JP4382898B2 - 抗マラリア活性を有するペルオキシド誘導体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マラリア原虫類による感染症の予防及び治療に有用な新規化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
マラリアは、プラスモジウム(Plasmodium)属に属する原虫の感染によって起こる伝染性疾患で、ハマダラ蚊を媒介として感染し、間欠的な熱発作、貧血、脾腫等の症状を示す。マラリアは、近年、自然や環境の変化に伴い猛威を振るい始めており、その推定感染患者数は年間3億〜5億人、年間死亡者数は、150〜300万人という世界的にも重要な疾病である。ヒトに感染するマラリア原虫には、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの熱帯地域全体に分布する熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、世界各地の熱帯と温帯の一部に分布する三日熱マラリア原虫(P.vivax)、世界各地に分布する四日熱マラリア原虫(P.malariae)及び主として熱帯西アフリカに分布する卵形マラリア原虫(P.ovale)等の原虫が挙げられるが、その中でも熱帯熱マラリアがもっとも重篤な症状を示し、発症後1〜2週間で脳症、腎症、溶血性貧血、肺水腫、心臓障害、重症腸炎などを伴って容易に重症マラリアに進展し、短期間内に多臓器不全を示し宿主を死に至らしめることが多い。
現在使用されている薬剤の代表的なものにはクロロキン、プリマキン、アルテミシニン、メフロキン、ピリメサミン等が挙げられるが、これら薬剤は毒性の強いものが多いこと、更に多くの薬剤に対する耐性原虫が出現しており、この薬剤耐性マラリアの拡散が化学療法の昨今の問題点となっている。薬剤耐性マラリアに唯一有効な薬剤としてキニーネが存在するが、腎不全を引き起こす可能性が極めて高く、現在の医療水準から見てリスクの高い治療薬である。このような状況からも、抗マラリア活性が高くかつ安全性の高い新薬の開発が望まれている。
本発明に類似の化合物としては、例えば特公昭59−46266号公報、特開平8−67704号公報等に記載の有機ペルオキシド化合物が公知であるが、これらはポリマー製造の際の開始剤として使用されているのみである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、毒性が低く、極めて高い抗マラリア活性を有する新規化合物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表されるペルオキシド誘導体が極めて高い抗マラリア活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は一般式(1)で表されるペルオキシド誘導体に関するものである。
【化2】
[式中、Cは炭素数1〜6の直鎖状または分枝状の低級アルキル基を置換基として有しても良い炭素数3〜12の単環の脂環式炭化水素環基またはアマダンチリデン基、nは0〜6の整数を示す。]
【0005】
上記一般式(1)において、Cの置換基を有してもよい脂環式炭化水素環基としては、例えばシクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロへプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン基等の炭素数3〜12の単環の脂環式炭化水素基;ビシクロブチリデン、ビシクロオクチリデン、ビシクロノニリデン、ノルボルニリデン、ノルボレニリデン、アダマンチリデン、ノルアダマンチリデン基等の架橋環又は多環の脂環式炭化水素基等が挙げられ、好ましくは炭素数6〜12の単環の脂環式炭化水素基又はアダマンチリデン基であり、より好ましくはシクロヘキシリデン、シクロドデシリデン又はアダマンチリデン基である。
また、Cの脂環式炭化水素環基が有してもよい置換基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルとして例示される直鎖又は各種分枝したペンチル基等の炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状の低級アルキル基であり、より好ましくはtert−ブチル基である。
本発明化合物のうち、好ましい化合物としては一般式(1)において、Cが置換基として炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状の低級アルキル基を有しても良い脂環式炭化水素環基である化合物であり、より好ましくはCが4−tert−ブチルシクロヘキシリデン、シクロドデシリデン又はアダマンチリデン基であり、nが1〜4である化合物である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
上記一般式(1)で表される本発明化合物は下記の方法により製造できる。
【化3】
[式中、C及びnは上記に同じ。Xはハロゲン原子を示す。]
上記反応工程式中、Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくは臭素原子、ヨウ素原子である。
【0007】
<反応工程(i)>
本反応工程は、J.Org.Chem.,62,4949(1997)記載の方法に準じて行われる。すなわち、一般式(2)で表される公知化合物を過酸化水素存在下、適当な溶媒中でオゾンと反応させることにより一般式(3)で表されるビスヒドロペルオキシド化合物を得る。本工程で用いられる溶媒としては反応に関与しないものであれば特に制限はなく、エーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等を例示でき、好ましくはエーテルである。過酸化水素は30〜100%のものが使用できる。反応に際しては、化合物(2)に対して、過酸化水素を1〜10倍モル量、好ましくは1〜3倍モル量使用し、オゾンを0.5〜5倍モル量、好ましくは1〜2倍モル量使用する。反応温度は−70〜20℃であり、反応時間は5〜30分である。得られた化合物(3)は、通常の分離手段、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶等により反応混合物から容易に単離精製することが出来る。
上記反応工程(i)で得られた化合物(3)は単離又は単離することなく反応工程(ii)に使用できる。
【0008】
<反応工程(ii)>
上記反応工程(i)で得られた化合物(3)と一般式(4)で表される化合物を、塩基存在下、適当な溶媒中で反応させることにより、一般式(1)で表される本発明化合物を得る。
本工程で使用される塩基としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、またトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の第三級アミンが用いられ、好ましくは水酸化セシウムである。溶媒としては、非水溶媒であれば特に制限はないが、特にジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドの様な極性の高いものが好まれる。また18−クラウン−6の様なクラウンエーテル類を反応促進剤として添加することも可能である。反応に際しては、化合物(3)に対して化合物(4)及び塩基をそれぞれ1〜3倍モル使用する。反応促進剤を添加する場合には、化合物(3)に対して1〜10モル量を使用する。反応温度は0〜50℃、好ましくは10〜30℃であり、反応時間は1〜48時間である。得られた化合物(1)は、通常の分離手段、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶等により反応混合物から容易に単離精製することが出来る。
【0009】
本発明化合物をマラリア原虫類による感染症の予防及び治療に使用する場合、投与経路としては、経口、皮下注射、静脈注射、局所投与等のいずれでもよい。また、製剤としては、通常、製薬的に許容される担体や賦形剤、その他添加剤を用いて製造した散剤、錠剤、細粒剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤等の経口剤、点眼剤、注射剤、坐剤等の非経口剤が挙げられる。製薬的に許容される担体や賦形剤、その他添加剤としては、グルコース、ラクトース、ゼラチン、マンニトール、でんぷんペースト、トリケイ酸マグネシウム、コーンスターチ、ケラチン、コロイド状シリカ等があり、さらには、安定剤、増量剤、着色剤及び芳香剤の様な補助剤を含有してもよい。これらの製剤は、各々当業者に公知慣用の製造方法により製造できる。
本発明化合物の製剤中の配合量としては、0.1〜100重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜80重量%であり、0.1〜50重量%が好適である。
また、1日当たりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり一概に決定できないが、通常成人1日当り本発明化合物を0.1〜1000mg、好ましくは1〜600mgを1回又は2〜4回程度に分けて投与するのが好ましい。
【0010】
【実施例】
次に本発明を製造例、実施例、試験例により具体的に説明する。
<製造例1>(シクロドデシリデン)ビスヒドロペルオキシド(化合物a)の合成
斉藤等の方法(Saito,I.;Nagata,R.;Yuba,K.;Matuura,T.Tetrahedron Lett.1983,24,1737)で調整した過酸化水素の2.5molエーテル溶液25mlに公知化合物であるメトキシメチレンシクロドデカン630mg(3.00mmol)を溶かし、−70℃でオゾン化を行った(通常のオゾン化装置(Nippon Ozone Model ON−1−2(日本オゾン株式会社製))を使い、15分間50l/hrの流速で酸素を吹き込むことにより、使用したメトキシメチレンシクロドデカンと等量のオゾンを発生させた)。反応終了後、70mlのエーテルを加え、有機層を重曹水、次いで飽和食塩水で洗った後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。次いで、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(留出液:エーテル−ヘキサン、2:8)により、標記化合物aを232mg(収率33%)得た。物性値を以下に示す。
融点:140−141℃
1H NMR(CDCl3)δ: 1.2-1.8 (m, 22 H), 8.13 (br s, 2 H)
13C NMR(CDCl3)δ: 19.28, 21.86, 22.15, 6.02, 26.19, 26.29, 112.64.
【0011】
<製造例2>(4−tert−ブチルシクロヘキシリデン)ビスヒドロペルオキシド(化合物b)の合成
製造例1と同様に調整した過酸化水素を含むエーテル溶液25mlに4−tert−ブチル−2−メトキシメチレンシクロヘキサン546mg(3.00mmol)を溶かし、−70℃でオゾン化を行った。反応終了後、上記製造例1と同様の方法で処理した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(留出液:エーテル−ヘキサン、2:8)により、標記化合物bを285mg(収率47%)得た。以下に物性値を示す。
融点:83−84℃(エーテル−ヘキサン)
1H NMR(CDCl3)δ: 0.87 (s, 9 H), 1.1-1.8 (m, 9 H), 9.27 (s, 2 H)
13C NMR(CDCl3)δ: 23.32, 27.58, 29.70, 32.31, 47.39, 110.00.
元素分析:Anal.Calcd. for C10H20O4: C, 58.80; H, 9.87. Found: C, 58.87; H, 9.80.
【0012】
<製造例3>(2−アダマンチリデン)ビスヒドロペルオキシド(化合物c)の合成
製造例1と同様に調整した過酸化水素を含むエーテル溶液25mlに2−メトキシメチレンアダマンタン712mg(4.00mmol)を溶かし、−70℃でオゾン化を行った。反応終了後、上記製造例1と同様の方法で処理した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(留出液:エーテル−ヘキサン、2:8)により、標記化合物cを335mg(収率42%)得た。以下に物性値を示す。
融点:144−145℃(エーテル−ヘキサン)
1H NMR (CDCl3)δ:1.7-2.1 (m, 14 H), 8.82 (s, 2 H)
13C NMR (CDCl3)δ:26.94, 31.14, 33.68, 36.98, 112.88.
【0013】
<実施例1>1,2,6,7−テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン(化合物1)の合成
アルゴン雰囲気下で、水酸化セシウムの一水塩504mg(3.00mmol)のジメチルホルムアミド溶液10mlを調整した。この溶液に、シリンジを用いて、製造例1で得られた化合物a348mg(1.50mmol)のジメチルホルムアミド溶液5mlを、次いで1,3−ジヨードプロパン666mg(2.25mmol)のジメチルホルムアミド溶液5mlを、0℃で、それぞれ10分間かけて加えた。その後、室温で16時間撹拌した。反応終了後、70mlのエーテルを加え、有機層を重曹水、次いで飽和食塩水で洗った後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧で留去後、残渣のシリカゲルカラムクロマトグラフィー(留出液:エーテル−ヘキサン、1:25)により、標記化合物1を164mg(収率40%)得た。以下に物性値を示す。
融点:83−84℃(ヘキサン)
1H NMR(CDCl3)δ:1.3-1.7 (m, 22 H), 2.1-2.2 (m, 2 H), 4.12 (dt, J = 12.5, 5.0 Hz, 2 H), 4.31 (dt, J = 12.5, 5.0 Hz, 2 H)
13C NMR(CDCl3)δ: 19.36, 21.90, 22.17, 25.91, 26.07, 26.25, 30.40, 73.94, 112.13.
元素分析:Anal. Calcd. for C15H26O4: C, 66.14; H, 10.36. Found: C, 65.91; H, 10.42.
【0014】
<実施例2>1,2,6,7−テトラオキサスピロ[8.11]イコサン(化合物2)の合成
製造例1で得られた化合物a348mg(1.50mmol)と水酸化セシウムの一水塩 504mg(3.00mmol)をジメチルホルムアミド25mlに溶かし、これに1,3−ジヨードブタン698mg(2.25mmol)を10分間かけて加えた。その後、反応を室温で16時間行った。反応終了後、上記実施例1と同様の処理法で反応混合物を処理した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(留出液:エーテル−ヘキサン、1:25)により、標記化合物2を129mg(収率30%)得た。以下に物性値を示す。
融点:97−98℃(ヘキサン)
1H NMR(CDCl3)δ:1.3-1.7 (m, 24 H), 2.2-2.3 (m, 2 H), 3.66 (t, J = 12.2 Hz, 2 H), 4.26 (dd, J = 12.2, 3.9 Hz, 2 H)
13C NMR(CDCl3)δ:19.30, 21.89, 22.17, 25.95, 26.11, 26.43, 30.93, 32.51, 73.85, 111.82 .
元素分析: Anal. Calcd. for C16H30O4: C, 67.10; H, 10.56. Found: C, 66.66; H, 10.49 .
【0015】
<実施例3>1,2,6,7−テトラオキサスピロ[9.11]ヘニコサン(化合物3)の合成
水酸化セシウムの一水塩1008mg(6.00mmol)をジメチルホルムアミド溶液20mlに溶かし、これに製造例1で得られた化合物a696mg(3.00mmol)を溶かしたジメチルホルムアミド溶液20ml及び1,3−ジヨードペンタン1458mg(4.50mmol)を溶かしたジメチルホルムアミド溶液20mlを、別々のシリンジを用いて、0℃で1時間かけて加えた。その後、反応を室温で16時間行った。反応終了後、上記実施例1と同様の処理法で反応混合物を処理した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(留出液:エーテル−ヘキサン、1:25)により、標記化合物3を153mg(収率17%)得た。以下に物性値を示す。
融点:51−52℃(ヘキサン)
1H NMR(CDCl3)δ:1.3-1.8 (m, 24 H), 19-2.1 (m, 4 H), 4.1-4.2 (m, 4 H)
13C NMR(CDCl3)δ:19.26, 21.92, 22.25, 24.89, 25.97, 26.06, 26.65, 28.45, 76.64, 110.89.
【0016】
<実施例4>1,2,6,7−テトラオキサスピロ[8.11]ドコサン(化合物4)の合成
水酸化セシウムの一水塩1008mg(6.00mmol)をジメチルホルムアミド溶液20mlに溶かし、これに製造例1で得られた化合物a696mg(3.00mmol)を溶かしたジメチルホルムアミド溶液20ml及び1,3−ジヨードヘキサン1521mg(4.50mmol)を溶かしたジメチルホルムアミド溶液20mlを、別々のシリンジを用いて、0℃で1時間かけて加えた。その後、反応を室温で16時間行った。反応終了後、上記処理法で反応混合物を処理した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(留出液:エーテル−ヘキサン、1:25)により、標記化合物4を168mg(収率18%)得た。以下に物性値を示す。
融点:48−49℃(ヘキサン)
1H NMR(CDCl3)δ:1.3-1.8 (m, 30 H), 4.02 (t, J = 4.8 Hz, 4 H)13C NMR(CDCl3)δ:19.35, 21.89, 22.23, 25.00, 26.02, 26.13, 26.43, 26.99, 74.63, 112.06.
【0017】
<実施例5>7,8,12,13−テトラオキサスピロ[6.8]トリデカン(化合物5)の合成
製造例2で得られた化合物b125mg(0.61mmol)と水酸化セシウムの一水塩 205mg(1.22mmol)をジメチルホルムアミド15mlに溶かし、これに1,3−ジヨードプロパン272mg(0.92mmol)を10分間かけて加えた。その後、反応を室温で16時間続けた。反応終了後、上記実施例1と同様の処理法で反応混合物を処理した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(留出液:エーテル−ヘキサン、1:25)により、標記化合物5を38mg(収率26%)得た。以下に物性値を示す。
融点:58−59℃(ヘキサン)
1H NMR(CDCl3)δ:0.86 (s, 9 H), 1.1-1.8 (m, 9 H), 2.1-2.3 (m, 2 H), 4.10-4.2 (m, 2 H), 4.3-4.5 (m, 2 H)
13C NMR(CDCl3)δ:23.34, 23.61, 27.64, 28.59, 30.35, 31.93, 32.37, 47.44, 73.76, 74.02, 107.92.
元素分析:Anal. Calcd. for C13H24O4 : C, 63.91; H, 9.90. Found: C, 63.60; H, 9.97.
【0018】
<実施例6>スピロ[トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]2,3’−[1,2,4,5]テトロキソカン(化合物6)の合成
製造例3で得られた化合物c313mg(1.57mmol)と水酸化セシウムの一水塩528mg(3.14mmol)をジメチルホルムアミド15mlに溶かし、これに1,3−ジヨードプロパン695mg(2.35mmol)を10分間かけて加えた。その後、反応を室温で16時間行った。反応終了後、上記処理法で反応混合物を処理した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(留出液:エーテル−ヘキサン、1:25)により、標記化合物6を73mg(収率19%)得た。以下に物性値を示す。
融点:34−35℃(ヘキサン)
1H NMR(CDCl3)δ:1.6-2.3 (m, 16 H), 4.12 (dt, J = 12.9, 5.6 Hz, 2 H), 4.35 (dt, J = 12.5, 4.8 Hz, 2 H)
13C NMR(CDCl3)δ:27.06, 30.30, 31.81, 33.67, 33.98, 37.25, 73.94, 109.95.
【0019】
<熱帯熱マラリア原虫の培養検定試験>
本実験では、熱帯熱マラリア原虫としてP.falciparum FCR-3 strain(ATCC 30932)を用いた。また抗マラリア剤として市販されているクロロキンの耐性株に対する本発明化合物の効果を検証するためにP.falciparum K1 strainのクロロキン耐性マラリア原虫を用いた。実験に用いた培地は、濾過滅菌したRPMI1640培地で、pHを7.4に合わせ、ヒト血清を10%となるように添加した。マラリア原虫の培養はO2濃度5%、CO2濃度5%、N2濃度90%、温度は36.5℃で行った。ヘマトクリット値(赤血球浮遊液中に占める赤血球の体積の割合)は5%にして用いた。培養開始時の熱帯熱マラリア原虫の初期感染率は0.1%とした。24穴培養プレートを用いて培養し、培地は毎日交換し、感染率4%で植え継ぎを行った。感染率は薄層塗沫標本を作成し、ギムザ染色あるいはDiff-Qick染色を行った後、顕微鏡(油浸、1000×)下で計測し、マラリア原虫感染率を下記式より算出した。
マラリア原虫感染率(%)={(感染赤血球数)/(総赤血球数)}×100
【0020】
<試験例1>マラリア原虫増殖阻害スクリーニング試験
培養したマラリア原虫感染赤血球を遠心で集め、血清を含む培地で洗浄を行った後、非感染赤血球を加え、初期感染率を0.3%とした。この時のヘマトクリット値は3%である。実験に用いるサンプルは滅菌水、ジメチルホルムアミド(DMF)あるいはジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、所定濃度のサンプルとした。
24穴培養プレートにサンプルを5〜10μlずつ加えた。サンプルはduplicateあるいはtriplicateにとった。コントロールは滅菌水、DMFあるいはDMSOを10μl/ウエル加えた。
次に、あらかじめ用意しておいた熱帯熱マラリア原虫培養液を990〜995μlずつ加え、静かにピペッティングを行い培地に一様に懸濁させた。培養プレートはCO2−O2−N2(5%、5%、90%)インキュベーター中で72時間培養した後、それぞれのウエルについて薄層塗沫標本を作成し、染色した後、顕微鏡下で観察し、試薬を加えたものの感染率およびコントロールの感染率を算出した。
上記で求めたマラリア原虫感染率から次の式によって増殖率を算出することにより、マラリア原虫に対する50%増殖阻害濃度(EC50)を求めた。結果を表1に示す。
増殖率(%)={([b]−[a])/([c]−[a])}×100
a:初期感染率
b:サンプル添加時の感染率
c:サンプル非添加時(コントロール)の感染率
【0021】
<試験例2>マウスFM3A細胞増殖阻害試験
マウス乳がん由来FM3A細胞の野生株であるF28−7株を用いた。培地はES培地に非働化した胎児牛血清を2%となるように添加し、CO2濃度5%、37℃で培養した。この条件下でのFM3A細胞の倍加時間は約12時間であった。
前培養を行い、対数増殖期に入った細胞を5×104cells/mlになるように培地で希釈した。サンプルはマラリア原虫の抗マラリア活性測定時調製したものを用いた。24穴培養プレートにサンプル溶液を5〜10μlずつ加えた(培地等を加えると最終濃度は1×10−4〜1×10−6となった)。化合物はduplicateあるいはtriplicateにとり、コントロールとして滅菌水、DMFあるいはDMSOを10μl加えたウエルも同時に用意した。次に、用意しておいた培養細胞浮遊液を990〜995μlずつ加え、静かにピペッティングを行い培地に一様に懸濁させた。48時間培養した後、それぞれのウエルについて細胞数をセルコントローラー(CC−108、Toa Medical Electrics社製)で計数し、下記式より増殖率を算出した。
増殖率(%)={([C]−[A])/([B]−[A])}×100
A:初期細胞数
B:48時間後のコントロールの細胞数
C:サンプル添加した48時間後の細胞数
細胞増殖阻害活性は、サンプルを添加したウエルの細胞数およびコントロールの細胞数から算出した。これにより、サンプルの細胞毒性を評価し、細胞増殖阻害濃度(EC50)で示した。EC50値とはマラリア原虫、あるいはFM3A細胞の培地にサンプルを添加していないコントロールの増殖率、あるいはマラリア原虫感染率を100%とし、サンプル添加によってコントロールの増殖率を50%阻害するサンプルの濃度のことである(モル濃度で表示する)。結果を表1に示す。
サンプルの抗マラリア作用は、FM3A細胞に対するマラリア原虫のサンプルのEC50値の比(化学療法係数、下記式参照)から評価し、薬効判定を行った。また、参考までに抗マラリア剤として利用されているクロロキンについても同様の試験を行った。結果を表1に示す。
化学療法係数=(マウスFM3A細胞に対するサンプルのEC50値)
÷(熱帯熱マラリア原虫に対するサンプルのEC50値)
【0022】
【表1】
【0023】
以上の結果、本発明化合物は、細胞毒性が低く、マラリア原虫増殖阻害活性を有することが判明した。また、クロロキン耐性原虫に対しても効果が保持されていることが判明した。
【0024】
<試験例3>ネズミマラリア原虫感染マウスを用いた原虫抑制試験
本実験はPeters,W.and Richrds,W.H.G.Antimalarial drugs I,in:W.Peters,W.H.G.Richards(Eds.),Springer-Verlag,Berlin,1984,pp.229-230に記載の4-day suppressive testに準じて行った。用いたネズミマラリア原虫(P.berghei NK65株)は強毒原虫株で、このネズミマラリア原虫を感染させるとマウスは感染してから10日以内に全部死亡する。継代しているネズミマラリア原虫感染マウスの血中感染率が10%となった時点で実験を開始した。エーテル麻酔を行ったマウスの心臓採血を行い、リン酸緩衝生理食塩水1mlあたり5×106原虫/mlとなるように調製した原虫浮遊液を感染していないマウスに200μl腹腔内感染(i.p.)した。原虫感染2時間後、オリーブ油に懸濁した化合物を経口投与又は腹腔内投与(化合物5は腹腔内投与のみ)した。投与期間は、1日1回を連続4日間行い、実験開始4日目にマウスの尾より採血する。採血した血液で薄層塗抹標本を作製し、ギムザ染色により顕微鏡下で赤血球感染率を求めた(上記の熱帯熱マラリア原虫の培養検定試験と同様の方法で行った)。溶媒のみを投与したコントロール群に対する薬剤投与群の感染率の割合を調べることで50%原虫抑制濃度(ED50値)と90%原虫抑制濃度(ED90値)を求めた。結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
以上の結果、本発明化合物は、優れたマラリア原虫増殖抑制活性を有することが判明した。
【0027】
【発明の効果】
本発明化合物は優れた抗マラリア作用を有し、マラリア等の原虫類による感染症の予防及び治療薬として有用である。またクロロキン耐性マラリアに対しても有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】各製造例、実施例における化合物の化学構造式の対照表を示す表図である。
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