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JP4492363B2 - 固定サンドバイパスシステムの設計方法 - Google Patents
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JP4492363B2 - 固定サンドバイパスシステムの設計方法 - Google Patents

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本発明は、海岸に沿って流れる漂砂を適宜浚渫して移動させるための固定サンドバイパスシステムの設計方法に関する。
海浜や河口の沿岸に設けられる港湾施設のごとき人工構造物では、堤防等が設けられて通常の自然な海岸線とは異なる形状になるのが通常である。そのため、波浪や海浜流に乗って運ばれてくる漂砂の流れがこれらの構造物に影響され、流れが停留して漂砂が堆積して船の航路が埋没したり、逆に、漂砂の流れ込みが減少して従来存在した海岸線が浸食されたりする現象が生じやすい。これらに対処するため、例えば、浚渫船を用いて漂砂が堆積した場所を浚渫し、浸食された場所などに浚渫した漂砂をダンプカーなどで移送せしめる作業を行うことが多い。しかし、このような方法では、継続的な経費の発生や、騒音、排気ガス等による環境面の悪化等の問題点が指摘されている。
そこで、浚渫作業に浚渫船を用いず、固定設置されたポンプ及び圧送式パイプラインやベルトコンベア等からなる固定サンドバイパスシステムにより、継続的に海底の浚渫及び被浚渫物の移送を行う試みが、オーストラリアのゴールドコースト(クイーンズランド州)などで行われるようになってきた(例えば、非特許文献1参照)。
しかし、このような固定サンドバイパスシステムの設計では、ポンプの台数やポンプ能力、設置位置などはおよその推測に基づいて決定されているにすぎず、漂砂の流れ具合に適合した設計がなされているとは言えないのが実情である。また、設置後の浚渫運転も漂砂の堆積具合を操作者が計測して随時行っているにすぎない。そのため、同様なシステムを構築しようとしても、システムの設置コストや運転コストが不明瞭で、しかもいったん設置したあとはシステムを変更するのが困難という問題点が指摘されていた。
"輸出品 サンドバイパスシステム(Export Sand Bypass system)"、クイーンズランド州政府(Queensland Government)発行、[平成16年12月16日検索]、インターネット<http://www.transport.qld.gov.au/Home.nsf/index/sandbypasssystem>
本発明は、固定サンドバイパスシステムを設置する際に、浚渫に使用するポンプの設置台数や設置位置をあらかじめ最適化でき、しかも、システムの設置コストや運転コストも最小化できる設計方法を提供することを課題とする。
本発明は、沿岸付近に堆積する漂砂の浚渫と移動とを行う固定サンドバイパスシステムの設計方法であって、前記沿岸付近の漂砂量分布を演算するステップと、前記の漂砂量分布に対応した浚渫ポンプの最適配置を演算するステップと、前記の最適配置に前記浚渫ポンプを配置した場合のコストを演算するステップと、前記コストに基づいて前記浚渫ポンプの最適設置台数を演算するステップとを有することを特徴とする設計方法である。
ここで、前記の最適配置と前記コストとが、前記の設置台数があらかじめ定められた最大設置台数以下である複数のケースについて演算されることは好ましい。また、前記の最適位置を演算するにあたり、複数の設計案に対する最適化アルゴリズムが用いられることは好ましい。
従来、大まかな推測により設計され、同様に設置と運用がなされていた固定サンドバイパスシステムが、最適な条件で漂砂の浚渫と移動がなされるように設計できる。また、設置コストや運転コストも最小化される。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。まず、固定サンドバイパスシステムが設けられる例として、図1に記載のように、海浜1に堤防10で囲まれた港湾設備2が建設されている場合をあげて説明する。図1(1)では、海浜に固定サンドバイパスシステムが設置される前の状態が示されている。図面に向かって下側が陸側、上側が海側である。海浜流30は、図面に向かって右から左に白抜き矢印で示されたように海岸線1に沿って流れているものとする。
漂砂はこの海浜流30に運ばれて移動するが、海浜流30が港湾設備2の上流側で堤防10により遮られるため、堤防10の手前に漂砂の堆積部4が生じる。同様に、海浜流30により港口付近にも漂砂が堆積するが、この堆積物が来襲波によって港内に入り込むことで湾口堆積21が生じ、港湾への船舶の航行ルートを埋め立てていく状況にある。一方、港湾設備2の下流側では、港湾設備2が設けられる前には適宜海浜に堆積していた漂砂が供給されなくなり、そのため海岸線に海浜流による浸食部3が生じ、海岸線が変形している。
このような漂砂の堆積と浸食を長期にわたって放置することは好ましくないため、図1(2)記載のように固定サンドバイパスシステムを設置して、上流側に堆積した漂砂を浚渫し、浚渫した漂砂を陸側又は海中パイプライン等を通って下流側に移動せしめ、浸食された部分3に埋め立てるようにするのが望ましい。このような固定サンドバイパスシステムは、港湾設備2の上流側で、固定ジェットポンプ等で堆積した漂砂を吸い上げてサンドポケット40を形成して浚渫する浚渫部50と、浚渫された漂砂をパイプラインまたはベルトコンベアを経由して例えば陸側を通って下流側に移動せしめる移送部51と、移送された漂砂を投入して海岸の浸食部3に埋め立てる埋め立て部52とからなる。
ここで、固定サンドバイパスシステムの設計条件として特に問題になるのは、浚渫部50で使用する浚渫用ジェットポンプの設置台数、設置位置、揚程能力さらに運転条件などである。これらにより、システムの浚渫位置と浚渫能力とが決まり、また、システムの設置コストや運転コストもほぼ決まるからである。そのため、以下で説明する設計方法では、浚渫部50の設置内容と運転条件とを決定することを目的とする。
図2は、固定サンドバイパスシステムの設置における設計方法の概略フローを示したフローチャートである。以下、このフローチャートに従って、システムの設計方法を説明する。なお、この設計フローは、人間がフローの一部または全部を手作業で行うことも原理的には可能であるが、膨大な演算を必要とすることからコンピュータを用いて行うのが通常である。以下の説明でもコンピュータにより演算することを前提として説明する。
まず、対象としている海浜において、浚渫に使用するジェットポンプの最大設置台数を設定する(S100ステップ)。この最大設置台数は、経験的に必要とされる設置台数より台数が多くなるように適宜設定すれば良く、精度の高い数字である必要はない。これが多すぎるとコンピュータに余計な演算負荷がかかることになるが、少なすぎると最適な設計が得られないことがある。そのため、多めに設定しておくのが望ましい。
次に、固定サンドバイパスシステムを設置する海浜の地形条件と、漂砂を運ぶ海浜流を生じる元となる海浜沖合の波浪条件を設定する(S200ステップ)。ここで、地形条件には、既存の海岸線及び港湾設備等の位置及び形状、海岸線近くの海底部分の地形、海底の土質等が含まれる。また、波浪条件には、海浜の沖合において、過去数十年間にどのような波浪が来襲したかのデータを踏まえて、スペクトル法等により解析された波浪の統計的な波高、周期、波向等のデータが含まれる。
次に、設定された地形条件と波浪条件から、対象となる海浜の波浪場と海浜流場とを演算する(S300ステップ)。波浪場とは、海浜付近における時間的に平均された波浪エネルギーの平面的な分布が求められたスカラー場と、波向が求められたベクトル場とからなり、上記の海浜沖合における波浪条件と海浜の地形条件とから、例えば、エネルギー平衡方程式を介して演算することができる。波浪場から、海浜の場所ごとの時間的に平均された波高と波向の値を得ることができる。
また、海浜流場とは、対象となる海浜付近の場所ごとに時間平均された海浜流れの速度(流速)と方向(流向)とを特定したベクトル場である。海浜流場は、波浪場から求められた平均的な波高と波向分布とを前提として、海浜地形を境界条件の一つとし、沖側境界の境界条件と側方境界(図1に向かって左右方向の境界)の境界条件とを仮定し、さらに海底の摩擦項を仮定して、連続の方程式と運動方程式とを用いて演算する。
次に、海浜流場から求められた流速と流向との分布及び波高と波向の分布を用いて、海浜における漂砂量分布を演算する(S400ステップ)。任意地点における漂砂量は、底面付近の流れによって生じる剪断応力の関数として定義され、この剪断応力はその地点における波高、波向きおよび海浜流によって算定することができる。岸沖方向の直線上を通過する沿岸方向の漂砂量Qbyの分布を図3に示す。図3の横軸は汀線から沖に向かう距離を示している。ここで、j=1は海浜沖合における来襲波の有義波高が50cmの場合、j=2は有義波高が1mの場合、j=3は有義波高が2mの場合を示す。なお、有義波高とは、ある波の波高の高いほうから順に全体の1/3の個数の波を選び、これらの選ばれた波の波高を平均したものを言う。このようにして求めた海浜流の上流側の漂砂量分布や過去の地形変化量データ等に基づき、上流部分で浚渫すべき1年間の目標サンドバイパス量を算定する。
波浪場と海浜流場及び漂砂量分布を演算する具体的な数式及び演算方法等に関しては、例えば、清水琢三、熊谷隆宏、三村信夫、渡辺晃共著、「汀線変化を考慮した3次元海浜変型長期予測モデル」、海岸工学論文集、第41巻、pp.406−410、土木学会発行(1994年)に記載された数式及び演算方法等をあげることができる。なお、演算は微分方程式を離散化した通常の数値解法に則って行えばよい。
次に、図1(2)に記載のように、海浜流上流側の漂砂の堆積部4内に、海浜流に対して略平行方向における浚渫部50の設置位置をあらかじめ設定し、この設置位置に対して最適化されたポンプの台数と、海浜流に対して略直角方向におけるポンプの配置位置と、サンドポケットの深さ及び必要なポンプ能力を決定する(S500〜S800ステップ)。
まず、浚渫部50の設置例の一つを上流側から見た図を図4に示す。図4では、図に向かって右側が沖合側、左側が陸側であり、5台のジェットポンプ72と地盤液状化ポンプ73とスラリー吸入管74とを備えた土砂吸引システム60が3本の送管で直列に接続されている。まず、高圧送水ポンプ70で海水(または河川水)が吸入され、海水送管71で各土砂吸引システム60に高圧の海水が送られる。また、送水ポンプ61で海水(または河川水)が吸入されて土砂希釈水流送管62に送られ、土砂流送管63を経てドレン受け64に浚渫された漂砂の混じった海水が搬送される。土砂流送管63の途中には土砂吸引システム60のスラリー吸入管74からの出口が接続されている。ジェットポンプ72から噴出したジェットは、周囲の土砂を巻き込んでスラリーを形成し、スラリーは、ジェットにより生じる負圧により、スラリー吸入管74の入口から吸い込まれて土砂流送管63に送り込まれる。なお、土砂流送管63は、海側から陸側に向かって下る一定勾配を有するようになっている。
また、各土砂吸引システム60には、海水送管71から供給された高圧の海水を海底に向かって噴出して、海底に堆積した土砂を水流で巻き上げる地盤液状化ポンプ73が設けられており、地盤液状化ポンプ73により巻き上げられたスラリーが、同じく海水送管71から高圧の海水を供給されるジェットポンプ72により生じた負圧により、スラリー吸入管74に吸い込まれるようになっている。
このような浚渫部50により、海底が浚渫された場合の断面の例を図5に示す。破線で示された元の海底81は、海岸から沖合に向かってなだらかに下っているが、吸い込み管74により海底に堆積した漂砂が浚渫された結果、太い実線で示された海底82は、吸い込み管を中心としたすり鉢状のサンドポケットが並んだ状態となっている。この元の海底81と浚渫された海底82に挟まれた部分が漂砂の最大トラップ量であり、運転一回あたりのサンドバイパス量の上限である。この例では、5本の吸い込み管74に陸側から1番〜5番の番号をふり、各吸い込み管に関して海面80から元の海底81までの距離をd、元の海底81から浚渫された海底82までの距離をh、海面80から土砂流送管63までの距離をHとし、それぞれに対応する吸い込み管の番号を付して表示する。また、汀線から沖合へ向かう距離をXとし、例えば1番の吸い込み管の位置をX1と表示し、以下同様としている。
次に、このような浚渫部50を最適化して設計するために、ジェットポンプの設置台数を仮定して、各ジェットポンプの図4の左右方向(陸←→沖方向)の設置位置と設置深さとを決定する(S500ステップ)。まず、浚渫部50で使用するポンプがk台(k=1から始める)と仮定して、ポンプの最適設置位置と設置深さ及び必要ポンプ容量とを演算する。なお、S500ステップの計算は、k=kmaxから開始しても良いし、もっとも良いと予想される台数から開始するようにしても良い。
最適な設置位置等を決定するためには種々の最適化アルゴリズムが知られており、いずれを採用するかは任意であるが、ここではいわゆる遺伝的アルゴリズムを使用して演算する例を説明する。このアルゴリズムによれば、必要な精度に見合った比較的軽い演算負荷で最適な設計を決定することが可能となる。このフローを図6に示す。
図6のフローでは、あらかじめ仮定されたジェットポンプ設置台数kに対して、第N世代の設計案A1〜AMを読み出す。ここで、設計案は、ジェットポンプの1番〜k番の順番を維持したまま設置位置X1〜Xkと、ジェットポンプが形成するサンドポケットの深さ(設置深さに相当)とを様々に変化させた設計案の群をなしているものと考える。つまり、図4の浚渫された海底82の形状を様々に想定した案の群となっているものと考える。なお、サンドポケットの安息角は、固定サンドバイパスシステムが建設される場所であらかじめ実験を行って求められているものとする。そして、このような設計案の群から任意のM個の設計案を読み出して、第N世代(N=1から始める)の設計案とする(S510ステップ)。
次に、これら第N世代の設計案の各々に対して必要なポンプ容量を演算する(S520ステップ)。このステップの具体的なフローを図7に示す。まず、先に読み出された第N世代の設計案から一つの設計案Amを選択し(S521ステップ)、この設計案に含まれるジェットポンプ設置位置とサンドポケットの深さのデータとを用いて、サンドポケットの平面領域を演算する(S522ステップ)。つまり、設計案に従ってすり鉢状に形成されるはずのサンドポケットを、鉛直方向の上側から見た平面領域を求める。演算は、設計案の深さデータとあらかじめ実験的に求められた安息角とを用いて行う。なお、互いに隣接するサンドポケットの平面領域が重複する部分は除くものとする。
次に、このようなサンドポケットの体積を演算する(S523ステップ)。演算は、すでに求められた平面領域と安息角とを用いて行えばよい。このようにして求められた体積が、サンドポケットの容量となる。
次に、ある運転サイクル期間、例えば一日、を単位時間として考え、この単位時間中にサンドポケットに流入する漂砂量を、S400ステップで演算された各波高段階に対する漂砂量分布を用いて演算する(S524ステップ)。具体的には漂砂量分布をサンドポケットの位置に沿って積分する。ただし、この積分値が先に求めたサンドポケットの容量より大きい場合は、サンドポケットの容量を最大値としている。なお、運転サイクル期間を一日とするということは、毎日、固定サンドバイパスシステムを運転することを意味する。運転サイクル期間は、システムの運営管理の都合を考慮して適宜定めればよい。
次に、ジェットポンプの最適な運転圧力を決定する(S525〜S528ステップ)。まず、ジェットポンプの運転圧力をある値に想定し、その圧力で各ジェットポンプがポンプ自体の性能として吸引可能な土砂の最大量を図8に例示したグラフを用いて求める(S525ステップ)。図8のグラフは、ポンプ圧力とポンプの土砂吸引フラックス及び土砂吸い上げ可能な高さの関係を示したもので、あらかじめ標準的な条件下の実験により求められたものである。複数の曲線は、下からポンプ圧力(水頭)が110m、120m、130m、140m、150mをそれぞれ意味する。
次に、各ジェットポンプの運転時間を求める(S526ステップ)。運転時間は、原則として流入漂砂量を土砂吸引フラックスで徐した値であるが、サンドポケットの容量を土砂吸引フラックスで除した値を超えることはないものと考える。さらに、運転時間は、運転サイクル期間を超えることはない。なお、複数のジェットポンプを用いた場合に、できるだけ岸側のジェットポンプを運転して浚渫するようにする。つまり、岸側のジェットポンプの運転時間を沖合側のポンプの運転時間より優先して確保するようにする。これは、岸側のジェットポンプほど吸い上げ高さが低くて済んで土砂吸引フラックスが大きくなるため、できるだけ岸側のジェットポンプを用いた方がシステム全体の効率が向上するためである。
次に、ポンプの土砂吸引フラックスと運転時間とから、サンドポケットごとの最大土砂吸引量を演算する(S527ステップ)。ここで最大土砂吸引量がサンドポケットの容量を超えることはないものとする。次に、この最大土砂吸引量を用いて、システム全体の年間土砂吸引量Qを演算する(S528ステップ)。
次に、この年間土砂吸引量Qが、S400ステップで求められた1年間の目標サンドバイパス量に達しているか否かが判断される(S529ステップ)。年間土砂吸引量Qが目標サンドバイパス量に達していない場合は、フローはS529ステップから右に分岐して、ポンプ圧力が適宜変更され(S530ステップ)、S525ステップに戻って演算が繰り返される。
S529ステップにおいて、年間土砂吸引量Qが、目標サンドバイパス量に達した場合は、フローは下に分岐してS531ステップに移り、選択されたM個の設計案の全部について演算が終了するまで、S521ステップからS531ステップまでの演算を繰り返す。M個全部について演算が終了すると、図6のS520ステップが終了して、設計案ごとに必要とされるジェットポンプの圧力P1〜PMが求まる。次に、この必要圧力で各設計案を序列付けする(S530ステップ)。必要圧力が小さい設計案ほどシステム運転のコストパフォーマンスが優れていると考えられるためである。
次に、設計案の世代数があらかじめ設定した最大世代数Nmaxに到達したか否かが判断される(S540ステップ)。到達していない場合は、フローはS540ステップから右に分岐して、S530ステップで序列付けされた設計案のうち必要圧力が小さい案から順番に複数を残し、一方、必要圧力が大きい複数の設計案を排除する(S550ステップ)。次に、残された設計案に加えて、S510ステップで選択された設計案と異なる複数の設計案を選択し、次世代の設計案A1〜AMを選択する。
次に、この次世代の設計案を用いてS510ステップからS540ステップの演算を繰り返し、必要圧力が小さい設計案だけが残るように選択を繰り返す。S540ステップで世代数があらかじめ定めた世代数Nmaxに到達したらフローは下に分岐し、もっとも必要圧力が小さい設計案を最優良設計案として選択する(S570ステップ)。このようにすることで、システムに必要な性能を有し、かつもっとも必要圧力が小さい設計案が決定される。これで図2のS500ステップが終了し、ポンプの配置及び能力に関する最適設計が決定されたことになる。
ここで、ポンプが1台の場合の様々な設計案についての演算結果の例を示す。まず、図1に記載の海浜及び港湾構造物を前提とし、具体的な数値条件を表1に示すように仮定する。
Figure 0004492363
この前提で、様々な設計案で得られたポンプ設置位置、設置深さにおいて、必要なポンプ圧力を演算した結果を図9に示す。図9で縦軸は1台のジェットポンプで生成される一つのサンドポケットの元の海底からの掘り下げ深さh、横軸が汀線から沖合方向への距離Xである。図9は、実線で2つの領域AとBに分かれているが、領域Aは目標サンドバイパス量が得られない領域、領域Bは目標サンドバイパス量が得られる領域である。ポンプが1台の場合、サンドポケットの掘り下げ深さは最低でも13m必要なことがわかる。また、ポンプの設置位置が岸側に近すぎても、また岸側から遠すぎても必要なサンドバイパス量が得られないことがわかる。
また、領域B内に記載されている破線及び丸括弧内の数字は、目標サンドバイパス量を得るために必要なポンプ圧力(ここではポンプ揚程で表示)を示したものである。ポンプ圧力は、もっとも小さい60mからもっとも大きい140mまで、順番に分布していることがわかる。
次に、このような最適設計を前提として、ポンプ台数がk台の場合の固定サンドバイパスシステムの建設コストと運転コストが演算される(S600ステップ)。次に、ポンプ台数があらかじめ設定した最大台数に達したか否かが判断され(S700ステップ)、達していない場合はフローは右に分岐して、ポンプ台数を1台増加してS500〜S700ステップの演算を繰り返す。このようにして、各台数の場合における最適設計が決定され、それぞれの場合の建設コストと運転コストとが演算される。ここで、表1の条件を前提にして、ポンプ台数が1台から5台の場合の最適化された配置位置Xと設置深さh及びポンプ圧力P0が最適化された演算結果の例を表2に示す。
Figure 0004492363
S700ステップでポンプ台数が最大台数kmaxに達したらフローは下に分岐し、建設コストと運転コストとの総和が最小となるポンプ台数の設計案を選択する(S800ステップ)。ジェットポンプの台数が多ければ建設コストは増加するが、各ジェットポンプの必要運転時間は減少して運転コストは減少する。逆にジェットポンプの台数が少なければ建設コストは減少するが、各ジェットポンプの必要運転時間が増加して運転コストは増加する。従って、建設コストと運転コストとを合わせたトータルコストが極小値となるポンプ台数の値が存在する。例えば、表2の場合の建設コストと運転コストをプロットしたグラフを図10に示す。図10では、トータルコストがk=3の場合に極小値をとることがわかる。S800ステップでは、このようにしてポンプ台数の極小値を決定する。これで全部の設計条件が決定されてフローが終了する。
このように、海浜沖合の波浪条件及び海浜の状態により生じる漂砂の流れを考慮して固定サンドバイパスシステムを設計することができるので、もっとも浚渫効率の良い最小のシステムを構築することが可能となり、トータルコストも極小となる。また、遺伝的アルゴリズムによりポンプの設置位置や設置深さを最適化する演算を行っているので演算処理の負荷が小さくて済み、比較的容易に最適解を得ることが可能となる。
次に、本発明の設計方法で最適化設計された固定サンドバイパスシステム(I)[実施例]と、従来のように、最適化がなされずに安全サイドの過剰スペックで設計された固定サンドバイパスシステム(II)[比較例]との、浚渫性能の違いに関するシミュレーション結果について説明する。図1に記載の海浜を前提として、海浜流の上流側に固定サンドバイパスシステムを建設することとし、固定サンドバイパスシステム(I)のための最適化設計の結果、表3に記載のようにポンプ6台を用いるのが最適であったとする。ポンプ6台は汀線から沖合に向かって、間隔を狭めながら配置され、当初の海底からの掘り下げ深さも沖合ほど浅くなるように設定されている。これにより形成されるサンドポケットの形状を図11の実線で示す。
Figure 0004492363
一方、このように最適化されずに過剰スペックで設計された固定サンドバイパスシステム(II)として、表3に記載のように、より広い範囲を同じくポンプ6台を等間隔で、かつより深く浚渫できるように6台とも同じ設置深さ15mで配置するようにした。この配置により形成されるサンドポケットの形状を図11の破線で示す。なお、ポンプ圧力は(I)と(II)で同じとした。(II)のようにポンプ設置深さが深くなると、形成されるサンドポケットの容量は増加するが、ポンプ圧力が不足して浚渫できる漂砂量は減少する結果となる。
このような2つのシステムをそれぞれ用いて、図3に記載のような来襲波レベル(j)の場合に、どれだけの土砂を吸引できるかを演算した結果を表4に示す。いずれのレベルでも、最適化されたシステム(I)の方が、従来型のシステム(II)より土砂吸引確率が高くなることがわかる。
Figure 0004492363
また、この2つのシステムを図1(1)に記載の海浜にそれぞれ適用した場合の、汀線の変化に関するシミュレーション結果について説明する。これを図12に示す。図12の太い実線で表示された汀線100は、浚渫が行われる前において海浜流による漂砂の堆積と浸食とが生じていた場合の海浜形状を示している。細い実線で表示された汀線110は、最適化された固定サンドバイパスシステム(I)を設置した場合に、10年後に生じる海浜形状を示している。港湾施設2が建設される前の状態にほぼ戻っていることがわかる。一方、破線で表示された汀線120は、従来の固定サンドバイパスシステム(II)を設置した場合に、10年後に生じる海浜形状を示している。ある程度は海浜形状の復元が生じているもののサンドバイパス量が不足して復元が不十分であることがわかる。
また、港口の漂砂の堆積に関しては、最適化された固定サンドバイパスシステム(I)を設置した場合には、設置しなかった場合の約15%程度にまで港口の堆積土砂量が減少した。一方、従来の固定サンドバイパスシステム(II)を設置した場合には、約35%程度までしか回復しなかった。
以上、実施の形態について説明してきたが、本発明は上記の具体的な実施態様に限定されるものではなく種々の変型が可能である。例えば、最適化方法は遺伝的アルゴリズムに限定されず、例えば、モンテカルロ法等のランダムサーチ法を任意に使用することができる。また、上記の説明では、ジェットポンプを岸側から沖合方向に配置する位置を最適化したが、港湾施設から汀線に平行方向にどれだけの距離離れた位置にシステムを建設するかについても最適化するようにしてもよい。
固定サンドバイパスシステムが設置される海浜のモデルを示した図であり、(1)は設置前、(2)は設置後を示した図である。 システムの設計フローの全体概略を示したフローチャートである。 沿岸に流れてくる漂砂量を沖合方向距離に対して求めた図である。 浚渫部の概略構造を示した概念図である。 海底に形成されるサンドポケットの形状例を示した概念図である。 S500ステップの詳細フローを示したフローチャートである。 S520ステップの詳細フローを示したフローチャートである。 ジェットポンプそのものの土砂吸引能力と、吸い上げ高さやポンプ圧力との関係を示した図である。 ジェットポンプが1台の場合の最適化演算の途中結果を示した図である。 ジェットポンプ台数を極小化する演算の概念を示した図である。 シミュレーションにより生じるサンドポケット形状を示した図である。 汀線変化に関するシミュレーション結果を表示した図である。
符号の説明
50 浚渫部
60 土砂吸引システム
61 土砂希釈水送液ポンプ
62 土砂希釈水流送管
63 土砂流送管
64 ドレン受け
65 スラリポンプ
66 スラリ排出設備
70 海水吸入ポンプ
71 海水送管
72 ジェットポンプ
73 地盤液状化ポンプ
74 スラリー吸入管
80 海水面
81 浚渫が行われる前の海底面
82 浚渫がなされたあとの海底面
100 浚渫がなされる前の汀線
110 最適化された固定サンドバイパスシステム(I)により10年後に生じる汀線
120 従来の固定サンドバイパスシステム(II)により10年後に生じる汀線

Claims (3)

  1. 沿岸付近に堆積する漂砂の浚渫と移動とを行う固定サンドバイパスシステムのコンピュータによる設計方法であって、固定サンドバイパスシステムを設置する海浜の地形条件と、漂砂を運ぶ海浜流を生じる元となる海浜沖合の波浪条件とが設定されるステップと、前記で設定された地形条件と波浪条件から、対象となる海浜の波浪場と海浜流場とが演算されるステップと、前記演算された海浜流場から求められた流速と流向との分布及び波高と波向の分布とを用いて、前記沿岸付近の漂砂量分布演算されるステップと、
    あらかじめ用意された複数の設計案の一つを選択し、あらかじめ仮定された浚渫ポンプの設置台数と前記演算された漂砂量分布とから、単位時間内にサンドポケットに流入する漂砂量が演算されるステップと、前記選択された設計案の浚渫ポンプを用いて、サンドポケットに流入する前記の漂砂量を吸引するために必要なポンプ圧力が演算されるステップと、前記複数の設計案に関して繰り返し前記必要ポンプ圧力を演算し、得られた必要ポンプ圧力が最小の設計案を優先することにより浚渫ポンプの最適配置演算されるステップと、
    前記で仮定された浚渫ポンプの設置台数と前記の選択された最適配置とに基づいて、前記浚渫ポンプを配置した場合のコスト演算されるステップと、
    前記仮定した浚渫ポンプの設置台数をあらかじめ定めた範囲内で変更して前記コストが繰り返し演算され、前記設置台数に対する前記コストの極小点を求めて、前記浚渫ポンプの最適設置台数演算されるステップと
    を有することを特徴とする設計方法。
  2. 前記の最適配置と前記コストとが、前記の設置台数があらかじめ定められた最大設置台数以下である複数のケースについて演算されることを特徴とする請求項1に記載の設計方法。
  3. 前記の最適位置を演算するにあたり、複数の設計案に対する遺伝的アルゴリズムまたはランダムサーチ法による最適化アルゴリズムが用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の設計方法。
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