JP4330758B2 - 非水電解質二次電池用電極材料およびそれを用いた電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解質二次電池の電極材料の改良により貯蔵性および充放電サイクル寿命が改善された、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、モーターを動力源とする自動二輪車、電気自動車、ハイブリット電気自動車等に用いられる非水電解質二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、移動体通信機器、携帯電子機器の主電源として利用されているリチウム二次電池は、起電力が高く、高エネルギー密度である特長を有している。負極材料としてリチウム金属を用いたリチウム二次電池は、エネルギー密度は高いが、充電時に負極にデンドライトが析出し、充放電を繰り返すことによりセパレータを突き破って正極側に達し、内部短絡を起こす恐れがあった。また、析出したデンドライトは比表面積が大きいため反応活性度が高く、その表面で電解液中の溶媒と反応して電子伝導性に欠いた固体電解質的な界面皮膜を形成する。そのため電池の内部抵抗が高くなったり、電子伝導のネットワークから孤立した粒子が存在するようになり、これらが充放電効率を低下させる要因となっている。これらの理由で負極材料としてリチウム金属を用いたリチウム二次電池は、低い信頼性、および短いサイクル寿命に問題があった。
【0003】
現在、リチウム金属に替わる負極材料として、リチウムイオンを吸蔵・放出できる炭素材料もしくは遷移金属を用いたスピネル型酸化物を使用し実用化に至っている。通常、これらの材料は金属リチウムを析出しないため、デンドライトによる内部短絡の問題はない。一方、正極材料はコバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、スピネル型のマンガン酸リチウム(LiMn2O4)[以降マンガンスピネルと称す]等があり、一部実用化されている。これらの活物質はリチウムに対し4V程度の電圧を有していることから、高エネルギー密度を有する電池となり得る。理論容量はコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウムにおいては280mAh/g程度であるのに対し、マンガンスピネルは148mAh/gと小さい。しかし、マンガンスピネルは原料となるマンガン酸化物が豊富で安価であることや、ニッケル酸リチウムで観測される充電時の熱安定性が比較的良好であることから、小型民生用途あるいはEV用途など種々の用途で期待されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このマンガンスピネルは、特に高温環境下でマンガンが活物質から溶出し、高温保存特性や高温でのサイクル特性が損なわれるという課題があった。
【0005】
これを改善するため、従来より主としてマンガンが占有する八面体サイトの一部を他の元素で置換する方法、たとえばコバルトやクロムなどの遷移金属元素による置換、仕込み時にリチウムをリチウム/マンガンの量論組成比より過剰に投入することによって得られるマンガンサイトのリチウムによる部分置換、アルミニウムやマグネシウムなどの典型元素による置換などが試みられてきた。確かにこれらの材料改質により、高温保存特性や高温でのサイクル特性は固溶置換を行わない系よりも改善が見られるが、実用上十分なレベルに至ってなかった。
【0006】
高温保存特性などで改善効果が得られる理由は固溶元素が八面体サイトを占有するマンガンの一部を置換することで共通酸素配列を介して構成される結晶相が安定化され、マンガンの溶出が抑制されるためであると考えられている。しかし、実用上十分な特性が得られないのは、これらの部分置換元素がスピネル骨格の八面体サイトを平均的に占有し、且つ近接する各四面体サイトが主としてリチウムによって占有されたままの状態で構成されるため、結晶構造の安定化に寄与する置換固溶元素がスピネル骨格の構成単位の八面体サイトと四面体サイトに同時に存在できなかったためであると考えられる。
【0007】
したがって、本発明の目的は非水電解質二次電池用電極材料の特にマンガンスピネルを正極活物資とした時、マンガン溶出を抑制し保存特性、サイクル特性、特に高温時での保存特性やサイクル特性等の電池特性に優れたマンガンスピネル材料を提供すると同時にこれを用いた非水電解質二次電池を提供することにある。
【0008】
【発明の実施の形態】
上記の課題を解決するため、活物質としてスピネル型の結晶構造を持つリチウム含有遷移金属酸化物を電極材料に用いるものであって、その結晶相の一部に共通酸素配列を介して構成が可能な異種元素の組合せの配列による別のスピネル組成を同時に包含するようにしたものである。
【0009】
異種元素の組合せは2、13、14、15族の典型元素から選ばれる2種あるいは3種以上の元素からなり、これらの元素で構成される元素配列がスピネル骨格の構成単位を形成するようにしたものであり、異種元素の組合せとして、マグネシウムとアルミニウムのモル比1:2の組合せ、マグネシウムとガリウムのモル比1:2の組合せ、マグネシウムとインジウムのモル比1:2の組合せ、カルシウムとインジウムのモル比1:2の組合せ、バリウムとインジウムのモル比1:2の組合せ、ストロンチウムとインジウムのモル比1:2の組合せ、マグネシウムと錫のモル比2:1の組合せ、マグネシウムとアルミニウムとガリウムのモル比1:1:1の組合せ、あるいはマグネシウムとアルミニウムとガリウムのモル比1:1.2:0.8の組合せなどが例示され、共通酸素配列を介してスピネル骨格を構成できるものであれば、含まれる元素の種類と存在比に制限はない。また、用いる異種元素の組合せは、1種類とは限らず2種以上を同時に用いても良い。
【0010】
多くの典型元素は、リチウムの挿入脱離に際し、原子価変化をせず、安定な結合を保持することができる。
【0011】
さらに、この電極材料を非水電解質、およびリチウムの吸蔵・放出が可能な一対の電極を備えた非水電解質二次電池の少なくとも一方の電極に用いるものである。
【0012】
本発明におけるスピネル骨格は、立方晶系、正方晶系、六方晶系、三方晶系、斜方晶系、単斜晶系、三斜晶系のいずれに属するものでも良いが、特に立方晶系及び正方晶系に属するものがよく使われる。スピネル化合物の名前の由来であるMgAl2O4は広く知られており、また化学的に極めて安定な材料である。このような化学的に安定なスピネル型酸化物は他にもたくさん存在し、とりわけ典型元素で構成されるスピネル型酸化物は安定である。
【0013】
本発明の着想は、化学的に不安定なスピネル型リチウム含有遷移金属酸化物にこのように安定で別の化学組成を持つスピネル骨格構造を同時に包含させることにより安定化を図ろうと考えたものである。多くの典型元素は、リチウムの挿入脱離に際し、原子価変化をさせず、安定な結合を保持することができる。
【0014】
すなわち、従来の技術が八面体サイトにあるマンガンの一部を固溶元素で平均的に置換し、その共通酸素配列を介してスピネル結晶相の安定化を図ろうとしたのに対し、本発明の特徴は、2種あるいは3種以上の典型元素を、それらがスピネル骨格を形成する割合でリチウム含有遷移金属酸化物中に同時に存在させることにより、このリチウム含有遷移金属酸化物中にそれらの酸素共通配列を介して、該典型元素の組合せからなるスピネル骨格を形成させ、このスピネル骨格の安定性により、安定なスピネル骨格部分をこのリチウム含有遷移金属酸化物中に存在させることにより、このリチウム含有遷移金属酸化物を安定化させようとした点にある。そのためリチウム含有遷移金属酸化物はスピネル型の構造を有するものであればその組成に制限はなく、例えばリチウムとマンガンのモル比が1:2のLiMn2O4、あるいはリチウムとマンガンのモル比が1.2:1.8のLi1.2Mn1.8O4更にはリチウムとマンガンとニッケルのモル比が1:1.6:0.4のLiMn1.6Ni0.4O4いずれにおいても、この安定化の効果を期待することができる。
【0015】
一般に、スピネル型構造を取る酸化物をAB2O4と表したとき、Aが2価の陽イオンとなる元素でBが3価の陽イオンとなる元素を表す場合、あるいはAが4価の陽イオンとなる元素でBが2価の陽イオンとなる元素を表す場合等がある。このとき、陽イオンの分布の仕方には、(1)四面体サイトにAイオン、八面体サイトにBイオンが配置した正スピネル:(A)[B2]O4、(2)四面体サイトにBイオンの半数、八面体サイトに残り半数のBイオンとAイオンが無秩序に配置した逆スピネル:(B)[AB]O4、(3)正スピネルと逆スピネルの中間の配置を取る中間のスピネル:(Ax・B1-x)[A1-x・B1+x]O40<x<1がある。ここで、小括弧は四面体サイトを占める陽イオンを、大括弧は八面体サイトを占める陽イオンを表す。
【0016】
本発明においては、安定なスピネル骨格を形成するものであれば、正スピネル、逆スピネル、中間のスピネルのいずれでも良い。
【0017】
ここでは、正極材料であるマンガンスピネルの改質例を述べたが、負極材料でありリチウムの吸蔵・放出が可能なチタン系スピネル材料においても、チタン溶出という問題はないものの、電気化学的な可逆性の観点ではサイクル特性改善に関して同様の考え方が成り立つ。
【0018】
本発明に用いられる負極用導電材は、電子伝導性材料であれば何でもよい。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛、膨張黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、銅、ニッケル等の金属粉末類およびポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などを単独又はこれらの混合物として含ませることができる。
【0019】
これらの導電材のなかで、人造黒鉛、アセチレンブラック、炭素繊維が特に好ましい。導電材の添加量は、特に限定されないが、負極材料に対して1〜50重量%が好ましく、特に1〜30重量%が好ましい。また本発明の負極材料はそれ自身電子伝導性を有するため、導電材を添加しなくても電池として機能させることは可能である。
【0020】
本発明に用いられる負極用結着剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。本発明において好ましい結着剤は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロペレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体を挙げる事ができ、これらの材料を単独又は混合物として用いることができる。
【0021】
またこれらの材料の中でより好ましい材料は、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−アクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体である。
【0022】
本発明に用いられる負極用集電体としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、材料としてステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケルあるいはチタンを処理させたものなどが用いられる。特に、銅あるいは銅合金が好ましい。これらの材料の表面を酸化して用いることもできる。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。形状は、フォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体などが用いられる。厚みは、特に限定されないが、1〜500μmのものが用いられる。
【0023】
本発明で使用される正極用導電材は、用いる正極材料の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でもよい。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物あるいはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などを単独又はこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電材のなかで、人造黒鉛、アセチレンブラックが特に好ましい。導電材の添加量は、特に限定されないが、正極材料に対して1〜50重量%が好ましく、特に1〜30重量%が好ましい。カーボンやグラファイトでは、2〜15重量%が特に好ましい。
【0024】
本発明に用いられる正極用結着剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。本発明に於いて好ましい結着剤は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体を挙げる事ができ、これらの材料を単独又は混合物として用いることができる。またこれらの材料の中でより好ましい材料はポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【0025】
本発明に用いられる正極用集電体としては、用いる正極材料の充放電電位において化学変化を起こさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、材料としてステンレス鋼、アルミニウム、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボンあるいはチタンを処理させたものが用いられる。特に、アルミニウムあるいはアルミニウム合金が好ましい。これらの材料の表面を酸化して用いることもできる。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。形状は、フォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群、不織布体の成形体などが用いられる。厚みは、特に限定されないが、1〜500μmのものが用いられる。
【0026】
電極合剤には、導電材や結着剤の他、フィラー、分散剤、イオン伝導体、圧力増強剤及びその他の各種添加剤を用いることができる。フィラーは、構成された電池において、化学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いることができる。通常、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素などの繊維が用いられる。フィラーの添加量は特に限定されないが、電極合剤に対して0〜30重量%が好ましい。
【0027】
本発明における負極板と正極板の構成は、少なくとも正極合剤面の対向面に負極合剤面が存在していることが好ましい。
【0028】
本発明に用いられる非水電解質は、溶媒と、その溶媒に溶解するリチウム塩とから構成されている。非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)などの鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、などの非プロトン性有機溶媒を挙げることができ、これらの一種または二種以上を混合して使用する。なかでも環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合系または環状カーボネートと鎖状カーボネート及び脂肪族カルボン酸エステルとの混合系が好ましい。
【0029】
これらの溶媒に溶解するリチウム塩としては、例えばLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCl、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(CF3SO2)2、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、イミド類等を挙げることができ、これらを使用する電解液等に単独又は二種以上を組合せて使用することができるが、特にLiPF6を含ませることがより好ましい。
【0030】
本発明における特に好ましい非水電解質は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを少なくとも含み、支持塩としてLiPF6を含む電解液である。これら電解質を電池内に添加する量は、特に限定されないが、正極材料や負極材料の量や電池のサイズによって必要量を用いることができる。支持電解質の非水溶媒に対する溶解量は、特に限定されないが、0.2〜2mol/lが好ましい。特に、0.5〜1.5mol/lとすることがより好ましい。
【0031】
また、電解液の他に次の様な固体電解質も用いることができる。固体電解質としては、無機固体電解質と有機固体電解質に分けられる。無機固体電解質には、Liの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩などがよく知られている。なかでも、Li4SiO4、Li4SiO4−Lil−LiOH、xLi3PO4−(1−x)Li4SiO4、Li2SiS3、Li3PO4−Li2S−SiS2、硫化リン化合物などが有効である。有機固体電解質では、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンなどやこれらの誘導体、混合物、複合体などのポリマー材料が有効である。
【0032】
さらに、放電や充放電特性を改良する目的で、他の化合物を電解質に添加することも有効である。例えば、トリエチルフォスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム、ピリジン、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、クラウンエーテル類、第四級アンモニウム塩、エチレングリコールジアルキルエーテル等を挙げることができる。
【0033】
本発明に用いられるセパレータとしては、大きなイオン透過度を持ち、所定の機械的強度を持ち、絶縁性の微多孔性薄膜が用いられる。また、一定温度以上で孔を閉塞し、抵抗をあげる機能を持つことが好ましい。耐有機溶剤性と疎水性からポリプロピレン、ポリエチレンなどの単独又は組合せたオレフィン系ポリマーあるいはガラス繊維などからつくられたシートや不織布または織布が用いられる。セパレータの孔径は、電極シートより脱離した正負極材料、結着剤、導電材が透過しない範囲であることが望ましく、例えば、0.01〜1μmであるものが望ましい。セパレータの厚みは、一般的には、10〜300μmが用いられる。また、空孔率は、電子やイオンの透過性と素材や膜圧に応じて決定されるが、一般的には30〜80%であることが望ましい。
【0034】
また、ポリマー材料に、溶媒とその溶媒に溶解するリチウム塩とから構成される有機電解液を吸収保持させたものを正極合剤、負極合剤に含ませ、さらに有機電解液を吸収保持するポリマーからなる多孔性のセパレータを正極、負極と一体化した電池を構成することも可能である。このポリマー材料としては、有機電解液を吸収保持できるものであればよいが、特にフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体が好ましい。
【0035】
電池の形状はコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型、電気自動車等に用いる大型のものなどいずれにも適用できる。
【0036】
また、本発明の非水電解質二次電池は、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に用いることができるが、特にこれらに限定されるわけではない。
【0037】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
本実施例においてはスピネル骨格を構成する主たる元素をリチウムとし、その際の遷移金属をマンガン、また共通酸素配列を介して構成される別のスピネル組成をなす異種元素の組合せとしては2族のマグネシウムと13族のアルミニウムのモル比1:2の組合せを選んだ系について説明する。
【0039】
(比較例1)
リチウム原材料として炭酸リチウム、マンガン原材料として電解二酸化マンガンを用い、これらの材料を所定量秤量した後、自動乳鉢で5時間混合、ペレット状に成型したものを850℃で48時間空気雰囲気で焼成し、目的試料であるマンガンスピネルを得た。
【0040】
またこのマンガンスピネルを80重量部、導電材としてカーボンブラックを15重量部及び結着剤としてポリテトラフルオロエチレン5重量部を混合して正極合剤を作製した。
【0041】
この正極合剤を用いて図1に示すコイン型非水電解質二次電池を作製した。すなわち、対有機電解液性のステンレス鋼製の正極ケース1の内側には同じくステンレス鋼製の集電体3がスポット溶接されている。集電体3の上面には上記正極合剤からなる正極5が圧着されている。正極5の上面には、電解液を含浸した徴孔性のプロピレン樹脂製のセパレータ6が配置されている。正極ケース1の開口部には、下方に金属リチウムからなる負極4を接合した封口板2が、ポリプロピレン製のガスケット7を挟んで配置されており、これにより電池は密封されている。封口板2は負極端子を兼ね、正極ケース1と同様のステンレス鋼である。電池の直径は20mm、電池総高は1.6mmである。電解液には特に限られたものではないが本実施例においては炭酸エチレンと1,3−ジメトキシエタンを等体積混合したものを溶媒とし、これに溶質として6フッ化リン酸リチウムを1mol/リットル溶解させたものを用いた。
【0042】
このようにして得られた電池について充放電試験を行った。充放電試験は20℃において行われ、電流密度を0.5mA/cm2とし、電圧4.3Vから3.0Vの範囲で行った。また、この電池を4.3Vで充電し、80℃の高温環境下で3日間保存した後、この電池の放電容量を確認した。保存前の放電容量を100としたときの、保存後の放電容量を容量維持率として電池の保存特性を確認した。また、高温環境下でのサイクル試験として60℃中で上記と同一の条件で充放電を20回繰り返し、その後の放電容量を確認した。サイクル試験前の放電容量を100としたときの、サイクル試験後の放電容量を容量維持率として評価した。初期放電容量、高温保存容量ならびに高温サイクル試験後の容量維持率の測定結果を(表1)に示す。
【0043】
(比較例2)
原材料に塩基性炭酸マグネシウムをリチウムに対して5mol%混合した以外は比較例1と同様の合成、試験を行った。
【0044】
またこの目的試料を正極材料として比較例1と同様にしてコイン型非水電解質二次電池を作製し、初期放電容量、高温保存容量維持率ならびに高温サイクル試験後の容量維持率を測定し、その結果を(表1)に示す。
【0045】
(比較例3)
原材料に水酸化アルミニウムをマンガンに対して5mol%混合した以外は比較例1と同様の合成、試験を行った。
【0046】
またこの目的試料を正極材料として比較例1と同様にしてコイン型非水電解質二次電池を作製し、初期放電容量、高温保存容量維持率ならびに高温サイクル試験後の容量維持率を測定し、その結果を(表1)に示す。
【0047】
(比較例4)
比較例1と同様の合成を行った試料を更に450℃で1週間保持して目的試料を得、比較例と同様の試験を行った。ここで得られた目的試料の粉末X線回析などにより、結晶構造を調べた結果、比較例1と同様にスピネル構造が確認された。また、この目的試料を正極材料として比較例1と同様にコイン型非水電解質二次電池を作製し、初期放電容量、高温保存容量維持率ならびに高温サイクル試験後の容量維持率を測定し、その結果を(表1)に示す。
【0048】
(実施例1)
原材料に塩基性炭酸マグネシウムをリチウムに対して5mol%、また水酸化アルミニウムをマンガンに対して5mol%混合した以外は比較例1と同様の合成、試験を行った。この際得られた粉末X線回析図およびリートベルト解析の結果を図2に示す。これより目的試料はスピネル構造をもつことが確認された。またこの試料を正極材料として比較例1と同様にしてコイン型非水電解質二次電池を作製し、初期放電容量、高温保存容量維持率ならびに高温サイクル試験後の容量維持率を測定し、その結果を(表1)に示す。
【0049】
(実施例2)
原材料に塩基性炭酸マグネシウムをリチウムに対して10mol%、また水酸化アルミニウムをマンガンに対して10mol%混合した以外は比較例1と同様の合成、試験を行った。ここで、得られた目的試料の粉末X線回析などにより結晶構造を調べた結果、実施例1と同様にスピネル構造が確認された。またこの試料を正極材料として比較例1と同様にしてコイン型非水電解質二次電池を作製し、初期放電容量、高温保存容量維持率ならびに高温サイクル試験後の容量維持率を測定し、その結果を(表1)に示す。
【0050】
(実施例3)
原材料に塩基性炭酸マグネシウムをリチウムに対して20mol%、また水酸化アルミニウムをマンガンに対して20mol%混合した以外は比較例1と同様の合成、試験を行った。ここで、得られた試料の粉末X線回析などにより結晶構造を調べた結果、実施例1と同様にスピネル構造が確認された。またこの試料を正極材料として比較例1と同様にしてコイン型非水電解質二次電池を作製し、初期放電容量、高温保存容量維持率ならびに高温サイクル試験後の容量維持率を測定し、その結果を(表1)に示す。
【0051】
(実施例4)
実施例1と同様の合成を行った試料をさらに450℃で1週間保持し、目的試料を得、比較例1と同様の試験を行った。ここで、得られた目的試料の粉末X線回折などにより結晶構造を調べた結果、実施例1と同様にスピネル構造が確認された。またこの目的試料を正極材料として比較例1と同様にしてコイン型非水電解質二次電池を作製し、初期放電容量、高温保存容量維持率ならびに高温サイクル試験後の容量維持率を測定し、その結果を(表1)に示す。
【0052】
(実施例5)
実施例2と同様の合成を行った試料をさらに450℃で1週間保持し、目的試料を得、比較例1と同様の試験を行った。ここで、得られた目的試料の粉末X線回折などにより結晶構造を調べた結果、実施例1と同様にスピネル構造が確認された。またこの目的試料を正極材料として比較例1と同様にしてコイン型非水電解質二次電池を作製し、初期放電容量、高温保存容量維持率ならびに高温サイクル試験後の容量維持率を測定し、その結果を(表1)に示す。
【0053】
(実施例6)
実施例2と同様の合成を行った試料をさらに450℃で1週間保持し、目的試料を得、比較例1と同様の試験を行った。ここで、得られた目的試料の粉末X線回折などにより結晶構造を調べた結果、実施例1と同様にスピネル構造が確認された。またこの目的試料を正極材料として比較例1と同様にしてコイン型非水電解質二次電池を作製し、初期放電容量、高温保存容量維持率ならびに高温サイクル試験後の容量維持率を測定し、その結果を(表1)に示す。
【0054】
マグネシウム及びアルミニウムの含有量は0.1%から50%であり、0.1%未満では元のスピネル骨格に対する安定化の効果が認められず、また50%以上では初期放電容量が減少するため電極材料としての魅力が損なわれてしまう。またこの添加範囲はその他の2、13、14、15族の典型元素においても同様のことが言える。
【0055】
実施例1から実施例6においてMgAl2O4等の不純物相は見られず、すべてスピネル骨格を有した均一相として合成されていることが認められた。
【0056】
【表1】
【0057】
(表1)より、比較例2及び比較例3の時のようにマグネシウム、アルミニウムそれぞれを元のスピネル骨格に含有させた場合では高温保存や高温サイクル後の維持容量が改善されないが、共通酸素配列を介して構成されるような別のスピネル組成であるMgAl2O4を包含させることによってマンガンスピネルの高温保存および高温サイクル後の維持容量が改善されることがわかった。また、一旦高温で合成した試料とそれよりも低い温度で保持するアニール処理を施すことによってもこの効果を得ることができた。このアニール処理による特性改善効果は原子オーダーでマグネシウムとアルミニウムが会合する確率がより助長されたためと推察している。これは高温履歴を経た状態で合成を終了させるのではなく、再度アニール処理を加えることで自由エネルギーに占めるエントロピーの寄与が小さくなり無秩序よりも秩序を選択する方向へ系が変遷したからではないかと考えている。したがって、このような低温のアニール処理により、巨視的には固溶状態は変らないが、原子オーダーではMgAl2O4の配列を増加させスピネル骨格の安定化に寄与すると考えられる。
【0058】
なお、上記の実施例では対極に金属リチウムを用いた正極の単極特性を評価するコイン電池での結果を示したが、対極にリチウムを吸蔵・放出が可能な炭素材、合金などを活物質とする負極を用いた円筒型、角型の電池においても同様の効果が得られることがわかった。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明ではスピネル骨格であるリチウム含有遷移金属酸化物と、その結晶相の一部が共通酸素配列を介して構成が可能な異種元素の配列による別のスピネル組成を同時に包含することを特徴とする電極材料であって、これを用いた電池は高温保存性、高温サイクル特性等の特に高温での電池特性を向上させるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】コイン型非水電解質二次電池の断面図
【図2】(A)材料粉末のX線回析図
(B)同粉末のリードベルト解析結果を示す図
【符号の説明】
1 正極ケース
2 封口板
3 集電体
4 負極
5 正極
6 セパレータ
7 ガスケット
Claims (8)
- 結晶構造がスピネル型であるリチウム含有遷移金属酸化物であって、その結晶相の一部が共通酸素配列を介して構成が可能な異種元素の組合せの配列による別のスピネル組成を包含することを特徴とする非水電解質二次電池用電極材料。
- スピネル骨格を構成する主たる元素であるリチウム、遷移金属とは別に共通酸素配列を介して構成される別のスピネル組成をなす異種元素の組合せが主として2、13、14、15族(IUPAC)の典型元素から選ばれる2種あるいは3種以上の元素の組合せであることを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池用電極材料。
- 典型元素のうち、2族から選ばれる1種または2種以上の元素の占有サイトが主として四面体サイトに、また13、14、15族から選ばれる1種または2種以上の元素の占有サイトが主として八面体サイトであって、且つこれらの元素で構成される元素配列がスピネル骨格の構成単位を形成することを特徴とする請求項2記載の非水電解質二次電池用電極材料。
- スピネル骨格を構成する主たる元素であるリチウム、遷移金属とは別に共通酸素配列を介して構成される別のスピネル組成をなす異種元素の組合せが、マグネシウムとアルミニウムのモル比が1:2の組合せであることを特徴とする請求項2記載の非水電解質二次電池用電極材料。
- 非水電解質、およびリチウムの吸蔵・放出が可能な一対の電極を備えた非水電解質二次電池において、一対の電極の少なくとも一方の電極の結晶構造がスピネル型であるリチウム含有遷移金属酸化物であって、その結晶相の一部が共通酸素配列を介して構成が可能な異種元素の組合せの配列による別のスピネル組成を包含する電極材料を含むことを特徴とする非水電解質二次電池。
- スピネル骨格を構成する主たる元素であるリチウム、遷移金属とは別に共通酸素配列を介して構成される別のスピネル組成をなす異種元素の組合せが主として2、13、14、15族の典型元素から選ばれる2種あるいは3種以上の元素の組合せである電極材料を用いることを特徴とする請求項5記載の非水電解質二次電池。
- 上記典型元素のうち、2族から選ばれる1種または2種以上の元素の占有サイトが主として四面体サイトに、また13、14、15族から選ばれる1種または2種以上の元素の占有サイトが主として八面体サイトであって、且つこれらの元素で構成される元素配列がスピネル骨格の構成単位を形成する電極材料を用いることを特徴とする請求項6記載の非水電解質二次電池。
- スピネル骨格を構成する主たる元素であるリチウム、遷移金属とは別に共通酸素配列を介して構成される別のスピネル組成をなす異種元素の組合せが、マグネシウムとアルミニウムのモル比が1:2の組合せである電極材料を用いることを特徴とする請求項6記載の非水電解質二次電池。
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