JP4520099B2 - 光学素子、光偏向素子及び画像表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶を用いた光学素子、及び光偏向素子、並びにこの光偏向素子を備えた画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶材料を用いた光偏向素子である光学素子については、従来、各種提案がなされている(特許文献1〜3を参照)。
【0003】
また、ピクセルシフト素子に関しても、従来、各種提案がなされている(特許文献4〜7を参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−18940号公報
【特許文献2】
特開平9−133904号公報
【特許文献3】
特開平10−221703号公報
【特許文献4】
特許第2939826号公報
【特許文献5】
特開平5−313116号公報
【特許文献6】
特開平6−324320号公報
【特許文献7】
特開平10−133135号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
光偏向素子に関する技術について、まず、特許文献1では、光空間スイッチの光の損失を低減することを目的に、人工複屈折板からなる光ビームシフタが提案されている。内容的には、2枚のくさび形の透明基板を互いに逆向きに配置し、該透明基板間に液晶層を挟んだ光ビームシフタ、及びマトリクス形偏向制御素子の後面に前記光ビームシフタを接続した光ビームシフタが提案され、併せて、2枚のくさび形の透明基板を互いに逆向きに配置し、該透明基板間にマトリクス駆動が可能で、入射光ビームを半セルシフトする液晶層を挟んだ光ビームシフタを半セルずらして多段接続した光ビームシフタが提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、大きな偏向を得ることが可能で、偏向効率が高く、しかも、偏向角と偏向距離とを任意に設定することができる光偏向スイッチが提案されている。具体的には、2枚の透明基板を所定の間隔で対向配置させ、対向させた面に垂直配向処理を施し、透明基板間にスメクチックA相の強誘電性液晶を封入し、前記透明基板に対して垂直配向させ、スメクチック層と平行に交流電界を印加できるように電極対を配置し、電極対に交流電界を印加する駆動装置を備えた液晶素子である。即ち、スメクチックA相の強誘電性液晶による電傾効果を用い、液晶分子の傾斜による複屈折によって、液晶層に入射する偏光の屈折角と変位する方向を変化できるようにしたものである。
【0007】
特許文献1の技術においては、液晶材料にネマチック液晶を用いているため、応答速度をサブミリ秒にまで速めることは困難であり、高速なスイッチングが必要な用途には用いることはできない。また、特許文献2の技術においては、スメクチックA相強誘電液晶を用いて電傾効果によるスイッチングを提案しているが、電傾効果は、温度依存性が高く安定したシフトが望めない。
【0008】
そこで、特許文献3においては、光学的に透明な共通電極を有する第1窓と、電気的に束ねた平行ストライプ形状をした多数の透明導電電極を有する第2窓と、第1窓と第2窓の中間に設けられた液晶分子層とを含む光学要素を備え、光学装置は、光学ビームが第1窓に入射して第2窓により反射又は透過されるように位置決めされ、さらに、制御信号を各セルの外側の電極に個々に印加する手段を備えることにより、接合電極に沿いまたセル領域を通して直線情報の電圧傾度を発生させ、それにより、LCの電子光学特性の直線又は非直線部分により液晶層に屈折率の局部的な変化を生ぜしめす様に構成されていることを特徴とする光学ビームを波面変調する装置を提案している。また、その請求項4において、0度と3度間の予め定めた傾斜角度でCL層のLC電子光学特性の直線部分内からの電圧で活性区域をアドレスすることにより、透過又は反射光学波面からなるブレーズ効果をもつ相特性を発生することによって光学ビームを偏向するのに使用される事を特徴とする装置を提案している。
【0009】
この特許文献3の技術によれば、液晶としてやはりネマチック液晶を使用しているため、特許文献1のものと同様、高速応答性を必要とする用途には適さない。また、特許文献3においては、平行ストライプ形状をした透明導電電極について記載されているが、この構造においては、本発明の課題として述べている電界の局所的な変動が発生する可能性があり、均一な光偏向量を得にくい。
【0010】
次に、ピクセルシフト素子に関する技術について、まず、特許文献4には、表示素子に表示された画像を投写光学系によりスクリーン上に拡大投影する投影表示装置において、前記表示素子から前記スクリーンに至る光路の途中に透過光の偏光方向を旋回できる光学素子を少なくとも1個以上と複屈折効果を有する透明素子を少なくとも1個以上を有してなる投影画像をシフトする手段と、前記表示素子の開口率を実効的に低減させ、表示素子の各画素の投影領域が前記スクリーン上で離散的に投影される手段と、を備えた投影表示装置が開示されている。
【0011】
この特許文献4においては、偏光方向を旋回できる光学素子(旋光素子と呼ぶ)を少なくとも1個以上と複屈折効果を有する透明素子(複屈折素子と呼ぶ)を少なくとも1個以上を有してなる投影画像シフト手段(ピクセルシフト手段)によりピクセルシフトを行っているが、問題点として、旋光素子と複屈折素子とを組合せて使用するため、光量損失が大きいこと、光の波長によりピクセルシフト量が変動し解像度が低下しやすいこと、旋光素子と複屈折素子との光学特性のミスマッチから本来画像が形成されないピクセルシフト外の位置に漏れ光によるゴースト等の光学ノイズが発生しやすいこと、素子化のためのコストが大きいことが挙げられる。特に、複屈折素子に前述したような、KH2PO4(KDP),NH4H2PO4(ADP),LiNbO3,LiTaO3,GaAs,CdTeなど、第1次電気光学効果(ポッケルス効果)の大きな材料を使用した場合、顕著である。
【0012】
また、特許文献5に開示されている投影機においては、制御回路により、画像蓄積回路に蓄積した本来表示すべき画像を市松状に画素選択回路へサンプリングして順次空間光変調器に表示し、投影させ、さらに、制御回路により、この表示に対応させてパネル揺動機構を制御して空間光変調器の隣接画素ピッチ距離を整数分の一ずつ移動させることで、本来表示すべき画像を時間的な合成により再現するようにしている。これにより、空間光変調器の画素の整数倍の分解能で画像を表示可能にするとともに、画素の粗い空間光変調器と簡単な光学系を用いて安価に投影機を構成可能としている。
【0013】
ところが、特許文献5においては、画像表示用素子自体を画素ピッチよりも小さい距離だけ高速に揺動させるピクセルシフト方式が記載されており、この方式では、光学系は固定されているので諸収差の発生が少ないが、画像表示素子自体を正確かつ高速に平行移動させる必要があるため、可動部の精度や耐久性が要求され、振動や音が問題となる。
【0014】
さらに、特許文献6に開示の技術によれば、LCD等の画像表示装置の画素数を増加させることなく、表示画像の解像度を、見掛け上、向上させるため、縦方向及び横方向に配列された複数個の画素の各々が、表示画素パターンに応じて発光することにより、画像が表示される画像表示装置と、観測者又はスクリーンとの間に、光路をフィールド毎に変更する光学部材を配し、また、フィールド毎に、前記光路の変更に応じて表示位置がずれている状態の表示画素パターンを画像表示装置に表示させるようにしている。ここに、屈折率が異なる部位が、画像情報のフィールド毎に、交互に、画像表示装置と観測者又はスクリーンとの間の光路中に現れるようにすることで、前記光路の変更が行われるものである。
【0015】
特許文献6の技術においては、光路を変更する手段として、電気光学素子と複屈折材料の組合せ機構、レンズシフト機構、バリアングルプリズム、回転ミラー、回転ガラス等が記述されており、上記旋光素子と複屈折素子を組合せてなる方式の他に、ボイスコイル、圧電素子等によりレンズ、反射板、複屈折板等の光学素子を変位(平行移動、傾斜)させ光路を切り替える方式が提案されているが、この方式においては、光学素子を駆動するために構成が複雑となりコストが高くなる。
【0016】
また、特許文献7の技術によれば、回転機械要素を不要化でき、全体の小型化、高精度・高分解能化を実現でき、しかも外部からの振動の影響を受け難い光ビーム偏向装置が提案されている。具体的には、光ビームの進行路上に配置される透光性の圧電素子と、この圧電素子の表面に設けられた透明の電極と、圧電素子の光ビーム入射面Aと光ビーム出射面Bとの間の光路長を変化させて光ビームの光軸を偏向させるために電極を介して圧電素子に電圧を印加する電圧印加手段とを備えている。
【0017】
この技術では、透光性の圧電素子を透明の電極で挟み、電圧を印加することで厚みを変化させて光路をシフトさせる方式が提案されているが、比較的大きな透明圧電素子を必要とし、装置コストがアップする等、前述の特許文献6の場合と同様の問題点がある。
【0018】
上述した従来技術の課題を整理すると、従来のピクセルシフト素子において問題となっているのは、
1.構成が複雑であることに伴う高コスト、装置大型化、光量損失、ゴースト等の光学ノイズ又は解像度低下
2.特に可動部を有する構成の場合の位置精度や耐久性、振動や音の問題
3.ネマチック液晶などにおける応答速度
である。
【0019】
そこで、これらの課題を解決するため、本出願人は、電界を印加するための、基板上の光路を含む領域に所望の光路シフト方向に対して略平行に配置された複数本の電極ライン群を有している光偏向素子を提案している(特願2001−287907を参照)。
【0020】
しかしながら、例えば、このような光偏向素子において、前述の課題の解決のために有効な電極や誘電体の詳細な構造や物性などについては知られていなかった。
【0021】
本発明の目的は、液晶を用いた光学素子、光偏向素子について、より低い電圧で液晶を駆動させることが可能として、低電圧化により効率的な電界の発生を実現できるようにすることである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、透明な一対の基板と、この基板間に充填されたホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶を含む液晶層と、前記一対の基板のうち少なくとも一方に当該基板の板幅方向に間隔をあけて並べて設けられた複数本の電極と、前記液晶層と前記電極との間に設けられた比誘電率が8の誘電体層と、前記各電極に対して隣接する電極間で段階的に大きさの異なる電圧を印加することで光を偏向させる電圧印加手段と、を備え、前記誘電体層は、その厚みをtdeとしたときに、
38≦tde≦150(μm)
であり、前記複数本の電極の各電極は、その配列ピッチをDとするときに、
D≦2・tde
である、光学素子である。
【0023】
したがって、本発明の厚み、比誘電率の誘電体層を用いれば、より低い電圧で液晶を駆動させることが可能となり、低電圧化が図られ、もって、効率的な電界の発生を実現できることが検証できた。
【0025】
又、配列ピッチに対応した電界方向及び大きさの変動が発生して液晶配向方向が均一でなくなって、光学素子の透過率または光偏向量等に分布が発生し良好な特性が得られなくなることが防止でき、電極の配置に基づく局所的な変化を抑えて、液晶の配向不良を防ぐことができることが検証できた。
【0026】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学素子において、前記各電極は、その幅をW、配列ピッチをDとするときに、
W>0.1・D
である。
【0027】
したがって、段階的に異なる電圧値を印加することが駆動に必要な素子においては、素子が大面積化したときに大電圧の印加が必要となるが、本発明によれば、効率的に、低電圧で所定電界を得ることができ、電源への負荷、周辺電子部品への電磁ノイズ等を低減する上できわめて有用である。
【0028】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光学素子において、前記各電極は、透明な材料で形成されている。
【0029】
したがって、電極として光吸収率の高い材料を用いた場合、光利用効率が低下するばかりでなく、発熱により光学素子としての特性を変動させてしまい、また、反射率の高い材料を用いた場合、光源側光学素子と多重反射を発生させる可能性がありノイズ要因となるが、本発明によればこれらの不具合を抑制できる。
【0038】
請求項4に記載の発明は、画像フィールドを時間的に更に細分割した複数個の画像サブフィールドごとに照明光を画像情報に基づいて空間光変調して画像光として出射する画像表示素子と、この画像表示素子と同期し、前記画像サブフィールドごとに駆動される前記画像表示素子の各画素から入射されてくる画像光の光路を偏向して前記画像表示素子の見かけ上の画素数を増倍して表示する請求項1〜3のいずれかの一に記載の光偏向素子と、を備えている画像表示装置である。
【0039】
したがって、光偏向装置の低電圧化が図り、効率的な電界の発生を実現できる。
【0040】
【発明の実施の形態】
[定義]
以下では、本明細書で用いる主要な用語について説明する。
【0041】
(1)光偏向素子
「光偏向素子」とは、外部からの電気信号により光の光路を偏向、即ち、入射光に対して出射光を平行にシフトさせるか、或る角度を持って回転させるか、或いは、その両者を組合せて光路を切換えることが可能な光学素子を意味する。この説明において、平行シフトによる光偏向に対してそのシフトの大きさを「シフト量」と呼び、回転による光偏向に対してその回転量を「回転角」と呼ぶものとする。「光偏向デバイス」とは、このような光偏向素子を含み、光の光路を偏向させるデバイスを意味する。
【0042】
(2)光偏向切替時間
光偏向方向切替時間とは、光路切替えに要する時間であり、液晶スイッチング時間に相当する時間である。
【0043】
(3)サブフィールド
通常液晶プロジェクタ等の画像表示装置においては、ある周期で画像を順次書き換え表示している。その1枚当たりの画像をフィールドと呼ぶ。本発明においては、前記の通り時分割で光路シフトを行うことで画素を倍増して表示するが、その時分割され表示される画像をサブフィールドと呼ぶ。従って例えば分割数を2、すなわち光路シフトを2つの位置でスイッチングする場合は、2つのサブフィールドで1フィールドの画像を形成することになる。
【0044】
サブフィールド切替時は光路をシフトさせている時間であり、サブフィールド表示時は光路シフトが完了し、1つのサブフィールドを表示する時間である。
【0045】
(4)ピクセルシフト素子
「ピクセルシフト素子」とは、少なくとも画像情報に従って光を制御可能な複数の画素を二次元的に配列した画像表示素子と、画像表示素子を照明する光源と、画像表示素子に表示した画像パターンを観察するための光学部材と、画像フィールドを時間的に分割した複数のサブフィールド毎に画像表示素子と光学部材の間の光路を偏向する光偏向手段とを有し、光偏向手段によりサブフィールド毎の光路の偏向に応じて表示位置がずれている状態の画像パターンを表示させることで、画像表示素子の見掛け上の画素数を増倍して表示する画像表示装置における光偏向手段を意味する。従って、基本的には、上記定義による光偏向素子や光偏向デバイスを光偏向手段として応用することが可能といえる。
【0046】
[発明の実施の形態]
本発明の一実施の形態について説明する。
【0047】
まず、本実施の形態である光偏向素子1の基本的な構成と動作について、図1〜図5を参照して説明する。
【0048】
図1は、光偏向素子1の全体構成の説明図である。図1の光偏向素子1は、本発明の光学素子、光偏向素子を実施するもので、まず、一対の透明な基板2が対向配置されて設けられている。そして、少なくとも一方の基板2の内面に配向膜(図1において図示せず)を形成するのが、液晶層5を良好に配向させる上で望ましい。この配向膜と他方の基板2との間にはキラルスメクチックC相よりなる強誘電液晶なる液晶層5が充填されている。
【0049】
このような一対の基板2及び液晶層5を有する液晶パネルに対して、目的とする光偏向方向に対応させて液晶層5に電界を印加する為の、複数のライン電極6が配置され、電源7に接続されている。ライン電極6は、一対の基板2のうち少なくとも一方に、基板2の板幅方向に所定の間隔(後述する)をあけて並べて設けられたライン上の電極である。それぞれのライン電極6は、光路外に設けられ、直列に配列された複数の抵抗7aの各抵抗端に接続されていて、隣接する透明電極6間で電位勾配が発生し、電界が印加されるように構成されている。すなわち、電源7、抵抗7aなどにより、ライン電極6間で段階的に大きさの異なる電圧を印加することで光を偏向させて、電圧印加手段を実現している。
【0050】
次に、液晶層5に関して説明する。まず、「スメクチック液晶」は、液晶分子の長軸方向を層状に配列してなる液晶分子である。このような液晶に関し、上記層の法線方向(層法線方向)と液晶分子の長軸方向とが一致している液晶を「スメクチックA相」、法線方向と一致していない液晶を「キラルスメクチックC相」と呼んでいる。
【0051】
キラルスメクチックC相よりなる強誘電液晶は、一般的に外部電界が働かない状態において各層毎に液晶分子方向が螺旋的に回転している、いわゆる螺旋構造をとり、キラルスメクチックC相反強誘電液晶は各層毎に液晶分子が対向する方向を向く。これらのキラルスメクチックC相よりなる液晶は、不斉炭素を分子構造に有し、これによって自発分極しているため、この自発分極Psと外部電界Eにより定まる方向に液晶分子が再配列することで、光学特性が制御される。なお、以下では、液晶層5として強誘電液晶を例にとって光偏向素子1の説明を行うが、本発明はこれに限定されるものではなく、反強誘電液晶の場合にも同様に使用することができる。
【0052】
キラルスメクチックC相よりなる強誘電液晶の構造は、主鎖、スペーサ、骨格、結合部、キラル部などよりなる。主鎖構造としてはポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリオキシエチレンなどが利用可能である。スペーサは分子回転を担う骨格、結合部、キラル部を主鎖と結合させるためのものであり、適当な長さのメチレン鎖等が選ばれる。また、カイラル部とビフェニル構造など剛直な骨格とを結合する結合部には−COO−結合等が選ばれる。
【0053】
本実施の形態の光偏向素子1においては、キラルスメクチックC相よりなる強誘電液晶層5は配向膜により基板2の面に垂直に分子螺旋回転の回転軸が向いており、いわゆるホメオトロピック配向をなす。このようなホメオトロピック配向のための配向法としては、周知の技術を適用することができる。即ち、▲1▼ずり応力法、▲2▼磁場配向法、▲3▼温度勾配法、▲4▼SiO斜法蒸着法、▲5▼光配向法等が挙げられる(これらについての詳細は、例えば、竹添、福田「強誘電性液晶の構造と物性」コロナ社、p235を参照)。
【0054】
本光偏向素子1は、キラルスメクチックC相がネマチック液晶に比較して極めて高速な応答性を有しており、サブmsでのスイッチングが可能である。また、電界方向に対して液晶分子方向が一義的に決定され、ある電界強度以上でダイレクタの方向が固定されるため、電界強度に比例したダイレクタ角度をとる電傾効果を利用したスメクチックA相よりなる液晶に比べ、ダイレクタ方向の制御が容易であり扱いやすい。
【0055】
また、ホメオロトピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶層5は、ホモジニアス配向(液晶分子が基板面に平行に配向している状態)をとる場合に比べて、液晶分子の動作が基板2からの規制力を受けにくく、外部電界方向の調整で光偏向方向の制御が行いやすく、必要電界が低いという利点を有する。また、液晶分子がホモジニアス配向している場合、電界方向だけでなく基板面に液晶分子が強く依存するため、光偏向素子の設置についてより位置精度が求められることになる。逆に、本実施の形態のようなホメオロトピック配向の場合は、光偏向に対して光偏向素子1のセッティング余裕度が増す。これらの特徴を活かす上で、厳密に螺旋軸を基板面に垂直に向ける必要はなく、或る程度傾いていても差し支えない。例えば、螺旋構造をなす側面の一部が基板2に垂直であって螺旋軸そのものは基板法線方向から傾いている状態であっても、液晶分子が基板2からの規制力を受けずに2つの方向を向くことが可能であればよい。
【0056】
次に、本光偏向素子1の基本的な動作原理について、図2及び図3を参照して説明する。図2は、図1に示した構成に関して液晶分子配向状態を模式的に示したものである。図2では、ライン電極6は、光偏向素子1の両側の図示しない基板に設けられており、ライン電極6は、その片側基板のみに形成するのでも良いが、液晶層5に効率的に横方向の電界を付与する為には両側に形成していた方が望ましい。
【0057】
また、光偏向素子1に対する入射光は直線偏光であり、その偏光方向は、図2中で矢印に示すように上下方向であって(以後、同様に偏光方向については上下或いは左右の矢印で入射光に重ねて示す)、その偏光方向に電界方向が直交するようにライン電極6は対向配置され、該ライン電極群の隣接する各ライン電極に対して段階的に異なる電圧値が設定される。なお、電極6からの漏洩電界が光偏向素子1の周辺の機器に悪影響を及ぼさないように、電磁シールドを設けるのが好ましい。液晶分子8は、印加される電界方向によって前述のとおり螺旋状に配向方向をとることが可能であり、図2には、そのとり得る配向状態をコーン状に示している。
【0058】
図2において、XYZ直交座標系を図示するようにとったときの液晶層5内のXZ断面を図3に示す。図3に示すように、液晶分子8は、十分大きな電界であれば、その電界方向によって第1の配向状態又は第2の配向状態の何れかの状態(図3(b)参照)をとって分布する。θは液晶回転軸からの液晶分子8のチルト角であり、以後、単に「チルト角」と呼ぶ。液晶層5の自発分極Psが正であり、Y軸正方向(紙面上向き)に電界Eがかかっているものとすると、液晶分子8は液晶回転軸が略基板垂直方向であるため、図3(b)に示す第1の配向方向と一致する。
【0059】
液晶層5の長軸方向の屈折率をne、短軸方向の屈折率をnoとすると、入射光として、偏光方向をY軸方向に持つ直線偏光を選び、X軸正方向に入射光が進むとき、光は液晶層5内で常光として屈折率noを受けて直進し、図3(a)中のa方向に進む。即ち、光偏向は受けない。
【0060】
一方、偏光方向がZ軸方向である直線偏光が入射するとき、入射方向の屈折率は液晶分子 の方向及び屈折率no,neの両者から求められる。より詳しくは、屈折率no,neを主軸に持つ屈折率楕円体において楕円体中心を通過する光の方向との関係から求められるが、ここでは詳細は省略する。光は屈折率no,ne及び液晶分子8の方向(チルト角θ)に対応した偏向を受け、図3(a)中のb(第1の配向状態の場合)に示す方向にシフトする。
【0061】
今、液晶層5の厚み(ギャップ)をdとするとき,シフト量Sは、以下の式1で表される(例えば、「結晶光学」応用物理学会、光学懇話会編、p198を参照)。
【0062】
また、電界方向を反転させた時、液晶分子8は図3においてX軸を中心とした線対称の配置(第2の配向状態)を取り、偏光方向がZ軸方向である直線偏光の進行方向は、図3(a)中のb´に示す通りとなる。
【0063】
従って、この直線偏光に対して液晶層5に作用させる電界方向を制御することで、bとb´との2位置、即ち、2S分の光偏向が可能となる。
【0064】
液晶層5の材料の代表的物性値(no=1.6,ne=1.8)に対して得られる光偏向量について,光偏向量Sを計算した結果を図4に示す。図4に明らかなように、θ=45°付近が最も光偏向量が大きい。仮に、液晶分子8のチルト角θが22.5°のとき、2S=5(μm)の偏向量を得るためには、ここに示される通り、液晶の厚みを32μm厚に設定すれば良い。また、ホメオトロピック配向強誘電液晶において、約700V/cmの電界に対して,0.1msの応答速度が報告されており(Ozaki他、J.J.Appl.Physics、Vol.30、No.9B、pp2366-2368(1991)を参照)、サブmsオーダの十分高速な応答速度が得られる。
【0065】
また、キラルスメクチックC相よりなる液晶においては、チルト角θは温度Tにより変化し、相転移点をTcとすると、θ∝(T−Tc)βなる関係がある。βは材料により異なるが、0.5程度の値をとる。この特性を利用した温度制御で光偏向量を制御することも可能である。
【0066】
例えば、仮にチルト角θとして上記の22.5°を設定し、これに対応する温度をTθ=22.5°とすれば、T>Tθ=22.5°では,θ≦22.5°であり、T≦Tθ=22.5°ではθ>22.5°であるため、温度によりチルト角θを制御でき、これによって光偏向量を制御できることとなる。また、位置制御に関しては、電界による微調を同様に行うことができ、温度、電界あるいはその両者の組合せにより適切な光偏向を達成できる。
【0067】
以上は、電界強度がEs以上で螺旋構造が解けてチルト角θが光学軸の傾斜角に等しい場合について説明したが、電界強度がEs以下の場合には、上記θを液晶分子8の方向を平均化した光学軸の傾斜角として扱えば良い。
【0068】
図5は、電界発生用の印加電圧とそれにともなう光偏向量の変化を示すグラフである。印加電圧は一般的には矩形波状である。図1及び図2の光偏向素子1の構成において、この電圧印加により液晶層5の内部に所定方向(±Y方向)の電界が発生する。電圧の切替え直後に液晶分子8の回転が発生し、液晶物性や発生電界により決まる時間(光偏向方向切替時間)後、光偏向量が一定となる。この偏向方向は電圧値を保持する間は変化しない(光偏向方向保持時間)
次に、本光偏向素子1のさらに詳細な構成や、その作用効果について説明する。
【0069】
図6は、本発明の光学素子におけるライン電極周辺の断面構造を説明する為の模式図である。図6において、基板2上の隣接するライン電極6間には、透明充填材3が充填されている。また、液晶層5と基板2上のライン電極6との間には誘電体層4が設けられている。なお、液晶層5と対向する側の基板2、ライン電極6等は図示を省略している。
【0070】
透明基板2としては、ガラス、プラスチック等の透明材料を用いることができる。ライン電極6の詳細については後述するが、図7には、ライン電極6の電極幅Wやライン電極間距離Dを図示している。
【0071】
透明充填材3の材料としては、光硬化又は熱硬化型樹脂が利用可能である。これらはプレポリマー状態で基板上にスピンコート、ディッピング、バーコートなどの塗布法や、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等の印刷法で形成可能である。
【0072】
誘電体層4の機能は、液晶層5に印加する電界の局所的な変動を抑制することであるが、光学的には、内部吸収、界面反射、回折等極力発生しないよう構成するのが望ましい。
【0073】
以上のような構成の光偏向素子1において、誘電体層4の層厚に対して発生電界がどのように変化するかについて本出願人が検討したところ、誘電体層4の厚みを増加させるにしたがって、液晶層5に印加される電界が減少する傾向が認められた。電界効率の低下は電源負荷を招き、さらに印加電圧の上昇にともなって発熱、電磁ノイズ発生の原因ともなりうる。これらに鑑みた場合、65%以上の電界発生効率が好ましい。
【0074】
誘電体の厚みをtde、比誘電率をεdeとしたとき、
tde・εde≦1200(μm)
である時に、光偏向素子1のライン電極6群による電界を、効率的に液晶層5に印加させることができることが確認された。
【0075】
例えば、誘電体層として比誘電率8のガラスを用いた場合、誘電体層4の厚みは150μm以下が望ましい。より望ましくは30μm以下にすることで、後の実施例に示す通り、効率向上が図れて有用である。
【0076】
光偏向素子1を、ガラスを用いた透明な一対の基板2と、基板2間に充填されたホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶層5と、少なくとも一方の基板2上の光路を含む領域に配置された複数本のライン電極6と、基板2上の隣接するライン電極6間に充填された透明充填材3と、を備え、ライン電極6の隣接する各ライン電極6に対して段階的に異なる電圧値を設定することで光を偏向させるにおいては、大面積化したときに大電圧が必要となるため、効率的に低電圧で所定電界を得られる本構成は、電源への負荷、周辺電子部品への電磁ノイズ等を低減する上できわめて有用である。
【0077】
ライン電極群をなす各ライン電極6の配列ピッチDについては、
D≦2・tde
とすることが望ましい。
【0078】
例えば、tde=30μmである場合、Dとしては30μm以下に設定する。
【0079】
特に、透明な一対の基板2と、基板2間に充填されたホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶層5と、少なくとも一方の基板2上の光路を含む領域に配置された複数本のライン電極6と、基板2上の隣接するライン電極6間に充填された透明充填材3と、を備え、ライン電極群の隣接する各ライン電極6に対して段階的に異なる電圧値を設定することで光を偏向させる光偏向素子1においては、一旦、配向不良が発生した場合、強誘電性液晶である為、ネマチック液晶と異なりそれを除去することはきわめて難しい。
【0080】
これは、ネマチック液晶の粘性がきわめて低く液晶分子が界面規制力に沿って分子を再配向させやすいのに比較して、強誘電性液晶は、粘性が高くドメインを形成しやすい為、一旦配向不良が発生した場合、再配向させるのが困難な為である。本例の構成においては、電界の局所的な変動が抑制でき配向不良を防ぐことが可能となり信頼性を向上させることができる。
【0081】
また、ライン電極群をなす各ライン電極6の幅Wと配列ピッチDとの間に、
W>0.1・D
の関係を持たせることで、液晶層5に印加する電界の局所的な変動を抑制しながら、効率的に電界を印加することができる。
【0082】
例えば、配列ピッチDを30μmとした時、ライン電極6の幅は15μm以下、より望ましくは12μm以下とするのがよい。ただし、ライン電極6として酸化インジウム・スズ等の透明酸化物材料を用いる場合は、現状、市販流通している技術ではライン幅10μm前後が一般的であるため、下限は、これらのパターン形成技術に制約される。
【0083】
また、ライン電極6として透明材料を用いることで、光利用効率を高め信号品質を向上させることができる。この場合、透明なライン電極6としては、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウム(In2O3)、酸化インジウム・スズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化亜鉛・アンチモン(ZnO・Sb205)、酸化スズ・アンチモン(ATO)などを用いることができる。
【0084】
これらを形成する場合、ライン電極6の形状の開口マスクを重ねた状態で、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法などの方法で直接基板2上に所定形状の膜を成長させる方法や、塗布法、浸漬法、ゾルゲル法などで基板全面に成膜させた後、所定のマスキングを施した上で、塩酸系エッチャントなどによりウェットエッチングさせ、あるいはドライエッチングする方法がある。
【0085】
中でも酸化亜鉛・アンチモン及び酸化スズ・アンチモンよりなるライン電極6の材料は、透明性に優れ、表面抵抗値も液晶に印加する電界を発生する上で問題のない値に制御でき、さらに、屈折率も従来多く使用されていた酸化インジウム・スズ(屈折率1.8〜2.0)に比較して小さく制御できる為、透明充填材との屈折率差を低くでき有用である。
【0086】
誘電体層4としては、透明で電気的に絶縁性を有し、耐候性が高く、しかも複屈折性の小さいものが望ましく、無機透明材料であればガラス、有機材料であればポリカーボネート、アクリルなどを好適に用いることができる。
【0087】
無機透明材料は、熱、光に対する耐性に優れる為、長期信頼性に優れた素子を構成することができ有用である。特に、ガラス材は複屈折がなく、変形が少ないことから好ましい。
【0088】
有機透明材料を用いた場合、転写成形、射出成形による製造方法をとることで、量産性に優れた素子を提供することができる。
【0089】
図8は、光偏向素子1を用いた画像表示装置の概要を示す概念図である。図8において、符号11は、照明用の光源であり、白色あるいは任意の色の光を高速にON、OFFできるものであるならば、いかなる種類や型の光源であっても利用することができる。たとえば、LEDランプやレーザ光源、あるいは、白色のランプ光源などを2次元アレイ状に配列して、かかる光源に対して高速動作するシャッタを組合せたものなどを照明用の光源として用いることができる。
【0090】
符号12は、光源から出た光を均一に画像表示素子13に照射させるための照明装置であり、拡散板12a、コンデンサレンズ12bなどから構成される。
【0091】
符号13は、照明装置12から入射した均一の照明光を、画像フィールドを時間的に更に細分割した複数個の画像サブフィールドごとに、画像情報に基づいて空間光変調して、画像光として出射する画像表示素子である。画像表示素子13としては、透過型液晶ライトバルブ、反射型液晶ライトバルブ、DMD素子などを用いることができる。
【0092】
符号14は、前記画像サブフィールドごとに、画像表示素子13から出射される画像光の光路を偏向して、偏向画像光として出射する光偏向素子である。該光偏向素子14により、画像サブフィールドごとの光路の偏向量に応じて、スクリーン16上に投射される画像表示位置がずらされる状態となる画像パターンを表示させることが可能となり、画像表示素子3の実際の画素数を見かけ上増倍した画素数として、画像表示させることができる。
【0093】
符号15は、画像表示素子13に表示された画像パターンを観察するための光学部材であり、符号5は投射レンズ、符号6はスクリーンである。さらに、符号17は光源11を駆動するための光源駆動手段であり、符号18は画像表示素子13を駆動するための表示駆動回路であり、符号19は光偏向素子1を駆動するための光偏向駆動回路である。また、符号20は、光源駆動回路17、表示駆動回路18、光偏向駆動回路19などを含め画像表示装置の全体を制御するための画像表示制御回路である。
【0094】
次に、図8に示す画像表示装置の基本的な動作について説明する。光源駆動回路17で制御されて光源11から放射された光は、拡散板12aにより均一化された照明光となり、コンデンサレンズ12bにより、光源駆動回路17と同期して動作する表示駆動回路18により制御されている画像表示素子13をクリティカルに照明する。ここでは、画像表示素子13の例として、透過型液晶パネル、すなわち、透過型液晶ライトバルブを用いている。透過型液晶ライトバルブからなる画像表示素子13により空間光変調された照明光は、画像光として光偏向素子1に入射され、光偏向素子1から出射された出射光は、偏向画像光として、投射レンズ15で拡大された後、スクリーン16に投射される。すなわち、透過型液晶ライトバルブからなる画像表示素子13の画像光の出射側に配置されている光偏向素子1によって、画像光は、光偏向駆動回路19からの駆動信号に応じて、画素の配列方向に任意の距離だけシフト(偏向)された偏向画像光として出射されて、投射レンズ15を介して、スクリーン16上に投射される。
【0095】
なお、図8においては、透過型液晶ライトバルブからなる画像表示素子13の直後に、光偏向素子1を配置しているが、光偏向素子1の配置位置はかかる場合に限定されるものではなく、スクリーン16の直前などに配置することとしても良い。ただし、スクリーン16付近に配置する場合、光偏向素子1を形成する光偏向素子の大きさや、更には、光偏向素子を形成する透明電極の配設ピッチなどを、光偏向素子1の配置位置における画面サイズや画素サイズに応じて設定することが必要になる。
【0096】
しかし、いかなる配置位置に光偏向素子14を配置する場合であっても、前記偏向画像光の光路のシフト(偏向)量は、画素ピッチの整数分の1であることが望ましい。すなわち、画素の配列方向に対して2倍の画素増倍を行なう場合は、偏向画像光の光路のシフト量は、画素ピッチの1/2とし、配列方向に対して3倍の画素増倍を行なう場合は、画素ピッチの1/3とすることが望ましい。また、光偏向素子4の構成によって、偏向画像光の光路のシフト量が画素ピッチよりも大きくなる場合には、光路のシフト量を画素ピッチの(整数倍+整数分の1)の距離に設定してもよい。
【0097】
この光偏向素子1を画素配列方向の縦横2次元に用いることにより、例えば2倍の画像増倍を行なう光偏向素子を2枚用いることにより、見かけ上の画素4倍の効果が得られ、使用した透過型液晶ライトバルブの解像度以上の高精細な画像を表示することができる。また、光偏向素子1の構成によってシフト量が大きくなる場合には、シフト量を画素ピッチの(整数倍+整数分の1)の距離に設定しても良い。いずれの場合も、画素のシフト位置に対応したサブフィールドの画像信号で透過型液晶ライトバルブである画像表示素子13を駆動する。
【0098】
なお、図8では、単板の透過型液晶ライトバルブと単色LEDランプを用いた単色の画像表示装置を示したが、3原色の光源11と、照明装置12と、3枚の画像表示素子13とを用いて、3原色の画像を混合してフルカラー画像を表示させることもできる。また、単板の画像表示素子13を時間順次に三原色光で照明するフィールドシーケンシャル方式でもフルカラー画像を表示することができる。この場合、三色の光源11からの光路をクロスプリズムで混合して照明しても良いし、白色ランプ光源11と回転カラーフィルターの組合せで、時間順次の三原色光を生成してもよい。
【0099】
【実施例】
本発明の一実施例について説明する。
【0100】
[実施例1]
電界計算を以下の通り実施した。
【0101】
すなわち、前述の光偏向素子1の一実施例である図9に示す構成の光偏向素子1について(以下の各実施例において、図9に示す構成の光偏向素子1を条件を変えて用いている)、発生する電界を計算した。計算の目的は誘電体層4の厚みを変化させることで、液晶層5に印加される横方向の電界がどのように変化するかを求め、効果的に機能する条件を得ることである。
【0102】
電極6は、上下の基板2のそれぞれに100μmピッチで設け、互いに位置補間する配置とした。ここでの計算は、ライン電極6に印加する電圧が段階的に変化するようにしており、これにしたがって横方向に電界が発生する。
各計算に用いた値を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
液晶層5の層中央部における電界の分布を計算した結果を図10に示す。ただし、ここでの計算は電界印加直後の分布であり,液晶分子の動作による電界の緩和は反映されていない。計算の結果、誘電体層4の厚みが厚くなるにしたがって液晶層5に印加される横方向電界は小さくなることが判明した。
【0105】
このことから、誘電体層の厚みtde、比誘電率εdeにおいて、
tde・εde≦1200(μm)
であるときに、電界発生効率として65%以上を確保が確保され、素子のライン電極6による電界を、効率的に液晶層5に印加させることが可能であることが確認できた。
【0106】
[実施例2]
表2に示す条件で電界を計算した。計算の目的はライン電極6の配列ピッチDを変化させることで、液晶層5に印加される横方向の電界がどのように変化するかを求め、効果的に機能する条件を得ることである。
【0107】
誘電体層4は上下の基板2の内面側にそれぞれ30μm厚で設けた。ここでの計算は、ライン電極6に印加する電圧が段階的に変化するようにしており、これにしたがって横方向に電界が発生する。
【0108】
【表2】
【0109】
計算結果を図11に示す。図11は、横軸にライン電極6と著高する方向の位置、縦軸に電界強度を示している。液晶層5のライン電極ピッチが40μmよりも広くなると電極ピッチに応じた周期的な電界変動が発生する。図中50μmまでは許容できるレベルであるが、それ以上大きなライン電極ピッチでは液晶層5の配向不良が発生することが別の実験から確認された。他の誘電体層4の厚みについても同様の計算を実施したところ、各ライン電極6の配列ピッチDと誘電体層4の厚みtdeとの間の関係が、
D≦2・tde
である場合に、均一な電界が得られることが判明した。
【0110】
[実施例3]
表3に示す条件にて電界を計算した。計算の目的はライン電極の電極幅Wを変化させることで、液晶層5に印加される横方向の電界がどのように変化するかを求め、効果的に機能する条件を得ることである。
【0111】
誘電体層4は上下の基板2の内面側にそれぞれ150μm厚で設け、ライン電極ピッチを100μmに設定した。ここでの計算は、ライン電極に印加する電圧が段階的に変化するようにしており、これにしたがって横方向に電界が発生する。
【0112】
【表3】
【0113】
計算結果を図12に示す。ライン電極幅Wが広いほど電界強度が高くなる。これを10μmよりも広くとることで、100V/mm印加の電極環電位差に対して70%の効率で電界が発生していることがわかった。ここではライン電極ピッチDが100μmの場合について例を示しているが、WとDの関係として、
W>0.1・D
であるときに効率的な電界発生がなされることが判明した。
【0114】
[実施例4]
大きさ30mm×40mm、厚さ3mmのガラスの基板2の中央領域表面に0.1mmピッチ、0.01mm幅、0.2μm厚の酸化インジウム・スズ(ITO)よりなる100本の透明ライン電極6を高周波マグネトロンスパッタリング法により形成した。電極6のピッチと幅は、フォトリソ工程によりあらかじめレジスト材料でライン電極6の形成部以外をカバリングし、成膜後、レジストをリフトオフすることで所定値を得た。その後、レジストを洗浄除去した後、市販のUV硬化樹脂を基板上に滴下し、1mm厚の誘電体(硼珪酸ガラス)をその上から重ね、加圧した状態で紫外線露光し、樹脂を硬化させた。これを複合基板とし、硼珪酸ガラスの表面側を研磨し150μmとした。この複合基板に対して干渉計を用いて表面平滑性を測定したところ、測定エリア10mm×10mmの範囲で波面収差63.3nm(rms)以下の平坦性が得られた。
【0115】
この誘電体表面に、IPA(イソプロピルアルコール)に溶解したポリアミック酸を塗布し、焼結させることで、ポリイミドよりなる垂直配向膜を形成した。これを基板2とし、同条件で作製した2枚の基板2を、ITOを半ピッチずらした状態で重ね、空セルを形成した。なお両基板2のギャップを調整する為のスペーサは基板2の端部に配置し、この部分を接着剤で固定した。基板2を約90度に加熱した状態で、二枚の基板2間に強誘電性液晶(チッソ製CS1029)を毛管法にて注入して液晶層5とした。冷却後の液晶層5は透明であり、コノスコープ像観察から基板2に垂直に配向していることが確認できた.
この液晶セルを図8に示す画像表示装置に組み込み、表示画像を形成したところ、スクリーン16上にて高精細の画像が得られた。
【0116】
[比較例]
前述の実施例の比較例として、実施例4の構成において、1mm厚の硼珪酸ガラスに代えて、150μm厚の硼珪酸ガラスを用意し、これを基板2に貼り合せた後、実施例1と同様に干渉計によって表面性を測定したところ、波面収差は70.9nmであった。これによって無機透明材料を貼り合せ後、研磨する工程にてより、平坦性を確保できることがわかった。
【0117】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明は、より低い電圧で液晶を駆動させることが可能となり、低電圧化が図られ、もって、効率的な電界の発生を実現できる。
【0118】
又、電極の配置に基づく局所的な変化を抑えて、液晶の配向不良を防ぐことができる。
【0119】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、効率的に、低電圧で所定電界を得ることができ、電源への負荷、周辺電子部品への電磁ノイズ等を低減する上できわめて有用である。
【0120】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、電極として光吸収率の高い材料を用いた場合、光利用効率が低下するばかりでなく、発熱により光学素子としての特性を変動させてしまい、また、反射率の高い材料を用いた場合、光源側光学素子と多重反射を発生させる可能性がありノイズ要因となるが、本発明によればこれらの不具合を抑制できる。
【0121】
請求項4に記載の発明は、光偏向装置の低電圧化が図り、効率的な電界の発生を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である光偏向素子の全体構成の説明図である。
【図2】光偏向素子の液晶分子配向状態を模式的に示した説明図である。
【図3】光偏向素子の液晶分子配向状態を模式的に示した説明図である。
【図4】光偏向素子の液晶配向角と光軸シフト量との関係を示すグラフである。
【図5】光偏向素子の電圧と光偏向量の時間変化を示すグラフである。
【図6】光学素子におけるライン電極周辺の断面構造を説明する為の模式図である。
【図7】ライン電極の電極幅やライン電極間距離を説明する説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態である画像表示装置を説明する概念図である。
【図9】本発明の一実施例である光偏向素子の縦断面図である。
【図10】液晶層の層中央部における電界の分布を計算した結果を示すグラフである。
【図11】ライン電極ピッチと電界変動との関係を示すグラフである。
【図12】ライン電極幅と電界強度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 光学素子、光偏向素子
2 基板
4 誘電体層
5 液晶層
6 電極
13 画像表示素子
Claims (4)
- 透明な一対の基板と、
この基板間に充填されたホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶を含む液晶層と、
前記一対の基板のうち少なくとも一方に当該基板の板幅方向に間隔をあけて並べて設けられた複数本の電極と、
前記液晶層と前記電極との間に設けられた比誘電率が8の誘電体層と、
前記各電極に対して隣接する電極間で段階的に大きさの異なる電圧を印加することで光を偏向させる電圧印加手段と、を備え、
前記誘電体層は、その厚みをtdeとしたときに、
38≦tde≦150(μm)
であり、
前記複数本の電極の各電極は、その配列ピッチをDとするときに、
D≦2・tde
である、光偏向素子。 - 前記各電極は、その幅をW、配列ピッチをDとするときに、
W>0.1・D
である、請求項1に記載の光偏向素子。 - 前記各電極は、透明な材料で形成されている、請求項1又は2に記載の光偏向素子。
- 画像フィールドを時間的に更に細分割した複数個の画像サブフィールドごとに照明光を画像情報に基づいて空間光変調して画像光として出射する画像表示素子と、
この画像表示素子と同期し、前記画像サブフィールドごとに駆動される前記画像表示素子の各画素から入射されてくる画像光の光路を偏向して前記画像表示素子の見かけ上の画素数を増倍して表示する請求項1〜3のいずれかの一に記載の光偏向素子と、を備えている画像表示装置。
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