(本開示の一態様を得るに至った経緯)
以下、本開示の実施の形態を具体的に説明するのに先立ち、本開示の一態様を得るに至った経緯について説明する。
従来の物体把持装置では、加圧減圧装置を用いて密閉容器内の圧力を減圧したり加圧したりする。
例えば、従来の物体把持装置では、真空ポンプ等の減圧装置を用いて密閉容器内の圧力を減圧する。一方、密閉容器内の圧力を加圧する際は、例えば、密閉系内に切替弁を設置しておき、大気開放によって減圧状態から常圧状態に戻して加圧したり、あるいは、圧縮機を用いて加圧したりする。
しかしながら、このような機械的原理による加圧減圧方法では、真空ポンプ等の大型の装置と、駆動のための定置電力が必要となり、さらに、加圧機構と減圧機構とを別々に設置する必要があるため、加圧減圧機構及びこれを備える物体把持装置が大型化したり重量化したり煩雑化したりするという課題がある。
一方、真空ポンプ等の装置を用いずに密閉容器内の圧力を減圧しようとすると、密閉容器から気体を排出するのに時間がかかってしまい、応答性が悪くなる。また、大気開放によって密閉容器内の圧力を加圧する方法では、加圧するのに時間がかかってしまって応答性が悪くなる。
ところで、多孔体は、内部にナノオーダサイズの細孔を有しており、細孔空間に分子を吸着する能力を有する。
本発明者らは、この多孔体の気体吸着能力に着目し、密閉容器内に多孔体と気体(気体分子)とが充填されている場合に、多孔体が気体を吸着すると、密閉容器内の圧力が減圧され得るのではないか、また、密閉容器内の圧力が減圧された状態において多孔体が吸着した気体を脱着することによって密閉容器内の圧力が加圧され得るのではないかという知見を得た。
本発明者は、この知見をもとに鋭意検討を行った結果、加圧減圧機構及び加圧減圧方法として、多孔体による気体の吸脱着を利用することを見出した。具体的には、多孔体にエネルギーを供給したりエネルギーの供給を停止又は減少したりすることで多孔体による気体の吸脱着を制御して、密閉容器内の圧力を加圧したり減圧したりする加圧減圧機構及び加圧減圧方法を見出した。そして、本発明者は実際に密閉容器内の圧力変化の制御が可能であることを実証した。
以下、本開示の具体的な態様を説明する。
本開示の一態様に係る気体吸脱着デバイスは、所定の気体が充填されかつ外部からの気体の供給又は外部への気体の送出がない密閉容器内に多孔体を有し、前記多孔体へのエネルギーの供給によって前記多孔体内の前記所定の気体が前記多孔体の外へ放出され、前記多孔体へのエネルギーの供給を停止する又は前記多孔体に供給するエネルギーを減少させることによって前記多孔体が前記密閉容器内の前記所定の気体を前記多孔体内へ取り込む。
この構成により、多孔体にエネルギーを供給したり多孔体へのエネルギーの供給を停止又は減少させたりするだけで多孔体による気体の吸脱着を制御できるので、簡易な構成且つ優れた応答性で密閉容器内を加圧したり減圧したりできる。これにより、真空ポンプのような装置を用いなくても密閉容器の圧力を効率的に制御することができる。したがって、加圧減圧機構の小型・軽量化及び独立化が可能となり、簡易な構成で効率的な加圧及び減圧を行うことができる。
また、本開示の一態様に係る気体吸脱着デバイスにおいて、前記密閉容器は、第1密閉容器と、通気路を介して前記第1密閉容器に連結された第2密閉容器とを有し、前記多孔体は、前記第1密閉容器に配置されるとよい。
この構成により、圧力変化対象部となる第2密閉容器内の圧力を、第2密閉容器とは別の第1密閉容器内に配置された多孔体による気体の吸脱着によって制御することができる。これにより、第2密閉容器内の圧力を一層効率的に制御することができる。
また、本開示の一態様に係る気体吸脱着デバイスにおいて、前記多孔体へのエネルギーの供給によって前記密閉容器内の圧力が上昇し、前記多孔体へのエネルギーの供給を停止する又は前記多孔体に供給するエネルギーを減少させることによって前記密閉容器内の圧力が低下する。
この構成により、優れた応答性で密閉容器内を加圧したり減圧したりできるので、簡易な構成で効率的な加圧及び減圧を行うことができる。
また、本開示の一態様に係る気体吸脱着デバイスにおいて、前記多孔体は、金属有機構造体であるとよい。
この構成により、多孔体の気体の吸着量を大きくすることができるので、気体の吸着及び脱着に伴う圧力変化を大きくすることができる。
また、本開示の一態様に係る気体吸脱着デバイスにおいて、前記金属有機構造体は、ゲート吸着型の金属有機構造体であるとよい。
この構成により、多孔体が吸着した気体を容易に完全に脱着させることができるので、効率を上げることができる。また、吸着量の変化が急激に生じるため、吸着及び脱着に伴う加圧及び減圧の応答性を向上させることができる。
また、本開示の一態様に係る気体吸脱着デバイスにおいて、前記多孔体は、無機物、有機物及び金属の少なくとも一つと複合化された複合体であるとよい。
この構成により、多孔体のエネルギー伝達率が向上し、応答性を向上させることができる。これにより、一層効率を上げることができるとともに、加圧速度を早めることができる。
また、本開示の一態様に係る気体吸脱着デバイスにおいて、前記エネルギーは、熱エネルギーであるとよい。
この構成により、多孔体を加熱したり冷却したりすることで密閉容器内を加圧したり減圧したりすることができる。
あるいは、本開示の一態様に係る気体吸脱着デバイスにおいて、前記エネルギーは、光エネルギーであってもよい。
この構成により、簡易な構成で、効率を上げることができるとともに、加圧及び減圧の応答性を向上させることができる。
あるいは、本開示の一態様に係る気体吸脱着デバイスにおいて、前記エネルギーは、磁力エネルギーであってもよい。
この構成により、簡易な構成で、効率を上げることができるとともに、加圧及び減圧の応答性を向上させることができる。
また、本開示の一態様に係る対象物固定装置は、上記いずれかの気体吸脱着デバイスを有し、対象物の位置を固定する固定部と、前記多孔体にエネルギーを供給する、又は、前記多孔体へのエネルギーの供給の停止若しくは前記多孔体に供給するエネルギーを減少させるエネルギー供給手段と、を備え、前記エネルギー供給手段による前記多孔体へのエネルギーの供給又は前記多孔体へのエネルギーの供給の停止若しくは前記多孔体に供給するエネルギーを減少させることによって、前記気体吸脱着デバイスにおける前記密閉容器内の圧力が変化して前記対象物の位置を固定する。
この構成により、気体吸脱着デバイスにおける多孔体にエネルギーを供給したり多孔体へのエネルギーの供給を停止又は減少させたりするだけで多孔体による気体の吸脱着を制御できるので、優れた応答性で密閉容器内の圧力を変化させて対象物の位置を固定することができる。これにより、真空ポンプのような装置を用いなくても密閉容器の圧力を効率的に制御することができ、簡易な構成で効率的に加圧及び減圧を行うことができる。したがって、簡易な構成で効率的に対象物の位置を固定できる固定部を有する対象物固定装置を実現することができる。
また、本開示の一態様に係るドローンは、物体を把持する又は前記物体を解放する物体コンタクト部と、前記物体コンタクト部による前記物体の把持又は解放を制御するコントロール部と、を備え、前記物体コンタクト部は、上記いずれかの気体吸脱着デバイスを有し、前記コントロール部から送信される制御信号に基づいて前記多孔体へのエネルギーの供給又は前記多孔体へのエネルギーの供給の停止若しくは前記多孔体に供給するエネルギーを減少させることで前記気体吸脱着デバイスにおける前記密閉容器内の圧力を変化させる。
この構成により、気体吸脱着デバイスにおける多孔体にエネルギーを供給したり多孔体へのエネルギーの供給を停止又は減少させたりするだけで多孔体による気体の吸脱着を制御できるので、優れた応答性で密閉容器内の圧力を変化させて物体を把持したり物体を解放したりすることができる。これにより、真空ポンプのような装置を用いなくても密閉容器の圧力を効率的に制御することができ、簡易な構成で効率的に加圧及び減圧を行うことができる。したがって、簡易な構成で効率的に物体を把持したり解放したりできる物体コンタクト部を有するドローンを実現することができる。
また、本開示の技術は、気体吸脱着デバイスによる圧力制御装置としてだけではなく、気体吸脱着デバイスを用いた圧力制御方法としても有用である。
具体的には、本開示の一態様に係る圧力制御方法は、所定の気体が充填されかつ外部からの気体の供給又は外部への気体の送出がない密閉容器内に多孔体が配置され、前記多孔体にエネルギーが供給されることで前記多孔体内の前記所定の気体が前記多孔体の外へ放出されて前記密閉容器を加圧し、前記多孔体へのエネルギーの供給が停止又は前記多孔体に供給するエネルギーを減少させることで前記密閉容器内の前記所定の気体が前記多孔体内に取り込まれることにより前記密閉容器を減圧する。
この構成により、多孔体にエネルギーを供給したり多孔体へのエネルギーの供給を停止又は減少させたりするだけで多孔体による気体の吸脱着を制御できるので、優れた応答性で密閉容器内を加圧したり減圧したりできる。これにより、真空ポンプのような装置を用いなくても密閉容器の圧力を効率的に制御することができる。したがって、簡易な構成で効率的な加圧及び減圧を行うことができる。
また、本開示の一態様に係る圧力制御方法において、前記密閉容器は、第1密閉容器と、前記第1密閉容器に連結された第2密閉容器とを有し、前記多孔体は、前記第1密閉容器内に配置され、前記多孔体から前記所定の気体が脱着したり前記多孔体に前記所定の気体が吸着したりすることで、前記第2密閉容器を加圧又は減圧するとよい。
この構成により、圧力変化対象部となる第2密閉容器内の圧力を、第2密閉容器とは別の第1密閉容器内に配置された多孔体による気体の吸脱着によって制御することができる。これにより、第2密閉容器内の圧力を一層効率的に制御することができる。
また、本開示の一態様に係る圧力制御方法において、前記第2密閉容器の材質は、弾性変形可能な材質で構成されているとよい。
この構成により、第2密閉容器を加圧したり減圧したりすることで、第2密閉容器を弾性変形させることができる。
また、本開示の一態様に係る圧力制御方法において、前記多孔体は、前記第1密閉容器に配置される前に前記多孔体が前記気体を吸着する処理が施されているとよい。
この構成により、エネルギーの供給を停止又は供給するエネルギーを減少させたりしたときに、第1密閉容器内に配置された多孔体が気体を吸着することができ、第2密閉容器を減圧することができる。
また、本開示の一態様に係る圧力制御方法において、前記多孔体は、金属有機構造体であるとよい。
この構成により、多孔体の気体の吸着量を大きくすることができるので、気体の吸着及び脱着に伴う圧力変化を大きくすることができる。
また、本開示の一態様に係る圧力制御方法において、前記金属有機構造体は、ゲート吸着型の金属有機構造体であるとよい。
この構成により、多孔体が吸着した気体を容易に完全に脱着させることができるので、効率を上げることができる。また、吸着量の変化が急激に生じるため、吸着及び脱着に伴う加圧及び減圧の応答性を向上させることができる。
また、本開示の一態様に係る物体把持方法において、所定の気体が充填されかつ外部からの気体の供給又は外部への気体の送出がない第1密閉容器内に多孔体が配置され、前記多孔体にエネルギーが供給されることで、前記多孔体内の前記所定の気体が前記多孔体の外へ放出されて前記第1密閉容器に連結された第2密閉容器を軟質化させ、前記多孔体へのエネルギーの供給が停止される又は前記多孔体に供給するエネルギーを減少させることで、前記第2密閉容器内の前記所定の気体が前記多孔体内に取り込まれて前記第2密閉容器を硬質化させて、物体の把持を行う。
この構成により、多孔体にエネルギーを供給したり多孔体へのエネルギーの供給を停止又は減少させたりするだけで多孔体による気体の吸脱着を制御できるので、優れた応答性で第2密閉容器内を加圧したり減圧したりできる。これにより、真空ポンプのような装置を用いなくても第2密閉容器の圧力を効率的に制御することができ、簡易な構成で効率的に加圧及び減圧を行うことができる。したがって、簡易な構成で優れた応答性で効率的に物体を把持することができる。
また、本開示の一態様に係る物体把持方法において、前記第2密閉容器の材質は、弾性変形可能な材質で構成されているとよい。
この構成により、第2密閉容器を加圧したり減圧したりすることで、第2密閉容器を弾性変形させて第2密閉容器を容易に硬質化したり軟質化したりすることができる。したがって、より簡易な構成で効率的に物体を把持することができる。
また、本開示の一態様に係る物体把持方法において、前記第1密閉容器と前記第2密閉容器との間の気体の流れを抑止して、前記多孔体から気体を脱着させて、その後、前記第1密閉容器と前記第2密閉容器との間に気体が流れるようにして、前記第2密閉容器を加圧して前記第2密閉容器を軟質化させ、前記第1密閉容器と前記第2密閉容器との間の気体の流れを抑止して、前記多孔体に気体を吸着させて、その後、前記第1密閉容器と前記第2密閉容器との間に気体が流れるようにして、前記第2密閉容器を減圧して前記第2密閉容器を硬質化させるとよい。
このように、第1密閉容器と第2密閉容器との間の気体の流れを制御して第2密閉容器の加圧及び減圧するタイミングを制御することで、第2密閉容器を軟質化させたり硬質化させたりすることができる。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の包括的又は一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ及びステップの順序等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において、縮尺等は必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
(実施の形態)
実施の形態に係る気体吸脱着デバイス1の構成について、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態に係る気体吸脱着デバイス1の構成を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、気体吸脱着デバイス1は、気体が充填された密閉容器100内に配置された多孔体12と、多孔体12に与えるエネルギーを発生させるエネルギー発生装置13とを有する。
密閉容器100は、所定の気体を収容するための密閉空間を構成する密閉系の収容構造体である。具体的には、密閉容器100は、気密封止されており、所定の気体が充填されかつ外部からの気体の供給又は外部への気体の送出がない。本実施の形態において、密閉容器100は、第1密閉容器11と、通気路31を介して第1密閉容器11に連結された第2密閉容器21とを有する。
気体吸脱着デバイス1は、多孔体12及びエネルギー発生装置13に加えて、第1密閉容器11を有する。本実施の形態において、気体吸脱着デバイス1は、第1密閉容器11だけではなく、第2密閉容器21も有している。つまり、気体吸脱着デバイス1は、密閉容器100を有している。
第1密閉容器11及び第2密閉容器21は、内部に空間を有する筐体である。第1密閉容器11及び第2密閉容器21には、所定の気体が充填されている。また、第1密閉容器11内には、多孔体12が配置されている。第1密閉容器11及び第2密閉容器21は、例えばステンレス等の金属材料によって構成されている。第1密閉容器11及び第2密閉容器21は、気密封止できる容器であれば、金属製に限るものではなく、樹脂製であってもよい。また、第1密閉容器11及び第2密閉容器21は、エラストマー等によって構成されたゴム弾性を有する弾性変形可能な中空バッグであってもよい。
なお、第1密閉容器11及び第2密閉容器21は、同じ材料によって構成されるのではなく、異なる材料によって構成されていてもよい。例えば、第1密閉容器11及び第2密閉容器21は、一方が金属材料等からなる剛体で、他方が剛体ではなく形状を変えることができるものであってもよい。形状を変えることができるものとしては、ゴム弾性を有する変形可能な弾性体であってもよいし、ゴム弾性を有さないが変形可能に構成されたフィルム状の袋体であってもよい。第1密閉容器11と第2密閉容器21とを異なる材料によって構成する場合、多孔体12が配置される第1密閉容器11については、形状変形しない剛体で構成し、多孔体12が配置されない第2密閉容器21については、弾性体等の弾性変形可能な材質で構成するとよい。
通気路31は、筒状部材であり、例えば、金属製又は樹脂製のパイプである。本実施の形態において、通気路31は、密閉容器100の一部である。通気路31は、第1密閉容器11及び第2密閉容器21とは別体であってもよいし、第1密閉容器11の一部であってもよいし、第2密閉容器21の一部であってもよい。
第1密閉容器11と第2密閉容器21とは、通気路31を介して分離されている。具体的には、第1密閉容器11と第2密閉容器21とは、通気路31によって空間的に連結されている。第1密閉容器11と第2密閉容器21と通気路31とは、互いに気体が行き来できるように構成されているとともに、第1密閉容器11と第2密閉容器21と通気路31とによって1つの密閉された空間領域となる密閉系が形成されている。この空間領域には、多孔体12に吸着する特定の気体が充填されている。
多孔体12は、内部にナノオーダサイズの細孔を有しており、細孔空間に気体を吸着する能力を有する。また、多孔体12は、気体を吸着するだけではなく、吸着している気体を脱着することができる。つまり、多孔体12は、気体を吸脱着することができる。具体的には、多孔体12は、エネルギーが与えられることで多孔体12に吸着している気体を脱着し、多孔体12に与えられているエネルギーが取り除かれることで気体を吸着する。
多孔体12と吸脱着する気体は、気体分子であり、多孔体12の細孔表面との相互作用によって多孔体12に吸着する。なお、本明細書では、多孔体12と吸脱着する気体分子は、単に「気体」として記載する。
本実施の形態において、多孔体12は、密閉容器100内に充填された気体を吸脱着可能である。具体的には、第1密閉容器11内に配置された多孔体12は、第1密閉容器11内の気体を吸脱着することができるとともに、第2密閉容器21内の気体を吸脱着することができる。
多孔体12には、エネルギー発生装置13によってエネルギーが与えられる。本実施の形態におけるエネルギー発生装置13は、熱エネルギー源である。具体的には、エネルギー発生装置13は、多孔体12に熱エネルギーを与える熱を発生する加熱装置であり、多孔体12に熱エネルギーを供給する。また、エネルギー発生装置13は、多孔体12への熱エネルギーの供給を停止する又は多孔体12に供給する熱エネルギーを減少させる。一例として、熱を発生させるエネルギー発生装置13は、ヒータである。
この場合、多孔体12は、エネルギー発生装置13によって熱エネルギーが与えられることで多孔体12に吸着している気体を脱着する。つまり、多孔体12への熱エネルギーの供給によって多孔体12内の所定の気体が多孔体12の外へ放出される。一方、エネルギー発生装置13によって多孔体12に与えている熱エネルギーが取り除かれることで気体を吸着する。つまり、多孔体12への熱エネルギーの供給が停止又は減少することによって多孔体12が密閉容器100内の所定の気体を多孔体12内へ取り込む。エネルギー発生装置13は、例えば、第1密閉容器11の外部に設置されるが、第1密閉容器11の内部に設置されていてもよい。
なお、多孔体12に与えている熱エネルギーが取り除かれる場合には、多孔体12への熱エネルギーの供給を停止させる場合及び多孔体12に供給される熱エネルギーを減少させる場合のいずれの場合であってもよい。具体的には、エネルギー発生装置13がヒータである場合、ヒータをオフすることで多孔体12への熱エネルギーの供給を停止させることができ、また、ヒータによる加熱温度を低くすることで、多孔体12に供給される熱エネルギーを減少させることができる。
このように構成される気体吸脱着デバイス1は、密閉容器100内の圧力を制御する圧力制御機構を有しており、密閉容器100内を加圧する装置として機能する。また、気体吸脱着デバイス1は、密閉容器100内を減圧する減圧装置としても機能する。具体的には、気体吸脱着デバイス1は、多孔体12による気体の吸脱着によって第2密閉容器21内の圧力を変化させる。つまり、気体吸脱着デバイス1は、多孔体12による気体の吸脱着によって第2密閉容器21内の圧力を加圧したり減圧したりする。一例として、気体吸脱着デバイス1は、第2密閉容器21内の圧力を所定負圧に減圧したり、第2密閉容器21内の圧力を大気圧に戻したりする。
より具体的には、気体吸脱着デバイス1は、第1密閉容器11内に配置された多孔体12が気体を脱着することで、第2密閉容器21に気体を供給して第2密閉容器21内の圧力を加圧し、第1密閉容器11内に配置された多孔体12が第1密閉容器11内の気体を吸着することで、第2密閉容器21内の気体を第2密閉容器21から排出して第2密閉容器21内の圧力を減圧する。
本実施の形態において、気体吸脱着デバイス1では、エネルギー発生装置13によって多孔体12にエネルギー(本実施の形態では熱エネルギー)を与えて多孔体12に吸着している気体を脱着させる。この結果、第2密閉容器21内に気体が送り込まれて第2密閉容器21内の圧力が加圧される。つまり、第1密閉容器11と第2密閉容器21とが密閉された状態で通気路31によって連結されているので、多孔体12にエネルギーが与えられて多孔体12から気体が脱着すると、多孔体12から脱着した気体は、通気路31を介して第2密閉容器21内に移動する。これにより、第2密閉容器21内が加圧される。
一方、多孔体12に与えている熱エネルギーが取り除かれて多孔体12に気体が吸着すると、第2密閉容器21内の気体が通気路31を介して第1密閉容器11に移動する。これにより、第2密閉容器21内が減圧される。
このように、加圧減圧装置1は、第2密閉容器21内の圧力を変化させることで、第2密閉容器21内を減圧状態と加圧状態との切り替えることができる。すなわち、第2密閉容器21は、圧力変化対象部となる。また、第2密閉容器21内の圧力は、多孔体12とエネルギー発生装置13とによって制御される。つまり、多孔体12及びエネルギー発生装置13は、第2密閉容器21内の圧力を制御する圧力制御部として機能する。
なお、本実施の形態では、多孔体12が気体を吸脱着することで、第2密閉容器21内の圧力が変化するだけではなく、第1密閉容器11内の圧力も変化する。つまり、密閉容器100内全体の圧力が変化する。したがって、気体吸脱着デバイス1は、多孔体12による気体の吸脱着によって密閉容器100内の圧力を加圧したり減圧したりする。具体的には、気体吸脱着デバイス1は、多孔体12が密閉容器100内の気体を吸着することで密閉容器100内の圧力を減圧し、エネルギー発生装置13によって多孔体12にエネルギーを与えて多孔体12に吸着している気体を脱着させることで密閉容器100内の圧力を加圧する。このため、密閉容器100全体も圧力変化対象部となりうる。
以上のように、気体吸脱着デバイス1では、多孔体12から気体が脱着したり多孔体12に気体が吸着したりすることで密閉容器100内を加圧又は減圧させて密閉容器100内の圧力を変化させることができる。
具体的には、多孔体12に熱エネルギーを供給することで多孔体12から気体が脱着する。つまり、多孔体12への熱エネルギーの供給によって多孔体12内の気体が多孔体12の外へ放出される。これにより、密閉容器100内の圧力が上昇する。一方、多孔体12に供給する熱エネルギーを取り除くことで多孔体12に気体が吸着する。つまり、多孔体12へのエネルギーの供給を停止したり多孔体12に供給するエネルギーを減少させたりすることで多孔体12が密閉容器100内の気体を多孔体12内へ取り込む。これにより、密閉容器100内の圧力が低下する。
また、本実施の形態では、第1密閉容器11と通気路31と第2密閉容器21とで密閉容器100を構成したが、これに限らない。例えば、図2に示される気体吸脱着デバイス1Aのように、第1密閉容器11のみで密閉容器100Aを構成してもよい。この場合、気体吸脱着デバイス1Aの圧力変化対象部は、第1密閉容器11となる。つまり、図2において、多孔体12は、圧力変化対象部内に配置される。図2に示される気体吸脱着デバイス1Aの構成により、圧力制御部を別に設置する必要がなくなるので、装置構成がより簡易になる。
以下では、図1に示される気体吸脱着デバイス1の構成を用いて説明する。上記のように、本実施の形態における気体吸脱着デバイス1では、多孔体12に気体を吸脱着させることで第2密閉容器21内の圧力を制御する。この場合、第1密閉容器11内に配置された多孔体12が気体を吸着するためには、初期化処理として多孔体12に予め活性化処理を施しておくとよい。この場合、多孔体12に供給するエネルギーを取り除くことで、多孔体12は、第1密閉容器11に配置される前に多孔体が気体を吸着する処理が施されているとよい。つまり、予め活性化処理を施した多孔体12を第1密閉容器11内に封入するとよい。なお、第1密閉容器11に配置する前に多孔体12に活性化処理を施すのではなく、第1密閉容器11に弁を設けておき、活性化処理前の多孔体12を第1密閉容器11に配置した後に第1密閉容器11を加熱真空引きすることで多孔体12に活性化処理を施してもよい。活性化処理が施された多孔体12が第1密閉容器11に配置された状態で第1密閉容器11内に特定の気体を一定量導入すると、多孔体12は、吸着等温線にしたがって所定量の気体を吸着する。その結果、第2密閉容器21の圧力が所定の値まで減圧される。
ここで、一般的な多孔体における気体の吸着等温線の一例を図3に示す。図3に示すように、気体の圧力が上昇すると、多孔体の気体の吸着量は増加する。また、温度が上昇すると、多孔体の気体の吸着量は減少する。したがって、図3に示すように、ある一定の第1温度T1において多孔体が第1吸着量G1の気体を吸着して気体が第1圧力P1に達した状態から、気体に熱を与えて第2温度T2(T2>T1)まで上昇させると、多孔体の気体の吸着量は、第2吸着量G2まで減少する。このため、第1吸着量G1と第2吸着量G2との差分量(G1-G2)の気体が多孔体から脱着され得る。
一方、熱エネルギーの供給を停止して気体の加熱を止めると、気体が冷却されて温度が低下する。例えば、熱エネルギーの供給を停止すると、高温の第2温度T2から低温の第1温度T1にまで温度が低下する。この結果、多孔体の気体の吸着量は、第2吸着量G2から第1吸着量G1にまで上昇する。このため、第1吸着量G1と第2吸着量G2との差分量(G1-G2)の気体が多孔体に吸着され得る。
このことは、本実施の形態のように、多孔体12が密閉系に配された場合においても、熱エネルギーの供給の有無によって多孔体12に吸着された気体が脱着したり多孔体12に気体が吸着したりすると考えられる。本実施の形態における気体吸脱着デバイス1は、多孔体12が気体を吸脱着する性質を利用して密閉系の密閉容器100内の圧力を制御している。
この場合、本実施の形態では、加熱による気体の脱着及び冷却による気体の吸着は、ヒータ等の加熱装置であるエネルギー発生装置13によって制御している。例えば、ヒータであるエネルギー発生装置13を、第1密閉容器11における多孔体12が配置された部分又は多孔体12が充填された部分に接触させて設置し、加圧するときにはヒータをオンすることで多孔体12を加熱し、減圧するときにはヒータをオフすることで自然放冷により多孔体12を冷却する。なお、自然放冷では冷却速度が遅い場合には、冷却装置として、ペルチェ素子又は冷媒循環装置等を別途設置してもよい。また、加熱装置又は冷却装置の構成については、所定量の圧力変化に必要な量の吸着又は脱着を多孔体が起こし得る範囲の温度制御が可能な構成であれば、特に限定されるものではない。また、加熱時及び冷却時の温度は、多孔体12の種類、圧力変化対象部の容積及び圧力変化対象部の使用圧力範囲等に応じて適宜設定すればよい。
このような加圧減圧方法によれば、真空ポンプのような装置を用いなくても、加圧及び減圧を行うことが可能となり、気体吸脱着デバイスの小型・軽量化、及び独立化が可能となる。つまり、従来の機械的原理による加圧減圧方法では、大型の装置と、駆動のための定置電力が必要であり、しかも加圧機構と減圧機構とを別々に設置する必要があったが、本実施の形態における気体吸脱着デバイス1及び1Aによれば、簡易な構成で効率的な加圧及び減圧を行うことができる。
多孔体12と吸脱着する所定の気体の種類は、特に限定されるものではないが、安全面及びコスト面の観点から、実用的な気体の中では、常温及び常圧付近で多孔体12への吸着量が十分に大きい気体であるとよい。このような気体を用いることで、気体を低温に保つための機構が不要になり、所定量の圧力変化に必要な多孔体12の量を少なくすることができる。以上の観点から、多孔体12と吸脱着する気体としては、例えば、二酸化炭素(CO2)が考えられる。
ここで、気体吸脱着デバイス1に用いられる多孔体12の具体例について、詳細に説明する。多孔体12は、無数の細孔を有する多孔質構造の物体である。一例として、多孔体12は、粉末状であるが、これに限らない。
多孔体12は、上述のように、気体が吸着したり、吸着している気体が脱着したりする。このような多孔体12としては、例えば、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ又は樹脂等の有機物からなる有機多孔体、ゼオライト、メソポーラスシリカ又はメソポーラスアルミナ等の無機物からなる無機多孔体、金属有機構造体(MOF;Metal-organic framework)、あるいは、多孔性配位高分子(PCP;Porous coordination polymer)等の多孔物体が挙げられる。また、多孔体12は、これらの多孔物体のうちの1つのみによって構成されていてもよいし、これらの多孔物体を複数組み合わせた複合体であってもよい。つまり、多孔体12は、無機物、有機物及び金属の少なくとも一つと複合化された複合体であってもよい。
一例として、多孔体12としてゼオライトを用いた場合に、ゼオライトにおけるCO2の吸脱着について、図4を用いて説明する。図4は、ゼオライトについてのCO2の吸着等温線を示す図である。図4に示すように、ゼオライトについては、気体の圧力が上昇すると、ゼオライトに吸着するCO2の吸着量が増加する。また、温度が上昇すると、ゼオライトに吸着するCO2の吸着量は減少する。したがって、ゼオライトを加熱したり冷却したりすることで、ゼオライトにCO2を吸着させたりゼオライトからCO2を脱着させたりすることができる。
多孔体12の種類は、多孔体12と吸脱着する気体、密閉容器100又は第2密閉容器21(つまり圧力変化対象部)の容積及び圧力変化範囲、並びに、多孔体12に必要な吸着量に応じて、これらの多孔物体から適宜選択すればよく、特に制限されるものではないが、吸着量及び応答性の観点から、多孔体12は、金属有機構造体(以下「MOF」と記載する)又は多孔性配位高分子であるとよい。
多孔体12としてMOFを用いる場合、MOFの具体的様態については特に限定されるものではないが、多孔体12と吸脱着する特定の気体に対して常温付近での吸着量が大きいMOFを用いるとよい。また、常温から温度を上昇させたときの吸着量の減少が大きいMOFを用いてもよい。これにより、気体の脱着時の温度を低下させることができるので、必要な熱エネルギーを少なくすることができる。また、加熱及び冷却に要する時間が少なくなるので、気体の吸脱着の応答速度を速くすることができる。つまり、気体の吸脱着の応答時間を短くすることができる。
また、多孔体12は、ゲート吸着型の金属有機構造体(以下、「ゲート吸着型MOF」と記載する)であってもよい。ゲート吸着とは、気体の吸着量が急激に変化する現象であり、ゲート吸着型MOFは、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)で定義される吸着等温線の6分類では分類することができない特殊な吸着等温線を示す。
ここで、一般的なゲート吸着型MOFの吸着等温線を図5に示す。図5に示すように、気体の圧力が低圧である場合、ゲート吸着型MOFは、気体をほとんど吸着しないが、気体圧力が一定値(この時の圧力がゲート圧と呼ばれる)に達すると、ゲート吸着型MOFの構造が変化(例えば、積層がずれる、層間が広がる等)し、ゲート吸着型MOFに気体が取り込まれる。このため、ゲート圧を境に気体の吸着量は急激に増加する。一方、気体が脱着する際には、気体圧力がゲート圧以下に低下すると、ゲート吸着型MOFに取り込まれていた気体が放出され、ゲート吸着型MOFが元の構造に戻ろうとするため、ゲート吸着型MOFから急激に気体が脱着する。一般的に、ゲート吸着型MOFにおいては、図5に示すように、吸着時の圧力等温線と脱着時の吸着等温線にはヒステリシスループが生じ、吸着時のゲート圧は脱着時のゲート圧よりも高圧側に存在する。また、ゲート吸着型MOFにおいては、温度が上昇すると、ゲート圧は高圧側にシフトする。
このようなゲート吸着現象は、MOFの構造の柔軟性に基づいており、MOFに特有の現象である。したがって、柔軟性を有していない従来の多孔体では、ゲート吸着現象は生じない。
このような特性を有するゲート吸着型MOFについては、図5に示すように、ある一定の第3温度T3においてゲート吸着型MOFが第3吸着量G3の気体を吸着して気体が第3圧力P3に達したとする。この状態から、脱着のゲート圧が第3圧力P3以上になるときの第4温度T4(T4>T3)まで加熱すると、脱着時の吸着等温線から、ゲート吸着型MOFの吸着量は第4吸着量G4となり、第3吸着量G3と第4吸着量G4との差分量(G3-G4)の気体がゲート吸着型MOFから脱着され得る。
一方、気体を冷却して、高温の第4温度T4から低温の第3温度T3にまで温度が低下すると、ゲート吸着型MOFの気体の吸着量は、第4吸着量G4から第3吸着量G3にまで上昇する。このため、第3吸着量G3と第4吸着量G4との差分量(G3-G4)の気体がゲート吸着型MOFに吸着され得る。
図5に示される吸着挙動を示すゲート吸着型MOFについては、図3に示される一般的な吸着挙動を示す多孔体を用いた場合と比較して、効率よく気体の吸脱着が行われる。つまり、気体の吸脱着の応答時間が短い。
具体的には、図3に示される一般的な吸着挙動を示す多孔体においては、脱着する気体の量(G1-G2)は、多孔体が吸着した気体の第1吸着量G1よりも少なくなる。この場合、一般的に、完全に気体を脱着させる、すなわちG2=0にするには高温まで加熱する必要がある。これに対して、図5に示されるゲート吸着型MOFを用いた場合、脱着される気体の量(G3-G4)においてG4=0とみなすことができるため、ゲート吸着型MOFが吸着した気体の第3吸着量G3の分の全てをゲート吸着型MOFから脱着させることができる。また、ゲート吸着型MOFについては、吸着量の変化が急激に生じるため、吸着及び脱着に伴う応答性を向上させることができる。
ゲート吸着型MOFの具体的様態については、特に限定はされるものではないが、ゲート吸着型MOFと吸脱着する特定の気体に対して常温付近での吸着量が大きいゲート吸着型MOFであるとよい。また、常温から温度を上昇させたときに、ゲート圧が急激に高圧側にシフトするゲート吸着型MOFであるとよい。これにより、気体の脱着時の温度を低下させることができ、必要な熱エネルギーを少なくすることができる。また、加熱及び冷却に要する時間が少なくなるので、気体の吸脱着の応答速度を速くすることができる。
多孔体12と吸脱着する気体が二酸化炭素である場合に好適に用いられるゲート吸着型MOFとしては、例えばELM(Elastic Layerstructuredmetal organic frameworks)-11等のELM類が挙げられる(非特許文献1)。ELM-11は、[Cu(bpy)2(BF4)2])の化学式で表される。ELM-11のCO2の吸着量を実測したところ、ELM-11のCO2の吸着量(常圧30℃と常圧150℃とのCO2の吸着量の差)は、2.2wt%であった。
また、ELM-11についてのCO2の吸着等温線を図6に示す。図6に示すように、ELM-11は、ゲート吸着の特性を示し、温度に応じてゲート圧を有することが分かる。なお、ELM-11は、吸着時の圧力等温線と脱着時の吸着等温線とでヒステリシスループが発生せず、吸着時のゲート圧と脱着時のゲート圧とが一致している。
また、上述のゼオライトは、図4の吸着等温線に示されるように、圧力の影響を受けにくく、温度の変化により気体の吸脱着が徐々に発現していたが、ELM-11は、図6に示すように、圧力の影響を受けやすく、温度に変化により気体の急激な吸脱着が発現する。
次に、多孔体12による加圧減圧原理を検証する実験を行ったので、その実験結果について、図7を用いて説明する。図7は、多孔体12による加圧減圧原理を検証するために用いた気体吸脱着デバイスの構成を模式的に示す図である。
図7に示すように、本実験では、図2に示される構成の気体吸脱着デバイス1Aを用いて行い、第1密閉容器11として容積2Lの金属製の容器を用い、エネルギー発生装置13としてヒータを用いた。そして、多孔体12として、一例として[Mg2(dobdc)];(dobdc=2,5-ジヒドロキシテレフタル酸)の化学式で表されるMg-MOF-74を用いて以下の実験を行った。Mg-MOF-74は、CO2に対して、図4に示されるゼオライトのような吸着等温線を示す。
実験の前段階として、Mg-MOF-74を以下の合成方法を例に、ソルボサーマル法により合成した。なお、合成に関しては、下記の手法に限定されるものではなく、目的の構造を有する多孔体は、各種方法を用いて合成してもよい。
具体的には、硝酸マグネシウム六水和物(富士フィルム和光純薬株式会社製)を623mg、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸(シグマアルドリッチ株式会社製)を150mg、N,N-ジメチルホルムアミド(富士フィルム和光純薬株式会社製)を60mL、エタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製)を4mL、及び蒸留水4mLを混合することによって、原料溶液を調製した。この原料溶液を100mLのテフロン(登録商標)製バイアルに入れ、125℃で24時間、加熱した。得られた試料を固液分離した後、メタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製)で3回洗浄した。洗浄後の試料を50mLのポリプロピレン製バイアルに入れ、メタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製)30mLを加え、常温で24時間静置させた後、上澄み液を取り除くことによって、残存溶媒の交換を行った。この交換作業を計4回繰り返した後、減圧乾燥させた。これにより、Mg-MOF-74を生成することができる。
このようにして得られたMg-MOF-74の試料に対して、CuKα線をX線源に用いたX線回折測定を行ったところ、図8に示すX線の回折パターンが観測された。図8は、合成したMg-MOF-74のX線回折パターンの一例を示す図である。なお、図8において、縦軸は回折強度であり、横軸は回折角度(2θ)である。また、図9は、非特許文献2において合成されたMg-MOF-74のX線回折パターンを示す図である。図9におけるMg/DOBDCは、本開示におけるMg-MOF-74と等価な化合物である。
図8、図9に示すように、合成した試料のMg-MOF-74のX線回折パターンは、非特許文献2において合成されたMg/DOBDC(Mg-MOF-74)のX線回折パターンとほぼ一致しており、合成によってMg-MOF-74が生成されたことを確認できた。
次に、Mg-MOF-74の吸着速度評価を行った。具体的には、活性化処理後のMg-MOF-74をセットし、まず、N2(50mL・min-1)ガスフロー下で所定の温度まで加熱し、秤量時に吸着した水分等を除去した。次に、温度を室温付近まで下げた後、ガスフローをN2からCO2(50mL・min-1)に切り替え、CO2を吸着させた。重量増加量が飽和に達した後、再びN2ガスに切り替え、加熱し脱着させた。その結果、図10に示すような重量変化プロファイルが観測された。なお、図10において、縦軸はMg-MOF-74の重量減少の割合(%)であり、横軸は時間(t)である。CO2フローに切り替えると、Mg-MOF-74のCO2吸着に伴う急激な重量増加が秒スケールで起こることが確認された。CO2吸着量は、前処理後の重量を基準として19wt%と算出された。
以上のようにして合成し、吸着速度を評価したMg-MOF-74を用いて、多孔体12による加圧減圧原理を検証する実験を以下の通りに行った。
まず、活性化処理後のMg-MOF-74を空気中で素早く秤量し、第1密閉容器11内に1.67gのMg-MOF-74を入れた。そして、第1密閉容器11の底にヒータを設置し、前処理として、150℃及び3時間の加熱真空引きを行って第1密閉容器11内の圧力を-0.1MPaとした。
その後、真空引きを止めて、加熱状態を保ったまま第1密閉容器11内の圧力が-0.010MPaになるまで第1密閉容器11内に二酸化炭素ガスを導入した。
次に、ヒータをオフにして自然放冷により多孔体12の冷却を開始したところ、10分間で第1密閉容器11内の圧力が安定し、第1密閉容器11内の圧力は、-0.032MPaとなった。
このように、第1密閉容器11に配置されたMg-MOF-74を冷却することで、冷却前は、-0.010Mpaであった第1密閉容器11の圧力は、冷却後に、-0.032Mpaにまで減圧することが分かった。これは、多孔体12による二酸化炭素ガスの吸着によって第1密閉容器11内の圧力が減圧したと考えられる。
また、第1密閉容器11に多孔体12を配置せずに同様の実験を行ったところ、冷却前の第1密閉容器11の圧力は、-0.010MPaで、冷却後の第1密閉容器11の圧力は、-0.024であった。なお、多孔体12が存在しないにも関わらず、冷却前後で0.014の圧力差が生じた理由は、第1密閉容器11内の気体自身が冷却されることによる熱収縮(気体の状態方程式より)によるものと考えられる。そのため、多孔体12を用いた場合の冷却後の第1密閉容器11の圧力(-0.032MPa)と、多孔体12を用いない場合の冷却後の第1密閉容器11の圧力との圧力差から、多孔体12が吸着した気体の量が算出される。
以上の実験結果から、密閉系の第1密閉容器11に配置された多孔体12を冷却することで、第1密閉容器11内の圧力が変化することが確認できた。
なお、Mg-MOF-74を用いた場合の冷却後の第1密閉容器11の圧力(-0.032)と、Mg-MOF-74を用いない場合の冷却後の第1密閉容器11の圧力(-0.024)との圧力差に基づいてMg-MOF-74の二酸化炭素ガスの吸着量を算出すると、17wt%であった。つまり、Mg-MOF-74は、1g当たり0.17gの二酸化炭素ガスを吸着することができる。
また、この結果は、図10に示されるMg-MOF-74の既知のTG(Thermogravimetry;熱重量測定)曲線におけるCO2吸着量とほぼ一致する。
さらに、多孔体12として、Mg-MOF-74の代わりに8.10gのELM-11を用いて同様の試験を行った。
その結果、冷却前は、-0.010MPaの圧力であった第1密閉容器11内の圧力は、冷却後に、-0.034MPaとなった。
したがって、多孔体12としてELM-11を用いた場合にも、密閉系の第1密閉容器11に配置された多孔体12を冷却することで、第1密閉容器11内の圧力が変化することが確認できた。
なお、ELM-11を用いた場合の冷却後の第1密閉容器11の圧力(-0.028)と、ELM-11を用いない場合の冷却後の第1密閉容器11の圧力(-0.024)との圧力差に基づいてELM-11の二酸化炭素ガスの吸着量を算出すると、2wt%であった。つまり、ELM-11は、1g当たり0.02gの二酸化炭素ガスを吸着することができる。
次に、図1に示される構成の気体吸脱着デバイス1について、多孔体12による加圧減圧原理を検証する実験を行ったので、その実験結果について、図11を用いて説明する。図11は、多孔体12による加圧減圧原理を検証するために用いた気体吸脱着デバイスの別の構成を模式的に示す図である。
本実験では、第1密閉容器11として、容積50mLの金属製の容器を用いて、第2密閉容器21として、容積約3Lのゴム弾性を有するテトラバッグを用いた。なお、第1密閉容器11と第2密閉容器21とは、圧力計と複数のバルブとが設置された金属製配管である通気路31によって連結されている。また、多孔体12として、Mg-MOF-74を用いて、エネルギー発生装置13としてヒータ及びクールスターラーを用いた。
まず、活性化処理後のMg-MOF-74を空気中で素早く秤量し、第1密閉容器11内に2.8gのMg-MOF-74を入れた。そして、第1密閉容器11に、二酸化炭素ガスが充填された第2密閉容器21と真空ポンプとを連結し、第1密閉容器11の底に加熱用のヒータを設置し、前処理として、200℃及び3時間の加熱真空引きを行って第1密閉容器11内の圧力を-0.1MPaとした。
その後、真空引きを止めて、加熱状態を保ったまま第2密閉容器21を開放し、二酸化炭素ガスを密閉系内の圧力が0.10MPaになるまで導入した。このとき、第2密閉容器21内は、二酸化炭素ガスで十分満たされている状態であった。
次に、ヒータをクールスターラーに置き換えて、多孔体12の冷却を開始したところ、3分間で第2密閉容器21が収縮した。つまり、多孔体12による二酸化炭素ガスの吸着によって第2密閉容器21内の圧力が減圧したと考えられる。
続けて、クールスターラーをヒータに置き換えて、多孔体12を再度加熱すると、3分間で第2密閉容器21が拡張した。つまり、二酸化炭素ガスが多孔体12から脱着して第2密閉容器21内の圧力が加圧したと考えられる。
なお、多孔体12を用いることなく同様の実験を行ったところ、第2密閉容器21の収縮及び拡張は観察されなかった。
以上の実験結果から、気体を吸着した多孔体12は、加熱により気体を脱着し、冷却により気体を再度吸着することで、第2密閉容器21を加圧及び減圧できることが確認できた。
次に、他の実施の形態に係る気体吸脱着デバイス2について、図12A及び図12Bを用いて説明する。図12Aは、他の実施の形態に係る気体吸脱着デバイス2において、第2密閉容器21内が減圧状態である場合を模式的に示す図である。図12Bは、同気体吸脱着デバイス2において、第2密閉容器21内が加圧状態である場合を模式的に示す図である。
まず、図12A及び図12Bに示される気体吸脱着デバイス2の構成について説明する。
図12A及び図12Bに示される気体吸脱着デバイス2は、第2の気体吸脱着デバイスであり、図1に示される第1の気体吸脱着デバイスである吸脱着デバイス1に対して、第2密閉容器21内に粒体22が充填された構成になっている。
本実施の形態に係る気体吸脱着デバイス2は、ジャミング転移を利用することにより様々な形状の対象物を把持することができる物体把持装置として用いられる。図12A及び図12Bに示すように、気体吸脱着デバイス2は、加圧減圧装置10と、対象物を把持する形状可変な把持装置20とを備える。
加圧減圧装置10は、密閉容器100内の圧力を制御する圧力制御装置である。具体的には、加圧減圧装置10は、密閉容器100内を加圧したり減圧したりする。本実施の形態において、加圧減圧装置10は、把持装置20内の圧力を制御する。したがって、把持装置20は、加圧減圧装置10によって圧力を変化させられる圧力変化対象部となる。
加圧減圧装置10は、第1密閉容器11と、第1密閉容器11に配置された多孔体12と、多孔体12にエネルギーを供給するエネルギー発生装置13とを有する。なお、気体吸脱着デバイス2の全体が加圧減圧装置として機能してもよい。
把持装置20は、第2密閉容器21として、ジャミング転移により状態が変化する物質が収容された可撓性及び気密性を有するバッグを含む。また、把持装置20は、ジャミング転移により状態が変化する物質として、粒体22を含む。粒体22は、第2密閉容器21の内部に充填されている。つまり、第2密閉容器21内には、無数の粒体22が詰め込まれている。把持装置20は、第2密閉容器21内に充填された粒体22がジャミング転移により固体的に振る舞ったり流体的に振る舞ったりして状態が変化することで、軟質化したり硬質化したりする。第2密閉容器21は、軟質化すると変形可能な軟質状態となり、硬質化すると変形しにくい硬質状態となる。
本実施の形態において、第2密閉容器21は、内部に空間を有する袋状の中空バッグであり、把持装置20における対象物を把持する部分である。具体的には、第2密閉容器21は、把持する対象物と接触し、把持する対象物の形状に倣って形状が変化する。したがって、第2密閉容器21の材質は、弾性変形可能な材質で構成されているとよい。例えば、第2密閉容器21は、エラストマー等によって構成されたゴム弾性を有する弾性変形可能なバッグであるとよい。一方、第1密閉容器11は、剛体であり、ゴム弾性を有していない。例えば、第1密閉容器11は、弾性変形しない材料によって構成されている。具体的には、第1密閉容器は、金属材料又は硬質の樹脂材料によって構成されている。
なお、第2密閉容器21は、外力によって可逆的に形状が変形する閉鎖系のものであれば、弾性変形するものに限らない。また、第2密閉容器21そのものから気体が抜けていかないように、第2密閉容器21は、ガスバリア性の高い材料によって構成されていたり、表面にシリカコート等のガスバリア膜が被膜されていたりするとよい。
第2密閉容器21内に充填される粒体22は、把持する対象物の形状に第2密閉容器21の形状を倣わせる際に流動しやすいものであるとよい。したがって、粒体22の形状は、球状であるとよい。なお、粒体22の形状は、起伏のある形状又は多角面体の形状であってもよい。また、粒体22は、無機材料、有機材料又は金属材料等からなる粉体又は粒子等である。粒体22としては、例えば、発泡スチロール等に用いられるポリスチレン等の樹脂材料からなる樹脂ビーズ又はガラス材料からなるガラスビーズ等を用いることができる。なお、粒体22の材料は、これに限るものではなく、第2密閉容器21に充填されてジャミング転移を発揮する材料であればよい。
加圧減圧装置10は、第2密閉容器21内の圧力を制御する。具体的には、加圧減圧装置10は、第2密閉容器21内の気体を第2密閉容器21から排出することで第2密閉容器21内を減圧し、第2密閉容器21内に気体を送り込むことで第2密閉容器21内を加圧する。本実施の形態において、加圧減圧装置10は、第2密閉容器21内の圧力を所定負圧に減圧したり、第2密閉容器21内の圧力を大気圧に戻したりする。加圧減圧装置10は、第2密閉容器21内の圧力を変化させることで、把持装置20の状態を軟質状態と硬質状態とに切り替えることができる。
また、本実施の形態では、エネルギー発生装置13としてヒータを用いており、第1密閉容器11と第2密閉容器21と通気路31とで構成される密閉系には気体40としてCO2が気密封止されている。なお、気体吸脱着デバイス2は、常温下に設置されている。
また、通気路31には、通気路31を通る気体の流れを制御する制御装置31aが設けられている。制御装置31aは、例えば、通気路31の開閉を制御したり、通気路31を通る気体の流量を制御したりする。制御装置31aは、例えば切替弁等のコックである。
通気路31に制御装置31aを設けることで、加圧減圧装置10の多孔体12と吸脱着する気体の流れを制御することができるので、第2密閉容器21内の圧力の調整を容易に行うことができるとともに、第2密閉容器21内の圧力の調整の自由度が向上する。具体的には、制御装置31aがコックである場合、コックを閉めた状態で多孔体12を加熱して気体を予め脱着させておき、その後コックを開くことで、第2密閉容器21に気体を流入させて第2密閉容器21内を加圧することができる。つまり、コックの開閉を制御することで、第2密閉容器21の加圧及び減圧するタイミングを制御することができる。
例えば、コックを閉めて、第1密閉容器11と第2密閉容器21との間の気体の流れを抑止して多孔体12から気体を脱着させる。その後、コックを開けて、第1密閉容器11と第2密閉容器21との間に気体が流れるようにして、第2密閉容器21を加圧して第2密閉容器21を軟質化させる。また、コックを閉めて、第1密閉容器11と第2密閉容器21との間の気体の流れを抑止して多孔体12に気体を吸着させて、その後、コックを開けて、第1密閉容器11と第2密閉容器21との間に気体が流れるようにして、第2密閉容器21を減圧して第2密閉容器21を硬質化させる。
次に、図12A及び図12Bに示される気体吸脱着デバイス2の動作について説明する。
図12Aの状態では、ヒータはオフになっており、多孔体12には、熱エネルギーが与えられていない。また、図12Aの状態において、第2密閉容器21内の圧力は、大気圧より低くなっており、また、第2密閉容器21は弾性変形する前の状態であり、第2密閉容器21内に充填された粒体22は第2密閉容器21内で密集して固体的な振る舞いを示している。
なお、初期状態において、多孔体12には活性化処理が施されており、多孔体12の細孔には、気体40として所定量のCO2が吸着されている。つまり、図12Aの状態において、多孔体12には気体40が吸着している。
図12Aの状態でヒータをオンにして多孔体12に熱エネルギーを与えると、図12Bに示すように、多孔体12の構造が変形して多孔体12に吸着している気体40が脱着する。つまり、多孔体12に吸着されていた気体40が多孔体12から離脱する。多孔体12から脱着した気体40は、通気路31を介して第2密閉容器21内に移動する。これにより、気体40の流入によって第2密閉容器21内が加圧され、第2密閉容器21が膨張する。このとき、本実施の形態において、第2密閉容器21内の圧力は、大気圧になっている。この結果、第2密閉容器21の粒体22は、第2密閉容器21内で分散して流体的な振る舞いを示すことになり、第2密閉容器21は軟質化して軟質状態になる。このとき、第2密閉容器21に外力が与えられると、第2密閉容器21が弾性変形する。
また、図12Bの状態でヒータをオフにして多孔体12に供給される熱エネルギーが停止すると、自然放冷により多孔体12が冷却されて多孔体12の温度が低下し、多孔体12に気体40が吸着する。このとき、第2密閉容器21内の気体40が通気路31を介して第1密閉容器11に移動して、多孔体12に気体40が吸着する。これにより、気体40の流出によって第2密閉容器21内が減圧される。このとき、本実施の形態において、第2密閉容器21内の圧力は、所定負圧に減圧されている。この結果、第2密閉容器21の弾性復元力によって、第2密閉容器21の形状は、元の状態に戻ることになる。つまり、第2密閉容器21は、図12Aに示す状態に戻る。この場合、第2密閉容器21内の粒体22は、第2密閉容器21内で密集して固体的な振る舞いを示すことになり、第2密閉容器21は、硬質化した硬質状態になる。なお、第2密閉容器21が硬質状態のときに第2密閉容器21に外力が与えられても、第2密閉容器21は弾性変形しない。
また、図12Aの状態から再びヒータをオンにして多孔体12に熱エネルギーを与えると、再び図12Bの状態に戻る。つまり、多孔体12に吸着している気体40が脱着して第2密閉容器21内に移動し、第2密閉容器21内が気体40の流入によって加圧される。つまり、第2密閉容器21内の圧力が大気圧に戻る。以下、ヒータのオンオフを制御することで、第2密閉容器21(把持装置20)の状態を図12Aに示される硬質状態と図12Bに示される軟質状態とに可逆的に切り替えることができる。
このように、本実施の形態における気体吸脱着デバイス2では、多孔体12にエネルギーが供給されることで、多孔体12内の気体40が多孔体12の外へ放出されて第1密閉容器11に連結された第2密閉容器21を軟質化させ、一方、多孔体12へのエネルギーの供給が停止されることで、第2密閉容器21内の気体40が多孔体12内に取り込まれて第2密閉容器21を硬質化させている。
具体的には、気体吸脱着デバイス2では、多孔体12及びエネルギー発生装置13によって構成された加圧減圧装置10を用いて、多孔体12に熱エネルギーを与えることで多孔体12に吸着している気体を脱着させて第2密閉容器21内を加圧したり、多孔体12に与えている熱エネルギーを取り除いて多孔体12に気体を吸着させて第2密閉容器21内を減圧したりすることで、第2密閉容器21内の圧力を所定負圧に減圧したり第2密閉容器21内の圧力を大気圧に戻したりすることができる。これにより、第2密閉容器21内に充填された粒体22がジャミング転移により固体的に振る舞ったり流体的に振る舞ったりするので、第2密閉容器21が軟質化したり硬質化したりする。このように、第2密閉容器21を軟質化させたり硬質化させたりすることで、気体吸脱着デバイス2を、物体の把持を行う物体把持装置として利用することができる。
次に、物体把持装置として気体吸脱着デバイス2を用いたときの適用例について、図12を用いて説明する。図13は、気体吸脱着デバイス2をロボットハンド3に適用したときに、ロボットハンド3がワーク4を把持するときの様子を示している。なお、図13において、気体吸脱着デバイス2は、把持装置20がワーク4に対向するように把持装置20を鉛直下向きに配置した状態になっている。
図13に示すように、ロボットハンド3は、物体把持装置として気体吸脱着デバイス2を備えている。ロボットハンド3は、例えば、ロボットアームの一部として用いることができる。
図13の(a)では、多孔体12に熱エネルギーが与えられておらず、気体吸脱着デバイス2の把持装置20における第2密閉容器21(本実施の形態ではバッグ)内の圧力は減圧されている。したがって、把持装置20は、硬質状態になっている。
ロボットハンド3にワーク4を把持させる場合、ヒータをオンにして多孔体12に熱エネルギーを与える。これにより、図13の(b)に示すように、多孔体12から気体が脱着して第2密閉容器21内が加圧され、弾性体である第2密閉容器21が膨張する。これにより、把持装置20は、軟質化して軟質状態になる。
次いで、図13の(c)に示すように、この状態のロボットハンド3を下降させて、軟質化した把持装置20をワーク4に押し付ける。これにより、第2密閉容器21の形状がワーク4の形状に倣って弾性変形する。
続いて、図13の(d)に示すように、ヒータをオフにして多孔体12に与えている熱エネルギーを取り除く。つまり、多孔体12への熱エネルギーの供給を停止する。これにより、第2密閉容器21の気体が多孔体12に吸着して第2密閉容器21内が減圧され、弾性復元力によって第2密閉容器21が収縮する。これにより、第2密閉容器21の形状がワーク4の形状に倣った状態で把持装置20が硬質化する。つまり、ワーク4は、硬質状態となった把持装置20によって把持されることになる。
その後、把持装置20に把持されたワーク4を移動させる場合、例えば、図13の(e)に示すように、ロボットハンド3を上昇移動させればよい。これにより、ワーク4が把持装置20で把持された状態でワーク4を移動させることができる。
なお、図示しないが、再度、ヒータをオンにして多孔体12に熱エネルギーを与えて多孔体12から気体を脱着させることで、第2密閉容器21内が加圧されて第2密閉容器21が軟質状態となる。これにより、把持装置20からワーク4が解放される。
このようにして、気体吸脱着デバイス2を備えるロボットハンド3が、ワーク4を把持したり解放したりすることができる。
次に、物体把持装置として用いられる気体吸脱着デバイス2の他の適用例について、図14を用いて説明する。図14は、実施の形態に係るドローン5の斜視図である。
図14に示すように、本実施の形態に係るドローン5は、物品等の物体を把持する又は物体を解放する物体コンタクト部5aと、物体コンタクト部5aによる物体の把持又は解放を制御するコントロール部5bとを備える。
物体コンタクト部5aは、物体把持装置として気体吸脱着デバイス2を有する。具体的には、物体コンタクト部5aは、気体吸脱着デバイス2の把持装置20を有する。つまり、物体コンタクト部5aは、物体に接触することで物体を把持したり解放したりする部位として把持装置20を有する。
なお、気体吸脱着デバイス2の加圧減圧装置10は、ドローン5の本体部に設置されている。また、図示されていないが、加圧減圧装置10と把持装置20とは通気路31で連結されている。
このように構成されるドローン5では、コントロール部5bから送信される制御信号に基づいて加圧減圧装置10の多孔体12へのエネルギーの供給又は多孔体12へのエネルギーの供給の停止を行うことで気体吸脱着デバイス2における密閉容器100内の圧力を変化させる。これにより、物体コンタクト部5aの把持装置20によって物体を把持したり解放したりすることができる。
また、本適用例において、物体コンタクト部5aは、例えば、ドローン5が有するカメラ5cに取り付けられている。これにより、カメラ5cで撮像された画像をもとに物体コンタクト部5aを制御することができるので、物体コンタクト部5aによる物体の把持及び解放を精度よくコントロールすることができる。
次に、気体吸脱着デバイス2の別の適用例について、図15及び図16を用いて説明する。図15は、実施の形態に係るチャイルドシート6の斜視図である。図16は、実施の形態に係るアシストスーツ7を着用したときの様子を示す図である。図15に示されるチャイルドシート6及び図16に示されるアシストスーツ7は、対象物の位置を固定する対象物固定装置の一例である。
具体的には、図15に示されるチャイルドシート6は、幼児を対象物としてチャイルドシート6における幼児の位置を気体吸脱着デバイス2によって固定する対象物固定装置である。
図15に示すように、チャイルドシート6は、幼児の位置を固定する固定部6aと、多孔体12にエネルギーを供給する、又は、多孔体12へのエネルギーの供給の停止若しくは多孔体12に供給するエネルギーを減少させるエネルギー供給手段6bとを備える。
固定部6aは、チャイルドシート6に座らせた幼児の側方に位置する側部である。本実施の形態において、固定部6aは、複数個所に設けられている。固定部6aは、幼児の位置を固定するための手段として気体吸脱着デバイス2を有する。具体的には、固定部6aは、気体吸脱着デバイス2の把持装置20を有する。したがって、固定部6aは、把持装置20が軟質化したり硬質化したりすることで、チャイルドシート6の内側に倒れるように変形したりチャイルドシート6の外側に戻るように変形したりする。具体的には、把持装置20を硬質化させて固定部6aをチャイルドシート6の内側に倒れるように変形させることで幼児を包みむようにして幼児の位置を固定することができる。一方、把持装置20を軟質化させて固定部6aをチャイルドシート6の外側に広がるように変形させることで幼児から固定部6aを離すことができる。
エネルギー供給手段6bは、気体吸脱着デバイス2のエネルギー発生装置13である。したがって、エネルギー供給手段6bは、気体吸脱着デバイス2の多孔体12にエネルギーを供給したり、多孔体12へのエネルギーの供給を停止又は多孔体12に供給するエネルギーを減少させたりする。エネルギー発生装置13を含む加圧減圧装置10は、例えば、チャイルドシート6の座部に収納されている。
なお、図示されていないが、加圧減圧装置10と把持装置20とは通気路31で連結されている。また、チャイルドシート6は、固定部6aを制御するコントロール部を備えていてもよい。
このように構成されるチャイルドシート6では、エネルギー供給手段6aによる多孔体12へのエネルギーの供給又は多孔体12へのエネルギーの供給の停止若しくは多孔体12に供給するエネルギーを減少させることによって、気体吸脱着デバイス2における密閉容器100内の圧力が変化して幼児の位置を固定することができる。具体的には、エネルギー供給手段6bによって第1密閉容器11に配置された多孔体12による気体の吸脱着を制御することで、第2密閉容器21内の圧力を制御することができる。これにより、把持装置20を硬質化させたり軟質化させたりすることができるので、固定部6aによって幼児を包み込むように幼児の位置を固定したり、固定部6aを幼児から離したりすることができる。
図16に示されるアシストスーツ7は、例えばパワースーツであり、人が装着することで人の動作又は人の姿勢に対してアシストを行う装置である。図16に示されるアシストスーツ7は、ユーザの体の一部を対象物としてユーザの体の一部の位置を気体吸脱着デバイス2によって固定する対象物固定装置である。なお、図16では、建築作業を行う作業者が電動ドライバーで天井にネジを打ち込むときの様子を示している。
図16に示すように、アシストスーツ7は、ユーザの体の一部を固定する固定部7aと、多孔体12へのエネルギーの供給又は多孔体12へのエネルギーの供給の停止若しくは多孔体12に供給するエネルギーを減少させるエネルギー供給手段7bとを備える。
固定部7aは、ユーザの体の一部の位置を固定するための手段として気体吸脱着デバイス2を有する。具体的には、固定部7aは、気体吸脱着デバイス2の把持装置20を有する。したがって、固定部7aは、把持装置20が軟質化したり硬質化したりすることでユーザの体の一部を締め付けたりその締め付けを緩めたりするようにして変形する。具体的には、把持装置20を硬質化させることで固定部7aにてユーザの体の一部を締め付けてユーザの体の一部の位置を固定することができる。一方、把持装置20を軟質化させることで固定部7aの締め付けを緩めることができる。
固定部7aは、例えば、ユーザの腕やひじ、胴体、足等の位置を固定する。本実施の形態において、固定部7aは、複数個所に設けられている。図16において、複数の固定部7aは、天井への作業を行う作業者の腕及び胴体の位置を固定している。具体的には、腕の固定部7aによって作業者の腕の位置が固定される。また、胴体の固定部7aによって作業者の胴体の位置が固定される。これにより、作業者は、腕を上げた状態の姿勢を楽に維持することができる。
エネルギー供給手段7bは、気体吸脱着デバイス2のエネルギー発生装置13である。したがって、エネルギー供給手段7bは、気体吸脱着デバイス2の多孔体12にエネルギーを供給したり、多孔体12へのエネルギーの供給を停止又は多孔体12に供給するエネルギーを減少させたりする。エネルギー発生装置13を含む加圧減圧装置10は、例えば、アシストスーツ7の背中部に収納されている。
なお、図示されていないが、加圧減圧装置10と把持装置20とは通気路31で連結されている。また、アシストスーツ7は、固定部7aを制御するコントロール部を備えていてもよい。
このように構成されるアシストスーツ7では、エネルギー供給手段7aによる多孔体12へのエネルギーの供給又は多孔体12へのエネルギーの供給の停止若しくは多孔体12に供給するエネルギーを減少させることによって、気体吸脱着デバイス2における密閉容器100内の圧力が変化して対象物の位置を固定することができる。具体的には、エネルギー供給手段7bによって第1密閉容器11に配置された多孔体12による気体の吸脱着を制御することで、第2密閉容器21内の圧力を制御することができる。これにより、把持装置20を硬質化させたり軟質化させたりすることができるので、固定部7aによってユーザの体の一部を締め付けてその体の一部の位置置を固定したり、固定部7aにより締め付けを緩めたりすることができる。
なお、上記実施の形態における気体吸脱着デバイス2を対象物固定装置に用いる場合、気体吸脱着デバイス2は、チャイルドシート6及びアシストスーツ7以外の製品に適用してもよい。例えば、気体吸脱着デバイス2は、ジュニアシート、自動車の座席シートそのもの、ソファ、マッサージ機のシート等、チャイルドシート以外のシートに適用してもよい。また、気体吸脱着デバイス2は、人の体の一部の位置を固定する対象物固定装置として、コルセット又はギプス等の医療器具に適用してもよい。その他、気体吸脱着デバイス2は、人の体の一部又は全部あるいは物体の位置を固定する種々の対象物固定装置に適用することができる。
以上説明したように、本実施の形態に係る気体吸脱着デバイス1、1A、2によれば、所定の気体が充填されかつ外部からの気体の供給又は外部への気体の送出がない密閉容器100、100A内に多孔体12を有し、多孔体12へのエネルギーの供給によって多孔体12内の所定の気体が多孔体12の外へ放出され、多孔体12へのエネルギーの供給を停止又は多孔体12に供給するエネルギーを減少させたりすることによって多孔体12が密閉容器100、100A内の所定の気体を多孔体12内へ取り込む。
この構成により、多孔体12にエネルギーを供給したり多孔体12へのエネルギーの供給を停止又は多孔体12に供給するエネルギーを減少させたりするだけで多孔体12による気体の吸脱着を制御することができ、これにより、密閉容器100、100A内の圧力を制御することができる。つまり、密閉容器100、100A内に配置された多孔体12による気体の吸脱着を利用して密閉容器100、100A内の圧力を制御することができる。これにより、真空ポンプを用いることなく、簡易な構成で密閉容器100、100A内の圧力を減圧することができるので、気体吸脱着デバイス1、1A、2の小型・軽量化が可能となる。したがって、加圧減圧機構の小型・軽量化及び独立化が可能となり、簡易な構成で効率的な加圧及び減圧を行うことができる。
しかも、本実施の形態に係る気体吸脱着デバイス1、1A、2では、多孔体12及びエネルギー発生装置13によって密閉容器100、100A内の圧力を制御しているので、密閉容器100、100A内の圧力の減圧及び加圧の応答性に優れている。したがって、小型且つ軽量で、優れた応答性を有する気体吸脱着デバイスを実現することができる。
また、本実施の形態に係る気体吸脱着デバイス1、1A、2では、多孔体12へのエネルギーの供給によって密閉容器100、100A内の圧力が上昇し、多孔体12へのエネルギーの供給を停止することによって密閉容器100、100A内の圧力が低下する。
この構成により、優れた応答性で密閉容器100、100A内を加圧したり減圧したりできるので、簡易な構成で効率的な加圧及び減圧を行うことができる。
また、本実施の形態に係る気体吸脱着デバイス1、2において、密閉容器100は、第1密閉容器11と、通気路31を介して第1密閉容器31に連結された第2密閉容器21とを有し、多孔体12は、第1密閉容器11内に配置されている。
この構成により、圧力変化対象部となる第2密閉容器21内の圧力を、第2密閉容器21とは別の第1密閉容器11内に配置された多孔体12による気体の吸脱着によって制御することができる。これにより、第2密閉容器21内の圧力を一層効率的に制御することができる。
また、本実施の形態に係る気体吸脱着デバイス1、1A、2において、エネルギー発生装置13は、多孔体12に熱エネルギーを与える熱エネルギー源である。つまり、多孔体12に供給されるエネルギーは、熱エネルギーである。
この構成により、エネルギー発生装置13による加熱及び冷却によって多孔体12に与える熱エネルギーを制御することで、多孔体12の気体の吸脱着を制御して密閉容器100内の圧力を制御することができる。したがって、簡易な構成で応答性に優れた気体吸脱着デバイスを実現することができる。
また、本実施の形態に係る気体吸脱着デバイス1、1A、2において、多孔体12は、金属有機構造体であるとよい。
この構成により、多孔体12の気体の吸着量を大きくすることができるので、多孔体12の気体の吸脱着に伴う密閉容器100、100A内の圧力の変化を大きくすることができる。
また、本実施の形態に係る気体吸脱着デバイス1、1A、2において、多孔体12は、ゲート吸着型の金属有機構造体であるとよい。
この構成により、ある特定の温度(ゲート圧が開く温度)で気体の吸着及び脱着が起こるので、ゲート吸着型MOFの気体の吸着量の変化が急激に生じるため、吸着及び脱着に伴う密閉容器100、100A内の加圧及び減圧の応答性を一層向上させることができる。また、多孔体12が吸着した気体を容易に完全に脱着させることができ、多孔体12に与えるエネルギーに対する気体の吸脱着の効率を向上させることができる。
また、本実施の形態に係る気体吸脱着デバイス1、1A、2において、多孔体12は、無機物、有機物及び金属の少なくとも一つと複合化された複合体であるとよい。
この構成により、多孔体12のエネルギー伝達率が向上するので、気体吸脱着デバイス1、1A、2の応答性を向上させることができる。例えば、多孔体12に熱エネルギーが与えられる場合、上記構成により、多孔体12の熱伝導率が向上するので、加熱時の脱着の応答性を早めることができるので、気体吸脱着デバイス1、1A、2の応答性を向上させることができる。なお、多孔体12を複合化する場合、多孔体12は密な構造にならないようにするとよい。
ここで、多孔体12を複合体とした場合の一例について、図17を用いて説明する。図17は、多孔体12aと粉末接着剤12bとで構成された複合体12Aの一例を示す要部断面図である。
図17に示すように、複合体12Aは、複数の多孔体12aが粉末接着剤12bで接合された構成である。多孔体12aとしては、上記の多孔体12を用いることができる。また、粉末接着剤12bとしては、例えば、エポキシ樹脂、フエノール樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン及びこれらが変性した樹脂等からなる点状接着剤を用いることができる。なお、多孔体12aの平均粒径、粉末接着剤12bの平均粒径は、例えば複合体12AのX線CTにより測定することができる。
また、図示しないが、多孔体12は、熱伝導体との複合体であってもよい。これにより、加熱時における多孔体12の気体の脱着の応答性を早めることができる。この点について、以下説明する。
気体を吸着した多孔体12を熱エネルギーによって脱着させる場合、多孔体12には、脱着に必要な熱量が伝達されなければならない。このとき、気体の脱着の応答性は、多孔体12への熱伝達速度に依存する。この点、MOF等の多孔体12単体では、一般的に熱伝導率が低いので、エネルギー発生装置13で多孔体12に熱エネルギーを与えても熱が多孔体12の内部にまで伝達する速度は遅い。このため、多孔体12単体では、気体の吸脱着の応答速度は低い。そこで、熱伝導率が比較的に高い熱伝導体と多孔体12とを複合化させることにより、多孔体12と熱伝導体との複合体としての熱伝導率を高くすることができる。これにより、加熱時の気体の脱着の応答性を早めることができる。したがって、密閉容器100(第2密閉容器21)の加圧の速度を向上させることができる。
なお、多孔体12と複合化する熱伝導体としては、特に限定されるものではないが、例えば、グラファイト等のカーボン材料又は金属材料等が挙げられる。使用する多孔体12に応じて熱伝導体を適宜選択すればよく、多孔体12の吸着性能を損なわないものであれば、熱伝導体の材料は、特に限定されるものではない。また、多孔体12と熱伝導体との複合化の方法及び複合体の具体的構造についても特に限定されるものではない。
また、本実施の形態に係る気体吸脱着デバイス1、2において、第1密閉容器11と第2密閉容器21とは、通気路31を介して分離されている。
この構成により、第1密閉容器11とは分離された第2密閉容器21によって第2密閉容器21内の圧力を制御することができる。これにより、応答性が要求される用途に容易に展開することができる。
なお、気体吸脱着デバイス2において、加圧減圧装置10が把持装置20と分離されておらず、加圧減圧装置10の一部又は全部が把持装置20の内部等にあってもよい。例えば、多孔体12が第2密閉容器21の内部に配置されていてもよい。この場合、エネルギー発生装置13は、第2密閉容器21の外部に設置するとよいが、第2密閉容器21の内部に設置されていてもよい。このように、加圧減圧装置10の一部又は全部を把持装置20の内部に設置することで、加圧減圧装置10の一部又は全部と把持装置20とを一体化させることができ、加圧減圧装置10の一部又は全部を把持装置20と別に設置する必要がなくなる。これにより、気体吸脱着デバイス2の装置構成をより簡素化することができる。
また、本実施の形態に係る気体吸脱着デバイス2において、通気路31には、通気路31を通る気体の流れを制御する制御装置31aが設けられている。
この構成により、制御装置31aによって、多孔体12と吸脱着する気体の流れを制御することができるので、第2密閉容器21内の圧力の調整を容易に行うことができるとともに、第2密閉容器21内の圧力の調整の自由度が向上する。例えば、制御装置31aがコックである場合、コックを閉めた状態で多孔体12を加熱して気体を予め脱着させておき、その後コックを開くことで、第2密閉容器21に気体を流入させて第2密閉容器21内を加圧することができる。つまり、コックの開閉を制御することで、第2密閉容器21の加圧及び減圧するタイミングを制御することができる。なお、このような制御装置31aは、図1に示される気体吸脱着デバイス1に設けてもよい。
また、本実施の形態に係る気体吸脱着デバイス1、1A、2において、多孔体12が配置される密閉容器100、100A内には除湿機構が配置されているとよい。一例として、除湿機構は、シリカゲルである。気体吸脱着デバイス1、2において、除湿機構は、例えば、多孔体12が配置される第1密閉容器11に配置される。
このように除湿機構を配置することで、多孔体12が水分を吸収することを抑制できるので、多孔体12の劣化を抑制することができる。これにより、多孔体12の性能を長期的に維持させることができる。したがって、信頼性に優れた気体吸脱着デバイスを実現することができる。
(変形例1)
次に、変形例1に係る気体吸脱着デバイスについて説明する。
本変形例に係る気体吸脱着デバイスは、上記実施の形態に係る気体吸脱着デバイスにおいて、エネルギー発生装置13を熱エネルギー源から光エネルギー源に換えた構成である。つまり、本変形例において、多孔体12に供給されるエネルギーが光エネルギーである。
上記実施の形態における気体吸脱着デバイス1では、エネルギー発生装置13として熱エネルギー源を用いて多孔体12による気体の吸脱着を制御していた。熱エネルギーによって多孔体12の気体の吸脱着を制御すると、密閉容器100内の加圧及び減圧の応答速度は、加熱速度及び冷却速度に支配されることになる。また、冷却速度を早めるために冷却機構を別途設置すると、気体吸脱着デバイス1が大型化する。
そこで、本変形例では、エネルギー発生装置13として、光エネルギー源を用いている。例えば、エネルギー発生装置13は、多孔体12に光エネルギーを与える光を発生する光発生装置である。このように、エネルギー発生装置13として光エネルギー源を用いることで、光エネルギーによって多孔体12の気体の吸脱着を制御することができる。
したがって、本変形例における多孔体12は、光エネルギーが与えられて気体の吸脱着を行う。例えば、本変形例における多孔体12は、吸着した気体分子を光照射により脱着するための機構を有する。このような多孔体12は、特に限定されるものではないが、例えば、光応答性分子を多孔体12に導入した様態、又は、光熱効果を有する金属ナノ粒子を多孔体12と複合化させた様態が挙げられる(非特許文献3)。以下、それぞれの具体的様態について説明する。
光応答性分子は、光照射により分子構造が変化する分子である。分子構造の変化の様態としては、例えば、不飽和アルケン類又はアゾベンゼン類等が有する、炭素-炭素二重結合部位又は窒素-窒素二重結合部位の光照射によるシス-トランス異性化、あるいは、ジアリールエテン類、スピロピラン類又はフルギド類等が有する、環構造の光照射による開環・閉環反応が挙げられる。
上記光応答性分子の多孔体12への導入の手法及び構造の様態については、多孔体12の細孔内部にゲスト分子として導入してもよいし、多孔体12の骨格部分として導入してもよい。
また、上記様態において、多孔体12への光照射の前後における吸着量が変化する例が報告されている。その機構については、未だ完全な解明はなされていないが、次のように考えられている。
まず、光応答性分子を多孔体の細孔内部にゲスト分子として導入した態様については、光照射により光応答性分子が構造変化することによって、多孔体12の細孔表面の静電ポテンシャルが変化し、その結果、吸着量が変化するというメカニズムが提唱されている。
一方、光応答性分子を多孔体12の骨格部分として導入した態様については、光照射により光応答性分子が構造変化することによって、多孔体12の細孔表面の静電ポテンシャルが変化し、吸着量が変化するというメカニズムと、骨格構造が動的に変化することで細孔容積が変化し、吸着量が変化するというメカニズムとが提唱されている。
一例として、光エネルギーが与えられて気体を吸脱着する多孔体12としては、[Zn(AzDC)(bpe)0.5]の化学式で表されるMOFを用いることができる。ここで、AzDCはアゾベンゼン-4,4‘-ジカルボン酸、bpeはtrans-1,2-bis(4-pyridyl)ethyleneである。このMOFは、UV光の照射によってAzDC及びbpeが異性化する。このMOFに気体を吸着させてUV光を照射すると、MOFから気体を脱着させることができる。具体的には、UV光照射前のCO2の吸着量は5.1wt%(常圧下30℃)であり、UV光照射後のCO2の吸着量は2.8wt%(常圧下30℃)であった。
また、光応答性分子を利用した他の多孔体12の様態としては、光熱効果を有する金属ナノ粒子と多孔体12とを複合化させた様態が挙げられる。
光熱効果は、光エネルギーが熱エネルギーに変換される現象であり、例えば、金、銀な等の金属ナノ粒子に対して、光を照射すると、プラズモン共鳴効果によりナノ粒子表面で熱エネルギーが発生することが知られている。
したがって、金属ナノ粒子と多孔体12とを複合化させると、光照射により金属ナノ粒子が熱を発生させるため、局所的に多孔体12へ熱が伝達され得る。その結果、多孔体12に吸着された気体が多孔体12から放出される。
一例として、光エネルギーが与えられて気体を吸脱着するその他の多孔体12としては、Agナノ粒子とUiO-66との複合体を用いることができる。UiO-66は、[Zr6O4(OH)4(bdc)6]の化学式で表され、bdcはテレフタル酸である。上記複合体に気体を吸着させて可視光を照射すると、複合体から気体を脱着させることができる。具体的には、可視光照射前のCO2の吸着量は5wt%(常圧下25℃)であり、可視光照射後のCO2の吸着量は1wt%(常圧下25℃)であった。
金属ナノ粒子と多孔体12との複合化の方法及び複合体の具体的構造については、使用する多孔体12に応じて金属ナノ粒子を選択すればよく、多孔体12の吸着能力を損なわなければ、複合化の手法及び複合体の構造については、特に限定されるものではない。
本変形例におけるエネルギー発生装置13の光照射手段については、例えば、LED等の小型光源に小型モータを連結させたものを多孔体12が配置された第1密閉容器11に接触させて設置すればよいが、所定量の圧力変化に必要な量の吸着及び脱着を多孔体12が起こし得ることが可能な構成であれば、光照射手段は、特に限定されるものではない。また、照射する光の波長、光の強度及び光の照射時間については、多孔体12及び複合体の種類、圧力変化対象部の容積、並びに、圧力変化対象部の使用圧力範囲に応じて適宜設定すればよい。
このように、エネルギー発生装置13として光エネルギー源を用いた本変形例における気体吸脱着デバイスでは、光を照射しないときは多孔体12が気体を吸着するため減圧され、光を照射すると多孔体12が気体を脱着するため加圧される。このように、本変形例によれば、多孔体12の吸着及び脱着を一つのスイッチのオン/オフで制御することができるため、簡易な構成でありながら、加圧及び減圧の応答性に優れた気体吸脱着デバイスを実現できる。
(変形例2)
次に、変形例2に係る気体吸脱着デバイスについて説明する。
本変形例に係る気体吸脱着デバイスは、上記実施の形態に係る気体吸脱着デバイスにおいて、エネルギー発生装置13を熱エネルギー源から磁力エネルギー源に換えた構成である。つまり、本変形例では、多孔体12に供給されるエネルギーは、磁力エネルギーである。
上記変形例における気体吸脱着デバイスでは、エネルギー発生装置13として光エネルギー源を用いて多孔体12による気体の吸脱着を制御していた。光エネルギーによって多孔体12の気体の吸脱着を制御すると、多孔体12の内部にまで光が届かない場合が生じうる。この結果、光を照射しても効果的な気体の吸着及び脱着が起こらずに、所望の加圧減圧制御を行うことができない場合があり得る。
これに対して、基本的に磁界は物質を透過するため、本変形例に係る気体吸脱着デバイスのように、エネルギー発生装置13として磁力エネルギー源を用いて多孔体12の存在空間に磁場を生成することで、多孔体12の気体の吸脱着を効果的に行うことができる。例えば、エネルギー発生装置13として、多孔体12に磁気エネルギーを与える磁力を発生する磁力発生装置を用いることができる。このように、エネルギー発生装置13として磁力エネルギー源を用いることで、磁気エネルギーによって多孔体12の気体の吸脱着を制御することができる。具体的には、気体を吸着した多孔体12に磁場を照射することで気体を脱着させる。
したがって、本変形例における多孔体12は、磁気エネルギーが与えられて気体の吸脱着を行う。例えば、本変形例における多孔体12は、吸着した気体を磁力エネルギーの供給により脱着するための機構を有する。このような多孔体12は、特に限定されるものではないが、例えば、磁力エネルギーの供給により熱を発生する材料と多孔体とを複合化させた様態が挙げられる。以下、その具体的様態について説明する。
磁力エネルギーの供給により熱を発生する材料としては、例えば、Fe3O4又はMgFe2O4等の酸化鉄系ナノ粒子等の熱金属ナノ粒子が挙げられる(非特許文献3)。このような酸化鉄系ナノ粒子に高周波磁場を印加すると、ヒステリシス損により発熱することが知られている。
このため、酸化鉄系ナノ粒子と多孔体とを複合化させると、磁場の印加により酸化鉄系ナノ粒子が熱を発生させるため、局所的に多孔体へ熱が伝達され得る。その結果、多孔体12に吸着された気体が多孔体12から放出される。
酸化鉄系ナノ粒子と多孔体との複合化方法及び複合体の具体的構造については、使用する多孔体に応じて、酸化鉄系ナノ粒子を選択すればよい。多孔体12の吸着能力を損なわなければ、複合化の手法及び複合体の構造については、特に限定されるものではない。
本変形例におけるエネルギー発生装置13の磁場印加手段については、例えば、コイル等の交流磁場発生源に小型モータを連結させたものを多孔体12が配置された第1密閉容器11に接触させて設置すればよい。あるいは、多孔体12が配置された部分全体にコイルを巻き付けた構成であってもよい。ただし、磁場印加手段については、所定量の圧力変化に必要な量の吸着及び脱着を多孔体12が起こし得ることが可能な構成であれば、特に限定されるものではない。また、印加する磁場の磁束密度、磁束の方向及び磁場の印加時間については、多孔体12及び複合体の種類、圧力変化対象部の容積、並びに、使用圧力範囲に応じて適宜設定すればよい。
一例として、磁気エネルギーが与えられて気体の吸脱着を行う多孔体12としては、Fe3O4ナノ粒子とMg-MOF-74の複合体を用いることができる。上記複合体に気体を吸着させて磁場を印加すると、複合体から気体を脱着させることができる。具体的には、交流磁場印加前のCO2の吸着量は30.8wt%(常圧下25℃)であり、交流磁場印加後のCO2の吸着量は13.9wt%(常圧下25℃)であった。
このように、エネルギー発生装置13として磁力エネルギー源を用いた本変形例における気体吸脱着デバイスでは、磁場を印加しないときは多孔体12が気体を吸着するため減圧され、磁場を印加すると多孔体12が気体を脱着するため加圧される。このように、本変形例によれば、多孔体12の吸着及び脱着を一つのスイッチのオン/オフで制御することができるため、簡易な構成でありながら、加圧及び減圧の応答性に優れた気体吸脱着デバイスを実現できる。
(その他の変形例)
以上、本開示に係る気体吸脱着デバイス及び物体把持装置について、実施の形態及び変形例に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施の形態における気体吸脱着デバイス及び物体把持装置において、多孔体12と吸脱着する気体としてCO2を例示したが、これに限らない。多孔体12と吸脱着する気体としては、CO2以外に、N2、O2、CH4、C2H6、C2H2、NH3、H2等が挙げられる。
また、上記実施の形態にける物体把持装置において、ジャミング転移により状態が変化する物質として、粒体22を例示したが、これに限らない。例えば、ジャミング転移により状態が変化する物質として、無機繊維又は有機繊維等の繊維であってもよいし、フィルム又はシートが積層されたものであってもよい。つまり、第2密閉容器21の内部に収納される物質は、ジャミング転移により状態が変化する物質であればよい。
その他、上記実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、又は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態及び変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。