JP4457224B2 - 複合材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合材及びその製造方法に関する。更に詳しくは、気体或いは液体中の細菌、ウィルス、動植物細胞及び悪臭成分等を吸着することができ、特に、表面が酸性の物質を効率よく吸着し、除去することができる複合材及びその製造方法に関する。本発明の複合材は、空気清浄用フィルタ、マスク用フィルタ等、各種のフィルタなどとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
従前より、活性炭、ゼオライト、粘土等の多孔性物質などが固体物質捕捉用フィルタとして知られており、特に、活性炭及びゼオライトは悪臭成分等の特定の気体を吸着する物質としても多用されている。また、水酸アパタイト等のリン酸カルシウム系化合物が細菌及びウィルス等、並びに悪臭成分などを吸着する性質を利用したリン酸カルシウム系フィルタ(特開昭61−235752号公報)も知られている。
【0003】
更に、繊維、紙等の有機高分子基材の表面にリン酸カルシウム系粒子を結合剤を使用して担持させたもの(特開平3−207414号公報、特開平5−115572号公報及び特開平6−106012号公報)、或いは予め繊維パルプ及びリン酸カルシウム系粒子と結合剤とを混合し、抄紙して複合フィルタとしたものも知られている。また、生体内の骨形成反応を模倣し、結合剤を使用しないで基材の表面に水酸アパタイト皮膜を形成したフィルタ材も開示されている(特開平10−099622号公報)。更に、フッ素イオンを含む擬似体液を使用し、水酸アパタイト結晶にフッ素を導入することにより、水に対する溶解性を低下させる手法も知られている[Panjian Li等、Biomaterials vol.14,No.13,p963−968(1993)]。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、リン酸カルシウム系粒子を結合剤により担持させたもの、及び抄紙により形成される複合フィルタでは、結合剤によりリン酸カルシウム系粒子の一部が被覆されてしまい本来の吸着性能が損なわれる傾向にある。また、結合剤を用いずに形成された水酸アパタイト皮膜を有する上記のフィルタ材では、水酸アパタイト結晶が細かいため、特に、高湿度雰囲気等において水に溶解することがある等の理由により、ウィルス等に対する吸着性能が十分に発揮されないことがある。更に、上記文献に記載の方法によりフッ素を導入しても、結晶性が低く、水に溶解する傾向にあり、高湿度雰囲気、或いは水中において長期に渡って使用することは困難である。
【0005】
本発明は、基材と、フッ素を含む柱状の水酸アパタイト結晶の集合体を有する皮膜と、を備え、特に、皮膜は、これらの結晶の間に形成される空隙を有し、細菌、ウィルス等に対する吸着性能に優れ、表面が酸性の物質をより効率よく吸着し、除去することができる複合材及びその製造方法を提供することを目的とする。また、高湿度雰囲気、或いは水中において、長期に渡って優れた吸着性能が維持される複合材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1発明の複合材は、基材と、該基材の表面に形成される皮膜とを備える複合材であって、該皮膜は、柱状のフッ素含有水酸アパタイト結晶の集合体を有することを特徴とする。
この皮膜は、第2発明のように、フッ素含有水酸アパタイト結晶の間に形成され、皮膜の表面に開口する空隙を有することが好ましい。それによって、細菌、ウィルス等に対してより優れた吸着性能を有する複合材とすることができる。
【0007】
上記「柱状のフッ素含有水酸アパタイト結晶」(以下、「HAp結晶」と略記する。)がほぼ一定方向に成長した場合は、これらの結晶の間には実質的に空隙が形成されない。それでも皮膜の表面において細菌、ウィルス等が吸着されるが、通常、HAp結晶は各々ランダムな方向を有し、これらのHAp結晶の間に上記「空隙」が形成される。また、少なくとも一部のHAp結晶は相互に連接していてもよい。そして、各々の空隙は上記「皮膜」の表面に開口しており、細菌、ウィルス、動植物細胞及び悪臭成分等がより効率よく吸着され、除去される。尚、これらの空隙の少なくとも一部は相互に連通していてもよい。更に、皮膜は、HAp結晶の間に形成される閉鎖孔を有していてもよい。
【0008】
上記「柱状」とは、HAp結晶の横断面が任意な形状を有し、この横断面における最大寸法(以下、「断面寸法」という。)が5nm以上(通常、500nm以下)であり、長さが0.015μm以上(通常、5μm以下)であって、横断面における最大寸法に対する長さの比が3以上、特に5以上であることを意味する。横断面は、通常、ほぼ四角形、三角形等の角柱状であり、横断面における最大寸法に対する最小寸法の比は1/1〜1/3程度であればよい。このHAp結晶の表面には、突起、或いは凹部等があってもよく、また、略直状体でも、湾曲していてもよく、一部が直状であり、他の部分が湾曲していてもよい。
このHAp結晶は、c軸配向により形成され、カルシウム成分を多く含む面の割合が高く、表面が酸性の物質をより効率的に吸着することができる。
【0009】
HAp結晶の方向が一定でなければ、それらの方向にかかわらず結晶間には所要の空隙が形成されるが、少なくとも一部のHAp結晶は、その長さ方向が、基材の表面に対して30〜90°、特に、第3発明のように、45〜90°の角度を有していることが好ましい。基材に対してこのような角度であり、且つ各々がランダムな方向を有しているHAp結晶であれば、細菌等の吸着に適した空隙が容易に形成され、特に優れた吸着性能を有する複合材とすることができる。
【0010】
HAp結晶の断面寸法は、第4発明のように、10〜300nmであることが好ましい。この寸法は、特に50〜280nm、更には100〜250nmであることがより好ましい。断面寸法が10nm未満であると、その部分での結晶の強度が小さくなり、破損することがある。一方、この寸法が300nmを越える場合は、結晶間に形成される空隙が減少し、細菌、ウィルス、動植物細胞及び悪臭成分等を吸着する作用が低下する。また、HAp結晶の長さは、第5発明のように、0.03〜3μmであることが好ましい。この長さは、特に0.1〜2μm、更には0.2〜1.5μmであることが好ましい。この範囲の断面寸法及び長さのHAp結晶であれば、所要の形状及び大きさを有する空隙が容易に形成され、吸着性能に優れた複合材とすることができる。
【0011】
各々のHAp結晶の側面の間に空隙が形成される場合、針状及び球状等の結晶により形成される空隙に比べて十分な広さ及び深さを有している。そのため、細菌等の比較的大きなものも効率よく吸着することができる。一方、悪臭成分等の比較的小さな分子を吸着する際には、より多くの吸着点が存在することが好ましい。そのためには、より表面積の大きいHAp結晶とする必要があり、第4発明の範囲の断面寸法及び第5発明の範囲の長さを有し、且つ前記のように断面方向における最大寸法に対する長さの比が、3〜10、特に5〜7であることが好ましい。
【0012】
尚、HAp結晶の断面寸法が10〜300nmであり、長さが0.03〜3μmであって、且つ断面方向における最大寸法に対する長さの比が3〜10であることが好ましい。更に、断面寸法が120〜280nmであり、長さが0.1〜2μmであって、且つ断面方向における最大寸法に対する長さの比が4〜9であることがより好ましく、断面寸法が100〜250nmであり、長さが0.2〜1.5μmであって、且つ断面方向における最大寸法に対する長さの比が5〜7であることが特に好ましい。
【0013】
HAp結晶に含有されるフッ素は、第6発明のように、0.2〜1質量%であることが好ましい。このようにフッ素を含有させることにより水への溶解を十分に抑えることができ、結晶の形状を柱状とすることができる。例えば、複合材を中性付近の水と所定時間接触させた際のHAp結晶からのカルシウムの溶出量は、フッ素を含有しないHAp結晶の場合と比べて40〜50%程度少なくすることができる。そのため、この複合材は、高湿度雰囲気、或いは水中において長期に渡って使用することができる。フッ素の含有量が0.2質量%未満であると、結晶が板状となり、表面が酸性である物質の吸着効率が低下する。一方、1質量%を越えるフッ素を含有させることは容易ではない。
【0014】
皮膜の厚さは、第7発明のように0.25〜15μmであることが好ましい。この厚さは、特に0.5〜15μm、更には1〜10μmであることがより好ましい。皮膜の厚さが0.25μm未満であると、細菌、ウィルス、動植物細胞及び悪臭成分等を吸着する作用が不十分となり、特に、高湿度雰囲気等における長期間の使用も困難になる。一方、この厚さが15μmを越える場合は、皮膜が基材の表面から剥離し易くなる。
【0015】
上記「基材」は、穴、溝及び貫通孔等を有していることが好ましく、この貫通孔が連通していることがより好ましい。このような基材としては、第8発明のように、繊維が挙げられる。また、第9発明のように、織物、不織布、編物、フェルト、樹脂発泡体、多孔質フィルム又は多孔質中空糸膜が挙げられる。織物、不織布、編物、フェルトとしては各種の天然繊維及び合成繊維からなるものを使用することができる。樹脂発泡体としては、ポリオレフィン、ポリスチレン及びポリウレタン等からなるものを使用することができ、多孔質フィルム及び多孔質中空糸膜としては、ポリエチレン及びポリプロピレン等の樹脂からなるものを使用することができる。これらの基材は、複合材の目的、用途等に応じて適宜のものを選んで使用することができる。
【0016】
穴、溝、特に貫通孔を有する基材を備える複合材であれば、細菌等を含む気体或いは液体の流通、透過が容易となり、優れた吸着性能を有するフィルタ材とすることができる。更に、HAp結晶の間に形成される空隙が基材の穴、溝、貫通孔と連通しておれば、気体或いは液体の流通、透過は特に容易となり、より優れた吸着性能を有するフィルタ材とすることができる。
【0017】
また、これらの基材は親水性であることが好ましい。基材が疎水性である場合は、基材と水との親和性に劣り、水酸アパタイト結晶が成長するサイトが均一に形成されず、結晶の速やかな成長も損なわれる。そのため、疎水性の基材には、親水基を導入することが好ましく、或いは基材の表面を予め粗面化しておくことが好ましい。
【0018】
第10発明の複合材の製造方法は、カルシウムイオンを含み、リン酸イオンを含まない第1水溶液に基材を浸漬し、該第1水溶液から該基材を取り出して乾燥し、その後、この基材を、リン酸イオンを含み、カルシウムイオンを含まないpH8以上の第2水溶液に浸漬し、該第2水溶液から該基材を取り出し、次いで、この基材を、フッ素イオン濃度が0.03〜0.1mMであり、マグネシウムイオン及び炭酸イオンを含まず、且つ実質的に飽和乃至過飽和濃度の水酸アパタイト成分が溶解している第3水溶液に浸漬し、上記基材の表面に柱状のHAp結晶を生成させることを特徴とする。
【0019】
第10発明において、上記「第1水溶液」は「リン酸イオン」を、上記「第2水溶液」は「カルシウムイオン」を実質的に含まない。第1及び第2水溶液の少なくとも一方が、リン酸イオンとカルシウムイオンとを含む場合は、リン酸カルシウム化合物が生成し、沈殿する。そのため、これらの水溶液において水酸アパアタイト結晶を生成させるためのリン酸イオン及びカルシウムイオンの濃度が維持されず、結晶が生成しない。
【0020】
第2水溶液のpHは「8以上」であり、8.5以上、特に9以上のアルカリ性領域に調整することが好ましい。このように、基材近傍をリン酸カルシウム化合物が析出し易い塩基性にすることにより、基材の表面に中性付近で析出するリン酸カルシウム化合物をより多く析出させることができる。それによって、HAp結晶の集合体、或いはこの結晶と、その前駆体とが混在する集合体を、効率よく生成させることができる。尚、基材を第2水溶液から取り出した後、乾燥することが好ましい。この乾燥によりHAp結晶の核が基材に強固に固着される。また、基材を第2水溶液から取り出した後に水洗により基材表面の過剰のリン酸イオンを除去することが好ましい。この水洗により、第3水溶液に浸漬した際の沈殿生成を防止することができる。
【0021】
上記「第3水溶液」では、フッ素イオンの濃度を0.03mM以上とすることにより、結晶のc軸方向への成長を促進することができるため、結晶の形状は柱状となる。また、これらの結晶を、基材の表面と30〜90°、特に45〜90°の角度のランダムな方向へと成長させることができ、結晶の間に多くの空隙を容易に形成することができる。
【0022】
この第3水溶液は、マグネシウムイオン及び炭酸イオンを実質的に含まない。マグネシウムイオンが含有される場合は、水酸アパタイトの結晶性が低下する。また、炭酸イオンが含有される場合は、水酸アパタイトの結晶性が低下したり、生成する結晶の寸法が小さくなる。
【0023】
第10発明では、第3水溶液がマグネシウムイオン及び炭酸イオンを含まないため、HAp結晶の結晶性を高くすることができ、水に対する溶解性を更に低下させることができる。そのため、高湿度雰囲気等においても、その優れた吸着性能がより長期に渡って維持される。また、これら2種類のイオンを溶液に含有させる必要がないため、溶液を容易に調製することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明する。
実施例1
(1)第1水溶液への不織布の浸漬
純水に塩化カルシウムを50mMの濃度となるように溶解し、第1水溶液を調製した。この水溶液に重量0.1gの100%セルロースからなる不織布(旭化成株式会社製、商品名「ベンリーゼ」、目付量;13.5g/m2、厚み;0.05mm、以下、単に「不織布」という。)を浸漬した。浸漬時間は60分とした。その後、この不織布を表面に水溶液が付着したまま60℃に調温された恒温槽に入れて乾燥させた。
【0025】
(2)第2水溶液への不織布の浸漬
乾燥後の不織布を、第2リン酸カリウムの濃度が50mMであり、pHが約8.9になるように調整された第2水溶液に浸漬した。浸漬時間は60分とした。次いで、不織布をこの水溶液から引き上げ、水で洗浄した後、60℃に調温された恒温槽に入れて乾燥させた。
【0026】
(3)第3水溶液への不織布の浸漬
乾燥後の不織布を、更に、表1に示す各イオン組成及び濃度であり、塩酸とトリスヒドロキシアミノメタンによりpHが7.4になるように調整された500mlの第3水溶液に浸漬した。浸漬時間は7日間とし、温度は恒温槽にて36.5℃に保持し、HAp結晶を析出させた。その後、不織布をこの水溶液から引き上げ、水で洗浄した後、60℃に調温された恒温槽に入れて乾燥させた。
【0027】
【表1】
【0028】
このようにして得られた不織布を形成する繊維の表面にはHAp結晶が析出しており、結晶中のフッ素含有量をイオンクロマトグラフィーにより定量したところ0.2質量%であった。また、この不織布を走査型電子顕微鏡により10000倍にて観察し、撮影した図1の写真によれば、断面の一辺が約100nmの略角柱状の結晶が、不織布の繊維表面に対して45〜90゜の角度で、ランダムな方向に成長していることが分かる。尚、同様の工程によってアルミナ基板の表面に析出させたHAp結晶のX線回折の結果を示す図2のチャートによれば、002面に相当する回折ピークが大きく、c軸方向に配向していることが分かる。即ち、カルシウム成分の多いac面及びbc面の割合が高いことが分かる。このことから、上記の不織布を形成する繊維の表面に析出したHAp結晶においても、同様にc軸方向に配向しており、カルシウム成分の多いac面及びbc面の割合が高いことが推察される。
【0029】
また、約0.2gの不織布を、pH7のトリス緩衝液1リットルにそれぞれ24時間攪拌しながら浸漬し、浸漬後の不織布の質量変化(下記の式により算出した)及び緩衝液に溶出したカルシウムイオンの濃度(イオンクロマトグラフィーにより定量した)を評価した。その結果、不織布の質量減少率は25%であり、カルシウムイオン濃度は9μg/リットルであった。
質量減少率(%)=[(浸漬前質量−浸漬後質量)/浸漬前質量]×100
【0030】
実施例2
第3水溶液のイオン組成及び各イオンの濃度を表2のようにした他は、実施例1と同様にして繊維表面にHAp結晶の集合体を備える皮膜が形成された不織布を作製した。
【0031】
【表2】
【0032】
得られた不織布について、実施例1と同様にして結晶中のフッ素含有量を定量したところ1質量%であった。また、実施例1と同様にして結晶の形状、方向等を確認したところ、断面の一辺が約300nmの略角柱状の結晶が、不織布の繊維表面に対して45〜90゜の角度で、ランダムな方向に成長していることが分かった。更に、この結晶のX線回折の結果によれば、c軸方向に配向しており、カルシウム成分の多いac面及びbc面の割合が高いことが分かった。また、実施例1と同様にして不織布の質量変化及び緩衝液に溶出したカルシウムイオンの濃度を評価した。その結果、不織布の質量減少率は22%、カルシウムイオン濃度は8μg/リットルであり、実施例1で調製した不織布より更に水に対する溶解性が抑えられていることが分かった。
【0033】
比較例1
第3水溶液のイオン組成を表3のようにマグネシウムイオン、炭酸イオン及び硫酸イオンを含む他は実施例1とほぼ同様のものとし、実施例1と同様にして繊維表面にHAp結晶の集合体を備える皮膜が形成された不織布を作製した。
【0034】
【表3】
【0035】
得られた不織布について、実施例1と同様にして結晶中のフッ素含有量を定量したところ0.2質量%であった。また、実施例1と同様にして不織布の質量変化及び緩衝液に溶出したカルシウムイオンの濃度を評価した。その結果、不織布の質量減少率は48%、カルシウムイオン濃度は18μg/リットルであり、同量のフッ素を含有する実施例1で調製した不織布より水に対する溶解性が高いことが分かる。これはフッ素の他にマグネシウム及び炭酸を含有するため、結晶性が低下したためであると考えられる。
【0036】
比較例2
第3水溶液のイオン組成を表4のようにマグネシウムイオン、炭酸イオン及び硫酸イオンを含む他は実施例2とほぼ同様のものとし、実施例1と同様にして繊維表面にHAp結晶の集合体を備える皮膜が形成された不織布を作製した。
【0037】
【表4】
【0038】
得られた不織布について、実施例1と同様にして結晶中のフッ素含有量を定量したところ1質量%であった。また、実施例1と同様にして不織布の質量変化及び緩衝液に溶出したカルシウムイオンの濃度を評価した。その結果、不織布の質量減少率は40%、カルシウムイオン濃度は15μg/リットルであり、同量のフッ素を含有する実施例2で調製した不織布より水に対する溶解性が高いことが分かる。これはフッ素の他にマグネシウム及び炭酸を含有するため、結晶性が低下したためであると考えられる。
【0039】
尚、本発明においては、上記の具体的な実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、第1乃至第3水溶液の組成及び基材の種類等は、得られる複合材の吸着性能等に実質的に影響を及ぼさない範囲で変更することができる。また、マグネシウムイオン、炭酸イオン及び硫酸イオンは、不可避不純物程度は含まれていてもよい。
【0040】
【発明の効果】
第1乃至第2発明によれば、繊維等の表面に、フッ素を含む水酸アパタイト結晶の集合体を備える、或いはこの集合体と結晶の間に形成される空隙と、を備える皮膜が形成された複合材が得られる。空隙は皮膜の表面に開口しており、この複合材は、細菌、ウィルス、動植物細胞及び悪臭成分等の吸着性能に優れ、特に、結晶が塩基性の表面の割合が高い柱状であるため、酸性物質を効率よく吸着することができる。また、水への溶解が十分に抑えられ、高湿度雰囲気等においても優れた吸着性能が長期に渡って維持される。更に、第3乃至第9発明によれば、より優れた吸着性能を有する複合材とすることができる。
【0041】
また、第10発明によれば、第1乃至第9発明の複合材を容易に製造することができる。特に、この製造方法では、HAp結晶の結晶性を高くすることができ、水に対する溶解性が更に低下し、高湿度雰囲気等における優れた吸着性能がより長期に渡って維持される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において作製した皮膜を備える不織布の表面を走査型電子顕微鏡により観察し、撮影した倍率10000倍の写真である。
【図2】実施例1において作製した皮膜を備える不織布の表面のX線回折のチャートである。
Claims (10)
- 基材と、該基材の表面に形成される皮膜とを備える複合材であって、該皮膜は、柱状のフッ素含有水酸アパタイト結晶の集合体を有し、該フッ素含有水酸アパタイト結晶の長さ方向が、上記基材の表面に対して平行ではないことを特徴とする複合材。
- 上記皮膜は、上記フッ素含有水酸アパタイト結晶の間に形成され、上記皮膜の表面に開口する空隙を有する請求項1記載の複合材。
- 上記フッ素含有水酸アパタイト結晶の長さ方向が、上記基材の表面に対して45〜90°の角度を有する請求項1又は2記載の複合材。
- 上記フッ素含有水酸アパタイト結晶の断面方向の寸法が10〜300nmである請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の複合材。
- 上記フッ素含有水酸アパタイト結晶の長さが0.03〜3μmである請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の複合材。
- 上記フッ素含有水酸アパタイト結晶が0.2〜1質量%のフッ素を含有する請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の複合材。
- 上記皮膜の厚さが0.25〜15μmである請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載の複合材。
- 上記基材が繊維である請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の複合材。
- 上記基材が織物、不織布、編物、フェルト、樹脂発泡体、多孔質フィルム又は多孔質中空糸膜である請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の複合材。
- カルシウムイオンを含み、リン酸イオンを含まない第1水溶液に基材を浸漬し、該第1水溶液から該基材を取り出して乾燥し、その後、この基材を、リン酸イオンを含み、カルシウムイオンを含まないpH8以上の第2水溶液に浸漬し、該第2水溶液から該基材を取り出し、次いで、この基材を、フッ素イオン濃度が0.03〜0.1mMであり、マグネシウムイオン及び炭酸イオンを含まず、且つ実質的に飽和乃至過飽和濃度の水酸アパタイト成分が溶解している第3水溶液に浸漬し、上記基材の表面に柱状のフッ素含有水酸アパタイト結晶を生成させることを特徴とする複合材の製造方法。
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