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JP4366687B2 - 光照射による吸着量の制御方法及び制御装置 - Google Patents
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JP4366687B2 - 光照射による吸着量の制御方法及び制御装置 - Google Patents

光照射による吸着量の制御方法及び制御装置 Download PDF

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本発明は、多孔性吸着剤に吸着する物質の吸着量を可逆的に変化させる方法、並びにそのための装置に関する。
多孔性吸着剤に吸着する物質の吸着量を可逆的に変化させる方法としては、従来から圧力スイングサイクル吸着(PSA)技術或いは加熱スイングサイクル吸着(TSA)技術が知られており、例えば、特開2001−327829号公報(特許公報1)にはPSA技術を利用した物質の分離・精製装置(圧力スイング吸着装置)が記載されており、また、特開2003−175311号公報(特許公報2)にはTSA技術を利用した物質の分離・精製方法(熱スイング吸着法)が記載されている。
しかしながら、最近その将来性が嘱望されるマイクロリアクターやオンサイト分離装置等の分野にこのような分離・精製方法や吸着剤の再生方法を利用するためには、装置の小型化、微小化が必要となるのに対して、圧力スイングサイクル吸着技術や加熱スイングサイクル吸着技術では装置の圧力損失の問題や過大なエネルギーの必要性の問題があり、装置の小型化、微小化に限界があるためこのような分野への応用が困難であった。
特開2001−327829号公報 特開2003−175311号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、多孔性吸着剤に吸着する物質の吸着量を可逆的に変化させる方法であって、圧力スイングサイクル吸着技術や加熱スイングサイクル吸着技術に比べて装置の小型化、微小化が容易な方法、並びにその方法を実施するための装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、所定の波長を有する光を吸収する多孔性吸着剤に対する被吸着物質の吸着量が、その波長を有する光を照射している場合(以下、「光照射状態」という)とかかる光を照射していない場合(以下、「光照射停止状態」という)とで驚くべきことに相違し、しかも光照射状態と光照射停止状態とを繰り返すことにより吸着量を可逆的にかつ能動的に変化させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の吸着量の制御方法は、
被吸着物質に対して吸着性能を有しているシリカ系メソ多孔体と、所定の波長を有する光を吸収し、かつ前記シリカ系メソ多孔体の骨格内に組み込まれている色素とからなる多孔性吸着剤に、前記所定の波長を有する光を第一の照射量で照射しつつ前記被吸着物質を前記多孔性吸着剤に吸着せしめる第一の工程と、
前記所定の波長を有する光の照射量を増加又は減少せしめて第二の照射量とし、前記多孔性吸着剤における前記被吸着物質の吸着量を減少又は増加せしめる第二の工程と、
を含むことを特徴とする光照射による吸着量の制御方法である。
また、本発明の吸着量の制御装置は、
被吸着物質に対して吸着性能を有しているシリカ系メソ多孔体と、所定の波長を有する光を吸収し、かつ前記シリカ系メソ多孔体の骨格内に組み込まれている色素とからなる多孔性吸着剤と、
前記多孔性吸着剤に前記所定の波長を有する光を照射するための光照射装置と、
前記多孔性吸着剤が内部に配置された処理容器と、
前記処理容器の内部を、前記光照射装置から照射される光以外の光から遮光するための遮光容器と、
前記処理容器に接続されており、被吸着物質を含有する流体を前記処理容器に導入及び/又は前記処理容器から排出するための配管と、
を備えることを特徴とする光照射による吸着量の制御装置である。
なお、本発明においては、第一の照射量又は第二の照射量のいずれか一方がゼロであってもよく、第一の工程が光照射停止状態で第二の工程が光照射状態の場合は第二の工程において被吸着物質の吸着量が減少し、第一の工程が光照射状態で第二の工程が光照射停止状態の場合は第二の工程において被吸着物質の吸着量が増加することとなる。また、第一の工程及び第二の工程がいずれも光照射状態であってもよく、第一の照射量より第二の照射量が多い場合は第二の工程において被吸着物質の吸着量が減少し、第一の照射量より第二の照射量が少ない場合は第二の工程において被吸着物質の吸着量が増加することとなる。
また、本発明において光照射量を変化させることにより吸着量が可逆的に変化する理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、所定の波長を有する光を吸収する多孔性吸着剤に対してその波長を有する光の照射を開始又は照射量を増加すると、光吸収により励起された分子の基底状態への無輻射遷移或いは可逆的光反応によって多孔性吸着剤内部の温度が僅かに上昇し、それによって多孔性吸着剤に吸着可能な被吸着物質の量(吸着平衡量)が減少する。一方、かかる光の照射を停止又は照射量を減少すると、多孔性吸着剤内部の温度がこのような無輻射遷移や可逆的光反応がない状態の温度に速やかに低下し、それによって多孔性吸着剤に吸着可能な被吸着物質の量(吸着平衡量)が増加する。そして、このような光照射による多孔性吸着剤の吸着性能の平衡状態の過渡的な変化は、不可逆的ないわゆる光化学反応を伴うものではなく、可逆的ないわゆる物理吸着特性の変化に起因するものであるため、光照射状態と光照射停止状態とを繰り返すことにより吸着量が可逆的に変化するものと本発明者らは推察する。なお、上記本発明における多孔性吸着剤内部の温度の上昇は、多孔性吸着剤の表面近傍の微小な領域における僅かな温度変化であり、従来の加熱スイングサイクル吸着技術における系全体の温度上昇とは全く別異なものであって、平衡に達する時間、エネルギー的ロス、局所的制御等の点で大きく異なる。また、光照射量の増減による色素の過渡的構造変化成分の量の増減や多孔性吸着剤表面の極性変化によっても吸着量が可逆的に変化するものと本発明者らは推察する。
また、本発明においては、リモート性に優れかつ微小領域における制御が容易な光を用いているため、圧力スイングサイクル吸着技術や加熱スイングサイクル吸着技術に比べて装置の小型化、微小化、高速化が可能となる。
本発明の吸着量の制御方法によれば、光照射という汎用性の高い手法により多孔性吸着剤に吸着する物質の吸着量を可逆的にかつ能動的に変化させることが可能となる。そして、本発明の吸着量の制御装置によれば、前記本発明の吸着量の制御方法を効率良くかつ確実に実施することが可能となり、しかも従来の圧力スイングサイクル吸着技術や加熱スイングサイクル吸着技術に比べて装置を小型化、微小化することができるようになる。
以下、本発明の光照射による吸着量の制御方法及び制御装置について、図面を参照しつつその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
図1は、本発明の光照射による吸着量の制御方法を実施するために好適な本発明の吸着量の制御装置の一実施形態を示す模式断面図である。図1において、1は被吸着物質に対して吸着性能を有しておりかつ所定の波長を有する光を吸収する多孔性吸着剤を示し、多孔性吸着剤1は処理容器2の内部に配置されている。また、多孔性吸着剤1に所定の波長を有する光Lを照射するための光照射装置3の光照射部31が処理容器2に近接して配置されており、光照射部31は光照射装置3の駆動部32に接続されている。そして、処理容器2及び光照射部31は、光照射装置3から照射される光L以外の光から処理容器2の内部を遮光するための遮光容器4の内部に配置されており、処理容器2内に流体を導入するための配管5及び処理容器2内から流体を排出するための配管6が処理容器2に接続されている。先ず、本発明の光照射による吸着量の制御装置の主要な構成要素について詳細に説明する。
(多孔性吸着剤(多孔性基剤))
本発明にかかる多孔性吸着剤1は、所定の被吸着物質に対して吸着性能を有しており、かつ、所定の波長を有する光を吸収するものであればよく、被吸着物質に対して吸着性能を有している多孔性基剤と所定の波長を有する光を吸収する色素とからなるものであることが好ましいが、かかる多孔性基剤自体が所定の波長を有する光を吸収する材料からなるものであってもよい。
このような被吸着物質に対して吸着性能を有している多孔性基剤の材料としては、アルミニウム、タンタル等の金属;シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、酸化スズ、酸化バリウム、酸化ニッケル、酸化ルテニウム、酸化バナジウム、酸化インジウム等の金属酸化物(半金属酸化物を含む);チタノシリケート、チタン酸バリウム等の複合酸化物;活性炭等の炭素質材料が挙げられ、中でも色素と組み合わせて使用する場合はその選択の余地が広くなることからシリカ、アルミナ等の可視光に対して透明な金属酸化物が好ましい。また、活性炭等の炭素質材料はそれ自体が可視光を効率良く吸収する材料であるため、所定の波長を有する光として可視光を用いる場合は炭素質材料からなる多孔性基剤をそのまま本発明にかかる多孔性吸着剤として用いることが可能である。
本発明にかかる多孔性吸着剤を構成する多孔性基剤の細孔径(平均細孔径)、比表面積等は特に制限されず、対象とする被吸着物質等に応じて適宜選択されるが、吸着効率を向上させる観点から平均細孔径を被吸着物質の分子サイズ以上とし、かつ、比表面積をできるだけ大きくすることが好ましい。このような観点から、本発明にかかる多孔性基剤としては、平均細孔径が0.3nm〜50nm程度、比表面積が100m/g以上程度であるものが好ましく、以下に詳述するシリカ系メソ多孔体が特に好ましい。
すなわち、本発明にかかる多孔性基剤として特に好適なシリカ系メソ多孔体は、界面活性剤を鋳型としてシリカ源を原料として作製されるものであり、ケイ素原子が酸素原子を介して結合した骨格−Si−O−を基本とし、高度に架橋した網目構造を有している。このようなシリカ系材料は、ケイ素原子及び酸素原子を主成分とするものであればよく、ケイ素原子の少なくとも一部が有機基の2箇所以上で炭素−ケイ素結合を形成しているものでもよい。このような有機基としては、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、ベンゼン、シクロアルカン等の炭化水素から2以上の水素がとれて生じる2価以上の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、有機基は、アミド基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルフォン基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、ビニル基等を有するものであってもよい。
本発明に好適なシリカ系メソ多孔体は、細孔径分布曲線における中心細孔直径が1〜50nm程度のメソ孔を有するものである。このようなメソ孔を有する場合には、分子径が大きい機能性有機化合物等も容易に細孔内に入ることができ、しかも細孔内での分子の拡散が速やかに行われるので、効率の良い吸着分離が可能となる傾向にある。なお、前記中心細孔直径とは、細孔容積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対してプロットした曲線(細孔径分布曲線)の最大ピークにおける細孔直径であり、次に述べる方法により求めることができる。すなわち、シリカ系メソ多孔体を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法あるいは重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温線を得る。この吸着等温線を用い、Cranston−Inklay法、Pollimore−Heal法、BJH法等の計算法により細孔径分布曲線を求めることができる。
また、本発明に好適なシリカ系メソ多孔体は、細孔径分布曲線における中心細孔直径の±40%の範囲に全細孔容積の60%以上が含まれることが好ましい。この条件を満たすシリカ系メソ多孔体は、細孔の直径が非常に均一であることを意味する。また、シリカ系メソ多孔体の比表面積については特に制限はないが、700m2/g以上であることが好ましい。比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
さらに、本発明に好適なシリカ系メソ多孔体は、そのX線回折パターンにおいて1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有することが好ましい。X線回折ピークはそのピーク角度に相当するd値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1nm以上の間隔で規則的に配列していることを意味する。
また、本発明に好適なシリカ系メソ多孔体が有する細孔は、多孔体の表面のみならず内部にも形成される。かかる多孔体における細孔の配列状態(細孔配列構造又は構造)は特に制限されないが、2d−ヘキサゴナル構造、3d−ヘキサゴナル構造又はキュービック構造であることが好ましい。また、このような細孔配列構造は、ディスオーダの細孔配列構造を有するものであってもよい。
ここで、多孔体がヘキサゴナルの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が六方構造であることを意味する(S.Inagaki,et al.,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,680,1993;S.Inagaki,et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.,69,1449;1996、Q.Huo,et
al.,Science,268,1324,1995参照)。また、多孔体がキュービックの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が立方構造であることを意味する(J.C.Vartuli,et
al.,Chem.Mater.,6,2317,1994;Q.Huo,et al.,Nature,368,317,1994参照)。また、多孔体がディスオーダの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が不規則であることを意味する(P.T.Tanev,et
al.,Science,267,865,1995;S.A.Bagshaw,et al.,Science,269,1242,1995;R.Ryoo,et al.,J.Phys.Chem.,100,17718,1996参照)。また、前記キュービック構造は、Pm−3n、Im−3m又はFm−3m対称性であることが好ましい。前記対称性とは、空間群の表記法に基づいて決定されるものである。
本発明に好適なシリカ系メソ多孔体は、平均粒径が0.01〜3μm程度の粉末のまま使用してもよいが、必要に応じて成形して使用してもよい。成形する手段はどのようなものでも良いが、押出成形、打錠成形、転動造粒、圧縮成形、CIPなどが好ましい。その形状は使用態様、方法に応じて決めることができ、たとえば円柱状、破砕状、球状、ハニカム状、凹凸状、波板状等が挙げられる。
本発明に好適なシリカ系メソ多孔体は、例えば以下の方法によって製造される。すなわち、先ず、溶媒中でシリカ原料と界面活性剤とを混合し、シリカ原料中に界面活性剤が導入されてなる多孔体前駆体を得る。
ここで用いられるシリカ原料は、反応によりケイ素酸化物(ケイ素複合酸化物を含む)を形成可能なものであればよく特に制限されないが、反応効率や得られるケイ素酸化物の物性の観点から、アルコキシシラン、ケイ酸ナトリウム、層状シリケート、シリカ、またはこれらの任意の混合物を用いることが好ましく、中でもアルコキシシランを用いることがより好ましい。
アルコキシシランとしては、アルコキシ基を4個有するテトラアルコキシシラン、アルコキシ基を3個有するトリアルコキシシラン、アルコキシ基を2個有するジアルコキシシランを用いることができる。アルコキシ基の種類は特に制限されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のようにアルコキシ基中の炭素原子の数が比較的少ないもの(炭素数として1〜4程度のもの)が反応性の点から有利である。また、アルコキシシランが有するアルコキシ基が3または2個である場合は、アルコキシシラン中のケイ素原子には有機基、水酸基等が結合していてもよく、当該有機基はアミノ基やメルカプト基等の官能基をさらに有していてもよい。
テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等が挙げられ、トリアルコキシシランとしては、トリメトキシシラノール、トリエトキシシラノール、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、ジアルコキシシランとしては、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン等が挙げられる。
上記アルコキシシランは、単独で用いることもできるが2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。また、上記のアルコキシ基を2〜4個有するアルコキシシランは、アルコキシ基を1個有するモノアルコキシシランと組み合わせて使用することも可能である。このようにして用いることのできるモノアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、3−クロロプロピルジメチルメトキシシラン等が挙げられる。
アルコキシシランは、加水分解によりシラノール基を生じ、生じたシラノール基同士が縮合することによりケイ素酸化物が形成される。この場合において、分子中のアルコキシ基の数が多いアルコキシシランは、加水分解および縮合で生じる結合が多くなる。したがって、アルコキシ基の多いテトラアルコキシシランをアルコキシシランとして用いることが好ましく、テトラアルコキシシランとしては、反応速度の観点からテトラメトキシシランまたはテトラエトキシシランを用いることが特に好ましい。
また、ケイ酸ナトリウムとしては、メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、オルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)、二ケイ酸ナトリウム(Na2Si25)、四ケイ酸ナトリウム(Na2Si49)等が挙げられる。ケイ酸ナトリウムとしては、このような単一物質の他、水ガラス(Na2O・nSiO2、n=2〜4)等のように組成が場合により異なるものを使用することもできる。
さらに、層状シリケート(層状ケイ酸塩)としては、カネマイト(NaHSi25・3H2O)、二ケイ酸ナトリウム結晶(α、β、γ、δ−Na2Si25)、マカタイト(Na2Si49・5H2O)、アイアライト(Na2Si817・xH2O)、マガディアイト(Na2Si1417・xH2O)、ケニヤイト(Na2Si2041・xH2O)等が挙げられる。また、セピオライト、モンモリロナイト、バーミキュライト、雲母、カオリナイト、スメクタイト等の粘土鉱物を酸性水溶液で処理してシリカ以外の元素を除去したものも層状シリケートとして使用可能である。
また、シリカとしては、Ultrasil(Ultrasil社)、Cab-O-Sil(Cabot社)、HiSil(Pittsburgh
Plate Glass社)等の沈降性シリカ;コロイダルシリカ;Aerosil(Degussa-Huls社)等のフュームドシリカを挙げることができる。
上記のシリカ原料は、単独で用いることもできるが2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。但し、2種類以上のシリカ原料を用いる場合は、製造時の反応条件が複雑化することがあるため、シリカ原料は単独のものを使用することが好ましい。
前記シリカ原料と共に用いられる界面活性剤は、特に限定されるものではなく、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性のうちのいずれであってもよく、具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム、ベンジルアンモニウム等の塩化物、臭化物、ヨウ化物あるいは水酸化物;脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤、一級アルキルアミン等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で又は二種以上混合して用いられる。
上記の界面活性剤のうち、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤としては、疎水性成分として炭化水素基、親水性部分としてポリエチレンオキサイドをそれぞれ有するポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤等が挙げられる。このような界面活性剤としては、例えば、一般式Cn2n+1(OCH2CH2mOHで表され、nが10〜30、mが1〜30であるものが好適に使用できる。また、このような界面活性剤としては、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸とソルビタンとのエステル、あるいはこれらのエステルにポリエチレンオキサイドが付加した化合物を用いることもできる。
さらに、このような界面活性剤としては、トリブロックコポリマー型のポリアルキレンオキサイドを用いることもできる。このような界面活性剤としては、ポリエチレンオキサイド(EO)とポリプロピレンオキサイド(PO)からなり、一般式(EO)x(PO)y(EO)xで表されるものが挙げられる。x、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。上記のトリブロックコポリマーとしては、(EO)19(PO)29(EO)19、(EO)13(PO)70(EO)13、(EO)5(PO)70(EO)5、(EO)13(PO)30(EO)13、(EO)20(PO)30(EO)20、(EO)26(PO)39(EO)26、(EO)17(PO)56(EO)17、(EO)17(PO)58(EO)17、(EO)20(PO)70(EO)20、(EO)80(PO)30(EO)80、(EO)106(PO)70(EO)106、(EO)100(PO)39(EO)100、(EO)19(PO)33(EO)19、(EO)26(PO)36(EO)26が挙げられる。これらのトリブロックコポリマーはBASF社、アルドリッチ社等から入手可能であり、また、小規模製造レベルで所望のx値とy値を有するトリブロックコポリマーを得ることができる。
また、エチレンジアミンの2個の窒素原子にそれぞれ2本のポリエチレンオキサイド(EO)鎖−ポリプロピレンオキサイド(PO)鎖が結合したスターダイブロックコポリマーも使用することができる。このようなスターダイブロックコポリマーとしては、一般式((EO)x(PO)y2NCH2CH2N((PO)y(EO)x2で表されるものが挙げられる。ここでx、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。
このような界面活性剤の中では、結晶性の高いシリカ系メソ多孔体を得ることができることから、アルキルトリメチルアンモニウム[Cp2p+1N(CH33]の塩(好ましくはハロゲン化物塩)を用いることが好ましい。また、その場合は、アルキルトリメチルアンモニウム中のアルキル基の炭素数は8〜22であることがより好ましい。このようなものとしては、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化ドコシルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
また、シリカ原料に界面活性剤を導入して多孔体前駆体を得る際の溶媒としては、水、有機溶媒(アセトン、アルコール等)、水と有機溶媒の混合溶媒等を使用することができるが、水又は水を主成分とする混合溶媒を用いることが好ましい。
シリカ原料に界面活性剤を導入して多孔体前駆体を得る具体的な方法は特に制限されないが、以下の方法が好ましい。すなわち、界面活性剤を含む溶液中にシリカ原料を添加して混合し、シリカ原料中に界面活性剤イオンが導入された複合体を形成せしめると共にシリカ原料を縮合反応(加水分解及び脱水縮合)せしめる。それによって、シリカ原料として層状シリケートを用いた場合には、層状シリケートの各層の間に界面活性剤イオンが入り込む。一方、層状シリケート以外のシリカ原料を用いた場合には、界面活性剤が水溶液中で規則正しく配列したミセルを形成し、その周囲にシリカ原料が集合する。そして、複合体中にシリカ原料の加水分解で生成したシラノール基(−O−H)が脱水縮合し、シリカ原料の結合が部分的に形成されて二次元又は三次元網目構造を有する多孔体前駆体が得られる。
その際、溶液中の界面活性剤の濃度は0.05〜1mol/Lであることが好ましい。この濃度が前記下限未満であると、界面活性剤イオンがシリカ原料中に十分に導入されず細孔の形成が不完全となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、未反応で溶液中に残留する界面活性剤の量が増大して細孔の均一性が低下する傾向にある。また、溶液中のシリカ原料の分散量は、Si濃度換算で0.0055〜0.33mol/Lであることが好ましい。この分散量が前記下限未満であると、未反応で溶液中に残留する界面活性剤の量が増大して細孔の均一性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、界面活性剤イオンがシリカ原料中に十分に導入されず細孔の形成が不完全となる傾向にある。更に、Si等の骨格形成原子のモル数が、界面活性剤のモル数の0.02〜10倍であることが好ましい。また、反応温度は、特に制限されず、0〜100℃とすることが好ましく、20〜80℃とすることがより好ましい。更に具体的な反応条件は、用いるシリカ原料の種類等に基づいて適宜決定することが好ましい。
すなわち、シリカ原料としてアルコキシシランを用いる場合は、pH8以上のアルカリ性又はpH6以下の酸性としてある界面活性剤溶液を調製し、この溶液にアルコキシシランを添加することが好ましい。添加されたアルコキシシランは溶液中で加水分解および脱水縮合するため、添加後数秒〜数十分で粉末が析出する。その後、溶液をさらに攪拌してアルコキシシランの縮合反応を更に進行させて熟成せしめた後、必要に応じて放置して系を安定化させ、得られた沈殿物を必要に応じてろ過および洗浄することによって多孔体前駆体が得られる。
また、シリカ原料としてアルコキシシランを用いる場合、先ず界面活性剤の非存在下で酸性又はアルカリ性の溶液中でアルコキシシランを加水分解および脱水縮合せしめてオリゴマーを形成させた後に、得られたオリゴマーをアルカリ性又は酸性の界面活性剤溶液に添加して更に縮合反応させるようにしてもよく、このようにすると重合度が向上する傾向にあり好ましい。更に、後述する色素が骨格内に組み込まれたシリカ系メソ多孔体を得る場合は、酸性溶液中でアルコキシシランのオリゴマーを形成せしめた後にそのオリゴマーをアルカリ性の界面活性剤溶液に添加するようにすると、色素をより大量に骨格内に導入できるため特に好ましい。
また、シリカ原料として、アルコキシシラン以外のシリカ原料(層状シリケート、ケイ酸ナトリウムまたはシリカ)を用いる場合は、先ずpHが9.5以上のアルカリ性の界面活性剤溶液中にシリカ原料を分散させてシリカ原料中に形成されているSi−(O−Si)4結合の一部を切断せしめた後に、界面活性剤溶液のpHを7〜9.5の範囲となるように調整してシリカ原料を縮合反応せしめることが好ましい。その後、溶液をさらに攪拌してシリカ原料の縮合反応を更に進行させて熟成せしめた後、必要に応じて放置して系を安定化させ、得られた沈殿物を必要に応じてろ過および洗浄することによって多孔体前駆体が得られる。なお、上記界面活性剤溶液のpHが9.5を超えると、シラノール基の脱水縮合が不十分になって得られる多孔体の収量が少なくなる傾向にあり、他方、pHが7未満になるとケイ酸イオンが不定形シリカゲルとなって析出し易くなる傾向にある。
次に、上記のようにして得られた多孔体前駆体に含まれる界面活性剤を除去することにより、本発明に好適なシリカ系メソ多孔体が得られる。このように界面活性剤を除去する方法としては、例えば、(i)多孔体前駆体を300〜1000℃で焼成して界面活性剤を除去する方法、(ii)界面活性剤に対する溶解度が高い有機溶媒中に多孔体前駆体を浸漬して界面活性剤を除去する方法、(iii)多孔体前駆体を酸性溶液に浸漬して加熱し、界面活性剤を水素イオンに交換せしめるイオン交換法、等を挙げることができる。
(色素)
本発明にかかる多孔性吸着剤としては、前述の多孔性基剤と所定の波長を有する光を吸収する色素とからなるものが好ましい。本発明に使用可能な色素は特に制限されず、照射する光や組み合わせる多孔性基剤等に応じて適宜選択される。このような色素としては、アゾ色素、トルイジン色素、アントラキノン色素、インジゴイド色素、硫化色素、トリフェニルメタン色素、ピラゾロン色素、スチルベン色素、ジフェニルメタン色素、キサンテン色素、アリザリン色素、アクリジン色素、キノンイミン色素(アジン色素、オキサジン色素、チアジン色素)、チアゾール色素、メチン色素、ニトロ色素、ニトロソ色素、シアニン色素等が挙げられ、中でも吸収の効率が高い方が変化の効率も高いという観点からアルドリッチ社製 Disperse Red 1[化合物名:4−(N−2−ヒドロキシエチル−N−エチル)アミノ−4’−ニトロアゾベンゼン]、Disperse Orange 3[化合物名:4−(4−ニトロフェニルアゾ)アニリン]等の分子内電荷移動タイプのアゾ色素(モノアゾ色素、ジスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、ポリアゾ色素)、シアニン系色素が好ましい。
本発明にかかる多孔性吸着剤においては、このような色素が前記多孔性基剤の少なくとも表面近傍に均一に存在していることが好ましく、それらを組み合わせる具体的な方法は特に制限されない。例えば、(I)色素が多孔性基剤の骨格内に組み込まれていてもよく、或いは(II)色素が多孔性基剤の表面に担持されていてもよいが、色素の脱離がより確実に防止され、光照射の有無による吸着量の差がより大きくなる傾向にある観点から前者(I)がより好ましい。
色素を多孔性基剤の骨格内に組み込む場合、(i)多孔性基剤の原料(例えば、シリカ系メソ多孔体の原料であるシリカ原料)の少なくとも一部としてそのような原料と色素との結合体を用いて色素が骨格内に組み込まれた多孔性吸着剤を得る方法、或いは(ii)多孔性基剤の原料に色素を混合して色素が骨格内に組み込まれた多孔性吸着剤を得る方法等を採用することができるが、より多くの色素をより確実に組み込むことができる傾向にある観点から前者(i)がより好ましい。このようにして多孔性吸着剤の骨格内に組み込まれた色素の含有量は、多孔性吸着剤の2〜30重量%程度であることが好ましい。色素の含有量が前記下限未満では光照射の有無による吸着量の差が十分に大きくならない傾向にあり、他方、前記上限を超えると多孔性吸着剤の吸着性能が低下して吸着量が不十分となる傾向にある。
また、色素を多孔性基剤の表面に担持せしめる場合、(1)色素を多孔性基剤の表面に化学的に吸着せしめても、或いは(2)色素を多孔性基剤の表面に物理的に吸着せしめてもよいが、色素をより確実に担持せしめることができる傾向にある観点から前者(1)がより好ましい。具体的な方法としては、例えば、水酸基(或いは反応性官能基)を有する色素を溶解した溶液中に多孔性基剤を含浸せしめ、酸性或いは塩基性条件下でメソ孔内表面に残存しているシラノール基と縮合反応を行わせて化学的に吸着せしめる方法が挙げられる。また、後者の物理的に吸着せしめる方法としては、色素の溶液中に多孔性基剤を含浸せしめた後に溶液を取り除いて色素が物理的に吸着した多孔性基剤を回収する方法や、色素と多孔性基剤とをボールミル等により物理的に混合する方法等が挙げられる。このようにして多孔性吸着剤の表面に担持される色素の担持量は、多孔性吸着剤の2〜30重量%程度であることが好ましい。色素の担持量が前記下限未満では光照射の有無による吸着量の差が十分に大きくならない傾向にあり、他方、前記上限を超えると多孔性吸着剤の吸着性能が低下して吸着量が不十分となる傾向にある。
(照射光及び光照射装置)
多孔性吸着剤1に照射する光Lは、用いる多孔性吸着剤1に効率良く吸収される光であればよく、その波長は特に制限されない。したがって、多孔性吸着剤1に照射する光Lは、可視光領域の波長の光、紫外線領域の波長の光、赤外線領域の波長の光のいずれであってもよく、用いる多孔性吸着剤1(色素を含む多孔性吸着剤の場合は用いる色素)に応じて適宜選択されるが、装置構成及び価格の観点からは可視光領域の波長の光であることがより好ましい。
また、多孔性吸着剤1に照射する光Lは、各種レーザー装置から発せられる光のように単色光であっても、各種LEDやランプから発せられる連続光であってもよい。したがって、光照射装置3は特に制限されず、各種レーザー装置、各種LED、各種ランプ等の光源(光照射部31)及びそれらの駆動装置(駆動部32)を適宜用いることができるが、低価格化及びコンパクト化が容易な観点からはLEDのアレイを用いることがより好ましい。
更に、多孔性吸着剤1に照射する光Lとして太陽光を用いてもよく、その場合は光照射装置3として光源ではなく、太陽光を必要な時にのみ処理容器2内の多孔性吸着剤1に導くことが可能な窓や光導波路を用いることが好ましい。
また、本発明においては多孔性吸着剤1に照射される光Lの照射量が制御されるが、かかる制御はコンピュータ等の制御手段(図示せず)による機械的な制御であっても、或いは手動による制御であってもよい。
(処理容器、遮光容器及び配管)
図1に示す処理容器2は、光照射装置3から発せられた光Lを効率良く透過可能なものであればよく、例えばガラス容器等が適宜用いられる。また、遮光容器4は、処理容器2の内部を光照射装置3から発せられた光L以外の光から遮光するものであればよく、例えばステンレス容器等が適宜用いられる。なお、図1においては光照射部31が処理容器2の外部に配置されているため、処理容器2は光Lを透過可能なものである必要があるが、光照射部31が処理容器2の内部に配置されている場合はその必要はなく、処理容器2が遮光容器4を兼ねるものであってもよい。また、処理容器2内の温度が一定に保持されるように、遮光容器4が恒温槽を兼ねていることが好ましい。
更に、処理容器2内に接続される配管5、6の材質等も特に制限されず、例えばガラス管等が適宜用いられる。なお、図1においては処理容器2内に流体を導入するための配管5と処理容器2内から流体を排出するための配管6とが別個に設けられているが、これに限定されるものではなく、単一の配管で流体の導入及び排出を兼ねるものであってもよい。また、かかる配管は、ポンプ、弁等の流体の流れを制御するため手段(図示せず)を適宜介して、被吸着物質を含有する流体の供給源(図示せず)及び排出流体の回収装置(図示せず)に接続されていることが好ましい。
(光照射による吸着量の制御方法)
次に、本発明の光照射による吸着量の制御方法について、図1を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明の光照射による吸着量の制御方法は、図1に示す装置によって実施される場合に限定されるものではない。
本発明においては、先ず、反応容器2内に被吸着物質を含有する流体が導入された状態で多孔性吸着剤1に被吸着物質を吸着せしめる。その際、光照射装置3から第一の照射量で光Lを照射するが、第一の照射量はゼロであってもよい。
次いで、多孔性吸着剤1に照射される光Lの照射量を増加すると、多孔性吸着剤1がより多くの光Lを吸収することによって多孔性吸着剤1に吸着可能な被吸着物質の量(吸着平衡量)が減少し、その減少した吸着平衡量に達するまで被吸着物質が多孔性吸着剤1から放出される。他方、多孔性吸着剤1に照射される光Lの照射量を低減又はゼロにすると、多孔性吸着剤1に吸着可能な被吸着物質の量(吸着平衡量)が増加し、その増加した吸着平衡量に達するまで被吸着物質が多孔性吸着剤1に更に吸着されることとなる。
そして、このような光照射による多孔性吸着剤1の吸着性能の平衡状態の過渡的な変化は、不可逆的ないわゆる光化学反応を伴うものではなく、可逆的ないわゆる物理吸着特性の変化に起因するものである。そのため、光照射状態と光照射停止を繰り返す、或いは光の照射量を繰り返し変化させることにより吸着量が可逆的に変化し、光の照射量が増加する際には吸着平衡量の差に相当する分の被吸着物質が多孔性吸着剤1から放出され、光の照射量が減少する際には吸着平衡量の差に相当する分の被吸着物質が多孔性吸着剤1に更に吸着されることとなる。
また、多孔性吸着剤1により多くの光Lを照射した状態で被吸着物質を吸着させると、光Lの照射量を低減又はゼロにした状態で被吸着物質を吸着させた場合に比べて吸着速度が向上するため、光Lの照射量を制御することによって吸着量と共に吸着速度を変化させることも可能となる。
このように、本発明の光照射による吸着量の制御方法によれば多孔性吸着剤に対する被吸着物質の吸着量を可逆的にかつ速やかに変化させることが可能となるため、各種被吸着物質の分離・精製方法、並びに多孔性吸着剤の再生方法等として有用である。
(被吸着物質及び用途)
本発明の対象となる被吸着物質は、用いる多孔性吸着剤1に効率良く吸着される物質であればよく、特に制限されない。このような被吸着物質としては、例えば、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、炭化水素(気体)、ハロメタン等の気体状成分や、水、炭化水素(液体)、ガソリン等の液体状成分が挙げられる。したがって、本発明は、水素分離、一酸化炭素分離、二酸化炭素分離、窒素分離、炭化水素分離、ハロメタン等の有害物質の除去、調湿等を達成するシステムとして有用である。
また、本発明においては、リモート性に優れかつ微小領域(例えば直径1μm以下)における制御が容易な光を用いているため、圧力スイングサイクル吸着技術や加熱スイングサイクル吸着技術に比べて装置の小型化、微小化、高速化が可能となる。したがって、本発明は、車載用オンボード分離・精製装置、家庭用オンサイト分離・精製装置、マイクロリアクター分離・精製装置、μ−TAS(Total analysis system)、物質徐放システム等に特に有用である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
アゾ色素{アルドリッチ社製 Disperse Red 1(DR1)[化合物名:4−(N−2−ヒドロキシエチル−N−エチル)アミノ−4’−ニトロアゾベンゼン]}とアルコキシシラン{テトラエトキシシラン(TEOS)}との結合体として下記構造式:
Figure 0004366687
で表されるアゾベンゼン骨格を有するアルコキシシラン(DR1UPTEOS)を用いた。そして、DR1UPTEOS0.081gとTEOS0.903gとの混合物{DR1UPTEOS:TEOS=1:30(モル比)}にアセトン0.76g及び0.01規定塩酸0.83gを添加し、攪拌した。最初はTEOSとアセトンに溶解したDR1UPTEOSが分散していたが、1時間程度の反応で均一な溶液に変化し、3時間程度反応させたところTEOS及びDR1UPTEOSの加水分解及び脱水縮合によるオリゴマー形成に伴う粘性の増加が観察された。
一方、2.02Mの水酸化ナトリウム水溶液0.7mLを蒸留水90mLに混合し、そこにトリメチルステアリルアンモニウムクロライド{〔CH3(CH2)17N(CH3)3〕Cl (C18TMACl)}0.200gを添加して40℃に加熱して溶解せしめた後、室温にて保持した。
次いで、得られたアルカリ性の界面活性剤水溶液に、前記オリゴマー溶液を激しく撹拌しながら滴下したところ、滴下と同時に溶液が赤濁した。室温で更に約2.5時間撹拌した後、桐山ロートを用いてろ過した。ろ液はほぼ無色透明であり、得られた赤色粉末(多孔体前駆体)を水及びアセトンでリンスしたところ、アセトンリンスの際にろ液がほんのわずかにピンク色を呈した。
続いて、得られた多孔体前駆体からテンプレートであるC18TMAClを除去するため、エタノール100mLに濃塩酸2.0gを加えた溶液に上記多孔体前駆体を懸濁させ、室温で約7時間撹拌した後、桐山ロートを用いてろ過した。更に、得られた粉末をエタノール、水、アセトンでリンスし、風乾せしめた後、一昼夜真空乾燥して本発明にかかる多孔性吸着剤を得た。
(実施例2)
DR1UPTEOSとTEOSとの混合物としてDR1UPTEOS0.229gとTEOS0.852gとの混合物{DR1UPTEOS:TEOS=1:10(モル比)}を用いた以外は実施例1と同様にして本発明にかかる多孔性吸着剤を得た。
(比較例1)
DR1UPTEOSとTEOSとの混合物に代えてTEOS0.933gのみを用いた以外は実施例1と同様にして比較のための多孔性吸着剤を得た。なお、界面活性剤水溶液にオリゴマー溶液を滴下した際に溶液は白濁し、得られた粉末は白色粉末であった。
(赤外吸収スペクトル測定)
実施例1〜2で得られた多孔性吸着剤の赤外(IR)吸収スペクトルを、フーリエ変換赤外分光装置(Nicolet社製:Avatar360)を用いてKBr法にて測定した。実施例1及び実施例2で得られた多孔性吸着剤の赤外吸収スペクトルを図2(a)及び図2(b)にそれぞれ示す。図2(a)、(b)に示した結果から、実施例1〜2で得られた多孔性吸着剤はシリカ骨格をベースにしてかつアゾ色素が導入された材料であることが確認された。
(X線回折測定)
実施例1〜2及び比較例1で得られた多孔性吸着剤のX線回折(XRD)パターンを、X線回折装置(Rigaku社製:RINT-TTR)を用いて測定した。比較例1、実施例1及び実施例2で得られた多孔性吸着剤のX線回折パターンを図3(a)、図3(b)及び図3(c)にそれぞれ示す。図3(a)、(b)、(c)に示した結果から、実施例1〜2及び比較例1で得られた多孔性吸着剤には回折ピークが存在し、周期構造を持った材料であることが確認された。また、指数付けから2次元ヘキサゴナル構造であると推察される。
(窒素の等温吸着測定)
実施例1〜2及び比較例1で得られた多孔性吸着剤について、窒素の等温吸着測定を全自動ガス吸着量測定装置(ユアサアイオニクス社製:オートソーブ1-AG)を用いて77Kで実施した。得られた窒素の等温吸着曲線を図4に示す。
吸着時、脱着時の等温線はいづれの多孔性吸着剤においても同じ曲線上にあり、ヒステリシスは観測されなかった。これより、可逆的な物理吸着が生じていることが確認された。また、いずれの多孔性吸着剤においてもP/Pが0.3程度でメソ孔に特徴的な急激な吸着量の立ち上がりを示しており、良好なシリカ系メソ多孔体であることが確認された。
(比表面積)
実施例1〜2及び比較例1で得られた多孔性吸着剤について、BET(Brunauer-Emmett-Teller)法により比表面積を求めたところ、いずれの多孔性吸着剤においても500〜750m/g程度であった。
(孔径分布)
実施例1〜2で得られた多孔性吸着剤について、ケルビン式を元にしたBJH(Barrett-Joyner-Halenda)法を用いて吸着曲線より細孔分布曲線を求めた。実施例1及び実施例2で得られた多孔性吸着剤の孔径分布を図5(a)及び図5(b)にそれぞれ示す。図5(a)、(b)に示した結果から、実施例1〜2で得られた多孔性吸着剤の細孔径は2nmを中心にそろっていることが確認された。
(ベンゼンの吸着量に関する光照射吸着試験)
図6に示す蒸気吸着測定装置(日本ベル社製:BELSORP-18)にハロゲンランプ光源(HOYASHOT HL100E)及び光照射用のコールドライトガイド(駿河精機社製:VFGS)を取りつけ、実施例1〜2及び比較例1で得られた多孔性吸着剤を用いて以下に示すベンゼンの吸着量に関する光照射吸着試験を行った。なお、10mgの多孔性吸着剤1が容量17mLのガラス製処理容器2の内部に配置されており、コールドライト3から最大390mW(ガイド出口)の照射光パワーで波長380〜780nmの可視光を中心とした照射光Lが多孔性吸着剤1に照射された。また、処理容器2及びコールドライト3の光照射部31はステンレス製の25℃の恒温水槽(遮光容器)4の内部に配置されており、処理容器2には弁10を介して容量43mLのガラス製予備室(配管)11が接続されている。更に、予備室11には、弁12を介して内部にベンゼン13が貯められている容器14と、弁15を介してポンプ16と、圧力計17とが接続されている。
先ず、系全体を十分に脱気した後、予備室11内に所定初期圧力(圧力:9Torr)のベンゼン蒸気を導入した。続いて、弁12及び弁15を閉じた後に弁10を開けてベンゼン蒸気を処理容器2内に導入し、光Lを照射しない状態で多孔性吸着剤1に対するベンゼンの吸着量が平衡状態になるまで放置した。次に、ベンゼンの吸着量が十分に平衡状態になったところで光Lの照射を開始し、更に所定時間経過後に光Lの照射を停止してその間の処理容器2内の圧力変化を計測した。
実施例1〜2で得られた多孔性吸着剤を用いた場合の結果、すなわち光照射によって変化する圧力変化の様子を図7に模式的に示した。いずれの多孔性吸着剤を用いた場合も、平衡状態に到達した後に光照射を開始すると、図7に示したように圧力が上昇し、30秒から1分程度で上昇は停止して光照射状態での圧力は一定となった(図7:ON状態)。次いで、光照射を停止すると、再び圧力は低下しはじめ、やはり30秒から1分程度で最初の平衡状態に戻った(図7:OFF状態)。この現象は、光照射の開始と停止を繰り返し行っても(一度脱着させてから再度行っても)同様に再現した。なお、圧力上昇は多孔性吸着剤内部に吸着したベンゼンが外部に放出されたことにより起こっており、他方、光照射を停止するともとの平衡状態に戻ることは再びベンゼンが多孔性吸着剤内部に吸着されたことを示す。このような現象が生じたことから、光照射によって多孔性吸着剤の吸着特性が可逆的に変化し、光照射によって吸脱着を能動的に制御できることが確認された。
なお、このような現象は実施例1〜2で得られた多孔性吸着剤では認められたが、比較例1で得られた多孔性吸着剤では認められなかったことから、色素による光吸収が本現象に重要な役割を果たしていることが確認された。
次に、実施例1〜2で得られた多孔性吸着剤を用いて、最初の平衡圧が異なる状態で光照射吸着試験を行った。なお、最初の平衡圧を以下の3パターン、(i)吸着等温線における最初の吸着量の立ちあがり部分の圧力(数Torr)、(ii)一旦相対圧に対する吸着量が略平坦になる少し手前の圧力(十数Torr)、(iii)その平坦部分の圧力(50〜60Torr)、として試験を行った。また、光照射パワーも同時に変化させてその挙動の違いについても比較した。得られた結果を図8に示す。
図8に示した結果の比較から、実施例2で得られた多孔性吸着剤の方がどの条件でも平衡状態の変化が大きいことが確認された。すなわち、導入した色素の量が多い方が、光照射による吸着量の変化量が多く、色素濃度に比例して吸着量の変化が大きい現象が確認された。そして、実施例2で得られた多孔性吸着剤を用いた場合、光照射により最大で約36%のベンゼンを光照射により外部に放出させ、更に光照射停止後に再び内部に同量のベンゼンを再吸着させることができた。
また、光照射パワーに対する依存性を比較すると、パワーの増大により変化量が増大していく傾向があり、その依存性は実施例2で得られた多孔性吸着剤の方がより顕著であることが確認された。
なお、最初の平衡圧が数Torrと十数Torrの違いによる差は実施例1、2で得られたいずれの多孔性吸着剤においても確認されなかったが、最初の平衡圧が50〜60Torrの場合は逆に変化量がいずれの多孔性吸着剤においても低下していた。
また、弁10を開けてベンゼン蒸気を処理容器2内に導入した際に、光Lを照射した状態で多孔性吸着剤1に対するベンゼンの吸着量が平衡状態になるまでの圧力変化を測定したところ、予備室11内の初期圧力が35Torr以下の場合は、光照射状態の方が光照射停止状態より平衡状態に到達するまでの吸着速度が速くなる現象が確認された。他方、予備室11内の初期圧力が飽和蒸気圧(95.1Torr@25℃)に近い90Torr程度の場合は、吸着速度に違いは見られなかった。
(比較例2)
特開2003−263999号公報に記載されている合成例1[多孔質粒子の作製]と同じ製造方法で比較のための多孔性吸着剤(ベンゼンをシリカ骨格に有した有機−無機ハイブリッド型シリカ系メソ多孔体)を得た。得られた多孔性吸着剤について前記と同様にベンゼンの吸着量に関する光照射吸着試験を行ったところ、光照射による吸着量の変化は確認されなかった。
(実施例3)
比較例1で得られた多孔性吸着剤にアゾ色素(アルドリッチ社製DR1)を以下の方法により吸着せしめて本発明にかかる多孔性吸着剤を得た。すなわち、エタノール100mLに62mgのDR1を溶解せしめ、続いて得られた溶液に比較例1で得られた多孔性吸着剤40mgを懸濁させて1時間攪拌した後、色素が吸着した多孔性吸着剤をろ過、風乾、真空乾燥して本発明にかかる多孔性吸着剤を得た。得られた多孔性吸着剤について前記と同様にベンゼンの吸着量に関する光照射吸着試験を行ったところ、約14%の光照射による吸着量の変化が確認された。
(実施例4)
比較例1で得られた多孔性吸着剤にアゾ色素(アルドリッチ社製DR1)を以下の方法により物理的に担持せしめて本発明にかかる多孔性吸着剤を得た。すなわち、比較例1で得られた多孔性吸着剤40mgと10mgのDR1とを乳鉢で十分に混合して本発明にかかる多孔性吸着剤を得た。得られた多孔性吸着剤について前記と同様にベンゼンの吸着量に関する光照射吸着試験を行ったところ、約17%の光照射による吸着量の変化が確認された。
(実施例5)
色素として青色色素トルイジン(アルドリッチ社製トルイジンブルーO)を用いた以外は実施例3と同様にして本発明にかかる多孔性吸着剤を得た。得られた多孔性吸着剤について前記と同様にベンゼンの吸着量に関する光照射吸着試験を行ったところ、約15%の光照射による吸着量の変化が確認された。
以上説明したように、本発明の吸着量の制御方法によれば、光照射という汎用性の高い手法により多孔性吸着剤に吸着する物質の吸着量を可逆的にかつ能動的に変化させることが可能となる。そして、本発明の吸着量の制御装置によれば、前記本発明の吸着量の制御方法を効率良くかつ確実に実施することが可能となり、しかも従来の圧力スイングサイクル吸着技術や加熱スイングサイクル吸着技術に比べて装置を小型化、微小化することができるようになる。したがって、本発明は、車載用オンボード分離・精製装置、家庭用オンサイト分離・精製装置、マイクロリアクター分離・精製装置、μ−TAS(Total analysis system)、物質徐放システム等に特に有用である。
本発明の光照射による吸着量の制御方法を実施するために好適な本発明の吸着量の制御装置の一実施形態を示す模式断面図である。 図2(a)及び図2(b)はそれぞれ、実施例1及び実施例2で得られた多孔性吸着剤の赤外吸収スペクトルを示すグラフである。 図3(a)、図3(b)及び図3(c)はそれぞれ、比較例1、実施例1及び実施例2で得られた多孔性吸着剤のX線回折パターンを示すグラフである。 実施例1〜2及び比較例1で得られた多孔性吸着剤の窒素の等温吸着曲線をに示すグラフである。 図5(a)及び図5(b)はそれぞれ、実施例1及び実施例2で得られた多孔性吸着剤の孔径分布を示すグラフである。 ベンゼンの吸着量に関する光照射吸着試験に用いた蒸気吸着測定装置の構成を示す模式図である。 実施例1〜2で得られた多孔性吸着剤を用いた場合の光照射によって変化する圧力変化の様子を示す模式的グラフである。 実施例1〜2で得られた多孔性吸着剤を用いたベンゼンの吸着量に関する光照射吸着試験の結果を示すグラフである。
符号の説明
1…多孔性吸着剤、2…処理容器、3…光照射装置、31…光照射部、32…光照射装置駆動部、4…遮光容器、5、6…配管、L…照射光。

Claims (2)

  1. 被吸着物質に対して吸着性能を有しているシリカ系メソ多孔体と、所定の波長を有する光を吸収し、かつ前記シリカ系メソ多孔体の骨格内に組み込まれている色素とからなる多孔性吸着剤に、前記所定の波長を有する光を第一の照射量で照射しつつ前記被吸着物質を前記多孔性吸着剤に吸着せしめる第一の工程と、
    前記所定の波長を有する光の照射量を増加又は減少せしめて第二の照射量とし、前記多孔性吸着剤における前記被吸着物質の吸着量を減少又は増加せしめる第二の工程と、
    を含むことを特徴とする光照射による吸着量の制御方法。
  2. 被吸着物質に対して吸着性能を有しているシリカ系メソ多孔体と、所定の波長を有する光を吸収し、かつ前記シリカ系メソ多孔体の骨格内に組み込まれている色素とからなる多孔性吸着剤と、
    前記多孔性吸着剤に前記所定の波長を有する光を照射するための光照射装置と、
    前記多孔性吸着剤が内部に配置された処理容器と、
    前記処理容器の内部を、前記光照射装置から照射される光以外の光から遮光するための遮光容器と、
    前記処理容器に接続されており、被吸着物質を含有する流体を前記処理容器に導入及び/又は前記処理容器から排出するための配管と、
    を備えることを特徴とする光照射による吸着量の制御装置。
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