以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
本発明の第1態様によれば、流体を吸入及び吐出する、導電性高分子を用いた流体搬送装置であって、
前記流体が内部に満たされるポンプ室と、
前記ポンプ室が内部に形成されかつ前記ポンプ室の壁面の一部を構成する筺体部と、
前記筺体部内に支持されて一部分若しくは全部分が電解伸縮を行う導電性高分子膜で形成されて、前記筺体部と共に前記ポンプ室の壁面を構成するダイヤフラムと、
前記筺体部に配置されかつ前記ポンプ室において前記流体の吐出及び吸入を行うための開口部と、
前記筺体部と前記ダイヤフラムとで囲まれかつ内部に電解液を含み、その電解液の一部が前記ダイヤフラムと接する電解液室と、
前記導電性高分子膜に電圧を印加するための電源と、
前記導電性高分子膜と前記電源とを電気的に接続する配線部と、
前記電解液室の壁面の一部を移動若しくは変形させることによって前記ダイヤフラムに作用する圧力を所定範囲内に維持する圧力維持部とを備える、導電性高分子を用いた流体搬送装置を提供する。
本発明の第2態様によれば、前記圧力維持部は、前記電解液室の壁面の一部を移動若しくは変形させることによって前記電解液室の体積を変化させることにより、前記ダイヤフラムに作用する圧力を前記所定範囲内に維持するように調整する機能を有する第1の態様に記載の、導電性高分子を用いた流体搬送装置を提供する。
本発明の第3態様によれば、前記圧力維持部は、
前記電解液室の壁面の一部として伸縮可能に配置されて、弾性力によって前記電解液室の壁面の一部を変形させる弾性部で構成されて、
前記弾性部の弾性力によって前記電解液室の壁面の一部を変形させてることによって前記電解液室の体積を変化させることにより、前記ダイヤフラムに作用する圧力を前記所定範囲内に維持するように調整することを特徴とする第1の態様に記載の、導電性高分子を用いた流体搬送装置を提供する。
本発明の第4態様によれば、前記ダイヤフラムに対する圧力を調整するときには前記電解液室の壁面の一部である前記弾性部が変形し、それ以外のときには前記電解液室の壁面の一部である前記弾性部が固定される第3の態様に記載の、導電性高分子を用いた流体搬送装置を提供する。
本発明の第5態様によれば、前記圧力維持部は、導電性高分子膜を備え、
前記圧力維持部を構成する前記導電性高分子膜の電解伸縮によって前記電解液室の壁面の一部を変形させて前記電解液室の体積を変化させることにより、前記ダイヤフラムに作用する圧力を前記所定範囲内に維持するように調整することを特徴とする第1の態様に記載の、導電性高分子を用いた流体搬送装置を提供する。
本発明の第6態様によれば、前記圧力維持部を構成する前記導電性高分子膜は、前記電解液室の壁面の一部を構成して、電解伸縮によって変形させて前記電解液室の体積を変化させることにより、前記ダイヤフラムに作用する圧力を前記所定範囲内に維持するように調整することを特徴とする第5の態様に記載の、導電性高分子を用いた流体搬送装置を提供する。
本発明の第7態様によれば、前記圧力維持部は、
前記電解液室の壁面の一部として配置され、かつ、弾性変形可能な弾性膜部と、
前記弾性膜部を弾性変形させるように電解伸縮可能な導電性高分子膜とを備え、
前記導電性高分子膜の電解伸縮及び前記弾性膜の弾性変形によって、前記電解液室の壁面の一部が変形することを特徴とする第5の態様に記載の、導電性高分子を用いた流体搬送装置を提供する。
本発明の第8態様によれば、前記ダイヤフラムの前記導電性高分子膜に前記電源から電圧を印加してポンプの動作を行う駆動時間を計測し、計測した前記駆動時間がしきい値以上であるか否かを判定し、前記駆動時間が前記しきい値以上であると判定されたときに前記電解液室の壁面の一部を移動若しくは変形させることによって前記ダイヤフラムに作用する圧力を所定範囲内に維持するように前記圧力維持部を動作制御する制御部をさらに備えることを特徴とする第1の態様に記載の、導電性高分子を用いた流体搬送装置を提供する。
本発明の第9態様によれば、前記電解液の圧力を検出する圧力検出部と、
前記圧力検出部により検出された圧力が圧力しきい値以上の値であるか否かを判定し、前記圧力検出部により検出された圧力が圧力しきい値以上の値であると判定されたときに前記電解液室の壁面の一部を移動若しくは変形させることによって前記ダイヤフラムに作用する圧力を所定範囲内に維持するように前記圧力維持部を動作制御する制御部とをさらに備えることを特徴とする第1の態様に記載の、導電性高分子を用いた流体搬送装置を提供する。
本発明の第10態様によれば、前記電解液の圧力を検出する圧力検出部と、
前記圧力検出部により検出された圧力が圧力しきい値以下の値であるか否かを判定し、前記圧力検出部により検出された圧力が圧力しきい値以下の値であると判定されたときに前記電解液室の壁面の一部を移動若しくは変形させることによって前記ダイヤフラムに作用する圧力を所定範囲内に維持するように前記圧力維持部を動作制御する制御部とをさらに備えることを特徴とする第1の態様に記載の、導電性高分子を用いた流体搬送装置を提供する。
以下、図を用いて説明するが、本願発明はこれらの実施様態に限定されるものではない。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の、導電性高分子を用いた流体搬送装置の斜視図である。
図1の流体搬送装置は、筺体部102と、弾性部の一例としての弾性膜部130と、流体管部200、201、202,203と、バネ可動部205との各部分を備えている。
筐体部102は、およそ円柱の形状である。筐体部102の上下の円形の平面210には、それぞれ2本ずつ、流体管部が接続している。筐体部102の側壁102sの貫通穴102hの外側の開口縁部には、弾性膜部130が備えられている。今、後の説明のために、筐体部102の上部の円形の平面を上部円形平面210と定義する。図1に示すように、直線100A−100Bは、上部円形平面210の1つの直径を含む直線である。また、直線100C−100Dは、上部円形平面210の1つの直径を含む直線であり、直線100A−100Bと直交する。直線100A−100Bを含み、上部円形平面210と垂直な平面を、平面220と定義する(図2参照)。また、直線100C−100Dを含み、上部円形平面210と垂直な平面を、平面221と定義する(図2参照)。
図3は、本第1実施形態の流体搬送装置を、平面221で切断したときの断面図である。図4は、本第1実施形態の流体搬送装置を、平面220で切断したときの断面図である。
図4の流体搬送装置は、筺体部102と、第1ダイヤフラム103と、第2ダイヤフラム104と、第1ポンプ室107と、第2ポンプ室108と、電解液室109と、配線部110aと110bと、電源110cと、第1及び第2吸入口111aと111bと、第1及び第2吐出口113aと113bと、第1及び第2吸入弁121と123と、第1及び第2吐出弁122と124と、弾性部の一例としてのバネ部131と、弾性膜部130と、流体管部200,201,202,203と、バネ可動部205とを備えるように構成されている。バネ部131と弾性膜部130とバネ可動部205とは、以下で説明するように圧力維持部1100として働く。
第1ダイヤフラム103は、円板状の導電高分子膜であり、その周辺部が筺体部102の上壁の周辺部に固定されている。第2ダイヤフラム104は、円板状の導電高分子膜であり、その周辺部が筺体部102の下壁部の周辺部に固定されている。第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104とが筺体部102を介して導通しないようにするため、筺体部102自体を絶縁体より構成するか、又は、第1ダイヤフラム103又は第2ダイヤフラム104又はその両方と筺体部102とが絶縁体を介して固定されるようにしている。また、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104について、以下では簡単のため、単にダイヤフラムと呼ぶ。以下、各部分の形状及び動作について詳しく説明する。なお、筺体部102を導体で構成する場合には、本明細書の実施形態及び変形例において、必要に応じて、バネ部などを絶縁性部材より構成するか、又は、バネ部などと筺体部102若しくは導電高分子膜との接続部分に絶縁部材を介在させて、電気的に絶縁状態を保持可能とする。
図3は、この第1実施形態の流体搬送装置を、平面221で切断したときの断面図である。図3において、バネ部131の形状は簡易に示しているが、バネ部131の構造の例としては、後で説明するように直線100A−100Bと平行な直線を軸とする螺旋形状のコイルばね構造が考えられる。
この第1実施形態においては、第1ポンプ室107は、筺体部102の上壁と第1ダイヤフラム103とで囲まれて構成されており、搬送対象である流体で満たされている。第1ポンプ室107の一部を構成する筺体部102の上壁には、流体管部200が接続されて第1吸入弁121を有する第1吸入口111aと、流体管部201が接続されて第1吐出弁122を有する第1吐出口113aとの2個の開口部が形成されている。また、第2ポンプ室108は、筺体部102の下壁と第2ダイヤフラム104とで囲まれて構成されており、搬送対象である流体で満たされている。第1ポンプ室107の流体と第2ポンプ室108の流体とは同じでもよいし、異なっていてもよい。第2ポンプ室108の一部を構成する筺体部102の下壁には、流体管部203が接続されて第2吸入弁123を有する第2吸入口111bと、流体管部202が接続されて第2吐出弁124を有する第2吐出口113bとの2個の開口部が形成されている。第1及び第2ダイヤフラム103,104及び筐体部102で囲まれたリング状の空間部109を電解液室と定義する。この電解液室109内に前記バネ部131が配置されている。
バネ部131の一端は、弾性膜部130に接続されており、他端は、バネ可動部205に接続されている。バネ可動部205は、頭部205aと、頭部205aに連結されて筐体部102の側壁102sの貫通穴102tにねじ込まれたねじ部205bとを備えるボルトより構成されていて、ねじ部205bの端部がバネ部131の他端に連結されている。バネ可動部205については、後で詳細に説明する。
以下で説明するように、第1及び第2ポンプ室107,108に形成されたこれらの開口部を通じて流体の吸入及び吐出が行われることによって、流体搬送装置としてポンプの動作が行われる。
図5Bで示した状態では、第1ダイヤフラム103が伸張して、第2ダイヤフラム104が収縮した状態である。この状態では、開かれた第1吸入弁121を備えた第1吸入口111aから第1ポンプ室107の外部の流体例えば液体を第1ポンプ室107の内部に吸入して、開かれた第2吐出弁124を備えた第2吐出口113bから第2ポンプ室108の内部の流体を第2ポンプ室108の外部に吐出する。このとき、第1吐出弁122を備えた第1吐出口113aは第1吐出弁122により閉じられており、第2吸入弁123を備えた第2吸入口111bも第2吸入弁123により閉じられている。また、逆に、図5Dに示すように、第1ダイヤフラム103が収縮して第2ダイヤフラム104が伸張した状態では、開かれた第2吸入弁123を備えた第2吸入口111bから第2ポンプ室108の外部の流体例えば液体を第2ポンプ室108の内部に吸入して、開かれた第1吐出弁122を備えた第1吐出口113aから第1ポンプ室107の内部の流体を第1ポンプ室107の外部に吐出する。このとき、第2吐出弁124を備えた第2吐出口113bは第2吐出弁124により閉じられており、第1吸入弁121を備えた第1吸入口111aも第1吸入弁121により閉じられている。これらの2つの状態の切り替えを連続して行うことによって、第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108の体積の増減が繰り返されて、それに応じてそれぞれのポンプ室107,108に対する流体の吸入と吐出が繰り返される。このことによって、流体搬送装置としてのポンプの機能を果たすことができる。
筺体部102は、内部に空間を持ち、例えば直径1cm〜4cm、高さ1cm〜4cmの範囲である円筒状の形状に対して、開口部などの特定箇所に貫通穴が開けられた形状を有し、その内部に直径0.8〜3.8cm、高さ0.8〜3.8cmの範囲の円筒状の内部空間を持つ。この場合、筺体部102の厚みは0.2cm程度とするのが好ましい。筺体部102の上面及び底面の形状は、第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力が均一になるという観点からは、それぞれ、第1及び第2ダイヤフラム103,104の円板の円形より小さい円形であることが望ましいが、他の形状であっても良い。筐体部102の高さは、2枚の第1及び第2ダイヤフラム103と104との距離が以下に説明する範囲となるように設計されることが望ましい。2枚のダイヤフラム103と104が動作するときにお互いに接触した場合、お互いが電気的に短絡して正常に動作しないことが考えられる。また、第1及び第2ダイヤフラム103と104の動作が制限されて、ポンプの吸入及び吐出の効率が低下する。以上の観点から、2枚のダイヤフラム103と104が動作するときに2枚のダイヤフラム103と104がお互いに接触しないように、2枚のダイヤフラム103と104の最も接近している部分の距離が、ある一定値以上の距離であることが望ましい。また、2枚のダイヤフラム103と104との最も接近している部分の距離が大きすぎる場合、2枚のダイヤフラム103と104との間の電解液室109内に存在する電解液における電圧降下の影響が大きくなり、消費電力が大きくなる。また、2枚のダイヤフラム103と104との最も接近している部分の距離が大きすぎる場合、流体搬送装置を小型にすることが難しい。以上の理由から、2枚のダイヤフラム103と104との最も接近している部分の距離は、ある一定値以下であることが望ましい。以上の点を考慮して、2枚のダイヤフラム103と104との最も接近している部分の距離、及び、筺体部102の高さは設計されることが望ましい。
図6は、この第1実施形態の流体搬送装置の各部分の大きさの例を示した図である。筺体部102の内部空間は、2枚のダイヤフラム103と104で3個の空間に分割されており、それぞれ、第1ポンプ室107、電解液室109、第2ポンプ室108を形成する。ダイヤフラム103及び104の一部分若しくは全部分はポリマーアクチュエータ材料で形成されており、例えば、厚さ5μm〜30μm、直径約1cm〜4.5cmの円板形状である。この第1実施形態においては、ダイヤフラム103及び104は、図4に示すように凸形状にたわんだ状態で使用されるので、この状態においてはダイヤフラム103及び104の大きさは、筺体部102の内部空間の底面よりも大きい。図8では、第1吸入口111aと第2吸入口111bと第1吐出口113aと第2吐出口113bの直径は3mm、筺体部102の高さは10mm、弾性膜部130が形成された筺体部102の側壁102sの外面から筺体部102の側壁102に対向する側壁102の内面までの距離(言い換えれば、筺体部102の内部空間の底面の直径方向沿いの筺体部102の内部空間の距離と筺体部102の側壁102sの厚みとの合計の距離)を30mmとする。
前記第1及び第2ダイヤフラム103及び104を構成するポリマーアクチュエータ材料は、電解伸縮を行う導電性高分子膜であり、具体的な例としては、ポリピロール及びポリピロール誘導体、ポリアニリン及びポリアニリン誘導体、ポリチオフェン及びポリチオフェン誘導体、及び、これらから選ばれる1種類又は複数種類からなる(共)重合体があげられる。特に、ポリマーアクチュエータ材料としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリN−メチルピロール、ポリ3−メチルチオフェン、ポリ3−メトキシチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、及び、これらから選ばれる1種類又は2種類からなる(共)重合体が好ましい。また、これらの材料で構成される導電性高分子膜は、例えば六フッ化リン酸イオン(PF6−)、p−フェノールスルホン酸イオン(PPS)、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン(DBS)、ポリスチレンスルホン酸イオン(PSS)などの負イオン(アニオン)をドーピングした状態で使用するのが好ましい。このようにドーピングした状態において、前記の導電性高分子膜は、導電性を有してポリマーアクチュエータとしての機能を発生する。これらの導電性高分子膜は、化学重合又は電解重合で合成した後、必要な場合、成型の処理を行うことによって作製可能である。
次に、ポリマーアクチュエータ材料で構成される前記ダイヤフラム103及び104の厚さについて説明する。ポリマーアクチュエータ材料で構成される前記ダイヤフラムが厚い場合、ポリマーアクチュエータの電解伸縮による仕事において大きな力を得ることが可能である。また、ポリマーアクチュエータ材料で構成される前記ダイヤフラムが薄い場合、ポリマーアクチュエータ材料へのイオンの出入りがすばやく行われるために、ポンプの動作を高速にすることが可能である。これらの点を考慮してポリマーアクチュエータ材料で構成される前記ダイヤフラムの厚さを設計することが望ましい。前記観点から、一例として、前記ダイヤフラム103及び104のそれぞれの厚さは0.1〜1000μmの範囲であることが望ましく、その中でも特に1μm〜100μmが望ましい。また、ポリマーアクチュエータ材料で構成される前記ダイヤフラムの面積を大きくした場合、ポリマーアクチュエータの電解伸縮による仕事量を大きくすることが可能である。また、ポリマーアクチュエータ材料で構成される前記ダイヤフラムの面積を小さくした場合、必要な筺体の体積を小さくすることができるため、流体搬送装置を小型にすることが可能である。これらの点を考慮してポリマーアクチュエータ材料で構成される前記ダイヤフラムの面積を設計することが望ましい。前記観点から、一例として、前記ダイヤフラム103及び104のそれぞれの面積は0.01cm2〜1000cm2であることが望ましく、その中でも特に0.1cm2〜100cm2であることが望ましい。
電解液室109には、電解液が満たされている。ここで、電解液とは、液体状の電解質を指すものとし、例えば、イオン性物質を水などの極性溶媒に溶解させて作った電気伝導性を有する溶液、又は、イオンからなる液体(イオン液体)などが考えられる。電解液の例としては、NaPF6、TBAPF6、HCl、若しくは、NaClなどの電解質を、水、若しくは、プロピレンカーボネートなどの有機溶媒に溶解させたもの、又は、BMIPF6などのイオン液体が利用可能である。
ダイヤフラム103と104には、それぞれ、配線部110aと110bの一端が接続されている。また、配線部110aと110bの他端は電源110cに接続されている。第1ポンプ室107と第2ポンプ室108には、流体搬送装置としてのポンプが吸入と吐出を行う流体が入れられている。ポンプが吸入と吐出を行う流体は、例えば水が考えられる。筺体部102は、電解液に対して耐性がある材料で形成されており、例えばポリカーボネイト樹脂若しくはアクリル樹脂を含む材料、又は、これらの材料に対して表面硬化処理を行った材料で構成される。
第1吸入口111aと第2吸入口111bは第1吸入弁121と第2吸入弁123を持ち、ポンプ室107,108の外部からポンプ室107,108に向かって流体がそれぞれ吸入される方向にのみ流れる構造となっている。第1吐出口113aと第2吐出口113bは第1吐出弁122と第2吐出弁124を持ち、ポンプ室107,108からポンプ室107,108の外部に向かって流体がそれぞれ吐出される方向にのみ流れる構造となっている。各吸入口と各吐出口の形状は、流体を吸入及び吐出する際に必要な圧力若しくは流量、及び、流体の粘性などを考慮して設計される。
電源110cの電圧は、例えば±1.5Vのサイン波若しくは矩形波で変化する。このことにより、ダイヤフラム103と104の間に周期的に変化する電圧が印加される。一方のダイヤフラム103又は104に正の電圧が印加されたときには、そのダイヤフラム103又は104を構成する導電性高分子膜は酸化される。そして、これに応じて、前記一方のダイヤフラム103又は104の導電性高分子膜から正イオン(カチオン)が抜け出したり、前記一方のダイヤフラム103又は104の導電性高分子膜に負イオン(アニオン)が入り込んだりする変化が生じる。このことによって、前記一方のダイヤフラム103又は104の導電性高分子膜において、収縮若しくは伸張(膨張)などの変形が生じる。逆に、前記一方のダイヤフラム103又は104に負の電圧が印加されたときには、そのダイヤフラム103又は104を構成する導電性高分子膜は還元される。そして、これに応じて、前記一方のダイヤフラム103又は104の導電性高分子膜に正イオン(カチオン)が入り込んだり、前記一方のダイヤフラム103又は104の導電性高分子膜から負イオン(アニオン)が抜け出したりする変化が生じる。このことによって、前記一方のダイヤフラム103又は104の導電性高分子膜において、伸張(膨張)若しくは収縮などの変形が生じる。
図5A、図5B、図5C、図5Dは、電源110cによって周期的な正弦波電圧を印加したときのポンプの動作を示す図である。今、正弦波電圧の振幅をVとする。これらの図5A〜図5Dにおいては、主に負イオンの出入りによってダイヤフラム103,104のそれぞれの導電性高分子膜の伸張と収縮の変形が生じる場合の例を示している。なお、図5A〜図5Dにおいて、理解しやすくするため、ダイヤフラム103,104に対して負イオン99の大きさを拡大して図示している。
図5Aにおいては、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104の電圧はともに0である。すなわち、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104は等電位である。
図5Bにおいては、電源110cから第1ダイヤフラム103に正の電圧(+V)が加えられて、電源110cから第2ダイヤフラム104に負の電圧(−V)が加えられている。
図5Cにおいては、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104の電圧はともに0である。すなわち、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104は等電位である。
図5Dにおいては、電源110cから第1ダイヤフラム103に負の電圧(−V)が加えられて、電源110cから第2ダイヤフラム104に正の電圧(+V)が加えられている。
今、図5A→図5B→図5C→図5D→図5A→図5B→図5C→図5D→・・・に示されるように、周期的に状態が変化する場合を考える。
図5Aにおいては、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104は等電位であり、電解液室109内の電解液に含まれる負イオン99はほぼ一様に分布している。ただし、第1ダイヤフラム103の電位が増加しつつあるので、第1ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜の酸化が進む。すなわち、例えば、時刻tにおける第1ダイヤフラム103の電位V(t)がV×sin(ωt)と表され、時刻0において図5Aの状態になる場合を考えると、図5Aの状態において第1ダイヤフラム103の電位は0であり、V(t)の導関数は時刻0においてVωであるので、図5Aの状態において電位が増加しつつあることがわかる。これに応じて、電解液に含まれる負イオン(アニオン)99が第1ダイヤフラム103に引き寄せられ、また、その負イオン(アニオン)99の一部が第1ダイヤフラム103の内部に入り込む。この結果、第1ダイヤフラム103が伸張する。第1ダイヤフラム103の伸張に伴い第1ポンプ室107の体積は増加するので、第1吸入弁121が開き、第1吸入口111aから流体が第1ポンプ室107の外部から第1ポンプ室107内に流入する。また、第1ダイヤフラム104の電位が減少しつつあるのと同時に、第2ダイヤフラム104の電位が減少しつつあるので、第2ダイヤフラム104を構成する導電性高分子膜の還元が進む。これに応じて、第2ダイヤフラム104を構成する導電性高分子膜から、負イオン(アニオン)が電解液に抜け出す。この結果、第2ダイヤフラム104が収縮する。第2ダイヤフラム104の収縮に伴第2ポンプ室108の体積は減少するので、第2吐出弁124が開き、流体が第2吐出口113bを通して第2ポンプ室108の内部の流体が第2ポンプ室108の外部に流出する。なお、流体搬送装置の構造は、電源110cから見てキャパシタンスとして働く。図5Aの状態においては、第2ダイヤフラム104に対する第1ダイヤフラム103の電位が増加しつつあるので、前記キャパシタンスにおいて外部から第1ダイヤフラム103に正電荷を蓄積する方向の電流が流れる。
なお、弾性膜部130と、バネ部131との動きについては、後で詳しく説明する。
次に、図5Bにおいては、電源110cから第1ダイヤフラム103に正の電圧(+V)が加えられるとともに、電源110cから第2ダイヤフラム104に負の電圧(−V)が加えられている。この状態においては、第1ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜は酸化されていて、これに応じて、電解液に含まれる負イオン(アニオン)99が第1ダイヤフラム103に引き寄せられている。そして、負イオン(アニオン)99の一部が、第1ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜の内部に入り込んでいる。この結果、第1ダイヤフラム103は伸張している。図5Bにおいて、比較のために図5Aにおける第1ダイヤフラム103の位置を点線で示している。
今、説明のための例として、時刻tにおける第1ダイヤフラム103の電位V(t)がV×sin(ωt)と表され、時刻0において図5Aの状態になり、時刻π/(2ω)において図5Bの状態になる場合を考える。この場合、図5Bの状態において第1ダイヤフラム103の電位は最大値Vであり、これに伴い、第1ダイヤフラム103は最も伸張した状態である。また、V(t)の導関数は時刻π/(2ω)において0であるので、図5Bの状態において電位の変化はなく、これに伴い、第1ダイヤフラム103の速度は0であり、ポンプへの流体の吐出及び吸入の流量は0となる。ただし、ここでは簡単のために、イオン液体又は流体の粘性などを無視して、電圧の変化と同期してダイヤフラム103の伸張と収縮が行われて、ダイヤフラム103の変形速度に同期して流体の吐出及び吸入が行われる場合を考えている。
また、第2ダイヤフラム104を構成する導電性高分子膜は還元されていて、これに応じて、第2ダイヤフラム104を構成する導電性高分子膜から電解液に含まれる負イオン(アニオン)99が電解液に抜け出している。この結果、第2ダイヤフラム104が収縮している。図5Bにおいて、比較のために図5Aにおける第2ダイヤフラム104の位置を点線で示している。ただし、この状態においては、電位の変化はほぼ0であるため、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の形状及び負イオンの分布の変化もほぼ0であり、第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108における流体の出入りもほぼ0である。そして、第1ダイヤフラム103は最も伸張した状態であり、第2ダイヤフラム104は最も収縮した状態である。
図5Aの状態からの第1及び第2ダイヤフラム103及び104のそれぞれの伸張量を考えた場合、図5Bの状態においては、第1ダイヤフラム103の伸張量は正の値をとり、その値は周期内での最大値となっており、第2ダイヤフラム104の伸張量は負の値をとり、その値は周期内での最小値となっている。また、電源110cから流れる電流はほぼ0となる。この状態においては、流体の流れもほぼ0になっている。
図5Cにおいては、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104は等電位であり、電解液に含まれる負イオン99は、電解液内でほぼ一様に分布している。ただし、第2ダイヤフラム104の電位が増加しつつあるので、第2ダイヤフラム104を構成する導電性高分子膜の酸化が進む。これに応じて、電解液に含まれる負イオン(アニオン)99が第2ダイヤフラム104に引き寄せられ、また、その一部が第2ダイヤフラム104の内部に入り込む。この結果、第2ダイヤフラム104が伸張する。第2ダイヤフラム104の伸張に伴い第2ポンプ室108の体積は増加するので、第2吸入弁123が開き、第2吸入口111bから流体が第2ポンプ室108の外部から第2ポンプ室108内に流入する。また、第1ダイヤフラム103の電位が減少しつつあるので、第1ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜の還元が進む。これに応じて、第1ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜から電解液に含まれる負イオン(アニオン)99が電解液に抜け出す。この結果、第1ダイヤフラム103が収縮する。第1ダイヤフラム103の収縮に伴い第1ポンプ室107の体積は減少するので、第1吐出弁122が開き、第1吐出口113aを通して第1ポンプ室107内から流体が第1ポンプ室107の外部に流出する。なお、流体搬送装置の構造は電源110cから見てキャパシタンスとして働く。図5Cの状態においては、第1ダイヤフラム103に対する第2ダイヤフラム104の電位が増加しつつあるので、前記キャパシタンスにおいて外部から第2ダイヤフラム104に正電荷を蓄積する方向の電流が流れる。また、図5Cの状態における第1及び第2ダイヤフラム103,104の位置は、図5Aにおける第1及び第2ダイヤフラム103,104の位置とほぼ同じである。
図5Dにおいては、電源110cから第2ダイヤフラム104に正の電圧(+V)が加えられるとともに、電源110cから第1ダイヤフラム103に負の電圧(−V)が加えられている。この状態においては、第2ダイヤフラム104を構成する導電性高分子膜は酸化されていて、これに応じて、電解液に含まれる負イオン(アニオン)99が第2ダイヤフラム104に引き寄せられている。そして、負イオン(アニオン)99の一部が、第2ダイヤフラム104を構成する導電性高分子膜の内部に入り込んでいる。この結果、第2ダイヤフラム104は伸張している。図5Dにおいて、比較のために図5Aにおける第1及び第2ダイヤフラム103,104の位置を点線で示している。また、第1ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜は還元されていて、これに応じて、第1ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜から電解液に含まれる負イオン(アニオン)99が電解液に抜け出している。この結果、第1ダイヤフラム103が収縮している。ただし、この状態においては、電位の変化はほぼ0であるため、第1及び第2ダイヤフラム103,104の形状及び負イオンの分布の変化もほぼ0であり、第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108における流体の出入りもほぼ0である。そして、第1ダイヤフラム103は最も収縮した状態であり、第2ダイヤフラム104は最も伸張した状態である。図5Aの状態からの第1及び第2ダイヤフラム103,104の伸張量を考えた場合、図5Dの状態においては、第1ダイヤフラム103の伸張量は負の値をとり、その値は周期内での最小値となっており、第2ダイヤフラム104の伸張量は正の値をとり、その値は周期内での最大値となっている。また、電源110cから流れる電流はほぼ0となる。この状態においては、流体の流れもほぼ0になっている。
以上の動作を繰り返すことにより、流体の吸入と吐出が行われる。なお、導電性高分子膜の変形のメカニズムは、イオンの挿入による体積増加、同種イオンの静電反発、π電子の非局在化による分子の形状変化などの理由が想定されるが、詳細は完全に解明されていない。
前記の説明では、簡単のために、第1及び第2ダイヤフラム103,104の電位と、流体搬送装置の構造に蓄積される電荷量及び第1及び第2ダイヤフラム103,104の伸張量が同位相で変化する場合を考えたが、実際の動作においては、流体の粘性、又は、配線部及び電源の抵抗、又は、導電性高分子膜と配線部との接触部分の抵抗、又は、導電性高分子膜の内部抵抗、又は、電荷移動抵抗、又は、導電性高分子膜内へのイオン拡散を示すインピーダンス、又は、溶液抵抗などの影響により、第1及び第2ダイヤフラム103,104の電位と、流体搬送装置の構造に蓄積される電荷量及び第1及び第2ダイヤフラム103,104の伸張量との間で位相差が発生する場合がある。
なお、この第1実施形態において、電解液室109は電解液で満たされており、一般的に電解液は非圧縮性流体であるので、ポンプ動作時に電解液室109の体積はほぼ一定に保たれる。このため、一方のダイヤフラム103又は104が収縮して凸形状の膨らみが小さくなった場合、電解液室109の体積をほぼ一定に保つために、他方のダイヤフラム104又は103は凸形状の膨らみが大きくなるように力を受ける。すなわち、2枚の第1及び第2ダイヤフラム103,104は電解液を介してお互いの間で仕事という形でエネルギーのやり取りを行う。
次に、弾性膜部130と、バネ部131との構成について説明する。
弾性膜部130は、筺体部102の側壁102sに形成された円形の貫通穴102hを外側から塞ぎかつ初期状態で筺体部102の外側に向けて凸状の形態で、弾性膜部130の外縁部が筺体部102の側壁102sに固定されており、ゴム又は合成樹脂(プラスチック)などの弾性を有する材料(弾性材料)で円形膜状に構成されている。弾性膜部130を構成する弾性材料としては、例えばシリコーンゴムなどが考えられる。
バネ部131は、例えば、弾性のある金属又は合成樹脂材料を螺旋状に巻いた形状を有しており、コイルばねとしての機能を持つ。また、バネ部131の螺旋形状の軸が、図1に示した直線100A−100Bと平行な直線上に乗るように配置されている。バネ部131は、定常状態から縮んだ状態で、両端が弾性膜部130と弾性膜部130に対向して筺体部102の側壁102sに螺合されたバネ可動部205のネジ部205bとに接する形で固定されている。弾性膜部130は、バネ部131から外側の方向に力を受けて、外側に凸状の形状に変形している。すなわち、図5Aなどにおいて、弾性膜部130は、バネ部131から右向きの力を受けて、右向きに凸状の形状に変形している。弾性膜部130の形状は、図1などにおいては、球面の一部に近い形状を示したが、弾性膜部130の膜厚が小さい場合などには、円錐に近い形状などの他の形状になる場合もある。
流体搬送装置の初期状態においては、電解液室109の内部に満たされた電解液の圧力が以下の範囲になるように流体搬送装置は構成される。すなわち、ポンプ動作時に第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108に加わる圧力を想定して、その圧力よりも初期状態の電解液の圧力が小さくなるように、流体搬送装置は構成される。このことにより、第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108に想定圧力が加わった場合、第1及び第2ダイヤフラム103及び104は、図5Aに示すように電解液室109の方向に凸形状になった状態に保たれる。初期状態において、電解液室109の内部に満たされた電解液の圧力を前記範囲にするための方法としては、例えば、流体搬送装置の各部分を組み立てて内部に電解液を満たすときに、筺体部102の側壁102sに小さな貫通穴102gを開けておいて、その小さな貫通穴102gからシリンジなどの器具を用いて電解液を一部抜き出し、その後、小さな貫通穴102gをゴム栓などの封止部材102f封止することによって、電解液の圧力を所定の圧力とする(すなわち、ポンプ動作時の第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108に加わる圧力よりも初期状態の電解液の圧力が小さくなるようにする)方法が考えられる。また、別の方法としては、流体搬送装置の各部分を組み立てて内部に電解液を満たすときに、筺体部102と弾性膜部130との間の一部に隙間を空けておいて、この状態で弾性膜部130を押し込むことにより、電解液を一部抜き出し、その後、隙間の部分を封止し、弾性膜部130の押し込む力を除いて弾性膜部130及びバネ部131がその弾性によって元の形状に戻ろうとする力によって電解液の圧力を減少し、電解液の圧力を所定の圧力とする(すなわち、ポンプ動作時の第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108に加わる圧力よりも初期状態の電解液の圧力が小さくなるようにする)方法が考えられる。なお、電解液を電解液室109内注入する際には、内部の空気を追い出すための空気穴を設けておいて、注入が終った後に空気穴を封止ことも可能である。
このようなダイヤフラム103,104を用いた流体搬送装置においては、ダイヤフラム103,104が弛んだ状態となると、導電性高分子膜が伸縮した場合の力が第1及び第2ポンプ室107,108の流体に効率良く伝わらず力が逃げてしまう。このことから、ポンプの動作時にダイヤフラム103,104が弛まずに張った状態に保つことが重要である。本発明の前記第1実施形態にかかる流体搬送装置においては、初期状態において電解液の圧力を第1及び第2ポンプ室107,108の内部の流体の圧力よりも小さくした場合、後で説明する弾性膜部130とバネ部131との働きによって、ポンプの動作時にも電解液の圧力を第1及び第2ポンプ室107,108の内部の流体の圧力よりも小さく保つことが可能である。このことによって、ポンプの動作時に第1及び第2ダイヤフラム103,104において第1及び第2ポンプ室107,108から電解液室109の方向に力が加わるので、この力によって、第1及び第2ダイヤフラム103,104が弛まずに張った状態を保つことが可能である。このことによって、導電性高分子膜の電解伸縮の力が第1及び第2ポンプ室107,108の内部の流体に効率良く伝わるので、流体の吐出と吸入の効率を高く保つことが可能である。
次に、弾性膜部130と、バネ部131との動作について説明する。以下で詳しく説明するように、弾性膜部130とバネ部131とは、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力を適正に保つ働きがある。このことにより、ポンプの動作効率を向上することができる。
先に説明したように、従来技術のポンプにおいては、以下の2つのメカニズムによってダイヤフラムの張力が大きく変化して、このことによって、ポンプの動作効率が低下するという問題点がある。従来技術のポンプにおいて、ダイヤフラムの張力が変化する1つ目のメカニズムは、ポンプ動作時に行われる導電性高分子膜の周期的な電解伸縮によるものである。従来技術のポンプにおいて、ダイヤフラムの張力が変化する2つ目のメカニズムは、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由によるものである。本発明の第1実施形態においては、ポンプ動作時に行われる導電性高分子膜の周期的な電解伸縮によって第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力が変化する場合、又は、それ以外の理由によって第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力が変化する場合において、第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力を適正に保つことが可能である。
まず、ポンプ動作時に導電性高分子膜が周期的に電解伸縮を行うときに弾性膜部130とバネ部131とによって第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力が適正に保たれる働きについて説明する。
今、筺体部102の内部空間に注目する。ここで、筺体部102の内部空間とは、筺体部102の内部に形成された円筒状の空間である。図7に示すように、筺体部102の内部空間において、第1ポンプ室107の部分と、第2ポンプ室108の部分を除いた部分を、電解液室筐体内部分190と定義する。すなわち、電解液室筐体内部分190は、筺体部102の内部空間において第1及び第2ダイヤフラム103及び104によってはさまれた空間部分である。また、筺体部102の穴部分に位置して図7において191で示される空間部分を開口空間部分191と定義する。また、筐体部102の外側に位置して弾性膜部130に囲まれる空間部分192を弾性膜内側空間部分192と定義する。このとき、電解液室109の体積は、電解液室筐体内部分190の体積と、開口空間部分191の体積と、弾性膜内側空間部分192の体積との和で定義される。
上で説明したように、ポンプの動作中に第1及び第2ダイヤフラム103,104が弛んだ状態になると、第1及び第2ダイヤフラム103,104の導電性高分子膜が伸縮しても力が逃げて第1及び第2ポンプ室107,108の流体例えば液体に力が効率良く伝わらないので、液体の吸入と吐出の効率が著しく低下する。すなわち、ポンプの動作効率を高くするためには、動作中に常に第1及び第2ダイヤフラム103,104が弛まずに張られた状態に保たれることが必要である。
ポンプの動作中に常に第1及び第2ダイヤフラム103,104が弛まずに張られた状態に保たれる場合、既に図51C及び図51Dを用いて説明したのと同様に、第1実施形態でも、第1ポンプ室107の体積と第2ポンプ室108の体積の合計値は、「(第1ダイヤフラム103の面積)=S0の関係を示す直線」を対称軸とした左右対称の形状となり、第1ダイヤフラム103の面積=S0において、極大値若しくは極小値をとる。ただし、第1ダイヤフラム103の面積と第2ダイヤフラム104の面積が等しくなるときのそれらの値をS0としている。これらのグラフからわかるように、第1ダイヤフラム103の面積が変化すれば、第1ポンプ室107の体積と第2ポンプ室108の体積の合計値は変化する。今、筐体102の内部の体積をWtとした場合、電解液室筐体内部分190の体積はWtから第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108の合計体積を引いた値となる。よって、第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108の合計体積の変化に応じて、電解液室筐体内部分190の体積も変化する。これに応じて、弾性膜部130の形状は、電解液室109の体積がほぼ一定に保たれるように変化する。今、電解液室筐体内部分190の体積が増加した場合、それに応じて電解液の圧力が減少するので、弾性膜部130における弾性膜部130の弾性力とバネ部131の弾性力と電解液の圧力と筐体部102の外部雰囲気の圧力との間のバランスが変化する。この結果、弾性膜部130の凸形状の膨らみが小さくなり、弾性膜内側空間部分192の体積が減少する。この結果、電解液室109の体積がほぼ一定に保たれる。また、逆に、電解液室筐体内部分190の体積が減少した場合、それに応じて電解液の圧力が増加するので、弾性膜部130における弾性膜部130の弾性力とバネ部131の弾性力と電解液の圧力と筐体部102の外部雰囲気の圧力との間のバランスが変化する。この結果、弾性膜部130の凸形状のふくらみが大きくなり、弾性膜内側空間部分192の体積が増加する。この結果、電解液室109の体積がほぼ一定に保たれる。以上の結果として、電解液室109の内部に満たされた電解液室109の体積もほぼ一定となり、電解液の圧力もほぼ一定に保たれる。
本発明の前記第1実施形態にかかる流体搬送装置においては、初期状態において電解液の圧力を第1及び第2ポンプ室107,108の内部の流体の圧力よりも小さい適切な値に設定すると、弾性膜部130及びバネ部131の動作によって、電解液の圧力も、ある一定の範囲内に保つことが可能である。ここで、前記「初期状態において電解液の圧力を第1及び第2ポンプ室107,108の内部の流体の圧力よりも小さい適切な値に設定する」とき、初期状態における流体の圧力が0.101MPa(1atm)である場合には、初期状態における電解液の圧力(電解液の初期圧力)は約0.091MPa〜0.101MPa(0.9atm〜0.999atm)の範囲内に設定することが望ましい。その中でも特に約0.100MPa〜0.101MPa(0.99atm〜0.999atm)の範囲内に設定することが望ましい。電解液の初期圧力が前記範囲より小さい場合には、流体と電解液の圧力差が大きすぎてダイヤフラムの動きが阻害されるという問題が生じるためである。また、電解液の初期圧力が前記範囲より大きい場合には、ポンプの動作中にダイヤフラムが緩んでポンプ動作の効率が低下するという問題が生じる可能性があるためである。また、前記「電解液の圧力も、ある一定の範囲内に保つ」とは、ポンプの動作中における電解液の適切な圧力を、例えば約0.051MPa〜0.101MPa(0.5atm〜0.999atm)の範囲内に保つことを意味している。ポンプの動作中における電解液の圧力が前記範囲より小さい場合には、流体と電解液の圧力差が大きすぎて、ダイヤフラムの動きが阻害されるという問題が生じるためである。また、電解液の圧力が前記範囲より大きい場合には、流体と電解液の圧力差が小さくなりすぎて、ダイヤフラムが緩んでポンプ動作の効率が低下するという問題が生じる可能性があるためである。前記したように、弾性膜部130及びバネ部131の動作によって、電解液の圧力も、ある一定の範囲内に保つため、、常に電解液の圧力を第1及び第2ポンプ室107,108の内部の流体の圧力よりも小さく保つことが可能である。この結果、第1及び第2ダイヤフラム103,104には第1及び第2ポンプ室107,108から電解液室109の方向にある一定範囲の力が加わるので、この力によって第1及び第2ダイヤフラム103,104は弛まずに張った状態に保たれて、第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力は適切な値に保たれる。ここで、第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力の適切な値は、例えば0.101MPa〜10.1MPa(約1atm〜約100atm)の範囲である。第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力が前記範囲より大きい場合には、第1及び第2ダイヤフラム103,104の動きが阻害されるという問題が生じる。また、第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力が前記範囲より小さい場合には、第1及び第2ダイヤフラム103,104が緩んでポンプ動作の効率が低下するという問題が生じる可能性がある。このように第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力は適切な値に保たれることから、ポンプの動作中、常に、第1及び第2ダイヤフラム103と104が電解液室109の方向に見て凸形状に変形した状態となり、第1及び第2ダイヤフラム103と104に対して引っ張り方向の応力(テンション)が一定の範囲内の大きさで加わった状態に保たれて、電解液室109内の電解液と第1及び第2ポンプ室107,108内の流体とにより第1及び第2ダイヤフラム103と104に作用する圧力が所定の範囲(一定の範囲)内に維持される。ここで、ポンプの動作中における、電解液室109内の電解液の圧力と第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力との差によって第1及び第2ダイヤフラム103と104に作用する圧力の範囲としては、例えば0.0101MPa〜0.000101MPa(0.1atm〜0.001atm)の範囲が望ましい。電解液の圧力と流体の圧力との差によって第1及び第2ダイヤフラム103と104に加わる圧力が前記範囲より大きい場合には、第1及び第2ダイヤフラム103と104の動きが阻害されるという問題が生じるためである。また、電解液の圧力と流体の圧力との差によって第1及び第2ダイヤフラム103と104に加わる圧力が前記範囲より小さい場合には、第1及び第2ダイヤフラム103と104が緩んでポンプ動作の効率が低下するという問題が生じる可能性があるためである。このように第1及び第2ダイヤフラム103と104に作用する圧力が所定の範囲(一定の範囲)内に維持される状態がポンプ動作時に常に保たれるために、第1及び第2ダイヤフラム103,104のそれぞれの導電性高分子膜が伸張と収縮を行うときの仕事が、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の吐出と吸入に効率良く使われる。すなわち、ポンプの動作における仕事効率を大きくすることが可能である。ここで、ポンプの仕事効率とは、ポンプに加えられた電気エネルギーの中で、ポンプが流体の吸入と吐出のために行う仕事の割合であると定義する。
次に、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103及び104に加わる張力の変化が生じた場合に、弾性膜部130とバネ部131とによって第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力が適正に保たれる働きについて説明する。
一般的に、導電性高分子膜を用いたダイヤフラム型ポンプにおいては、導電性高分子膜に周期的な電圧を印加して動作を行ったときに、
(i)一定方向に歪みが蓄積されること、又は、
(ii)導電性高分子膜が電解液を吸うことによって膨張などの変形を生じること、又は、
(iii)導電性高分子膜においてクリープに代表される非可逆的若しくは可逆的な形状変化が生じること、又は、
(iv)導電性高分子膜の固定部の変形若しくはズレなどが発生する。このために、ダイヤフラムの面積若しくは形状若しくは配置が変化することがある。この場合、従来例に示したポンプにおいては、前記のように、ポンプを製造するときに導電性高分子膜を張力がかかる状態で設置した場合でも、ダイヤフラムに所望の張力(引っ張り方向の応力)が加えられない状況が生じる。
しかし、この第1実施形態においては、このようにダイヤフラムに所望の張力が加えられないといった張力の変化を、弾性膜部130とバネ部131との変形によって吸収されるために、ダイヤフラムに加えられる張力は一定範囲内に保つことができる。
これについて、以下に、具体的に説明する。図8及び図9は、この第1実施形態において第1及び第2ダイヤフラム103,104に加わる張力の変化が生じたときの第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力を所定の範囲内に維持する状態を示す。図8は、第1及び第2ダイヤフラム103と104が前記の理由で張力の変化が生じて伸びた場合の、第1及び第2ダイヤフラム103と104に対する圧力を所定の範囲内に維持する様子を示す。図8において、点線は、図4の状態における第1及び第2ダイヤフラム103と104の位置を示す。この図8において、第1及び第2ダイヤフラム103と104は、図4に比べて伸びる方向に変形しているが、このことにより、一時、電解液室109の体積が減少し、電解液の圧力が増加する。このことから、弾性膜部130における、弾性膜部130の弾性力とバネ部131の弾性力と電解液の圧力と外部雰囲気の圧力とのバランスが崩れる。この結果、弾性膜部130とバネ部131との弾性によって、バネ部131が伸びて、弾性膜部130の凸形状の膨らみが筺体部102の外向きに大きくなるように変形する。これに伴って、筺体部102の内部の電解液室109内の電解液は一部は、弾性膜部130の方向に吸い出され(すなわち、開口空間部分191を介して弾性膜内側空間部分192内に吸い出され)、電解液室109の体積は、ほぼ初期状態の値に戻る。このことから、電解液の圧力が、ほぼ初期状態の値に戻る。
また、逆に、図9は、第1及び第2ダイヤフラム103と104が周期的な電解伸縮以外の理由で縮んだ場合の、第1及び第2ダイヤフラム103と104に対する圧力を所定の範囲内に維持する様子を示す。図9において、点線は、図4の状態における第1及び第2ダイヤフラム103と104の位置を示す。この場合、弾性膜部130とバネ部131との弾性によって、バネ部131が縮んで、弾性膜部130の凸形状の膨らみが小さくなるように変形する。このことから、電解液の圧力が、ほぼ初期状態の値に保たれる。
次に、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103及び104に加わる張力において大きな変化が生じた場合に、バネ可動部205によって第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力が適正に保たれる働きについて説明する。
図4に示すように、弾性膜部130に一端が接触するバネ部131の他端を、バネ可動部205に接続している。バネ可動部205を筐体部102に対して、バネ可動部駆動装置1103(図10参照)の駆動により正逆回転させて軸方向すなわち図4の左右方向に進退移動させることで、バネ部131の弾性力が調整可能である。この調整の際、バネ可動部205の左右方向に進退移動により、バネ部131を介して、弾性膜部130が図4の左右方向に移動するので、結果として、電解液室109の体積が変化して電解液室109内の電解液の圧力を調整することが可能である。このことで、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する圧力を所定の範囲内に維持することが可能である。図4において、バネ可動部205は一例としてボルトより構成されて、そのねじ部205bを筐体部102に対してバネ可動部駆動装置1103の駆動により正逆回転させることで、バネ可動部205が移動可能な構成を示している。
バネ可動部駆動装置1103の例としては、電磁モーター、ピエゾアクチュエータ、若しくは、超音波モーターなどの各種の駆動装置を使用することが可能である。又は、バネ可動部駆動装置1103としては、導電性高分子アクチュエータ若しくは形状記憶合金などの各種ソフトアクチュエータを使用することも可能である。また、後述するように、制御部1102により、バネ可動部駆動装置1103と電源110cとをそれぞれ制御する。
以下では、バネ可動部205の動作方法について詳しく説明する。
上で説明したように、第1及び第2ダイヤフラム103及び104のそれぞれの導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103及び104に加わる張力に変化が生じた場合に、ある範囲内では、弾性膜部130の弾性力とバネ部131の弾性力とによって第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力を適正に保つことができる。しかしながら、上で説明したように、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103及び104に加わる張力において大きな変化が生じた場合には、弾性膜部130の弾性力とバネ部131の弾性力とだけでは、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力(第1及び第2ダイヤフラム103及び104に作用する圧力若しくは応力)の調整を十分に行うことができない。一般的に、図49に示すように、導電性高分子アクチュエータを伸縮動作させたときの変位の振動の中心位置の変化の大きさは、変位の振動の振幅よりも大きい。そのため、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮による電解液室筐体内部分の体積変化よりも、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由での電解液室筐体内部分190の体積変化のほうが大きい。このために、ポンプの動作中に第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力を一定範囲に保つためには、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由での第1及び第2ダイヤフラム103及び104の形状変化(伸縮)に対応することが、より重要である。なお、電解液室筐体内部分190の定義は、図7で説明した方法に従う。
図11Aと図11Bは、前記ポンプにおいて第1及び第2ダイヤフラム103及び104間に加える電圧の時間変化の例と、第1及び第2ダイヤフラム103及び104のうちの一方のダイヤフラムのある固定位置からの変位量の時間変化の例を示す。ただし、図11Bにおいては、時間経過に伴い変位が振動するときの振動の中心のおよその位置を点線で示している。この例においては、0.5Hzで±1.5Vの矩形波の電圧を長時間印加した状態での、ある時刻を時間軸の0として、その後、ある回数の伸縮動作を行う。そして、その後、印加電圧を切断し、その状態で1時間インターバルをおく。さらにその後、再び、矩形波の電圧を印加する。図12Aは、ここで印加する矩形波の1周期の時間変化を示す。図12Aに示すように、矩形波において、+1.5Vの電圧を印加する時間と−1.5Vの電圧を印加する時間とが等しい。
図11A及び図11Bに示すように、矩形波を長時間印加している状態において、変位は安定した形で振動するが、印加電圧を切断後に再度印加を開始した時点では、変位量が小さい値に変化している。また、伸縮動作を再開した後、変位は振動をしながら振動の中心が大きな値に移動する。ただし、変位の計測は、例えば第1及び第2ダイヤフラム103及び104の中心部の位置をある固定点から測定したときの位置の変化で示す。そして、変位の正の向きは、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が伸張する方向であると定義する。
一般的に、導電性高分子アクチュエータ若しくは導電性高分子ダイヤフラムは、長時間伸縮動作を行うと、伸縮動作のうちの一方の動作の状態に変形して、その後、長時間停止すると、元の形状に戻る傾向がある。たとえば、図11A及び図11Bにおいて説明した例では、ポンプを長時間動作したときには、初期位置に比べて第1及び第2ダイヤフラム103及び104が次第に伸びていき、安定な位置に漸近する。すなわち、ポンプを長時間動作させた場合、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の変位の振動の中心が伸張方向に移動して、安定点に漸近する。また、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が初期位置と比べて伸びた状態からポンプの動作を停止させた場合、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の位置は初期状態の形状すなわち初期位置に漸近する。導電性高分子アクチュエータ(第1及び第2ダイヤフラム103及び104)はイオンの出入りによって伸縮を行うが、図11A及び図11Bの例の場合、アクチュエータ(第1及び第2ダイヤフラム103及び104)が伸縮動作を繰り返すうちに、イオンが第1及び第2ダイヤフラム103及び104の導電性高分子膜内に取り残されてアクチュエータ(第1及び第2ダイヤフラム103及び104)が徐々に伸びていくものと考えられる。また、逆に、アクチュエータ(第1及び第2ダイヤフラム103及び104)の伸縮動作を停止させて放置すると、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の導電性高分子膜の内部に取り残されたイオンが、拡散によって導電性高分子膜の内部から電解液に抜け出して、アクチュエータ(第1及び第2ダイヤフラム103及び104)が元の形状に戻ると考えられる。また、別の材料又は別の駆動方法を用いた場合には、アクチュエータ(第1及び第2ダイヤフラム103及び104)を長時間動作させた場合、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の変位の振動の中心が収縮方向に移動して、安定点に漸近して、また、その状態からポンプの動作を停止させた場合、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が元の形状に戻る場合も考えられる。たとえば、このような例としては、図12Bに示すように、正の電圧の印加時間が負の電圧の印加時間よりも長いような矩形波の駆動電圧を、カチオン駆動型の導電性高分子アクチュエータに印加した場合が考えられる。この場合、正の電圧の印加時間に比較的多量のカチオンが導電性高分子膜から抜け出て、負の電圧の印加時間に比較的少量のカチオンが導電性高分子膜に入り込むことが繰り返されるので、アクチュエータを長時間動作させると、アクチュエータは徐々に収縮する(変位の振動の中心が収縮方向に移動する)ことになる。また、その後、アクチュエータを停止させた場合には、拡散によってカチオンが電解液から導電性高分子膜内部に入り込んで、アクチュエータは初期状態の形状すなわち初期位置に戻ると考えられる。なお、ここでの説明においては、導電性高分子ダイヤフラムも導電性高分子アクチュエータに含まれると考えて、一般的に、導電性高分子アクチュエータに成り立つ内容について説明している。
導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103及び104が大きく伸縮した場合、弾性膜部130とバネ部131との形状変化だけでは第1及び第2ダイヤフラム103及び104の伸縮を十分に吸収できない。これに対して、本発明の前記第1実施形態にかかる流体搬送装置では、バネ可動部205を左右にすなわち軸方向に進退移動させることによって、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する圧力を調整する。
図13は、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103及び104が大きく伸びた場合の例を示す。この場合、弾性膜部130とバネ部131の形状変化だけでは、第1及び第2ダイヤフラムの伸びを十分に吸収できない。このため、図13では、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が緩んでいる状態を示している。
これに対して、本発明の前記第1実施形態にかかる流体搬送装置では、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103及び104が大きく伸びた場合、図14に示すように、バネ可動部205を筺体部102に対して回転させて右側に(すなわち、バネ可動部205の軸方向に筺体部102内に入りこむように)移動させることによって、バネ部131を介して弾性膜部130を筺体部102の外向きに膨張させて、電解液室109の体積を小さくして電解液室109内の電解液の圧力を第1及び第2ポンプ室107,108の圧力よりも下げることにより、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の緩みをとって、適切な張力が加わった状態に保つことができる。
また、これとは逆に、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103及び104が大きく縮んだ場合、本発明の前記第1実施形態にかかる流体搬送装置では、図16に示すように、バネ可動部205を筺体部102に対して回転させて左側に(すなわち、バネ可動部205の軸方向に筺体部102から外部に出るように)移動させることによって、バネ部131を介して弾性膜部130を筺体部102の内向きに収縮させて、電解液室109の体積を小さくして電解液室109内の電解液の圧力を第1及び第2ポンプ室107,108の圧力よりも上げることにより、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の緩みをとって、適切な張力が加わった状態に保つことができる。
以下では、バネ可動部205の働きについて詳しく説明する。
図4に示す初期状態においては、電解液の圧力は第1及び第2ポンプ室107,108の流体の圧力よりも小さく設定されているために、第1及び第2ダイヤフラム103及び104には、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の圧力と電解液の圧力との差に相当する力が加わっており、その力によって、第1及び第2ダイヤフラム103及び104は適切な張力(引っ張り方向の応力)が加わった状態に保たれる。
これに対して、図13においては、図4の初期状態に比べて第1及び第2ダイヤフラム103及び104が大きく伸びている。このために、図13の状態では、図4の初期状態に比べて電解液室109の体積が小さくなっている。ところで、電解液は非圧縮流体であるので、電解液室109の体積が変化すると、電解液の圧力が大きく変化する。図13の状態においては、図4の初期状態と比べて電解液室109の体積が減少しているので、電解液の圧力が増加しており、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の圧力と電解液の圧力との差が初期状態よりも小さくなっている。このことにより、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力が大きく減少する。以上の結果、図13に示したように、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が緩む状態が発生する。
これに対して、本発明の前記第1実施形態にかかる流体搬送装置においては、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が大きく伸びた場合においては、図14に示すように、バネ可動部205が筺体部102に対して右側に移動し、バネ部131を介して弾性膜部130を筺体部102の外向きに膨張させ、弾性膜内側空間部分192の体積を増加させて、電解液室109の体積をほぼ一定に保つことができる。このことによって、電解液室109内の電解液室109内の電解液の圧力を一定範囲内に保つことができる。この結果、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力を適切な範囲に保つことができて、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が緩むことが防止できる。
また、図15においては、図4の初期状態に比べて、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が大きく縮んでいる。このために、図15の状態では、図4の初期状態に比べて、電解液室筐体内部分190の体積が大きくなっている。既に説明したように、電解液は非圧縮流体であるので、電解液室109の体積が変化すると、電解液の圧力が大きく変化する。図15の状態においては、図4の初期状態と比べて電解液室109の体積が増加しているので、電解液の圧力が減少しており、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の圧力と電解液の圧力との差が初期状態よりも大きくなっている。このことにより、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力が大きく増加する。以上の結果、図15の状態においては、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力が大きくなりすぎて、その伸縮動作が妨げられる。
これに対して、本発明の前記第1実施形態にかかる流体搬送装置においては、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が大きく縮んだ場合においては、図16に示すように、バネ可動部205が筺体部102に対して左側に移動し、バネ部131を介して弾性膜部130を筺体部102の内向きに収縮させ、弾性膜内側空間部分192の体積を減少させて、電解液室109の体積をほぼ一定に保つことができる。このことによって、電解液室109内の電解液の圧力を一定範囲内に保つことができる。この結果、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力を適切な範囲に保ち、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の伸縮動作を正常に保つことができる。
バネ可動部205は、前記したように、例えば、ねじ形のボルトであって、ボルトを回すことによって、左右方向の移動を行う。別の例としては、図17に示すように、バネ可動部206がシリンジ形状である場合が考えられる。なお、以下の説明では、代表して、バネ可動部205で説明するが、シリンジ形状のバネ可動部206でも同様に作用させることができる。
シリンジ形状のバネ可動部206を動作させる方法としては、例えば、図52の方法が考えられる。シリンジ形状のバネ可動部206の内側には、図52に示すように、ネジ山206aが形成されている。また、モーター206mに接続された回転軸206bの外側にもネジ山206cが形成されており、これらのネジ山206a,206bが重なるように配置されている。回転軸206bを回転させることによって、シリンジ形状のバネ可動部206は左右に移動する。
以上の説明において、電解液室筐体内部分190、及び、弾性膜内側空間部分192の定義は、図7で説明した方法に従う。
以下では、バネ可動部205の移動タイミングについて、前記第1実施形態にかかる流体搬送装置(一例としてのポンプ)の動作例を示しながら説明する。
本発明の前記第1実施形態にかかる流体搬送装置(一例としてのポンプ)の動作を説明するために、その比較対象として、まず、従来のポンプの動作について簡単に説明する。
図18は、例えば、図48Cに示す構成の従来のポンプの動作例を示す。ただし、図18の(a)はダイヤフラムに印加する電圧の時間変化を示し、図18の(b)は第1及び第2ダイヤフラム403と404のうちの一方のダイヤフラムの変位量の時間変化を示し、図18の(c)は従来のポンプの吐出量の時間変化を示す。ダイヤフラムの変位量は、例えばダイヤフラムの中心部がある固定点からどれだけ変位しているかを示す。また、ダイヤフラムの変位量は、ダイヤフラムが伸びる方向を正と定義する。この例では、ダイヤフラムに対して、時刻t0から時刻t2までの間の時間、及び、時刻t3から時刻t4までの間の時間、及び、時刻t5から時刻t7までの間の時間に、0.5Hzで±1.5Vの矩形波を印加する。また、それ以外の時間は、電圧の印加を停止する。時刻t2と時刻t3との間の時間は例えば1分であり、時刻t4と時刻t5との間の時間は例えば1時間である。
時刻t1から時刻t2までの時間、及び、時刻t6から時刻t7までの時間において、図18の(b)に示すようにダイヤフラムが大きく伸びている。この理由は、図11A及び図11Bを用いて説明したように、従来のポンプを長時間動作させたときには、導電性高分子膜が電解伸縮を繰り返すうちに導電性高分子膜内にイオンが取り残されて、導電性高分子膜が徐々に伸びるためだと考えられる。この結果、図13を用いて説明したように、ダイヤフラムの張力が小さくなって緩んだ状態となり、ダイヤフラムの電解伸縮の振幅が小さくなる。この結果、ポンプの吐出量が減少する。
これに対して、本発明の前記第1実施形態にかかる流体搬送装置の動作例を図19に示す。図19は、2枚のダイヤフラムの間に印加する電圧の時間変化、一方のダイヤフラムの変位量の時間変化、ポンプが搬送する流量の時間変化を示す。
時刻t1から時刻t2までの時間、及び、時刻t3から時刻t4までの時間、及び、時刻t6から時刻t7までの時間において、図14に示すようにバネ可動部駆動装置1103の駆動によりバネ可動部205は右側に移動した状態となる。このことによって、これらの時間において、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の緩みをとって、適切な張力が加わった状態に保つ。結果として、流体搬送装置(一例としてのポンプ)の動作中には、その吐出量は比較的大きな値に保たれる。
また、前記以外の時間においては、図4に示すようにバネ可動部駆動装置1103の駆動によりバネ可動部205は初期状態の位置に戻っている。時刻t5と時刻t6との間の時間においては、流体搬送装置(一例としてのポンプ)の動作前に長時間の停止期間があったために、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の位置が初期状態に近い位置に戻っている。このため、時刻t0と時刻t1との間の時間、及び、時刻t5と時刻t6との間の時間においては、バネ可動部205が初期状態にある状態で第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する圧力(張力)が適切な値に保たれるので、流体搬送装置(一例としてのポンプ)の吐出量も比較的高い値に保たれる。
以下の説明においては、簡単のために、図14に示すようにバネ可動部205が右側に移動した状態にあることを、「圧力維持部1100が圧力維持状態(応力減少防止状態)である」と表現する。これに対して、図4に示すようにバネ可動部205が初期状態の位置にあることを、「圧力維持部1100が初期状態である」と表現する。
なお、時刻t2と時刻t3との間の時間、及び、時刻t4と時刻t5との間の時間の一部の期間においては、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が初期状態に比べて伸びており、バネ可動部205が初期状態の位置にあるので、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力は小さくなり、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が緩んだ状態となることがある。この状態においては、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の位置は電解液又は流体の動きに応じて動き、変位量が一定の値に決まらないことが考えられるので、図19において、時刻t2と時刻t3との間の時間、及び、時刻t4と時刻t5との間の時間においては、ダイヤフラムの位置は点線で示している。
なお、上の説明ではバネ可動部205の位置が、図14に示す状態と図4に示す状態との2個の状態の間で変化する場合を説明したが、バネ可動部205の位置が3個以上の状態の間で変化する方法も考えられる。
また、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が大きく縮んだ場合においては、図16に示すように、図4に示す初期状態に比べてバネ可動部205が左側に移動し、バネ部131を介して弾性膜部130を筺体部102の内向きに収縮させ、弾性膜内側空間部分192の体積を減少させて、電解液室109の体積をほぼ一定に保つ動作を行うことも可能である。このことによって、電解液室109内の電解液の圧力を一定範囲内に保ち、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力を適切な範囲に保つことができて、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の動作を正常に保つことが可能である。
次に、バネ可動部の移動についての制御方法の例について説明する。
上で説明したように、一般的に、導電性高分子膜を用いたダイヤフラムにおいては、電圧を長時間印加したときには変位は安定する(変位の振動の中心の位置は一定となる)。また、ダイヤフラムの変位が安定した状態の後、電源を切った状態で長時間、放置すると、電源を切った直後に比べて変位が変化する。また、その後、電源110cを印加すると、変位の振動の中心は時間とともに変化して、長時間経過すると、変位は再び安定する(変位の振動の中心の位置は一定となる)。そこで、これらの関係を考慮すれば、流体搬送装置(一例としてのポンプ)の駆動を行っている動作時間と、流体搬送装置(一例としてのポンプ)の駆動を停止しているアイドル時間とを、後述する制御部1102により計測することによって、第1及び第2ダイヤフラム103及び104のおよその変位量(第1及び第2ダイヤフラム103及び104が電解伸縮するときの振動の中心のおよその位置)を検出可能である。
以下では、この検出方法を用いて、バネ可動部205を制御部1102で制御する方法について説明する。
図10は、前記検出方法を用いてバネ可動部205の制御を行う本発明の前記第1実施形態にかかる流体搬送装置の構成を示す図である。この図10においては、図4に比べて、インターフェース部1101と、制御部1102と、バネ可動部駆動装置1103とが追加されている。
インターフェース部1101は、流体搬送装置の駆動動作と停止の命令を流体搬送装置の外部から受け取る。インターフェース部1101が流体搬送装置の駆動動作命令を受け取ったときには、インターフェース部1101は、制御部1102に対して駆動開始信号を出力する。また、インターフェース部1101が流体搬送装置の駆動停止命令を受け取ったときには、インターフェース部1101は、制御部1102に対して駆動停止信号を出力する。
制御部1102は、駆動開始信号及び駆動停止信号の受信に対して反応して、流体搬送装置の動作制御を行う。制御部1102は、「圧力維持フラグ」という変数の値を記憶しており、この値を、以下に説明する方法で設定する。また、制御部1102は、以下に示す方法で、駆動時間及びアイドル時間を計測する。また、制御部1102は、「アイドル時間しきい値」と、「駆動時間しきい値」という定数を記憶している。
以下では、図19の動作例を用いて、流体搬送装置の制御方法について説明する。
図20は、流体搬送装置の制御方法の例を示すフローチャートであり、基本的に、制御部1102の制御の下に実行される。
図19の例においては、「駆動時間しきい値=t1−t0」の関係が成立すると仮定する。すなわち、時刻t1と時刻t0との間の時間の長さが、「駆動時間しきい値」であると仮定する。
また、「(t3−t2)<アイドル時間しきい値<(t5−t4)」の関係が成立すると仮定する。
まず、時刻t0の初期状態において制御部1102が駆動開始信号を受信して、ステップS0を実行する。ステップS0においては、制御部1102により、圧力維持部1100を構成するバネ部131と弾性膜部130とバネ可動部205とを初期状態に設定する。すなわち、図4に示すようにバネ可動部205を初期状態の位置に位置するように設定する。ただし、初期状態の前の時間においては、ポンプの動作が停止した状態で長時間保持されていると仮定する。ステップS0を終了したら、次にステップS1を制御部1102により実行する。
ステップS1においては、まず、制御部1102の制御の下に電源110cにより、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対して駆動電圧の印加を開始する。駆動電圧は、ここでは、一例として図19に示すように0.5Hzで±1.5Vの矩形波を考える。そして、制御部1102において、圧力維持フラグ=0、及び、駆動時間=0に設定する。そして、駆動時間の計測を制御部1102により開始する。ただし、駆動電圧の例としては、例えば正弦波などの他の周期関数を考えることも可能である。
次いで、ステップS2においては、一定時間、駆動電圧の印加を継続する。ステップS2を終了したら、次にステップS3を実行する。
次いで、ステップS3においては、制御部1102が駆動開始信号を受信してから初めてステップS3を行う場合には、制御部1102が駆動開始信号を受信してから制御部1102が駆動停止信号を受信したか否かを制御部1102で判定する。また、制御部1102が駆動開始信号を受信してから既にステップS3を行ったことがあると制御部1102で判定した場合には、前回ステップS3を行った後に制御部1102が駆動停止信号を受信したかを制御部1102で判定する。制御部1102で駆動停止信号を受信していたと制御部1102で判定した場合、ステップS4に遷移する。制御部1102で駆動停止信号を受信していなかったと制御部1102で判定した場合、ステップS9に遷移する。
図19の動作例においては、時刻t0から、ステップS0及びステップS1及びステップS2及びステップS3の処理を制御部1102で実行する。これらの処理は、通常の機器においては非常に短時間で終了する。そして、図19の動作例においては、ステップS3における制御部1102の判定の結果、ステップS9に遷移する。
ステップS9においては、圧力維持部1100が初期状態であるか否かを制御部1102で判定する。すなわち、バネ可動部205の位置が初期状態の位置であるか否かを制御部1102で判定する。バネ可動部205が初期状態であると制御部1102で判定した場合、ステップS10に遷移する。圧力維持部1100が初期状態でないと制御部1102で判定した場合、すなわち、圧力維持状態にあると制御部1102で判定した場合、ステップS2に遷移する。
ステップS10においては、現在の駆動時間が、予め決められた駆動時間しきい値以上の値であるか否かを制御部1102で判定する。駆動時間は、ステップS1において制御部1102で計測が開始される時間であり、ステップS1の実行時刻から現在までの時間である。駆動時間しきい値の値は、例えば、1分以上で1時間以下の値である。ステップS10での制御部1102による判定の結果、駆動時間が駆動時間しきい値以上の値であると制御部1102で判定した場合には、ステップS11に遷移する。駆動時間が駆動時間しきい値より小さい値であると制御部1102で判定した場合には、ステップS2に遷移する。
図19の動作例においては、時刻t0以後で時刻t1より前の時刻においては、ステップS2、ステップS3、ステップS9、ステップS10が、制御部1102により繰り返し実行される。初期状態においては、電解液の圧力は流体又は大気などの外部の圧力よりも低い値に設定されて、この結果、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が適当な張力で張った状態となっている。しかし、ポンプの動作を継続すると、上で説明したように、初期状態に比べて第1及び第2ダイヤフラム103及び104が変形することが考えられる。ここでは、初期状態に比べて第1及び第2ダイヤフラム103及び104が伸びる場合を考える。この場合、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が伸びた結果、電解液室109の体積が減少して、電解液の圧力が増加する。そして、ポンプの動作の継続時間(ポンプの駆動時間)がある値より大きくなった場合には、電解液の圧力がある範囲より大きくなり、これを放置すると、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が緩んでポンプの吐出動作の効率が低下する。
前記ステップの繰り返しにおいて、いずれかのステップの処理中に時刻t1が訪れる。時刻t1において、「駆動時間=駆動時間しきい値」の関係が成立する。これ以後の時刻において、最初にステップS10の処理が行われたときに、その判定の結果として、ステップS11に遷移する。ただし、ここでは、時刻t0においてステップS0の処理を実行してから、ステップS1において駆動時間の計測を開始するまでの時間を無視している。
ステップS11においては、圧力維持部1100を圧力維持状態に遷移する。すなわち、図14に示すように、制御部1102での制御の下でのバネ可動部駆動装置1103の駆動によりバネ可動部205を右側に移動した状態とする。ステップS11の処理が終了したら、ステップS2に遷移する。
この第1実施形態においては、前記のように、駆動時間を計測して、駆動時間がある値以上になった場合には、圧力維持部1100を圧力維持状態にすることによって、電解液の圧力を減少させて第1及び第2ダイヤフラム103及び104が緩むのを防止する。この結果、従来方法に比べて、ポンプの動作効率とポンプの流量(吐出量)を大きく保つことができる。
前記の処理を行った後、時刻t2までの時間において、図20の流れに従って、ステップS2、ステップS3、ステップS9の処理が、制御部1102により繰り返し実行される。この繰り返しにおいては、ステップS9の判定において、圧力維持部1100は初期状態でないので、ステップS2に遷移する。前記ステップの繰り返しにおいて、いずれかのステップの処理中に時刻t2が訪れる。この例では、時刻t2に制御部1102が駆動停止信号を受信するものと仮定する。これ以後の時刻において、最初にステップS3の処理が行われたときに、その判定の結果、ステップS4に遷移する。
ステップS4においては、圧力維持部1100が圧力維持状態であるか否かを制御部1102で判定する。圧力維持部1100が圧力維持状態であると制御部1102で判定した場合、ステップS5に遷移する。圧力維持部1100が圧力維持状態ではなく、初期状態であると制御部1102で判定した場合、ステップS6に遷移する。図19の例においては、時刻t2において、圧力維持部1100は圧力維持状態であるので、ステップS4の次にステップS5に遷移する。
ステップS5においては、制御部1102において、圧力維持フラグ=1に設定して、ステップS6に遷移する。
ステップS6においては、制御部1102の制御の下に、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する電源110cからの駆動電圧の印加を停止して、バネ可動部駆動装置1103の駆動によりバネ可動部205を移動させて、圧力維持部1100であるバネ可動部205を初期状態に設定する。そして、制御部1102において、アイドル時間=0にした後、アイドル時間の計測を制御部1102で開始する。
図19の例においては、時刻t2において第1及び第2ダイヤフラム103及び104は伸びているので、圧力維持部1100を初期状態に戻すと、図13に示すように第1及び第2ダイヤフラム103及び104が緩んだ状態となる。また、このとき、電解液の圧力は初期状態よりも大きな値となることが考えられる。ステップS6が終了すると、ステップS7に遷移する。
次いで、ステップS7においては、制御部1102の制御の下に、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する駆動電圧の印加を停止した状態で、一定時間、待機する。ステップS7が終了すると、ステップS8に遷移する。
次いで、ステップS8においては、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する駆動電圧の印加を停止してから、制御部1102が駆動開始信号を受信したか否かを制御部1102で判定する。第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する駆動電圧の印加を停止してから制御部1102が駆動開始信号を受信したと制御部1102で判定した場合、ステップS12に遷移する。第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する駆動電圧の印加を停止してから制御部1102が駆動開始信号を受信していないと制御部1102で判定した場合、ステップS7に遷移する。
図19の例においては、時刻t3までの時刻において、ステップS7、ステップS8の処理が、制御部1102により繰り返し実行される。
前記ステップの繰り返しにおいて、いずれかのステップの処理中に時刻t3が訪れる。この例では、時刻t3に制御部1102が駆動開始信号を受信するものと仮定する。これ以後の時刻において、最初にステップS8の処理が行われたときに、その判定の結果、ステップS12に遷移する。
ステップS12においては、圧力維持フラグ=1であるか否かを制御部1102により判定する。圧力維持フラグ=1であると制御部1102で判定した場合、ステップS13に遷移する。圧力維持フラグ=1ではなく、圧力維持フラグ=0であると制御部1102で判定した場合、ステップS1に遷移する。図19の例においては、時刻t3において圧力維持フラグ=1であるので、ステップS13に遷移する。
ステップS13においては、「アイドル時間≧アイドル時間しきい値」の条件が成り立つか否かを制御部1102により判定する。「アイドル時間≧アイドル時間しきい値」の条件が成り立つと制御部1102で判定した場合、ステップS1に遷移する。「アイドル時間≧アイドル時間しきい値」の条件が成り立たないと制御部1102で判定した場合、ステップS14に遷移する。
図19の例においては、「(t3−t2)<アイドル時間しきい値<(t5−t4)」の関係が成り立つから、時刻t3において「アイドル時間<アイドル時間しきい値」の関係が成立する。そこで、図19の例においては、ステップS13の次に、ステップS14に遷移する。
ステップS14においては、制御部1102において、圧力維持部1100を圧力維持状態に設定して、ステップS1に遷移する。
以後、ステップS1において、制御部1102の制御の下に、第1及び第2ダイヤフラム103と104に対する電源110cからの駆動電圧の印加を開始して、時刻t4まで、ステップS2、ステップS3、ステップS9の処理が、制御部1102により繰り返される。
前記ステップの繰り返しにおいて、いずれかのステップの処理中に時刻t4が訪れる。この例では、時刻t4に制御部1102が駆動停止信号を受信するものと仮定する。これ以後の時刻において、最初にステップS3の処理が行われたときに、その判定の結果、ステップS4に遷移する。
その後、ステップS4、ステップS5、ステップS6が、制御部1102により実行される。
その後、時刻t5まで、ステップS7、ステップS8の処理が、制御部1102により繰り返される。
前記ステップの繰り返しにおいて、いずれかのステップの処理中に時刻t5が訪れる。この例では、時刻t5に制御部1102が駆動開始信号を受信するものと仮定する。これ以後の時刻において、最初にステップS8の処理が行われたときに、その判定の結果、ステップS12に遷移する。そして、その後、ステップS12が実行されて、ステップS13に遷移する。
図19の例においては、「(t3−t2)<アイドル時間しきい値<(t5−t4)」の関係が成り立つから、時刻t5において「アイドル時間>アイドル時間しきい値」の関係が成立する。そこで、図19の例においては、ステップS13の次に、ステップS1に遷移する。
これ以後、時刻t7までの時間においては、時刻t0においてステップS0が終了した後にステップS1の処理が行われてから時刻t2においてステップS6の処理が行われるまでの時間と同様の処理が行われる。
上の説明及び図の表示においては、時刻t0になった後、ステップS0、ステップS1の処理が終了するまでの時間は、非常に短く無視できるものとしている。また、上の説明及び図の表示においては、時刻t1、時刻t6の各時刻になった後、ステップS2、ステップS3、ステップS9、ステップS10のいずれかのステップを処理して、ステップS11の処理が終了するまでの時間は無視非常に短く無視できるものとしている。また、上の説明及び図の表示においては、時刻t2、時刻t4、時刻t7の各時刻になった後、ステップS9、ステップS2、ステップS3のいずれかのステップを処理して、ステップS4、ステップS5、ステップS6の処理が終了するまでの時間は無視非常に短く無視できるものとしている。また、時刻t3、時刻t5の各時刻になった後、ステップS7、ステップS8のいずれかのステップを処理して、ステップS12、ステップS13、ステップS14のいずれかのステップを処理して、ステップS1の処理が終了するまでの時間は無視非常に短く無視できるものとしている。
ここで、制御部1102は、各ステップの状態の遷移を管理して、各ステップにおいて条件の判定が必要な場合、それらの判定を実行する。また、既に説明したように、圧力維持フラグという変数の値を制御部1102では記憶しており、この値を前記方法で制御部1102で設定する。また、前記の方法で駆動時間及びアイドル時間を制御部1102で計測し、アイドル時間しきい値と駆動時間しきい値という定数を制御部1102で記憶している。
ステップS0、ステップS6、ステップS11、ステップS14において、制御部1102は、バネ可動部駆動装置1103に対して、バネ可動部205の位置の設定若しくは移動によるバネ可動部205の位置の調整を指示するための調整指示信号を発信する。
バネ可動部駆動装置1103は、制御部1102から調整指示信号を受信すると、その内容に従って、バネ可動部205を移動させて、バネ可動部205の位置の調整を行う。
バネ可動部205の位置の調整を行うバネ可動部駆動装置1103としては、先に述べたように、例えば、電磁モーター、ピエゾアクチュエータ、又は、超音波モーターなどの各種の駆動装置を使用することが可能である。又は、バネ可動部駆動装置1103として、導電性高分子アクチュエータ若しくは形状記憶合金などの各種ソフトアクチュエータを使用することも可能である。
ステップS4、ステップS9において、制御部1102は、バネ可動部駆動装置1103に対して状態表示指示信号を出力する。バネ可動部駆動装置1103は、制御部1102から状態表示指示信号を受信すると、制御部1102に対してバネ可動部205の状態を示す状態表示信号を発信する。
制御部1102は、ステップS4、ステップS9において、バネ可動部駆動装置1103から状態表示信号を受信すると、その内容に従って、上で説明した処理を行う。
ステップS1において、制御部1102は、電源110cに対して、駆動開始信号を発信する。電源110cは、制御部1102から駆動開始信号を受信すると、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対して予め決められた駆動電圧の印加を開始する。
図19の例においては、駆動電圧は0.5Hz,±1.5Vの周期的な矩形波である。
ステップS6において、制御部1102は、電源110cに対して、駆動停止信号を発信する。電源110cは、制御部1102から駆動停止信号を受信すると、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する駆動電圧の印加を停止する。
なお、ステップS1で駆動電圧の印加を開始してから、ステップS6で駆動電圧の印加を停止するまでの間は、電源110cは、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対して継続的に駆動電圧の印加を行う。
以上の働きから、本発明の前記第1実施形態にかかる流体搬送装置においては、初期状態において電解液の圧力をポンプ室内部の流体の圧力よりも小さい適切な値に設定すると、第1及び第2ダイヤフラム103,104の各導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103,104が伸縮した場合においても、弾性膜部130及びバネ部131及びバネ可動部205の動作によって、電解液の圧力もある一定の範囲内に保つことが可能である。この結果、常に、電解液の圧力を第1及び第2ポンプ室107,108の内部の流体の圧力よりも小さい適切な値に保つことが可能である。このことから、第1及び第2ダイヤフラム103,104には第1及び第2ポンプ室107,108から電解液室109の方向にある一定範囲の力が加わるので、この力によって第1及び第2ダイヤフラム103,104は弛まずに張った状態に保たれて、第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力は適切な値に保たれる。このことから、ポンプの動作中、常に、第1及び第2ダイヤフラム103と104が電解液室109の方向に凸形状に変形した状態となり、第1及び第2ダイヤフラム103と104に対して引っ張り方向の応力(テンション)が一定の範囲内の大きさで加わった状態に保たれる。この状態がポンプ動作時に常に保たれるために、導電性高分子膜が伸張と収縮を行うときの仕事が、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の吐出と吸入に効率良く使われる。すなわち、ポンプの動作における仕事効率を大きくすることが可能である。ここで、ポンプの仕事効率とは、ポンプに加えられた電気エネルギーの中で、ポンプが流体の吸入と吐出のために行う仕事の割合であると定義する。
このように、本発明の前記第1実施形態にかかる流体搬送装置においては、ポンプ動作時に常に、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の引っ張り方向の応力(テンション)が適切な範囲内に保たれるために、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の各導電性高分子膜が伸張と収縮を行うときの仕事が、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の吐出と吸入に効率良く使われる。
特に、本発明においては、上で説明したように、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103及び104に加わる張力において大きな変化が生じる場合には、弾性膜部130とバネ部131とだけではなく、バネ可動部205も用いて第1及び第2ダイヤフラム103及び104の位置を変化させるので、この場合にも、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力(応力)の調整を十分に行うことができる。先に説明したように、図49に示すように、一般的に、導電性高分子アクチュエータを伸縮動作させたときの変位の振動の中心位置の変化の大きさは、変位の振動の振幅よりも大きい。そのため、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮による電解液室筐体内部分190の体積変化よりも、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由での電解液室筐体内部分190の体積変化のほうが大きい。このために、ポンプの動作中にダイヤフラムの張力を一定範囲に保つためには、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由でダイヤフラムが大きく形状変化(伸縮)する場合に、応力の調整(圧力の維持調整)を適切に行うことが非常に重要である。これに対して、本発明の前記第1実施形態では、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の各導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103及び104が大きく形状変化(伸縮)する場合に、バネ可動部205をその軸方向に移動させて弾性膜部130とバネ部131とを介して電解液室109内の電解液の圧力と第1及び第2ポンプ室107,108内の流体との圧力との差を調整して、第1及び第2ダイヤフラム103と104に作用する圧力を所定の範囲内に適切に維持することが可能である。
なお、電解液室筐体内部分190の定義は、図7で説明した方法に従う。
本発明の前記第1実施形態に従えば、駆動時間とアイドル時間を制御部1102により計測することによって、第1及び第2ダイヤフラム103と104に対する圧力の状態を推定することができる。このため、第1及び第2ダイヤフラム103と104に対する圧力を検出する力センサなどの特別なセンサを設けることなく、制御を行うことができる。この結果、装置の構成を簡単にすることができる。
なお、前記の説明では、流体搬送装置に弁を持った構成について説明したが、一定量の流体の吐出と吸入を連続して行う場合、それぞれの第1及び第2ポンプ室107,108に弁を持たない開口部をそれぞれ1つずつ設けて、その開口部から吸入と吐出をそれぞれ繰り返す形態で使用することも可能である。この場合、各ポンプ室において、1つの開口部が、吐出口及び吸入口の働きを兼ねる。
第1及び第2ダイヤフラム103と104のそれぞれは、ポリマーアクチュエータ材料によって構成する例を示したが、他の膜と重ね合わせた積層構造であってもよい。例えば、ポリマーアクチュエータ材料における電圧降下の影響を小さくするために、導電性が大きい材料を、ポリマーアクチュエータ材料の表面の全部分若しくは一部分に形成することも可能である。これらの場合、ポリマーアクチュエータ材料の動作を妨げないように、他の材料は剛性が小さい材料で形成すること、又は、変形しやすい形状に加工されていることが望ましい。
また、第1及び第2ダイヤフラム103と104の一部をポリマーアクチュエータ材料以外の材料で形成することも可能である。特に、第1及び第2ダイヤフラム103と104の一部を弾性膜で形成した場合には、ポリマーアクチュエータ材料に加わる張力をより均質にして、ポンプの動作をスムースに行えるなどの効果がある。
前記の構成を採用することにより、流量は約10〜100ml/分の範囲であり、流体を吐出する最大の圧力が約1〜10kPaの範囲である流体搬送装置を構成することが可能である。ただし、前記形態に限らず、一般的に、必要な流量及び圧力に応じて、流体搬送装置の形状又は大きさを設計可能である。
従来例の図48Aに示した構造では、2枚のダイヤフラムが中央の1点で互いに固定されているため、2枚のダイヤフラムにそれぞれシワが発生しやすい。すなわち、ダイヤフラムの膜の剛性又は形状に偏りがある場合に、ダイヤフラムの固定点と周辺部を結ぶ複数の線分及びその周りの部分に張力が集中する。このことから、ダイヤフラムにシワが発生し、ダイヤフラムの電解伸縮の仕事が、ポンプの吸入と吐出に効率良く利用されない。
これに対して、この第1実施形態においては、第1及び第2ダイヤフラム103,104の中央部分に固定点が無い構造であり、第1及び第2ポンプ室107,108と電解液室109との間の圧力差によって、第1及び第2ダイヤフラム103,104が弛むことなく、第1及び第2ダイヤフラム103,104が適切な張力で凸形状に張った状態に保たれている。このことから、この第1実施形態の第1及び第2ダイヤフラム103,104では、従来例のように、ダイヤフラムの固定点と周辺部を結ぶ複数の線分及びその周りの部分に張力が集中することはない。この結果、第1及び第2ダイヤフラム103,104にシワが発生することが防止されて、第1及び第2ダイヤフラム103,104の電解伸縮の仕事が、ポンプの吸入と吐出に効率良く利用される。
また、前記のように、従来例の図48Bに示した構造に比べて、この第1実施形態の流体搬送装置は、例えば、弾性膜部130とバネ部131とバネ可動部205とで構成される圧力維持部1100の働きによって第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力が適切な値に保たれるため、流体の吐出と吸入の効率を向上することができる。
以上をまとめると、この第1実施形態の流体搬送装置においては、弾性膜部130とバネ部131とバネ可動部205とが、第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力を適切な範囲内に維持するように調整する機能(圧力維持機能)を持つ。本明細書においては、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する圧力を所定の範囲内に維持する機能を有する部分を圧力維持部1100と呼ぶ。すなわち、この第1実施形態においては、弾性膜部130とバネ部131とバネ可動部205とが、圧力維持部1100を構成する。第1及び第2ダイヤフラム103及び104が伸びて第1及び第2ダイヤフラム103及び104の引っ張り方向に対する圧力(張力)が小さくなって第1及び第2ダイヤフラム103及び104が緩んだ(弛んだ)とき(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定範囲外に小さくなったとき)には、弾性膜部130とバネ部131とがそれらの弾性によって筺体部102内の電解液を吸い出す方向に変形するために、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する圧力(張力)が一定範囲に保たれる(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定の範囲に維持される)。また、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の伸びが大きい場合には、バネ可動部205を軸方向に筺体部102内に向けて移動させることによって弾性膜部130とバネ部131とを筺体部102内の電解液を吸い出す方向に変形させることが可能で、この結果、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する圧力(張力)を一定範囲に保つことができる。
第1及び第2ダイヤフラム103及び104が縮んで第1及び第2ダイヤフラム103及び104の引っ張り方向に対する圧力(張力)が大きくなった場合(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定範囲外に大きくなったとき)には、弾性膜部130とバネ部131とが筺体部102内の電解液を押し出す方向に変形するために、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する圧力(張力)が一定範囲に保たれる(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定の範囲に維持される)。また、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の縮みが大きい場合には、バネ可動部205を軸方向に筺体部102外に向けて移動させることによって弾性膜部130とバネ部131とを筺体部102内に電解液を注入する方向に変形させることが可能で、この結果、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する圧力(張力)を一定範囲に保つことができる。
弾性膜部130とバネ部131とは、それらの弾性によって、電解液から受ける圧力の変化に応じて受動的に変形して電解液の圧力を調整して、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する圧力を適切な範囲内に維持する。これに対して、バネ可動部205は、外部からの力によって軸方向に進退移動して、電解液の圧力を能動的に調整して、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する圧力を適切な範囲内に維持する。これらの働きを組み合わせることによって、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する圧力(張力)が一定範囲に保たれる。すなわち、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の変形による応力(張力)の変化に対応して、弾性による受動的な作用及び外部からの力による能動的な作用によって電解液室109の壁面の一部である弾性膜部130が変形を行い、このことによって第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する圧力(張力)が一定範囲に保たれる(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定の範囲に維持される)。
さらに、この第1実施形態の流体搬送装置は、第1及び第2ダイヤフラム103,104の中央部分に固定点が無い構造であり、第1及び第2ポンプ室107,108と電解液室109との間の圧力差によって第1及び第2ダイヤフラム103,104が弛むことなく適切な張力で凸形状に張った状態に保たれており、第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力(張力)が面全体にわたってほぼ均質な値に保たれる(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定の範囲に維持される)。この状態がポンプ動作時に常に保たれるために、導電性高分子膜が伸張と収縮を行うときの仕事が、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の吐出と吸入に効率良く使われる。
以上のことから、この第1実施形態の流体搬送装置は、電源110cから加えられる電気的エネルギーの中で第1及び第2ポンプ室107,108の流体の吐出と吸入の仕事に使われる割合を仕事効率と呼ぶものとすると、前記の圧力維持機能によってポンプの仕事効率が従来のポンプに比べて向上する。
図においては、簡易に表現するために省略したが、たとえばバネ部131が座屈しないように適切な機構部品を設けることも可能である。本明細書においては、発明の本質的な部分を説明するために省略するが、他の実施形態においても、各部分がスムーズに機械的な動作を行うように、例えばガイドなどの適切な機構部品を設置することが可能である。
第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力を所定の範囲内に維持する機能を有する部分である圧力維持部1100は、前記のように、電解液室内部の電解液室109の体積を適切な値に保ち、電解液の圧力を適切な値に保つ。このことによって、第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力(張力)が適切な値に保つことができて、第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力を所定の範囲内に維持することが可能である(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力を所定の範囲に維持することが可能である)。特に、この第1実施形態に示すように、電解液室109の壁面を弾性体(例えば、弾性膜部)130で形成して、電解液室内部の圧力に応じて弾性体130が変形する構造であれば、第1及び第2ダイヤフラム103,104の変形の度合いが小さい場合には電解液室内部の圧力と第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力(張力)を自動的に調整可能である(言い換えれば、電解液室109の内部の圧力と第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力とがそれぞれ所定の範囲に維持可能である)。さらに、第1及び第2ダイヤフラム103,104の変形の度合いが大きい場合には、外部からの力でバネ可動部205を軸方向に進退移動することによって、電解液室内部の圧力と第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力(張力)とを調整可能である。
また、この第1実施形態のように2枚の第1及び第2ダイヤフラム103,104が互いに逆位相で伸長と収縮を行う構造においては、2枚の第1及び第2ダイヤフラム103,104が行う仕事を流体の吐出と吸入に使えるので、吐出と吸入の仕事量を大きくすることが可能である。
なお、上の説明では、初期状態においては、図4に示すように弾性膜部130が外側に膨らんだ形状となっているが、図21に示すように弾性膜部130が内側に膨らんだ形状とすることも可能である。図4の構成においては、初期状態において、バネ部131は自然長よりも縮んだ状態で設置されるが、図21の構成においては、初期状態において、バネ部131は自然長よりも伸びた状態で設置される。また、いずれの構成においても、電解液の圧力は、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の圧力よりも小さい値に設定される。このことによって、第1及び第2ダイヤフラム103,104は、電解液室109の方向に膨らんだ形状となり、一定の張力を持って緩まない状態を保つ。
また、上の説明では、図4に示すように第1及び第2ダイヤフラム103,104が電解液室109の方向に膨らんだ形状となっているが、図22に示すように第1及び第2ダイヤフラム103,104が第1及び第2ポンプ室107,108の方向に膨らんだ形状とすることも可能である。図4の構成においては、電解液室109の電解液の圧力は第1及び第2ポンプ室107,108の流体の圧力よりも小さい値に設定されるが、図22の構成においては、電解液室109の電解液の圧力は第1及び第2ポンプ室107,108の流体の圧力よりも大きい値に設定される。このことによって、第1及び第2ダイヤフラム103,104は、第1及び第2ポンプ室107,108の方向に膨らんだ形状となり、一定の張力を持ち、緩まない状態を保つ。
(第2実施形態)
図23Aは、本発明の第2実施形態にかかる、導電性高分子を用いた流体搬送装置の断面図である。
第2実施形態では、前記第1実施形態とは別の方法を用いてバネ可動部205の制御を行う。
図23Aは、第2実施形態の流体搬送装置の構成を示す図である。第2実施形態においては、第1実施形態の構成と比べて、筐体部102の電解液室109内に配置されて電解液室109内の電解液の圧力を検出する圧力検出部207が追加されている。圧力検出部207は、例えば、圧力センサより構成し、必要なとき(例えば、制御部1102から要求されたとき)に電解液室109内の電解液の圧力を検出して、検出した情報を制御部1102に入力する。また、この第2実施形態でも、バネ部131と弾性膜部130とバネ可動部205とが圧力維持部1100として機能する。
また、制御部1102と圧力検出部207以外の部分は、第1実施形態の対応する部分とほぼ同様の構成でほぼ同様の動作を行う。
インターフェース部1101は、流体搬送装置の駆動動作と停止の命令を流体搬送装置の外部から受け取る。インターフェース部1101が流体搬送装置の駆動動作命令を受け取ったときには、インターフェース部1101は、制御部1102対して駆動開始信号を出力する。また、インターフェース部1101が流体搬送装置の停止命令を受け取ったときには、インターフェース部1101は、制御部1102に対して駆動停止信号を出力する。
制御部1102は、駆動開始信号及び駆動停止信号の受信に対して反応して、流体搬送装置の動作制御を行う。制御部1102は、「圧力維持フラグ」という変数の値を記憶しており、この値を、以下に説明する方法で設定する。また、制御部1102は、「圧力しきい値」という定数を記憶している。
以下では、図24に示す動作例を用いて、第2実施形態における流体搬送装置の制御方法について説明する。図24の動作例における電圧と変位と流量との時間変化は図19の動作例における電圧と変位と流量との時間変化とほぼ同様であるが、流体搬送装置の制御方法が少しだけ異なる。
図25は、第2実施形態における流体搬送装置の制御方法の例を示すフローチャートであり、基本的に、制御部1102の制御の下に実行される。
以下では、図24の動作例に対して、図25の制御方法を適用する場合の例について説明する。
ここで説明する例においても、図19に示した例と同様に、バネ可動部205が左右に移動することによって第1及び第2ダイヤフラム103及び104に作用する圧力を所定範囲内に維持する。
すなわち、時刻t1から時刻t2までの時間、及び、時刻t3から時刻t4までの時間、及び、時刻t6から時刻t7までの時間において、図14に示すように、バネ可動部205は右側に移動した状態となる。このことによって、これらの時間において、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の緩みをとって、適切な張力が加わった状態に第1及び第2ダイヤフラム103及び104を保つことができる。結果として、ポンプの動作中には、その吐出量は比較的大きな値に保たれる。
また、前記以外の時間においては、図4に示すように、バネ可動部205は初期状態の位置に戻っている。図19を用いて説明したように、時刻t5と時刻t6との間の時間においては、ポンプの動作前に長時間の停止期間があったために、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の位置が初期状態に近い位置に戻っている。このため、時刻t0と時刻t1との間の時間、及び、時刻t5と時刻t6との間の時間においては、バネ可動部205が初期状態にある状態で、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に作用する圧力を所定範囲内に維持するので、ポンプの吐出量も比較的高い値に保たれる。
前記第1実施形態と同様に、以下の説明においては簡単のために、バネ可動部205が図14に示すように右側に移動した状態にあることを、「圧力維持部1100が圧力維持状態である」と表現する。これに対して、バネ可動部205が図4に示すように初期状態の位置にあることを、「圧力維持部1100が初期状態である」と表現する。
まず、時刻t0の初期状態において制御部1102が駆動開始信号を受信して、ステップS0を実行する。ステップS0においては、制御部1102により、圧力維持部1100を構成するバネ部131と弾性膜部130とバネ可動部205とを初期状態に設定する。すなわち、図4に示すようにバネ可動部205を初期状態の位置に位置するように設定する。言い換えれば、バネ可動部205を初期状態の位置に無い場合には、バネ可動部駆動装置1103を駆動して、バネ可動部205を初期状態の位置に移動させる。ただし、初期状態の前の時間においては、ポンプの動作が停止した状態で長時間保持されていると仮定する。ステップS0を終了したら、次にステップS1を制御部1102により実行する。
次いで、ステップS1においては、まず、制御部1102の制御の下に電源110cにより、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対して駆動電圧の印加を開始する。駆動電圧は、ここでは、一例として図24に示すように0.5Hzで±1.5Vの矩形波を考える。そして、制御部1102において、圧力維持フラグ=0に設定する。ただし、駆動電圧の例としては、例えば正弦波などの他の周期関数を考えることも可能である。
次いで、ステップS2においては、一定時間、駆動電圧の印加を継続する。ステップS2を終了したら、次にステップS3を実行する。
次いで、ステップS3においては、制御部1102が駆動開始信号を受信してから始めてステップS3を行う場合には、制御部1102が駆動開始信号を受信してから制御部1102が駆動停止信号を受信したか否かを制御部1102で判定する。また、制御部1102が駆動開始信号を受信してから既にステップS3を行ったことがあると制御部1102で判定した場合には、前回ステップS3を行った後に制御部1102が駆動停止信号を受信したかを制御部1102で判定する。制御部1102で駆動停止信号を受信していたと制御部1102で判定した場合、ステップS4に遷移する。制御部1102で駆動停止信号を受信していなかったと制御部1102で判定した場合、ステップS9に遷移する。
図24の動作例においては、時刻t0から、ステップS0及びステップS1及びステップS2及びステップS3の処理を制御部1102で実行する。これらの処理は、通常の機器においては非常に短時間で終了する。そして、図24の動作例においては、ステップS3における制御部1102の判定の結果、ステップS9に遷移する。
ステップS9においては、圧力維持部1100が初期状態であるか否かを制御部1102で判定する。すなわち、バネ可動部205の位置が初期状態の位置であるか否かを制御部1102で判定する。圧力維持部1100が初期状態であると制御部1102で判定した場合、ステップS10に遷移する。圧力維持部1100が初期状態でないと制御部1102で判定した場合、すなわち、圧力維持状態にあると制御部1102で判定した場合、ステップS2に遷移する。
ステップS10においては、圧力検出部207によって電解液の圧力を検出する。そして、圧力検出部207で検出された圧力が予め決められた圧力しきい値以上の値であるか否かを制御部1102で判定する。圧力しきい値の値は、例えば、0.091MPa(0.9atm)以上で0.101MPa(0.999atm)以下の値である。ここで、0.101MPa(1atm)は標準大気圧(1気圧)を示す。ステップS10の判定の結果、検出された圧力が圧力しきい値以上の値であると制御部1102で判定した場合には、ステップS11に遷移する。検出された圧力が圧力しきい値より小さい値であると制御部1102で判定した場合には、ステップS2に遷移する。
図24の動作例においては、時刻t0以後で時刻t1より前の時刻においては、ステップS2、ステップS3、ステップS9、ステップS10が、制御部1102により繰り返し実行される。初期状態においては、電解液の圧力は流体又は大気などの外部の圧力よりも低い値に設定されて、この結果、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が適当な張力で張った状態となっている。しかし、ポンプの動作を継続すると、上で説明したように、初期状態に比べて第1及び第2ダイヤフラム103及び104が変形することが考えられる。ここでは、初期状態に比べて第1及び第2ダイヤフラム103及び104が伸びる場合を考える。この場合、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が伸びた結果、電解液室109の体積が減少して、電解液の圧力が増加する。そして、電解液の圧力がある範囲より大きくなった場合には、これを放置すると、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が緩んで、ポンプの吐出動作の効率が低下する。
今、初期状態においては、電解液の圧力は圧力しきい値よりも小さな値であり、初期状態から電解液の圧力が増加した結果、時刻t1において、「電解液の圧力=圧力しきい値」の関係が成立するものと仮定する。
前記のようにステップS2、ステップS3、ステップS9、ステップS10の処理を、制御部1102により繰り返し行う間に、時刻t1が訪れる。時刻t1以後の時刻において、最初にステップS10の処理が行われたときに、その判定の結果として、ステップS11に遷移する。
ステップS11においては、圧力維持部1100を圧力維持状態に遷移する。すなわち、図14に示すように、制御部1102での制御の下でのバネ可動部駆動装置1103の駆動によりバネ可動部205を右側に移動した状態とする。ステップS11の処理が終了したら、ステップS2に遷移する。
第2実施形態においては、前記のように、電解液の圧力を検出して、電解液の圧力がある値以上になった場合には、圧力維持部1100を圧力維持状態にすることによって、電解液の圧力を減少させて第1及び第2ダイヤフラム103及び104が緩むのを防止する。この結果、従来方法に比べて、ポンプの動作効率とポンプの流量(吐出量)を大きく保つことができる。
前記の処理を行った後、時刻t2までの時間において、図25の流れに従って、ステップS2、ステップS3、ステップS9の処理が、制御部1102により繰り返し実行される。この繰り返しにおいては、ステップS9の判定において、圧力維持部1100は初期状態でないので、ステップS2に遷移する。前記ステップの繰り返しにおいて、いずれかのステップの処理中に時刻t2が訪れる。この例では、時刻t2に制御部1102が駆動停止信号を受信するものと仮定する。これ以後の時刻において、最初にステップS3の処理が行われたときに、その判定の結果、ステップS4に遷移する。
ステップS4においては、圧力維持部1100が圧力維持状態であるか否かを制御部1102で判定する。圧力維持部1100が圧力維持状態であると制御部1102で判定した場合、ステップS5に遷移する。圧力維持部1100が圧力維持状態ではなく、初期状態であると制御部1102で判定した場合、ステップS6に遷移する。図24の例においては、時刻t2において、圧力維持部1100は圧力維持状態であるので、ステップS4の次にステップS5に遷移する。
ステップS5においては、制御部1102において、圧力維持フラグ=1に設定して、ステップS6に遷移する。
ステップS6においては、制御部1102の制御の下に、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する電源110cからの駆動電圧の印加を停止して、バネ可動部駆動装置1103の駆動によりバネ可動部205を移動させて、圧力維持部1100の一部であるバネ可動部205を初期状態に設定する。
図24の例においては、時刻t2において第1及び第2ダイヤフラム103及び104は伸びているので、圧力維持部1100を初期状態に戻すと、図13に示すように第1及び第2ダイヤフラム103及び104が緩んだ状態となる。また、このとき、電解液の圧力は圧力しきい値よりも大きな値となることが考えられる。ステップS6が終了すると、ステップS7に遷移する。
次いで、ステップS7においては、制御部1102の制御の下に、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する駆動電圧の印加を停止した状態で、一定時間、待機する。ステップS7が終了すると、ステップS8に遷移する。
次いで、ステップS8においては、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する駆動電圧の印加を停止してから、制御部1102が駆動開始信号を受信したか否かを制御部1102で判定する。第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する駆動電圧の印加を停止してから制御部1102が駆動開始信号を受信したと制御部1102で判定した場合、ステップS12に遷移する。第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する駆動電圧の印加を停止してから制御部1102が駆動開始信号を受信していないと制御部1102で判定した場合、ステップS7に遷移する。
図24の例においては、時刻t3までの時刻において、ステップS7、ステップS8の処理が、制御部1102により繰り返し実行される。
前記ステップの繰り返しにおいて、いずれかのステップの処理中に時刻t3が訪れる。この例では、時刻t3に制御部1102が駆動開始信号を受信するものと仮定する。これ以後の時刻において、最初にステップS8の処理が行われたときに、その判定の結果、ステップS12に遷移する。
ステップS12においては、圧力維持フラグ=1であるか否かを制御部1102により判定する。圧力維持フラグ=1であると制御部1102で判定した場合、ステップS13に遷移する。圧力維持フラグ=1ではなく、圧力維持フラグ=0であると制御部1102で判定した場合、ステップS1に遷移する。図24の例においては、時刻t3において圧力維持フラグ=1であるので、ステップS13に遷移する。
ステップS13においては、圧力検出部207によって電解液の圧力を検出する。そして、検出された圧力が予め決められた圧力しきい値以上の値であるか否かを制御部1102により判定する。判定の結果、検出された圧力が圧力しきい値以上の値であると制御部1102で判定した場合には、ステップS14に遷移する。判定の結果、検出された圧力が圧力しきい値よりも小さい値である場合には、ステップS1に遷移する。
図24の例においては、時刻t2から時刻t3までの時間が短いために、時刻t3における第1及び第2ダイヤフラム103と104の状態が、時刻t2において圧力維持部1100を初期状態に戻したときの第1及び第2ダイヤフラム103と104の状態からほとんど変化していない。そこで、時刻t3においては、第1及び第2ダイヤフラム103と104は緩んでおり、電解液の圧力が圧力しきい値よりも大きな値となっている。そこで、図24の例においては、ステップS13の次に、ステップS14に遷移する。
ステップS14においては、制御部1102において、圧力維持部1100を圧力維持状態に設定して、ステップS1に遷移する。
以後、ステップS1において、制御部1102の制御の下に、第1及び第2ダイヤフラム103と104に対する電源110cからの駆動電圧の印加を開始して、時刻t4まで、ステップS2、ステップS3、ステップS9の処理が、制御部1102により繰り返される。
前記ステップの繰り返しにおいて、いずれかのステップの処理中に時刻t4が訪れる。この例では、時刻t4に制御部1102が駆動停止信号を受信するものと仮定する。これ以後の時刻において、最初にステップS3の処理が行われたときに、その判定の結果、ステップS4に遷移する。
その後、ステップS4、ステップS5、ステップS6が、制御部1102により実行される。
その後、時刻t5まで、ステップS7、ステップS8の処理が、制御部1102により繰り返される。
前記ステップの繰り返しにおいて、いずれかのステップの処理中に時刻t5が訪れる。この例では、時刻t5に制御部1102が駆動開始信号を受信するものと仮定する。これ以後の時刻において、最初にステップS8の処理が行われたときに、その判定の結果、ステップS12に遷移する。そして、その後、ステップS12が実行されて、ステップS13に遷移する。
図24の例においては、時刻t4から時刻t5までの時間が長いために、動作に伴う第1及び第2ダイヤフラム103と104の変形が無くなってほぼ初期状態の形状に戻っている。すなわち、図4に示すように第1及び第2ダイヤフラム103と104の緩みが無くなり、電解液の圧力も圧力しきい値よりも小さな値となっている。そこで、図24の例においては、ステップS13の次に、ステップS1に遷移する。
これ以後、時刻t7までの時間においては、時刻t0においてステップS0が終了した後にステップS1の処理が行われてから時刻t2においてステップS6の処理が行われるまでの時間と同様の処理が行われる。
上の説明及び図の表示においては、時刻t0になった後、ステップS0、ステップS1の処理が終了するまでの時間は、非常に短く無視できるものとしている。また、上の説明及び図の表示においては、時刻t1、時刻t6の各時刻になった後、ステップS2、ステップS3、ステップS9、ステップS10のいずれかのステップを処理して、ステップS11の処理が終了するまでの時間は非常に短く無視できるものとしている。また、上の説明及び図の表示においては、時刻t2、時刻t4、時刻t7の各時刻になった後、ステップS9、ステップS2、ステップS3のいずれかのステップを処理して、ステップS4、ステップS5、ステップS6の処理が終了するまでの時間は非常に短く無視できるものとしている。また、時刻t3、時刻t5の各時刻になった後、ステップS7、ステップS8のいずれかのステップを処理して、ステップS12、ステップS13、ステップS14のいずれかのステップを処理して、ステップS1の処理が終了するまでの時間は非常に短く無視できるものとしている。
ここで、制御部1102は、各ステップの状態の遷移を管理して、各ステップにおいて条件の判定が必要な場合、それらの判定を実行する。また、既に説明したように、圧力維持フラグという変数の値を制御部1102では記憶しており、この値を前記方法で制御部1102で設定する。また、ステップS10及びステップS13において、制御部1102は、圧力検出部207に対して圧力検出指示信号を出力する。圧力検出部207は、制御部1102から圧力検出指示信号を受信すると、電解液の圧力を検出して、検出した圧力を制御部1102に出力する。制御部1102は、圧力しきい値という定数を記憶しており、ステップS10及びステップS13において、圧力検出部207から受信した圧力と圧力しきい値との比較を制御部1102で行う。
ステップS0、ステップS6、ステップS11、ステップS14において、制御部1102は、バネ可動部駆動装置1103に対して、バネ可動部205の位置の設定若しくは移動によるバネ可動部205の位置の調整を指示するための調整指示信号を発信する。
バネ可動部駆動装置1103は、制御部1102から調整指示信号を受信すると、その内容に従って、バネ可動部205を移動させて、バネ可動部205の位置の調整を行う。
ステップS4、ステップS9において、制御部1102は、バネ可動部駆動装置1103に対して状態表示指示信号を出力する。バネ可動部駆動装置1103は、制御部1102から状態表示指示信号を受信すると、制御部1102に対してバネ可動部205の状態を示す状態表示信号を発信する。
制御部1102は、ステップS4、ステップS9において、バネ可動部駆動装置1103から状態表示信号を受信すると、その内容に従って、上で説明した処理を行う。
ステップS1において、制御部1102は、電源110cに対して、駆動開始信号を発信する。電源110cは、制御部1102から駆動開始信号を受信すると、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対して予め決められた駆動電圧の印加を開始する。
図24の例においては、駆動電圧は0.5Hz,±1.5Vの周期的な矩形波である。
ステップS6において、制御部1102は、電源110cに対して、駆動停止信号を発信する。電源110cは、制御部1102から駆動停止信号を受信すると、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対する駆動電圧の印加を停止する。
なお、ステップS1で駆動電圧の印加を開始してから、ステップS6で駆動電圧の印加を停止するまでの間は、電源110cは、第1及び第2ダイヤフラム103及び104に対して継続的に駆動電圧の印加を行う。
以上の働きから、本発明の前記第2実施形態にかかる流体搬送装置においては、初期状態において電解液の圧力をポンプ室内部の流体の圧力よりも小さい適切な値に設定すると、第1及び第2ダイヤフラム103,104の各導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103,104が伸縮した場合においても、弾性膜部130及びバネ部131及びバネ可動部205の動作によって、電解液の圧力もある一定の範囲内に保つことが可能である。この結果、常に、電解液の圧力を第1及び第2ポンプ室107,108の内部の流体の圧力よりも小さい適切な値に保つことが可能である。このことから、第1及び第2ダイヤフラム103,104には第1及び第2ポンプ室107,108から電解液室109の方向にある一定範囲の力が加わるので、この力によって第1及び第2ダイヤフラム103,104は弛まずに張った状態に保たれて、第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力は適切な値に保たれる。このことから、ポンプの動作中、常に、第1及び第2ダイヤフラム103と104が電解液室109の方向に凸形状に変形した状態となり、第1及び第2ダイヤフラム103と104に対して引っ張り方向の応力(テンション)が一定の範囲内の大きさで加わった状態に保たれる。この状態がポンプ動作時に常に保たれるために、導電性高分子膜が伸張と収縮を行うときの仕事が、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の吐出と吸入に効率良く使われる。すなわち、ポンプの動作における仕事効率を大きくすることが可能である。ここで、ポンプの仕事効率とは、ポンプに加えられた電気エネルギーの中で、ポンプが流体の吸入と吐出のために行う仕事の割合であると定義する。
このように、本発明の前記第1実施形態にかかる流体搬送装置においては、ポンプ動作時に常に、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の引っ張り方向の応力(テンション)が適切な範囲内に保たれるために、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の各導電性高分子膜が伸張と収縮を行うときの仕事が、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の吐出と吸入に効率良く使われる。
特に、本発明においては、上で説明したように、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103及び104に加わる張力において大きな変化が生じる場合には、弾性膜部130とバネ部131だけではなく、バネ可動部205も用いて第1及び第2ダイヤフラム103及び104の位置を変化させるので、この場合にも、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力(応力)の調整を十分に行うことができる。先に説明したように、図49に示すように、一般的に、導電性高分子アクチュエータを伸縮動作させたときの変位の振動の中心位置の変化の大きさは、変位の振動の振幅よりも大きい。そのため、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮による電解液室筐体内部分190の体積変化よりも、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由での電解液室筐体内部190分の体積変化のほうが大きい。このために、ポンプの動作中に第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力を一定範囲に保つためには、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103及び104が大きく形状変化(伸縮)する場合に、応力の調整(圧力の維持調整)を適切に行うことが非常に重要である。これに対して、本発明の第2実施形態では、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の各導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103及び104が大きく形状変化(伸縮)する場合に、バネ可動部205をその軸方向に移動させて弾性膜部130とバネ部131とを介して電解液室109内の電解液の圧力と第1及び第2ポンプ室107,108内の流体との圧力との差を調整して、第1及び第2ダイヤフラム103と104に作用する圧力を所定の範囲内に適切に維持することが可能である。
なお、電解液室筐体内部分190の定義は、図7で説明した方法に従う。
本発明の前記第2実施形態に従えば、電解液の圧力を計測することによって第1及び第2ダイヤフラム103と104に対する圧力の状態を正確に検出することができる。このため、第1及び第2ダイヤフラム103と104の応力の調整(圧力の維持調整)を正確に行うことができる。この結果、ポンプの動作の効率を高くすることができる。
なお、前記第1実施形態及び第2実施形態においては、簡易に表現するために省略したが、例えばバネ部131が座屈しないように適切な機構部品を設けることも可能である。すなわち、前記第1実施形態及び第2実施形態の図1〜図23Aにおいては、発明の本質的な部分を説明するために、そのような機構部品の図示は省略するが、他の実施形態においても、各部分がスムーズな機械的な動作を行うように、例えばガイドなどの適切な機構部品を設置することが可能である。以下に、ガイドを有する例について、一例として、第1実施形態の変形例として説明する。
図23B、図23C、図23Dは、第1実施形態の変形例を示す。この第1実施形態の変形例においては、バネ部131と弾性膜部130との間に、棒状部材の連結部133が挿入されている。連結部133は、バネ部131の一端と弾性膜部130とを連結して、両者の間で力の伝達を行う。また、バネ部131の周囲には、円筒状のガイド部132が形成されており、バネ可動部205が他端に連結されたバネ部131を構成するコイルバネの座屈を防止する働きを持つ。連結部133の先端部133aは、ピストン状に構成されており、先端部133aはバネ部131の一端に固定され、かつ、ガイド部132内を円滑に移動可能となっている。ガイド部132と連結部133の先端部133aとで囲まれた空間は、密閉されていても良いし、密閉されずに電解液が入り込んでいてもよい。
なお、図23Bは、バネ部131が伸びた状態を示しており、図23Cはバネ部131が縮んだ状態を示す。
また、この変形例において、ガイド部132と連結部133の先端部133aで囲まれた空間がOリングなどのシール部材133bにより摺動可能に密閉されている場合、その密閉空間の内部の気体131Gの弾性によって、バネ部131の働きを行うことも可能である。この場合、バネ可動部205の端部にも第2連結部133Aを連結して、第2連結部133Aの先端部133aで囲まれた空間がOリングなどのシール部材133bにより摺動可能に密閉されるようにし、かつ、バネ可動部205の軸方向の移動により、第2連結部133Aがガイド部132内で摺動可能とするように構成する。円筒状のガイド部132内に密閉された気体131Gは、弾性部の別の例として機能する。この気体131Gを使用する場合の例を図23Dに示す。ここでは、バネ部131として、コイルスプリングの代わりに、気体131Gの弾性を利用している。また、ガイド部132と連結部133との間に摩擦部分がある場合、電解液として潤滑性の高いイオン液体を使用することにより、この摩擦を低減する効果がある。
なお、上の説明では、電解液の圧力をある値より小さな値に保つことによってダイヤフラムが緩むのを防止する。この場合は、圧力検出部により検出された圧力が圧力しきい値以上の値であるか否かを判定し、前記圧力検出部により検出された圧力が圧力しきい値以上の値であると判定されたときに前記電解液室の壁面の一部を移動若しくは変形させることによって前記ダイヤフラムに作用する圧力を所定範囲内に維持するように前記圧力維持部を動作させる。これに対して、電解液の圧力をある値より大きな値に保つことによってダイヤフラムが緩むのを防止することも可能である。この場合、圧力検出部により検出された圧力が圧力しきい値以下の値であるか否かを判定し、前記圧力検出部により検出された圧力が圧力しきい値以下の値であると判定されたときに前記電解液室の壁面の一部を移動若しくは変形させることによって前記ダイヤフラムに作用する圧力を所定範囲内に維持するように前記圧力維持部を動作させる。
(第3実施形態)
図26は、本発明の第3実施形態にかかる、導電性高分子を用いた流体搬送装置の断面図である。
図26の流体搬送装置は、筺体部102と、第1ダイヤフラム103と、第2ダイヤフラム104と、第1ポンプ室107と、第2ポンプ室108と、電解液室109と、配線部110aと110bと、第1及び第2吸入口111aと111bと、第1及び第2吐出口113aと113bと、第1及び第2吸入弁121と123と、第1及び第2吐出弁122と124と、第1力伝達部141と第2力伝達部142と、導電性高分子膜伸縮部140と、弾性膜部130と、電源(第1電源)110cと、第2電源302cと、対向電極部301と、配線部302a、302bとを備えるように構成されている。第2電源302cは、配線部302a、302bとをそれぞれ介して導電性高分子膜伸縮部140と対向電極部301とに接続されて、導電性高分子膜伸縮部140に電圧を印加可能としている。
第1及び第2力伝達部141及び142と、導電性高分子膜伸縮部140と、弾性膜部130とは、以下で説明するように圧力維持部1110として働く。また、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104とについて、以下では簡単のため、単に、ダイヤフラムと呼ぶ。
第3実施形態において、圧力維持部1110以外の各部分の構成と、それらの部分による流体の吸引と吐出の動作は、第1実施形態と同様である。
次に、第3実施形態における圧力維持部1110の働きを説明する。
弾性膜部130は、弾性体によって構成されて、第1実施形態の円形の貫通穴102hより小さい、筺体部102の側壁102sに形成された円形の貫通穴102jを外側から塞ぎかつ初期状態で筺体部102の外側に向けて凸状の形状で、弾性膜部130の外縁部が筺体部102の側壁102sに固定されている。導電性高分子膜伸縮部140は、対向して配置され2枚の長方形の導電性高分子膜で構成されて、貫通穴102jの軸方向に沿った長辺方向に引っ張られる方向の張力で張った状態に保たれている。2枚の導電性高分子膜伸縮部140の一端は筺体部102の側壁102sの内面の貫通穴102jの周囲に固定されるとともに、他端は電解液室109内に配置されかつ長方形の膜状の第2力伝達部142が固定されている。長方形の膜状の第1力伝達部141は、一端が第2力伝達部142の中央部に固定され、他端が弾性膜部130の中央部に固定されて、第2力伝達部142の中央部と弾性膜部130の中央部とを連結している。第1及び第2力伝達部141と142のそれぞれは、剛性の大きい材料で構成される。剛性の大きい材料としては、たとえばポリプロピレンやステンレスなどが考えられる。ステンレスの場合、耐薬品性を向上する表面処理を行うことが望ましい。第2力伝達部142は、図26において導電性高分子膜伸縮部140の左端と接続されており、導電性高分子膜伸縮部140から右方向の力を加えられている状態に保たれている。導電性高分子膜伸縮部140には、第2力伝達部142から左方向の力が加えられているとともに、筺体部102から右方向の力が加えられており、このことにより、導電性高分子膜伸縮部140は、前記のように長辺方向すなわち図26の左右方向に引っ張られる方向の張力がかかった状態に保たれている。第1及び第2力伝達部142と141はお互いに固定されて一体となって動き、導電性高分子膜伸縮部140の張力を弾性膜部130に伝達する。すなわち、弾性膜部130には、第1力伝達部141から右方向に力が加わっている。
既に説明したように、一般的に、導電性高分子膜を用いたダイヤフラム型ポンプにおいては、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で、ダイヤフラムの面積又は形状又は配置が変化し、ダイヤフラムに対する圧力(張力)が変化する場合が生じる。この場合に、第3実施形態においては、第1及び第2力伝達部141及び142と、導電性高分子膜伸縮部140と、弾性膜部130によって構成される圧力維持部1110の働きによって、ダイヤフラム103及び104に加えられる張力が一定範囲内に保たれる。
図27は、第3実施形態において、前記の理由などでダイヤフラム103及び104に加わる張力の変化が生じたときのダイヤフラム103及び104の応力の調整(圧力維持調整)の様子の例を示した図である。具体的には、図27は、ダイヤフラム103と104が前記の理由で伸びた場合の、ダイヤフラム103及び104の応力の調整(圧力維持調整)の様子を示す。ダイヤフラム103と104が前記の理由で伸びた場合、導電性高分子膜伸縮部140を電解伸縮によって収縮させる。このことにより、図27に示すように、第1及び第2力伝達部141と142が右側に移動し、弾性膜部130の膨らみが大きくなる。このことにより、電解液室109の体積及び圧力がほぼ一定に保たれる。結果として、ダイヤフラム103及び104に加えられる張力も適切な範囲に保たれて、従来例に比べてポンプの動作効率を向上させることが可能である。
ただし、第3実施形態における電解液室109は、ダイヤフラム103及び104と、筺体部102と、弾性膜部130とで囲まれた空間部分を示すものとする。また、ダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)を行う際に、導電性高分子膜伸縮部140を電解伸縮させるための対向電極には、対向電極部301を用いる。対向電極部301は、導電性高分子膜伸縮部140の2枚の導電性高分子膜のうちの下側の導電性高分子膜の近傍の、筺体部102の側壁102sの内面に固定(筺体部102が導体の場合には、筺体部102とは絶縁された状態で固定)されている。第2電源302cは、この対向電極部301と、導電性高分子膜伸縮部140の2枚の導電性高分子膜のうちの上側の導電性高分子膜とに接続されている。第2電源302cによって、対向電極部301と導電性高分子膜伸縮部140の間に電圧を加えることによって、導電性高分子膜伸縮部140を電解伸縮させることが可能である。この対向電極部301をダイヤフラム103及び104を構成する導電性高分子膜で代用することも可能である。また、導電性高分子膜伸縮部の電解伸縮を効率的に行うために対向電極部301の形状又は大きさ又は位置を設計することが可能である。また、ダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)は、常時行うことも可能であるし、任意の時間間隔で行うこと、又は、流体搬送装置の起動時若しくはメンテナンス時などに行うことも可能である。また、電源(第1電源)110cと第2電源302cとを共用することも可能である。また、製造過程においてダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)を行うことも可能である。本明細書におけるダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)は、前記の例を含む任意のタイミングで実施可能である。ダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)を行わないときに導電性高分子膜伸縮部140に加える電圧を開放した場合、この部分における消費電力が低減し、しかも、導電性高分子膜伸縮部140の長さはほぼ一定に保たれるので、ダイヤフラム103及び104に対する圧力を適切に保つことが可能である。
また、ダイヤフラム103及び104に対する圧力が適切な値であるか否かは、たとえば、電解液室内部に圧力センサ(例えば、先の圧力検出部207の一例としてのセンサ)を設置することで検出可能である。また、ダイヤフラム103及び104を構成する導電性高分子膜に電圧を加えたときに流れる電流を計測することによってダイヤフラム103及び104に対する圧力が適切であるかを検出することも可能である。
前記説明では、ダイヤフラム103及び104が伸びてダイヤフラム103及び104に対する圧力(張力)が目標の値よりも小さくなったときに導電性高分子膜伸縮部140を収縮することによってダイヤフラム103及び104に対する圧力を調整する場合について説明したが、これとは逆に、例えばダイヤフラム103及び104が縮んでダイヤフラム103及び104に対する圧力(張力)が目標の値よりも大きくなったときにときに、導電性高分子膜伸縮部140を伸長することによってダイヤフラム103及び104に対する圧力を調整することも可能である。
第3実施形態のように、導電性高分子膜の電解伸縮によって電解液室109の体積を調整して、このことによってダイヤフラム103及び104に対する圧力(張力)を調整する構造においては、圧力維持部1110が軽量であり、動作時にも静かであるという特長を持つ。
なお、前記説明の図27の一部において、導電性高分子膜伸縮部140の電解伸縮を行うための第2電源302cと、配線3021,302bと、対向電極301とを省略したが、図26の構成を用いることが可能である。
図28は、圧力維持部1110の制御を行う本発明の第3実施形態にかかる流体搬送装置の構成を示す図である。この図28においては、図26に比べて、インターフェース部1101と、制御部1102とが追加されている。
インターフェース部1101は、流体搬送装置の駆動動作と停止の命令を流体搬送装置の外部から受け取る。インターフェース部1101が流体搬送装置の駆動動作命令を受け取ったときには、インターフェース部1101は、制御部1102に対して駆動開始信号を出力する。また、インターフェース部1101が流体搬送装置の停止命令を受け取ったときには、インターフェース部1101は、制御部1102に対して駆動停止信号を出力する。
制御部1102は、駆動開始信号及び駆動停止信号の受信に対して反応して、流体搬送装置の動作制御を行う。
上で説明したように、第3実施形態においては、導電性高分子膜伸縮部140の電解伸縮によって応力調整(圧力維持調整)を行うが、導電性高分子膜伸縮部140の長さが図26に示す状態にあるときに「圧力維持部1110が初期状態にある」と表現する。また、図27に示すように初期状態と比べて導電性高分子膜伸縮部140が収縮して弾性膜部130が外側に膨らんだ状態にあるときに、「圧力維持部1110が圧力維持状態にある」と表現する。このとき、第3実施形態においても、例えば、図20のフローチャートに示す制御方法を用いて、図19に示す動作例に従って、流体搬送装置を制御することが可能である。
図20の、ステップS0、ステップS6、ステップS11、ステップS14において、制御部1102は、第2電源302cに対して、電解伸縮による導電性高分子膜伸縮部140の長さの調整を指示するための調整指示信号を発信する。
第2電源302cは、制御部1102から調整指示信号を受信すると、その内容に従って、電解伸縮によって導電性高分子膜伸縮部140の長さの調整を行う。
ステップS4、ステップS9において、第2電源302cは、制御部1102に対して、圧力維持部1110の状態を示す状態表示信号を発信する。
制御部1102は、ステップS4、ステップS9において、状態表示信号を受信するとその内容に従って、上で説明した処理を行う。
ステップS1において、制御部1102は、電源110cに対して、駆動開始信号を発信する。電源110cは、制御部1102から駆動開始信号を受信すると、ダイヤフラム103及び104に対して予め決められた駆動電圧の印加を開始する。図19の例においては、駆動電圧は0.5Hzで±1.5Vの周期的な矩形波である。
ステップS6において、制御部1102は、電源110cに対して、駆動停止信号を発信する。電源110cは、制御部1102から駆動停止信号を受信すると、ダイヤフラム103及び104に対する駆動電圧の印加を停止する。
第2電源302cが制御部1102から調整指示信号を受信した際の、電解伸縮による導電性高分子膜伸縮部140の長さの調整の方法については、例えば以下の方法が考えられる。
まず、1つ目の例としては、第2電源302cが制御部1102から調整指示信号を受信したときにだけ、その内容に従って、電解伸縮を行うための電圧を一定時間、導電性高分子膜伸縮部140と対向電極部301との間に第2電源302cから印加して、それ以外のときには、第2電源302cは、導電性高分子膜伸縮部140と対向電極部301との間を電圧を開放する方法が考えられる。この方法では、導電性高分子膜伸縮部140の電解伸縮に必要な電力を低減できる。
また、他の例としては、第2電源302cが制御部1102から調整指示信号を受信したときに、その内容に従って、電解伸縮を行うための電圧を一定時間、導電性高分子膜伸縮部140と対向電極部301との間に第2電源302cから印加して、その後、ある決められた時間間隔で所定の電圧の印加を第2電源302cが繰り返す方法も考えられる。この方法では、電圧を開放したときの導電性高分子膜伸縮部140の長さの変化を修正することによって、より正確なダイヤフラム103,104の圧力維持調整を行うことが可能である。
また、さらに他の例としては、第2電源302cが制御部1102から調整指示信号を受信したときに電解伸縮を行うための電圧を第2電源302cが印加し続ける方法も考えられる。この方法においては導電性高分子膜伸縮部140に電圧が印加され続けるので、ダイヤフラムのテンションが一定に保たれるというメリットがある。また、別の方法としては第2電源302cから加える電圧を時間とともに変化させる方法も考えることができる。具体的には、調整指示信号を受信した直後には大きな電圧を印加して、その後、小さな電圧を一定時間印加し続ける方法が考えられる。この方法においては、調整指示信号を受信した直後にすばやくダイヤフラムのテンションの調整を実施できて、その後も継続的に、ダイヤフラムのテンションが変化することを防止できる。
(第4実施形態)
図29は、本発明の第4実施形態にかかる、導電性高分子を用いた流体搬送装置の断面図である。
図29の流体搬送装置は、筺体部102と、第1ダイヤフラム103と、第2ダイヤフラム104と、第1ポンプ室107と、第2ポンプ室108と、電解液室109と、配線部110aと110bと、第1及び第2吸入口111aと111bと、第1及び第2吐出口113aと113bと、第1及び第2吸入弁121と123と、第1及び第2吐出弁122と124と、導電性高分子膜伸縮部140と、弾性膜部130と、電源(第1電源)110cと、第2電源302cと、対向電極部301と、配線部302a、302bと、インターフェース部1101と、制御部1102とを備えるように構成される。導電性高分子膜伸縮部140と、弾性膜部130とは、以下で説明するように圧力維持部1111として働く。また、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104について、以下では簡単のため、単に、ダイヤフラムと呼ぶ。第2電源302cは、配線部302a、302bとをそれぞれ介して導電性高分子膜伸縮部140と対向電極部301とに接続されて、導電性高分子膜伸縮部140に電圧を印加可能としている。
第4実施形態において、圧力維持部1111以外の各部分の構成と、それらの部分による流体の吸引と吐出の動作は、前記の第2実施形態と同様である。
次に、第4実施形態における圧力維持部1111の働きを説明する。
弾性膜部130は、弾性体によって構成されて、第1実施形態の円形の貫通穴102hより小さくかつ貫通穴102jより大きい、筺体部102の側壁102sに形成された円形の貫通穴102kを内側から塞ぎかつ初期状態で電解液室109の外側から電解液室109内に向けて凸状の形状でかつ初期状態で電解液室109の外側から電解液室109内に向けて凸状の形状で、弾性膜部130の外縁部が筺体部102の側壁102sに固定されている。導電性高分子膜伸縮部140は、1枚の長方形の導電性高分子膜で構成されて、筺体部102の側壁102sと弾性膜部130との間で長辺方向に引っ張られる方向の張力で張った状態に保たれている。また、導電性高分子膜伸縮部140は、図29に示すように、それぞれ、貫通穴102jの軸方向に沿った長辺方向の一端が貫通穴102kが形成された筺体部102の側壁102sに対向する側壁102sに固定され、他端が弾性膜部130の中央部に固定されている。筺体部102は、剛性の大きい材料で構成される。筺体部102は、図29の導電性高分子膜伸縮部140の左端と接続されており、導電性高分子膜伸縮部140から右方向の力を加えられている。導電性高分子膜伸縮部140には、筺体部102から左方向の力が加えられており、弾性膜部130から右方向の力が加えられており、このことにより、導電性高分子膜伸縮部140は前記のように長辺方向すなわち図29の左右方向に引っ張られる方向の張力がかかった状態に保たれている。弾性膜部130には、導電性高分子膜伸縮部140から左方向に力が加わっている。
既に説明したように、一般的に、導電性高分子膜を用いたダイヤフラム型ポンプにおいては、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で、ダイヤフラムの面積又は形状又は配置が変化し、ダイヤフラムに対する圧力(張力)が変化する場合が生じる。この場合に、第4実施形態においては、導電性高分子膜伸縮部140と、弾性膜部130とによって構成される圧力維持部1111の働きによって、ダイヤフラム103及び104に加えられる張力が一定範囲内に保たれる。
図30は、第4実施形態において、前記の理由などでダイヤフラム103及び104に加わる張力の変化が生じたときのダイヤフラム103及び104の応力の調整(圧力維持調整)の様子の例を示した図である。具体的には、図30は、ダイヤフラム103と104が前記の理由で伸びた場合の、ダイヤフラム103及び104の応力の調整(圧力維持調整)の様子を示す。ダイヤフラム103と104が前記の理由で伸びた場合、導電性高分子膜伸縮部140を電解伸縮によって収縮させる。このことにより、図30に示すように、弾性膜部130の膨らみが大きくなる。このことにより、電解液室109の体積及び圧力がほぼ一定に保たれる。結果として、ダイヤフラムに加えられる張力も適切な範囲に保たれて、従来例に比べてポンプの動作効率を向上させることが可能である。
ただし、第4実施形態における電解液室109は、ダイヤフラム103及び104と、筺体部102と、弾性膜部130とで囲まれた空間部分を示すものとする。また、ダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)を行う際に、導電性高分子膜伸縮部140を電解伸縮させるための対向電極には、対向電極部301を使用する。対向電極部301は、弾性膜部130の近傍の、筺体部102の側壁102sの内面から電解液室109内に突き出るように固定されている。第2電源302cは、この対向電極部301と導電性高分子膜伸縮部140とに接続されている。第2電源302cによって、この対向電極部301と導電性高分子膜伸縮部140の間で電圧を加えることによって、導電性高分子膜伸縮部140を電解伸縮させることが可能である。導電性高分子膜伸縮部140の電解伸縮を効率良く行うために対向電極部301の大きさ又は形状又は位置を設計することができる。電源(第1電源)110cと第2電源302cとは共用することが可能である。この対向電極部301をダイヤフラム103及び104を構成する導電性高分子膜で代用することも可能である。また、ダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)は、常時行うことも可能であるし、任意の時間間隔で行うこと、又は、流体搬送装置の起動時若しくはメンテナンス時などに行うことも可能である。また、製造過程においてダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)を行うことも可能である。本明細書におけるダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)は、前記の例を含む任意のタイミングで実施可能である。ダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)を行わないときに導電性高分子膜伸縮部140に加える電圧を開放した場合、この部分における消費電力が低減し、しかも導電性高分子膜伸縮部140の長さはほぼ一定に保たれるので、ダイヤフラム103及び104に対する圧力を適切に保つことが可能である。
また、ダイヤフラム103及び104に対する圧力が適切な値であるか否かは、たとえば、電解液室内部に圧力センサ(例えば、先の圧力検出部207の一例としてのセンサ)を設置することで検出可能である。また、ダイヤフラム103及び104を構成する導電性高分子膜に電圧を加えたときに流れる電流を計測することによってダイヤフラム103及び104に対する圧力が適切であるかを検出することも可能である。
なお、図30においては、初期状態におけるダイヤフラム103及び104と弾性膜部130の位置を点線で示している。
第4実施形態の構成では、弾性膜部130の中心部分が導電性高分子膜伸縮部140に接続されているために、導電性高分子膜伸縮部140の長さが変化しないときには、弾性膜部130の中心部分がある位置から右側に移動できない構造になっている。これとは逆に、第3実施形態の構成では、導電性高分子膜伸縮部140の長さが変化しないときには、弾性膜部130の中心部分がある位置から左側に移動できない構造になっている。これらの構造を組み合わせることによって、導電性高分子膜伸縮部140の長さが変化しないときに、弾性膜部130の中心部分がある2点の間でしか移動できない構造とすることも可能である。
またさらに、導電性高分子膜伸縮部140の長さを適切に設定することによって、導電性高分子膜伸縮部140の長さが変化しないときに、弾性膜部130の中心部分を完全に固定することも可能である。これらの構造を用いて、弾性膜部130の形状を制御することによって、ダイヤフラム103及び104に対する圧力をより正確に調整することも可能である。図31は、これらの構造の例であり、2方向に引っ張る導電性高分子膜伸縮部140を組み合わせて、弾性膜部130の形状を制御することによって、ダイヤフラム103及び104に対する圧力をより正確に調整することが可能である。図31においては、導電性高分子膜伸縮部140が3本配置されており、上部と下部に位置する2本の導電性高分子膜伸縮部140は図26の導電性高分子膜伸縮部140と同様に接続されている。また、真ん中に位置する1本の導電性高分子膜伸縮部140は、図29のように左端が筐体部120と接続されており、右端が弾性膜部130に接続されている。
図31の例は、第4実施形態若しくは第3実施形態の変形例であると考えられる。
なお、前記説明の図30及び図31の一部において、導電性高分子膜伸縮部140の電解伸縮を行うための第2電源302cと、配線3021,302bと、対向電極301とを省略したが、図29の構成を用いることが可能である。
上で説明したように、第4実施形態においては、導電性高分子膜伸縮部140の電解伸縮によって応力調整(圧力維持調整)を行うが、ここでは説明のために、導電性高分子膜伸縮部140の長さが図29に示す状態にあるときに「圧力維持部1111が初期状態にある」と表現する。また、図30に示すように初期状態と比べて導電性高分子膜伸縮部140が収縮して弾性膜部130が内側に膨らんだ状態にあるときに、「圧力維持部1111が圧力維持状態にある」と表現する。このとき、第4実施形態においても、前記の実施形態と同様に、例えば、図20のフローチャートに示す制御方法を用いて、図19に示す動作例に従って、流体搬送装置を制御することが可能である。
(第5実施形態)
図32は、本発明の第5実施形態にかかる、導電性高分子を用いた流体搬送装置の断面図である。
図32の流体搬送装置は、筺体部102と、第1ダイヤフラム103と、第2ダイヤフラム104と、第1ポンプ室107と、第2ポンプ室108と、電解液室109と、配線部110aと110bと、第1及び第2吸入口111aと111bと、第1及び第2吐出口113aと113bと、第1及び第2吸入弁121と123と、第1及び第2吐出弁122と124と、バネ部131と、弾性部の一例としての導電性高分子膜電解液室壁部150と、電源(第1電源)110cと、第2電源302cと、対向電極部301と、配線部302a、302bと、インターフェース部1101と、制御部1102とを備えるように構成される。バネ部131と、導電性高分子膜電解液室壁部150とは、以下で説明するように圧力維持部1112として働く。また、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104について、以下では簡単のため、単に、ダイヤフラムと呼ぶ。第2電源302cは、配線部302a、302bとをそれぞれ介して導電性高分子膜電解液室壁部150と対向電極部301とに接続されて、導電性高分子膜電解液室壁部150に電圧を印加可能としている。
第5実施形態において、圧力維持部1112以外の各部分の構成と、それらの部分による流体の吸引と吐出の動作は、前記の第2実施形態と同様である。
次に、第5実施形態における圧力維持部1112の働きを説明する。
導電性高分子膜電解液室壁部150は、導電性高分子膜によって構成されて、筺体部102の側壁102sに形成された円形の貫通穴102mを外側から塞ぎかつ初期状態で筺体部102の外側に向けて凸状の形状で、導電性高分子膜電解液室壁部150の外縁部が筺体部102の側壁102sに固定されている。バネ部131は、例えば、弾性のある金属又は合成樹脂が螺旋状に巻いた形状を有しており、コイルばねとしての機能を持つ。バネ部131は、定常状態から縮んだ状態で、両端が筺体部102の側壁102sと導電性高分子膜電解液室壁部150に接する形で固定されている。導電性高分子膜電解液室壁部150は、バネ部131から右向きの力を受けて右向きに凸状の形状に変形している。図32においては、導電性高分子膜電解液室壁部150を形成する導電性高分子膜の膜厚が小さい場合を考えて、円錐に近い形状に変形している場合の例を示している。
既に説明したように、一般的に、導電性高分子膜を用いたダイヤフラム型ポンプにおいては、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で、ダイヤフラムの面積又は形状又は配置が変化し、ダイヤフラムに対する圧力(張力)が変化する場合が生じる。この場合に、第5実施形態においては、導電性高分子膜電解液室壁部150と、バネ部131とによって構成される圧力維持部1112の働きによって、ダイヤフラムに加えられる張力が一定範囲内に保たれる。
図33は、第5実施形態において、前記の理由などでダイヤフラム103及び104に加わる張力の変化が生じたときのダイヤフラム103及び104の応力の調整(圧力維持調整)の様子の例を示した図である。具体的には、図33は、ダイヤフラム103と104が前記の理由で伸びた場合の、ダイヤフラム103及び104の応力の調整(圧力維持調整)の様子を示す。ダイヤフラム103と104が前記の理由で伸びた場合、導電性高分子膜電解液室壁部150の面積を電解伸縮によって収縮させる。このことにより、図33に示すように、導電性高分子膜電解液室壁部150の膨らみが小さくなる。このことにより、電解液室109の体積及び圧力がほぼ一定に保たれる。結果として、ダイヤフラム103及び104に加えられる張力も適切な範囲に保たれて、従来例に比べてポンプの動作効率を向上させることが可能である。
ただし、第5実施形態における電解液室109は、ダイヤフラム103及び104と、筺体部102と、導電性高分子膜電解液室壁部150とで囲まれた空間部分を示すものとする。また、ダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)を行う際に、導電性高分子膜電解液室壁部150を電解伸縮させるための対向電極には、対向電極部301を使用する。第2電源302cによって、この対向電極部301と導電性高分子膜電解液室壁部150との間で電圧を加えることによって、導電性高分子膜電解液室壁部150を電解伸縮させることが可能である。この対向電極部301を、ダイヤフラム103及び104を構成する導電性高分子膜で代用することも可能である。対向電極部301の形状又は大きさ又は位置は任意に設計可能である。また、ダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)は、常時行うことも可能であるし、任意の時間間隔で行うこと、又は、流体搬送装置の起動時若しくはメンテナンス時などに行うことも可能である。ダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)を行わないときに導電性高分子膜電解液室壁部150に加える電圧を開放した場合、この部分における消費電力が低減し、導電性高分子膜電解液室壁部150の面積はほぼ一定に保たれるので、ダイヤフラム103及び104に対する圧力を適切に保つことが可能である。
また、ダイヤフラム103及び104に対する圧力が適切な値であるか否かは、たとえば、電解液室内部に圧力センサ(例えば、先の圧力検出部207の一例としてのセンサ)を設置することで検出可能である。また、ダイヤフラム103及び104を構成する導電性高分子膜に電圧を加えたときに流れる電流を計測することによってダイヤフラム103及び104に対する圧力が適切であるかを検出することも可能である。
前記説明では、ダイヤフラム103及び104が伸びたときに導電性高分子膜電解液室壁部150の面積を収縮する場合について説明したが、これとは逆に、例えばダイヤフラム103及び104が縮んだときに、導電性高分子膜電解液室壁部150の面積を拡大することによって、ダイヤフラム103及び104に対する圧力を調整することも可能である。
なお、前記説明の図33の一部において、導電性高分子膜伸縮部140の電解伸縮を行うための第2電源302cと、配線3021,302bと、対向電極301とを省略したが、図32の構成を用いることが可能である。
なお、図33においては、初期状態におけるダイヤフラム103及び104と弾性膜部150の位置を点線で示している。
上で説明したように、第5実施形態においては、電解伸縮に伴う導電性高分子膜電解液室壁部150の面積変化によって応力調整(圧力維持調整)を行うが、ここでは説明のために、導電性高分子膜電解液室壁部150が図32に示す状態にあるときに「圧力維持部1112が初期状態にある」と表現する。また、図33に示すように初期状態と比べて導電性高分子膜電解液室壁部150が収縮して導電性高分子膜電解液室壁部150が内側に変形した状態にあるときに、「圧力維持部1112が圧力維持状態にある」と表現する。このとき、第5実施形態においても、前記の実施形態と同様に、例えば、図20のフローチャートに示す制御方法を用いて、図19に示す動作例に従って、流体搬送装置を制御することが可能である。
第5実施形態においては、ダイヤフラム103及び104の変形による応力(張力)の変化に対応して、導電性高分子膜電解液室壁部150の電解伸縮による能動的な作用によって電解液室109の壁面の一部である導電性高分子膜電解液室壁部150が変形を行い、このことによって、ダイヤフラム103及び104に対する圧力(張力)が一定範囲に保たれる。
(第6実施形態)
図34は、本発明の第6実施形態にかかる、導電性高分子を用いた流体搬送装置の断面図である。
図34の流体搬送装置の構成は、およそ、図32の流体搬送装置の構成と同じである。
ただし、第6実施形態においては、バネ部131は、定常状態から伸びた状態で両端が筺体部102の側壁102sと導電性高分子膜電解液室壁部150の中央部に接する形で固定されている。これに応じて、導電性高分子膜電解液室壁部150は、バネ部131から図34の左向きの力を受けて左向きに凸状の形状(言い換えれば、電解液室109の外側から電解液室109内に向けて凸状の形状)(円錐形状)に変形して、導電性高分子膜電解液室壁部150の外縁部が筺体部102の側壁102sに固定されている。また、第6実施形態においては、圧力維持部以外の各部分の構成と、それらの部分による流体の吸引と吐出の動作は、前記の第1実施形態と同様である。
既に説明したように、一般的に、導電性高分子膜を用いたダイヤフラム型ポンプにおいては、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で、ダイヤフラムの面積又は形状又は配置が変化し、ダイヤフラムに対する圧力(張力)が変化する場合が生じる。
図35は、第6実施形態において前記の理由などでダイヤフラム103及び104に加わる張力の変化が生じたときのダイヤフラムの応力の調整(圧力維持調整)の様子の例を示した図である。具体的には、図35は、ダイヤフラム103と104が前記の理由で伸びた場合の、ダイヤフラムの応力の調整(圧力維持調整)の様子を示す。ダイヤフラム103と104が前記の理由で伸びた場合、導電性高分子膜電解液室壁部150の面積を電解伸縮によって収縮させる。このことにより、図35に示すように、導電性高分子膜電解液室壁部150の膨らみが小さくなる。このことにより、電解液室109の体積及び圧力がほぼ一定に保たれる。結果として、ダイヤフラム103及び104に加えられる張力も適切な範囲に保たれて、従来例に比べてポンプの動作効率を向上させることが可能である。
電解液室109の定義、導電性高分子膜電解液室壁部150を電解伸縮させるための対向電極についての補足説明、ダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)のタイミングについては、第5実施形態で記載した内容が第6実施形態にも適用可能である。また、ダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)を行わないときに導電性高分子膜電解液室壁部150に加える電圧を開放する方法、又は、ダイヤフラム103及び104に対する圧力が適切な値であるかどうかの検出方法についても第6実施形態にも適用可能である。また、第6実施形態においても、例えばダイヤフラム103及び104が縮んだときに、導電性高分子膜電解液室壁部150の面積を拡大することによって、ダイヤフラム103及び104に対する圧力を調整することも可能である。
また、第5及び第6実施形態においては、導電性高分子膜電解液室壁部150にバネ部131を接続する構造について説明したが、これらの構造でバネ部を省略することも可能である。この場合、導電性高分子膜電解液室壁部150は電解液から受ける圧力によって平面若しくは左右いずれかの方向に膨らんだ形状となる。この構造において、導電性高分子膜電解液室壁部150を電解伸縮させることによって電解液室109の体積を調整して、前記と同様の原理でダイヤフラム103及び104に対する圧力を調整することも可能である。この場合の例を図36に示す。図36においては、電解液室109の内部の電解液の圧力は、ポンプ室内部の流体の圧力及び導電性高分子膜電解液室壁部150の外部の大気圧よりも低く保たれている。この状態で、導電性高分子膜電解液室壁部150を電解伸縮させることによって、電解液室内部の電解液の体積及び圧力を調整して、このことによってダイヤフラム103及び104に対する圧力(張力)を調整可能である。ここで説明した方法のように、導電性高分子膜電解液室壁部150の導電性高分子膜の電解伸縮で電解液室109の体積を調整する場合、その調整を行わないときには、電解液室109の体積はほぼ一定であるので、ポンプの動作時にダイヤフラム103及び104の動作が電解液室109の体積変化のための仕事に消費されないので、流体の吸入と吐出を効率的に行える。また、圧力維持部における導電性高分子膜に電圧を加えていない場合には、この部分での電力消費もほとんどないので、エネルギー効率が高いという特長を持つ。
第6実施形態においても、前記の実施形態と同様に、例えば、図20のフローチャートに示す制御方法を用いて、図19に示す動作例に従って、流体搬送装置を制御することが可能である。
(第7実施形態)
ここまででは、主に、ダイヤフラム103と104が直接接続されていない構成について主に説明を行ってきた。この場合、前記のように、2枚のダイヤフラムは電解液を介してお互いの間で仕事という形でエネルギーのやり取りを行う。これに対して、図37に示したように、2枚のダイヤフラム103と104とを、絶縁性の接続部材106を介して、互いに直接接続することも可能である。そして、この場合にも、例えば、図37に示したように第3実施形態と同様の圧力維持部1110を設置するによって、同様の効果を得ることが可能である。この圧力維持部1110の導電性高分子膜伸縮部140及び第1力伝達部141のそれぞれの長さは第3実施形態よりも短いが、圧力維持部1110の構造は同じである。図37においては、圧力維持部1110の一部である導電性高分子膜伸縮部140の電解伸縮を行うための電源及び対向電極部及び配線部を省略しているが、第3実施形態と同様の構成とすることが可能である。本第7実施形態にかかる、導電性高分子を用いた流体搬送装置においては、2枚のダイヤフラムが互いに接続されているために、一方のダイヤフラムが動作する力が小さい場合でも、もう一方のダイヤフラムが動作する力が大きい場合には、その力に助けられて、2枚のダイヤフラムが連動して動作することが可能である。すなわち、2枚のダイヤフラムがそれぞれ動作する力について互いに補いあうことができるので、効率良く動作することが可能である。
(第8実施形態)
図38は、本発明の第8実施形態にかかる、導電性高分子を用いた流体搬送装置の断面図である。
第8実施形態においても、第7実施形態と同様に2枚のダイヤフラム103と104とを絶縁性の接続部材106を介して、互いに直接接続されている。
図38においては、筺体部102の側壁102sに貫通穴102tが設けられており、この貫通穴102tの中にシリンジ部160が設置されている。シリンジ部160は左右に動く構成となっている。導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で、ダイヤフラム103及び104の面積又は形状又は配置が変化し、ダイヤフラム103及び104に対する圧力(張力)が変化した場合に、シリンジ部160を左右に動かすことによって、ダイヤフラム103及び104に対する圧力を調整可能である。よって、シリンジ部160は圧力維持部1114として機能する。シリンジ部160を動作させる方法は、図52を用いて説明した内容と同様の方法を用いることができる。
例えば、図39は、ダイヤフラム103と104が前記の理由で伸びた場合の応力調整(圧力維持調整)方法の例を示している。この図39において、シリンジ部160を右に動かして電解液室109の体積を増加し、電解液の圧力を減少させる。この結果、第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108との内部に存在する流体の圧力と電解液室内部の電解液の圧力との差に変化が生じる。この結果、ダイヤフラム103と104に加わる差圧が変化して、この差圧を用いてダイヤフラム103と104に対する圧力を調整可能である。図39においては、第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108との内部に存在する流体の圧力が、電解液室内部の電解液の圧力よりも大きく、ダイヤフラム103及び104が電解液室109の方向にわずかに凸形状に膨らんでいる状態を示している。
圧力の維持の調整は先に説明したように、任意のタイミングで実施することが可能である。すなわち、ダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)は、常時行うことも可能であるし、任意の時間間隔で行うこと、又は、流体搬送装置の起動時若しくはメンテナンス時などに行うことも可能である。また、製造過程においてダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)を行うことも可能である。本明細書におけるダイヤフラム103及び104の応力調整(圧力維持調整)は、前記の例を含む任意のタイミングで実施可能である。
また、応力調整(圧力維持調整)を行わない場合は、シリンジ部160は適切な方法で固定される。固定は、シリンジ部160と筺体部102の壁面との間の摩擦を用いる方法、又は、適切な機械的な構成を用いる方法が考えられる。また、図26及び図29における力伝達部141及び142と導電性高分子膜伸縮部140に似た構造を、シリンジ部160に接続することによって、導電性高分子膜伸縮部140の導電性高分子膜の電解伸縮を用いてシリンジ部160を動作させることも可能である。この場合も、図26及び図29の説明部分で述べた内容と同様の効果が得られる。
シリンジ部160の移動は手動で行っても良い。すなわち、人間が任意のタイミングで直接、シリンジの移動を行っても良い。また、任意のアクチュエータを用いてシリンジ部160の移動を行っても良い。アクチュエータは、モーターのように電磁力を使用したアクチュエータを用いても良い。また、アクチュエータは、静電気力を用いたアクチュエータ、圧電素子を用いたアクチュエータ、磁歪アクチュエータ、形状記憶合金を使用したアクチュエータ、熱膨張を利用したアクチュエータ、超音波モーター、又は、導電性高分子膜などを利用した一般的なソフトアクチュエータなど、他のアクチュエータを使用することも可能である。
ここで説明した方法のように、シリンジ部160の移動などを用いて電解液室109の体積を調整する場合、その調整を行わないときには、電解液室109の体積はほぼ一定であるので、ポンプの動作時にダイヤフラム103及び104の動作が電解液室109の体積変化のための仕事に消費されないので、流体の吸入と吐出を効率的に行える。
図38に示されるインターフェース部1101と、制御部1102との働きは、前記実施形態の対応する部分と同様である。図38に示されるシリンジ移動部1104は、前記実施形態のバネ可動部駆動装置1103と同様の働きをする。すなわち、シリンジ移動部1104は、調整指示信号を受信すると、その内容に従って、シリンジ部160の位置の設定及び移動及び固定を行う。すなわち、シリンジ移動部1104は、シリンジ部160の位置の調整を行う。また、シリンジ移動部1104は、制御部1102に対して、シリンジ部160の状態を示す状態表示信号を発信する。
上で説明したように、第8実施形態においては、シリンジ部160の移動によって応力調整(圧力維持調整)を行うが、シリンジ部160の位置が図38に示す状態にあるときに「圧力維持部1114が初期状態にある」と表現する。また、図39に示すように初期状態と比べてシリンジ部160が右に移動した状態にあるときに、「圧力維持部1114が圧力維持状態にある」と表現する。このとき、第8実施形態においても、例えば、図20のフローチャートに示す制御方法を用いて、図19に示す動作例に従って、流体搬送装置を制御することが可能である。
なお、図39においては、初期状態におけるダイヤフラム103及び104とシリンジ部160の位置を点線で示した。
第8実施形態においては、ダイヤフラム103及び104の変形による応力(張力)の変化に対応して、外部からの力による能動的な作用によって電解液室109の壁面の一部であるシリンジ部160が移動を行い、このことによってダイヤフラム103及び104に対する圧力(張力)が一定範囲に保たれる。
(第9実施形態)
図40は、本発明の第9実施形態にかかる、導電性高分子を用いた流体搬送装置の断面図である。
第9実施形態の構造と動作は、第8実施形態とほぼ同様であるが、第9実施形態においては、シリンジ部160をネジ構造のシリンジ部160Aとしている。この場合、通常のネジと同様に、シリンジ部160Aを、シリンジ部160Aの移動方向(図40では左右方向)と垂直な面内で回転させることによって、シリンジ部160Aを移動することが可能である。シリンジ部160Aの移動によってダイヤフラム103及び104に対する圧力の調整が可能であり、応力調整を行わないときには、シリンジ部160Aがネジ構造になっているためにシリンジ部160Aに外から力を加えないと、シリンジ部160Aが固定されており、ダイヤフラム103及び104に対する圧力が適切な値に保たれる。なお、シリンジ部160がネジ構造になっているために、筐体部102の側壁102sの貫通穴102nもめねじ穴となっている。
前記の説明では、2枚のダイヤフラム103及び104を用いる場合、それらの中央部を互いにある部材で固定する場合と、お互いに固定しない場合について説明したが、2枚のダイヤフラム103及び104を互いにバネ又は弾性膜などの弾性体で固定することも可能である。この例を図41に示す。この場合、2枚のダイヤフラム103及び104が絶縁性のバネ接続部208で接続されている。
(第10実施形態)
図42は、本発明の第10実施形態にかかる、導電性高分子を用いた流体搬送装置の断面図である。
図42の流体搬送装置は、筺体部102と、ダイヤフラム103と、ポンプ室107と、電解液室109と、配線部110aと110bと、吸入口111と、吐出口113と、吸入弁121と、吐出弁122と、バネ部131と、弾性膜部130と、第1及び第2力伝達部141と142、導電性高分子膜伸縮部140と、弾性部の一例としての第2弾性膜部170と、対向電極部180と、インターフェース部1101と、制御部1102と、電源(第1電源)110cと、第2電源302cと、対向電極部301と、配線部302a、302bとを備えるように構成されている。第1及び第2力伝達部141及び142と導電性高分子膜伸縮部140と弾性膜部130とは、以下で説明するように圧力維持部1115として働く。
バネ部131の両端は、筺体部102の上面とダイヤフラム103に接続されており、バネ部131は定常状態よりも縮んだ状態で設置されている。ダイヤフラム103の一部分若しくは全部分が導電性高分子膜で構成されており、電解液室109には電解液が満たされている。ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜と対向電極部180との間に第1電源110cから電圧を印加することによって、ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜が電解伸縮を行い、このことにより、ダイヤフラム103が上下に移動し、流体の吸入と吐出を行う。対向電極部180は、例えば白金のメッシュなどで形成されて、筐体部102の側壁102s間に固定され、電解液は、対向電極部180の両側に移動できる構造になっている。図42の状態においては、ダイヤフラム103が電解伸縮により伸長しており、図43の状態においては、ダイヤフラム103が電解伸縮により収縮している。このことにより、ポンプ室107の体積が増減するために、流体の吸入と吐出が行われる。図42の状態では吸入口111から流体が吸入されて、図43の状態では吐出口113から流体が吐出される。電解液室109に満たされた電解液はほぼ非圧縮性流体とみなせるので、その体積はほぼ一定に保たれる。このことから、ダイヤフラム103の上下運動に従って、筐体部102の底壁102uの貫通穴102wを塞ぐように底壁102uの外側に外縁部が固定された第2弾性膜部170も上下運動を行い、電解液室109の体積はほぼ一定に保たれる。図42においては第2ダイヤフラム170の凸形状の膨らみが大きくなっており、図43においては第2ダイヤフラム170の凸形状の膨らみが小さくなっている。
なお、図43においては、図42の状態におけるダイヤフラム103と弾性膜部170の位置を点線で示している。
第1及び第2力伝達部141及び142と導電性高分子膜伸縮部140と弾性膜部130とで構成される圧力維持部1115の構成及び動作及び効果は、前記の第3実施形態とほぼ同じである。すなわち、第2電源302cからの電圧印加により導電性高分子膜伸縮部140を電解伸縮させることによって、弾性膜部130の凸形状を制御し、そのことによって、電解液室109の体積と電解液の圧力とを調整する。ダイヤフラム103に加わる力は、バネ部131から下向きの力と、筺体部102がダイヤフラム103の固定点を固定する力と、ポンプ室107の内部の流体から受ける圧力と、電解液室109の内部の電解液から受ける圧力である。今、圧力維持部を動作させることによって、前記のように電解液からダイヤフラム103が受ける圧力を調整することができて、このことにより、ダイヤフラム103に対する圧力(張力)を調整可能である。図44はダイヤフラム103が前記理由で伸びた場合に、導電性高分子膜伸縮部140を収縮させることによってダイヤフラム103に対する圧力を調整している様子を示す。ただし、図44には詳しく示していないが、ダイヤフラム103が、ポンプ室107の内部の流体から受ける圧力と、電解液室109の内部の電解液から受ける圧力との間に差がある場合には、ダイヤフラム103は上下いずれかの方向に凸形状にわずかに変形する。
図44において、図42の状態におけるダイヤフラム103と弾性膜部130の位置を点線で示している。
なお、第10実施形態において、導電性高分子膜伸縮部140と力伝達部141及び142と弾性膜部130を除いた場合においても、第2弾性膜部170とバネ部131の働きによって、ダイヤフラム103に対する圧力はある程度、調整可能である。しかしながら、導電性高分子膜伸縮部140と力伝達部141及び142と弾性膜部130とを動作させることによって、より精密な応力調整が可能である。第10実施形態のように、ポンプ室を1つにした構造では、構造が簡単であるので、製造及びメンテナンスが容易であるという特徴がある。
また、バネ部131の端を可動にすることでバネ部131の弾性力を調整することも可能である。図45は、ダイヤフラム103に接触する一端を有するバネ部131の他端をバネ可動部205に接続している。バネ可動部205を上下に移動させることで、バネ部131の弾性力を調整可能であり、結果としてダイヤフラム103に対する圧力を調整可能である。
図45の例においては、ダイヤフラム103の変形による応力(張力)の変化に対応して、先の実施形態のように、外部からの力による能動的な作用によってバネ可動部205を移動して、電解液室109の壁面の一部であるダイヤフラム103が変形を行い、このことによってダイヤフラムに対する圧力(張力)が一定範囲に保たれる。
前記の一部の図43〜図45においては、圧力維持部1115の一部である導電性高分子膜伸縮部140の電解伸縮を行うための電源302cと対向電極部301と配線部3021,302bとを省略しているが、図42と同様の構成であるものとする。
また、前記の実施形態における制御方法及び動作例を同様に適用することが可能である。
(第11実施形態)
前記の説明では、ダイヤフラム103,104は筺体部102に固定点で接続されている場合を示したが、ダイヤフラム103,104と筺体部120との接続部の位置又は形状を変化させることによっても、ダイヤフラム103,104に対する圧力を調整可能である。例えば、ダイヤフラム103,104がそれぞれ伸びたときに、ダイヤフラム103,104の端部をそれぞれ周辺方向に引っ張って移動させることでダイヤフラム103,104に対する圧力の調整もそれぞれ可能である。この場合の例を図46に示す。図46においては、ダイヤフラム103及び104の一部の端(例えば、図46のそれぞれの右側の端部)がダイヤフラム接続部209とそれぞれ接続されており、ダイヤフラム接続部209は、筺体部102に対して図46の左右(すなわち、筺体部102の厚み方向)にそれぞれ移動可能な構造となっている。ダイヤフラム接続部209が左右に移動するのに伴って、ダイヤフラム103及び104の接続部分(ダイヤフラム接続部209に対して連結されている部分)が左右に移動し、ダイヤフラム103又は104の端部が筺体部102の側壁102sの内部に対して出入りする。ただし、筺体部102とダイヤフラム接続部209とが接触する部分は封止されており、電解液が外部に漏れない構造となっている。図47Aは、例として、ダイヤフラム103及び104が伸びた場合にダイヤフラム接続部209が右側に移動してダイヤフラム103及び104に対する圧力が調整されている様子を示した図である。図47Aに示すように、ダイヤフラム103及び104が伸びた場合にはダイヤフラム接続部209が右側に移動することで電解液室109の体積がほぼ一定に保たれるために、電解液の圧力を適切な範囲に保つことが可能である。結果として、ダイヤフラム103及び104に対する圧力(張力)は適切な範囲に保つことが可能である。
図47Aに示す接続部材移動部1105は、前記実施形態のシリンジ移動部1104と同様の働きをする。すなわち、接続部材移動部1105は、調整指示信号を受信すると、その内容に従って、ダイヤフラム接続部209の位置の設定及び移動及び固定を行う。すなわち、接続部材移動部1105は、ダイヤフラム接続部209の位置の調整を行う。また、接続部材移動部1105は、制御部1102に対して、ダイヤフラム接続部の状態を示す状態表示信号を発信する。
第11実施形態にかかる、導電性高分子を用いた流体搬送装置においても、前記実施形態の制御方法及び動作例を同様に適用することが可能である。
前記の一部の図47Aにおいて、制御部1102などのいくつかの部分、及び、配線を省略しているが、他の部分で説明を行った内容と同様の構成を持つものとする。また、ダイヤフラム接続部209は、例えば、先の実施形態のバネ可動部205若しくは206と同様な構成としてもよい。
第11実施形態においては、ダイヤフラム103及び104の変形による応力(張力)の変化に対応して、外部からの力による能動的な作用によってダイヤフラム接続部209を移動して、電解液室109の壁面の一部であるダイヤフラム103,104が変形を行い、このことによって、ダイヤフラムに対する圧力(張力)が一定範囲に保たれる。
なお、上の説明ではダイヤフラム103及び104が導電性高分子膜で形成される場合について説明したが、ダイヤフラム103及び104の一部を弾性膜で構成して、ダイヤフラム103及び104の一部がダイヤフラム面方向に弾性変形可能な構成にすることによって、ダイヤフラム103及び104に対する圧力の調整を行うことも可能である。この場合、ダイヤフラム103及び104の一部を構成する弾性膜の働きで、ダイヤフラム103及び104を構成する導電性高分子膜に加わる応力(張力)をダイヤフラム面内でより均質にすることができる。また、ダイヤフラム103及び104の一部を弾性膜で構成した場合、弾性膜はポンプ室若しくは電解液室方向に膨らんだ凸形状に変形することができて、この凸形状が変化することによって電解液室109の体積がほぼ一定に保つことができて、電解液の圧力が適切な範囲に保たれるので、ダイヤフラム103及び104に対する圧力を適切な範囲に保つことが可能である。
ここで、弾性膜とは、ヤング率が1GPa未満の膜を指すものとする。これに対して、導電性高分子膜は、一般的に、ヤング率が1GPa以上の値である。
(他の実施形態)
前記第1〜第11実施形態のいずれか1つ又は複数の実施形態の、導電性高分子を用いた流体搬送装置を複数台用意して並列に並べて、流入側と流出側とをそれぞれ互いに接続することにより、大きな搬送流量を得ることも可能である。
また、前記第1〜第11実施形態のいずれか1つ又は複数の実施形態において、前記と同様の構造で、小型の前記流体搬送装置を複数台用意して並列に並べて、流入側と流出側とをそれぞれ互いに接続することにより、大きな搬送流量を得ることも可能である。この場合、それぞれの流体搬送装置における第1及び第2ダイヤフラム103,104又はダイヤフラム103の凸形状の膨らみが小さくなるので、全体として小型化することが可能である。
前記したように複数の流体搬送装置を並列に並べる場合、各1枚のダイヤフラム103,104の代わりに、同じ面内に複数のダイヤフラム103d,104dを並べることも可能である(図47B参照)。図47Bにおいて、第1隔壁部193及び第2隔壁部194は、白金などの金属で形成されて、複数の開口部193aを持つ平板形状である。そして、第1隔壁部193と第2隔壁部194は互いに平行に位置するように筺体部102内に配置される。また、第1隔壁部193の複数の開口部193aには、第1ダイヤフラム103dがそれぞれ配置されるとともに、第2隔壁部194の複数の開口部194aには第2ダイヤフラム104dがそれぞれ配置される。そして、第1隔壁部193と複数の第1ダイヤフラム103によって、第1ポンプ室107と電解液室109とが分離される。また、第2隔壁部194と複数の第2ダイヤフラム104によって、第2ポンプ室107と電解液室部109が分離される。複数の第1ダイヤフラム103dは互いに金属の第1隔壁部193で接続されているので、互いに同じ電位に保たれる。また、複数の第2ダイヤフラム104dは金属の第2隔壁部194で接続されているので、互いに同じ電位に保たれる。また、第1ダイヤフラム103dと第2ダイヤフラム104dとは電気的に導通しないようにされている。この構造において、第1ダイヤフラム103dと第2ダイヤフラム104dの間の電位を変化させることによって、複数の第1ダイヤフラム103d及び複数の第2ダイヤフラム104dがそれぞれ前記実施形態と同様に伸縮を行うので、ポンプの動作を行うことが可能である。
また、ダイヤフラムを重ねる方向にポンプ構造を並べることも可能である。すなわち任意の位置関係でポンプ構造を並べることが可能である。
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。