JP4467865B2 - 金型部材の加工方法及び製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、微細形状を有する金型部材の加工方法、金型部材の製造方法、押出ダイス、押出材の製造方法及び押出材に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、金型部材である押出ダイス等には、熱間ダイス鋼や超硬合金のように耐摩耗性に優れた材料が用いられている。これらの材料は硬く、加工が困難であり、一般に材料の強度により加工性が阻害されることのないワイヤ放電加工や形彫放電加工といった放電現象を加工原理とした加工法が多く用いられている。
【0003】
しかし、放電加工では、放電による材料の熱的な溶融除去現象を利用しているため、加工物表面には母材と質的に異なった溶融残留層(加工変質層)が形成されてしまう。
【0004】
この層は、溶融、急冷によって組織が変態したのもので、マイクロクラックや硬化層(油中加工の場合)、軟化層(水中加工の場合)、引張残留応力を含んでいる。押出ダイスには高い圧力が加わるので、表面にこのような溶融残留層が存在すると、破壊の起点としてマイクロクラックが作用し、ダイスの寿命が短くなるという問題がある。また、表面処理を行った場合にも、表面処理層の剥離の原因となり、表面処理の寿命が短くなるという問題もある。
【0005】
このように、放電加工後に金型部材の被加工部分の表面に存在する溶融残留層は金型部材にとって有害であるるため、一般に、放電加工後に溶融残留層を除去することが行われている。
【0006】
従来、このような金型部材の溶融残留層の除去方法として、エメリー紙による研磨、ガム研磨、ショットブラスト、バレル加工、ホーニング等による除去方法が提案されている(例えば特開平10−156424号公報、特開平11−123444号公報、特開平11−244934号公報、特開平11−277131号公報)。また、電解研磨により除去する方法も提案されている(例えば特開平9−41123号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような溶融残留層の除去方法では、放電加工部分が例えば溝幅0.3mm未満の溝を含む微細形状を有するものである場合には、前記微細形状に対応できない上、除去処理に際して当たりの強いところ、弱いところが生じて加工形状にだれが発生し、加工寸法精度が低下してしまうという欠点があった。
【0008】
また、電解研磨による除去方法では、金型材料が超硬合金である場合、電解腐食により優先的に除去される部分が発生するため、材料の特性を十分に引き出すことができないという問題があった。
【0009】
また、一般の研削盤による除去では、微細な加工形状の場合に十分な除去処理を行うことが困難であった。具体的には、溝幅0.3mm程度の微細形状部分に対して深い(例えば幅の10倍以上)範囲の除去処理を行うことは困難であった。しかも、除去処理に用いるツールとして、一般的な円盤状のものを用いると、除去処理を行える範囲が限定されてしまうとか、円盤状以外の断面円柱形状や角柱形状のツールを用いた場合には、ツール径が0.3mm未満になるとツールを研削盤に真っ直ぐに取り付けることが困難となり、偏心による偏荷重が生じてツールが破損してしまい、満足な除去処理を行うことができない、というような問題もあった。
【0010】
この発明は、上記のような技術的背景に鑑みてなされたものであって、微細な放電加工形状を有する金型部材の前記微細形状部分の溶融残留層(加工変質層)を、均一に精度良く除去することができ、長寿命化、高機能化を図ることができる金型部材の加工方法、金型部材の製造方法、押出ダイス、押出材の製造方法及び押出材を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、金型部材における放電加工された加工部分の表面に生じている溶融残留層を、ワイヤ放電研削法により製作されたツールを用いて除去することを特徴とする金型部材の加工方法によって解決される。
【0012】
ここで、ワイヤ放電研削法は、放電加工法の一種であり、その特徴は▲1▼ツールを成形するのに、ワイヤ電極を用いた放電現象を利用しているが、ワイヤ電極線をガイドするワイヤガイドがワイヤ電極をバックアップしているため、ツール成形時の加工(放電)反力による、ツール加工精度の低下がない、▲2▼ツール成形にワイヤ電極線を用いているため、常に新しい面で成形を行っており、電極材料の消耗の影響がない、▲3▼放電現象による加工法であるので、導電性さえ確保できれば、材料の硬度には関係なく加工でき、そのため、焼結ダイヤモンドやタングステン、超硬合金等のダイス材料よりも硬いツールを容易に製作することができる、というような特徴がある。また、上記▲1▼、▲2▼の理由から、加工精度も高いので微小なツールを製造することもできる。
【0013】
このようにワイヤ放電研削法によれば、加工精度が高く高硬度で微小なツールを製作することができ、このツールを用いて、金型部材における放電加工によって加工部に生じた溶融残留層を除去するから、該溶融残留層を均一にまた高精度に除去することができる。
【0014】
前記ツールを用いた溶融残留層の除去は、旋削加工により行っても良いし、超音波加工により行っても良い。また、放電加工された加工部分が溝幅0.03mm以上0.3mm未満、さらに好ましくは0.05〜0.25mmの溝を含む微細形状を有するものである場合であっても、十分な溶融残留層の除去を行うことができる。
【0015】
また、前記ツールによる溶融残留層の除去は、前記ツールの製作に用いたツール取付工具からツールを取り外すことなく行うものとしても良い。これによれば、製作したツールをツール取付工具から取り外すことなく、そのまま金型部材の溶融残留層の除去処理に用いるので、ツール取り付け時の偏心取り付け等の問題を生じることがない。
【0016】
金型部材の一例として押出ダイスが挙げられる。この場合には、溶融残留層を均一にまた高精度に除去した押出ダイスが得られる。
【0017】
また、前記課題は、加工素材を放電加工した後、加工部分の表面に生じている溶融残留層を、ワイヤ放電研削法により製作されたツールを用いて除去することを特徴とする金型部材の製造方法によっても解決される。
【0018】
この金型部材の製造方法によれば、加工精度が高く高硬度で微小なツールを製作することができ、このツールを用いて、放電加工によって加工部に生じた溶融残留層を除去するから、該溶融残留層が均一にまた高精度に除去された金型部材の製造が可能となる。
【0019】
この製造方法においても、溶融残留層の除去は、旋削加工により行っても良いし、超音波加工により行っても良い。また、放電加工された加工部分が溝幅0.03mm以上0.3mm未満、さらに好ましくは0.05〜0.25mmの溝を含む微細形状を有するものであってもよい。また、溶融残留層の除去は、前記ツールの製作に用いたツール取付工具からツールを取り外すことなく行うものとしても良いし、金型部材が押出ダイスであっても良い。
【0020】
また、前記課題は、放電加工された加工部分の表面に生じている溶融残留層が、ワイヤ放電研削法により製作されたツールを用いて除去されてなることを特徴とする押出ダイスによっても解決される。
【0021】
この押出ダイスでは、加工精度が高く高硬度で微小なツールを用いて、放電加工部に生じた溶融残留層を除去することができるから、該溶融残留層が均一にまた高精度に除去された長寿命で高機能を実現できる押出ダイスとなる。
【0022】
この押出ダイスにおいても、溶融残留層の除去は、旋削加工により行っても良いし、超音波加工により行っても良い。また、放電加工された加工部分が溝幅0.3mm以下の溝を含む微細形状を有するものであってもよい。
【0023】
また、前記課題は、放電加工された加工部分の表面に生じている溶融残留層が、ワイヤ放電研削法により製作されたツールを用いて除去されてなる押出ダイスを用い、ビレットを押し出すことを特徴とする押出材の製造方法によっても解決される。
【0024】
この押出材の製造方法によれば、放電加工部の溶融残留層が均一にまた高精度に除去された押出ダイスを用いて押出しが行われるので、寸法精度も高く表面性状にも優れた押出材を得ることができる。
【0025】
この押出材の製造方法においても、溶融残留層の除去は、旋削加工により行っても良いし、超音波加工により行っても良い。また、放電加工された加工部分が溝幅0.03mm以上0.3mm未満、さらに好ましくは0.05〜0.25mmの溝を含む微細形状を有するものであってもよい。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
この実施形態は、金型部材が押出ダイスである場合を示すものである。また、この押出ダイスによって製造される押出材は、図8に示されるように、仕切壁201を介して多数の微細中空部202が幅方向に列設されたアルミニウム(その合金を含む)製扁平多穴管200であり、熱交換器の冷媒流通用の熱交換管に用いられるものである。
【0031】
図1は、この発明の一実施形態に係る押出ダイス1のマンドレル2を示す斜視図、図2は同じくダイス雌型3の押出方向後方(入側)から見た正面図、図3は前記ダイス雌型3とマンドレル2とを組み合わせた状態での図1のIII−III線断面図、図4は図3のIV−IV線断面図である。
【0032】
図1〜図4において、前記ダイス雌型3は、その押出方向後面の中央部に、アルミニウム管の外周形状に対応する扁平の開口部31を有するとともに、この開口部31に連通する態様で、ダイス雌型3の軸方向を貫通する押出材通過孔32が形成されている。また、前記開口部31の縁部に、アルミニウム管の外周面を規定するベアリンク部33が形成されている。
【0033】
一方、前記マンドレル2は、扁平状のマンドレル本体21と、マンドレル本体21の先端部から串歯状に一体突出し、幅方向(図4の左右方向)に溝部12を隔てて列設された複数個の柱状体22とを有している。
【0034】
前記マンドレル本体21における前記柱状体22との連設部23は、厚み方向(図4の上下方向)の両外面が先端に向かって先細となる傾斜面となされており、押出時にマンドレル本体21の厚み方向の両側の成形材料が、柱状体22に向かって流れ込みやすくなっている。
【0035】
前記柱状体22は、前記アルミニウム管200の中空部202をそれぞれ形成するためのものであり、その先端部の形状は、前記各中空部202の断面形状に対応しており、柱状体22の先端外周部が、前記アルミニウム管100の中空部内周面を規定するベアリング部25となされている。
【0036】
また、前記柱状体22の幅は、この実施形態では、基端部からベアリング部25に到るまで同じであり、かつ幅方向の両側面(溝部12の内面)26がベアリング部に到るまで段差のない平坦面に形成されている。
【0037】
前記マンドレル2における溝部12を含む柱状体22の形状は、周知の放電加工により形成されたものである。また、ダイス雌型3の開口部31も放電加工により形成されたものである。この放電加工により、放電加工面には溶融残留層(加工変質層)が生じる。そこで、この実施形態では放電加工後に、所定のツールを用いて前記溶融残留層の除去処理を行っている。この点については後述する。
【0038】
上記構成のマンドレル2が、その柱状体22の先端のベアリング部25とダイス雌型3のベアリング部33とが対向するように、柱状体22の先端部をダイス雌型3の開口部31に臨ませて配置され、ダイス1が構成される。なお、マンドレル2は、必要に応じて図示しない支持体に焼き嵌め等により固定支持された状態でダイス雌型3と組み合わされても良い。
【0039】
この状態で、ダイス1がセットされた図示しないコンテナに、成形材料としてのアルミニウムビレットを装填し、常法に従って押出を実施する。押圧によってアルミニウム成形材料はマンドレル2の厚み方向両側に流れ込み、柱状体22のベアリング部25とダイス雌型のベアリング部33との間の隙間11から押し出されると同時に、隣接柱状体22同士の間の溝部12にも供給されて、溝部先端(隣接柱状体22のベアリング部25間の隙間)からも押し出される。そして、成形材料が連続的に押し出されることにより、図8に示したような断面形状のアルミニウム押出管200が製造される。
【0040】
前記マンドレル2及びダイス雌型3は、ダイス用原盤からワイヤ放電や形彫放電といった放電加工法により所要形状、所要寸法に成形される。ダイス材料は特に限定されることはなく、放電加工可能な各種超硬合金、導電性セラミックス、非導電性セラミックス(補助電極法により放電加工が可能である)、各種ダイス鋼などを適宜用いうる。このような材料で成形されたマンドレル2及びダイス雌型3の加工面に形成された溶融残留層を、ワイヤ放電研削法により製作されたツールを用いて除去する。
【0041】
図5は、溶融残留層の除去装置を示す斜視図である。この除去装置は、前記ツールを製作するためのワイヤ放電研削装置を兼用している。また、図6はツール製作時におけるツール部分を角度を変えて拡大した状態の斜視図である。
【0042】
図5に示した溶融残留層の除去装置は、水平面内のY軸方向に移動自在な下側ステージ51と、この下側ステージ51上に水平面内のX軸方向に移動自在に設けられた上側ステージ52と、この上側ステージ52に設けられた加工液充填用の加工槽53と、上側ステージ52に固定されたワイヤ放電研削ユニット54と、上下(Z軸方向)に移動可能でありかつ回転可能なツール取付工具55とを備えており、前記上下のステージ51、52により前記加工槽53及びワイヤ放電研削ユニット54は水平面内で移動自在となっている。そして、前記加工槽53の所定位置に、溶融残留層を除去される被加工部材としてのマンドレル2が固定されている。この実施形態では、前記マンドレル2における溝12の内面26の溶融残留層を除去するものとする。
【0043】
まず、ツールの製作に際しては、前記ツール取付工具55の下端部に、ツール材料60を取り付ける。また、前記ワイヤ放電研削ユニット54は、図6に示すように、ワイヤガイド541と、このワイヤガイド541に沿ってゆっくりと連続的に走行する直径0.1mm程度の金属ワイヤ542とを備え、この金属ワイヤ542を加工電極として用い、金属ワイヤ542のツール材料60との対向部を放電部543として、ツール取付工具55に取り付けられたツール材料60の放電加工を行う。
【0044】
この放電加工時には、前記ワイヤガイド541がワイヤ542をツール材料60に対して後方から支持しているため、ツール成形時の加工(放電)反力による、ツール加工精度の低下がないうえ、連続的に供給されるワイヤ542をツール成形のための電極に用いるため、ワイヤ542の常に新しい面で成形を行うことができ、電極材料の消耗の影響がないというような利点を有し、このため、加工精度も高く5ミクロンというような微小なツールを製造することができる。しかも、放電現象による加工法であるので、導電性さえ確保できれば、材料の硬度には関係なく加工でき、そのため、焼結ダイヤモンドやタングステン、超硬合金等のダイス材料と同等の硬さかそれ以上の硬さのツールを容易に製作することができる、というような利点をも有する。
【0045】
この実施形態では、ツール70は、ダイス材料と同等以上の硬さの材料例えば焼結ダイヤモンドを、溝12の幅G(図1bに示す)よりも小さな径の断面円形に加工することにより形成されたものである。なお、断面円形のツール70を形成するには、ツール材料を回転させながらワイヤ放電研削を行えばよい。また、ツール70の断面形状は円形に限定されることはなく、溶融残留層の除去加工時の加工屑の排出効率を高めるために、断面角柱やその他の形状に設定しても良い。断面角柱状のツールを形成する場合は、ツール材料60を連続的に回転させることなくツール材料の側面を加工すればよい。
【0046】
ツール70の製作後、前記マンドレル2の溝部12の内面(加工面)26に生じている溶融残留層の除去処理を行う。この除去処理は、前記ツール70の下方位置にマンドレル2の被加工部位が位置するように、上下ステージ51、52を移動させるとともに、ツール取付工具55の上下運動及び回転運動と、上下ステージ51、52によるマンドレル2のXY平面内での移動とを組み合わせながら行う。
【0047】
図7は、ワイヤ放電研削法により製作されたツール70を用いて溶融残留層を除去している状態を示す斜視図である。
【0048】
この実施形態では、前記ツール70を溝部12に先端側からはめ込んで溝部12の内面26に接触させた状態で、前記ツール取付工具55を上下(Z軸方向)に移動させてツール70を太矢印で示す溝部12の深さ方向に追い込みながら、上下ステージ51、52の移動により前記ツール70を細矢印で示す溝部12の長さ方向基端側に移動させ、溝部12の内面26の溶融残留層を完全に研削除去する。ツール70は高硬度で高精度に加工されているから、ツール70と溝部内面26との接触不均一を生じることなく、溝部12の寸法を高精度に維持しながら溶融残留層を除去することができる。また、ツール70を微小なものに製作できるから、溝部12の幅が例えば0.03mm以上0.3mm未満の微細形状であっても溶融残留層の除去が可能となる。より好ましくは、溝幅0.05〜0.25mmの溝を有する微細形状に対して前記ツール70を用いた溶融残留層の除去を行うのがよい。しかも、ツール70はツール製作段階からツール取付工具55に取り付けられたまま、取り外されていないので、ツール70の偏心取り付けによる偏荷重の発生等の問題もなく、溶融残留層を均一に除去することができる。
【0049】
上記のようなツール70による溶融残留層の研削除去加工は、砥粒を用いて行っても良いし、砥粒を用いることなく行っても良い。また、研削ではなく、超音波加工により除去しても良い。この超音波加工は、被加工部材の加工面26とツール70の間に砥粒を付与した状態で、ツール70に超音波振動を付与し、溶融残留層を除去する方法である。
【0050】
また、除去加工は、必ずしも放電加工面の全体に施す必要はなく、押出時の応力が集中して破損しやすい部分のみに施しても良い。
【0051】
さらに、溶融残留層の除去前に、前処理として、被加工部材の加工面にマイクロ放電加工を行うものとしてもよい。マイクロ放電加工はその加工エネルギが微小であるため、加工面に生じている溶融残留層を薄くすることができる。また、電解加工(イオン交換水での加工を含む)や表面酸化処理を実施して、溶融残留層を脆くしておき、前記ツール70による溶融残留層の除去処理を容易にしてもよい。
【0052】
上記実施形態では、マンドレル2の溝部12の内面26の溶融残留層を除去する場合を示したが、ダイス雌型3の開口部31の内周面であるベアリング部33や、その他マンドレル2あるいはダイス雌型3の放電加工面に対して、溶融残留層を適宜除去すればよい。
【0053】
放電加工面の溶融残留層を除去された押出ダイス1は、そのまま使用しても良いし、あるいは押出材の表面性状の改善等の目的で、溶融残留層を除去された加工面に表面処理を施して用いても良い。溶融残留層は高精度かつ均一に除去されているから、表面処理皮膜の密着性が増大し、表面処理皮膜の耐久性が向上する。
【0054】
なお、以上の実施形態においては、金型部材が押出ダイス1である場合を示したが、他の金型部材に本発明を適用できることはいうまでもない。
【0055】
【実施例】
(実施例1)
この実施形態に係る効果を示すため、以下のような試験を行った。
【0056】
即ち、図8に示すような断面矩形の中空部202が幅方向に列設されたアルミニウム管200を押し出すダイス1として、断面矩形の柱状体22を有するマンドレル2を備えたダイス鋼からなるものを4個用意した。ここに、柱状体22のベアリング部25における高さを0.7mm、幅W(図1b)を0.4mm、隣接柱状体22間の溝部12の幅Gを0.1mm、ダイス雌型3の開口部31の長さを16.0mm、開口部31の高さ(幅)を1mmに設定し、ダイスの加工は放電加工により行った。
【0057】
そして、1個のダイスについては、溝部12の内面26を含む放電加工面の溶融残留層を、ワイヤ放電研削法により製作された焼結ダイヤモンド製の断面円形のツール(直径0.08mm)を用いた研削法(砥粒使用せず)により除去した。ツール70はツール取付工具55に取り付けられて製作された状態のままのものを使用した。また、他の1個のダイスについては、同様に放電加工面の溶融残留層を除去した後、表面処理として、PCVD法により厚さ5μmのTiAlN皮膜を形成した。
【0058】
また、他の1個のダイスについては、放電加工後の溶融残留層を除去することなく、放電加工上がりのままとした。
【0059】
さらに、他の1個のダイスについては、放電加工後の溶融残留層を除去することなく、前記と同じ表面処理を実施した。
【0060】
以上4種類のダイスを用いて、アルミニウムビレットを押し出したときのダイス1の耐久性を調べた。具体的には、マンドレル2の少なくとも一部が破壊されるまで、あるいは表面処理を実施したものについては、加工面の表面処理皮膜が剥離するまでの押出量を調べた。その結果を図9に示す。
【0061】
図9では、溶融残留層の除去処理を行わなかったダイスが「放電仕上げ」と記載されたものであり、溶融残留層の除去処理を行ったダイスが「研削仕上げ」と記載されたものである。また各グラフ上方の数字はマンドレルの破壊または表面処理皮膜の剥離に至るまでの押出量を示す。
【0062】
図9から理解されるように、溶融残留層の除去処理、表面処理を行わなかったダイスでは、押出量が1.1トンであったのに対し、溶融残留層の除去処理のみを行い表面処理を行わなかったダイスは、押出量が2.2トンであり、ダイス寿命がほぼ2倍になっていることがわかる。また、表面処理のみ行ったダイスでは、押出量が0.7トンであったのに対し、溶融残留層の除去処理後に表面処理を行ったダイスでは、押出量が1.2トンであり、表面処理皮膜の耐久性も格段に向上していることがわかる。
(実施例2)
実施例1と同じ形式のダイス1を用い、放電加工後に図10に示した各種の方法により、加工面における溶融残留層を除去するに際し、柱状体22のベアリンク部25の高さを0.7mm、柱状体22の幅W2を0.4mmに設定した状態で、隣接柱状体22間の溝部12の幅Gをそれぞれ変化させて前記除去処理を行った。そして、溝部12の内面26に放電加工面が残存する状態となったとき(溶融残留層の除去が不十分となったとき)、柱状体22の角部にR0.05以上のだれを生じたとき、あるいは除去処理中にマンドレル2(柱状体22)に破損が生じたときのいずれかの状態が発生したときにおける溝部12の幅Gを、その除去処理の限界と見なして、その値を求めた。その結果を図10に示す。
【0063】
図10において、各グラフ上方の数値は前記限界時の溝部12の幅Gを示す。また、図10中「WEDG+研削」と記されたものは、本発明の実施に係る、ワイヤ放電研削法により製作されたツールを用いての研削加工(砥粒使用)による除去処理を示す。同じく、「WEDG+超音波」と記されたものは、本発明の実施に係る、ワイヤ放電研削法により製作されたツールを用いての超音波加工による除去処理を示す。ツール70としてはいずれも、実施例1と同じものを用いた。
【0064】
図10からわかるように、本発明実施品では、溶融残留層の除去処理の限界が、溝部12の幅Gで0.05mmまたは0.03mmであったのに対し、エメリー紙研磨の場合には0.5mm、ガム研磨の場合には0.35mm、微粒子ピーニングの場合には0.3mm、研削盤による研削加工の場合には0.3mm、バレル加工の場合には0.3mm、超音波加工の場合には0.4mmであった。
【0065】
このように、本発明の実施によれば、従来よりも押出ダイスの寿命を延ばすことができるとともに、より微細な形状の溶融残留層の除去処理が可能となるものであることを確認し得た。また、実施例2の結果から、溝部12の幅が0.3mm以下の微細形状の時に特に有効であることもわかる。
【0066】
【発明の効果】
この発明に係る金型部材の加工方法及びこの発明に係る金型部材の製造方法によれば、放電加工面に生じている溶融残留層を、均一にまた高精度に除去することができるから、金型部材の寿命を延ばすことができるとともに、金型部材に表面処理を実施した場合にも、表面処理皮膜の劣化を防止でき、長期にわたって高機能を発揮しうる押出ダイス等の金型部材を提供できる。
【0067】
この発明に係る押出ダイスによれば、加工精度が高く高硬度で微小なツールを用いて、放電加工部に生じた溶融残留層を除去することができるから、該溶融残留層が均一にまた高精度に除去された長寿命で高機能を実現できる押出ダイスとなる。
【0068】
この発明に係る押出材の製造方法によれば、放電加工部の溶融残留層が均一にまた高精度に除去された押出ダイスを用いて押出しが行われるので、寸法精度も高く表面性状にも優れた押出材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、この発明の一実施形態に係る押出ダイスのマンドレルを示す斜視図、(b)は柱状体の平面図である。
【図2】同じく押出ダイスの雌型ダイスを押出方向後方(入側)から見た正面図である。
【図3】雌型ダイスとマンドレルとを組み合わせた押出ダイスの要部断面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】ツールの製作を兼用した、溶融残留層の除去装置の斜視図である。
【図6】図5の加工装置のツール製作時の加工状態を示す斜視図である。
【図7】ツールを用いて溶融残留層の除去を行っている状態の斜視図である。
【図8】図1〜4のダイスによって製造される押出アルミニウム管の断面斜視図である。
【図9】実施例で行った押出ダイスの寿命試験の結果を示すグラフである。
【図10】実施例で行った溶融残留層の各種除去処理の限界を調べるための試験の結果を示す斜視図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・押出ダイス
2・・・・・・・マンドレル
3・・・・・・・ダイス雌型
12・・・・・・溝部
26・・・・・・溝部内面(加工面)
50・・・・・・溶融残留層の除去装置
70・・・・・・ツール
Claims (10)
- 超硬合金、導電性セラミックス、非導電性セラミックスのいずれかからなる金型部材における放電加工された加工部分の表面に生じている溶融残留層を、ワイヤ放電研削法により製作された直径0.3mm未満の断面円形の焼結ダイヤモンドからなるツールを用い、かつツールの製作に用いたツール取付工具からツールを取り外すことなく除去することを特徴とする金型部材の加工方法。
- ワイヤ放電研削法により製作されたツールを用いた研削加工により、溶融残留層を除去する請求項1に記載の金型部材の加工方法。
- ワイヤ放電研削法により製作されたツールを用いた超音波加工により、溶融残留層を除去する請求項1に記載の金型部材の加工方法。
- 加工部分が溝幅0.03mm以上0.3mm未満の溝を含む微細形状を有する請求項1ないし3のいずれかに記載の金型部材の加工方法。
- 前記金型部材が押出ダイスである請求項1ないし4のいずれかに記載の金型部材の加工方法。
- 超硬合金、導電性セラミックス、非導電性セラミックスのいずれかからなる加工素材を放電加工した後、加工部分の表面に生じている溶融残留層を、ワイヤ放電研削法により製作された直径0.3mm未満の断面円形の焼結ダイヤモンドからなるツールを用い、かつツールの製作に用いたツール取付工具からツールを取り外すことなく除去することを特徴とする金型部材の製造方法。
- ワイヤ放電研削法により製作されたツールを用いた研削加工により、溶融残留層を除去する請求項6に記載の金型部材の製造方法。
- ワイヤ放電研削法により製作されたツールを用いた超音波加工により、溶融残留層を除去する請求項6に記載の金型部材の製造方法。
- 加工部分が溝幅0.03mm以上0.3mm未満の溝を含む微細形状を有する請求項6ないし8のいずれかに記載の金型部材の製造方法。
- 前記金型部材が押出ダイスである請求項6ないし9のいずれかに記載の金型部材の製造方法。
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