JP4501348B2 - 水性樹脂分散体の製造方法及びその利用 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水性樹脂分散体の製造方法に関する。また、この製造方法で得られる水性樹脂分散体、及び金属素材被覆用組成物、特に貯蔵安定性に優れた塗料や、厚塗りや高温短時間焼付け塗装性に優れた水性塗料、缶用塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
安定なW/O/W型水性樹脂分散体の製造方法としては、乳化剤を用いる方法が一般的である。特許文献1では、アルキル変性カルボキシビニルポリマーを用いてW/O型を外水相に分散する方法を開示されている。特許文献2では分子量400〜2万のポリエチレングリコール誘導体を用いる方法、特許文献3では高級脂肪族有機アミン、高級アルコール、低級アルキレンオキサイド付加物を用いる方法、特許文献4では分子内にスルホン基及び/またはカルボキシル基を有する多糖類を内水相に含有する方法を、特許文献5では内水相と外水相に特定の親水性乳化剤、油相中に特定の親油性乳化剤を用いる方法を、特許文献6では水溶性ポリマーとサポニンを用いる方法が開示されている。
【0003】
しかしながら乳化剤を用いる方法で得られた水性樹脂分散体を金属素材の被覆に用いる場合は、耐水性の劣化があり実用的に用いることができない。
また、機械的にW/O/W型水性樹脂分散体を得る方法としては、ホモジナイザー、ディスパーを用いるものが一般的である。例えば、特許文献7では3500rpmの「ホモゲナイザー」分散や、ミキサーの速度を100〜5000rpmで、乳化剤も用いて分散することも開示されている。
【0004】
別の分散方法として特許文献8では、均一な孔径を有する多孔質膜に、W/O型分散体を通す方法が開示されている。また、特許文献9では一定方向に流れる水相に、W/O型分散体を滴下して調製する方法が開示されている。
しかしながら、いずれの方法もW/O型分散体の粘度が少し高くなると使えないという問題があった。
【0005】
特許文献10では振動型の攪拌機を用いる方法が、特許文献11ではその振動型攪拌機が開示されている。この攪拌機であってもW/O型分散体の粘度が400Pa・s以上になると分散させることができないという不具合があった。また、一般に、高粘度になるにつれて微細化分散処理時の発熱量が大きくなるが、この攪拌機では中心軸付近で発生した熱を除去することが難しく、特に規模が大きい装置では困難度が増すという問題があった。
したがって、従来においては高粘度樹脂溶液を用いてW/O/W型水性樹脂分散体を得る方法は行われてこなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−33391号公報
【特許文献2】
特開2001−131056号公報
【特許文献3】
特開2001−139459号公報
【特許文献4】
特開2001−151938号公報
【特許文献5】
特開2001−25360号公報
【特許文献6】
特開2002−191960号公報
【特許文献7】
特開2002−20269号公報
【特許文献8】
特開2001−179077号公報
【特許文献9】
特開2002−234833号公報
【特許文献10】
特開平11−349688号公報
【特許文献11】
特開平11−169967号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
発明者らの目的は、極性基を必須成分とし、100℃における粘度が500Pa・s以上の高粘度樹脂溶液(E)から、比較的低い動力を用いて安定な平均粒子径1μm以下のW/O/W型水性樹脂分散体を効果的に得ることである。
【0008】
第一に重要な点は、極性基を必須成分とし、100℃における粘度が500Pa・s以上の高粘度樹脂溶液(E)から、いかにして平均粒子径1μm以下の水性樹脂分散体を得るか、である。
【0009】
一般に、液体中の液滴を微細化するためには転相点近傍で液滴に高剪断力をかければ良いことは公知であるが、転相点を過ぎた水性樹脂分散体についてはもはや再分散による微細化は不可能であると考えられてきた。
そのために、転相点一点において強力な剪断力をかける事にこだわったために、高粘度樹脂溶液においては莫大な動力が必要になるだけでなく発熱が制御できなくなるという問題点をもっていた。特に分子構造が複雑になる転相点近傍及びW/O/W型水性樹脂分散体形成時期における温度制御は深刻な問題であった。
【0010】
第二に重要な点は、いかにして安定な平均粒子径1μm以下のW/O/W型水性樹脂分散体を得るかである。
W/O型分散体は水性樹脂分散体を得る過程でよく経験していることであり公知であったが、油相の粘度が低い場合は転相工程中に内水相がW/O粒子外に出て外水相に合一し易く、W/O型分散体へ単純に水を添加して転相させてもW/O/W型水性樹脂分散体になるとは限らなかった。
【0011】
剪断速度は一般に速度勾配とも呼ばれ、(速度差)/(距離)で定義されている。しかしながら、この値は、系全体において一様とは言えないために、代表値としてどのような値を用いるかは必ずしも明確とは言えず、複雑な計算方法も多い。したがって、本発明においては、なるべく簡単に計算できる方法を用いるべきだと考え、回転している攪拌翼やローターのピンの周速値を容器壁面とのクリアランスで除した値を用いる。
すなわち、本発明において、
(剪断速度〔/秒〕)=(回転体の周速〔m/秒〕)/(回転体と容器壁面とのクリアランス〔m〕)
とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下の解決策を得た。
すなわち、本発明の第1の発明は、
50/秒以上1000/秒未満の剪断速度下で、
重量平均分子量1万以上で酸価50〜500のアクリル樹脂(A)と、重量平均分子量1万以上のエポキシ樹脂(B)を、アミン類(C)を用いて有機溶剤(D)中で反応させて得られる極性基を有し、100℃における粘度が500Pa・s以上である高粘度樹脂溶液(E)、
または重量平均分子量1万以上のエポキシ樹脂(B)を有機溶剤(D)で溶解した溶液中に、極性基をもつアクリルモノマーを含む共重合性アクリルモノマー類と重合開始剤を滴下し、グラフト反応させた後、アミン類(C)を添加して部分中和して得られる極性基を有し、100℃における粘度が500Pa・s以上である高粘度樹脂溶液(E)、
に水(F)を添加・分散してW/O型分散体(H)を得た後、
10/秒以上200/秒未満の剪断速度下でW/O型分散体(H)に水(I)を添加し、転相させたW/O/W型の水性樹脂分散体(J)を得、
次に、500/秒以上の剪断速度下でW/O/W型の水性樹脂分散体(J)を分散させることにより1μm以下の平均粒子径にするW/O/W型水性樹脂分散体の製造方法である。
【0015】
第2の発明は、有機溶剤(D)の70重量%以上が水と完全に相溶する有機溶剤であることを特徴とする第1発明に記載のW/O/W型水性樹脂分散体の製造方法である。
【0017】
【発明の実施の態様】
本発明で用いられる高粘度樹脂溶液(E)とは、極性基を有し、100℃における粘度が500Pa・s以上である高粘度樹脂溶液である。高粘度樹脂溶液(E)において用いられる樹脂としては、天然の高分子樹脂の他、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、珪素樹脂などの合成高分子が挙げられる。上記の樹脂を混合した樹脂や、グラフト反応や縮合反応などにより部分的に結合した部位を持つ樹脂も含まれる。
【0018】
高粘度樹脂溶液(E)の樹脂における必須成分である極性基の例としては、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、エーテル基などが挙げることができる。(E)の樹脂がアクリル樹脂であれば、アクリル酸やメタクリル酸などのカルボン酸を含むモノマーを重合することによって極性基が樹脂中に導入できる。ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂であれば、水酸基やカルボキシル基は官能基を二つ以上持つモノマー、たとえば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパンなどのポリグリコールや、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などやその無水物、トリメリット酸およびその無水物を原料に用いれば良いし、水酸基に上記のような二塩基酸を作用させても良い。
【0019】
極性基は、種類・目的により適切な量が異なるが、カルボキシル基であれば、樹脂全体に対する酸価が10〜300程度の場合に良好に使用できる。
【0020】
(E)の樹脂は、塗料とした際に加工性などの高度な塗膜物性を保持する観点から、重量平均分子量が1万以上であることが好ましい。これは樹脂の重合の際に、重合開始剤の量と反応温度を選択することにより得られる。
【0021】
尚、本発明において、樹脂の分子量は基本的にGPCで測定したスチレン換算の重量平均分子量が用いられる。本発明で扱う高分子の領域では数平均分子量は低分子領域の僅かなベースラインの凹凸で数値に誤差を生じやすいためである。数平均分子量は場合により参考値を示す。
【0022】
スチレン換算を用いるのは化合物の極性の違いによる誤差などの懸念はあるものの、業界ですでに広く用いられ、共通の認識が得られていると考えられるためである。分子量標準のスチレンも市販されているので、特にGPC測定条件を述べる必要がない状況になっていると判断できる。
【0023】
また、(E)の樹脂の酸価は50〜500mgKOH/gの範囲が好ましい。酸価の調節はアクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基と、炭素・炭素二重結合を持つモノマーの組成比を調整して得ることができる。
【0024】
(E)で用いられる樹脂としてはアクリル樹脂(A)が好ましい。これは、上記カルボン酸を含むモノマーと、その他の共重合性アクリルモノマー類との混合物を、アゾビスイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイルなどのラジカル重合開始剤を用いて、70〜150℃の温度で共重合させることにより得られる。(A)は、重量平均分子量が1万以上であることが好ましい。
【0025】
上記の共重合性アクリルモノマー類としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル類、スチレン、アルファメチルスチレン、などのフェニル核を持つモノマー、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの水酸基含有のモノマー、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのN−置換アルコキシル基含有のモノマー、その他アクリロニトリルやグリシジル基含有モノマーなど多くのモノマーが使用でき、1種、又は2種以上の組み合わせを選択することができる。
【0026】
本発明においては、ビスフェノールAやビスフェノールFなどの二官能フェノールとエピクロルヒドリンをアルカリ触媒のもとで反応させ、高分子量化することによって、末端にグリシジル基を持つエポキシ樹脂(B)を得ることができる。末端のグリシジル基にフェノール性水酸基やアルコールや脂肪酸などを反応させれば、グリシジル基の量を調節できる。フェノール類を反応させ、両末端が実質的に完全にフェノール性水酸基になったものをフェノキシ樹脂と呼ぶが、フェノキシ樹脂の名称の製品群の中にも意識的にグリシジル基を一部残しているものもあり区別はかならずしも明確ではない。エポキシ樹脂(B)の重量平均分子量は1万以上が好ましい。
【0027】
エポキシ樹脂(B)として代表的な市販品をいくつか例示する。
ジャパンエポキシレジン(株)ではビスフェノールAを原料とした、エピコート1009、エピコート1010やビスフェノールFを原料としたエピコート4010Pなどがあり、フェノキシ樹脂としてはエピコート4250やエピコート1256がある。
【0028】
東都化成(株)製ではビスフェノールAを原料としたエポトートYD−019、エポトートYD−7019、エポトートYD−7020などがあり、フェノキシ樹脂としてはフェノトートYP−50やフェノトートYP−70などがある。
【0029】
本発明で用いられるアミン類(C)としては、アンモニアと、トリエチルアミンなどのアルキルアミン類、2−ジメチルアミノエタノールのようなアルコールアミン類やエチレンジアミンのような多価アミンやモルホリン、ピリジンなどが挙げられる。アミン類(C)は、アクリル樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との反応触媒として使用され、また、水性樹脂分散体を形成する極性基と対イオンとなり、水性樹脂分散体を安定化させ、極性基に対する中和率を調整して水性塗料の粘度と粘性を調節する役目を有する。
【0030】
本発明で用いられる有機溶剤(D)は、最終目的である水性塗料に要求される性能により決定される塗料中に最低必要なものである。また、用途により用いられる種類が異なる。一般的には、水と樹脂の双方に対していくらかの溶解性を持ち両者の仲立ちができる性質のものが良い。塗料が良好な塗装性を持つためには重要であり、ロールコートのように、ニュートニアンな流動性を好む場合は樹脂も水も良く溶解するものが選択され、スプレーコートのように非ニュートン流動を目的とする場合には水に対する溶解性が少なく、樹脂を良く溶解するものを選択する。
【0031】
有機溶剤(D)において、水と完全に相溶する有機溶剤の含有率が70重量%以上の場合は、形成したW/O/W型水性樹脂分散体中の油相から有機溶剤分が水相に抜け出すので油相の粘度はさらに高くなり、W/O/W型構造はより強固な構造になる。そのため、乳化剤を必要とすることなく、非常に安定なW/O/W型水性樹脂分散体を形成することができる。
【0032】
溶剤の沸点は、塗料の乾燥・焼付け条件によって選択される。その他水性塗料の泡立ち・泡消え性や濡れ性も重要で、表面張力など溶剤の諸性質を調べて選択され。地球環境保護、塗料取り扱い環境の保護の観点からできる限り少なくかつ安全な溶剤を選択する必要がある。
【0033】
具体的には以下のような溶剤の中から数種類を選択する。例を挙げると、水と完全に相溶する有機溶剤としてはエタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどのアルキルアルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテルなどのエーテルアルコール類、ダイアセトンアルコールなどのケトンアルコール類などがある。
【0034】
その他の有機溶剤としては、n−ブタノール、イソブタノール、ヘキシルアルコール、ノニルアルコールなどのアルキルアルコール類、エチレングリコールモノヘキシルエーテルなどのエーテルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテルエステル類、酢酸エチルなどのエステル類、MIBK、シクロヘキサノンなどのケトン類などがある。
【0035】
有機溶剤(D)はアクリル樹脂(A)の合成にも必要である。したがって、本発明を限定するものではないが、典型的な方法の第一は、まず、有機溶剤(D)中でアクリル樹脂(A)を合成し、その中にエポキシ樹脂(B)を入れて溶解し、その後に適切な反応条件を設定して、アミン類(C)を添加し、反応を開始する方法である。この反応は進むにつれて酸価が低下し、エポキシ当量が上昇し、粘度が上昇するので、その程度を判定して終点を決めることができる。反応が進みすぎると粘度が高くなりすぎるために目的とする粘度と固形分の塗料を得ることができなくなる。またさらに進みすぎると一般にゲル化する。粘性や塗膜物性も反応程度によって変化するので、適切な範囲で反応の終点としなければならない。
【0036】
酸価を持っている未反応のアクリル樹脂成分は水相に溶解するので、水性樹脂分散体を遠心分離し、水相の不揮発分を定量し、樹脂全体との比率を計算することにより未反応アクリル樹脂/全アクリル樹脂の比率を定量できるため、反応程度を確認できる。本発明ではアクリル樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との反応は完結するまでは進めず、適切な範囲で止める事により優れた水性塗料の特質を獲得するものである。
【0037】
典型的な方法の第二は、有機溶剤(D)中でエポキシ樹脂(B)を入れて溶解した後、極性基を持つアクリルモノマーを含む共重合性アクリルモノマー類と重合開始剤を滴下し、グラフト重合させた後、アミン類(C)を添加し部分中和する方法である。反応程度は、未反応アクリルモノマー類が残っていればガスクロマトグラフィーで定量できる。概略であれば不揮発分を測定しても知ることができる。
【0038】
アクリル樹脂(A)成分とエポキシ樹脂(B)の比率は本発明を制限するものではないが、目的とする塗料の性能で適切な範囲を選択できる重要な項目である。アクリル樹脂(A)成分100重量部に対して、エポキシ樹脂(B)を100〜1000重量部用いる事によって好適な塗料性能を出すことができる。
【0039】
高粘度樹脂溶液(E)は、工程1、工程2、工程3の手順で本発明の平均粒子径1μm以下のW/O/W型水性樹脂分散体を得ることができる。
【0040】
工程1は、高粘度樹脂溶液(E)を50/秒以上1000/秒未満の剪断速度で攪拌し、その攪拌下で水(F)を添加・分散し、W/O型分散体(H)を得る工程である。水(F)の添加量は、転相しない程度の少量の水である。
高粘度樹脂溶液(E)に少ない力で高剪断力をかけるには、少量ずつ連続工程を行えば良い。まず、高粘度樹脂溶液である場合に、可能な限りの高剪断下で水を添加することにより、微細なW/O型分散体が得られる。粘度を下げる目的で液温を高くした方が剪断速度を高くでき、より微細なW/O型分散体が得られ、望ましい。
【0041】
工程2は、W/O型分散体(H)を10/秒以上200/秒未満の剪断速度で攪拌し、その攪拌下で水(I)を添加し、転相させたW/O/W型の水性樹脂分散体(J)を得る工程である。転相点を通過したことは、系の性質が大きく変化するので電気伝導度が急激に上昇することなどにより分かる。
転相点前までは、剪断速度は比較的小さいながら攪拌動力は強い分散機で行うことが好ましい。
【0042】
工程3は、水性樹脂分散体(J)を500/秒以上の剪断速度下で攪拌することにより微細化分散し、平均粒子径1μm以下のW/O/W型水性樹脂分散体を得る工程である。
転相後の特定の組成範囲で(1)高剪断力を(2)比較的長時間(3)温度管理しながら、かけつづける事により、平均粒子径1μm以下の微細なW/O/W型水性樹脂分散体を得ることができる。平均粒子径が1μmを超えると、条件にもよるが長期保存中に粒子が沈降する場合がある。
【0043】
上記W/O/W型水性樹脂分散体は、さらに水を添加し、必要に応じて消泡剤・湿潤剤・滑り剤・硬化剤などの添加剤や粘度調節・固形分量調節を行い、水性塗料が製造できる。
【0044】
本発明のW/O/W型水性樹脂分散体の製造方法は、二段以上の分散工程を含む多段分散法であり、工程1と3が特に重要である。
工程1〜2では、高粘度に対応した分散機または攪拌機を用いる。高速で回転できる円盤型攪拌羽根や高剪断力を発生できるホモジナイザーと、全体を低速で攪拌・混合できる錨羽根やヘリカルリボン羽根とを持った複合攪拌機が適している。
【0045】
工程3では、剪断速度500/秒以上にできる構造と動力を持ち、かつ、滞留時間30秒以上でも処理中の液の温度を30℃以上100℃未満に保つことが可能な加熱・冷却能力を有する微細化分散装置Xが用いられる。
【0046】
本発明における粘度は、粘性についての詳細な記述が必要な場合以外は便宜上B型粘度計#4ローター0.6rpmの値を示した。粘度が非常に高い又は低いために0.6rpmの値が求まらない場合は別の回転数で求めて補外した。
【0047】
水性樹脂分散体(J)の粘度は、添加する水の量、温度、剪断速度で変化するので、同一温度・同一剪断速度で測定する必要がある。その上で、樹脂の一部に極性基を持つ高粘度樹脂溶液(E)の粘度に比較し1/500を越えるように水の量を調節する。添加する水の量が多すぎると1/500以下になり、微細化が不可能になる。添加する水の量が少なすぎると水性樹脂分散体の粘度が高いために微細化分散時の発熱が大きくなる、分散機の動力が多く必要になるなどの不都合が生じるので、目的に応じて適切な水の量と分散温度を選択する。
【0048】
また、分散温度を制御するために、ローターとシリンダーは熱媒または冷媒により効率よく温度制御されなければならない。
強力で効率良い分散と優れた温度管理を行うためには連続分散方式が適している。すなわち、高粘度樹脂溶液(E)に水を添加し転相させ水性樹脂分散体(J)を得る工程1〜2の分散装置Vから取り出された水性樹脂分散体(J)の一定量を、ポンプWにより、縦型に配置された微細化分散装置Xの下部から押し込み、装置上部から排出し、次の水希釈工程Yに連続的に移行する密閉系連続製造法を用いる多段分散法である。
微細化分散装置Xは縦型に配置することにより空隙をなくすることができ、効率が良い。
【0049】
本発明の水性樹脂分散体はさらに目的に応じて、工程のどこでも適切な条件で有機溶剤、中和剤、界面活性剤、消泡剤、滑り剤、硬化剤、防錆剤、顔料、充填剤などを添加・配合することができる。特にフェノール樹脂やアミノ樹脂の少量の添加が硬化性能を高める目的で有用である。
【0050】
本発明のW/O/W型水性樹脂分散体の製造方法で得られたW/O/W型水性樹脂分散体は、消泡剤や湿潤剤等の添加剤を添加することにより高温短時間焼付け用の水性塗料として用いることが出来る。特に厚塗り用として優れた塗装適性を持つ。一般に、水性塗料を高温で乾燥する場合、水が一気に沸騰するためワキと呼ばれる発泡現象が生じるため、通常は高沸点溶剤を少量使用し、沸騰をおだやかに進めるなどの工夫をする。しかし、本発明のようにW/O/W型構造にすると、内水相の水が蒸発する時期がずれるために、さらに沸騰がおだやかになると考えられる。
【0051】
塗料としてはブリキ板、クロムメッキ鋼板、ティンフリースチール、アルミ板などの金属表面や缶の表面に塗装できる。塗装方法はロールコーター、スプレー、電着塗装などが可能である。
焼付け条件は、たとえば、雰囲気温度150〜400℃で5秒〜30分間の範囲で目的に応じて選ぶことができる。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、例中「部」、「%」はそれぞれ「重量部」、「重量%」を示す。粘度は基本的にB型粘度計#4ローター、0.6rpmの安定した値を求めた。0.6rpmで値が求められない場合は0.3rpmまたは1.5〜30rpmの値から補外して求めた。分子量はGPCで測定し、スチレン換算の重量平均分子量を基本にした。分布が必要な場合は適宜、数平均分子量や組成を示した。
【0053】
【0054】
攪拌機、窒素導入管、水冷式冷却管、温度センサー、滴下タンクを設置した200L反応釜に1)を仕込み、攪拌しながら140℃まで加熱した。滴下タンクに混合溶解した2)〜6)を入れ、反応釜内温140℃を保持しながら、2時間で滴下した。
滴下終了後、1時間ごとに7)と8)、9)と10)、11)と12)の各混合物を添加した。
11)と12)の混合物を添加した後、1時間経過してから不揮発分測定を行い反応完了を確認した。その後、13)と14)を添加、冷却し、不揮発分28.1%、数平均分子量6200、重量平均分子量20000、酸価294のアクリル樹脂溶液(a)を得た。
【0055】
〔エポキシ樹脂(B)〕
エポキシ樹脂(B)は、ビスフェノールを原料として用いた市販品b1、b2を使用した。平均分子量、重量平均分子量、エポキシ当量を表1に示す。
【0056】
【表1】
表中、ビスフェノールAは「A」、ビスフェノールFは「F」と記載し、ビスフェノールAとビスフェノールFを1:1で使用したものを「A/F=1/1」と記載した。
【0057】
1)〜3)を窒素置換した反応釜の中に、発熱に注意しながら順番に仕込み、加熱して60℃5時間反応後、40℃まで冷却し、4)と5)を添加し攪拌した。分離した水層を捨て、さらに溶剤層と同量の水を添加し、激しく攪拌後静置し、水層を捨てた。溶剤層に6)を加え、減圧で脱水・溶剤置換を行った。不揮発分30%、重量平均分子量640のフェノール樹脂溶液(h)を得た。
【0058】
【0059】
1)〜3)を反応釜に仕込み、120℃2時間攪拌し溶解確認後、内温を110℃まで下げ、4)と5)を添加し、アクリル樹脂とエポキシ樹脂の反応を開始した。開始時の粘度は220Pa・s/110℃であった。110℃2時間で終点とし、高粘度樹脂溶液(e1)を得た。粘度は470Pa・s/110℃(700Pa・s/100℃、3300Pa・s/70℃)であった。
【0060】
高粘度樹脂溶液(e1)を50rpm(剪断速度100/秒)で攪拌しながら6)を少しずつ断続的に添加し、水と樹脂が十分に相溶していることを確認し、W/O型分散体(h1)を得た。
その後、可能な範囲で攪拌を強く行ったが、負荷が大きくなったので10〜30rpm(剪断速度20〜60/秒)に落とした。上記工程における最大粘度は790Pa・s/85℃であった。次いで、これを冷却しながら7)を少しずつ添加した。7)の添加中に系の粘度が急激に低下し、電気伝導度が0〜10μSの状態から500μS以上に急上昇し、転相が確認できた。7)添加終了時の粘度は240Pa・s/70℃であった。従って、70℃における粘度比は3300/240=14となる。最後に8)を添加混合し、不揮発分46%、粘度490Pa・s/50℃、平均粒子径4.4μmの、W/O/W型の水性樹脂分散体(j1)を得た。この光学顕微鏡写真を図1を示す。図1における一目盛は2.5μmである。
【0061】
水性樹脂分散体(j1)をクリアランス2〜3mmのピンミキサー1800rpm(剪断速度6000/秒)にて微細化分散し、平均粒子径0.27μmのW/O/W型の水性樹脂分散体を得た。この分散体に対してイオン交換水と添加剤(消泡・湿潤剤)サーフィノール420を0.1%相当量添加し、不揮発分30%、有機溶剤量13.5%、#4フォードカップの粘度が25℃で28秒の水性樹脂分散体(塗料(実1))を得た。この電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0062】
【0063】
1)〜4)を反応釜に仕込み、120℃2時間攪拌し溶解確認後、内温を110℃まで下げ、これにあらかじめ滴下タンクに仕込んで混合溶解した5)〜8)を2時間かけて滴下した。滴下終了後1時間ごとに9)と10)の混合物、11)と12)の混合物、13)と14)の混合物を添加し、アクリルモノマーとエポキシ樹脂の反応を完結させた。内温を100℃まで下げ、15)と16)を添加混合し、高粘度樹脂溶液(e2)を得た。粘度は630Pa・s/100℃(2900Pa・s/70℃)であった。
【0064】
高粘度樹脂溶液(e2)を50rpm(剪断速度100/秒)で攪拌しながら17)を少しずつ断続的に添加し、水と樹脂が十分に相溶していることを確認し、W/O型分散体(h2)を得た。
その後、可能な範囲で攪拌を強く行ったが、負荷が大きくなったので10〜30rpm(剪断速度20〜60/秒)に落とした。上記工程における最大粘度は640Pa・s/85℃であった。次いで、これを冷却しながら18)を少しずつ添加し、電気伝導度の値により転相を確認した。18)添加終了時の粘度は190Pa・s/70℃であった。従って、70℃における粘度比は2900/190=15となる。最後に19)を添加混合し、不揮発分46%、粘度390Pa・s/50℃、平均粒子径5.6μmの、W/O/W型の水性樹脂分散体(j2)を得た。
【0065】
水性樹脂分散体(j2)を実施例1と同様に微細化分散して0.5μmの平均粒子径の水性樹脂分散体を得た。この分散体に対してイオン交換水と添加剤(消泡・湿潤剤)サーフィノール420を0.1%相当量添加し、不揮発分30%、有機溶剤量13.5%、#4フォードカップの粘度が25℃で28秒の水性樹脂分散体(塗料(実2))を得た。粒子の形状は実施例1と同様であり、W/O/W型水性樹脂分散体の特徴が観察できた。
【0066】
[比較例1]
W/O/W型の水性樹脂分散体(j1)600gを、1L・直径8.5cmの円筒フラスコに移し、最大径7.4cmの錨羽100回転(剪断速度70/秒)で攪拌した。60分後、平均粒子径は変化なく4.4μmであった。
この分散体にイオン交換水と添加剤(消泡・湿潤剤)サーフィノール420を0.9g添加し、不揮発分30%、有機溶剤量13.5%、#4フォードカップの粘度が25℃で28秒のW/O/W型の水性樹脂分散体(塗料(比1))を得たが、室温保存1週間以内に沈降分離してしまった。
【0067】
【0068】
1)〜5)を1Lフラスコにしこみ、110℃2時間攪拌し溶解確認後、6)と7)を添加し、アクリル樹脂とエポキシ樹脂の反応を開始した。110℃3時間反応で終点とし、樹脂溶液を得た。この時の粘度は1.9Pa・s/110℃(17Pa・s/80℃)であった。
上記樹脂溶液を50rpm(剪断速度100/秒)で攪拌しながら8)を少しずつ断続的に添加し、水と樹脂が十分に相溶していることを確認し、分散体を得た。
その後、可能な範囲で攪拌を強くした。上記工程における最大粘度は2.5Pa・s/80℃であった。次いで、これを冷却しながら8)を少しずつ添加した。8)を添加中に系のチキソトロピック性が増加し、電気伝導度が10〜50μSから700〜1300μS以上に急上昇し、転相が確認できた。不揮発分29.9%と27.5%の間で転相した。転相直前の粘度が1.7Pa・s/80℃、転相直後が2.5Pa・s/80℃であったので、粘度比は17/2.5=6.8となる。不揮発分18.4%、粘度2Pa・s/80℃、平均粒子径0.3μmの水性樹脂分散体(j3)を得た。この電子顕微鏡写真を図3に示す。
【0069】
これを減圧下で脱溶剤した後、イオン交換水とイソブタノールで不揮発分30%、有機溶剤量13.5%に調整し、これに対して添加剤(消泡・湿潤剤)サーフィノール420を0.1%相当量を添加し、#4フォードカップの粘度が25℃で28秒のO/W型の水性樹脂分散体(塗料(比2))を得た。
【0070】
〔塗装性の評価〕
実施例および比較例で得られた水性樹脂分散体(塗料)について、厚膜塗装性(ワキ)を以下の方法で評価した。
アルミ板に乾燥塗膜厚を変えてバーコーター塗装し、350℃雰囲気中で乾燥後、塗膜表面を観察した。表面平滑で泡粒状のワキがなければ○、小さなワキが少し認められれば△、塗膜面全体にワキが認められれば×、塗膜面全体にワキが激しく認められれば××で評価した。
【0071】
【表2】
本発明の製造方法で得られる水性樹脂分散体は、比較例と同一樹脂組成、同一溶剤組成にもかかわらず、厚膜塗装性に優れている。
【0072】
【発明の効果】
樹脂が高分子になると樹脂溶液の粘度は高くなる。W/O/W型水性樹脂分散体は、高分子の樹脂溶液から製造すると、中間の油相の構造が強固になる。あらかじめ高分子の樹脂溶液中の有機溶剤主成分を、水と完全に相溶する有機溶剤にしておけば、W/O/W型水性樹脂分散体構造を形成後も油相から有機溶剤分が水相に抜け出すので、中間の油相の粘度はさらに高くなり、より強固な構造になる。そのため、本来の塗料性能からは必要でない乳化剤を使用することなく、非常に安定なW/O/W型水性樹脂分散体を形成することができる。
【0073】
本発明により、貯蔵安定性が良好で塗膜物性のすぐれた、平均粒子径1μm以下の安定なW/O/W型水性樹脂分散体を製造できる。
本発明のW/O/W型水性樹脂分散体は、さらに適切な樹脂組成と溶剤組成を選択して水性塗料として用いると、厚塗りして急激な熱風で乾燥してもワキの発生が少ない、厚塗り・高温短時間焼付け塗装性に優れたW/O/W型水性塗料を得ることができる。
【0074】
本発明によるW/O/W型水性樹脂分散体は1μm以下の微細な粒子となるために、粒子周辺の電気二重層の作用と水のブラウン運動の作用が有効に働き、経時で凝集や沈降もする事なく、粘度・粘性の変化も無い極めて安定な分散体となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で得られたW/O/W型水性樹脂分散体(j1)の光学顕微鏡写真である。
【図2】図2は、実施例1で得られたW/O/W型水性樹脂分散体(塗料(実1))の粒子の電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、比較例2で得られたO/W型樹脂分散体の粒子の電子顕微鏡写真である。
Claims (2)
- 50/秒以上1000/秒未満の剪断速度下で、
重量平均分子量1万以上で酸価50〜500のアクリル樹脂(A)と、重量平均分子量1万以上のエポキシ樹脂(B)を、アミン類(C)を用いて有機溶剤(D)中で反応させて得られる極性基を有し、100℃における粘度が500Pa・s以上である高粘度樹脂溶液(E)、
または重量平均分子量1万以上のエポキシ樹脂(B)を有機溶剤(D)で溶解した溶液中に、極性基をもつアクリルモノマーを含む共重合性アクリルモノマー類と重合開始剤を滴下し、グラフト反応させた後、アミン類(C)を添加して部分中和して得られる極性基を有し、100℃における粘度が500Pa・s以上である高粘度樹脂溶液(E)、
に水(F)を添加・分散してW/O型分散体(H)を得た後、
10/秒以上200/秒未満の剪断速度下でW/O型分散体(H)に水(I)を添加し、転相させたW/O/W型の水性樹脂分散体(J)を得、
次に、500/秒以上の剪断速度下でW/O/W型の水性樹脂分散体(J)を分散させることにより1μm以下の平均粒子径にするW/O/W型水性樹脂分散体の製造方法。 - 有機溶剤(D)の70重量%以上が水と完全に相溶する有機溶剤であることを特徴とする請求項1に記載のW/O/W型水性樹脂分散体の製造方法。
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