[第1の参考例]
本発明の第1の参考例によるシリコン基板の評価方法及び装置について図1乃至図3を用いて説明する。
シリコン基板の評価装置
本参考例によるシリコン基板の評価装置を図1に示す。
図1に示す評価装置は、フーリエ変換赤外分光法(FTIR:FourierTransform Infrared Spectroscopy)による外部反射方式の赤外吸収スペクトル測定装置である。
試料移動ステージ14上には、評価されるべき試料としてシリコン基板18が載置され、参照される基準基板として金薄膜蒸着基板19が載置されている。試料移動ステージ14の右側の照明系から入射された赤外光がシリコン基板18又は金薄膜蒸着基板19の表面で反射され、その反射光が左側の測定系により測定、解析される。
測定当初は、図1に示すように、シリコン基板18が測定位置に位置している。試料移動ステージ14の右側の照明系には、赤外光を発光する光源10が設けられ、光源10の出射側に干渉計11と偏光子12が設けられている。
光源10からの赤外光は干渉計11及び偏光子12を介して平行光線束となって出射される。偏光子12を設けることにより、入射面に電場が平行であるP波の赤外光又は入射面に電場が垂直であるS波の赤外光が出射される。
出射された赤外光は凹面鏡13により反射、集光されて、シリコン基板18の法線から傾いた角度で入射する。凹面鏡13を回転、移動することにより入射角度を変えることができる。シリコン基板18からの反射光は凹面鏡15により反射し、平行光線束となって、MCT(MercuryCadmium Telluride)検出器16に入射される。MCT検出器16はシ
リコン基板18からの反射光を検出する。MCT検出器16からの検出信号は演算部17に入力される。演算部17は、シリコン基板18又は金薄膜蒸着基板19表面の反射率を演算し、後述するようにシリコン基板の誘電関数を求める。
本参考例では、凹面鏡14及び15を回転することにより、シリコン基板18に対して異なる角度で入射する複数の入射光を照射するようにし、異なる入射角の複数の入射光に対するシリコン基板18からの反射光をそれぞれ測定する。
また、偏光子12を90°回転することにより、入射面に対して電場が垂直又は平行に偏光された入射光を照射するようにし、異なる偏光方向の複数の入射光に対するシリコン基板18からの反射光をそれぞれ測定する。
次に、試料移動ステージ14を移動することにより、金薄膜蒸着基板19を測定位置に位置させる。金薄膜蒸着基板19に対して、同様にして、異なる入射角の複数の入射光に対するシリコン基板18からの反射光又は異なる偏光方向の複数の入射光に対するシリコン基板18からの反射光を測定する。
シリコン基板18及び金薄膜蒸着基板19の反射光から、入射角度又は偏光方向を変えた複数の条件における反射率を演算し、複数の条件の反射率に基づいて、シリコン基板の誘電関数を求める。
このようにして求めた誘電関数に基づいてシリコン基板を評価する。
なお、本参考例のシリコン基板の評価方法では、誘電体表面で反射する光に関し、電場が入射面内に偏光された光で、反射率がゼロになる入射角であるブリュースター角近傍の反射率は、シリコン基板の誘電関数に敏感でないため、より正確に求めるために、ブリュースター角近傍以外の角度の反射率を用いることにより、シリコン基板の誘電関数を正確に求めることができる。
シリコン基板のブリュースター角は75度近くである。
シリコン基板の評価方法の原理
次に、本参考例のシリコン基板の評価方法の原理について説明する。
本参考例によるシリコン基板の評価方法において、シリコン基板からの反射率Rは次式のように表わされる。
なお、次式においてε、ηは複素数として取り扱う。
上式から、誘電率εが与えられれば、実測される反射率Rのシュミレーションを行うことができることがわかる。逆に、実測された反射率Rからシリコン基板の誘電率εを求めることができる。シリコン基板の反射率を求める場合、反射光の強度と共に入射光の強度をも正確に測定する必要がある。しかしながら、照射系内において光強度を測定しても、シリコン基板の入射光の強度を正確に知ることはできない。
したがって、本参考例では、光の反射率が非常に高い金の薄膜を表面に形成した金薄膜蒸着基板19からの反射光の強度を測定し、これを入射光の強度とする。
シリコン基板の評価方法
図2に、複数の条件の入射光を照射したシリコン基板18及び金薄膜蒸着基板19の反射光から求めた反射率によってシリコン基板18の誘電関数を求める方法の手順を示す。
まず、初期値として、偏光方向、入射角θ、誘電率εを設定する(ステップS11)。
入射角θと誘電率εは測定条件から知ることができる。
次に、設定された誘電率εから反射率を計算する(ステップS12)。
次に、計算された反射率と実測された反射率とを比較する(ステップS13)。
そして、反射率の計算値と実測値の差が最小となるように、設定された誘電率εの値を変えて、ステップS11からステップS12を繰り返す。
最終的に、反射率の計算値と実測値の差が最小となったときの誘電率εをシリコン基板18の誘電率とする。
このような処理を必要な波数領域にわたって行うことにより、シリコン基板18の誘電関数を求めることができる。
参考例1−1
図3に複数の条件の入射光を照射してときの反射率の実測値を示す。横軸は基板法線に対する入射光の角度であり、縦軸は反射率である。
測定に当たっては、波数約900〜1400cm-1の入射光を用い、45度、70度、80度の入射角に対して、それぞれS偏光とP偏光の光を用いて測定した。
図3において、波数約1100cmー1での測定点Aは、入射面に対して電場を平行に
偏光した入射光(P偏光)を入射しときの反射率の測定値である。測定点Bは、入射面に対して電場を垂直に偏光した入射光(S偏光)を入射しときの反射率の測定値である。
図3の測定値を用いて、上述した方法によりシリコン基板の誘電率を求めた。その結果、これら測定値に適合する誘電率εが約14であることがわかった。逆に、誘電率εを約14と設定して、入射角と反射率の関係を計算したところ、図3の曲線Cs、Cpが得られた。曲線CsはS偏光に対するグラフであり、曲線CpはP偏光に対するグラフである。
図3から明らかなように、測定点A、Bは曲線Cs、Cpに合致しており、求めた誘電率が正確であることがわかる。図3は特定の波数に対する参考例として示したが、各波数に対して同様の処理を行えば所定の波数領域におけるシリコン基板の誘電関数を正確に求めることができる。
[第2の参考例]
本発明の第2の参考例によるシリコン酸化膜の評価方法及び装置について図4乃至図6を用いて説明する。
シリコン酸化膜の評価装置
本参考によるシリコン酸化膜の評価装置を図4に示す。
図4に示す評価装置の中央には、ウエーハ20上のシリコン酸化膜を評価するために測定評価装置21が設けられている。測定評価装置21の内部について説明する、試料ステージ(図示せず)上に、評価されるべきウエーハ20が載置される。移動ステージの右側の照明系から入射された赤外光がウエーハ20の表面で反射され、その反射光が左側の測定系により測定、解析される。
試料ステージの右側の照明系には、赤外光を発光する光源22が設けられ、光源22の出射側に干渉計23と偏光子24が設けられている。光源22からの赤外光は干渉計23及び偏光子24を介して平行光線束となって出射される。偏光子24を設けることにより、入射面に電場が平行であるP波の赤外光又は入射面に電場が垂直であるS波の赤外光が出射される。
出射された赤外光はウエーハ20に法線から傾いた角度で入射する。ウエーハ20からの反射光は、MCT(Mercury Cadmium Telluride)検出器25に入射される。MCT検出器25はウエーハ20からの反射光を検出する。MCT検出器25からの検出信号は演算部26に入力される。演算部26は、ウエーハ20表面の反射率を演算し、後述するようにシリコン酸化膜の誘電関数を求める。
測定評価装置21の左側にはシリコン酸化膜成膜装置27が設けられている。このシリコン酸化膜成膜装置27は溶液処理によりシリコン酸化膜を形成する装置である。シリコン酸化膜成膜装置27には、酸化処理用溶液(硝酸(H2SO4)と過酸化水素水(H2O2)の混合液)の溶液槽28が設けられている。
なお、シリコン酸化膜成膜装置27としては、化学気相堆積法によりシリコン酸化膜を成膜する装置でもよいし、熱酸化によりシリコン酸化膜を成膜する装置でもよい。
測定評価装置21の右側にはシリコン層成膜装置29が設けられている。このシリコン層成膜装置29は化学気相堆積法によりシリコン層を堆積する装置である。
なお、シリコン層成膜装置29としては、他の方法によりシリコン層を堆積する装置でもよい。シリコン層成膜装置29の手前にはウエーハ20を搬出入するための搬出入口30が設けられている。
次に、本参考例によるシリコン酸化膜の評価装置を用いた評価方法について説明する。評価されるべきウエーハ20には、裏面からの反射の影響を取り除くために内部に赤外光を吸収する不純物濃度の高い赤外吸収領域(図示せず)が設けられている。
まず、評価されるべきウエーハ20を搬出入口30を介してシリコン層成膜装置29に搬入する。シリコン層成膜装置29では、ウエーハ20表面を洗浄した後に、ウエーハ20上に実際の半導体装置における不純物濃度のシリコン層を成膜する。このときシリコン層の厚さは、測定評価装置21における測定においては検出されない程度の薄さであって、ウエーハ20内部の不純物による影響を遮断することができる程度の厚さであることが必要である。例えば、シリコン層の厚さは1μm以下であることが望ましい。
次に、シリコン層成膜装置29からシリコン酸化膜成膜装置27にウエーハ20を移し、シリコン層表面にシリコン酸化膜を成膜する。このシリコン酸化膜は、実際の半導体装置における不純物濃度のシリコン層上に成膜され、シリコン基板の不純物濃度の影響を受けない。
次に、シリコン酸化膜成膜装置27から測定評価装置21にウエーハ20を移し、シリコン酸化膜を赤外外部反射法により測定評価を行なう。
シリコン酸化膜の評価方法の原理
本参考例によるシリコン酸化膜の評価方法の原理について図5を用いて説明する。
図5に示すように、シリコン基板20中に赤外光を吸収する赤外光吸収領域20aを設けることにより、シリコン基板20の被測定側ではない界面からの反射成分を無視できるようにしている。赤外光吸収領域20aには高濃度の不純物が添加されている。
しかしながら、このようなシリコン基板20上にシリコン酸化膜31を直接形成すると、基板内部の高濃度の不純物がシリコン酸化膜31の膜質に影響を与える。
本参考例では、このような不純物による影響を除去するため、シリコン基板20上に実際の半導体装置において用いられる不純物濃度のシリコン層32を形成し、このシリコン層32上にシリコン酸化膜31を形成する。
これにより、基板内部の高濃度の不純物による影響を除去して、実際の半導体装置におけるシリコン酸化膜と同じ膜質のシリコン酸化膜31を得ることができる。
しかも、シリコン層32の厚さを1μm以下にすれば、シリコン層32の界面での反射によって赤外光の位相は大きく変化することがないため、シリコン層32が測定結果に影響することはない。
なお、シリコン層の厚さが1μm以上になると、干渉縞が観察され、シリコン酸化膜の正確な評価ができなくなる。したがって、実際の半導体装置に用いられるものと同等なシリコン酸化膜を正確に評価することができる。
なお、本参考例が適用されるシリコン基板としては内部に赤外光吸収領域が設けられたものに限らない。裏面からの反射光による影響を除去するために厚いシリコン基板に適用してもよいし、他のいかなるシリコン基板に適用してもよい。他のシリコン基板の場合でも、シリコン基板上に実際の半導体装置と同等なシリコン層を設けることにより実際の半導体装置に有用な評価結果を得ることができる。
参考例2−1
図6にシリコン酸化膜の評価例を示す。横軸は波数、縦軸は反射率である。
本参考例では、不純物濃度が1014atoms/cm3のシリコン基板上に、不純物を
含まないシリコン層を膜厚0.1μm形成した。シリコン酸化膜は処理溶液(硝酸(H2
SO4)と過酸化水素水(H2O2)の混合液)によりシリコン層上に成膜され、赤外外部
反射法により測定した。
図5にはシリコン酸化膜の特徴的なピークが観察されており、シリコン層を設けたことによりシリコン基板の不純物からの影響がなくなり、しかも、シリコン層の存在により干渉縞が生じるなどの影響がないことがわかる。
[第3の参考例]
本発明の第3の参考例によるシリコン基板の表面化学結合状態の評価方法及び装置について図7乃至図9を用いて説明する。
シリコン基板の表面化学結合状態の評価装置
本参考例によるシリコン基板の表面化学結合状態の評価装置を図7に示す。
図7に示す評価装置の中央には、ウエーハ20上のシリコン酸化膜を評価するために測定評価装置21が設けられている。測定評価装置21の内部について説明する、試料ステージ(図示せず)上に、評価されるべきウエーハ20が載置される。移動ステージの右側の照明系から入射された赤外光がウエーハ20の表面で反射され、その反射光が左側の測定系により測定、解析される。
試料ステージの右側の照明系には、赤外光を発光する光源22が設けられ、光源22の出射側に干渉計23と偏光子24が設けられている。光源22からの赤外光は干渉計23及び偏光子24を介して平行光線束となって出射される。偏光子24を設けることにより、入射面に電場が平行であるP波の赤外光又は入射面に電場が垂直であるS波の赤外光が出射される。
出射された赤外光はウエーハ20に法線から傾いた角度で入射する。ウエーハ20からの反射光は、MCT検出器25に入射される。MCT検出器25はウエーハ20からの反射光を検出する。MCT検出器25からの検出信号は演算部26に入力される。演算部26は、ウエーハ20表面の反射率を演算し、後述するようにシリコン酸化膜の誘電関数を求める。
測定評価装置21の左側には洗浄装置33が設けられている。この洗浄装置33は溶液処理によりシリコン基板の表面を洗浄する装置である。洗浄装置33には、洗浄用溶液(フッ化アンモニウム(NH4F)溶液)の溶液槽34が設けられている。
なお、洗浄装置33としては、ふっ素ドライエッチングのような気相法によりシリコン基板表面を洗浄する装置でもよいし、他の方法によりシリコン基板の表面を洗浄する装置でもよい。
測定評価装置21の右側にはシリコン層成膜装置29が設けられている。このシリコン層成膜装置29は化学気相堆積法によりシリコン層を堆積する装置である。なお、シリコン層成膜装置29としては、他の方法によりシリコン層を堆積する装置でもよい。シリコン層成膜装置29の手前にはウエーハ20を搬出入するための搬出入口30が設けられている。
次に、本参考例によるシリコン基板の表面化学結合状態の評価装置を用いた評価方法について説明する。評価されるべきウエーハ20には、裏面からの反射の影響を取り除くために内部に赤外光を吸収する不純物濃度の高い赤外吸収領域(図示せず)が設けられている。
まず、評価されるべきウエーハ20を搬出入口30を介してシリコン層成膜装置29に搬入する。シリコン層成膜装置29では、ウエーハ20表面を洗浄した後に、ウエーハ20上に実際の半導体装置における不純物濃度のシリコン層を成膜する。
このときシリコン層の厚さは、測定評価装置21における測定においては検出されない程度の薄さであって、ウエーハ20内部の不純物による影響を遮断することができる程度の厚さであることが必要である。例えば、シリコン層の厚さは1μm以下であることが望ましい。
次に、シリコン層成膜装置29から洗浄装置33にウエーハ20を移し、シリコン基板
の表面を洗浄する。このときのウエーハ20の表面状態は、実際の半導体装置における不純物濃度のシリコン層の表面状態となり、シリコン基板の不純物濃度の影響を受けない。
次に、洗浄装置33から測定評価装置21にウエーハ20を移し、シリコン酸化膜を赤外外部反射法により測定評価を行なう。
シリコン基板の表面化学結合状態の評価方法の原理
本参考例によるシリコン基板の表面化学結合状態の評価方法の原理について図8を用いて説明する。
図8に示すように、シリコン基板20中に赤外光を吸収する赤外光吸収領域20aを設けることにより、シリコン基板20の被測定側ではない界面からの反射成分を無視できるようにしている。赤外光吸収領域20aには高濃度の不純物が添加されている。
しかしながら、このようなシリコン基板20上にシリコン酸化膜31を直接形成すると、基板内部の高濃度の不純物がシリコン基板20の表面化学結合状態に影響を与える。
本参考例では、このような不純物による影響を除去するため、シリコン基板20上に実際の半導体装置において用いられる不純物濃度のシリコン層32を形成し、このシリコン層32の表面を洗浄する。
これにより、基板内部の高濃度の不純物による影響を除去して、実際の半導体装置と同様な表面化学結合状態を得ることができる。しかも、シリコン層32の厚さを1μm以下にすれば、シリコン層32の界面での反射によって赤外光の位相は大きく変化することがないため、シリコン層32が測定結果に影響することはない。
なお、シリコン層の厚さが1μm以上になると、干渉縞が観察され、シリコン酸化膜の正確な評価ができなくなる。したがって、実際の半導体装置と同等なシリコン基板の表面化学結合状態を正確に評価することができる。
なお、本参考例が適用されるシリコン基板としては内部に赤外光吸収領域が設けられたものに限らない。裏面からの反射光による影響を除去するために厚く形成したシリコン基板に適用してもよいし、他のいかなるシリコン基板に適用してもよい。他のシリコン基板の場合でも、シリコン基板上に実際の半導体装置と同等なシリコン層を設けることにより実際の半導体装置に有用な評価結果を得ることができる。
参考例3−1
図9にシリコン酸化膜の評価例を示す。横軸は波数、縦軸は反射率である。
本参考例では、不純物濃度が1014atoms/cm3のシリコン基板上に、不純物を
含まないシリコン層を膜厚0.1μm形成した。シリコン酸化膜は処理溶液(硝酸(H2
SO4)と過酸化水素水(H2O2)の混合液)によりシリコン層上に成膜され、赤外外部
反射法により測定した。
図9にはシリコン水素結合の特徴的なピークが観察されており、シリコン層を設けたことによりシリコン基板の不純物からの影響がなくなり、しかも、シリコン層の存在により干渉縞が生じるなどの影響がないことがわかる。
なお、本参考例により評価することができるとシリコン基板の表面化学結合状態としては、シリコン水素結合に限らず、シリコンふっ素結合、シリコン水酸基結合等の他の表面化学結合状態でもよい。
[第4の参考例]
本発明の第4の参考例による半導体装置の製造方法及び装置について図10を用いて説明する。
本参考例による半導体装置の製造装置を図10に示す。
図10の中央には、ウエーハ20を評価するために測定評価装置21が設けられている。測定評価装置21の内部について説明する、試料ステージ(図示せず)上に、評価されるべきウエーハ20が載置される。移動ステージの右側の照明系から入射された赤外光がウエーハ20の表面で反射され、その反射光が左側の測定系により測定、解析される。
試料ステージの右側の照明系には、赤外光を発光する光源22が設けられ、光源22の出射側に干渉計23と偏光子24が設けられている。光源22からの赤外光は干渉計23及び偏光子24を介して平行光線束となって出射される。偏光子24を設けることにより、入射面に電場が平行であるP波の赤外光又は入射面に電場が垂直であるS波の赤外光が出射される。
出射された赤外光はウエーハ20に法線から傾いた角度で入射する。ウエーハ20からの反射光は、MCT検出器25に入射される。MCT検出器25はウエーハ20からの反射光を検出する。MCT検出器25からの検出信号は演算部26に入力される。演算部26は、ウエーハ20表面の反射率を演算し、後述するようにシリコン酸化膜の誘電関数を求める。
測定評価装置21の左側には洗浄装置35が設けられている。この洗浄装置35は溶液処理によりシリコン基板の表面を洗浄する装置である。洗浄装置35には、洗浄用溶液(フッ化アンモニウム(NH4F)の溶液槽36が設けられている。
なお、洗浄装置36としては、ふっ素ドライエッチングのような気相法によりシリコン基板表面を洗浄する装置でもよいし、他の方法によりシリコン基板の表面を洗浄する装置でもよい。
洗浄装置35の上側にはシリコン酸化膜成膜装置37が設けられている。このシリコン酸化膜成膜装置37は熱処理によりシリコン酸化膜を形成する装置である。シリコン酸化膜成膜装置37にはヒータ38が設けられている。
なお、シリコン酸化膜成膜装置27としては、化学気相堆積法によりシリコン酸化膜を成膜する装置でもよいし、溶液処理によりシリコン酸化膜を成膜する装置でもよい。
測定評価装置21の右側にはシリコン層成膜装置29が設けられている。このシリコン層成膜装置29は化学気相堆積法によりシリコン層を堆積する装置である。
なお、シリコン層成膜装置29としては、他の方法によりシリコン層を堆積する装置でもよい。シリコン層成膜装置29の手前にはウエーハ20を搬出入するための搬出入口30が設けられている。
次に、本参考例による半導体装置の製造装置を用いた製造方法について説明する。
本参考例ではシリコン基板上にシリコン酸化膜を形成する製造工程が実施される。まず、ウエーハ20を搬出入口30を介して搬入し、洗浄装置35によりウエーハ20表面を洗浄して表面の汚染物や自然酸化膜を除去する。次に、シリコン層成膜装置29に搬入する。シリコン層成膜装置29では、ウエーハ20上に実際の半導体装置における不純物濃度のシリコン層を成膜する。このときシリコン層の厚さは、測定評価装置21における測定においては検出されない程度の薄さであって、ウエーハ20内部の不純物による影響を遮断することができる程度の厚さであることが必要である。例えば、シリコン層の厚さは1μm以下であることが望ましい。
次に、シリコン層成膜装置29から洗浄装置35にウエーハ20を移し、ウエーハ20表面を洗浄する。その後、洗浄装置35から測定評価装置21にウエーハ20を移し、シリコン基板の表面化学結合状態を赤外外部反射法により測定評価する。次に、測定評価装置21からシリコン酸化膜成膜装置37にウエーハ20を移し、ウエーハ20表面に熱酸化によりシリコン酸化膜を形成する。その後、シリコン酸化膜成膜装置37から測定評価装置21にウエーハ20を移し、成膜されたシリコン酸化膜を赤外外部反射法により測定評価する。
このように本参考例によれば、成膜後、直ちにインラインでシリコン酸化膜の良不良をチェックすることができるので、不良な半導体装置の製造を極力減少することができ、製造コストを低減することができる。
また、シリコン酸化膜を成膜する前後で評価を行なっているので、シリコン基板の表面状態と成膜されたシリコン酸化膜の膜質との関連を知って、製造工程の改善を図ることができる。
[第1の実施例]
本発明の第1の実施例によるシリコン酸化膜の評価方法及び装置について図11乃至図22を用いて説明する。
シリコン酸化膜の評価方法の概要
図11に、2つ以上の角度の入射角による反射率から誘電関数を求める方法の手順を示す。
まず、初期値として、入射角θと、膜厚tと、屈折率nとを設定する(ステップS21)。入射角θは測定条件から知ることができ、膜厚tは別の測定方法により測定する。屈折率nとしては、シリコン酸化膜として取り得る誘電率ε(=n2)の範囲内にある複数
の値を設定する。
次に、上述した式から、設定された複数の屈折率nに対する反射率Rをそれぞれ求める(ステップS22)。これにより、屈折率nと反射率Rの計算値の関係を示すグラフが求まる。
次に、屈折率nと反射率Rの計算値との関係を示すグラフを用いて、反射率Rの実測値から逆にシリコン酸化膜の屈折率nを求める(ステップS23)。求めた屈折率nから、誘電率ε(=n2 )を求めることができる。
上述したステップS1〜S3による誘電率ε(=n2 )の演算を、必要な波数領域に亘って行うことにより、誘電関数を求めることができる。
このような方法により、測定された反射率から複素数である誘電率を導出するために、入射角度の異なる複数の測定条件から導かれる連立方程式の解を求める。
しかしながら、この連立方程式は解析的には解くことができないので、反復法を用いて近似根を求める。
反復法の原理
反復法の詳細について説明する。反復法とは次の方程式
f(X)=0 (1)
の実根を逐次近似的に求める手法である。但し、Xは複数の値、例えば、複素数の実部と虚部の係数を示している。
式(1)を次式
X=F(X) (2)
のように変形し、粗い近似根X0 から出発して、
X0 =F(X0 )
X1 =F(X1 )
X2 =F(X2 )
と、逐次近似的に根を求めていく方法である。一般に反復式
Xk+1 =F(Xk ) (k=0,1,2,…)
を繰り返し、収束判定条件、例えば、次式
|Xk+1 −Xk |/|Xk |≦δ (δ:収束判定条件)
を満足するまで行えばよい。
F(X)の与え方で反復法の種類が定まる。例えば、ニュートン・ラプソン法では次のようにF(X)が決定される。ここでは説明を簡単にするために1変数の場合を例として説明する。
(1)式の真の根αの第k近似値をxk 、誤差をδk とすると、
α=xk +δk (3)
式(1)、(3)から次式
f(α)=f(xk +δk )=0 (4)
が成立する。
式(4)をxk の近傍でテイラー展開すると次式のようになる。
f(xk +δk )=f(xk )+δk f′(xk)+δk 2 f″(xk )/2!+
・・・
(xk <ζ<α) (5)
δk が十分に小さいと仮定すると、δk の二次以上の項は無視できるから、次式が成立する。
0=f(xk +δk )=f(xk )+δk f′(xk)
これから次式が成立する。
δk =−f(xk )/f′(xk ) (6)
式(3)、(6)から次式が成立する。
α=xk +δk =xk −f(xk )/f′(xk ) (7)
これを用いて次のニュートン・ラプソンの反復式を得る。
xk+1 =xk −f(xk )/f′(xk ) (k=0,1,2,…)
なお、上記収束判定条件は一例であって様々な形式のものを使用することができる。
この反復法においては、粗い近似根xk として不適切な値を選ぶと、収束が遅くなったり、収束しなかったりすることがある。さらに悪い場合には、最適根以外の所に収束してしまうこともある。
図12(a)は粗い近似根として適切な値を選んで収束した例を示す。
図12(b)、図13(a)、(b)は粗い近似根として不適切な値を選んだためにうまく収束しなかった例を示す。図12(b)は、最適根までの間に極値が含まれているため収束しなかった例である。図13(a)は、収束せず循環してしまった例である。図13(b)は本来求めるべき最適根ではない値に収束してしまった例である。
シリコン酸化膜の評価方法
1回の反復法により求まるのは、ある波数での誘電率である。したがって、所定の波数領域にわたり、各波数に対して上述した反復法を適用することで、波数に対する誘電率の関数、すなわち、誘電関数ε(ω)を得ることができる。各波数に対する誘電関数ε(ω)を求めて連続な誘電関数スペクトルを求める為には、各波数に対して粗い近似根εoを選ぶ必要がある。
したがって、この粗い近似根εoは波数ωの関数εo(ω)となる。この粗い近似根εo(ω)を適切に与えるようにしたのが、本実施例による評価方法である。
本実施例による誘電関数を求める方法について図14乃至図17のフローチャートを用いて説明する。
最初に、波数ωjについて説明する。測定できる波数に対する反射率のスペクトルは離散的な波数に対する反射率のスペクトルである。隣り合った波数は、十分にスペクトルの連続性を満足できるように近接している。波数ωjの添字jは、誘電関数スペクトルを導出するときの最初の波数ωoから数えてj+1番目の波数であることを示す。誘電関数スペクトルを導出するときの最後の波数をωlとする。εk(ωj)は、波数ωjに対して誘電関数を求める為に適用させた反復法の反復式の繰り返し回数がk回目のときに得られた誘電関数である。特に、εo(ωj)は反復法の初期値として用いる粗い近似根である。
まず、図14のフローチャートを用いて説明する。
まず、計算に必要な物性値、膜厚、屈折率、波数テーブルの設定を行う(ステップS31)。次に、波数ωjが誘電関数スペクトルを導出する際の一番最初の波数ωoか否か判断する(ステップS32)。波数ωjが一番最初の波数ωoであれば、波数ωoに対する誘電関数ε(ωo)を導出する(ステップS33)。ステップS33の詳細については後述する。
波数ωjが一番最初の波数ωoでなければ、反復法の初期値である粗い近似根εo(ωj)を一つ前の波数ωj-1 の誘電関数ε(ωj-1 )に設定する(ステップS34)。
誘電関数スペクトルは連続性があるため、このように粗い近似根εo(ωj)を設定することにより安定かつ高速に最適根を求めることができる。
この粗い近似根εo(ωj)を用いて反復法を実行する。反復法の反復回数kをリセッ
トし(ステップS35)、反復式εk+1(ωj)=F(εk(ωj))から近似根εk+1(ωj)を求める(ステップS36)。
そして、この近似根が所定の収束条件を満足しているか否か判断する(ステップS37)。
収束条件を満足していなければ反復回数を1増加し(ステップS38)、この近似根εk+1(ωj)を新たな粗い近似根εk(ωj)に設定し(ステップS39)、ステップS36に戻り、収束条件を満足するまで、これらステップS36〜S39を繰り返す。
収束条件を満足していれば、そのときの近似根εk+1(ωj)を波数ωjにおける誘電率ε(ωj)とする(ステップS40)。
続いて、現在の波数ωjが誘電関数スペクトルを導出する最終の波数ωlであるか否か判断する(ステップS41)。
最終の波数であれば誘電関数スペクトルの演算を全て終了する。最終の波数でなければ、波数ωjを次の波数ωj+1に設定し(ステップS42)、ステップS34に戻り、最終
の波数ωlになるまで、これらステップS34〜S42を繰り返す。
次に、図15のフローチャートを用いて、波数ωjが一番最初の波数ωoの時の誘電関数ε(ωo)の導出処理(ステップS33)の処理について説明する。一番最初の波数ωoの時の粗い近似根が不適切な値であると、前述したように適切に収束しなくなるので、この定め方が非常に重要である。本実施例は、最初の波数ωoの粗い近似根を適切な値に自動的に定めることを可能にしたものである。
まず、最初の波数ωoの粗い近似根εo(ωo)として、−5−5i≦Z≦5+5i内の任意の値Zを選択する(ステップS51)。この範囲内の値を選択すると経験的にうまく収束することがわかっている。この値Zを粗い近似根εo(ωo)として反復法を実行する。
まず、反復法の反復回数kをリセットし(ステップS52)、反復式εk+1(ωo)=F(εk(ωo))から近似根εk+1(ωo)を求める(ステップS53)。
そして、この近似根が所定の収束条件を満足しているか否か判断する(ステップS54)。
収束条件を満足していれば、そのときの近似根εk+1(ωo)を最初の波数ωoにおける誘電率ε(ωo)として(ステップS58)、図14のステップS41に処理を移す。収束条件を満足していなければ、まず、反復回数kが所定の最大値MAXを越えているか否か判断し(ステップS55)、最大値を越えていれば図16及び図17に示す処理を行う。最大値を越えていなければ、反復回数を1増加し(ステップS56)、この近似根εk+1(ωo)を新たな粗い近似根εk(ωo)に設定し(ステップS57)、ステップS53に戻り、収束条件を満足するか、反復回数kが所定の最大値MAXを越えるまで、これらステップS53〜S57を繰り返す。
次に、図16のフローチャートを用いて、粗い近似根εo(ωo)として最初に定めた任意の値Zでは何度反復してもうまく収束しない場合の処理について説明する。新たな粗い近似根εo(ωo)の候補値X、Yとして、最初の設定値Zから値Δだけ加算又は減算した値を選択する(ステップS61)。値Δは0≦Δ≦5+5iの範囲内の任意の値であ
る。この範囲内の値を選択すると経験的にうまく収束することがわかっている。
まず、候補値Xを粗い近似根εo(ωo)として反復法を実行する。反復法の反復回数kをリセットし(ステップS62)、反復式εk+1(ωo)=F(εk(ωo))から近似根εk+1(ωo)を求める(ステップS64)。そして、この近似根による収束条件の値δxを記憶し(ステップS65)、この値δxが収束条件を満足しているか否か判断する(ステップS66)。
収束条件を満足していれば、ステップS58に処理を移し、そのときの近似根εk+1(ωo)を最初の波数ωoにおける誘電率ε(ωo)として、図14のステップS41に処理を移す。
収束条件を満足していなければ、まず、反復回数kが所定の最大値MAXを越えているか否か判断し(ステップS67)、最大値を越えていれば後述する候補値Yを粗い近似根εo(ωo)として反復法を実行する。最大値を越えていなければ、反復回数を1増加し(ステップS68)、この近似根εk+1(ωo)を新たな粗い近似根εk(ωo)に設定し(ステップS69)、ステップS64に戻り、収束条件を満足するか、反復回数kが所定の最大値MAXを越えるまで、これらステップS64〜S69を繰り返す。
次に、粗い近似根εo(ωo)として候補値Xでは何度反復してもうまく収束しない場合には、候補値Yを粗い近似根εo(ωo)とする反復法を実行する。反復法の反復回数kをリセットし(ステップS71)、反復式εk+1(ωo)=F(εk(ωo))から近似根εk+1(ωo)を求める(ステップS73)。そして、この近似根による収束条件の値δyを記憶し(ステップS74)、この値δyが収束条件を満足しているか否か判断する(ステップS75)。
収束条件を満足していれば、ステップS58に処理を移し、そのときの近似根εk+1(ωo)を最初の波数ωoにおける誘電率ε(ωo)として、図14のステップS41に処理を移す。収束条件を満足していなければ、まず、反復回数kが所定の最大値MAXを越えているか否か判断し(ステップS76)、最大値を越えていれば候補値X、Yも不適切であったと判断して後述する図17に示す処理を実行する。最大値を越えていなければ、反復回数を1増加し(ステップS77)、この近似根εk+1(ωo)を新たな粗い近似根εk(ωo)に設定し(ステップS78)、ステップS73に戻り、収束条件を満足するか、反復回数kが所定の最大値MAXを越えるまで、これらステップS73〜S78を繰り返す。
次に、図17のフローチャートを用いて、粗い近似根εo(ωo)を候補値X、Yとしても、うまく収束しない場合の処理について説明する。
最初に、ステップS65とステップS74で記憶した候補値X、Yの場合の最終的な収束条件の値δx、δyを比較する(ステップS81)。図17の処理では、収束条件の値δx、δyが小さい方が収束状況が良いと判断し、良い方の候補値に更に値Δを加算又は減算した値を新たな粗い近似根εk(ωo)として設定し、反復法を実行する。
ステップS81で収束条件の値δxの方が値δyより小さいと判断されると、候補値XにΔを加算した値を新たな候補値Xに設定し(ステップS82)、反復法を実行する。
反復法の反復回数kをリセットし(ステップS83)、粗い近似根εo(ωo)とし新たな候補値Xを設定する(ステップS84)。
続いて、反復式εk+1(ωo)=F(εk(ωo))から近似根εk+1(ωo)を求める(ステップS85)。
そして、この近似根が所定の収束条件を満足しているか否か判断する(ステップS86)。
収束条件を満足していれば、ステップS58に処理を移し、そのときの近似根εk+1(ωo)を最初の波数ωoにおける誘電率ε(ωo)として、図14のステップS41に処理を移す。
収束条件を満足していなければ、まず、反復回数kが所定の最大値MAXを越えているか否か判断する(ステップS87)。
最大値を越えていなければ、反復回数を1増加し(ステップS88)、この近似根εk+1(ωo)を新たな粗い近似根εk(ωo)に設定し(ステップS89)、ステップS85に戻り、収束条件を満足するか、反復回数kが所定の最大値MAXを越えるまで、これらステップS85〜S89を繰り返す。
ステップS87で最大値を越えていると判断されると、ステップS82に戻り、候補値Xに更に値Δを加算して新たな候補値とし、最終的に収束するまでステップS82〜S89の処理を繰り返す。
ステップS81で収束条件の値δyの方が値δxより小さいと判断されると、候補値YからΔを減算した値を新たな候補値Yに設定し(ステップS91)、反復法を実行する。
反復法の反復回数kをリセットし(ステップS92)、粗い近似根εo(ωo)とし新たな候補値Yを設定する(ステップS93)。
続いて、反復式εk+1(ωo)=F(εk(ωo))から近似根εk+1(ωo)を求める(ステップS94)。そして、この近似根が所定の収束条件を満足しているか否か判断する(ステップS95)。
収束条件を満足していれば、ステップS58に処理を移し、そのときの近似根εk+1(ωo)を最初の波数ωoにおける誘電率ε(ωo)として、図14のステップS41に処理を移す。
収束条件を満足していなければ、まず、反復回数kが所定の最大値MAXを越えているか否か判断する(ステップS96)。最大値を越えていなければ、反復回数を1増加し(ステップS97)、この近似根εk+1(ωo)を新たな粗い近似根εk(ωo)に設定し(ステップS98)、ステップS94に戻り、収束条件を満足するか、反復回数kが所定の最大値MAXを越えるまで、これらステップS94〜S98を繰り返す。
ステップS95で最大値を越えていると判断されると、ステップS91に戻り、候補値Yから更に値Δを減算して新たな候補値とし、最終的に収束するまでステップS91〜S98の処理を繰り返す。
実施例1−1
比抵抗100Ω・cmのノンドープの(111)シリコン基板を用い、このシリコン基板に熱酸化により10nm厚のシリコン酸化膜を形成した。
この酸化膜に対して赤外分光測定法により、入射角度が70度と80度の赤外光に対して測定された反射率を用いて設定した連立方程式に対して、本実施例の方法により誘電関数スペクトルを求めた。その誘電関数スペクトルを図18に示す。
誘電関数スペクトルを求めるために用いた反復法はニュートン・ラプソン法である。誘電関数スペクトルを導出するときの一番最初の波数は798.395であり、この波数に対する反復法の粗い近似根の設定過程は次の通りである。まず、粗い近似根として−5−5i≦Z≦5+5i内の任意の値Z=0.5+0.1iを選択した。連立方程式の2変数は誘電関数の実部と虚部であるから、誘電関数の実部に対する粗い近似根Real(εo(798.395)としてReal(Z)=0.5を用い、誘電関数の虚部に対する粗い近似根Imag(εo(798.395)としてImag(Z)=0.1を用いて反復法を適用した。
収束判定条件として、次式を用いた。
δk=|εk+1(ω)−εk(ω)|≦max(1.0|εk(ω)|)・EPSR
但し、EPSR〜2(u)1/2 (u:丸め誤差の単位)
この収束判定条件を満足すると反復法の繰り返しを終了することにした。
なお、収束状況の適切さを判断するために、δx、δyの代わりに、次式で定義した残差R(ω)を用いた。
R(ω)=Σ(rmea (θ、ω)−rcal (θ、ω))/rmea (θ、ω)
但し、rcal (θ、ω)は連立方程式より計算した誘電関数ε(ω)をフレネル式に用いて得られた反射係数であり、rmea (θ、ω)は測定により得られた反射係数である。入射角度θは70°、80°である。
本実施例の場合、粗い近似根として値Z=0.5+0.1iを選択して反復法を実行したところ、反復回数92回で上記収束条件を満足した。このときの残差R(798.395)=6.045E−5であった。
経験的に残差R(ω)は1.0E−30以下でないと適切な誘電関数が得られないことが分かっているので、この収束状況は適切ではなく、おそらく最適根外のところで収束してるものと考えられる。
そこで、Δ=0.5とし、波数798.395で用いる反復法の粗い近似根として、誘電関数の実部に対する粗い近似根Real(εo(798.395)としてReal(X)=Real(Z)+Δ=1.0を選んだ場合と、誘電関数の実部に対する粗い近似根Real(εo(798.395)としてReal(Y)=Real(Z)−Δ=0.0を選んだ場合とで反復法を実行し、その収束状況を調べた。なお、誘電関数の虚部に対する粗い近似根Imag(εo(798.395)はImag(Z)=0.1のままとした。
候補値Xを用いた場合、反復回数68回で収束し、このときの残差R(ω)は6.045E−5となった。候補値Yを用いた場合、反復回数130回で収束し、このときの残差R(ω)は5.655E−32となった。
したがって、候補値Yを用いた場合の反復法の根を誘電関数スペクトルの初期の波数798.395に対する誘電関数とした。このときの値を次に示す。
ε(798.395)=(−3.9719,2.933)
この値を、一番最初の波数798.395の次の波数802.252の粗い近似根として反復法を実行した。その結果、反復回数97回で収束条件を満足した。このときの残差Rは1.672E−32となり、収束状況が良好であることがわかった。
このときの誘電関数の値を次に示す。
ε(802.252)=(−3.8655,2.8202)
同様にして、この値を次の波数806.109の粗い近似値として反復法を実行して誘電関数の値を求めた。以上の処理を繰り返して所定の波数の範囲について誘電関数の値を求めた。
その結果が図18の誘電関数スペクトルである。
比較例
比較例として、粗い近似根として値Z=0.5+0.1iを選択して得られた誘電関数の値
ε(798.395)=(1.0158,0.0016)
を最適根として、引き続く波数についての粗い近似根として求めた。その誘電関数スペクトルを図19に示す。
図19からわかるように、誘電関数スペクトルに不連続な部分があり、誘電関数スペクトルの虚数部の符号が反転したおかしな誘電関数スペクトルとなっている。
前述したように、誘電率が求まるとフレネルの式を用いて反射率と透過率の計算をすることができる。そこで、実施例及び比較例により求めた誘電関数を用いて逆に反射率を計算した。求めた誘電率が正しければ、計算した反射率は実測値とほぼ同じになる筈である。
図20に測定した反射率スペクトルrmea (ω)を示す。図21が本実施例により求めた誘電関数を用いて計算した反射率スペクトルrcal である。図20の測定値と非常によい一致をしていることがわかる。図22は比較例により求めた誘電関数を用いて計算した反射率スペクトルである。測定値と異なっていることがわかる。
[第2の実施例]
本発明の第2の実施例によるシリコン酸化膜の評価方法及び装置について図23乃至図30を用いて説明する。
シリコン酸化膜の評価装置
本実施例によるシリコン酸化膜の評価装置を図23に示す。図23に示す評価装置の中央には、ウエーハ40の反射スペクトルを測定する赤外分光装置41が設けられている。赤外分光装置41の内部について説明する、試料ステージ(図示せず)上に、測定されるべきウエーハ40が載置される。移動ステージの右側の照明系から入射された赤外光がウエーハ40の表面で反射され、その反射光が左側の測定系により測定、解析される。
試料ステージの右側の照明系には、赤外光を発光する光源42が設けられ、光源42の出射側に干渉計43と偏光子44が設けられている。光源42からの赤外光は干渉計43及び偏光子44を介して平行光線束となって出射される。偏光子44を設けることにより、入射面に電場が平行であるP波の赤外光又は入射面に電場が垂直であるS波の赤外光が出射される。
出射された赤外光はウエーハ40に法線から傾いた角度で入射する。ウエーハ40からの反射光は、MCT検出器45に入射される。MCT検出器45はウエーハ40からの反射光を検出する。MCT検出器45からの検出信号は演算装置46に入力される。演算装置46は、ウエーハ40表面の反射率を演算し、後述するようにシリコン基板及びシリコン酸化膜の誘電関数を求める。
赤外分光装置41の左側にはエッチング装置47が設けられている。このエッチング装置47は溶液処理によりシリコン酸化膜をエッチングする装置である。エッチング装置47には、エッチング用溶液としてふっ酸が満たされた溶液槽48が設けられている。エッチングされる膜厚は、ふっ酸溶液の濃度とエッチング温度と溶液への浸漬時間によって制御される。
赤外分光装置41の右側にはウエーハ40を搬入するための搬入口49が設けられている。
シリコン酸化膜の評価方法
次に、本実施例によるシリコン酸化膜の評価装置を用いた評価方法について説明する。
まず、評価されるべきウエーハ40を搬出入口49を介して赤外分光装置41に搬入する。ウエーハ40はシリコン基板上に評価されるべきシリコン酸化膜が形成されている。赤外分光装置41で、搬入されたままの状態でウエーハ40の反射スペクトルを測定する。測定結果は演算装置46に記憶しておく。次に、赤外分光装置41からエッチング装置47にウエーハ20を移し、エッチング装置47によりシリコン酸化膜を予め決められた厚さだけエッチングする。エッチング後、エッチング装置47から赤外分光装置41にウエーハ20を移し、所定厚さのシリコン酸化膜がエッチングされた状態でウエーハ40の反射スペクトルを測定する。測定結果は演算装置46に記憶しておく。
次に、再び赤外分光装置41からエッチング装置47にウエーハ20を移し、エッチング装置47によりシリコン酸化膜を予め決められた厚さだけ更にエッチングする。エッチング後、エッチング装置47から赤外分光装置41にウエーハ20を移し、所定厚さのシリコン酸化膜が更にエッチングされた状態でウエーハ40の反射スペクトルを測定する。測定結果は演算装置46に記憶しておく。
この操作を繰り返し、所定厚さのシリコン酸化膜をエッチングする毎に反射スペクトルを測定し、最終的には全てのシリコン酸化膜を除去されるまで続行する。シリコン酸化膜が除去されたシリコン基板の反射スペクトルについても測定しておく。
以上の測定が終了すると、シリコン基板と、膜厚が異なるシリコン酸化膜の反射スペクトルの多数のデータが蓄積演算装置46に蓄積される。
次に、これら測定データを用いて異なる膜厚のシリコン酸化膜の誘電関数を演算する。その演算手順について図24のフローチャートを用いて説明する。
まず、シリコン基板の誘電関数を演算する(ステップS101)。本実施例におけるシリコン基板には高濃度の不純物が添加されているので、自由電子の分極に基づいた誘電関数理論により、シリコン基板の誘電関数を求めた(工藤恵栄著、「光物性の基礎」改定2版、オーム社参照)。この誘電関数理論による誘起電界と誘電関数を次に示す。
上記式におけるパラメータはεo(高周波誘電率)、ωp(プラズマ振動数)、ωτ(減衰振動数)である。上式によりシリコン基板の誘電関数を求めると、続いて、シリコン酸化膜の誘電関数を演算する(ステップS102)。
シリコン酸化膜は誘電体であるので、双極子の分極に基づきクラマース・クロニッヒの関係式を満足する誘電関数理論により、シリコン酸化膜の誘電関数を求めた(工藤恵栄著、「光物性の基礎」改定2版、オーム社参照)。
この誘電関数理論による誘起電界と誘電関数を次に示す。
上記式におけるパラメータはεo(高周波誘電率)、ωo(共鳴振動数)、ωp(プラズマ振動数)、ωτ(減衰振動数)、σ(ガウス分布幅)である。シリコン酸化膜におけるパラメータの決定は次のようにして行う。
まず、誘電関数モデルのパラメータの初期値を設定する(ステップS103)。このときの初期値は、例えば、経験的に定める。
次に、フレネルの式により反射率を計算する(ステップS104)。このステップS104において、現在求めようとしている厚さのシリコン酸化膜の下地となる誘電関数を用いる。
本実施例では、下地となる誘電関数が測定ノイズを除去した式として求められているので、ここで計算される反射率も、それまでの測定ノイズが除去されたものとなる。
ステップS104におけるシリコン酸化膜の反射率の計算は、次のような手順で行なう(ボルン著「光学の原理1,2,3」参照)。まず、図25に示すように、シリコン基板
100上に複数の層102−0、102−1、…、102−mが積層されていると仮定する。特性行列を用いた次式から反射率Rを求める。
上記式における未知数は、入射角度θと、入射光波数νと、各層102−0、102−1、…、102−mでの誘電関数ε0、ε1、…、εm、各層の厚さd0、d1、…、dmである。
本実施例では、上記未知数の誘電関数ε0、ε1、…、εmとして、それまでに求めた誘電関数の式から計算された値を使用する。この値は誘電関数のモデルの式からの計算値であり測定ノイズを含んでいない。したがって、反射率Rにも、それまでの下地における測定ノイズを含まない式となる。
次に、上式により計算された反射率を測定された反射率と比較する(ステップS105)。
反射率の計算値と測定値が一致しない場合には、誘電関数モデルのパラメータの値を変更し(ステップS107)、再びステップS104に戻る。反射率の計算値と測定値が一致するまで、パラメータを種々変更して、ステップS104〜S107の処理を繰り返す。
反射率の計算値と測定値が一致すると、そのときのパラメータにより誘電関数を決定する。この誘電関数は次のシリコン酸化膜の反射率の計算に用いられる。
続いて、次のエッチング部分に移行し(ステップS108)、次のシリコン酸化膜の反射率のデータがあるかどうか判断する(ステップS109)。データがあれば、ステップS102に戻り、ステップS102〜S109の処理を繰り返す。
なお、本実施例においては反射率を用いたが、透過率を用いても同様である。
実施例2−1
本実施例では、元が80nmのものを約9.5nm厚に予めエッチングしたシリコン酸化膜を用いて、1回のエッチングにより0.2〜0.5nm厚のシリコン酸化膜をエッチングした。その結果、膜厚が異なるシリコン酸化膜の反射スペクトルのデータが14セット得られた。
図24のステップS101において、自由電子の分極に基づいた誘電関数理論により求めたシリコン基板の誘電関数を図26に示す。
本実施例ではシリコン酸化膜の厚さに応じて、14個のシリコン酸化膜の誘電関数が得られた。14個の誘電関数のうち、シリコン酸化膜の薄い順から適宜選んだ誘電関数を図27(a)〜(d)に示す。シリコン酸化膜が厚くなるにしたがって、誘電関数が徐々に変化していることがわかる。これはシリコン酸化膜の膜質が一様ではなく膜内で変化していることを示している。
図28(a)〜(d)は実測した反射率とフィッティングした反射率を比較して示す。求められた誘電関数からフレネルの式を用いて反射率を再計算した。実測値を点線で示し、フィッティングした反射率を実線で示す。図28(a)〜(d)は図27(a)〜(d)に対応している。いずれの場合も、反射率の実測値と計算値がよく一致していることがわかる。
図29はシリコン酸化膜内における異なる部分の反射率スペクトルを比較して示す。
図29(a)は、シリコン基板との界面に最も近い部分のシリコン酸化膜の反射率スペクトル(点線)と、界面から50nm離れた部分のシリコン酸化膜の反射率スペクトル(実線)である。膜質がかなり相違することがわかる。図29(b)は、界面から10nm離れた部分のシリコン酸化膜の反射率スペクトル(点線)と、界面から50nm離れた部分のシリコン酸化膜の反射率スペクトル(実線)である。膜質にほとんど変化がないことがわかる。
図30に従来の方法により求めた誘電関数の一例である。図29から分かるように、各測定におけるノイズ成分が誘電関数に重畳され、正確な誘電関数が得られていないことがわかる。
[第3の実施例]
本発明の第3の実施例によるシリコン酸化膜の評価方法及び装置について図31を用いて説明する。
本実施例によるシリコン酸化膜の評価装置を図31に示す。図31に示す評価装置の中央には、ウエーハ40の反射スペクトルを測定する赤外分光装置41が設けられている。赤外分光装置41の内部について説明する、試料ステージ(図示せず)上に、測定される
べきウエーハ40が載置される。移動ステージの右側の照明系から入射された赤外光がウエーハ40の表面で反射され、その反射光が左側の測定系により測定、解析される。
試料ステージの右側の照明系には、赤外光を発光する光源42が設けられ、光源42の出射側に干渉計43と偏光子44が設けられている。光源42からの赤外光は干渉計43及び偏光子44を介して平行光線束となって出射される。偏光子44を設けることにより、入射面に電場が平行であるP波の赤外光又は入射面に電場が垂直であるS波の赤外光が出射される。
出射された赤外光はウエーハ40に法線から傾いた角度で入射する。ウエーハ40からの反射光は、MCT検出器45に入射される。MCT検出器45はウエーハ40からの反射光を検出する。MCT検出器45からの検出信号は演算装置46に入力される。演算装置46は、ウエーハ40表面の反射率を演算し、後述するようにシリコン基板及びシリコン酸化膜の誘電関数を求める。
赤外分光装置41の左側には、シリコン酸化膜を形成するために、熱処理装置50と溶液処理装置53が設けられている。熱処理装置50は熱処理によりウエーハ40上にシリコン酸化膜を形成するためのものである。ヒータ51によりウエーハ40を加熱する。溶液処理装置53は溶液処理によりウエーハ40上にシリコン酸化膜を形成するためのものである。酸化膜形成用溶液(硝酸(H2SO4)と過酸化水素水(H2O2)の混合液)が満たされた溶液槽54にウエーハ40を浸漬する。
赤外分光装置41の右側にはウエーハ40を搬入するための搬入口49が設けられている。上記第6の実施例では、シリコン基板上に形成したシリコン酸化膜を複数回に分けてエッチングしながら反射率を測定したが、本実施例では逆にシリコン基板にシリコン酸化膜を複数回に分けて形成しながら反射率を測定する点が異なる。その他の誘電関数の求める方法について第6の実施例と同様であるので、説明を省略する。
[第4の実施例]
本発明の第4の実施例による半導体装置の製造方法及び装置について図32を用いて説明する。
本実施例による半導体装置の製造装置を図32に示す。図32に示す製造装置の中央には、ウエーハ40の反射スペクトルを測定する赤外分光装置41が設けられている。赤外分光装置41の内部について説明する、試料ステージ(図示せず)上に、測定されるべきウエーハ40が載置される。移動ステージの右側の照明系から入射された赤外光がウエーハ40の表面で反射され、その反射光が左側の測定系により測定、解析される。
試料ステージの右側の照明系には、赤外光を発光する光源42が設けられ、光源42の出射側に干渉計43と偏光子44が設けられている。光源42からの赤外光は干渉計43及び偏光子44を介して平行光線束となって出射される。偏光子44を設けることにより、入射面に電場が平行であるP波の赤外光又は入射面に電場が垂直であるS波の赤外光が出射される。
出射された赤外光はウエーハ40に法線から傾いた角度で入射する。ウエーハ40からの反射光は、MCT検出器45に入射される。MCT検出器45はウエーハ40からの反射光を検出する。MCT検出器45からの検出信号は演算装置46に入力される。演算装置46は、ウエーハ40表面の反射率を演算し、後述するようにシリコン基板及びシリコン酸化膜の誘電関数を求める。
赤外分光装置41の左側には、シリコン酸化膜を形成する熱処理装置50と、ウエーハを洗浄する半導体基板洗浄装置55が設けられている。熱処理装置50は熱処理によりウエーハ40上にシリコン酸化膜を形成するためのものである。ヒータ51によりウエーハ40を加熱する。半導体基板洗浄装置55は溶液処理によりウエーハ40を洗浄するためのものである。洗浄用溶液、例えばふっ酸溶液が満たされた溶液槽56にウエーハ40を浸漬する。
赤外分光装置41の右側にはウエーハ40を搬入するための搬入口49が設けられている。本実施例による半導体装置の製造方法について説明する。まず、ウエーハ40を搬入口49から装置内部に搬入する。半導体基板洗浄装置55により、ウエーハ40上に金属、有機物汚染、自然酸化膜を除去する。その後、赤外分光装置41により反射スペクトルが測定された後に、熱処理装置50に搬送され、シリコン酸化膜が形成される。
シリコン酸化膜の形成途中での膜質評価を行ないたい場合には、赤外分光装置41により測定を行ない、所定の膜厚までシリコン酸化膜を形成する。この評価段階で基準の膜質を満足しなかったものは、この時点で引き抜かれ、この後の処理工程が無駄にならないように処置される。さらに、厳密な膜質管理を行なう試験ウエーハでは、酸化膜形成後に半導体基板洗浄装置55に搬送され、シリコン酸化膜を所定の膜厚ずつエッチングし、赤外分光装置41による反射率測定とエッチングを繰り返すことで、膜厚方向に分解された酸化膜構造の評価を行なうことができる。