JP4290446B2 - ステント型血管補綴材用織成管状体及びそれを用いたステント型血管補綴材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステント型血管補綴材用織成管状体及びそれを用いたステント型血管補綴材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から大動脈瘤や大動脈解離の治療法としては、外科的に病変部を削除し、血管補綴材で置換する方法が基本とされてきた。しかしながら、開腹あるいは開胸操作を伴う手術は、侵襲による患者負担が大きく、危険を伴うものであった。特に、慢性病を有する老人にとっては合併症を誘発する恐れがあり適用が制限されていた。そこで近年、大動脈瘤や大動脈解離に対する低侵襲治療として、カテーテルを経由して、ステントを有する血管補綴材、いわゆるステント型血管補綴材を病変部血管内に誘導し、病変部をステント型血管補綴材で覆い血栓化させることにより病変部への血液流入を防止し、病変部の破裂等を防止するという血管内治療(血管内手術)が注目を集めている。
【0003】
このような血管内治療に用いられるステント型血管補綴材は、小さく折り畳んだ状態でカテーテルに挿入され、病変部まで搬送された後放出され、管状に復元される。ここでステントとは、血管などの体内管状器官を保持するために挿入される筒状の支持骨格であり、血管補綴材においては、管状を機械的に保持するとともに、血管補綴材を血管壁に留置固定するのに作用する。
【0004】
ところが、ステント型血管補綴材はステントを有さない血管補綴材に比べて柔軟性が劣るため、折り畳み性および人体の屈曲した血管への適合性に限界があった。
【0005】
これに対し、間欠位置に配置した折り曲げ自在な複数のリング状線材部(本明細書における「ステント」に相当する)の間を筒状の表装材(本明細書における「織成管状体」に相当する)によって連結した移植用器具(本明細書における「ステント型血管補綴材」に相当する)が開示されている(例えば、特許文献1参照)。ここに開示されるステントは、従来のステント、すなわち長さ方向に連続的に連結した支持骨格を有するステントとは異なり、それ単独ではリング状線材部同士が互いに連結されていない。このような構成により、柔軟性の低下を防止し、折り畳み性、血管形状適合性に優れた移植用器具を得ようとするものである。また、表装材の経糸に保形性を有するモノフィラメントを、緯糸に緻密なマルチフィラメントを使用することにより、リング状線材部が互いに連結されていなくても血液の流れによって押しつぶされることのない程度の保形性と、血液が外部に漏出することのない程度の液密性を達成しようとするものである。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−83978号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
該移植用器具は、該リング状線材部と該表装材の組み合わせに特徴があり、換言するならば、該リング状線材部自体は長さ方向の潰れに対し何ら耐性を有さないため、潰れに対する配慮がなされていない従来の表装材を組み合わせた場合に、血液の流れによって移植用器具が押し潰され、末端部分の間隙から病変部に血液が流れ込んで、致命的欠陥となりかねないのである。
【0008】
しかしながら、経糸にモノフィラメントを使用したことにより、経糸と緯糸の交絡部に隙間が発生しやすいという別の問題が生じた。一般に、経糸、緯糸ともマルチフィラメントを使用した場合には、交絡部においてマルチフィラメント断面が楕円形や扁平形に変形し経糸と緯糸が密着するため隙間は発生しにくい。これに対し経糸、緯糸の一方、あるいは両方にモノフィラメントを使用した場合には、交絡部でもその断面が変化することはなく、経糸と緯糸が密着できずに隙間が発生しやすい。経糸・緯糸間の隙間は液密性を大きく低下させる原因となる。このように、経糸にモノフィラメントを使用した表装材は、緯糸に緻密なマルチフィラメントを用いたとしても、液密性が不十分で、血液の漏出による病変部への血液流入を防止することができず、大動脈瘤や大動脈解離の治療に支障をきたしていたのである。
【0009】
本発明はこのような現状に鑑みて行われたものであり、ステント型血管補綴材として病変部に留置された際に、血液の流れに押し潰されることなく管状を保持できる保形性と、血液の外部への漏出を低減する高い液密性を兼ね備え、病変部への血液流入を防ぐことができるステント型血管補綴材用織成管状体及びそれを用いたステント型血管補綴材を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の扁平率、繊度を満足するモノフィラメントを、ステント型血管補綴材用織成管状体の経糸に使用することが、上記目的を達成するために極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。本発明は、次の構成よりなるものである。
【0011】
扁平率1.2〜5.0、繊度11〜250dtexのモノフィラメントを経糸の少なくとも一部に使用したことを特徴とするステント型血管補綴材用織成管状体。
【0012】
前記ステント型血管補綴材用織成管状体において、単糸繊度0.1〜3.5dtex、単糸数10〜1000本より構成されるマルチフィラメントを緯糸に使用したことを特徴とする。
【0013】
前記ステント型血管補綴材用織成管状体において、クリンプ加工が施されていることを特徴とする。
【0014】
前記ステント型血管補綴材用織成管状体において、分岐部を有することを特徴とする。
【0015】
前記ステント型血管補綴材用織成管状体とステントからなることを特徴とするステント型血管補綴材。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書において「ステント型血管補綴材用織成管状体」を、単に「織成管状体」という場合もある。また、「織成管状体」とは、フラットな織布を縫製、融着などによりつなぎ合わせ管状としたもの、または袋織りの技法、すなわち長さ方向に沿った経糸の間に、円周方向に沿った緯糸を螺旋状に織り込むことにより、製織段階から管状としたものをいう。
【0017】
本発明のステント型血管補綴材用織成管状体は、扁平率1.2〜5.0、繊度11〜250dtexのモノフィラメントを経糸の少なくとも一部に使用して製織したものであり、該モノフィラメントの剛性により血液の流れに押し潰されることのない保形性を得ることができ、かつ、該モノフィラメントの断面形状により血液の外部への漏出を低減する高い液密性を得ることができる。
【0018】
織成管状体の経糸に使用されるモノフィラメントの扁平率は1.2〜5.0、好ましくは1.5〜3.0である。ここで、扁平率とは、図1に示すように糸断面に外接する長方形を描いたとき、この長方形の長辺Lを短辺Sで割った値をいい、扁平率が大きいほど糸断面は横長あるいは扁平なものとなる。図2(a)は、織成管状体において、経糸の断面と緯糸との関係を示す図面である。図2(a)において、経糸であるモノフィラメント21aは、緯糸23aによってその短辺が織布の厚み方向に沿うような状態で配置される。図3は、経糸の短辺が織布の厚みの方向に沿うような状態で配列する方法の一例を説明する図面である。図3において、経糸31が緯糸33との製織部に供給される前に、セパレーター34を通過する。すなわち、経糸31の短辺が織布の厚みに沿うような状態で配置する方法として、例えば、経糸31を経糸の断面形状とほぼ同じ大きさ、同じ形状の孔を通過させた後、綜絖35、筬36を通し、緯糸33との製織部に供給する方法を挙げることができる。扁平率が1.2より小さいと、該モノフィラメントを経糸の少なくとも一部に使用した織成管状体において、経糸・緯糸間の隙間が発生しやすく、液密性が不十分となって血液の漏出を防止できない。また、扁平率が1に近いほど、織成管状体の壁厚が増大する。扁平率が5.0より大きいと、製糸性、製織性が損なわれ、工業的安定性が低下する。なお、特定の扁平率の関係を満たせば、断面形状は楕円形(a)、長方形(b)、扁平形(c)、W字扁平形(d)、三ッ山扁平形(e)などを含めることができ、特に限定されない(図4を参照のこと)。
【0019】
該モノフィラメントの繊度は11〜250dtex、好ましくは30〜80dtexである。繊度が11dtexより小さいと、製織性が損なわれ、工業的安定性が低下する。また、剛性が小さくなり、該モノフィラメントを経糸の少なくとも一部に使用した織成管状体、該織成管状体を使用したステント型血管補綴材において、十分な保形性が得られず、長さ方向の潰れに対し十分な耐性が得られない。繊度が250dtexより大きいと、織成管状体の壁厚が増すとともに剛性が大きくなりすぎて、織成管状体および該織成管状体を用いたステント型血管補綴材を小さく折り畳むことが困難となる。このため、血管内治療において径の大きなカテーテルが必要となり、血管内への挿入、血管内の移動が難しく、さらには病変部を損傷する危険もある。
【0020】
扁平率、繊度が特定範囲内にあるモノフィラメント(本明細書において「本発明のモノフィラメント」という場合もある)を、織成管状体を形成する経糸の少なくとも一部に使用することにより、ステント型補綴材として病変部に留置された際に、血液の流れに押し潰されることなく管状を保持できる保形性と、血液の外部への漏出を低減する高い液密性を兼ね備え、病変部への血液流入を防ぐことができるステント型血管補綴材用織成管状体を得ることが可能となる。このようなモノフィラメントを製造するためには、従来公知の紡糸方法を採用することができ、目的とするモノフィラメントの断面形状や繊度に応じた紡糸口金(形状、孔径)を選択して用いればよい。
【0021】
経糸に使用される本発明のモノフィラメント以外の糸条(本明細書において「その他の糸条」という場合もある)は特に限定されるものではなく、たとえば血管補綴材料として従来から使用されているマルチフィラメント、すなわち単糸繊度0.1〜3.5dtex、単糸数10〜1000本より構成されるマルチフィラメントを使用することができる。
【0022】
単糸繊度が0.1dtexより小さいと織成管状体の強度(破断強度、破裂強度)が弱くなる。単糸繊度が3.5dtexより大きいと、本発明のモノフィラメントと組み合わせて使用した場合に、織成管状体の壁厚が増すとともに剛性が大きくなりすぎて、織成管状体および該織成管状体を用いたステント型血管補綴材を小さく折り畳むことが困難となる。
【0023】
単糸断面の形状は特に限定されず、円形であっても異形であっても構わない。
【0024】
単糸数が10本より少ないと液密性が不十分となり血液の漏出を防止できない。単糸数が1000本より多いと、製織過程において糸切れ、毛羽立ち等の欠点が発生しやすく工業的安定性が低下する。
【0025】
上記構成よりなるマルチフィラメントの総繊度は、33〜110dtexであることが好ましい。総繊度が33dtexより小さいと本発明のモノフィラメントと組み合わせて使用した場合に、織成管状体の強度(破断強度、破裂強度)が弱くなる。総繊度が110dtexより大きいと織成管状体の壁厚が増すとともに剛性が大きくなりすぎて、織成管状体および該織成管状体を用いたステント型血管補綴材を小さく折り畳むことが困難となる。
【0026】
経糸に使用されるその他の糸条としては、たとえば上記マルチフィラメントより適宜選択可能であるが、好ましくは組み合わせとなる本発明のモノフィラメントと同程度の総繊度を有するマルチフィラメントである。経糸に使用する本発明のモノフィラメントとその他の糸条の繊度が大きく異なると、織成管状体表面が不均一となるため、液密性が不十分となる恐れがある。また、強度(破断強度、破裂強度)や壁厚のバラツキが大きくなる。
【0027】
該マルチフィラメントの撚り数は0〜1000回/mであることが好ましい。撚り数が少ないほど単糸同士のねじれや重なりが発生しにくく液密性は良好であるが、製織安定性の点から1000回/m以下の撚りがかかっていても構わない。撚り数が1000回/mより多いと、単糸同士のねじれや重なりが影響し、織成管状体の液密性が不十分となる。製織安定性、液密性のバランスから、マルチフィラメントの撚り数は200〜500回/mであることがより好ましい。
【0028】
経糸における本発明のモノフィラメントとその他の糸条の使用比率は、織成管状体を形成する総経糸本数を100とした場合に、25:75〜100:0が好ましく、これらは均等に配置されることが好ましい。使用比率が25:75より小さいと十分な保形性が得られず、長さ方向の潰れに対して織成管状体および該織成管状体を用いたステント型血管補綴材において十分な耐性が得られない。使用比率を25:75〜100:0の範囲内で調整することにより、長さ方向の潰れに対する耐性を調整することができる。つまり、本発明のモノフィラメントの使用比率を大きくするほど、織成管状体および該織成管状体を用いたステント型血管補綴材では、長さ方向の潰れに対して耐性が大きくなる。
【0029】
織成管状体を形成する緯糸は特に限定されるものではなく、経糸に使用されるその他の糸条の場合と同様、たとえば血管補綴材料として従来から使用されているマルチフィラメント、すなわち単糸繊度0.1〜3.5dtex、好ましくは0.1〜1.0dtex、単糸数10〜1000本より構成されるマルチフィラメントを使用することができる。単糸繊度が0.1〜1.0dtexであると、織成管状体がより緻密化されて液密性が向上する。さらに、総繊度33〜110dtex、撚り数0〜1000回/m、より好ましくは200〜500回/mのマルチフィラメントが望ましい。単糸断面形状は特に限定されず、円形であっても異形であっても構わない。
【0030】
上記条件を満たすマルチフィラメントを織成管状体の緯糸に用いることで、強度(破断強度、破裂強度)や折り畳み性を損なうことなく、本発明の特長の一つである液密性を最大限に引き出すことが可能となる。
【0031】
本発明の織成管状体の経糸に使用される本発明のモノフィラメント、経糸に使用されるその他の糸条、および緯糸に使用される糸条の素材としては特に限定されるものではないが、血管補綴材料としての使用実績からポリエステル系繊維が好ましい。ポリエステル系繊維は化学的に安定で耐久性が大きく、機械的強度も高く、毒性や異物反応がないことから、血管補綴材料として広く用いられてきた。ポリエステル系繊維として具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体、及びこれらの複合繊維などを挙げることができる。
【0032】
織成管状体の織り組織は特に限定されるものでなく、例えば平織り、綾織り、朱子織り、梨地織りなどが挙げられるが、壁厚を薄く、且つ強度(破断強度、破裂強度)や液密性に優れた管状体を得やすいという理由により平織りが好ましい。
【0033】
このようにして得られる本発明のステント型血管補綴材用織成管状体は、ステント型血管補綴材として病変部に留置された際に、血液の流れに押し潰されることなく管状を保持できる保形性と、血液の外部への漏出を低減する高い液密性を兼ね備えている。中でも、カラム強度、キンク半径、透水率、壁厚などの値が特定範囲内にある織成管状体は、本発明の最大の特長である保形性、液密性に加え、ステント型血管補綴材として当然具備すべき耐キンク性や折り畳み性に優れ、血管内治療において極めて有用である。
【0034】
織成管状体のカラム強度は0.020〜0.130N/mmφであることが好ましい。ここで、カラム強度とは、長さ方向の潰れに対する強さ(耐性)を表し、この値が大きいほど長さ方向の潰れに対し耐性を有することを意味する。カラム強度が0.020N/mmφより小さいと、ステント型血管補綴材として病変部に留置された際に、血液の流れによって押し潰され病変部に血液が流入する恐れがある。カラム強度が0.130N/mmφより大きいと、織成管状体の剛性が大きくなりすぎて織成管状体および該織成管状体を用いたステント型血管補綴材を小さく折り畳むことが困難となる。また、ステント型血管補綴材として留置後、血管に柔軟に追従しづらくなる。
【0035】
織成管状体のキンク半径は織成管状体の内径によって異なり、内径が大きいほどキンク半径も大きくなる傾向にある。したがって、キンク半径を一律に規定することはできないものの、たとえば、織成管状体の内径を24mmとした場合に、キンク半径は5.5mm以下であることが好ましい。ここで、キンクとは、体内での屈曲や外圧により血管補綴材が折れ曲がる現象をいい、耐キンク性はキンク半径(血管補綴材をループさせていき、外見上明らかに折れ曲がりが生じる半径)を指標として表される。すなわち、キンク半径が小さいほど折れ曲がりに対し耐性が大きいことを意味する。キンク半径が0mmに近いほど、複雑な血管内の屈曲部位においても、織成管状体および該織成管状体を用いたステント型血管補綴材の挿入および留置が容易となることから好ましい。本発明の織成管状体のキンク半径は、内径を24mmとした場合に5.5mm以下であることが好ましく、これより大きいと、ステント型血管補綴材として病変部に留置された際に、屈曲した人体の血管形状に適合できない恐れがある。
【0036】
本発明の織成管状体は、本来、ステントと組み合わせて、大動脈瘤や大動脈解離の治療に適用することを前提としており、その内径は通常7〜54mmである。しかしながら個体差もあり、この範囲に限定されるものではない。
【0037】
織成管状体にはクリンプ加工が施されていることが好ましい。クリンプ加工を施すことにより、本発明の織成管状体およびこれを使用したステント型血管補綴材の屈曲性がより優れたものとなり、人体の血管形状に無理なく適合することが可能となる。すなわち、キンク半径が小さくなり、耐キンク性が向上するのである。また、折り畳まれたステント型血管補綴材の復元動作にも、クリンプが有効に作用する。織成管状体にクリンプを付与する方法としては、従来公知の方法、たとえば、米国特許3337673号や特開平1−155860号に開示される方法などを好ましく採用することができる。
【0038】
織成管状体の透水率は500ml/min/cm2以下であることが好ましい。透水率は液密性と密接に関係しており、この値が0ml/min/cm2、もしくは0ml/min/cm2に近いほど、織成管状体からの血液の漏出を防止でき、血栓化を促進させることができるので好ましい。好ましい透水率の上限は500ml/min/cm2で、これよりより大きいと、ステント型血管補綴材として病変部に留置された際に、織成管状体から血液が漏れ出し、病変部への血液流入を防止できない恐れがある。
【0039】
織成管状体の壁厚は150μm以下であることが好ましい。壁厚が150μmより大きいと、織成管状体および該織成管状体を用いたステント型血管補綴材を小さく折り畳むことが困難となる。前述したように、折り畳み性はステント型血管補綴材の構成において重要なパラメーターであり、折り畳み性が劣るものは血管内治療において大きな径のカテーテルを必要とし、操作性を低下させることにつながる。
【0040】
織成管状体は、分岐部を有するものであってもよい。生体血管の分岐部分に動脈瘤が形成された場合、たとえば、腹部大動脈から総腸骨動脈にいたる血管に動脈瘤が生じた場合に、ストレートタイプのステント型血管補綴材を複数個用いて治療にあたることも可能であるが、手術操作は複雑で多大な時間を要する。このような場合には、分岐部を有するステント型血管補綴材を使用することが、患者負担や安全性の面から好ましく、合理的である。
【0041】
本発明の織成管状体は、特開2000−83978に開示されるステント、すなわちリング状線材部を間欠位置に配置したステントに代表されるように、それ自体では長さ方向の潰れに対し耐性を有さないステントに適用することが好ましく、保形性に優れるという本発明の特長を最大限に発揮することができるが、これに限定されるものではない。
【0042】
また、保形性および液密性に優れるという特長により、ステントを有さない血管補綴材としても有効に用いることができる。
【0043】
図5は、本発明のステント型血管補綴材用織成管状体の一例を示す図面である。図5において、50はステント型血管補綴材用織成管状体を示す。
【0044】
図6は、本発明のステント型血管補綴材の一例を示す図面である。図6において、織成管状体60がステント67に取り付けられている。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
<測定方法>
▲1▼カラム強度(N/mmφ)
長さ50mmの織成管状体を、長さ30mmまで押し潰す際に必要とする力を引張り圧縮試験機により測定した。なお、mmφは織成管状体の内径値を示す。
【0047】
▲2▼キンク半径(mm)
「人工血管ガイドライン」(ISO7198 Cardiovascularimplants−Tubular vascular prostheses)を参考に測定した。織成管状体をループさせていき、外観上明らかに折れ曲がりが生じた半径を半径既知の円筒状治具を用いて測定した。織成管状体自体の特性を評価するため、内圧維持は行わなかった。
【0048】
▲3▼透水率(ml/min/cm2)
「人工血管ガイドライン」を参考に測定した。0.5〜1.0cm2の試料面に、120mmHg(16.0kPa)の水を供給し、透過する水量を1分間測定した。透過水量を1.0cm2当たりに換算し、透水率とした。なお、透水率の測定は、クリンプ加工を施す前の織成管状体について行った。
【0049】
▲4▼壁厚(μm)
「人工血管ガイドライン」を参考に、定圧厚さ計を用いて壁厚を測定した。なお、壁厚の測定は、クリンプ加工を施す前の織成管状体について行った。
【0050】
(実施例1)
経糸に断面形状が楕円形であって、扁平率1.2、繊度33dtexのポリエチレンテレフタレート製モノフィラメント(本発明のモノフィラメント)、緯糸に単糸断面形状が円形であって、単糸扁平率1.0、単糸繊度0.55dtex、単糸数170本より構成される総繊度94dtex、撚り数200回/mのポリエチレンテレフタレート製マルチフィラメントを用いて内径24mm、平織り組織の管状体を袋織りにより作成し、クリンプ加工を施して、目的のステント型血管補綴材用織成管状体を得た。
【0051】
(実施例2)
経糸に断面形状が楕円形であって、扁平率2.0、繊度33dtexのポリエチレンテレフタレート製モノフィラメント(本発明のモノフィラメント)を用いた以外は実施例1と同じ方法で、目的のステント型血管補綴材用織成管状体を得た。
【0052】
(実施例3)
経糸に断面形状が楕円形であって、扁平率5.0、繊度33dtexのポリエチレンテレフタレート製モノフィラメント(本発明のモノフィラメント)を用いた以外は実施例1と同じ方法で、目的のステント型血管補綴材用織成管状体を得た。
【0053】
(実施例4)
経糸に断面形状が扁平形であって、扁平率5.0、繊度250dtexのポリエチレンテレフタレート製モノフィラメント(本発明のモノフィラメント)を用いた以外は実施例1と同じ方法で、目的のステント型血管補綴材用織成管状体を得た。
【0054】
(実施例5)
経糸に断面形状が楕円形であって、扁平率2.0、繊度33dtexのポリエチレンテレフタレート製モノフィラメント(本発明のモノフィラメント)、および単糸断面形状が円形であって、単糸扁平率1.0、単糸繊度2.8dtex、単糸数12本より構成される総繊度33dtex、撚り数300回/mのポリエチレンテレフタレート製マルチフィラメントを50:50の比率で用いた以外は実施例1と同じ方法で、目的のステント型血管補綴材用織成管状体を得た。なお、経糸と緯糸との交絡部において、マルチフィラメント(経糸の一部と、緯糸に使用)の断面はそれぞれ楕円形に変形しており、その扁平率は、経糸において2.0であった。
【0055】
(比較例1)
経糸に断面形状が円形であって、扁平率1.0、繊度33dtexのポリエチレンテレフタレート製モノフィラメントを用いた以外は実施例1と同じ方法で、ステント型血管補綴材用織成管状体を得た。
【0056】
図2(b)は得られた織成管状体における経糸・緯糸間の隙間を示す図面である。図2(b)において、経糸21bであるモノフィラメントの円形断面は、緯糸23bであるマルチフィラメントの間に配列している。
【0057】
(比較例2)
経糸に断面形状が円形であって、扁平率1.0、繊度250dtexのポリエチレンテレフタレート製モノフィラメントを用いた以外は実施例1と同じ方法で、ステント型血管補綴材用織成管状体を得た。
【0058】
(比較例3)
市販の血管補綴材(ポリエチレンテレフタレート製、内径24mm、平織り組織、袋織り、クリンプ加工有り)について性能を評価した。
【0059】
用いられている糸条の繊度、単糸数については次のように求めた。すなわち、糸断面を電子顕微鏡で観察し、単糸数、単糸直径を計測した。次いで、単糸直径から単糸繊度を算出し、単糸繊度、単糸数から総繊度を算出した。この結果、経糸は単糸断面形状が円形であって、単糸扁平率1.0、単糸繊度0.58dtex、単糸数216本より構成される総繊度125dtexのマルチフィラメント、緯糸は単糸断面形状が円形であって、単糸扁平率1.0、単糸繊度0.58dtex、単糸数144本より構成される総繊度84dtexのマルチフィラメントであった。また、経糸と緯糸の交絡部において、糸断面(単糸の集合体であるマルチフィラメントの断面)はそれぞれ楕円形に変形しており、その扁平率は、経糸において2.5であった。なお、▲3▼透水率、▲4▼壁厚は、熱処理によりクリンプを除去した血管補綴材について測定した。
【0060】
以上、実施例1〜5、及び比較例1〜3における評価結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
(実施例6)
実施例1〜5で作成された、全長60mmのステント型血管補綴材用織成管状体に、特開2000−83978に開示されるリング状線材部を、15mm間隔で縫着してステント型血管補綴材を作成し、血管を模倣した内径24mm、外形28mmの樹脂チューブ内にカテーテルを経由して留置した。なお、該チューブのステント型血管補綴材留置位置は半径50mmの円筒外周に沿って湾曲させられており、さらにステント型血管補綴材留置位置の大湾側には内径10mmのチューブにより分枝が形成されている。該ステント型血管補綴材留置後に、該チューブ内に血液に見立てた水を流したところ、水流による形状の潰れもなく内腔が保持され、また、該分枝からの水の漏出もなく、良好な留置結果を得ることができた。
【0063】
(比較例4)
比較例1〜3で作成された、全長60mmのステント型血管補綴材用織成管状体に、特開2000−83978に開示されるリング状線材部を、15mm間隔で縫着してステント型血管補綴材を作成し、実施例6と同様にチューブ内に留置し、該チューブ内に血液に見立てた水を流した。
【0064】
この結果、比較例1においては、水流による形状の潰れは見られなかったものの、透水率が大きいために分枝からの水の漏出が顕著になり、臨床使用において瘤内への血流の十分な遮断が行われないことが懸念された。
【0065】
比較例2においては、壁厚が厚いために、カテーテルを経由する際にカテーテル内でのステント型血管補綴材の摺動抵抗が増加し、留置操作が困難であった。また、比較例1と同様、水流による形状の潰れは見られなかったものの、透水率が大きいために分枝からの水の漏出が顕著になり、臨床使用において瘤内への血液の十分な遮断が行われないことが懸念された。
【0066】
比較例3においては、カラム強度が小さいために、チューブ内に留置するにあたり最基部端のリングをチューブに対し垂直に安定して配置することが困難であり、また、部分的にキンクによる内腔断面積の減少が見られた。さらに、水流により最基部端のリングが若干抹消側に流される傾向が見られた。これにより、長期の留置で留置位置のずれや、内腔の閉塞が起こることが懸念された。
【0067】
【発明の効果】
本発明のステント型血管補綴材用織成管状体は、特定の扁平率、繊度を有するモノフィラメントを織成管状体の経糸に使用することにより、ステント型血管補綴材として病変部に留置された際に、血管補綴材が血液の流れによって押し潰されることなく管状を保持できる保形性と、血液の外部への漏出を低減する高い液密性を達成している。これにより病変部への血液流入を防ぐことが可能となる。
【0068】
本発明のステント型血管補綴材用織成管状体は、それ自体では長さ方向の潰れに対し耐性を有さないステントに対しても好ましく適用することができ、柔軟性、追従性に優れたステント型血管補綴材となるため、血管内治療において極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、糸の扁平率を説明するための糸の断面を示す図面である。
【図2】は、経糸と緯糸との接触状態を説明するための断面図であって、(a)は本発明品、(b)は従来品のものである。
【図3】は、経糸の短辺が織布の厚みの方向に沿うような状態で配列する方法を説明する図面である。
【図4】は、糸の断面形状(a)〜(e)を示す図面である。
【図5】は、本発明のステント型血管補綴材用織成管状体の一例を示す図面である。
【図6】は、本発明のステント型血管補綴材の一例を示す図面である。
【符号の説明】
21、31…経糸
23、33…緯糸
50,60…ステント型血管補綴材用織成管状体
67…ステント
Claims (8)
- 扁平率1.2〜5.0、繊度11〜250dtexのモノフィラメントを、経糸本数を100とした場合に25〜100の比率で経糸に含み、ここで、扁平率は、糸断面に外接する長方形を描いたとき、この長方形の長辺Lを短辺Sで割った値をいう、ことを特徴とするステント型血管補綴材用織成管状体。
- 単糸繊度0.1〜3.5dtex、単糸数10〜1000本より構成されるマルチフィラメントを緯糸に使用したことを特徴とする請求項1記載のステント型血管補綴材用織成管状体。
- クリンプ加工が施されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のステント型血管補綴材用織成管状体。
- 分岐部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のステント型血管補綴材用織成管状体。
- 前記モノフィラメントの断面形状は、楕円形、長方形、扁平形、W字扁平形または三ッ山扁平形であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のステント型血管補綴材用織成管状体。
- 扁平率が1.5〜3.0であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のステント型血管補綴材用織成管状体。
- 前記モノフィラメントがポリエステル系繊維からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のステント型血管補綴材用織成管状体。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のステント型血管補綴材用織成管状体とステントからなることを特徴とするステント型血管補綴材。
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