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JP4363877B2 - 光起電力装置およびその製造方法 - Google Patents
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JP4363877B2 - 光起電力装置およびその製造方法 - Google Patents

光起電力装置およびその製造方法 Download PDF

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    • Y02E10/548Amorphous silicon PV cells

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、光起電力装置およびその製造方法に関し、特に、結晶系半導体上に、非晶質半導体膜が形成された光起電力装置およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、第1導電型の結晶系シリコン基板の表面上に、第2導電型の非晶質シリコン膜を形成することによりpn接合が形成される光起電力装置において、第1導電型の結晶系シリコン基板と第2導電型の非晶質シリコン膜との間に、実質的に真性な非晶質シリコン膜を挿入することにより接合特性を改善する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。上記特許文献1には、n型の単結晶シリコン基板上に、実質的に真性な非晶質シリコン膜およびp型の非晶質シリコン膜が順次形成されるとともに、n型の単結晶シリコン基板と実質的に真性な非晶質シリコン膜との間にボロンが導入された光起電力装置が開示されている。この特許文献1では、プラズマCVD法を用いて約200℃以下の低温で、n型の単結晶シリコン基板上に、実質的に真性なノンドープの非晶質シリコン膜が形成されるので、約800℃以上の高温による熱拡散法を用いてn型の単結晶シリコン基板の表面からp型の不純物を拡散させることによりpn接合を形成する場合と異なり、熱ダメージを抑制することができるとともに、p型の不純物とn型の不純物との相互拡散を抑制することができる。その結果、良好な接合特性が得られる。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−345463号公報
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に開示された光起電力装置では、単結晶シリコン基板の表面近傍の結晶欠陥であるダングリングボンドを低減する(不活性化する)ための対策が充分にはなされていない。このため、単結晶シリコン基板の表面近傍の結晶欠陥であるダングリングボンドにキャリアが捕獲されるという不都合がある。この場合、単結晶シリコン基板の表面近傍でキャリアが再結合することにより消失するので、光起電力装置の出力特性が低下するという問題点があった。このため、光起電力装置の出力特性を向上させるのは困難であった。
【0004】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、結晶系半導体の表面近傍の結晶欠陥を低減することによって、出力特性を向上させることが可能な光起電力装置を提供することである。
【0005】
この発明のもう1つの目的は、結晶系半導体中および非晶質半導体膜中の欠陥を低減することによって、出力特性を向上させることが可能な光起電力装置を提供することである。
【0006】
この発明のさらにもう1つの目的は、結晶系半導体の表面近傍の結晶欠陥を低減することによって、出力特性を向上させることが可能な光起電力装置の製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による光起電力装置は、結晶系半導体と、結晶系半導体の表面上に形成された非晶質半導体膜とを備え、結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面の水素原子濃度が、非晶質半導体膜中の水素原子濃度よりも高い。なお、本発明における結晶系半導体は、結晶系半導体基板や基板上に形成した薄膜多結晶半導体などを含む広い概念である。また、本発明における非晶質半導体は、微結晶半導体も含む広い概念である。
【0008】
この第1の局面による光起電力装置では、上記のように、結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面の水素原子濃度を、非晶質半導体膜中の水素原子濃度よりも高くすることによって、結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面の水素原子の量が増加するので、その増加した水素原子により結晶系半導体の表面近傍の結晶欠陥であるシリコン原子のダングリングボンドを終端して不活性化することができる。これにより、結晶系半導体の表面近傍の結晶欠陥を低減することができるので、結晶欠陥にキャリアが捕獲されるのを抑制することができる。その結果、結晶系半導体の表面近傍でキャリアが再結合するのを抑制することができるので、光起電力装置の出力特性を向上させることができる。また、水素原子によりシリコン原子のダングリングボンドが終端されるので、シリコン原子の配位数が低減される。これにより、シリコン原子の柔軟性が増大するので、結晶欠陥であるシリコン原子のダングリングボンドが新たに発生するのを抑制することができる。
【0009】
上記第1の局面による光起電力装置において、好ましくは、結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面には、結晶系半導体の表面近傍の結晶欠陥を不活性化することが可能な量の水素原子が導入されている。このように構成すれば、容易に、結晶系半導体の表面近傍の結晶欠陥であるダングリングボンドを不活性化することができるので、結晶系半導体の表面近傍の結晶欠陥であるダングリングボンドを容易に低減することができる。
【0010】
上記第1の局面による光起電力装置において、好ましくは、結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面の水素原子面密度は、1.2×1014cm-2以上2.1×1016cm-2以下である。このように構成すれば、容易に、結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面の水素原子の量を、結晶系半導体の表面近傍の結晶欠陥であるダングリングボンドを不活性化することが可能な量にすることができる。
【0011】
上記第1の局面による光起電力装置において、好ましくは、結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面の水素原子濃度は、結晶系半導体中の水素原子濃度よりも高く、かつ、結晶系半導体中の水素原子濃度は、非晶質半導体膜中の水素原子濃度よりも低い。このように構成すれば、結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面の水素原子の量が増加するので、その増加した水素原子により、水素濃度の低い結晶系半導体の表面近傍の結晶欠陥を不活性化することができる。
【0012】
上記第1の局面による光起電力装置において、好ましくは、非晶質半導体膜は、結晶系半導体の表面上に形成された実質的に真性な第1非晶質半導体膜と、第1非晶質半導体膜の表面上に形成された第1導電型の第2非晶質半導体膜とを含む。このように構成すれば、実質的に真性な第1非晶質半導体膜によって、結晶系半導体と第2非晶質半導体膜との格子不整合を緩和することができるので、接合特性を向上させることができる。
【0013】
この発明の第2の局面による光起電力装置は、結晶系半導体と、結晶系半導体の表面上に形成された非晶質半導体膜とを備え、結晶系半導体および非晶質半導体膜には、欠陥を不活性化することが可能な不純物が導入されているとともに、不純物の濃度のピークは結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面近傍に位置する。
【0014】
この第2の局面による光起電力装置では、上記のように、結晶系半導体および非晶質半導体膜に、欠陥を不活性化することが可能な不純物を導入することによって、導入された不純物が結晶系半導体中および非晶質半導体膜中の欠陥であるシリコン原子のダングリングボンドと結合することにより、ダングリングボンドを不活性化することができる。これにより、結晶系半導体中および非晶質半導体膜中の欠陥を低減することができるので、欠陥にキャリアが捕獲されるのを抑制することができる。このため、結晶系半導体中および非晶質半導体膜中でキャリアが再結合するのを抑制することができる。また、導入された不純物の濃度のピークが結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面近傍に位置することによって、結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面の不純物の量が増加するので、その増加した不純物により結晶系半導体の表面近傍の結晶欠陥であるダングリングボンドを終端して不活性化することができる。これにより、結晶系半導体の表面近傍において、結晶欠陥を低減することができるので、結晶欠陥にキャリアが捕獲されるのを抑制することができる。このため、結晶系半導体の表面近傍でキャリアが再結合するのを抑制することができる。このように、結晶系半導体中、非晶質半導体膜中および結晶系半導体の表面近傍でキャリアが再結合するのを抑制することができるので、光起電力装置の出力特性を向上させることができる。また、結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面近傍に不純物の濃度のピークが位置することによって、結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面近傍の不純物の量よりも、非晶質半導体膜中の不純物の量が増加するのを抑制することができる。これにより、非晶質半導体膜中に多くの不純物が導入されることに起因して非晶質半導体膜の緻密さなどの膜特性が低下するのを抑制することができる。このため、非晶質半導体膜の膜特性の低下に起因して光起電力装置の出力特性が低下するのを抑制することができる。また、導入された不純物がシリコン原子のダングリングボンドと結合するので、シリコン原子の配位数が低減される。これにより、シリコン原子の柔軟性が増大するので、結晶欠陥であるシリコン原子のダングリングボンドが新たに発生するのを抑制することができる。
【0015】
上記第2の局面による光起電力装置において、好ましくは、不純物は、水素原子およびフッ素原子のいずれか一方である。このような原子を用いれば、容易に、結晶系半導体中、非晶質半導体膜中および結晶系半導体の表面近傍の欠陥であるシリコン原子のダングリングボンドを不活性化することができる。これにより、容易に、光起電力装置の出力特性を向上することができる。なお、この点は、本願発明者の実験により確認済みである。
【0016】
この場合、好ましくは、結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面には、結晶系半導体の表面近傍の結晶欠陥を不活性化することが可能な量のフッ素原子が導入されている。このように構成すれば、容易に、結晶系半導体の表面近傍の結晶欠陥であるダングリングボンドを不活性化することができるので、結晶系半導体の表面近傍の結晶欠陥であるダングリングボンドを容易に低減することができる。
【0017】
また、この場合、好ましくは、結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面のフッ素原子面密度は、1×1010cm-2以上1×1014cm-2以下である。このように構成すれば、容易に、結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面のフッ素原子の量を、結晶系半導体の表面近傍の結晶欠陥であるダングリングボンドを不活性化することが可能な量にすることができる。
【0018】
また、この場合、好ましくは、結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面のフッ素原子面密度は、5×1010cm-2以上2×1013cm-2以下である。このように構成すれば、結晶系半導体の表面近傍の結晶欠陥であるダングリングボンドをより不活性化することができる。
【0019】
この発明の第3の局面による光起電力装置の製造方法は、結晶系半導体の表面を所定の流量の水素ガスで水素処理する工程と、この後、高真空排気によるガスの置換を行わずに、結晶系半導体の表面上に非晶質半導体膜を形成する工程とを備えている。ここで、高真空排気によるガスの置換とは、たとえば、1Pa程度以下の真空度でガスの置換を行うことを意味する。
【0020】
この第3の局面による光起電力装置の製造方法では、上記のように、結晶系半導体の表面を所定の流量の水素ガスで水素処理した後、高真空排気によるガスの置換を行わずに、結晶系半導体の表面上に非晶質半導体膜を形成することによって、結晶系半導体の表面近傍に不安定な状態で吸着している水素原子が高真空排気により除去されるのを防止することができる。この場合、結晶系半導体と非晶質半導体膜との界面の水素原子の量が増加した状態が保持されるので、その増加した水素原子により結晶系半導体の表面近傍の結晶欠陥であるシリコン原子のダングリングボンドを終端して不活性化することができる。これにより、結晶系半導体の表面近傍の結晶欠陥を低減することができるので、結晶欠陥にキャリアが捕獲されるのを抑制することができる。その結果、結晶系半導体の表面近傍でキャリアが再結合するのを抑制することができるので、光起電力装置の出力特性を向上させることができる。また、水素原子によりシリコン原子のダングリングボンドが終端されるので、シリコン原子の配位数が低減される。これにより、シリコン原子の柔軟性が増大するので、結晶欠陥であるシリコン原子のダングリングボンドが新たに発生するのを抑制することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による光起電力装置の構造を示した断面図である。まず、図1を参照して、第1実施形態による光起電力装置の構造について説明する。
【0023】
第1実施形態による光起電力装置では、図1に示すように、水素処理されたn型単結晶シリコン基板1の上面上に、非晶質シリコン膜2、約70nm〜約100nmの厚みを有するITO(酸化インジウム錫)からなる表面電極3、および、数十μmの厚みを有する銀からなる集電極4が順次形成されている。非晶質シリコン膜2は、n型単結晶シリコン基板1の上面上に形成された約5nm〜約20nmの厚みを有する実質的に真性なノンドープ非晶質シリコン膜2aと、ノンドープ非晶質シリコン膜2a上に形成された約3nm〜約10nmの厚みを有するボロン(B)がドープされたp型非晶質シリコン膜2bとによって構成されている。なお、n型単結晶シリコン基板1は、本発明の「結晶系半導体」の一例である。また、ノンドープ非晶質シリコン膜2aは、本発明の「非晶質半導体膜」および「第1非晶質半導体膜」の一例であり、p型非晶質シリコン膜2bは、本発明の「非晶質半導体膜」および「第2非晶質半導体膜」の一例である。
【0024】
また、水素処理されたn型単結晶シリコン基板1の裏面上には、n型単結晶シリコン基板1の裏面に近い方から順に、非晶質シリコン膜12、約70nm〜約100nmの厚みを有するITOからなる裏面電極13、および、数十μmの厚みを有する銀からなる集電極14が形成されている。非晶質シリコン膜12は、n型単結晶シリコン基板1の裏面上に形成された約5nm〜約40nmの厚みを有する実質的に真性なノンドープ非晶質シリコン膜12aと、ノンドープ非晶質シリコン膜12aの裏面上に形成された約5nm〜約40nmの厚みを有するリン(P)がドープされたn型非晶質シリコン膜12bとによって構成されている。そして、ノンドープ非晶質シリコン膜12a、n型非晶質シリコン膜12bおよび裏面電極13によって、いわゆるBSF(Back Surface Field)構造が構成される。なお、ノンドープ非晶質シリコン膜12aは、本発明の「非晶質半導体膜」および「第1非晶質半導体膜」の一例であり、n型非晶質シリコン膜12bは、本発明の「非晶質半導体膜」および「第2非晶質半導体膜」の一例である。
【0025】
ここで、第1実施形態では、n型単結晶シリコン基板1とノンドープ非晶質シリコン膜2aとの界面に、n型単結晶シリコン基板1の上面近傍の結晶欠陥を不活性化することが可能な量の水素原子が導入されている。以下、この点を詳細に説明する。
【0026】
図2は、図1に示した第1実施形態による光起電力装置のn型単結晶シリコン基板1の上面近傍の水素原子の濃度プロファイル図である。なお、図2中の実線は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometer)で測定した水素原子の濃度プロファイルである。また、図2中の破線は、n型単結晶シリコン基板1とノンドープ非晶質シリコン膜2aとの界面の水素原子濃度を正規関数(ガウシアン関数)でフィッティングした曲線である。この水素原子(H)の濃度プロファイルの測定には、Physical electronic Incorporation製のSIMS(ADEPT 1010)を用いた。このときの測定条件は、照射イオン種:Cs+イオン、イオン照射エネルギー:1keV、照射角度:60°、検出二次イオン種:H-イオン、リファレンス二次イオン種:Si-イオンであった。なお、SIMSによる測定では、光起電力装置にCs+イオンを照射して、たたき出された二次イオン(H-イオンおよびSi-イオン)の数を測定するとともに、Si-イオンの数[Si-]に対するH-イオンの数[H-]の比([H-]/[Si-]、ただし、[Si-]=5.0×1022/cm3)を計算することにより、水素原子の濃度が求められる。
【0027】
図2中の実線(SIMS測定データ)を参照して、第1実施形態では、n型単結晶シリコン基板1とノンドープ非晶質シリコン膜2aとの界面の水素原子濃度は、n型単結晶シリコン基板1中の水素原子濃度およびノンドープ非晶質シリコン膜2a中の水素原子濃度よりも高いことがわかる。すなわち、水素原子のピーク濃度がn型単結晶シリコン基板1とノンドープ非晶質シリコン膜2aとの界面に位置しており、そのピーク濃度は、約6.0×1021cm-3である。
【0028】
ここで、n型単結晶シリコン基板1とノンドープ非晶質シリコン膜2aとの界面のような極めて薄い領域の不純物濃度をSIMSで測定する場合は、測定値が測定条件および測定装置に依存することが知られている。たとえば、深さ方向の分解能が低い測定条件では、ピーク濃度の値が低くなるとともに、半値幅が広くなる。その一方、深さ方向の分解能が高い測定条件では、ピーク濃度の値が高くなるとともに、半値幅が狭くなる。また、測定装置の分解能が低い場合には、ピーク濃度の値が低くなるとともに、半値幅が広くなる。その一方、測定装置の分解能が高い場合には、ピーク濃度の値が高くなるとともに、半値幅が狭くなる。このため、第1実施形態では、SIMS測定データの測定条件依存性を排除するために、n型単結晶シリコン基板1とノンドープ非晶質シリコン膜2aとの界面の水素原子のピーク濃度を、深さ方向に積分した面密度で規定する。すなわち、n型単結晶シリコン基板1とノンドープ非晶質シリコン膜2aとの界面の水素原子面密度は、図2中の破線で示した曲線の積分値(図2中の斜線部の面積)であり、約1.9×1015cm-2となる。
【0029】
図3〜図5は、図1に示した第1実施形態による光起電力装置の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図1および図3〜図5を参照して、第1実施形態による光起電力装置の製造プロセスについて説明する。
【0030】
まず、図3に示すように、洗浄したn型単結晶シリコン基板1を真空チャンバ(図示せず)内に設置した後、約200℃以下の温度条件下で、n型単結晶シリコン基板1を加熱することによって、n型単結晶シリコン基板1の表面に付着した水分を極力除去する。これにより、n型単結晶シリコン基板1の表面に付着した水分中の酸素がシリコンと結合して結晶欠陥になるのが抑制される。
【0031】
次に、基板温度を約170℃に保持した状態で、水素(H2)ガスを導入するとともに、約3mW/cm2〜約30mW/cm2の電力を供給することによって、n型単結晶シリコン基板1の上面を水素処理する。この際、第1実施形態では、水素ガスを約500sccm〜約2000sccmの流量で、かつ、約50Pa〜約200Paの圧力で導入することによって、n型単結晶シリコン基板1の上面がクリーニングされるとともに、n型単結晶シリコン基板1の上面近傍に、n型単結晶シリコン基板1の上面の結晶欠陥を不活性化することが可能な量の水素原子が吸着される。
【0032】
この後、第1実施形態では、高真空排気(約1Pa以下の真空度での排気)によるガスの置換を行わずに、図4に示すように、プラズマCVD法を用いて、n型単結晶シリコン基板1の上面上に、ノンドープ非晶質シリコン膜2aを形成する。具体的には、基板温度を約170℃に保持した状態で、シラン(SiH4)ガスを約40sccmの流量で、かつ、約40Paの圧力で導入するとともに、約8.33mW/cm2の電力を供給することにより、n型単結晶シリコン基板1の上面上に、約5nm〜約20nmの厚みを有するノンドープ非晶質シリコン膜2aを形成する。この場合、n型単結晶シリコン基板1とノンドープ非晶質シリコン膜2aとの界面には、n型単結晶シリコン基板1の上面近傍の結晶欠陥を不活性化することが可能な量の水素原子(水素原子面密度:約1.9×1015cm-2)が導入される。
【0033】
このノンドープ非晶質シリコン膜2aの形成プロセスにおいて、水素処理の後に高真空排気によるガスの置換を行えば、水素原子面密度は低くなる。特に、約1分間以上の高真空排気を行えば、水素原子面密度は、水素処理を行わない場合とほぼ同等の水素原子面密度となる。このことは、水素処理によってn型単結晶シリコン基板1の上面に供給された水素原子が、必ずしもn型単結晶シリコン基板1中に打ち込まれて安定な共有結合をしているわけではなく、n型単結晶シリコン基板1の上面およびその近傍に吸着した不安定な状態にあることを示唆している。したがって、n型単結晶シリコン基板1とノンドープ非晶質シリコン膜2aとの界面の水素原子面密度の制御においては、n型単結晶シリコン基板1の上面に水素処理を施した後に、高真空排気によるガスの置換を行わずに、連続的にノンドープ非晶質シリコン膜2aを形成することが重要である。
【0034】
続いて、基板温度を約170℃に保持した状態で、SiH4ガス流量:約40sccm、水素ガス流量:0〜約100sccm、ジボラン(B26)/H2(H2に対するB26ガスの濃度:約2%)ガス流量:約40sccm、圧力:約40Pa、および、電力密度:約8.33mW/cm2の条件下で、ノンドープ非晶質シリコン膜2a上に、約3nm〜約10nmの厚みを有するボロン(B)がドープされたp型非晶質シリコン膜2bを形成する。
【0035】
次に、図5に示すように、スパッタリング法を用いて、p型非晶質シリコン膜2bの上面上に、約70nm〜約100nmの厚みを有するITO(酸化インジウム錫)からなる表面電極3を形成する。この後、スクリーン印刷法を用いて、表面電極3上の所定領域に、数十μmの厚みを有する銀からなる集電極4を形成する。
【0036】
次に、上記したn型単結晶シリコン基板1の上面の水素処理と同様の水素処理を、n型単結晶シリコン基板1の裏面についても行う。ただし、この場合の水素ガスは、約100sccmの流量で、かつ、約50Paの圧力で導入する。
【0037】
この後、図1に示したように、プラズマCVD法を用いて、n型単結晶シリコン基板1の裏面上に、ノンドープ非晶質シリコン膜12aを形成する。具体的には、基板温度を約170℃に保持した状態で、SiH4ガスを約40sccmの流量で、かつ、約40Paの圧力で導入するとともに、約8.33mW/cm2の電力を供給することにより、n型単結晶シリコン基板1の裏面上に、約5nm〜約40nmの厚みを有するノンドープ非晶質シリコン膜12aを形成する。続いて、基板温度を約170℃に保持した状態で、SiH4ガス流量:約40sccm、水素ガス流量:0〜約100sccm、ホスフィン(PH3)/H2(H2に対するPH3の濃度:約1%)ガス流量:約40sccm、圧力:約40Pa、および、電力密度:8.33mW/cm2の条件下で、ノンドープ非晶質シリコン膜12aの裏面上に、約5nm〜約40nmの厚みを有するリン(P)がドープされたn型非晶質シリコン膜12bを形成する。
【0038】
最後に、スパッタリング法を用いて、n型非晶質シリコン膜12bの裏面上に、約70nm〜約100nmの厚みを有するITOからなる裏面電極13を形成した後、裏面電極13上の所定領域に、数十μmの厚みを有する銀からなる集電極14を形成する。このようにして、図1に示した第1実施形態による光起電力装置が形成される。
【0039】
第1実施形態では、上記のように、n型単結晶シリコン基板1とノンドープ非晶質シリコン膜2aとの界面の水素原子濃度(約6×1021cm-3)を、ノンドープ非晶質シリコン膜2a中の水素原子濃度よりも高くするとともに、n型単結晶シリコン基板1とノンドープ非晶質シリコン膜2aとの界面の水素原子面密度を、約1.9×1015cm-2にすることによって、n型単結晶シリコン基板1とノンドープ非晶質シリコン膜2aとの界面の水素原子の量が、ノンドープ非晶質シリコン膜2a中の水素原子の量よりも増加するので、その増加した水素原子によりn型単結晶シリコン基板1の上面近傍の結晶欠陥であるシリコン原子のダングリングボンドを終端して不活性化することができる。これにより、n型単結晶シリコン基板1の上面近傍の結晶欠陥を低減することができるので、結晶欠陥にキャリアが捕獲されるのを抑制することができる。その結果、n型単結晶シリコン基板1の上面近傍でキャリアが再結合するのを抑制することができるので、光起電力装置の出力特性を向上させることができる。また、水素原子によりシリコン原子のダングリングボンドが終端されるので、シリコン原子の配位数が低減される。これにより、シリコン原子の柔軟性が増大するので、結晶欠陥であるシリコン原子のダングリングボンドが新たに発生するのを抑制することができる。
【0040】
次に、上記したn型単結晶シリコン基板1とノンドープ非晶質シリコン膜2aとの界面への水素原子の導入による効果を確認するために行った実験について説明する。具体的には、n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面の水素原子面密度の違いによる光起電力装置の特性を調べるために、水素原子面密度がそれぞれ異なる6つの光起電力装置の開放電圧VOC、短絡電流ISC、曲線因子F.Fおよびセル出力Pmaxを測定した。結果を以下の表1に示すとともに、表1中の水素原子面密度とセル出力Pmaxとの関係を図6に示す。なお、表1中の開放電圧VOCは、光起電力装置に光を当てた際に発生する電圧を、表面電極と裏面電極との間に電圧計を接続して測定した電圧であり、電流を流さない状態での出力電圧値である。また、短絡電流ISCは、光起電力装置に光を当てた際に流れる電流を、光起電力装置の表面電極と裏面電極との間に電流計を接続して測定した電流であり、負荷がない場合の出力電流値である。また、セル出力Pmaxは、光起電力装置に負荷抵抗を接続したときに、負荷抵抗を変化させて最大の電力が得られる場合の電圧Vmおよび電流Imの積である。また、曲線因子F.Fは、セル出力Pmaxを開放電圧VOCと短絡電流ISCとの積で除した値であり、この曲線因子F.Fの値が1に近づくほど、光起電力装置の電流電圧特性が優れている。
【0041】
【表1】
Figure 0004363877
上記表1を参照して、6つの光起電力装置のn型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面の水素原子面密度を、それぞれ、約5.3×1013cm-2、約1.2×1014cm-2、約2.5×1014cm-2、約1.9×1015cm-2(上記第1実施形態に対応するもの)、約2.1×1016cm-2および約1.3×1017cm-2とした。n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面の水素原子面密度は、上記した製造プロセスにおいて、n型単結晶シリコン基板の上面を水素処理する際の水素ガスの流量を制御することにより制御される。なお、水素原子面密度が約5.3×1013cm-2の場合の光起電力装置では、水素処理は行われていない。この水素原子面密度が約5.3×1013cm-2の場合の水素原子は、ノンドープ非晶質シリコン膜の形成時に、原料ガスであるシラン(SiH4)中に含まれていた水素がn型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面に導入されたものであると考えられる。
【0042】
上記表1および図6を参照して、水素原子面密度が約1.2×1014cm-2〜約2.1×1016cm-2の場合の開放電圧VOCは、約0.671V〜約0.708Vとなり、水素処理を行わなかった水素原子面密度が約5.3×1013cm-2の場合の開放電圧VOC(約0.665V)よりも向上することが判明した。また、水素原子面密度が約1.2×1014cm-2〜約2.1×1016cm-2の場合の曲線因子F.Fは、約0.757〜約0.765となり、水素処理を行わなかった水素原子面密度が約5.3×1013cm-2の場合の曲線因子F.F(約0.731)よりもより1に近づくことが判明した。また、水素原子面密度が約1.2×1014cm-2〜約2.1×1016cm-2の場合のセル出力Pmaxは、約1.875W〜約2.016Wとなり、水素処理を行わなかった水素原子面密度が約5.3×1013cm-2の場合のセル出力Pmax(約1.81W)よりも向上することが判明した。これにより、水素処理を行った場合で、かつ、水素原子面密度が約1.2×1014cm-2〜約2.1×1016cm-2の範囲では、水素原子により結晶欠陥が不活性化されると考えられる。
【0043】
その一方、水素処理を行った場合でも、水素原子面密度が約1.3×1017cm-2と高すぎる場合には、開放電圧VOCが約0.648V、および、セル出力Pmaxが約1.777Wとなり、水素処理を行わなかった水素原子面密度が約5.3×1013cm-2の場合よりも、開放電圧VOCおよびセル出力Pmaxが低下することが判明した。これは、水素処理時に、水素原子の量が多くなることに起因して水素のイオンエネルギが増加し、その結果、水素イオンがn型単結晶シリコン基板の表面に照射されて欠陥が発生したためであると考えられる。
【0044】
上記表1および図6の結果より、n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面の水素原子面密度が約1.2×1014cm-2以上約2.1×1016cm-2以下の場合に、開放電圧VOC、曲線因子F.Fおよびセル出力Pmaxを向上させることができる。したがって、上記した第1実施形態では、n型単結晶シリコン基板1とノンドープ非晶質シリコン膜2aとの界面の水素原子面密度を約1.9×1015cm-2に設定しているので、開放電圧VOC、曲線因子F.Fおよびセル出力Pmaxを向上させることができる。
【0045】
(第2実施形態)
この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、欠陥を不活性化するために、フッ素原子をn型単結晶シリコン基板中、ノンドープ非晶質シリコン膜中、および、n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面近傍に導入した場合の例について説明する。すなわち、この第2実施形態による光起電力装置では、製造プロセスの最初にn型単結晶シリコン基板を洗浄する工程中に、n型単結晶シリコン基板をフッ酸で処理することによってフッ素原子を導入する。
【0046】
具体的には、この第2実施形態では、n型単結晶シリコン基板を洗浄する工程において、n型単結晶シリコン基板の表面に対して、フッ酸(HF/H2O)(約3mol/l〜約10mol/lのHF含有量、室温)による処理を行った後、H2Oリンス(室温、約10秒〜約10分)を行う。これにより、n型単結晶シリコン基板の表面に、H2Oリンスによって除去されなかったフッ酸の残留分が残る。なお、上記したフッ酸(HF/H2O)の濃度およびH2Oリンスのリンス時間を変化させることにより、導入されるフッ素原子の量を制御することができる。たとえば、フッ酸の濃度を大きくすれば、導入されるフッ素原子の量は多くなる。また、H2Oリンスのリンス時間を短くすれば、フッ酸の残留分が多くなるので、導入されるフッ素原子の量は多くなる。
【0047】
また、この第2実施形態では、上記第1実施形態のようなn型単結晶シリコン基板の表面の水素処理を行わない。なお、第2実施形態のこれら以外の部分の構造および製造プロセスは、上記第1実施形態と同様である。
【0048】
第2実施形態では、上記のようなフッ酸処理およびH2Oリンスによって、n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面に、n型単結晶シリコン基板の上面近傍の結晶欠陥を不活性化することが可能な量のフッ素原子(フッ素原子面密度:約1.5×1012cm-2)が導入される。また、n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面に導入されたフッ素原子が、n型単結晶シリコン基板中およびノンドープ非晶質シリコン膜中に拡散することにより、n型単結晶シリコン基板中およびノンドープ非晶質シリコン膜中にフッ素原子が導入される。
【0049】
図7には、第2実施形態による光起電力装置および比較例による光起電力装置のSIMSにより測定したn型単結晶シリコン基板の上面近傍のフッ素原子の濃度プロファイル図が示されている。このフッ素原子(F)の濃度プロファイルの測定には、Physical electronic Incorporation製のSIMS(ADEPT 1010)を用いた。このときの測定条件は、照射イオン種:Cs+イオン、イオン照射エネルギー:1keV、照射角度:60°、検出二次イオン種:F-イオン、リファレンス二次イオン種:Si-イオンであった。なお、SIMSによる測定では、光起電力装置にCs+イオンを照射して、たたき出された二次イオン(F-イオンおよびSi-イオン)の数を測定するとともに、Si-イオンの数[Si-]に対するF-イオンの数[F-]の比([F-]/[Si-]、ただし、[Si-]=5.0×1022/cm3)を計算することにより、フッ素原子の濃度が求められる。
【0050】
ここで、第2実施形態による光起電力装置では、上記した約3mol/l〜約10mol/lのHF含有量で室温でのフッ酸処理および約10秒〜約10分間の室温でのH2Oリンスを行った後、基板温度を約170℃に保持した状態で、シラン(SiH4)ガスを約40sccmの流量で、かつ、約40Paの圧力で導入するとともに、約8.33mW/cm2の電力を供給することにより、n型単結晶シリコン基板の上面上に、約5nm〜約20nmの厚みを有するノンドープ非晶質シリコン膜を形成した。つまり、この第2実施形態では、ノンドープ非晶質シリコン膜の形成前にフッ素の導入を行うとともに、ノンドープ非晶質シリコン膜の形成中はフッ素の導入を行っていない。その一方、比較例による光起電力装置では、上記した約3mol/l〜約10mol/lのHF含有量で室温でのフッ酸処理および約10秒〜約10分間の室温でのH2Oリンスを行った後、基板温度を約170℃に保持した状態で、フッ素(F)/シラン(SiH4)(SiH4ガスに対するFの濃度:約0.2%で一定に保持)ガスを約40sccmの流量で、かつ、約40Paの圧力で導入するとともに、約8.33mW/cm2の電力を供給することにより、n型単結晶シリコン基板の上面上に、約5nm〜約20nmの厚みを有するノンドープ非晶質シリコン膜を形成した。すなわち、比較例では、ノンドープ非晶質シリコン膜の形成前のみならず、ノンドープ非晶質シリコン膜の形成中もフッ素を導入している。これ以外は、上記第2実施形態と同様にして比較例による光起電力装置を作製した。
【0051】
図7を参照して、第2実施形態では、フッ素原子濃度のピークがn型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面近傍に位置しており、そのピーク濃度は、約1.0×1019cm-3であることがわかる。また、この第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、SIMS測定データの測定条件依存性を排除するために、n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面のフッ素原子の量を、フッ素原子のピーク濃度を深さ方向に積分した面密度で規定する。すなわち、n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面のフッ素原子面密度は、図7中の破線で示した曲線の積分値(図7中の斜線部の面積)であり、約1.5×1012cm-2である。
【0052】
また、比較例では、n型単結晶シリコン基板中からn型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面近傍にかけての領域では、第2実施形態と同様のフッ素原子の濃度プロファイルを示すことがわかる。その一方、比較例では、第2実施形態と異なり、n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面近傍に、フッ素原子の濃度ピークを有していない。具体的には、比較例による光起電力装置は、n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面からノンドープ非晶質シリコン膜中にかけての領域では、ほぼ一定で、かつ、第2実施形態よりも大きなフッ素原子濃度(約1.0×1019cm-3)を有する。
【0053】
第2実施形態において、図7に示すような濃度プロファイルが得られたのは、n型単結晶シリコン基板表面のフッ酸処理によってn型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面近傍にフッ素原子の局所的に多い領域が形成されたためであると考えられる。これに対して、比較例において、図7に示すような濃度プロファイルが得られたのは、フッ酸処理に加えて、所定の割合でフッ素が混合されたフッ素/シランガスを用いてノンドープ非晶質シリコン膜を形成したことにより、ノンドープ非晶質シリコン膜の厚み方向に渡って、ほぼ均一な量で、かつ、第2実施形態よりも多くのフッ素原子が導入されたことによると考えられる。
【0054】
第2実施形態では、上記のように、n型単結晶シリコン基板およびノンドープ非晶質シリコン膜に、欠陥を不活性化することが可能なフッ素原子を導入することによって、導入されたフッ素原子がn型単結晶シリコン基板中およびノンドープ非晶質シリコン膜中の欠陥であるシリコン原子のダングリングボンドと結合することにより、ダングリングボンドを不活性化することができる。これにより、n型単結晶シリコン基板中およびノンドープ非晶質シリコン膜中の欠陥を低減することができるので、欠陥にキャリアが捕獲されるのを抑制することができる。このため、n型単結晶シリコン基板中およびノンドープ非晶質シリコン膜中でキャリアが再結合するのを抑制することができる。また、導入されたフッ素原子の濃度のピーク(ピーク濃度:約1.0×1019cm-3)がn型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面近傍に位置するとともに、n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面のフッ素原子面密度を約1.5×1012cm-2にすることによって、n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面のフッ素原子の量が増加するので、その増加したフッ素原子によりn型単結晶シリコン基板の上面近傍の結晶欠陥であるダングリングボンドを終端して不活性化することができる。これにより、n型単結晶シリコン基板の上面近傍において、結晶欠陥を低減することができるので、結晶欠陥にキャリアが捕獲されるのを抑制することができる。このため、n型単結晶シリコン基板の上面近傍でキャリアが再結合するのを抑制することができる。このように、n型単結晶シリコン基板中、ノンドープ非晶質シリコン膜中およびn型単結晶シリコン基板の上面近傍でキャリアが再結合するのを抑制することができるので、光起電力装置の出力特性を向上させることができる。
【0055】
また、第2実施形態では、比較例と異なり、n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面近傍にフッ素原子の濃度のピークが位置するように構成することによって、n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面近傍のフッ素原子の量よりも、ノンドープ非晶質シリコン膜中のフッ素原子の量が多くなるのを抑制することができる。これにより、ノンドープ非晶質シリコン膜中に多くのフッ素原子が導入されることに起因してノンドープ非晶質シリコン膜の緻密さなどの膜特性が低下するのを抑制することができる。このため、ノンドープ非晶質シリコン膜の膜特性の低下に起因して光起電力装置の出力特性が低下するのを抑制することができる。
【0056】
また、第2実施形態では、導入されたフッ素原子がシリコン原子のダングリングボンドと結合するので、シリコン原子の配位数が低減される。これにより、シリコン原子の柔軟性が増大するので、結晶欠陥であるシリコン原子のダングリングボンドが新たに発生するのを抑制することができる。
【0057】
次に、上記した第2実施形態による効果を確認するために光起電力装置の出力特性を実際に測定した実験について説明する。具体的には、図7の第2実施形態のようなフッ素原子の濃度プロファイルを有する光起電力装置(実施例1)、および、図7の比較例のようなフッ素原子の濃度プロファイルを有する光起電力装置(比較例1)の出力特性(開放電圧Voc、短絡電流Isc、曲線因子F.Fおよびセル出力Pmax)を測定した。そして、実施例1に対する比較例1の開放電圧Voc、短絡電流Isc、曲線因子F.Fおよびセル出力Pmaxのそれぞれの比を計算した。その結果を以下の表2に示す。
【0058】
【表2】
Figure 0004363877
上記表2を参照して、実施例1に対する比較例1の出力特性の比(開放電圧Voc:0.995、短絡電流Isc:1.001、曲線因子F.F:0.993およびセル出力Pmax:0.989)は、短絡電流Iscを除いて、1より小さいことがわかる。これにより、実施例1では、比較例1と比べて、短絡電流Isc以外の出力特性(開放電圧Voc、曲線因子F.Fおよびセル出力Pmax)が向上することがわかる。これは、比較例1では、実施例1と比べて、ノンドープ非晶質シリコン膜中により多くのフッ素原子が導入されているため、ノンドープ非晶質シリコン膜の緻密さなどの膜特性が低下したことにより出力特性が低下したことによると考えられる。
【0059】
次に、n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面のフッ素原子面密度の違いによる光起電力装置のセル出力Pmaxを調べるために、フッ素原子面密度がそれぞれ異なる光起電力装置のセル出力Pmaxを測定した。その測定結果について、図8を参照して説明する。なお、図8では、各光起電力装置のセル出力Pmaxをフッ素原子面密度が1.0×1012cm-2のときのセル出力Pmaxで規格化した値をセル出力の規格値として示している。
【0060】
図8を参照して、n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面でのフッ素原子面密度が1.0×109cm-2から大きくなるのに従って、セル出力が大きくなるとともに、フッ素原子面密度が1.0×1012cm-2付近でセル出力が最大となることがわかる。また、フッ素原子面密度が1.0×1012cm-2を超えると、セル出力が小さくなっていくことがわかる。フッ素原子面密度が1.0×1012cm-2付近までの範囲でセル出力が大きくなったのは、n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面のフッ素原子の増加に伴ってn型単結晶シリコン基板の上面近傍の結晶欠陥であるシリコン原子のダングリングボンドがより不活性化されることに起因すると考えられる。また、フッ素原子面密度が1.0×1012cm-2付近を超えるとセル出力が小さくなっていくのは、n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面に導入されたフッ素原子の量が過剰となることに起因すると考えられる。具体的には、フッ素原子(F)の量が過剰になると結合エネルギー(結合力)の小さいF−F結合が発生するため、そのF−F結合が切れることに起因してn型単結晶シリコン基板の上面近傍の結晶欠陥であるダングリングボンドが増加するためであると考えられる。
【0061】
また、図8を参照して、フッ素原子面密度が1.0×1010cm-2以上1.0×1014cm-2以下の範囲では、セル出力の規格値が0.8以上になることがわかる。フッ素原子面密度がこの範囲の光起電力装置では、良好な出力特性が得られることが本願発明者により確認されている。また、フッ素原子面密度が5.0×1010cm-2以上2.0×1013cm-2以下の範囲では、セル出力の規格値が0.9以上になることがわかる。フッ素原子面密度がこの範囲の光起電力装置では、より良好な出力特性が得られることが本願発明者により確認されている。
【0062】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0063】
たとえば、上記実施形態では、n型単結晶シリコン基板1の上面上に、実質的に真性なノンドープ非晶質シリコン膜2aを介してp型非晶質シリコン膜2bを形成するようにしたが、本発明はこれに限らず、p型単結晶シリコン基板の上面上に、実質的に真性なノンドープ非晶質シリコン膜を介してn型非晶質シリコン膜を形成するようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、n型単結晶シリコン基板1の裏面上に、非晶質シリコン膜12(ノンドープ非晶質シリコン膜12aおよびn型非晶質シリコン膜12b)が形成されたBSF構造を有するようにしたが、本発明はこれに限らず、n型単結晶シリコン基板の裏面上に、n側の非晶質シリコン膜を形成せずに、裏面電極を形成するようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、p側の膜形成を先に行うようにしたが、本発明はこれに限らず、n側の膜形成を先に行うようにしてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、n型単結晶シリコン基板1とp型非晶質シリコン膜2b(n型非晶質シリコン膜12b)との間に、実質的に真性なノンドープ非晶質シリコン膜2a(ノンドープ非晶質シリコン膜12a)を形成するようにしたが、本発明はこれに限らず、第1導電型の結晶系半導体と第2導電型の非晶質半導体膜との間に、実質的に真性なノンドープ非晶質シリコン膜を形成しなくてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、n型単結晶シリコン基板の上面近傍、n型単結晶シリコン基板中およびノンドープ非晶質シリコン膜中の欠陥を不活性化するための不純物として、水素原子およびフッ素原子を導入した例について説明したが、本発明はこれに限らず、他の原子を導入してもよい。たとえば、塩素原子などを導入しても同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、上記実施形態では、本発明を光起電力装置のp側(表側)に適用した例について説明したが、本発明はこれに限らず、n側(裏側)に適用した場合にも同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による光起電力装置の構造を示した断面図である。
【図2】図1に示した第1実施形態による光起電力装置のn型単結晶シリコン基板1の上面近傍の水素原子の濃度プロファイル図である。
【図3】図1に示した第1実施形態による光起電力装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図4】図1に示した第1実施形態による光起電力装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図5】図1に示した第1実施形態による光起電力装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図6】水素原子面密度とセル出力Pmaxとの関係を示したグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態による光起電力装置および比較例による光起電力装置のSIMSにより測定したn型単結晶シリコン基板の上面近傍のフッ素原子の濃度プロファイル図である。
【図8】n型単結晶シリコン基板とノンドープ非晶質シリコン膜との界面のフッ素原子面密度とセル出力との関係を示した図である。
【符号の説明】
1 n型単結晶シリコン基板(結晶系半導体)
2、12 非晶質シリコン膜
2a、12a ノンドープ非晶質シリコン膜(非晶質半導体膜、第1非晶質半導体膜)
2b p型非晶質シリコン膜(非晶質半導体膜、第2非晶質半導体膜)
12b n型非晶質シリコン膜(非晶質半導体膜、第2非晶質半導体膜)

Claims (3)

  1. 第1導電型の結晶系半導体と、
    前記結晶系半導体の表面上に形成された約5nm〜約20nmの厚みを有する実質的に真性な第1非晶質半導体膜と、
    前記第1非晶質半導体膜上に形成された第2導電型の第2非晶質半導体膜とを備え、
    フッ素原子が、前記結晶系半導体と前記第1非晶質半導体膜との界面近傍で局所的な濃度のピークを有するように、前記結晶系半導体と前記第1非晶質半導体膜夫々における前記界面近傍に導入され、
    前記結晶系半導体と前記第1非晶質半導体膜との界面のフッ素原子面密度が、1×10 10 cm −2 以上1×10 14 cm −2 以下である、光起電力装置。
  2. 前記結晶系半導体と前記第1非晶質半導体膜との界面のフッ素原子面密度、5×1010cm−2以上2×1013cm−2以下である、請求項1に記載の光起電力装置。
  3. 第1導電型からなる結晶系半導体ウエハの表面に対してフッ酸による表面処理を行い、その後H Oリンスを行う工程と、
    Oリンスが施された前記結晶系半導体ウエハの表面上に約5nm〜約20nmの厚みを有する実質的に真性な第1非晶質半導体膜を形成する工程と、
    前記第1非晶質半導体膜上に第2導電型からなる第2非晶質半導体膜を形成する工程と、を備え
    前記H Oリンスを行う工程において、前記結晶系半導体ウエハと前記第1非晶質半導体膜との界面のフッ素原子面密度が1×10 10 cm −2 以上1×10 14 cm −2 以下となるように、前記結晶系半導体ウエハの表面にフッ素原子を残留せしめることを特徴とする光起電力装置の製造方法。
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