した間隔dとし、この状態で第1,第2ロール10,20を所定の表面速度比で回転させる。これにより、エラストマー30に高い剪断力が作用し、この剪断力によって凝集していた炭素材料が1本づつ引き抜かれるように相互に分離し、エラストマー30に分散される。さらに、元素Yを有する物質41及び金属材料Z42が粒子状であると、ロールによる剪断力はエラストマー内に分散された元素Yを有する物質41及び金属材料Z42のまわりに乱流状の流動を発生させる。この複雑な流動によって炭素材料はさらにエラストマー30に分散される。なお、元素Yを有する物質41及び金属材料Z42の混合前に、エラストマー30と炭素材料40とを先に混合すると、炭素材料40にエラストマー30の動きが拘束されてしまうため、元素Yを有する物質を混合することが難しくなる。したがって、エラストマー30に炭素材料40を加える前に元素Yを有する物質41及び金属材料Z42を混合する工程を行うことが好ましい。
また、この工程(a)では、剪断力によって剪断されたエラストマーにフリーラジカルが生成され、そのフリーラジカルが炭素材料の表面を攻撃することで、炭素材料の表面は活性化される。例えば、エラストマーに天然ゴム(NR)を用いた場合には、各天然ゴム(NR)分子はロールによって混練される間に切断され、オープンロールへ投入する前よりも小さな分子量になる。このように切断された天然ゴム(NR)分子にはラジカルが生成しており、混練の間にラジカルが炭素材料の表面を攻撃するので、炭素材料の表面が活性化する。
さらに、この工程(a)では、できるだけ高い剪断力を得るために、エラストマーと炭素材料との混合は、好ましくは0ないし50℃、より好ましくは5ないし30℃の比較的低い温度で行われる。オープンロール法を用いた場合には、ロールの温度を上記の温度に設定することが望ましい。第1,第2ロール10,20の間隔dは、もっとも狭めた状態においても元素Yを有する物質41及び金属材料Z42の平均粒径よりも広く設定することで、エラストマー30中の炭素材料40の分散を良好に行うことができる。
このとき、本実施の形態のエラストマーは、上述した特徴、すなわち、エラストマーの分子形態(分子長)、分子運動、炭素材料との化学的相互作用などの特徴を有することによって炭素材料の分散を容易にするので、分散性および分散安定性(炭素材料が再凝集しにくいこと)に優れた複合エラストマーを得ることができる。より具体的には、エラストマーと炭素材料とを混合すると、分子長が適度に長く、分子運動性の高いエラストマーが炭素材料の相互に侵入し、かつ、エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によって炭素材料の活性の高い部分と結合する。この状態で、エラストマーと炭素材料との混合物に強い剪断力が作用すると、エラストマーの移動に伴って炭素材料も移動し、凝集していた炭素材料が分離されて、エラストマー中に分散されることになる。そして、一旦分散した炭素材料は、エラストマーとの化学的相互作用によって再凝集することが防止され、良好な分散安定性を有することができる。
また、エラストマー中に所定量の元素Yを有する物質及び金属材料Zが含まれていることで、元素Yを有する物質及び金属材料Zのまわりに発生するエラストマーの乱流のような幾通りもの複雑な流動によって、個々の炭素材料同士を引き離す方向にも剪断力が働くことになる。したがって、直径が約30nm以下の炭素材料や湾曲繊維状の炭素材料であっても、個々に化学的相互作用によって結合したエラストマー分子のそれぞれの流動方向へ移動するため、エラストマー中に均一に分散されることになる。
エラストマーに炭素材料を剪断力によって分散させる工程は、上記オープンロール法に限定されず、既に述べた密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。要するに、この工程では、凝集した炭素材料を分離できる剪断力をエラストマーに与え、エラストマー分子にラジカルを生成させることができればよい。
上述したエラストマーに元素Yを有する物質及び金属材料Zと炭素材料とを分散させて両者を混合させる工程(混合・分散工程)によって得られた複合エラストマーは、架橋剤によって架橋させて成形するか、もしくは架橋させずに成形することができる。このときの成形方法は、例えば圧縮成形工程や押出成形工程などを採用することができる。圧縮成形工程は、例えば元素Yを有する物質及び金属材料Zと炭素材料とが分散した複合エラストマーを、所定温度(例えば175℃)に設定された所望形状を有する成形金型内で所定時間(例えば20分)加圧状態で成形する工程を有する。
エラストマーと炭素材料との混合・分散工程において、あるいは続いて、通常、ゴムなどのエラストマーの加工で用いられる配合剤を加えることができる。配合剤としては公知のものを用いることができる。配合剤としては、例えば、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などを挙げることができる。
(F)次に、上記工程(a)によって得られた複合エラストマーについて述べる。
本実施の形態の複合エラストマーは、基材であるエラストマーに炭素材料が均一に分散されている。このことは、エラストマーが炭素材料によって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、炭素材料によって拘束を受けたエラストマー分子の運動性は、炭素材料の拘束を受けない場合に比べて小さくなる。そのため、本実施の形態にかかる複合エラストマーの第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)及びスピン−格子緩和時間(T1)は、炭素材料を含まないエラストマー単体の場合より短くなる。特に、元素Yを有する物質及び金属材料Zを含むエラストマーに炭素材料を混合した場合には、炭素材料を含むエラストマーの場合より、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)が短くなる。なお、架橋体におけるスピン−格子緩和時間(T1)は、炭素材料の混合量に比例して変化する。
また、エラストマー分子が炭素材料によって拘束された状態では、以下の理由によって、非ネットワーク成分(非網目鎖成分)は減少すると考えられる。すなわち、炭素材料によってエラストマーの分子運動性が全体的に低下すると、非ネットワーク成分は容易に運動できなくなる部分が増えて、ネットワーク成分と同等の挙動をしやすくなること、また、非ネットワーク成分(末端鎖)は動きやすいため、炭素材料の活性点に吸着されやすくなること、などの理由によって、非ネットワーク成分は減少すると考えられる。そのため、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は、炭素材料を含まないエラストマー単体の場合より小さくなる。特に、元素Yを有する物質を含むエラストマーに炭素材料を混合した場合には、炭素材料を含むエラストマーの場合より、さらに第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は小さくなる。
以上のことから、本実施の形態にかかる複合エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって得られる測定値が以下の範囲にあることが望ましい。
すなわち、未架橋体において、150℃で測定した、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないか、あるいは1000ないし10000μ秒であり、さらに第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であることが好ましい。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法により測定されたスピン−格子緩和時間(T1)は、スピン−スピン緩和時間(T2)とともに物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、エラストマーのスピン−格子緩和時間が短いほど分子運動性が低く、エラストマーは固いといえ、そしてスピン−格子緩和時間が長いほど分子運動性が高く、エラストマーは柔らかいといえる。
本実施の形態にかかる複合エラストマーは、動的粘弾性の温度依存性測定における流動温度が、原料エラストマー単体の流動温度より20℃以上高温であることが好ましい。本実施の形態の複合エラストマーは、エラストマーに元素Yを有する物質及び金属材料Zと炭素材料とが良好に分散されている。このことは、上述したように、エラストマーが炭素材料によって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、エラストマーは、炭素材料を含まない場合に比べて、その分子運動が小さくなり、その結果、流動性が低下する。このような流動温度特性を有することにより、本実施の形態の複合エラストマーは、動的粘弾性の温度依存性が小さくなり、その結果、優れた耐熱性を有する。
(G)次に、複合エラストマーを熱処理し、炭素系材料を製造する工程(b)について説明する。
複合エラストマーを熱処理することで、該複合エラストマー中に含まれるエラストマーを気化させる工程(b)によって、元素Yを有する物質及び金属材料Zの周りに炭素材料が分散した、炭素系材料を製造することができる。
このような熱処理は、使用されるエラストマーの種類によって種々の条件を選択することができるが、少なくとも熱処理温度は、エラストマーの気化する温度以上であって、かつ炭素材料、元素Yを有する物質及び金属材料Zが気化する温度よりも低い温度に設定される。
工程(b)は、元素Xを有する物質の存在下で行なわれ、炭素材料を構成する炭素原子に該元素Xが結合した炭素系材料を得ることができる。例えば、複合エラストマーは、元素Xを有する物質を含み、工程(b)の熱処理によって、炭素材料を構成する炭素原子に該元素Xを結合させてもよい。また、例えば、工程(b)は、元素Xを有する物質を含む雰囲気中で行なわれ、炭素材料を構成する炭素原子に該元素Xを有する物質を結合させてもよい。
本実施の形態にかかる工程(b)は、熱処理炉に工程(a)で得られた複合エラストマーを配置し、炉内をエラストマーの気化する温度、例えば500℃に加熱する。この加熱によって、エラストマーは気化し、工程(a)で活性化された炭素材料の表面の炭素は、炉内の雰囲気もしくはエラストマー中に含まれる元素Xと結びついて、表面処理された炭素系材料が製造される。炭素材料の表面は、工程(a)によってせん断されたエラストマー分子のフリーラジカルによって活性化されており、例えば炉内雰囲気中に存在する酸素と容易に結びつくことができる。このようにして得られた炭素系材料の表面は酸化され、活性化されているため、炭素系材料は元素Yもしくは金属材料Zと結合し易い。
(H)次に、工程(b)で得られた炭素系材料を、元素Yを有する物質と共に熱処理する工程(b’)について説明する。
工程(b’)は、工程(b)によって得られた炭素系材料を、炭素材料よりも融点が低い粒子状もしくは繊維状の金属材料Zと、前記金属材料Zよりも融点の低い元素Yを有する物質と共に熱処理し、該元素Yを有する物質を気化させて元素Xに該元素Yを結合させることができる。
工程(b’)の熱処理温度は、工程(b)の熱処理温度よりも高く、元素Yを有する物質を気化することのできる温度以上であって、かつ金属材料Z及び炭素材料が気化する温度よりも低い温度に設定される。
前記工程(b)によって得られた炭素系材料と元素Yを有する物質は、熱処理炉内の温度を元素Yを有する物質の気化する温度以上に加熱されると、元素Yを有する物質が気化し、炭素系材料の表面に結合した元素Xと元素Yとが結合する。
なお、元素Yを有する物質は、上記のように工程(a)においてエラストマーと共に混練して複合エラストマー中にあらかじめ混合してもよいし、複合エラストマーに混合しなくてもよい。複合エラストマー中にあらかじめ元素Yを有する物質を混合しない場合には、工程(b’)における熱処理炉内に炭素系材料とは別に元素Yを有する物質を配置すればよい。熱処理によって気化した元素Yを有する物質は、炭素系材料の表面に結合した元素Xと結合する。いずれにしろ、工程(b’)においては、気化した元素Yを有する物質の存在下に炭素系材料を配置することで、工程(b’)を行うことができる。
また、本実施の形態のように金属材料Zを工程(a)においてエラストマーに混練したことで、金属材料Zの存在によって、炭素系材料の再凝集を防止することができる。
また、このようにして気化した元素Yは、炭素系材料の表面に存在する元素Xと容易に結合し、元素Xと元素Yとの化合物が生成される。ここで、元素Xは、元素Y(もしくは金属材料Z)と炭素材料との直接的な結合を防止することができる。例えば元素Yがアルミニウムであるような場合には、炭素材料とアルミニウムが直接結合すると、Alのような水と反応し易い物質が生成されることなり、好ましくない。したがって、元素Yを気化させる工程(b’)よりも前に、元素Xを炭素材料の表面に結合させる工程(b)を行なうことが望ましい。
(I)最後に、溶融した金属材料Zを、炭素系材料の間に浸透させて複合金属材料を得る工程(c)について説明する。
本実施の形態における工程(c)は、元素Wを有する物質の存在下で、溶融した金属材料Zを、前記工程(b)もしくは工程(b’)で得られた炭素系材料の間に浸透させた後、固化させる工程(c−1)を採用することができる。工程(c−1)において、金属材料Zは、塊状であって、炭素系材料の上方に配置させた状態で該金属材料Zを溶融させることができる。炭素系材料の間に浸透した金属材料Zは、炭素系材料に結合した元素Xもしくは元素Yと結合し、さらに雰囲気中の元素Wとも結合して炭素系材料の周囲に金属系材料の非晶質の周辺相を形成する。
本実施の形態では、工程(b)〜工程(c)を、炭素系材料に溶湯を浸透させるいわゆる非加圧浸透法を用いて製造する方法について、図2及び図3を用いて詳細に説明する。
図2及び図3は、非加圧浸透法によって複合金属材料を製造する装置の概略構成図である。工程(c−1)は、工程(b)もしくは工程(b’)に引き続いて行うことができる。上記実施の形態の工程(a)で得られた複合エラストマーは、元素Yを有する物質として例えば還元剤としてのマグネシウム粒子41と、マトリクスとなる金属材料Zとしてのアルミニウム粒子42と、炭素材料として例えばカーボンナノファイバー40と、混合され、最終製品の形状を有する成形金型内で予備圧縮成形された複合エラストマー4を使用することができる。図2において、密閉された容器1内には、あらかじめ成形された複合エラストマー4が入れられる。その複合エラストマー4の上方にマトリクスとなる金属材料Zの塊例えばアルミニウム塊5が配置される。また、容器1の室内を容器1に接続された減圧手段2例えば真空ポンプによって脱気してもよい。さらに、容器1に接続された注入手段3から元素Xを有する物質及び元素Wを有する物質を容器1内へ導入する。注入手段としては、例えば窒素ガスボンベを用いることができ、導入される窒素ガスには少量ではあるが酸素も含まれる。本実施の態様において、元素Xは酸素であり、元素Wは窒素及び酸素である。
次に、容器1に内蔵された図示せぬ加熱手段によって、容器1内に配置された複合エラストマー4及びアルミニウム塊5をアルミニウムの融点以上まで徐々に昇温して加熱する。まず、加熱された複合エラストマー4を構成する材料の内、最も融点の低いエラストマーが気化して工程(b)が行なわれる。すなわち、炭素材料の表面の炭素原子に元素Xが結合して炭素系材料が得られる。さらに容器1内を昇温すると、金属材料Zよりも融点の低い元素Yを有する物質(マグネシウム粒子41)が気化して工程(b’)が行なわれる。すなわち、気化した元素Yは、炭素系材料の表面の元素Xと結合する。さらに昇温されて加熱されたアルミニウム塊5は、溶融してアルミニウム溶湯(金属材料Zの溶湯)となり、エラストマーが気化してできた空所に浸透する。マグネシウム粒子41は、気化することで、容器1内を還元雰囲気とすることができ、アルミニウム溶湯を還元することでアルミニウム粒子42間に毛細管現象によって浸透する。そして、容器1の加熱手段による加熱を停止させ、アルミニウム(金属材料Z)の溶湯を冷却・凝固させ、図3に示すような炭素系材料が均一に分散された複合金属材料6を製造することができる。なお、元素Yは、マトリクスとなる金属材料Zと結合し易い材料を選択することで、炭素系材料とマトリクスとの濡れ性を良好とすることができ、全体に機械的性質のばらつきが低減され、均質な複合金属材料が得られる。
また、本実施の態様のように工程(a)で元素Yを有する物質を混合してもよいが、工程(b)〜(c)の容器1内に元素Yを有する物質を配置もしくは導入してもよい。
また、上記実施の形態においては非加圧浸透法について説明したが、浸透法であればこれに限らず例えば不活性ガスなどの雰囲気の圧によって加圧する加圧浸透法を用いることもできる。
本実施の形態における工程(c)は、元素Wを有する物質の存在下で、溶融した金属材料Zを、前記工程(b)もしくは工程(b’)で得られた炭素系材料を金属材料Zと共に粉末成形させる工程(c−2)を採用することができる。工程(c−2)において、金属材料Zは、粒子状もしくは繊維状の粉末であって、炭素系材料と共に該金属材料Zを粉末成形させることができる。炭素系材料と金属材料Zは、工程(c−2)に先立ってドライブレンドなどで混合される。好ましくは本実施の形態における工程(a)のように、金属材料Zをあらかじめエラストマーと混練することで、炭素系材料の分散性が向上する。
本実施の形態における工程(c−2)は、例えば上記実施の形態で得られた炭素系材料と金属材料Zとをそのままもしくは金属材料Zと同じ金属のマトリクス金属材料とさらに混合した後、型内で圧縮し、金属材料Zの焼結温度(金属材料Zがアルミニウムの場合550℃)で焼成して複合金属材料を得ることができる。
本実施の形態における粉末成形は、金属の成形加工における粉末成形と同様であり、いわゆる粉末冶金を含み、また粉末原料を用いた場合のみならず、工程(b)もしくは工程(b’)で得られた炭素系材料及び金属材料Zをあらかじめ予備圧縮成形してブロック状とした原料をも含む。なお、粉末成形法としては、一般的な焼結法の他、プラズマ焼結装置を用いた放電プラズマ焼結法(SPS)などを採用することができる。また、炭素系材料とマトリクス金属材料の粒子との混合は、ドライブレンド、湿式混合などを採用できる。湿式混合の場合、溶剤中の炭素系材料の粉末に対して、マトリクス金属材料を混ぜる(湿式混合)ことが望ましい。
このような粉末成形によって製造された複合金属材料は、炭素系材料をマトリクス金属材料(金属材料Z)中に分散させた状態で得られる。特に、金属材料Zと炭素系材料とは、工程(a)ですでに良好に分散しており、そのまま粉末成形することで全体に均質な複合金属材料を得ることができる。また、炭素系材料にマトリクス金属材料をさらに加える場合には、あらかじめ混合した金属材料Zとマトリクス金属材料との配合割合を調整することで、望ましい物性を有する複合金属材料を製造することができる。
工程(c−2)は、前述した工程(c−1)と同様に、粉末成形によって、金属材料Zは、炭素系材料に結合した元素Xもしくは元素Yと結合し、さらに雰囲気中の元素Wとも結合して炭素系材料の周囲に金属系材料の周辺相を形成する。
工程(c−1)及び工程(c−2)によって得られた複合金属材料は、金属系材料のマトリクス中に炭素系材料を含む複合金属材料であって、炭素系材料は、炭素材料の表面を構成する炭素原子に、元素Xが結合した第1の結合構造と、元素Xに元素Yが結合した第2の結合構造と、を有している。さらに、複合金属材料のマトリクスは、炭素系材料の周囲に元素Wと金属材料Zからなる非晶質の周辺相を含む。この周辺相は、例えば元素Wが窒素と酸素を含み、金属材料Zがアルミニウムである場合、炭素系材料の周囲に、アルミニウム、窒素及び酸素を含む非晶質の周辺相として形成される。特に、周辺相は、主な構成元素が金属材料Zと同じアルミニウムであり、マトリクスの結晶質アルミニウムとの濡れ性が良好である。
このような非晶質の周辺相が形成されることで、マトリクスである金属材料Zと炭素系材料との濡れ性が改善された複合金属材料となる。
炭素材料例えばカーボンナノファイバーの表面が、カーボンナノファイバーを構成する炭素原子と元素Xとが結合し、さらに元素Xと元素Yとが結合した構造を有している。したがって、複合金属材料は、炭素材料例えばカーボンナノファイバーの表面は、炭素と元素Xとの化合物層(例えば酸化物層)に覆われ、さらに元素Xと元素Y(例えばマグネシウム)との反応物層に覆われた構造を有している。このような複合金属材料の表面構造については、X線分光分析(XPS)やEDS分析(Energy Dispersive Spectrum)によっても解析することができる。
また、複合金属材料における周辺相については、電界放射走査型電子顕微鏡(FE−SEM)で観察し、照射点近傍の元素分析によって調べることができる。
このようにして得られた複合金属材料は、各種用途に用いることができる。例えば、複合金属材料あるいは複合金属材料を含む材料によって、車両用ディスクブレーキのキャリパボディ、車両用ディスクブレーキのブラケット、車両用ディスクブレーキのディスクロータ、車両用ドラムブレーキのブレーキドラム及び自動車用ナックルを形成することができる。なお、これらキャリパボディ、ブラケット、ディスクロータ、ブレーキドラム及びナックルの全体を本実施の形態にかかる複合金属材料としてもよいが、部分的に複合金属材料を含んでもよい。部分的に複合金属材料を含む場合は、各製品の鋳造等の際に複合金属材料を金型内に配置させてもよいし、各製品の炭素系材料を金型内に配置させて工程(c)を行なってもよい。
図12は、車両用ディスクブレーキの正面図である。図13は、図12における車両用ディスクブレーキのA−A’縦断面図である。図14は、車両用ドラムブレーキの正面図である。図15は、自動車用ナックルの正面図である。
車両用ディスクブレーキのキャリパボディは、例えば図12及び13に示すように、ピンスライド型の車両用ディスクブレーキ80のキャリパボディ82であって、図示せぬ車輪と一体に回転する円板状のディスクロータ90を挟む両側に摩擦材を含むパッド92a,92bを対向配置させて支持する作用部84、反作用部86と、これら作用部84と反作用部86をディスクロータ90の外側を跨いで連結するブリッジ部88とから構成されている。作用部84は、車体の内側にあり、内部にピストン842を有するシリンダ844を有している。ピストン842のディスクロータ90側の先端にはパッド92aが配設されている。反作用部86は、パッド92aに対向する位置にパッド92bが配設されている。
車両用ディスクブレーキのブラケット83は、固定部832をナックルに固定され、キャリパボディ82をブラケット83のキャリパ支持腕834,834にスライド可能に取り付けられている。詳細には、キャリパボディ82の作用部84の両側から突出する取付腕846,846に、反作用部86側に延びる図示せぬ摺動ピンが固定され、ブラケット83のキャリパ支持腕834,834内部でスライド可能に取り付けられている。
自動車用ナックル100は、例えば図15に示すように、サスペンションなどの取り付け用の複数のアーム102を延設し、図示せぬボールベアリングを装着する嵌合孔104がその中央に形成されている。嵌合孔104の内周面は、ボールベアリング取付部106として形成されている。
特に、キャリパボディ82のブリッジ部88、ブリッジ部88と反作用部86のL字状に屈曲した連結部分89、ブラケット83の固定部832、ナックル100のアーム102及びボールベアリング取付部106などは、応力集中箇所であるため、本発明にかかる複合金属材料を用いて補強することが望ましい。キャリパボディ、ブラケット及びナックルなどの全体を本発明にかかる複合金属材料で形成してもよいが、このような応力集中箇所に複合金属材料を補強材として部分的に配置し、この補強材を製品のマトリクス金属材料で鋳ぐるんで形成してもよい。
車両用ディスクブレーキ80のディスクロータ90及び図14に示す車両用ドラムブレーキ96のブレーキドラム98は、摺動面900、982を有するので、本発明にかかる複合金属材料を採用することによって摩耗特性を向上させることができる。例えば、ディスクロータ90は、摩擦材を含むパッド92a,92bが押し当てられる平滑な摺動面900が円板状の本体の外周面の両面に形成されている。また、例えば、ブレーキドラム96は、ブレーキシュー99が押し当てられる摺動面982がブレーキドラム98の内周面に形成されている。特に、ディスクロータ90及びブレーキドラム98の摺動面900、982などは、摺動部分であるため、本発明にかかる複合金属材料を用いて補強することが望ましい。ディスクロータ90、ブレーキドラム98などの全体を本発明にかかる複合金属材料で形成してもよいが、このような摺動部分に複合金属材料を補強材として部分的に組み込んで配置してもよい。
なお、キャリパボディ82、ブラケット83、ディスクロータ90、ドラム98並びにナックル100の本体のマトリクス材料は、製造の容易さなどからアルミニウムを用いている。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜3、比較例1、2)
(1)サンプルの作製
(a)複合エラストマー(未架橋サンプル)の作製
第1の工程:ロール径が6インチのオープンロール(ロール温度10〜20℃)に、表1に示す所定量(100g)の高分子物質(100重量部(phr))を投入して、ロールに巻き付かせた。
第2の工程:高分子物質に対して表1に示す量(重量部)の元素Yを有する物質(マグネシウム粒子)及び金属材料Z(アルミニウム粒子)を高分子物質(エラストマー)に投入した。このとき、ロール間隙を1.5mmとした。なお、投入した元素Yを有する物質と金属材料Zの詳細については後述する。
第3の工程:次に、金属粒子を含む高分子物質に対して表1に示す量(重量部)のカーボンナノファイバー(表1では「CNT」と記載する)を高分子物質に投入した。このとき、ロール間隙を1.5mmとした。
第4の工程:カーボンナノファイバーを投入し終わったら、高分子物質とカーボンナノファイバーとの混合物をロールから取り出した。
第5の工程:ロール間隙を1.5mmから0.3mmと狭くして、混合物を投入して薄通しをした。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。薄通しは繰り返し10回行った。
第6の工程:ロールを所定の間隙(1.1mm)にセットして、薄通しした混合物を投入し、分出しした。
このようにして、実施例1〜3の複合エラストマー(未架橋サンプル)を得た。また、比較例1としてアルミニウムのインゴットを用い、比較例2としてカーボンナノファイバーを用いた。
なお、実施例1〜3において、エラストマーとしては天然ゴム(NR)、EPDM、ニトリルゴム(NBR)を用いた。また、元素Yを有する物質としては平均粒径50μmのマグネシウム粒子を用い、金属材料Zとしては平均粒径50μmの純アルミニウム粒子(99.7%がアルミニウム)を用いた。カーボンナノファイバーは、直径(繊維径)が約10〜20nmのものを用いた。
(b〜c)複合金属材料の作製
上記(a)の実施例1〜3で得られた複合エラストマー(未架橋サンプル)を容器(炉)内に配置させ、アルミニウム塊(純アルミニウムインゴット)をその上に置き、不活性ガス(微量の酸素を含む窒素)雰囲気中でゆっくりとアルミニウムの融点(800℃)まで昇温し、加熱した。この昇温の過程において、まず、エラストマーの気化温度以上でエラストマーが気化し、次に、マグネシウムが気化し、さらに、アルミニウム塊が溶融した。アルミニウムの溶湯は、エラストマーと置換するように複合エラストマーに浸透した。アルミニウムの溶湯を浸透させた後、これを自然放冷して凝固させ、複合金属材料を得た。
(2)パルス法NMRを用いた測定
各複合エラストマーについて、パルス法NMRを用いてハーンエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核がH、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜x)にて、Piをいろいろ変えて減衰曲線を測定した。また、サンプルは、磁場の適正範囲までサンプル管に挿入して測定した。測定温度は150℃であった。この測定によって、原料エラストマー単体、複合エラストマーの第1スピン−スピン緩和時間(T2n)と、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)と、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)と、を求めた。なお、原料エラストマー単体については、測定温度が30℃の場合における原料エラストマー単体の第1スピン−スピン緩和時間(T2n)についても求めた。測定結果を表1に示す。実施例1〜3における第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は、検出されなかった。従って、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は、0(ゼロ)であった。
(3)流動温度の測定
原料エラストマー単体および複合エラストマーについて、動的粘弾性測定(JIS K 6394)によって流動温度を測定した。具体的には、流動温度は、幅5mm、長さ40mm、厚み1mmのサンプルに正弦振動(±0.1%以下)を与え、これによって発生する応力と位相差δを測定して求めた。このとき、温度は、−70℃から2℃/分の昇温速度で150℃まで変化させた。その結果を表1に示す。なお、表1において、150℃までサンプルの流動現象がみられない場合を「150℃以上」と記載した。
(4)XPS分析による炭素系材料の解析
上記(c)で得られた実施例1〜3の複合金属材料中における炭素系材料をXPS分析した結果を表1に示す。表1において、炭素系材料における第1の炭素材料の表面に、炭素と酸素の結合が存在することが確認された場合には「表面酸化」と記載し、炭素と酸素の結合が確認されなかった場合には「無し」と記載した。また、実施例2における炭素系材料のXPSデータの概略図を図4に示す。第1の線分50はC=Oの二重結合を示し、第2の線分60はC−Oの単結合を示し、第3の線分70は炭素同士の結合を示す。
(5)EDS分析による炭素系材料の解析
上記(c)で得られた実施例1〜3の複合金属材料をエネルギー分散型X線分析(EDS)した結果を表1に示す。表1において、炭素系材料の周囲にマグネシウムの存在が確認された場合には「Mg有り」と記載し、マグネシウムが確認されなかった場合には「無し」と記載した。また、実施例1における炭素系材料のEDSデータを図5、図6、図7に示す。図5〜7は、EDS分析した画像データであり、白黒画像では判別しにくいため、ネガポジ反転処理を行うなどした。図5における黒い部分は炭素、つまり第1の炭素材料であるカーボンナノファイバーの存在を示す。図6における黒い部分は、酸素の存在を示す。図7における黒い(色の濃い)部分は、マグネシウムの存在を示す。
(6)圧縮耐力の測定
上記(c)で得られた実施例1〜3の複合金属材料及び比較例1のアルミニウムインゴットについて、厚さ5mmの10×10mmの試験片を、0.01mm/minで圧縮したときの0.2%耐力(σ0.2)を測定した。圧縮耐力は、最大値、最小値及び平均値(MPa)を測定した。その結果を表1に示す。
表1から、本発明の実施例1〜3によれば、以下のことが確認された。すなわち、元素Yを有する物質,金属材料Z及びカーボンナノファイバーを含む複合エラストマーにおける150℃でのスピン−スピン緩和時間(T2n/150℃)は、元素Yを有する物質,金属材料Z及びカーボンナノファイバーを含まない原料エラストマーの場合に比べて短い。また、元素Yを有する物質,金属材料Z及びカーボンナノファイバーを含む複合エラストマーにおける成分分率(fnn/150℃)は、原料エラストマーの場合に比べて小さい。これらのことから、実施例にかかる複合エラストマーでは、カーボンナノファイバーが良く分散されていることがわかる。
さらに、元素Yを有する物質,金属材料Z及びカーボンナノファイバーを含む複合エラストマーにおける流動温度は、原料エラストマー単体の場合に比べて20℃以上高いことから、動的粘弾性の温度依存性が小さく、優れた耐熱性を有することがわかる。
また、実施例1〜3の複合金属材料の電子顕微鏡(SEM)におけるカーボンナノファイバーの分散状態の観察では、カーボンナノファイバーの凝集はほとんど観察されず良好であった。なお、比較例1及び2においては、カーボンナノファイバーを含まず、鋳造もしていないため、顕微鏡観察を行っていない(表1の横棒)。
(7)示差走査熱量分析(DSC)
まず、上記(c)で得られた実施例1の複合金属材料を、約1100℃で真空昇華処理したところ、マトリクスの一部が昇華した。図8は、真空昇華処理後の複合金属材料を、電界放射走査型電子顕微鏡で撮影した写真である。真空昇華処理で昇華せずに残った物質は、複合金属材料の約40重量%であった。そこで、実施例1の複合金属材料を、示差走査熱量分析(DSC)したところ、融解したアルミニウム量は約64重量%であり、不融解分は約36重量%であった。したがって、真空昇華処理で昇華した物質はアルミニウムであり、昇華しなかった物質はカーボンナノファイバーと周辺相であることがわかった。
(8)X線回折による結晶構造の分析
上記(c)で得られた実施例1の複合金属材料を、X線回折(XRD)によって結晶構造の分析を行なった。結晶成分として検出された成分は、ほとんどがアルミニウムであり、上記(7)で複合金属材料の約40重量%をしめる周辺相が結晶構造を有していない非晶質(アモルファス)相であることがわかった。
(9)電界放射走査型電子顕微鏡による元素分析
さらに、上記(c)で得られた実施例1の複合金属材料を、電界放射走査型電子顕微鏡(FE−SEM)で観察し、照射点近傍の元素分析を行なった。複合金属材料の電界放射走査型電子顕微鏡による反射電子像を図9に示す。図9の左下から右上に延びる黒い部分(図9の002点)における元素分析結果を図10に示し、その周りの白いマトリクス(図9の001点)における元素分析結果を図11に示す。図11から白いマトリクス部分は、アルミニウムであることがわかった。また、図9の黒い部分が非晶質の周辺相であることがわかった。さらに、図10の元素分析結果から、非晶質の周辺相(黒い部分)は、アルミニウム、窒素及び酸素の各元素を有することがわかった。
以上のことから、本発明によれば、一般に基材への分散が難しいカーボンナノファイバーを複合金属材料中に分散できることがわかった。また、一般にマトリクス材料との濡れ性のよくないカーボンナノファイバーを、酸素と炭素原子との第1の結合、マグネシウムと酸素との第2の結合、非晶質の周辺相によってマトリクスのアルミニウムとの濡れ性が改善した複合金属材料が得られることがわかった。
本実施の形態で用いたオープンロール法によるエラストマーとカーボンナノファイバーとの混練法を模式的に示す図である。 非加圧浸透法によって炭素繊維複合金属材料を製造する装置の概略構成図である。 非加圧浸透法によって炭素繊維複合金属材料を製造する装置の概略構成図である。 本実施例で得られた炭素系材料のXPSデータの概略図である。 本実施例で得られた炭素系材料のEDSデータ(炭素)を示す図である。 本実施例で得られた炭素系材料のEDSデータ(酸素)を示す図である。 本実施例で得られた炭素系材料のEDSデータ(マグネシウム)を示す図である。 本実施例で得られた複合金属材料のアルミニウムを昇華させた後の電界放射走査型電子顕微鏡写真である。 本実施例で得られた複合金属材料の電界放射走査型電子顕微鏡による反射電子像を示す図である。 図9の002点における元素分析結果を示す図である。 図9の001点における元素分析結果を示す図である。 車両用ディスクブレーキの正面図である。 車両用ディスクブレーキのA−A’縦断面図である。 車両用ドラムブレーキの正面図である。 自動車用ナックルの正面図である。
符号の説明
1 容器
2 減圧手段
3 注入手段
4 複合エラストマー
5 アルミニウム塊
6 複合金属材料
10 第1のロール
20 第2のロール
30 エラストマー
40 第1の炭素材料
41 元素Yを有する物質
42 金属材料Z
80 車両用ディスクブレーキ
96 車両用ドラムブレーキ
100 自動車用ナックル

Claims (26)

  1. 金属系材料のマトリクス中に炭素系材料を含む複合金属材料であって、
    前記炭素系材料は、炭素材料の表面を構成する炭素原子に、元素Xが結合した第1の結
    合構造を有し、
    前記マトリクスは、前記炭素系材料の周囲に、アルミニウム、窒素及び酸素を含む非晶質の周辺相を含み、
    前記元素Xは、ホウ素、窒素、酸素、リンから選ばれた少なくとも一つである、複合金属材料。
  2. 請求項1において、
    前記元素Xは、酸素である、複合金属材料。
  3. 請求項1または2において、
    前記炭素系材料は、前記元素Xに、元素Yが結合した第2の結合構造を有し、
    前記元素Yは、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、カルシウム、チタン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウムから選ばれた少なくとも一つである、複合金属材料。
  4. エラストマーに、少なくとも炭素材料を混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、
    元素Xを有する物質の存在下で、前記複合エラストマーを熱処理し、該複合エラストマー中に含まれる前記エラストマーを気化させて炭素系材料を得る工程(b)と、
    元素Wを有する物質の存在下で、溶融した金属材料Zを、炭素系材料の間に浸透させた後、固化させる工程(c−1)と、
    を含み、
    前記元素Xは、ホウ素、窒素、酸素、リンから選ばれた少なくとも一つであり、
    前記元素Wは、窒素及び/または酸素であり、
    前記金属材料Zは、アルミニウムである、複合金属材料の製造方法。
  5. エラストマーに、少なくとも炭素材料を混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、
    元素Xを有する物質の存在下で、前記複合エラストマーを熱処理し、該複合エラストマー中に含まれる前記エラストマーを気化させて炭素系材料を得る工程(b)と、
    元素Wを有する物質の存在下で、炭素系材料を金属材料Zと共に粉末成形させる工程(c−2)と、
    を含み、
    前記元素Xは、ホウ素、窒素、酸素、リンから選ばれた少なくとも一つであり、
    前記元素Wは、窒素及び/または酸素であり、
    前記金属材料Zは、アルミニウムである、複合金属材料の製造方法。
  6. 請求項4または5において、
    前記複合エラストマーは、元素Xを有する物質を含み、
    前記工程(b)の熱処理によって、前記炭素材料を構成する炭素原子に該元素Xが結合した、複合金属材料の製造方法。
  7. 請求項4または5において、
    前記工程(b)は、元素Xを有する物質を含む雰囲気中で行なわれ、前記炭素材料を構成する炭素原子に該元素Xが結合した、複合金属材料の製造方法。
  8. 請求項4ないし7のいずれかにおいて、
    前記元素Xは、酸素または窒素である、複合金属材料の製造方法。
  9. 請求項4ないし8のいずれかにおいて、
    前記工程(b)で得られた前記炭素系材料を、前記炭素材料よりも融点が低い元素Yを有する物質と共に熱処理し、該元素Yを有する物質を気化させて元素Xに該元素Yが結合する工程(b’)を含む、複合金属材料の製造方法。
  10. 請求項において、
    記元素Yは、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、カルシウム、チタン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウムから選ばれた少なくとも一つである、複合金属材料の製造方法。
  11. 請求項4ないし10のいずれかにおいて、
    前記炭素材料は、カーボンブラックである、複合金属材料の製造方法。
  12. 請求項4ないし10のいずれかにおいて、
    前記炭素材料は、炭素繊維である、複合金属材料の製造方法。
  13. 請求項12において、
    前記炭素繊維は、カーボンナノファイバーである、複合金属材料の製造方法。
  14. 請求項13において、
    前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmである、複合金属材料の製造方法。
  15. 請求項4ないし14のいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、分子量が5000ないし500万である、複合金属材料の製造方法。
  16. 請求項4ないし15のいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、天然ゴムもしくはニトリルブタジエンゴムである、複合金属の製造方法。
  17. 請求項4ないし16のいずれかにおいて、
    前記工程(a)は、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール法を用いて行われる、複合金属材料の製造方法。
  18. 請求項4ないし16のいずれかにおいて、
    前記工程(a)は、密閉式混練法によって行われる、複合金属材料の製造方法。
  19. 請求項4ないし16のいずれかにおいて、
    前記工程(a)は、多軸押出し混練法によって行われる、複合金属材料の製造方法。
  20. 請求項4ないし19のいずれかにおいて、
    前記工程(a)は、0ないし50℃で行われる、複合金属材料の製造方法。
  21. 請求項4ないし20のいずれかに記載の製造方法によって得られた複合金属材料。
  22. 請求項1ないし3のいずれかに記載の複合金属材料を含む材料によって形成された、車両用ディスクブレーキのキャリパボディ。
  23. 請求項1ないし3のいずれかに記載の複合金属材料を含む材料によって形成された、車両用ディスクブレーキのブラケット。
  24. 請求項1ないし3のいずれかに記載の複合金属材料を含む材料によって形成された、車両用ディスクブレーキのディスクロータ。
  25. 請求項1ないし3のいずれかに記載の複合金属材料を含む材料によって形成された、車両用ドラムブレーキのブレーキドラム。
  26. 請求項1ないし3のいずれかに記載の複合金属材料を含む材料によって形成された、自動車用ナックル。
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