JP4773649B2 - 光偏向装置及び画像表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気信号によって光の方向を変える光偏向装置及び該光偏向装置を利用した画像表示装置に関し、例えば、プロジェクションディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイなどの電子ディスプレイ装置等に適用して好適なものである。
【0002】
最初に、本明細書において使用する用語について定義する。
本明細書において、「光偏向素子」とは、外部からの電気信号により光の光路を偏向、即ち、入射光に対して出射光を平行にシフトさせるか、或る角度を持って回転させるか、或いは、その両者を組合せて光路を切換えることが可能な光学素子を意味する。この説明において、平行シフトによる光偏向に対してそのシフトの大きさを「シフト量」と呼び、回転による光偏向に対してその回転量を「回転角」と呼ぶものとする。「光偏向デバイス」とは、このような光偏向素子を含み、光の光路を偏向させるデバイスを意味する。
【0003】
また、「ピクセルシフト素子」とは、少なくとも画像情報に従って光を制御可能な複数の画素を二次元的に配列した画像表示素子と、画像表示素子を照明する光源と、画像表示素子に表示した画像パターンを観察するための光学部材と、画像フィールドを時間的に分割した複数のサブフィールド毎に画像表示素子と光学部材の間の光路を偏向する光偏向手段とを有し、光偏向手段によりサブフィールド毎の光路の偏向に応じて表示位置がずれている状態の画像パターンを表示させることで、画像表示素子の見掛け上の画素数を増倍して表示する画像表示装置における光偏向手段を意味する。従って、基本的には、上記定義による光偏向素子や光偏向デバイスを光偏向手段として応用することが可能といえる。
【0004】
【従来の技術】
光偏向素子なる光学素子として、従来より、KH2PO4(KDP),NH4H2PO4(ADP),LiNbO3,LiTaO3,GaAs,CdTeなど第1次電気光学効果(ポッケルス効果)の大きな材料や、KTN,SrTiO3,CS2,ニトロベンゼン等の第2次電気光学効果の大きな材料を用いた電気光学デバイスや、ガラス,シリカ,TeO2などの材料を用いた音響光学デバイスが知られている(例えば、青木昌治編;「オプトエレクトロニックデバイス」、昭晃堂)。これらは、一般的に、十分大きな光偏向量を得るためには光路長を長く取る必要があり、また、材料が高価であるため用途が制限されている。
【0005】
一方で、液晶材料を用いた光偏向素子なる光学素子も各種提案されており、その数例を挙げると、以下に示すような提案例がある。
例えば、特開平6−18940号公報によれば、光空間スイッチの光の損失を低減することを目的に、人工複屈折板からなる光ビームシフタが提案されている。内容的には、2枚のくさび形の透明基板を互いに逆向きに配置し、該透明基板間に液晶層を挟んだ光ビームシフタ、及びマトリクス形偏向制御素子の後面に前記光ビームシフタを接続した光ビームシフタが提案され、併せて、2枚のくさび形の透明基板を互いに逆向きに配置し、該透明基板間にマトリクス駆動が可能で、入射光ビームを半セルシフトする液晶層を挟んだ光ビームシフタを半セルずらして多段接続した光ビームシフタが提案されている。
【0006】
また、特開平9−133904号公報によれば、大きな偏向を得ることが可能で、偏向効率が高く、しかも、偏向角と偏向距離とを任意に設定することができる光偏向スイッチが提案されている。具体的には、2枚の透明基板を所定の間隔で対向配置させ、対向させた面に垂直配向処理を施し、透明基板間にスメクチックA相の強誘電性液晶を封入し、前記透明基板に対して垂直配向させ、スメクチック層と平行に交流電界を印加できるように電極対を配置し、電極対に交流電界を印加する駆動装置を備えた液晶素子である。即ち、スメクチックA相の強誘電性液晶による電傾効果を用い、液晶分子の傾斜による複屈折によって、液晶層に入射する偏光の屈折角と変位する方向を変化できるようにしたものである。
【0007】
前記特開平6−18940号公報例においては、液晶材料にネマチック液晶を用いているため、応答速度をサブミリ秒にまで速めることは困難であり、高速なスイッチングが必要な用途には用いることはできない。
また、前記特開平9−133904号公報例においては、スメクチックA相の強誘電液晶を用いているが、スメクチックA相は自発分極を持たないため、高速動作は望めない。
【0008】
次に、ピクセルシフト素子に関して従来提案されている技術を数例挙げて説明する。
例えば、特許第2939826号に示されるように、表示素子に表示された画像を投写光学系によりスクリーン上に拡大投影する投影表示装置において、前記表示素子から前記スクリーンに至る光路の途中に透過光の偏向方向を旋回できる光学素子を少なくとも1個以上と複屈折効果を有する透明素子を少なくとも1個以上を有してなる投影画像をシフトする手段と、前記表示素子の開口率を実効的に低減させ、表示素子の各画素の投影領域が前記スクリーン上で離散的に投影される手段と、を備えた投影表示装置がある。
【0009】
前記特許第2939826号においては、偏向方向を旋回できる光学素子(旋光素子と呼ぶ)を少なくとも1個以上と複屈折効果を有する透明素子(複屈折素子と呼ぶ)を少なくとも1個以上を有してなる投影画像シフト手段(ピクセルシフト手段)によりピクセルシフトを行っているが、問題点として、旋光素子と複屈折素子とを組合せて使用するため、光量損失が大きいこと、光の波長によりピクセルシフト量が変動し解像度が低下しやすいこと、旋光素子と複屈折素子との光学特性のミスマッチから本来画像が形成されないピクセルシフト外の位置に漏れ光によるゴースト等の光学ノイズが発生しやすいこと、素子化のためのコストが大きいことが挙げられる。特に、複屈折素子に前述したようなKH2PO4(KDP),NH4H2PO4(ADP),LiNbO3,LiTaO3,GaAs,CdTeなど第1次電気光学効果(ポッケルス効果)の大きな材料を使用した場合、顕著である。
【0010】
また、特開平5−313116号公報に示される投影機においては、制御回路により、画像蓄積回路に蓄積した本来表示すべき画像を市松状に画素選択回路へサンプリングして順次空間光変調器に表示し、投影させ、さらに、制御回路により、この表示に対応させてパネル揺動機構を制御して空間光変調器の隣接画素ピッチ距離を整数分の一ずつ移動させることで、本来表示すべき画像を時間的な合成により再現するようにしている。これにより、空間光変調器の画素の整数倍の分解能で画像を表示可能にするとともに、画素の粗い空間光変調器と簡単な光学系を用いて安価に投影機を構成可能としている。
【0011】
ところが、前記特開平5−313116号公報例においては、画像表示用素子自体を画素ピッチよりも小さい距離だけ高速に揺動させるピクセルシフト方式が記載されており、この方式では、光学系は固定されているので色収差の発生が少ないが、画像表示素子自体を正確かつ高速に平行移動させる必要があるため、可動部の精度や耐久性が要求され、振動や音が問題となる。
【0012】
さらに、特開平6−324320号公報によれば、LCD等の画像表示装置の画素数を増加させることなく、表示画像の解像度を、見掛け上、向上させるため、縦方向及び横方向に配列された複数個の画素の各々が、表示画素パターンに応じて発光することにより、画像が表示される画像表示装置と、観測者又はスクリーンとの間に、光路をフィールド毎に変更する光学部材を配し、また、フィールド毎に、前記光路の変更に応じて表示位置がずれている状態の表示画素パターンを画像表示装置に表示させるようにしている。ここに、屈折率が異なる部位が、画像情報のフィールド毎に、交互に、画像表示装置と観測者又はスクリーンとの間の光路中に現れるようにすることで、前記光路の変更が行われるものである。
【0013】
前記特開平6−324320号公報例においては、光路を変更する手段として、電気光学素子と複屈折材料の組合わせ機構、レンズシフト機構、バリアングルプリズム、回転ミラー、回転ガラス等が記述されており、上記旋光素子と複屈折素子を組合せてなる方式の他に、ボイスコイル、圧電素子等によりレンズ、反射板、複屈折板等の光学素子を変位(平行移動、傾斜)させて光路を切り替える方式が提案されているが、この方式においては、光学素子を駆動するために構成が複雑となりコストが高くなる。
【0014】
また、特開平10−133135号公報によれば、回転機械要素を不要化でき、全体の小型化、高精度・高分解能化を実現でき、しかも外部からの振動の影響を受け難い光ビーム偏向装置が提案されている。具体的には、光ビームの進行路上に配置される透光性の圧電素子と、この圧電素子の表面に設けられた透明の電極と、圧電素子の光ビーム入射面と光ビーム出射面との間の光路長を変化させて光ビームの光軸を偏向させるために電極を介して圧電素子に電圧を印加する電圧印加手段とを備えている。
【0015】
前記特開平10−133135号公報例では、透光性の圧電素子を透明の電極で挟み、電圧を印加することで厚みを変化させて光路をシフトさせる方式が提案されているが、比較的大きな透明圧電素子を必要とし、装置コストがアップする等、前述の特開平6−324320号公報の場合と同様の問題点がある。
【0016】
更に、本出願人は、先に透明な一対の基板と、これら基板間に充填されたホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶と、この液晶に電界を作用させる少なくとも1組以上の電界印加手段とを備える構成とし、キラルスメクチックC相よりなる液晶を利用することにより、従来の光偏向素子における、構成が複雑であることに伴う高コスト、装置大型化、光量損失、光学ノイズを改善でき、かつ、従来のスメクチックA液晶やネマチック液晶などにおける応答性の鈍さも改善でき、高速応答が可能となるようにした「光偏向素子、光偏向デバイス及び画像表示装置」について提案していた。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術の課題を整理すると、従来のピクセルシフト素子において問題となっているのは
(1)構成が複雑であることに伴う高コスト、装置大型化、光量損失、ゴースト等の光学ノイズ又は解像度の低下、
(2)特に、可動部を有する構成の場合の位置精度や耐久性、振動や音の問題、
(3)ネマチック液晶などにおける低応答速度、
等である。
【0018】
(3)の応答速度に関し、画像表示装置におけるピクセルシフトに必要な光偏向の速度は以下のように見積ることができる。画像フィールド(時間tField)を時間的にn分割し、各n個のサブフィールド毎に画像表示素子と光学部材との間の光路を偏向してピクセルシフトのシフト位置をn箇所に定めた場合、1つのサブフィールドの時間tSFは
tSF=tField/n
で表される。この時間tSFの期間中に光偏向がなされるが、その時間をtshiftとすると、このtshiftの期間は表示が行えないため、この期間に相当する分だけ光利用効率が低下する。
【0019】
光利用効率Eは以下の式で表される。
E=(tSF−tshift)/tSF
仮に、ピクセルシフト位置nが4、画像フィールドtFieldが16.7msである場合に、光利用効率Eを90%以上確保するためには、
0.9<(16.7/4−tshift)/(16.7/4)より
tshift<0.42(ms)
となり、光偏向を0.42msで行う必要がある。通常のネマチック液晶は応答速度が数ms以上であるため、ここに示すような高速ピクセルシフトのための光学素子としては使用することはできない。
【0020】
特開平6−18940号公報に記載の発明においては、液晶材料にネマチック液晶を用いているため、応答速度をサブミリ秒にまで速めることは困難であり、ピクセルシフトに用いることはできない。一方、キラルスメクチックC相よりなる強誘電液晶ではその応答速度は十分0.42ms以下に設定することが可能である。
また、特開平9−133904号公報に記載の発明においては、スメクチックA相の強誘電液晶を用いているが、スメクチックA相は自発分極を持たないため、キラルスメクチックC相に見られるような高速動作はやはり望めない。
【0021】
そこで、本発明は、基本的には、従来の光偏向素子における問題点、即ち、構成が複雑であることに伴う高コスト、装置大型化、光量損失、光学ノイズを改善し、構成が簡単で、小型であり、光量損失、光学ノイズ、解像度低下が少なく、低コスト化を図ることができる光偏向装置およびこれらを備える画像表示装置を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、透明な一対の基板と、両基板間で液晶分子をホメオトロピック配向させる配向膜と、無電界下でキラルスメクチックC相を形成する液晶層と、両基板間で液晶層の厚さを規制する少なくとも2つ以上のスペーサと、前記液晶層に対して略平行な方向に電界を発生させる少なくとも2つ以上の電極とを有する光路偏向素子と、前記電極間の電界方向を切換え可能とする電圧印加手段とを有し、電界の印加方向を切換えることによって液晶層法線方向と電界方向の両者に略直交する方向に透過光の光路を偏向する光偏向装置において、前記スペーサの内、少なくとも2つの対向したスペーサが導電性材料からなり、該スペーサが対向する面が、光路を偏向する方向に対して略平行に配置された電極であることを特徴とし、簡単な構成の光偏向素子を提供するものである。
【0023】
請求項2の発明は、透明な一対の基板と、両基板間で液晶分子をホメオトロピック配向させる配向膜と、無電界下でキラルスメクチックC相を形成する液晶層と、両基板間で液晶層の厚さを規制する少なくとも2つ以上のスペーサと、前記液晶層に対して略平行な方向に電界を発生させる少なくとも2つ以上の電極とを有する光路偏向素子と、前記電極間の電界方向を切換え可能とする電圧印加手段とを有し、電界の印加方向を切換えることによって液晶層法線方向と電界方向の両者に略直交する方向に透過光の光路を偏向する光偏向装置において、前記光路偏向素子は、少なくとも一方の基板上の光路を含む領域に、所望の光路シフト方向に対して略平行に配置された複数本の電極ライン群を有し、前記電圧印加手段が、ある時刻における各電極ラインに印加する電圧値を段階的に異なる値に設定することを特徴とし、光路の実効的な断面積が大きな場合でも、光路全体を比較的均一に偏向することが可能な光偏向装置を提供するものである。
【0024】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記光路偏向素子は、両基板上の光路を含む領域に、所望の光路シフト方向に対して略平行に配置された複数本の電極ライン群を有していることを特徴とし、光路の実効的な断面積が大きな場合でも、光路全体を比較的均一で効率良く偏向することが可能な光偏向装置を提供するものである。
【0025】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記電極ラインが透明電極材料から成り、各基板上での透明電極ラインの位置が光路から見て交互に配置され、ある時刻における各透明電極ラインに印加する電圧値が、両基板間で交互に段階的に異なる値に設定されることを特徴とし、光路の実効的な断面積が大きな場合でも、光路全体の偏向量の均一性を更に高めるようにしたものである。
【0026】
請求項5の発明は、請求項2乃至4のいずれかの発明において、前記スペーサは光路の領域外に設けた導電性材料からなる2つの電極対であり、前記光路偏向素子の平面方向に対して該電極対の間に前記電極ライン群が設けてあり、前記電圧印加手段が、ある時刻における該電極対の一方には電極ライン群に印加された最大電圧値以上の電圧値を印加し、該電極対の他方には電極ライン群に印加された最低電圧値以下の電圧値を印加することを特徴とし、光路の実効的な断面積が大きな場合でも、光路全体を均一に偏向することが可能な光偏向装置を提供するようにしたものである。
【0027】
請求項6の発明は、請求項2乃至5のいずれかの発明において、前記電極ライン群を形成した基板面の上に誘電体層を設け、該誘電体層と液晶層の間に配向膜を設けたことを特徴とし、光路偏向素子の面積が大きい場合でも、液晶層内の平面方向での電界強度を均一化し、均一な光路偏向効果を得ることができるようにしたものである。
【0028】
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記誘電体層が前記配向膜であることを特徴とし、光路偏向素子の面積が大きい場合でも、比較的簡単な層構成で、液晶層内の平面方向での電界強度を均一化し、均一な光路偏向効果を得ることができるようにしたものである。
【0029】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかの発明において、前記光路偏向素子への入射光の偏光方向を光路の偏向方向と一致させる偏光方向制御手段を有することを特徴とし、入射光が無偏向の光であっても確実に光路を偏向するようにしたものである。
【0030】
請求項9の発明は、請求項8の発明において、前記光路偏向素子の出射光の偏光面を略直角に回転させる偏光面回転手段と、偏光面回転後の出射光を入射光とする第二の光路偏向素子を有し、前記光路偏向素子と該第二の光路偏向素子の液晶層法線方向が略一致し、両光路偏向素子の電界方向が略直交するように配置されてなることを特徴とし、光路を二次元方向に偏向可能としたものである。
【0031】
請求項10の発明は、画像情報に従って光を制御可能な複数の画素が二次元的に配列した画像表示素子と、画像表示素子を照明する光源および照明装置と、画像表示素子に表示した画像パターンを観察するための光学装置と、画像フィールドを時間的に分割した複数のサブフィールドで形成する表示駆動手段と、各画素からの出射光の光路を偏向する前記請求項1から9に記載の光偏向装置とを有し、サブフィールド毎の光路の偏向状態に応じて表示位置がずれている状態の画像パターンを表示することで、画像表示素子の見かけ上の画素数を増倍して表示することを特徴とし、画素数の少ない画像表示素子を用いて、見かけ上高精細で光利用効率の高い画像表示装置を提供するようにしたものである。
【0032】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第一の実施の形態を説明するための図で、図1(A)は上面図、図1(B)は平面図、図1(C)は側断面図(図1(A)のC−C線断面図)で、図中、1は光偏向素子を示す。この光偏向素子1においては、まず、図1(C)の側面図に示すように、一対の透明な基板2,3が対向配置させて設けられている。そして、少なくとも一方、ここでは基板2側内面には配向膜4が形成されており、この配向膜4と他方の基板3との間にはキラルスメクチックC相よりなる強誘電液晶なる液晶層5が充填されている。
【0033】
このような一対の基板2,3及び液晶層5を有する構造体に対して、目的とする光偏向方向に対応させて、図1(B)の正面図に示すように、電極6a,6bによる一対の電極対が配置され、図1(C)に示すように、電源7に接続されている。電極対6a,6bは図1(A)の上面図に示すように、電界印加手段および液晶層の厚さを規制するスペーサとしても機能するもので、光路と重ならない位置で当該光偏向素子1の液晶回転軸に対して略垂直方向に電界ベクトルが向くように設置される。光偏向による光の進行方向を3方向以上に振りたい場合は、入射光L1の偏向方向をその偏向方向に対応させて回転させるとともに、電極対6a,6bをやはりそれらに対応させ複数設ければよい。入射光L1は、電極対6a,6bより形成される電界の方向(図1(A)において、白抜き矢印)によって偏向を受け、第1の出射光Lo1若しくは第2の出射光Lo2の何れかの光路をとる。
【0034】
ここで、液晶層5に関して説明する。「スメクチック液晶」は液晶分子の長軸方向を層状に配列してなる液晶層である。このような液晶に関し、層の法線方向(層法線方向)と液晶分子の長軸方向とが一致している液晶を「スメクチックA相」、法線方向と一致していない液晶を「スメクチックC相」と呼んでいる。スメクチックC相よりなる強誘電液晶は、一般的に外部電界が働かない状態において各層毎に液晶ダイレクタ方向が螺旋的に回転しているいわゆる螺旋構造をとり、「キラルスメクチックC相」と呼ばれる。また、キラルスメクチックC相反強誘電液晶は各層毎に液晶ダイレクタが対向する方向を向く。これらのキラルスメクチックC相よりなる液晶は、不斉炭素を分子構造に有し、これによって自発分極しているため、この自発分極Psと外部電界Eにより定まる方向に液晶分子が再配列することで光学特性が制御される。なお、本実施の形態等では、液晶層5として強誘電液晶を例にとり光偏向素子1の説明を行うが、反強誘電液晶の場合にも同様に使用することができる。
【0035】
キラルスメクチックC相よりなる強誘電液晶の構造は、主鎖、スペーサ、骨格、結合部、キラル部などよりなる。主鎖構造としてはポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリオキシエチレンなどが利用可能である。スペーサは分子回転を担う骨格、結合部、キラル部を主鎖と結合させるためのものであり、適当な長さのメチレン鎖等が選ばれる。また、カイラル(キラル)部とビフェニル構造など剛直な骨格とを結合する結合部には−COO−結合等が選ばれる。
【0036】
本実施の形態の光偏向素子1においては、キラルスメクチックC相よりなる強誘電液晶5は配向膜4により基板2,3面に垂直に分子螺旋回転の回転軸が向いており、いわゆるホメオトロピック配向をなす。このようなホメオトロピック配向のための配向法としては、従来より行われている方法を適用することができる。即ち、(1)ずり応力法、(2)磁場配向法、(3)温度勾配法、(4)SiO斜法蒸着法、(5)光配向法等が挙げられる(例えば、竹添、福田「強誘電性液晶の構造と物性」コロナ社、p235参照)。
【0037】
本実施の形態の光偏向素子1の特徴の1つは、構成が簡単で製造コストが抑制できる点にある。また、キラルスメクチックC相はスメクチックA相やネマチック液晶と比較して極めて高速な応答性を有しており、サブmsでのスイッチングが可能である点も特徴である。特に、電界方向に対して液晶ダイレクタ方向が一義的に決定されるため、スメクチックA相よりなる液晶に比べダイレクタ方向の制御が容易であり、扱いやすい。
【0038】
ホメオロトピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶層5は、ホモジニアス配向(液晶ダイレクタが基板面に平行に配向している状態)をとる場合に比べて、液晶ダイレクタの動作が基板2,3からの規制力を受けにくく、外部電界方向の調整で光偏向方向の制御が行いやすく、必要電界が低いという利点を有する。また、液晶ダイレクタがホモジニアス配向している場合、電界方向だけでなく基板面に液晶ダイレクタが強く依存するため、光偏向素子の設置についてより位置精度が求められることになる。逆に、本実施の形態のようなホメオロトピック配向の場合は、光偏向に対して光偏向素子1のセッティング余裕度が増す。これらの特徴を活かす上で、厳密に螺旋軸を基板面に垂直に向ける必要はなく、或る程度傾いていても差し支えない。液晶ダイレクタが基板2,3からの規制力を受けずに2つの方向を向くことが可能であればよい。
【0039】
次に、図2及び図3を参照して、本実施の形態の光偏向素子1の動作原理について説明する。図2は、図1に示した構成に関して液晶分子の配向状態を模式的に示したものである。図2では、便宜上紙面表裏方向に電圧印加されるように描いており、電界は紙面表裏方向に発生するものとする。また、電界方向は目的とする光の偏向方向に対応して電源7により切換えられる。また、当該光偏向素子1に対する入射光は直線偏光であり、その偏向方向は図2中上下の矢印に示す通り上下方向であって、スペーサ兼電極6a,6bは、その偏向方向に電界方向が直交するように、対向配置されている。また、図示しないが、電極6a,6bからの漏洩電界が当該光偏向素子1周辺の機器に悪影響を及ぼさないように電磁シールドを設けるのが好ましい。
【0040】
図2において、XYZ直交座標系を、図示の通りにとったとき、液晶層5内のXZ断面において、図3に示すように、液晶ダイレクタ8は、その電界方向によって第1の配向状態81又は第2の配向状態82の何れかの状態(図3(B)参照)をとって分布する。θは液晶回転軸からの液晶ダイレクタ8の傾き角であり、以後、単に「傾き角」と呼ぶ。液晶分子の自発分極Psが正でありY軸正方向(紙面上向き)に電界Eがかかっているものとすると、液晶ダイレクタ8は液晶回転軸が略基板垂直方向であるためXZ面内にある。液晶分子の長軸方向の屈折率をne、短軸方向の屈折率をnoとすると、入射光として、偏向方向をY軸方向に持つ直線偏光を選びX軸正方向に入射光が進むとき、光は液晶層5内で常光として屈折率noを受けて直進し、図3(A)中のa方向に進む。即ち、光偏向は受けない。
【0041】
一方、偏向方向がZ軸方向である直線偏光が入射するとき、入射方向の屈折率は液晶ダイレクタ8の方向及び屈折率no,neの両者から求められる。より詳しくは、屈折率no,neを主軸に持つ屈折率楕円体において楕円体中心を通過する光の方向との関係から求められるが、ここでは、詳細は省略する。光は屈折率no,ne及び液晶ダイレクタ8の方向(傾き角θ)に対応した偏向を受け、図3(A)中のb(第1の配向状態の場合)に示す方向にシフトする。
【0042】
液晶層5の厚み(ギャップ)をdとするときシフト量Sは以下の式で表される(例えば、「結晶光学」応用物理学会、光学懇話会編、p198参照)。
S=[(1/no)2−(1/ne)2]sin(2θ・d)
÷[2((1/ne)2sin2θ+(1/no)2cos2θ)] ………式1
また、電界方向を反転させた時、液晶ダイレクタ8は、図3において、X軸を中心とした線対称の配置(第2の配向状態)を取り、偏向方向がZ軸方向である直線偏光の進行方向は、図3(A)中のb′に示す通りとなる。
従って、この直線偏光に対して液晶5に作用させる電界方向を制御することで、bとb′との2位置、即ち、2S分の光偏向が可能となる。
【0043】
例えば、液晶5の材料の代表的物性値(no=1.6,ne=1.8)に対して得られる光偏向量について光偏向量Sを計算した場合、液晶ダイレクタ8の傾き角θが22.5°、液晶の厚みが32μmのとき、2S=5(μm)の偏向量が得られる。また、ホメオトロピック配向強誘電液晶において、約700V/cmの電界に対して0.1msの応答速度が報告されており(Ozaki 他、J.J.Appl.Physics、Vol.30、No.9B、pp2366−2368(1991)参照)、サブmsオーダの十分高速な応答速度が得られる。
また、キラルスメクチックC相よりなる液晶においては、傾き角θは温度Tにより変化し、相転移点をTcとすると、θ∝(T−Tc)βなる関係がある。βは材料により異なるが0.5程度の値をとる。この特性を利用した温度制御で光偏向量を制御することも可能である。
【0044】
例えば、仮に、傾き角θとして上記の22.5°を設定し、これに対応する温度をTθ =22.5 °とすれば、T>Tθ =22.5 °ではθ<22.5°であり、T<Tθ =22.5 °ではθ>22.5°であるため、温度により傾き角θを制御でき、これによって光偏向量を制御できることとなる。また、位置制御に関しては、電界による微調を同様に行うことができ、温度、電界或いはその両者の組合せにより適切な光偏向を達成できる。
【0045】
図1では、電極6aから6bの向きに電界が印加されると第一の出射光Lo1となり、電極6bから6aの向きに電界が印加されると第二の出射光Lo2となる。交流電源7により電界の向きを高速に切換えることで、光路をシフトすることが出来る。また、液晶層の厚さを規制するスペーサの対向面を光路を偏向する方向に対して平行に配置し、このスペーサが液晶層に平面方向に電界を印加する電極を兼ねているので、比較的簡単な構成の光偏向素子を実現できる。
【0046】
上記の構成では、素子の両端部にのみ電極を設けているため、素子の有効面積が大きくなり電極間距離が大きくなると、電極の幅に比べて電極間の距離が十分に大きくなるため、液晶層内に均一な電界強度を印加することが困難になる。したがって、液晶層平面方向での電界強度が不均一となり、素子内で均一な光路偏向を得ることが困難になる。
【0047】
図4は、本発明の第二の実施の形態を説明するための図で、図4(A)は上面図、図4(B)は正面図、図4(C)は側断面図(図3(A)のC−C線断面図)で、図1の構成に比べて素子の幅を大きく設定し、少なくとも一方の基板表面に電極ライン9を設けている。この場合、素子両端部のスペーサ10が電極を兼ねている必要は無い。また、電極ライン9を設けた基板面上にも配向膜4を設けても良い。図4では、8本の電極ライン9を設けているが、図中、左端の電極ラインから印加電圧が段階的に増加あるいは減少していくように電圧印加手段11が構成されている。例えば、電源7から供給される電圧を7つの抵抗12によって分割し、各抵抗間を各電極ライン9に接続することで、段階的な電圧値を印加することが出来る。段階的な電圧印加方法は、この構成に限らず、複数の電源を各電極に直接接続する構成などでも良い。また、電極ラインの本数やライン幅、ライン間隔、各電極ライン間の電位差などは所望の光路サイズや光路偏向量などに基づき適宜設定される。この構成では、比較的幅の広い液晶層の内部に強制的に電位勾配を作るので、巨視的には素子の全面で比較的均一な電界強度を得ることが出来る。
【0048】
しかしながら、電極ライン幅の部分は電位が等しいことから、微視的にみると電極ライン近傍では所望の電位勾配は得らず、所望の光路偏向効果が得られない。したがって、本構成では電極ライン近傍以外を有効領域とする光路偏向素子が得られる。この場合、電極付近を透過する光を遮断する遮光部材を設けるか、入射光が予め有効領域に対応して分されていることが好ましい。例えば、画像表示装置に応用する場合、画素ピッチと電極ラインピッチを一致させ、電極ライン部分を画素間に対応させることが好ましい。図4では7本の光路を電極ライン間に対応して入射させ、電圧印加手段により電界の方向を切換えることで、7本の光路を同時に同一方向にシフトさせることが出来る。
【0049】
従って、図4に示した例では、光路偏向素子の所望の光が透過する光路領域に複数本の電極ラインを設け、各電極ラインに印加する電圧値を端部側から段階的に変化させ、光路の実効的な断面積が大きな場合でも、電極ライン群の領域全体に渡って液晶層内の平面方向に巨視的に緩やかな電位勾配を作ることが出来る。したがって、光路領域全体に渡って液晶層内に所望の電界強度を形成した有効部分を少なくとも離散的に得ることが出来る。この有効部分のみを利用することで、断面積の大きな光路全体を比較的均一に偏向することが出来る。
【0050】
図4に示した例では、構成の簡略化のため、一方の基板上にのみ電極ラインを設けているが、この構成では液晶層の膜厚方向に電界が生じる場合がある。液晶層5の膜厚方向の電界が大きくなると、液晶ダイレクタ方向が液晶層の厚さ方向で不均一になり、液晶膜厚に対して所望の光路偏向量が得られなくなる。そこで、図5に示すような形態を提案する。
【0051】
図5は、本発明の第三の実施の形態を説明するための図で、図5では、両基板上の光路を含む領域に、電極ライン9が向かい合うように設けられている。ここでは、配向膜4が両基板上に設けられているが、片面でも良い。図示しない電圧印加手段により、端部の電極ライン9から段階的に電圧を印加する。この時、正対する電極対には同電位が印加されるように設定される。液晶層の上下界面に同電位が印加されるので、液晶層の膜厚方向での電位分布すなわち電界強度が小さくなり、液晶層全域に渡って所望の液晶分子の傾きが得られ、効率の良い光路偏向が行える。すなわち、両側の基板に電極ラインを有しているので、光路の実効的な断面積が大きな場合でも、液晶層の厚さ方向の電位分布が比較的均一になり、液晶層厚さ方向の電界強度を小さく出来るので、電界印加時の液晶分子のダイレクター方向が液晶層の厚さ方向で比較的均一になり、光路全体を比較的均一で効率よく偏向することができる。
【0052】
上記の例では、電極ライン本数が比較的少ないが、比較的大きな面積の光路偏向素子で、より均一な電界強度分布を得ようとする場合には、電極ラインの幅を出来る限り細くし、ラインピッチも狭くすることが好ましい。しかし、ライン本数自体が多くなり、段階的な電圧印加手段が複雑になり、基板からの配線の取出しが困難になるという問題も生じる。したがって、一枚の基板上でのライン本数を少なくすることが好ましい。そこで、実用的にはラインピッチの間隔を広めに設定する事になるが、ラインピッチ間隔が広くなると、ライン間の中間付近に両ラインの各設定電位よりも低い電位部分が発生する場合がある。すなわち、ライン間の一部に逆方向の電界が作用してしまう部分が発生してしまう。
【0053】
図6は、本発明の第四の実施の形態を説明するための図で、図6(A)は上面図、図6(B)は正面図で、図6の構成では、電極ライン群が両基板上に形成され、各基板上での電極ライン9の位置が交互に配置されている。そして、図6(B)に示す正面図中の左端の電極ラインから印加電圧が段階的に増加あるいは減少していくように、両基板間で交互に段階的に異なる値に設定する電圧印加手段11が構成される。図6では、図4と同様に、直列抵抗12による方式を示しているが、この方式に限られない。本構成では、片側の電極ライン間の中間付近での所望の電位を他方の基板の電極ラインで強制的に印加しているので、前述したような逆電界の発生を防止できる。また、電極ライン近傍でも反対側基板付近の電極ライン間での電位差によって電界が発生するため、電極ライン部も光路偏向効果を得ることが出来る。そこで、本実施の形態では、電極ラインをITOなどの透明電極材料で形成することが好ましい。透明電極ライン上も光路偏向領域として機能できるので、断面積の大きな光路を比較的均一に偏向することが出来る。また、一枚の基板上でのライン本数を少なく設計出来るので、配線の接続などが比較的容易になる。
【0054】
上述のように、電極ラインの間隔が広いと、ライン間の中間付近に電位が低い部分が発生し、逆方向の電界が作用してしまうが、上下の基板上で電極ラインを交互に配置し、電圧値も交互に変化するように印加することで、光路の実効的な断面積が大きな場合でも、液晶層内の面方向での電位変化が比較的均一になり、逆方向電界の発生を低減でき、更には、電極を透明材料とすることで、電極ライン上も光路偏向領域として機能できる。したがって、断面積の大きな光路を比較的均一に偏向することが出来る。
【0055】
図7は、本発明の第五の実施の形態を説明するための図で、図7では図4の構成のスペーサを導電性材料からなる電極対13a,13bとし、このスペーサ兼電極対13a,13bの一方には電極ライン群に印加された最大電圧値以上の電圧値を印加し、電極対の他方には電極ライン群に印加された最低電圧値以下の電圧値を印加する。図7の例では、両端のスペーサ兼用の電極に接続する電源7bを独立して設けているが、電極ライン群に接続する電源7aと共通でも良い。両端に印加する電圧値は素子周辺部への漏れ電界などの影響を考慮して設定される。極性の切換えタイミングは、電極ライン9への印加電圧の極性切換えに同期される。電極ライン群による液晶層内平面方向での電位勾配が不均一となるような設定であっても、両端のスペーサ兼用の電極間に補助的な電圧を印加することで、液晶層内平面方向での電位勾配が滑らかになるので、断面積の大きな光路を比較的均一に偏向することが出来る。なお、電極ライン上も光路偏向領域として機能させるために、透明電極ラインであることが好ましい。
【0056】
このように、光路領域内の電極ラインによる段階的な電位印加に加えて、光路領域外部のスペーサ部材を兼ねた電極により、光路の実効的な断面積が大きな場合でも、補助的な電圧を印加して液晶層内平面方向での電位勾配を滑らかにするので、断面積の大きな光路を比較的均一に偏向することが出来る。
【0057】
図8は、本発明の第六の実施の形態を説明するための図で、図示のように、電極ライン群を形成した基板2,3の上に誘電体層14を設け、誘電体層14と液晶層5の間に配向膜4を設けたもので、誘電体層14としては、ガラスや樹脂など透明性の高いものを用いることが出来る。また、誘電体層14と液晶層5の間にホメオトロピック配向用の配向膜を設けるため、配向膜の形成時に誘電体層を劣化させないような形成方法を設定することが好ましい。特に、誘電体層および配向膜が樹脂の場合、両者の塗布溶媒などを最適化しておく必要が有る。電極ライン9の形成面と液晶層5との間に誘電体層14を挟むことで、電極ライン9に印加した不連続な電位分布が鈍り、液晶層内の平面方向での電位勾配が均一になる。
【0058】
したがって、液晶層内平面方向への電界強度分布が均一になり、均一な光路偏向を得ることが出来る。本構成でもスペーサを導電性材料からなる電極対13a,13bとすることが好ましい。なお、電極ライン上も光路偏向領域として機能させるために、透明電極ラインであることが好ましい。但し、本構成では、素子の作成プロセスが複雑になるという問題がある。
【0059】
図9は、本発明の第七の実施の形態を説明するための図で、図9では電極ラインを設けた基板上に比較的厚めの配向膜4を設け、配向膜4に前記誘電体層の機能を持たせるようにしている。素子の層構成が簡単なため、製造プロセスを簡略化できる。なお、電極ライン上も光路偏向領域として機能させるために、透明電極ラインであることが好ましい。
【0060】
以上に説明した第一から第七の実施の形態では、光路の偏向方向、すなわち電界印加時の液晶分子の傾斜方向に平行な偏向方向の直線偏光のみが光路の偏向を受け、これに直交した直線偏光は直進したままである。したがって、無偏光の光を入射した場合、出射光には偏向を受けない成分を含むため、光路偏向の有無に対するコントラストが低下してしまう。
【0061】
そこで、本発明の第八の実施の形態では、光路偏向素子への入射光の偏光方向を光路の偏向方向と一致させる偏光方向制御手段を設ける。偏光方向制御手段としては、直線偏光板を用いることが出来る。直線偏光板の偏向方向を透明電極ラインあるいはスペーサ兼用電極の長手方向に平行に合わせて、素子の入射面側に設置する。入射光が無偏光の場合でも、液晶分子の傾斜による光路偏向作用を受けない光成分をカットするので、確実に光路偏向による光スイッチングを行うことが出来る。光路の偏向方向、すなわち電界印加時の液晶分子の傾斜方向に平行な偏向方向の光のみを入射するので、偏向されない光の発生を防止し、確実な光路偏向を実現できる。
【0062】
図10は、本発明の第九の実施の形態を説明するための図で、図10に示す実施の形態は、前述した実施の形態のように構成された2つの光偏向素子1A,1Bと1/2波長板15とを組合わせて構成された光偏向素子16に関する。図10では、スペーサや透明電極ライン、配向膜などは省略してある。光偏向素子1A,1Bは各々の電極対6a,6bによる電界発生方向を直交させて光進行方向に直列に配列されており、これらの光偏向素子1A,1B間に1/2波長板15が配設されている。1/2波長板15は通常市販されている可視光用のものをそのまま適用できる。この光偏向素子に入射する光は、図10に示す通り、Z軸方向に偏向方向を有しており、光進行方向に対して前段側の光偏向素子1Aにおいて上下方向(Z軸方向)に偏向を受けた後、1/2波長板15によって偏向方向を90°回転させてY軸方向の偏向方向とすることで、後段の光偏向素子1Bで左右方向(Y軸方向)の偏向を受ける。このような光偏向素子16によれば、光偏向素子1Aにおいて上下方向(Z軸方向)に2位置、光偏向素子1Bにおいて左右方向(Y軸方向)に2位置の光シフトが行われるため、素子全体としては合計4位置に光をシフトさせることが可能となる。
【0063】
図11は、本発明の第十の実施の形態を説明するための図で、本実施の形態は、画像表示装置への適用例を示す。図11において、21はLEDランプを2次元アレイ状に配列した光源であり、この光源21からスクリーン26に向けて発せられる光の進行方向には拡散板22、コンデンサレンズ23、画像表示素子としての透過型液晶パネル24、画像パターンを観察するための光学部材としての投射レンズ25が順に配設されている。27は光源21に対する光源ドライブ部、28は透過型液晶パネル24に対するドライブ部である。ここに、透過型液晶パネル24と投射レンズ25との間の光路上にはピクセルシフト素子として機能する光偏向手段30が介在されており、ドライブ部31に接続されている。このような光偏向手段30として、前述したような光偏向素子1が用いられている。
【0064】
光源ドライブ部27で制御されて光源21から放出された照明光は、拡散板22により均一化された照明光となり、コンデンサレンズ23により液晶ドライブ部28で照明光源と同期して制御されて透過型液晶パネル24をクリティカル照明する。この透過型液晶パネル24で空間光変調された照明光は、画像光として光偏向手段30に入射し、この光偏向手段30によって画像光が画素の配列方向に任意の距離だけシフトされる。この光は投射レンズ25で拡大されスクリーン26上に投射される。
【0065】
ここに、光偏向手段30により画像フィールドを時間的に分割した複数のサブフィールド毎の光路の偏向に応じて表示位置がずれている状態の画像パターンを表示させることで、透過型液晶パネル24の見掛け上の画素数を増倍して表示する。このように光偏向手段30によるシフト量は透過型液晶パネル24の画素の配列方向に対して2倍の画像増倍を行うことから、画素ピッチの1/2に設定される。シフト量に応じて透過型液晶パネル24を駆動する画像信号をシフト量分だけ補正することで、見掛け上高精細な画像を表示することができる。この際、光偏向手段30として、前述した各実施の形態のような光偏向素子を用いているので、光の利用効率を向上させ、光源の負荷を増加することなく観察者により明るく高品質の画像を提供できる。光偏向位置制御を、当該光偏向素子1における電極対6a、6bによる電界印加方向及び電界強度により行うことで、適切なピクセルシフト量が保持され良好な画像を得ることができる。
【0066】
(実施例1)
大きさ3cm×4cm、厚さ3mmのガラス基板の表面をシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製AY43−021)で処理して垂直配向膜を形成した。厚さ50μm、幅1mm、長さ3cmの二本のアルミ電極シートをスペーサとして、垂直配向膜を内面にして二枚のガラス基板を張り合わせた。2本のアルミ電極シートは平行で、その間隔は1mmとした。基板を約90度に加熱した状態で、二枚の基板間に強誘電性液晶(チッソ製CS1029)を毛管法にて注入した。冷却後、接着剤で封止し、図1に類似の光路偏向素子を作成した。光路偏向素子の入射面側に5μm幅のライン/スペースのマスクパターンを設け、このマスクパターンを通して直線偏光で照明した。直線偏光の向きは、アルミ電極シートの長手方向と同一に設定した。
【0067】
マスクパターンを透過した光を光路偏向素子の2本のアルミ電極シートの間を通して顕微鏡で観察した。無電界時にはマスクパターンがそのまま観察された。二本のアルミ電極シートの一方を接地し、もう一方に+100Vの電圧を印加したところ、ライン/スペースパターンがアルミ電極シートの長手方向に約2.5μmシフトして観察された。マスクパターンや光路偏向素子、顕微鏡は機械的に静止しているので、電気的に光路シフトすることが確認できた。もう一方に−100Vの電圧を印加したところ、逆方向に約2.5μmシフトした。パルスジェネレータと高速パワーアンプを用いて、±100Vの矩形波電圧を印加したところ、ピーク対ピークで約5μmの光路シフトが確認できた。ライン/スペースの幅が5μmであるため、あたかもラインとスペースの明暗が反転するように観察された。すなわち、5μm幅のスペース部分をライトバルブのピクセルとすれば、簡単な構成の光路偏向素子により、一つピクセルが見かけ上2つのピクセルに増倍することを確認できた。
【0068】
また、素子の温度を約40℃に加熱して応答速度を測定した結果、約0.3msecであり、ネマチック液晶に比べて充分速いことを確認した。なお、応答速度の確認は、直線偏光板のクロスニコル中に素子の電極方向を45度回転させ、かつ、素子を光路に対して10度程度傾斜させた状態で、透過光量の時間変化を測定して求めた。
【0069】
また、この素子の液晶層内の平面方向での電位分布および電界分布を差分法による二次元電界シミュレーションで求めた。計算のメッシュサイズは縦横10μmとし、液晶層の比誘電率を10、ガラス基板の比誘電率を8とした。計算上、配向膜の存在は省略した。液晶層中央部の電位分布を図12に、液晶層中央部の横方向の電界強度を図13に示す。両端の電極付近では電界強度が大きいが、中央付近は比較的均一な電界強度が得られている。
【0070】
(比較例1)
二本のアルミ電極シートの間隔を2mmとし、印加電圧を200Vとした以外は実施例1と同様にした。その電極間の平均的な電界強度は100V/mmで実施例1と同様であるが、接地側のライン電極から0.5mm付近での光路シフト量が3μm程度と少なかった。その部分では応答速度も約0.5msecと遅かった。ここで、実施例1と同様な計算条件で二次元電界シミュレーションを行った結果、図14のように液晶層中央部での横方向の電界強度の不均一性がより一層大きくなっており、特に接地電極から0.5mm付近で小さくなっていることが分かった。実施例1の構成では、電極間の距離が大きな場合には不利であることが分かった。
【0071】
(実施例2)
大きさ3cm×4cm、厚さ3mmのガラス基板の表面にアルミ蒸着による電極ラインを作成した。ライン幅10μm、ラインピッチ100μm、ライン長さ2cmとし、幅2mmの中に20本のアルミ電極ラインを形成した。ラインの一端は電源からの接点を得るために幅とピッチを大きく作成した。アルミ電極ライン上および電極の無い基板をシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製AY43−021)で処理して垂直配向膜を形成した。厚さ50μm、幅1mm、長さ3cmのマイラーシートをスペーサとして、垂直配向膜を内面にしてライン電極有りと無しの二枚のガラス基板を張り合わせた。2本のマイラーシートは平行で、その間隔は2mmとした。基板を約90度に加熱した状態で、二枚の基板間に強誘電性液晶(チッソ製CS1029)を毛管法にて注入した。冷却後、接着剤で封止し、図4に類似の光路偏向素子を作成した。光路偏向素子の入射面側に5μm幅のライン/スペースのマスクパターンを設け、このマスクパターンを通して直線偏光で照明した。直線偏光の向きは、アルミ電極ラインの長手方向と同一に設定した。
【0072】
マスクパターンを透過した光を光路偏向素子のアルミ電極ラインの間の中央部近傍を通して顕微鏡で観察した。無電界時にはマスクパターンがそのまま観察された。20本のアルミ電極ラインの一端に導線を接続し、図4のような直列抵抗の各抵抗間に接続した。各抵抗値は1MΩとし、19個を直列に接続した。直列抵抗の両端にパルスジェネレータと高速パワーアンプを用いて、±200Vの矩形波電圧を印加したところ、ピーク対ピークで約4.5μmの光路シフトが確認できた。全てのアルミ電極ライン間でも同様な光路シフト量と約0.35msecの応答速度が確認できた。
【0073】
実施例1と同様な計算条件で二次元電界シミュレーションを行った結果、液晶層中央部では図15および図16に示す電位分布および電界分布が得られた。図16では、電界強度の強弱が見られるが、上記構成では電界強度の強い部分のみを光路として用いているため、2mm幅の領域の中で離散的ではあるが、均一な光路偏向領域を得ることが出来たと考えられる。
【0074】
(実施例3)
図5に示したように、上下両基板に20本のアルミ電極ラインを設け、両基板のアルミ電極ラインが光路方向に一致させた以外は実施例2と同様にした。正対するアルミ電極ラインには同一電位が印加されるように、両基板のアルミ電極ラインからの配線を19個の直列抵抗間に接続した。直列抵抗の両端にパルスジェネレータと高速パワーアンプを用いて、±200Vの矩形波電圧を印加したところ、全てのアルミ電極ライン間でほぼ均一な約5μmの光路シフト量と約0.3msecの応答速度が確認できた。
【0075】
実施例2と同様な計算条件で二次元電界シミュレーションを行った結果、液晶層中央部では図17に示す電界分布が得られた。これは、図16の横方向で電界分布とほぼ同様であるが、膜厚方向での電位および電界の均一性が向上したために、実施例2に比べて光路シフト量が大きく、応答速度が大きくなった。
【0076】
(実施例4)
両基板上の電極ラインをITO透明電極材料に変更し、図6に示したように、両基板の透明電極ラインが光路方向に交互に配置した以外は実施例3と同様にセルを作成した。
実施例3で用いた抵抗値の半分の抵抗を用い、二倍の38個を直列に接続し、各抵抗間に両基板の透明電極ラインからの配線を交互に接続した。直列抵抗の両端にパルスジェネレータと高速パワーアンプを用いて、±200Vの矩形波電圧を印加したところ、2mm幅の光路偏向素子部の両端部から約0.2mm以外の領域では、透明電極ライン上でも約5μmの光路シフト量と約0.3msecの応答速度が確認できた。この構成では、透明電極ライン間だけでなく、ライン上でも光路シフト効果が得られた。
【0077】
実施例4と同様な計算条件で二次元電界シミュレーションを行った結果、液晶層中央部では図18および図19に示す電圧分布および電界分布が得られた。この構成では、スペーサ近傍で低電界あるいは逆電界が発生していることが分かった。しかし、それ以外では、電界強度の振幅が見られるものの、平均的には比較的均一な電界強度が得られていることが分かった。
【0078】
(実施例5)
マイラーシートのスペーサ部材を実施例1と同様なアルミ電極シートにして、図7に示したように、電圧を印加可能とした以外は実施例4と同様にした。直列抵抗の両端およびアルミ電極シートに、パルスジェネレータと高速パワーアンプを用いて、±200Vの矩形波電圧を印加したところ、2mm幅の光路偏向素子部の全領域で約5μmの光路シフト量と約0.3msecの応答速度が確認できた。
【0079】
実施例5と同様な計算条件で二次元電界シミュレーションを行った結果、液晶層中央部では図20および図21に示す電圧分布および電界分布が得られた。この構成では、スペーサ近傍でも比較的均一な電界が発生していることが分かった。
【0080】
(実施例6)
実施例5と同様な基板を用いて、ITO透明電極ラインの形成面にハードコート処理を施した厚さ50μmのマイラーシートを接着した。マイラーシート上に市販の垂直配向液晶用の配向膜を塗布して基板を得た。実施例5と同様にセルを作成し、各ITO透明電極ラインを直列抵抗に接続した。直列抵抗の両端およびアルミ電極シートに、パルスジェネレータと高速パワーアンプを用いて、±200Vの矩形波電圧を印加したところ、2mm幅の光路偏向素子部の全領域で約5μmの光路シフト量と約0.3msecの応答速度が確認できた。
【0081】
マイラーシートの比誘電率を3.0とし実施例5と同様な計算条件で二次元電界シミュレーションを行った結果、液晶層中央部では図22および図23に示す電圧分布および電界分布が得られた。この構成では、スペーサ近傍で電界強度かの増加が見られるものの、素子の中央付近では非常に均一な横方向電界が発生していることが分かった。
【0082】
(実施例7)
図11に示したような画像表示装置を作成した。画像表示素子として対角0.9インチXGA(1024×768ドット)のポリシリコンTFT液晶パネルを用いた。画素ピッチは縦横ともに約18μmである。画素の開口率は約50%である。また、画像表示素子の光源側にマイクロレンズアレイを設けて照明光の集光率を高める構成とした。本実施例では、光源としてRGB三色のLED光源を用い、上記の一枚の液晶パネルに照射する光の色を高速に切換えてカラー表示を行う、いわゆるフィールドシーケンシャル方式を採用している。
【0083】
本実施例では、画像表示のフレーム周波数が60Hz、ピクセルシフトによる4倍の画素増倍のためのサブフィールド周波数が4倍の240Hzとする。一つのサブフレーム内をさらに3色分に分割するため、各色に対応した画像を720Hzで切換える。液晶パネルの各色の画像の表示タイミングに合わせて、対応した色のLED光源をON/OFFすることで、観察者にはフルカラー画像が見える。
【0084】
光偏向素子の基本構成は実施例6と同様であるが、透明電極ラインの本数を10倍の200本とし、有効領域幅も10倍の20mmとした。スペーサ兼用アルミ電極シートの厚さを100μmとして、光路シフト量が約9μmになるように設定した。また、直列抵抗の数も10倍にし、直列抵抗の両端およびアルミ電極シートに、パルスジェネレータと高速パワーアンプを用いて、±2000Vの矩形波電圧を印加可能とした。この素子を2枚用い、入射側を第一の光路偏向素子、出射側を第二の光路偏向素子とした。互いの透明電極ラインの方向が直交し、画像表示素子の画素の配列方向に一致するように配置した。
【0085】
さらに、第一および第二の光路偏向素子の間に偏光面回転素子を設けた。偏光面回転素子は、薄いガラス基板(3cm×4cm、厚さ0.15mm)上にポリイミド系の配向材料をスピンコートし、約0.1μmの配向膜を形成した。ガラス基板のアニール処理後、ラビング処理を行った。二枚のガラス基板の間の周辺部に8μm厚のスペーサを挟み、ラビング方向が直交するように上下基板を張り合わせて空セルを作製した。このセルの中に、誘電率異方性が正のネマチック液晶にカイラル材を適量混合した材料を常圧下で注入し、液晶分子の配向が90度捻じれたTN液晶セルを作成した。このセルには電極を設けていないため、単なる偏光面回転素子として機能する。
【0086】
第一の光路偏向素子から出射した光の偏光面と偏光面回転素子の入射面のラビング方向が一致するように、二つの光路偏向手段の間に挟んで配置した。偏光面回転素子により第一の光路偏向素子からの出射光の偏光面が90度回転し、第二の光路偏向素子の偏向方向に一致する。第一偏向素子、偏光面回転素子、第二偏向素子からなる光路偏向装置を液晶ライトバルブの直後に設置した。また、本実施例では液晶表示素子からの出射光が既に直線偏光であり、その偏向方向が第一の光路偏向素子の光路偏向方向と一致するように配置されているが、光路偏向素子への入射光の偏光度を確実にするために、光路偏向素子の入射面側に直線偏光板を設けた。
【0087】
光路偏向素子を駆動する矩形波電圧の周波数を120Hzとし、二枚の縦と横の位相を90度ずらして、4方向に画素シフトするように駆動タイミングを設定した。画像表示素子に表示するサブフィールド画像を240Hzで書き換えることで、縦横二方向に見かけ上の画素数が4倍に増倍した高精細画像が表示できた。光路偏向素子の切換え時間は約0.4msecであり、充分な光利用効率が得られた。また、フリッカーなどは観測されなかった。
【0088】
【発明の効果】
本発明によると、液晶層の厚さを規制するスペーサの対向面を光路を偏向する方向に対して平行に配置し、このスペーサが液晶層に平面方向に電界を印加する電極を兼ねるようにすることにより、比較的簡単な構成の光偏向素子を実現できる。
【0089】
光路偏向素子の所望の光が透過する領域(光路領域)に複数本の電極ラインを設け、各電極ラインに印加する電圧値を端部側から段階的に変化させ、電極ライン群の領域全体に渡って液晶層内の平面方向に巨視的に緩やかな電位勾配を作るようにすることにより、光路領域全体に渡って液晶層内に所望の電界強度を形成した有効部分を少なくとも離散的に得ることが出来、更には、この有効部分のみを利用することで、断面積の大きな光路を比較的均一に偏向することが出来る。
【0090】
両側の基板に電極ラインを有することにより、液晶層の厚さ方向の電位分布が比較的均一になる。すなわち、液晶層厚さ方向の電界強度を小さく出来るので、電界印加時の液晶分子のダイレクター方向が液晶層の厚さ方向で比較的均一になり、効率的な光路偏向が行える。
【0091】
電極ラインの間隔が広いと、ライン間の中間付近に電位が低い部分が発生し、逆方向の電界が作用してしまうが、上下の基板上で電極ラインを交互に配置し、電圧値も交互に変化するように印加することで、液晶層内の面方向での電位変化が比較的均一になり、逆方向電界の発生を低減できる。また、電極を透明材料とすることで、電極ライン上も光路偏向領域として機能でき、したがって、断面積の大きな光路を比較的均一に偏向することが出来る。
【0092】
光路領域内の電極ラインによる段階的な電位印加に加えて、光路領域外部のスペーサ部材を兼ねた電極により、補助的な電圧を印加して液晶層内平面方向での電位勾配を滑らかにするので、断面積の大きな光路を比較的均一に偏向することが出来る。
【0093】
電極ライン群の近傍に周期的な電位勾配の変化が生じる場合、液晶層との間に誘電体層を挟むことで、液晶層内の平面方向での電位勾配の変化量が小さくなるので、均一な電界強度分布を得ることが出来る。
【0094】
誘電体層が配向膜を兼ねることにより、素子の製造プロセスが簡略化できる。また、光路の偏向方向すなわち電界印加時の液晶分子の傾斜方向に平行な偏向方向の光のみを入射することにより、偏向されない光の発生を防止し、確実な光路偏向を実現できる。
【0095】
一方向への偏向が可能な光路偏向素子を二枚組み合わせ、両者の電界印加方向を90度回転させて配置し、入射側の光路偏向素子から出射した光の偏光面を90度回転させて、第二の光路偏向素子に入射させることで、確実に二次元方向への光路偏向が可能となる。
【0096】
強誘電性液晶分子の基板面に対する傾斜方向の切換えを利用した光路偏向装置を用いているので、サブフィールド画像に対応して、高速な光路偏向が可能になり、見かけ上高精細な画像表示が可能となる。また、高速応答性によりサブフィールド画像の切換え時間が短くできるので、時間的な光利用効率が向上する等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一の実施の形態を説明するための図である。
【図2】 液晶分子の配向状態を模式的に示した図である。
【図3】 本発明による光偏向素子の動作原理を説明するための図である。
【図4】 本発明の第二の実施の形態を説明するための図である。
【図5】 本発明の第三の実施の形態を説明するための図である。
【図6】 本発明の第四の実施の形態を説明するための図である。
【図7】 本発明の第五の実施の形態を説明するための図である。
【図8】 本発明の第六の実施の形態を説明するための図である。
【図9】 本発明の第七の実施の形態を説明するための図である。
【図10】 本発明の第九の実施の形態を説明するための図である。
【図11】 本発明の第十の実施の形態を説明するための図である。
【図12】 電圧分布を示す図である。
【図13】 1mm幅セルの電界分布を示す図である。
【図14】 2mm幅セルの電界分布を示す図である。
【図15】 片面ライン電極での電位分布を示す図である。
【図16】 片面ライン電極での電界分布を示す図である。
【図17】 両面正対ライン電極での電界分布を示す図である。
【図18】 両面交互ライン電極の電位分布を示す図である。
【図19】 両面交互ライン電極の電界分布を示す図である。
【図20】 スペーサ電極兼用での電位分布を示す図である。
【図21】 スペーサ電極兼用での電界分布を示す図である。
【図22】 誘電体積層タイプの電位分布を示す図である。
【図23】 誘電体積層タイプの電界分布を示す図である。
【符号の説明】
1…光偏向素子、2,3…基板、4…配向膜、5…液晶層、6a,6b…電極対、7…電源、9…電極ライン、10…スペーサ、11…電圧印加手段、12…抵抗、13a,13b…スペーサ兼電極対、14…誘電体層、15…波長板、16…光偏向素子、21…光源、22…拡散板、23…コンデンサレンズ、24…透過型液晶パネル、25…投射レンズ、26…スクリーン、27…光源ドライブ部、28…ドライブ部、30…光偏向手段、31…ドライブ部。
Claims (10)
- 透明な一対の基板と、両基板間で液晶分子をホメオトロピック配向させる配向膜と、無電界下でキラルスメクチックC相を形成する液晶層と、両基板間で液晶層の厚さを規制する少なくとも2つ以上のスペーサと、前記液晶層に対して略平行な方向に電界を発生させる少なくとも2つ以上の電極とを有する光路偏向素子と、前記電極間の電界方向を切換え可能とする電圧印加手段とを有し、電界の印加方向を切換えることによって液晶層法線方向と電界方向の両者に略直交する方向に透過光の光路を偏向する光偏向装置において、前記スペーサの内、少なくとも2つの対向したスペーサが導電性材料からなり、該スペーサが対向する面が、光路を偏向する方向に対して略平行に配置された電極であることを特徴とする光偏向装置。
- 透明な一対の基板と、両基板間で液晶分子をホメオトロピック配向させる配向膜と、無電界下でキラルスメクチックC相を形成する液晶層と、両基板間で液晶層の厚さを規制する少なくとも2つ以上のスペーサと、前記液晶層に対して略平行な方向に電界を発生させる少なくとも2つ以上の電極とを有する光路偏向素子と、前記電極間の電界方向を切換え可能とする電圧印加手段とを有し、電界の印加方向を切換えることによって液晶層法線方向と電界方向の両者に略直交する方向に透過光の光路を偏向する光偏向装置において、前記光路偏向素子は、少なくとも一方の基板上の光路を含む領域に、所望の光路シフト方向に対して略平行に配置された複数本の電極ライン群を有し、前記電圧印加手段が、ある時刻における各電極ラインに印加する電圧値を段階的に異なる値に設定することを特徴とする光偏向装置。
- 請求項2において、前記光路偏向素子は、両基板上の光路を含む領域に、所望の光路シフト方向に対して略平行に配置された複数本の電極ライン群を有していることを特徴とする光偏向装置。
- 請求項3において、前記電極ラインが透明電極材料から成り、各基板上での透明電極ラインの位置が光路から見て交互に配置され、ある時刻における各透明電極ラインに印加する電圧値が、両基板間で交互に段階的に異なる値に設定されることを特徴とする光偏向装置。
- 請求項2乃至4のいずれかにおいて、前記スペーサは光路の領域外に設けた導電性材料からなる2つの電極対であり、前記光路偏向素子の平面方向に対して該電極対の間に前記電極ライン群が設けてあり、前記電圧印加手段が、ある時刻における該電極対の一方には電極ライン群に印加された最大電圧値以上の電圧値を印加し、該電極対の他方には電極ライン群に印加された最低電圧値以下の電圧値を印加することを特徴とする光偏向装置。
- 請求項2乃至5のいずれかにおいて、前記電極ライン群を形成した基板面の上に誘電体層を設け、該誘電体層と液晶層の間に配向膜を設けたことを特徴とする光偏向装置。
- 請求項6において、前記誘電体層が前記配向膜であることを特徴とする光偏向装置。
- 請求項1乃至7のいずれかにおいて、前記光路偏向素子への入射光の偏光方向を光路の偏向方向と一致させる偏光方向制御手段を有することを特徴とする光偏向装置。
- 請求項8において、前記光路偏向素子の出射光の偏光面を略直角に回転させる偏光面回転手段と、偏光面回転後の出射光を入射光とする第二の光路偏向素子を有し、前記光路偏向素子と該第二の光路偏向素子の液晶層法線方向が略一致し、両光路偏向素子の電界方向が略直交するように配置されてなることを特徴とする光偏向装置。
- 画像情報に従って光を制御可能な複数の画素が二次元的に配列した画像表示素子と、画像表示素子を照明する光源および照明装置と、画像表示素子に表示した画像パターンを観察するための光学装置と、画像フィールドを時間的に分割した複数のサブフィールドで形成する表示駆動手段と、各画素からの出射光の光路を偏向する前記請求項1から9に記載の光偏向装置とを有し、サブフィールド毎の光路の偏向状態に応じて表示位置がずれている状態の画像パターンを表示することで、画像表示素子の見かけ上の画素数を増倍して表示することを特徴とする画像表示装置。
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