以下、本発明を実施するための形態の例を図面を用いて説明する。
図1は、本発明のホットチャンバダイカストマシン用のノズル(以下、単にノズルと称す。)の実施の形態の一例を示すものであり、本発明のノズルとこれを接合した溶湯射出主筒部との一例を示す断面図である。
本発明のノズル1は、組成式Si 6−Z Al Z O Z N 8−Z (z=0.1〜1)で表されるβ−サイアロンを主相とし、Al,Si,RE(REは周期表第3族元素)の構成比率がそれぞれAl 2 O 3 ,SiO 2 ,RE 2 O 3 換算でAl 2 O 3 が5〜50質量%,SiO 2 が5〜20質量%,残部がRE 2 O 3 およびNであるRE−Al−Si−O−Nからなる粒界相を、前記主相と前記粒界相とからなる焼結体に対して4〜20体積%の範囲で含み、かつFeの珪化物粒子をFe換算で前記焼結体に対して0.02〜3質量%含んでおり、800℃における熱伝導率が10W/(m・K)以上であり、かつ800℃における4点曲げ強度が500MPa以上である窒化珪素質焼結体からなる筒状の本体部1aの一方端に金属の溶湯2中で溶湯射出主筒部3の側面に接合される接合部1bを、他方端に鋳型(不図示)に接続される接続部1cを有している。そして、溶湯射出主筒部3中に貫通孔10を通って導入された溶湯2が、不図示のプランジャーによって上方より押圧を加えられると、ノズル1の接合部1b,本体部1a,接続部1cの筒内の流路1dを通って鋳型へ射出する構成である。ここで、ノズル1の本体部1aは、接続部1c側から接合部1b側に向かって一定の割合で次第に肉厚を厚くしており、接合部1b側の肉厚を接続部1c側の肉厚の1.5〜2倍としてある。
なお、このノズル1は、水平面に対して上向きに13〜25°傾斜して、溶湯射出主筒部3の側面にパッキング28を介して接合されている。
次に、図2を用いて、本発明のノズルをホットチャンバダイカストマシンに組み込んだ、本発明のホットチャンバダイカストマシンの構成の一例を説明する。図2(a)は本発明のホットチャンバダイカストマシンの一例の正面からの断面図、図2(b)は図2(a)に示すホットチャンバダイカストマシンの右側面からの断面図を示す。
図2(a)に示すように、ホットチャンバダイカストマシン29の溶湯射出主筒部3は、その底部が段部4aによって支持される外筒部4中に収められて溶湯2中に浸漬している。溶湯2は、溶湯2側にセラミック系の耐溶湯性の高い膜が施された溶湯槽5に収容されており、ヒーター6により下部から加熱されている。ヒーター6は、炉体7内に収められており、図2(b)に示すように複数本が列設されている。溶湯射出主筒部3と外筒部4との間に図1に示すようにキーなどの回り止め手段8が設けられて相互間における回転を防止しているが、ピンやキーなどの回り止め手段8に代えて段差で係合するような構造を採ることもできる。
溶湯2は、外筒部4の側面に形成された連通孔9を介して、溶湯射出主筒部3の側面に設けられた貫通孔10から溶湯射出主筒部3に入り、溶湯射出主筒部3内を往復運動するプランジャー11により押されて、ノズル1,スプルーブッシュ12,ランナー部13を順次通って鋳型14に射出されるようになっている。鋳型14は、固定金型14aと可動金型14bとにより構成されている。ノズル1は接続部1cの近傍が冷えないようにノズルヒーター15によって加熱されている。また、綿状セラミック堰16は、溶湯槽5から引き出されたノズル1の周りから溶湯2が漏れないように封止するものである。
図2に示すノズル1は、外筒部4の側面に設けられた外筒孔17を通り、その接合部1bが溶湯射出主筒部3の側面にリング状シール材18を介して接合されている。これに対し、固定金型14aはノズルタッチ用の油圧シリンダー(不図示)により1トンから数トンまでの力でノズル1を押し、ノズル1とスプルーブッシュ12との間、およびノズル1と溶湯射出主筒部3との間からの溶湯1の漏れを防止している。
外筒部4はその上部をフランジ19に挿入されて支持されている。フランジ19は、図2(b)に示すように、サドルのような保持構造体20の中間部に両側から対向するように突設された支持部21にボルト22で押え板23とともに固定され、保持構造体20から吊り下げられる構造となっており、この構造により、油圧シリンダー24と溶湯射出主筒部3との軸芯が溶湯槽5の温度変化や位置の移動によってずれることがないようにしている。
プランジャー11は、図2(a)に示すように、カップリング25を介して上下運動をする油圧シリンダー24の作用力を受けるように連結されていて、溶湯2を図2(a)に示すような鋳型14に送り込むように機能し、プランジャー11の上下運動によって溶融射出主筒部3が浮き上がらないように溶融射出主筒部押さえボルト26とセラミック製の耐溶湯端子27とで外筒部4の底部に押さえられている。溶湯2は公知の補給機構(不図示)によって溶湯槽5に適宜補給され、溶湯槽5における溶湯2の湯面は常に一定レベルに保持されるようになっている。
そして、このようなホットチャンバダイカストマシン29に用いるノズル1には、固定金型14aがノズル1を1トンから数トンまでの力で押圧して、ノズル1とスプルーブッシュ12との間、およびノズル1と溶湯射出主筒部3との間からの溶湯2の漏れを防止しているので、高い曲げ強度が要求される。特に、固定金型14aがノズル1を押圧すると、ノズル1にかかる応力はノズル1の接合部1bの近傍に集中しやすくなり、この部分が割れやすいという問題があるので、補強が必要である。
このため本発明では、ノズル1の本体部1aが接続部1c側から接合部1b側に向かって一定の割合で次第に肉厚が厚くなっており、接合部1b側の肉厚が接続部1c側の肉厚の1.5〜2倍であることが重要である。ノズル1の本体部1aは、このような肉厚の比率で接続部1c側から接合部1b側に向かって一定の割合で次第に肉厚を厚くすることで、本体部1aの曲げ剛性が高くなっているため、金属の溶湯2による熱応力や、ホットチャンバダイカストマシン29自体から発する強い振動や、鋳型14からの強い衝撃等を受けてもほとんど割れることがないようになっている。
ノズル1の本体部1aは、例えば、長さが245〜300mm,内径が10〜15mm,接続部1c側の肉厚が10〜15mm,接合部1b側の肉厚が15〜30mmの円筒体であり、接続部1c側から接合部1b側に向かって一定の割合で次第に肉厚を厚くしてある。
ここで、接続部1c側から接合部1b側に向かって一定の割合で次第に肉厚が厚くなっている状態とは、本体部1a全体の傾向として接続部1c側から接合部1b側に向かって徐々に任意の一定比率で厚くなっている状態をいい、数μm程度の表面粗さや、外周面に存在する開気孔や脱粒に伴う微小な凹凸等は許容するものである。
また、ノズル1は、本体部1aの長さに比例するように、接続部1c側から接合部1b側に向かって次第に肉厚が厚くなっていてもよい。
ノズル1を形成するセラミックスとしては、耐食性や耐熱衝撃性を求められることから、耐食性や耐熱衝撃性が良好な窒化珪素質焼結体またはサイアロン質焼結体であることが好適である。
ところで、ノズル1を形成するセラミックスの高温における強度や熱伝導率は、ノズル1の変形に関与し、このセラミックスの高温における強度を高くすることで、高温の溶湯2がノズル1内部の流路1dに満たされた状態で固定金型14aから強い力を受けても容易に変形しないものとなる。
また、高温における熱伝導率を高くすることで、ノズル1の内周側と外周側との均熱を容易に保つことができ、ノズル1の変形を抑制することができる。さらに、ノズル1を形成するセラミックスの粒界相は、腐食性の高い亜鉛,アルミニウムおよびこれらの合金等の溶湯2に曝されても、これら金属の溶湯2で粒界相が浸食されないことが望まれている。
このような観点から、ノズル1を形成するセラミックスは、組成式Si6−ZAlZOZN8−Z(z=0.1〜1)で表されるβ−サイアロンを主相とし、Al,Si,RE(REは周期表第3族元素)の構成比率がそれぞれAl2O3,SiO2,RE2O3換算でAl2O3が5〜50質量%,SiO2が5〜20質量%,残部がRE2O3およびNであるRE−Al−Si−O−Nからなる粒界相を、前記主相と前記粒界相とからなる焼結体に対して4〜20体積%の範囲で含み、かつFeの珪化物粒子をFe換算で前記焼結体に対して0.02〜3質量%含んでおり、800℃における熱伝導率が10W/(m・K)以上であり、かつ800℃における4点曲げ強度が500MPa以上である窒化珪素質焼結体からなることが重要である。
組成式Si6−zAlzOzN8−z(z=0.1〜1)で表されるβ−サイアロンの主相はβ−Si3N4内にAl,O,N成分が固溶した結晶から構成される主相であり、固溶量zの値は、窒化珪素質焼結体の熱伝導率や強度に影響を与える。固溶量zが小さい場合は、焼結性が低下するため、緻密化を促進しようとして焼成温度を上げざるを得ず、この結果、異常な粒成長が発生し、高温における強度が低下するおそれがある。一方、固溶量zが大きいと、β−Si3N4の結晶対称性が損なわれて、結晶の熱伝導性が低下するため、窒化珪素質焼結体の高温における熱伝導率が低下するおそれがある。このような観点から、固溶量zは0.1〜1とすることにより、高温における熱伝導率および強度とも高い窒化珪素質焼結体を得ることができ、特に、固溶量zは0.3〜0.8であることがより好適である。
ここで、固溶量zは、次のようにして算出することができる。すなわち、原料粉末窒化珪素質焼結体を粒度200メッシュ以下に粉砕し、得られた粉末に対して粉末X線回折法における回折角の角度補正用サンプルとして高純度α−窒化珪素粉末(宇部興産製E−10グレード、Al含有量は20ppm以下)を60質量%添加して乳鉢にて均一混合し、粉末X線回折法により解析範囲2θを33〜37°とし、走査ステップ幅を0.002°として、Cu−Kα線(λ=1.54056Å)にてプロファイル強度を測定する。角度の補正は、角度補正用サンプルより得られるピークの最大値を用いて補正する。
すなわち、2θ=34.565°付近に現れるα(102)の0.002°毎に得られるピーク強度の上位10点の平均2θと34.565°との差(Δ2θ1)、および2θ=35.333°付近に現れるα(210)の0.002°毎に得られるピーク強度の上位10点の平均2θと35.333°との差(Δ2θ2)をそれぞれ求め、その差の平均(Δ2θ1+Δ2θ2)/2を補正Δ2θとする。次に、2θ=36.055°付近に現れるβ(210)の0.002°毎に得られるピーク強度の上位10点の平均2θを補正Δ2θによって補正した角度をノズルのβ(210)のピーク位置(2θβ)とする。そして、ピーク位置(2θβ),λ=1.54056Å,(hkl)=(210)を以下の数式に代入して格子定数a(Å)を算出する。
sin2θβ=λ2(h2+hk+k2)/(3a2)+λ2l2/(4c2)
この数式で算出した格子定数a(Å)と、K. H. Jack,J.Mater.Sci.,11(1976)1135−1158,Fig. 13に記載された格子定数a(Å)−固溶量zのグラフとから、固溶量zを求めることができる。
粒界相はRE−Al−Si−O−Nからなり、Al,Si,REの構成比率がAl2O3、SiO2、RE2O3換算でAl2O35〜50質量%、SiO25〜20質量%、残部がRE2O3およびNであり、前記主相と粒界相とからなる焼結体に対して4〜20体積%の範囲で含むことが好適である。なお、本発明では、RE2O3,Al2O3,SiO2およびNの総和を100質量%として粒界相の構成比率として表現する。一般的に、RE−Al−Si−Oを含む酸化物は、窒化珪素やサイアロンの緻密化を促進するものである。RE2O3 ,Al2O3 ,SiO2等の粉末原料は温度上昇に伴って反応し、1400℃以上で窒化珪素やサイアロンと濡れの良い液相を生成した後、窒化珪素やサイアロンを溶解することで、RE−Al−Si−O−Nからなる粒界相を形成する。
この粒界相におけるAlの構成比率は、窒化珪素質焼結体の熱伝導率や強度に影響を与える。Alの構成比率が低過ぎたり高過ぎたりすると、RE2O3−Al2O3−SiO2系の最低液層生成組成(以下、低融点組成という。)から外れる可能性が高くなる。このため、焼成温度を高くしなければならず、焼成温度を高くすると、β−Si3N4内にAl,O,N成分が固溶した結晶は粗大化し、高温における強度が低下する。併せて、Alの構成比率が高過ぎる場合には、固溶量zが1より大きくなりやすく、窒化珪素質焼結体の高温における熱伝導率も低下する。
また、粒界相のSiの構成比率も、窒化珪素質焼結体の熱伝導率や強度に影響を与える。Siの構成比率が低いと、低融点組成から外れる可能性が高くなり、Alの場合と同様に、高温における強度が低下する。一方、Siの構成比率が高いと、低融点組成に近づくが、そのために粒界相を構成する原子同士の高温における結合力が弱くなるため、高温におけるフォノンの伝搬の低下により、高温における熱伝導率および強度とも低下する。
このような観点から、Al,Si,RE(REは周期表第3族元素)の構成比率はそれぞれAl2O3,SiO2,RE2O3換算でAl2O3が5〜50質量%,SiO2が5〜20質量%,残部がRE2O3およびNであることが好適であり、この構成比率は焼結性の向上だけではなく、高温においても粒界相の原子間結合力を保持できるので、高温における熱伝導率および強度の改善に効果的である。
また、粒界相の焼結体に対する比率は、窒化珪素質焼結体の熱伝導率や強度に影響を与える。粒界相の比率が高過ぎると高温における熱伝導率および強度とも低下し、低過ぎると強度が低下する。粒界相の焼結体に対する比率は、4〜20体積%であることが好適であり、この範囲にすることで高温における熱伝導率および強度とも高い窒化珪素質焼結体を得ることができる。
このようなRE2O3,Al2O3,SiO2の構成比率および粒界相の比率は次のようにして求めることができる。すなわち、ICP(Inductively Coupled Plasma)分光分析法により焼結体中のREおよびAlの各比率(質量%)を測定し、この比率(質量%)をそれぞれRE2O3およびAl2O3にした場合の比率(質量%)に換算する。次に、酸素分析法によりLECO社製酸素分析装置(TC−136型)を用いて焼結体中のすべての酸素の比率を測定し、RE2O3およびAl2O3の酸素の比率を差し引き、残りの酸素の比率をSiO2の比率(質量%)に換算する。焼結体中の残部をSi3N4とみなし、各比率(質量%)をそれぞれの理論密度(Y2O3:5.02g/cm3 ,Er2O3:8.64g/cm3 ,Yb2O3:9.18g/cm3 ,Lu2O3:9.42g/cm3 ,Al2O3:3.98g/cm3 ,SiO2:2.65g/cm3 ,Si3N4:3.18g/cm3)で除して、粒界相の体積比率を算出する。
次に、エネルギー分散型X線分光分析法(EDS)を用いて粒界相に含まれる窒素(N)の比率(質量%)を算出し、RE2O3,Al2O3,SiO2および窒素(N)の各比率(質量%)の総和を100%として粒界相の構成比率を算出する。
また、焼結体中のFeの珪化物粒子は、焼結体の破壊靱性,耐熱衝撃性,熱伝導率,強度に影響を与える。
Feの珪化物は、熱膨張係数が大きく、β−サイアロン粒子や粒界相に対して残留応力を発生させていると思われ、焼結体の破壊靱性を向上させる効果があり、耐熱衝撃性の向上にも有効である。また、高温における破壊の形態である粒界滑りが発生する際に、β−サイアロン粒子の滑りを妨げるくさびのような働きをしており、高温における強度を向上させる効果があり、耐熱衝撃性の向上にも有効である。また、Feの珪化物は、焼成時の液相成分の一つとして作用し、焼結性の向上に効果的である。Feの珪化物粒子がFe換算で前記焼結体に対して0.02質量%より少ないと、焼結体の破壊靱性および高温における強度を十分高くすることができない。また、Feの珪化物は熱伝導率が低いため、Feの珪化物粒子をFe換算で前記焼結体に対して3質量%を超えると、焼結体の熱伝導率が低下する。なお、Feの珪化物は粉末X線回折法やX線マイクロアナライザー(EPMA)による元素分析によってその形態を確認することができる。また、ICP分光分析法により定量化することができる。
なお、Feの珪化物は、β−サイアロンの粒子間またはRE−Al−Si−O−Nからなる粒界相中に粒径が50μm以下、望ましくは粒径が2〜30μmの粒子として点在して、FeSi2,FeSi,Fe3Si,Fe5Si3の形態で存在することが好ましく、特にFeSi2(JCPDS#35−0822)であることが好ましい。
さらに、ノズル1を構成するセラミックスを、上述のような窒化珪素質焼結体とすることで、溶湯2が亜鉛,アルミニウムやその合金等腐食性の高いものであったとしても、これら溶湯2は粒界相を容易に浸食することができないので、本体部1aの内面にこれら金属は溶滓(ノロ)として付着することがなくなる。
なお、粒界相中のREは周期表第3族元素、例えばEr,Yb,Lu等であっても構わないが、REがYであることが好ましい。これは、Yは周期表第3族元素の中でも軽元素であるためフォノンの伝搬が良く、粒界相の熱伝導率の向上に効果的であるからである。
なお、800℃における熱伝導率および4点曲げ強度は、それぞれJIS R 1611−1997,JIS R 1604−1995に準拠して測定すればよい。
このような本発明のノズル1を得るための第1の製造方法を説明する。
まず、窒化珪素質粉末のβ化率が40%以下であって、組成式Si6−ZAlZOZN8−Zにおける固溶量zが0.5以下である窒化珪素質粉末と、添加物成分としてRE2O3,Al2O3,Fe2O3の各粉末とを、バレルミル,回転ミル,振動ミル,ビーズミル等を用いて湿式混合し、粉砕してスラリーとする。
窒化珪素には、その結晶構造の違いにより、α型およびβ型という2種類の窒化珪素が存在し、α型は低温で、β型は高温で安定であり、1400℃以上でα型からβ型への相転移が不可逆的に起こる。
ここで、β化率とは、X線回折法で得られたα(102)回折線とα(210)回折線の各ピーク強度の和をIα、β(101)回折線とβ(210)回折線の各ピーク強度の和をIβとしたときに、次の式によって算出される値である。
(β化率)={Iβ/(Iα+Iβ)}×100 (%)
窒化珪素質粉末のβ化率は、窒化珪素質焼結体の強度および破壊靱性値に影響する。β化率が40%以下の窒化珪素質粉末を用いるのは、強度および破壊靱性値とも高くすることができるからであり、β化率が40%を超える窒化珪素質粉末は、焼成工程で粒成長の核となって粗大で、しかもアスペクト比の小さい結晶となりやすく、強度および破壊靱性値とも低下するからである。
特に、β化率が10%以下の窒化珪素質粉末を用いるのが好適であり、これにより、固溶量zを0.1以上にすることができる。
また、固溶量zは、窒化珪素質焼結体の熱伝導率に影響し、固溶量zが0.5以下の粉末を用いるのは、焼結後にアスペクト比5以上の針状結晶組織が得られ、窒化珪素質焼結体の強度および熱伝導率とも高くすることができるからであり、固溶量zが0.5を超える場合は、窒化珪素質粉末が焼成工程で粒成長の核となり、焼結後の主相となるβ−サイアロンの固溶量zが1を超えやすく、熱伝導率が低下するおそれがあるからである。
窒化珪素質粉末の粉砕で用いるメディアは、窒化珪素質,ジルコニア質,アルミナ質等の各種焼結体からなるメディアを用いることができるが、不純物が混入しにくい材質、あるいは同じ材料組成の窒化珪素質焼結体からなるメディアが好適である。
なお、粒度分布曲線の累積体積の総和を100%としたときの累積体積が90%となる粒径(D90)が3μm以下となるまで粉砕することが、焼結性の向上および結晶組織の針状化の点から好ましい。粉砕によって得られる粒度分布は、メディアの外径,メディアの量,スラリーの粘度,粉砕時間等で調整することができる。スラリーの粘度を下げるには分散剤を添加することが好ましく、短時間で粉砕するには、予め累積体積50%となる粒径(D50)が1μm以下の粉末を用いることが好ましい。
次に、得られたスラリーを粒度200メッシュより細かいメッシュを通した後に乾燥させて顆粒を得る。また、スラリーの段階でパラフィンワックスやポリビニルアルコール(PVA),ポリエチレングリコール(PEG)等の有機バインダーを粉体重量に対して1〜10質量%外添して混合することが、成形性のために好ましい。乾燥は、ビーカーで乾燥させてもよいし、スプレードライヤーにて乾燥させてもよく、他の方法であっても何ら問題ない。
次に、得られた顆粒を、冷間等方圧加圧法(CIP)を用いて相対密度が45〜60%の所望形状の成形体とする。成形圧力は50〜300MPaの範囲であれば、成形体の密度の向上や顆粒の潰れ性の観点より好適である。得られた成形体は、窒素雰囲気中、あるいは真空雰囲気中などで脱脂した方がよい。脱脂温度は添加した有機バインダーの種類によって異なるが、900℃以下がよく、特に500〜800℃とすることが好適である。
次に、焼成による成分の揮発を抑制したり、外部からの異物の付着を防止したりするために、焼成サヤ内に成形体を配置する。焼成サヤの材質は、カーボン質,窒化珪素質,炭化珪素質、またはこれら複合物などの材質がよい。また、焼成サヤの気孔率が高い場合は、焼成サヤの表面に窒化珪素質の粉末を塗布してもよい。また、カーボン質からなる焼成サヤの表面に窒化珪素質の粉末を塗布してもよい。焼成サヤ内には成形体の含有成分の揮発を抑制するためにRE2O3,Al2O3,SiO2等の成分を含んだ共材を配置してもよい。焼成炉としては、一般的な窒化珪素質成形体の焼成に用いる黒鉛抵抗発熱体を使用した焼成炉を用いることができる。
また、成形体の配置方法として、カーボン粉末中に焼成サヤごと埋設する方法や、焼成サヤ内に窒化珪素質粉末,炭化珪素質粉末を充填し、その中に成形体を埋設する方法を用いれば、電気炉を用い、大気中で焼成することも可能である。このような方法を用いると、大気中の酸素ガスは除去され、実質的に焼成雰囲気は窒素雰囲気となる。温度については、室温から300〜1000℃までは真空雰囲気中にて昇温し、その後窒素ガスを導入して、窒素分圧を50〜300kPaに維持する。このとき成形体の開気孔率は40〜55%程度であるため、成形体中には窒素ガスが十分充填される。1000〜1400℃付近では添加物成分であるRE2O3,Al2O3が固相反応を経て、液相成分を形成し、約1400℃以上の温度域で、β−サイアロンを析出し、緻密化が開始する。β−サイアロンはβ−Si3N4のSi4+位置にAl3+、N3−、O2−が置換固溶したものであり、Si3N4−AlN−Al2O3−SiO2系の多くの状態図(例えば、K. H. Jack,J. Mater. Sci.,11(1976)1135−1158,Fig. 11)にあるように、β−サイアロン相の安定領域はSi3N4−Al2O3−SiO2系に対してN3−が価数の安定には不足しており、外部からN3−の供給が必要となる。本発明者が鋭意検討した結果、成形体中に充填された窒素ガスがN3−となることを突き止めるとともに、窒素分圧を低く抑えることによってβ−サイアロンの固溶量zを低くすることが可能であることを見出した。すなわち、開気孔率が十分大きい段階(開気孔率が40〜55%から5%に達するまでの段階)はできるだけ窒素分圧を低く設定する必要があり、50〜300kPaとすることが重要である。窒素分圧が300kPaを超えると、β−Si3N4に対しAl3+、N3−、O2−の置換固溶が進み、固溶量zが1を超えやすくなり、熱伝導率が低下する。窒素分圧が50kPaより小さくなると、β−サイアロンの平衡窒素分圧より小さくなり、β−サイアロンの分解反応が進行して、シリコンが溶融するため、正常な窒化珪素質焼結体にならない。また、温度が1800℃を超えるとAl3+、N3−、O2−の置換固溶が進行し、固溶量zが1を超えやすくなり、熱伝導率が低下する。焼結が進行し、開気孔率が5%未満となった場合は、窒化珪素質焼結体中への窒素ガスの供給量が少なくなるため、300kPaを超える窒素分圧であっても構わないし、1800℃以上の温度で焼成しても構わず、最終的には相対密度96%以上まで緻密化を進行させることで、高温における強度および熱伝導とも高い窒化珪素質焼結体からなるノズル1を得ることができる。
なお、微細な結晶組織を得るには焼成温度を1700℃以上1800℃未満にすればよい。また、真空雰囲気中にて昇温後、窒素分圧は150kPa以下とした方が経済的観点からも望ましい。より緻密化を促進するには、開気孔率が5%以下となった段階で200MPa以下の高圧ガス圧処理または熱間等方加圧(HIP)処理を施しても構わない。この場合、開気孔率1%以下で、相対密度が97%以上、さらには99%以上まで焼結を促進させた後に、高圧ガス圧処理または熱間等方加圧(HIP)処理を施すことが好適である。
また、添加したFe2O3粉末は焼成で主相であるβ−サイアロンと反応して、酸素成分を脱離し、Feの珪化物粒子を生成する。
次に、本発明のノズル1を得るための第2の製造方法を示す。
まず、シリコン粉末,上述と同様の窒化珪素質粉末および添加物成分としてRE2O3,Al2O3,Fe2O3の各粉末(以下、添加物粉末という。)を、(シリコン粉末)/(窒化珪素質粉末)の質量比で1〜10となるように混合する。シリコン粉末は、窒化珪素質粉末,添加物粉末とともにイソプロピルアルコールで湿式混合して粉砕することもできるし、別途シリコン粉末のみを粉砕した後に、湿式混合することもできる。但し、シリコン粉末は大き過ぎると、その後の窒化不足や焼結不良の原因となりやすいので、シリコン粉末単独で粒度分布曲線の累積体積の総和を100%としたときの累積体積が90%となる粒径(D90)が10μm以下、好ましくは6μm以下となるように粉砕することが重要である。さらに、同時に湿式混合して粉砕する場合や、別途粉砕した後に湿式混合する場合は、混合粉末の粒径(D90)を5μm以下にすることが重要である。混合・粉砕工程において粉砕するため、例えば、粒度40メッシュ以下の粒径の大きい安価なシリコン粉末を使用することは経済的に有効である。得られた粉末を用いて、混合方法,粉砕方法,乾燥方法および成形方法は第1の製造方法に従って、成形体を形成すればよい。
なお、シリコン粉末を含有した成形体は含有しない成形体より相対密度は高く、その値は50〜65%となる。
次に、シリコン粉末を含有した成形体を、窒素分圧50kPa〜1.1MPa、温度1000〜1400℃の範囲でシリコン粉末を窒化珪素に変換して、β化率が40%以下、固溶量zが0.5以下の窒化珪素質多孔体を得ることができる。シリコン粉末は窒素ガスと窒化反応することでSi3N4成分となる。このとき生成したSi3N4成分はシリコン粉末より大きな体積となるが、窒化珪素質多孔体の空隙部を埋めるように体積膨張するため、窒化反応により相対密度は55〜70%まで上昇し、その後の焼成収縮率が小さくなり、焼成変形が小さくなる利点がある。
また、相対密度の上昇によって閉気孔が増加すると、多孔体中からN3−の飛散を抑制することができるので、固溶量zが小さくなる利点もある。また、1000〜1400℃の温度範囲で窒化する際にRE2O3−Al2O3−SiO2が固相反応しAl2O3がSi3N4中へ固溶しにくくなる利点もある。しかしながら、窒化反応は発熱反応であるため、急激な窒化反応は自己発熱による異常な温度上昇を引き起こし、α−Si3N4より焼結性の劣るβ−Si3N4(サイアロン)への窒化が進行し、さらにはシリコンが溶融する危険性がある。また、(シリコン粉末)/(窒化珪素質粉末)の質量比が10より大きい場合は、急激な窒化反応を制御するのが困難であり、異常な温度上昇を引き起こすおそれがあり、(シリコン粉末)/(窒化珪素質粉末)の質量比が1より小さい場合は、上述の利点が十分生かせないことがある。従って、(シリコン粉末)/(窒化珪素質粉末)の質量比は1〜10、望ましくは3〜8が良い。
次に、窒素分圧が50kPaより小さい場合は、窒化反応が進まず、窒化不足となることもある。窒素分圧が1.1MPaを超えると急激な窒化反応が発生し、異常な温度上昇が生じやすくなる。また、1000℃より低い温度では窒化反応が進行しない。1400℃を超えると未窒化のシリコンが溶融して割れたり、あるいは固溶量zの大きいβ−サイアロンが析出したりして、熱伝導率の低い焼結体となりやすい。
より好ましくは、次のように窒化反応を進行させることが良い。すなわち、シリコン粉末を含む成形体は、窒化工程において成形体の表面のシリコン粉末から窒化が始まり、時間の経過とともに成形体の内部に存在するシリコン粉末の窒化が進行するので、窒化工程の途中には、成形体表面よりも成形体内部でシリコンの量が多い状態が存在する。成形体をこの状態から完全に窒化させるには、低温での窒化(第1の窒化工程)の後、高温での窒化(第2の窒化工程)を行なう必要がある。すなわち、1000〜1200℃で成形体中のシリコン粉末の10〜70質量%を窒化するとともに、成形体のβ化率を30%未満とする第1の窒化工程と、1100〜1400℃で成形体中のシリコン粉末の残部を窒化珪素に変換して窒化珪素質多孔体とするとともに、窒化珪素質多孔体のβ化率を40%未満とする第2の窒化工程とによって、窒化による発熱反応を制御し、その後の均一な焼結を進行することが結晶組織が均一かつ緻密な焼結体を得られるという点で好ましい。第2の窒化工程の温度は第1の窒化工程の温度よりも高くする。また、第1の窒化工程と第2の窒化工程は連続して実施した方が実質的に窒化工程が1回となるため、経済的に製造できるので好ましい。
以上のようにしてシリコン粉末を窒化すると、β化率が40%以下で、固溶量zが0.5以下の窒化珪素質多孔体となる。β化率が10%以下の窒化珪素質多孔体とする方が、アスペクト比5以上の針状結晶組織が得られ、高強度となり望ましい。また、前述のように焼結前の固溶量zは極力小さいほうが好適であるが、特に固溶量zが0.5を超えるようなβ−サイアロン粉末に窒化された場合は、この粉末が粒成長の核となり、焼結後の主相となるβ−サイアロンの固溶量zは1を超えやすく、熱伝導率が低下する。
なお、焼成方法は第1の製造方法で示した方法に従えばよいが、窒化工程と焼成工程とは連続で行なった方が工程を短縮することができて経済的に好ましいが、別途分けて実施しても構わない。
上述した第1または第2の製造方法によって窒化珪素質焼結体からなるノズル1を得ることができるが、接合部1b,接続部1cとも本体部1aと一体的に冷間等方圧加圧法(CIP)で成形してノズル1を形成してもよく、本体部1a,接合部1b,接続部1cを別々に窒化珪素質焼結体で形成し、Y2O3−Al2O3−SiO2系ガラスや、これに予め窒化珪素を加えた組成のガラスを用いてこれら各部材を接合して、ノズル1としてもよい。
そして、このようなセラミックスでノズル1を形成することによって、セラミックスとして、組成式Si6−ZAlZOZN8−Z(z=0.1〜1)で表されるβ−サイアロンを主相とし、Al,Si,RE(REは周期表第3族元素)の構成比率がそれぞれAl2O3,SiO2,RE2O3換算でAl2O3が5〜50質量%,SiO2が5〜20質量%,残部がRE2O3およびNであるRE−Al−Si−O−Nからなる粒界相を、前記主相と前記粒界相とからなる焼結体に対して4〜20体積%の範囲で含み、かつFeの珪化物粒子をFe換算で前記焼結体に対して0.02〜3質量%含んでおり、800℃における熱伝導率が10W/(m・K)以上であり、かつ800℃における4点曲げ強度が500MPa以上である窒化珪素質焼結体によってノズル1を構成できるので、ノズル1の耐熱衝撃性が高くなり、長期間使用を続けてもほとんど割れることがない、より好適なノズル1を得ることができる。
そして、本発明のノズル1を用いたホットチャンバダイカストマシン29は、金属の溶湯槽5内に配置された金属の溶湯2を射出する溶湯射出主筒部3と、溶湯槽5内で溶湯射出主筒部3の側面に接合部1bが接合され、鋳型4との接続部1cが溶湯槽5外に配置されたノズル1とを備えており、ノズル1は、上述の通り、金属の溶湯2による熱応力や、ホットチャンバダイカストマシン29自体から発する強い振動や、鋳型からの強い衝撃等を受けてもほとんど割れることはないので、装置自体も信頼性が高く、耐用性に優れているものとなる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本体部1aが、接続部1c側から接合部1b側に向かって一定の割合で次第に肉厚が厚くなっている本発明のノズル1を、アルミニウムの溶湯2中で溶湯射出主筒部3の側面に接合した、図2(a)および(b)に示すホットチャンバダイカストマシン29を準備した。
また、比較例として、本発明のノズル1に代えて、本体部1aの肉厚が接続部1c側から接合部1b側に向かって一定であるノズル、および本体部1aの肉厚が接続部1c側から中央まで一定で、中央から接合部1b側に向かって一定の割合で次第に厚くなっているノズルをそれぞれアルミニウムの溶湯2中で溶湯射出主筒部3の側面に接合したホットチャンバダイカストマシンを準備した。これらのノズルはいずれも公知の窒化珪素質焼結体からなり、本体部1aの長さ,内径,接続部1c側の肉厚,接合部1b側の肉厚は、それぞれ表1に示す通りに設定した。
そして、以上のノズルを外周側よりノズルヒーターを用いて700℃で加熱し、ノズルの内部には700℃のアルミニウムの溶湯2を満たした状態で、ノズルの軸に対して15°上方から2.4×104Nの衝撃力をノズルに与え、破壊の有無を調査して、表1に破壊したものを○、破壊しなかったものを×で示した。
ここで、2.4×104Nの衝撃力をノズルに与えたのは、本発明のホットチャンバダイカストマシン29では、ノズルの軸に対し、鋳型14を2.4×104Nの力でノズル1に押し付けることで、ノズル1と鋳型14との間から発生する溶湯2の漏れを防止するためであり、状況によっては、この力が衝撃となってノズル1に加わるからである。
併せて、コンピュータシミュレーションによりノズル1の応力解析を実施し、接合部1b側の本体部1a端面で発生する応力を計算した。
表1に示す結果から分かるように、比較例である本体部1aの肉厚が一定である試料No.3は、ノズルが破壊し、応力解析でも接合部1b側の本体部1a端面で発生する応力は429MPaと高かった。
また、別の比較例である本体部1aの肉厚が接続部1c側から中央まで一定で、中央から接合部1b側に向かって一定の割合で次第に厚くなっている試料No.4も、ノズルが破壊した。但し、応力解析では接合部1b側の本体部1a端面で発生する応力は168MPaと低かったものの、中央で発生する応力は226MPaと高く、破壊源も本体部1aの中央であった。
一方、本発明のノズル1である、本体部1aが接続部1c側から接合部1b側に向かって一定の割合で次第に肉厚が厚くなっており、接合部1c側の肉厚が接続部1b側の肉厚の1.5〜2倍である試料No.1,2は、ノズル1は破壊せず、応力解析でも接合部1b側の本体部1a端面で発生する応力は176MPa以下と低かった。
したがって、同じ材料を用いても、本体部1aが接続部1c側から接合部1b側に向かって一定の割合で次第に肉厚が厚くなっており、接合部1c側の肉厚が接続部1b側の肉厚の1.5〜2倍である本発明の試料No.1,2のノズル1は、比較例No.3,4に比べて破壊が生じず良好であることが分かる。
(実施例2)
窒化珪素質粉末(平均粒径D50=3μm,Al含有量は200ppm,酸素含有量は0.9質量%),Y2O3粉末(平均粒径D50=0.9μm),Er2O3粉末(平均粒径D50=0.9μmおよび平均粒径D50=1.5μm),Yb2O3粉末(平均粒径D50=2.3μm),Lu2O3粉末(平均粒径D50=0.6μm),Al2O3粉末(平均粒径D50=0.5μm),SiO2粉末(平均粒径D50=1.9μm),Fe2O3粉末(平均粒径D50=0.6μm)を所定量調合し、振動ミルを用いて72時間粉砕混合し、D90=1.5μmの混合粉末からなるスラリーを作製した。次に、混合粉末に対してポリビニルアルコール(PVA)を5質量%添加し、粒度400メッシュを通して異物を除去し、乾燥して顆粒を得た。そして、この顆粒を冷間等方圧加圧法(CIP)により成形体とし、600℃の窒素雰囲気中でポリビニルアルコール(PVA)を除去後、窒化珪素質焼結体からなる焼成サヤ内に配置し、窒素分圧を110kPaに維持した状態で、1750℃、15時間で焼成してノズルを得た。アルキメデス法にて気孔率を測定した結果、全てのノズルは気孔率が2%以下となっていた。さらに、300kPaの窒素中にて1800℃、5時間で再度焼成して、相対密度が97%以上の窒化珪素質焼結体からなるノズルを得た。
ノズル中の組成式Si6−ZAlZOZN8−Zの固溶量zは、次のようにして算出した。すなわち、原料粉末を粒度200メッシュ以下に粉砕し、得られた粉末に対して粉末X線回折法における回折角の角度補正用サンプルとして高純度α−窒化珪素粉末(宇部興産製E−10グレード、Al含有量は20ppm以下)を60質量%添加して乳鉢にて均一混合し、粉末X線回折法により解析範囲2θを33〜37°とし、走査ステップ幅を0.002°として、Cu−Kα線(λ=1.54056Å)にてプロファイル強度を測定した。角度の補正は、角度補正用サンプルより得られるピークの最大値を用いて補正した。すなわち、2θ=34.565°付近に現れるα(102)の0.002°毎に得られるピーク強度の上位10点の平均2θと34.565°との差(Δ2θ1)、および2θ=35.333°付近に現れるα(210)の0.002°毎に得られるピーク強度の上位10点の平均2θと35.333°との差(Δ2θ2)をそれぞれ求め、その差の平均(Δ2θ1+Δ2θ2)/2を補正Δ2θとした。次に、2θ=36.055°付近に現れるβ(210)の0.002°毎に得られるピーク強度の上位10点の平均2θを補正Δ2θによって補正した角度をノズルのβ(210)のピーク位置(2θβ)とした。そして、ピーク位置(2θβ),λ=1.54056Å,(hkl)=(210)を以下の数式に代入して格子定数a(Å)を算出した。
sin2θβ=λ2(h2+hk+k2)/(3a2)+λ2l2/(4c2)
この数式で、算出した格子定数a(Å)と、K. H. Jack,J.Mater.Sci.,11(1976)1135−1158,Fig. 13に記載された格子定数a(Å)−固溶量zのグラフとから、固溶量zを求め、この値を表2に示した。
また、RE2O3,Al2O3,SiO2の構成比率、粒界相の比率は次のようにして求めた。すなわち、ICP分光分析法によりノズル中のREおよびAlの各比率(質量%)を測定し、この比率(質量%)をそれぞれRE2O3およびAl2O3にした場合の比率(質量%)に換算した。次に、酸素分析法によりLECO社製酸素分析装置(TC−136型)を用いてノズル中のすべての酸素の比率を測定し、RE2O3およびAl2O3の酸素の比率を差し引き、残りの酸素の比率をSiO2の比率(質量%)に換算した。ノズル中の残部をSi3N4とみなし、各比率(質量%)をそれぞれの理論密度(Y2O3:5.02g/cm3,Er2O3:8.64g/cm3,Yb2O3:9.18g/cm3,Lu2O3:9.42g/cm3,Al2O3:3.98g/cm3,SiO2:2.65g/cm3,Si3N4:3.18g/cm3)で除して、粒界相の体積比率を算出し、この値を表2に示した。
次に、エネルギー分散型X線分光分析法(EDS)を用いて粒界相に含まれる窒素(N)の比率(質量%)を算出し、RE2O3,Al2O3,SiO2および窒素(N)の各比率(質量%)の総和を100%として粒界相の構成比率を算出し、この値を表2に示した。また、Fe換算したFeの珪化物粒子の比率はICP分光分析法により測定し、Feの珪化物粒子の種類は粉末X線回折法により同定した。この結果を表2に示す。
そして、ノズル1の800℃における熱伝導率および800℃における4点曲げ強度を測定し、この結果を表2に示した。
800℃における熱伝導率および4点曲げ強度は、それぞれJIS R 1611−1997,JIS R 1604−1995に準拠して測定した。
表2に示す結果から分かるように、組成式Si6−ZAlZOZN8−Z(z=0.1〜1)で表されるβ−サイアロンを主相とし、Al,Si,RE(REは周期表第3族元素)の構成比率がそれぞれAl2O3,SiO2,RE2O3換算でAl2O3が5〜50質量%,SiO2が5〜20質量%,残部がRE2O3およびNであるRE−Al−Si−O−Nからなる粒界相を、前記主相と前記粒界相とからなる焼結体に対して4〜20体積%の範囲で含み、かつFeの珪化物粒子をFe換算で前記焼結体に対して0.02〜3質量%含んでいる本発明の実施例の試料No.6〜10,13,14,16,17,20〜23,26〜28,31,32,37,40,41,44〜46,49,50は、800℃における熱伝導率が10W/(m・K)以上であり、かつ800℃における4点曲げ強度が500MPa以上であるので、耐熱衝撃性は好適であるといえる。
また、REがYであるときの粒界相の構成比率が、REがEr,Yb,Luである試料No.27,36,45の粒界相の構成比率とほぼ同じ試料No.7は、800℃における熱伝導率が試料No.27,36,45の熱伝導率より高く、好適である。
そして、本発明のノズル1を、実施例1で用いた図2(a)および(b)に示すホットチャンバダイカストマシン29に組み込んで試験したところ、ノズル1の割れは無く良好であった。