以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャート図である。
予め、半導体基板上に、酸化イリジウム/イリジウム/窒化アルミチタンよりなる積層膜を形成した後、該積層膜を覆うように半導体基板上にシリコン酸化膜を形成する。さらに、シリコン酸化膜に積層膜の表面を露出させる凹部を形成しておく(以上、図示せず)。
次に、ステップS11において、スパッタ法により、シリコン酸化膜の凹部の内面に沿って白金(Pt)膜よりなる下部電極を形成する。なお、下部電極は、白金(Pt)/酸化イリジウム(IrOx)の積層膜よりなる場合でもよい。
次に、ステップS12において、リソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、ステップS11にて形成された下部電極をパターニングする。
次に、ステップS13aにおいて、CVD法により、ステップS12にてパターニングされた下部電極の上に、約20nmの膜厚を有する第1の強誘電体膜としてのSBT(SrBi2Ta2O9)膜を形成する。本ステップにおける第1の強誘電体膜は、温度350℃、圧力1.33×102Pa(1Torr)の条件下、ECH(エチルシクロヘキサン)中にST−1[Sr(Ta(OEt)5(OC2H4OMe))2]が0.1mol%の濃度で希釈されたガスを流量100×10−3ml/minで、ECH(エチルシクロヘキサン)中にBi(MMP)3が0.2mol%の濃度で希釈されたガスを流量220×10−3ml/minで、ECH(エチルシクロヘキサン)中にPET[Ta(OC2H5)5]が0.1mol%の濃度で希釈されたガスを流量100×10−3ml/minで、酸素(O2)ガスを流量1000×10−3ml/minで、及びアルゴン(Ar)ガスを流量1900×10−3ml/minで流しながら、約10分間これらのソースガスを互いに反応させることによって形成される。
次に、ステップS13bにおいて、CVD法により、ステップS13aにて形成された第1の強誘電体膜の上に、約40nmの膜厚を有する第2の強誘電体膜としてのSBT(SrBi2Ta2O9)膜を形成する。本ステップにおける第2の強誘電体膜は、温度350℃、圧力1.33×102Pa(1Torr)の条件下、ECH(エチルシクロヘキサン)中にST−1[Sr(Ta(OEt)5(OC2H4OMe))2]が0.1mol%の濃度で希釈されたガスを流量100×10−3ml/minで、ECH(エチルシクロヘキサン)中にBi(MMP)3が0.2mol%の濃度で希釈されたガスを流量200×10−3ml/minで、ECH(エチルシクロヘキサン)中にPET[Ta(OC2H5)5]が0.1mol%の濃度で希釈されたガスを流量100×10−3ml/minで、酸素(O2)ガスを流量1000×10−3ml/minで、及びアルゴン(Ar)ガスを流量1900×10−3ml/minで流しながら、約20分間これらのソースガスを互いに反応させることによって形成される。
ここで、前述したように、ステップS13aにおける第1の強誘電体膜の成長条件では、ECH中にBi(MMP)3が希釈されたガスの流量を220×10−3ml/minと設定する一方、ステップS13bにおける第2の強誘電体膜の成長条件では、ECH中にBi(MMP)3が希釈されたガスの流量を200×10−3ml/minと設定している。このように、第1の強誘電体膜を形成するために用いるCVD用ガスに含まれるビスマスの濃度は、第2の強誘電体膜を形成するために用いるCVD用ガスに含まれるビスマスの濃度よりも高く設定されている。
次に、ステップS14において、スパッタ法により、ステップS13bにて形成された第2の強誘電体膜の上に、白金膜よりなる上部電極を形成する。
次に、ステップS15において、リソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、ステップS14にて形成された上部電極をパターニングする。
以上で説明したステップに従って形成される本発明の第1の実施形態に係る半導体装置について、図2を参照しながら説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
図2に示すように、図示しない半導体基板の上には、酸化イリジウム3/イリジウム2/窒化アルミチタン1よりなる積層膜が形成されており、該積層膜を覆うように、半導体基板の上には、該積層膜の表面を露出させる凹部4aを有するシリコン酸化膜4が形成されている。
また、凹部4aを含むシリコン酸化膜4の上には、凹部4aの内面に沿うようにして、下から順に、白金(Pt)膜よりなる下部電極5、SBT膜よりなる第1の強誘電体膜6a、SBT膜よりなる第2の強誘電体膜6b、及び白金膜よりなる上部電極7がこの順で形成されている。なお、下部電極は、白金(Pt)/酸化イリジウム(IrOx)の積層膜よりなる場合でもよい。
ここで、第1の強誘電体膜6a及び第2の強誘電体膜6bの各々におけるSr(ストロンチウム):Bi(ビスマス)の組成比は、ほぼ1:2.24であり、第1の強誘電体膜6a中のビスマスの濃度と第2の強誘電体膜6b中のビスマスの濃度とはほぼ等しい。
以下に、本発明の第1の実施形態において、第1の強誘電体膜6aを形成するために用いるCVD用ガスに含まれるビスマスの濃度を、第2の強誘電体膜6bを形成するために用いるCVD用ガスに含まれるビスマスの濃度よりも高く設定している理由について説明する。
種々の検討結果、CVD法を用いた従来の半導体装置の製造方法によって形成された強誘電体膜を備えたキャパシタの分極特性が、塗布法を用いて形成された強誘電体膜を備えてキャパシタの分極特性に比べて良くない理由は、CVD法によって形成された強誘電体膜の組成が膜厚方向に均一ではないことが原因になっていることが見出された。
図3は、SIMSにより、通常のCVD法を用いて白金膜よりなる電極上に形成したSBT膜よりなる強誘電体膜の膜厚方向におけるビスマスの分布を分析した結果を示しており、図4は、SIMSにより、通常の塗布法を用いて白金膜よりなる電極上に形成したSBT膜よりなる強誘電体膜の膜厚方向におけるビスマスの分布を分析した結果を示している。なお、図3と図4とにおいては、強誘電体膜中のストロンチウムの濃度を合わせて規格化して示している。
まず、図3から明らかなように、通常のCVD法を用いて形成したSBT膜には次の特徴が見られる。すなわち、SBT膜における白金膜と近い領域である白金膜の上面からの約10〜20nmの領域においては、ビスマスの濃度が、SBT膜におけるその他の領域でのビスマスの濃度と比較して約半分程度になっている。このように、SBT膜におけるビスマスの濃度は、その膜厚方向において非常に不均一であることが分かる。
一方、図4から明らかなように、通常の塗布法を用いて形成したSBT膜の場合には、図3に示したようなビスマスの濃度が不均一になっている箇所は見られない。すなわち、SBT膜におけるビスマスの濃度は、その膜厚方向において均一であることが分かる。
このように、通常のCVD法を用いて形成した強誘電体膜におけるビスマスの濃度が膜厚方向において不均一となるのは、前述したように、CVD法を用いて強誘電体膜を形成する際における熱そのものに起因していることが見出された。以下に具体的に説明する。
通常、CVD法では、300〜400℃程度の熱により、CVD用ガスを互いに反応させながら、強誘電体膜の成膜を行なっているが、成膜の初期段階ではビスマスが下地の白金膜よりなる電極中へ熱拡散してしまう。これにより、形成されたSBT膜における下部の領域においてビスマスの濃度が下がっているものと考えられる。このような現象は、図3において、白金膜よりなる電極における上部の領域においてビスマスの濃度が高くなっていることからも裏付けられる。一方、通常、塗布法では、塗布時における温度はほぼ常温であるので、ビスマスが白金膜よりなる電極中へ熱拡散することがほとんどないものと考えられる。
従って、本発明の第1の実施形態では、強誘電体膜の成膜の初期段階においてビスマスが下地の電極に熱拡散し易いことに鑑みて、ビスマスが下地となる下部電極5中に熱拡散する分だけビスマスの濃度を高く設定したCVD用ガスを用いて第1の強誘電体膜6aを形成すると共に、該第1の強誘電体膜6aを形成するために用いるCVD用ガスにおけるビスマスの濃度よりも低い通常用いるビスマスの濃度を有するCVD用ガスを用いて第2の強誘電体膜6bを形成することが特徴である。
図5は、SIMSにより、本発明の第1の実施形態における第1の強誘電体膜6a及び第2の強誘電体膜6bの膜厚方向におけるビスマスの濃度分布を分析した結果を示している。なお、図5においては、第1の強誘電体膜6a及び第2の強誘電体膜6b中のストロンチウムの濃度分布を合わせて規格化して示している。
図5から明らかなように、白金膜よりなる下部電極5における上部の領域では、第1の強誘電体膜6aからビスマスが熱拡散していることが認められるが、第1の強誘電体膜6a及び第2の強誘電体膜6bにおけるビスマスの濃度はほぼ等しいことが分かる。すなわち、本発明の第1の実施形態における第1の強誘電体膜6a及び第2の強誘電体膜6bでは、図3の場合と比べて、ビスマスの濃度の膜厚方向における均一性は大きく向上していることが分かる。
ここで、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置及び従来例に係る半導体装置のそれぞれおける電気的特性について説明する。なお、以下で説明する立体型キャパシタは、熱処理工程及び加工工程などの所望の製造工程を経て形成されたものであることは言うまでもない。
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を構成する立体型キャパシタのPnv値を求めると共に、従来例に係る半導体装置を構成する立体型キャパシタのPnv値を求めることにより、それぞれの立体型キャパシタの電気的特性を評価したところ、本発明の第1の実施形態の場合ではPnv値が12.1であったのに対して、従来例の場合ではPnv値が9.9であった。なお、Pnv値(分極量)は、値が大きいほどメモリの電荷保持性能が優れていることを意味する。それぞれの値から明らかなように、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の電気的特性は、従来例に係る半導体装置の電気的特性よりも大幅に向上していることが分かる。このような結果が得られた理由は以下の通りである。
すなわち、従来例では、強誘電体膜における下部の領域においてビスマスの濃度が低下していたために、その領域において強誘電体膜としての特性を十分に発揮することができなかった。しかしながら、本発明の第1の実施形態では、第1の強誘電体膜6a及び第2の強誘電体膜6bよりなる強誘電体膜の下部を構成する第1の強誘電体膜6aは、ビスマスが下地の下部電極5中に拡散した後であっても、従来例の場合と比べて十分なビスマスの濃度を有する。このため、従来例における半導体装置の電気的特性と比較して、第1の強誘電体膜6a及び第2の強誘電体膜6bを備えた第1の実施形態に係る半導体装置の電気的特性が向上したと考えられる。
なお、本発明の第1の実施形態においては、CVD法により、SBT膜よりなる強誘電体膜を形成する場合について説明したが、CVD法によってNbを含むSBTN膜を形成する場合、又は、CVD法によってBLT膜等のビスマス層状構造を有する強誘電体膜を形成する場合であっても、前述と同様の効果を得ることができる。
また、本発明の第1の実施形態においては、熱CVD法によって強誘電体膜を形成する場合について説明したが、プラズマCVD法等の熱を加える他のCVD法によって強誘電体膜を形成する場合であっても、前述と同様の効果を得ることができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図6を参照しながら説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャート図である。
予め、半導体基板上に、酸化イリジウム/イリジウム/窒化アルミチタンよりなる積層膜を形成した後、該積層膜を覆うように半導体基板上にシリコン酸化膜を形成する。さらに、シリコン酸化膜に該積層膜の表面を露出させる凹部を形成しておく(以上、図示せず)。
次に、ステップS21において、スパッタ法により、シリコン酸化膜の凹部の内面に沿って白金(Pt)膜よりなる下部電極を形成する。なお、下部電極は、白金(Pt)/酸化イリジウム(IrOx)の積層膜よりなる場合でもよい。
次に、ステップS22において、リソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、ステップS21にて形成された下部電極をパターニングする。
次に、ステップS23aにおいて、CVD法により、ステップS22にてパターニングされた下部電極の上に、約20nmの膜厚を有する第1の強誘電体膜としてのSBT(SrBi2Ta2O9)膜を形成する。本ステップにおける第1の強誘電体膜は、温度350℃、圧力1.33×102Pa(1Torr)の条件下、ECH(エチルシクロヘキサン)中にST−1[Sr(Ta(OEt)5(OC2H4OMe))2]が0.1mol%の濃度で希釈されたガスを流量100×10−3ml/minで、ECH(エチルシクロヘキサン)中にBi(MMP)3が0.2mol%の濃度で希釈されたガスを流量200×10−3ml/minで、ECH(エチルシクロヘキサン)中にPET[Ta(OC2H5)5]が0.1mol%の濃度で希釈されたガスを流量90×10−3ml/minで、酸素(O2)ガスを流量1000×10−3ml/minで、及びアルゴン(Ar)ガスを流量1900×10−3ml/minで流しながら、約10分間これらのソースガスを互いに反応させることによって形成される。
次に、ステップS23bにおいて、CVD法により、ステップS23aにて形成された第1の強誘電体膜の上に、約40nmの膜厚を有する第2の強誘電体膜としてのSBT(SrBi2Ta2O9)膜を形成する。本ステップにおける第2の強誘電体膜は、温度350℃、圧力1.33×102Pa(1Torr)の条件下、ECH(エチルシクロヘキサン)中にST−1[Sr(Ta(OEt)5(OC2H4OMe))2]が0.1mol%の濃度で希釈されたガスを流量100×10−3ml/minで、ECH(エチルシクロヘキサン)中にBi(MMP)3が0.2mol%の濃度で希釈されたガスを流量200×10−3ml/minで、ECH(エチルシクロヘキサン)中にPET[Ta(OC2H5)5]が0.1mol%の濃度で希釈されたガスを流量100×10−3ml/minで、酸素(O2)ガスを流量1000×10−3ml/minで、及びアルゴン(Ar)ガスを流量1900×10−3ml/minで流しながら、約20分間これらのソースガスを互いに反応させることによって形成される。
ここで、前述したように、ステップS23aにおける第1の強誘電体膜の成長条件では、ECH(エチルシクロヘキサン)中にPET[Ta(OC2H5)5]が希釈されたガスの流量を90×10−3ml/minと設定する一方、ステップS23bにおける第2の強誘電体膜の成長条件では、ECH(エチルシクロヘキサン)中にPET[Ta(OC2H5)5]が希釈されたガスの流量を100×10−3ml/minと設定している。このように、第1の強誘電体膜を形成するために用いるCVD用ガスに含まれるタンタルの濃度は、第2の強誘電体膜を形成するために用いるCVD用ガスに含まれるタンタルの濃度よりも低く設定している。
次に、ステップS24において、スパッタ法により、ステップS23bにて形成された第2の強誘電体膜の上に、白金膜よりなる上部電極を形成する。
次に、ステップS25において、リソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、ステップS24にて形成された上部電極をパターニングする。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図を示している。
図7に示すように、図示しない半導体基板の上には、酸化イリジウム3/イリジウム2/窒化アルミチタン1よりなる積層膜が形成されており、該積層膜を覆うように、半導体基板の上には該積層膜の表面を露出させる凹部4aを有するシリコン酸化膜4が形成されている。
また、凹部4aを含むシリコン酸化膜4の上には、凹部4aの内面に沿うようにして、下から順に、白金膜よりなる下部電極5、SBT膜よりなる第1の強誘電体膜6c、SBT膜よりなる第2の強誘電体膜6d、及び白金膜よりなる上部電極7がこの順で形成されている。なお、下部電極5は、白金(Pt)/酸化イリジウム(IrOx)の積層膜よりなる場合でもよい。
ここで、第1の強誘電体膜6c及び第2の強誘電体膜6dの各々におけるSr(ストロンチウム):Ta(タンタル)の組成比は、ほぼ1:2であり、第1の強誘電体膜6c中のタンタルの濃度と第2の強誘電体膜6d中のタンタルの濃度とはほぼ等しい。
以下に、本発明の第2の実施形態において、第1の強誘電体膜6cを形成するために用いるCVD用ガスに含まれるタンタルの濃度を、第2の強誘電体膜6dを形成するために用いるCVD用ガスに含まれるタンタルの濃度よりも低く設定している理由について説明する。
図8は、SIMSにより、通常のCVD法を用いて白金膜よりなる電極上に形成したSBT膜よりなる強誘電体膜の膜厚方向におけるタンタルの濃度の分布を分析した結果を示しており、図9は、SIMSにより、通常の塗布法を用いて白金膜よりなる電極上に形成したSBT膜よりなる強誘電体膜の膜厚方向におけるタンタルの濃度の分布を分析した結果を示している。なお、図8と図9とにおいては、強誘電体膜中のストロンチウムの濃度分布を合わせて規格化して示している。
まず、図8から明らかなように、通常のCVD法を用いて形成したSBT膜には次の特徴が見られる。すなわち、SBT膜における白金膜と近い領域である白金膜の上面からの約10〜20nmの領域においては、タンタルの濃度が、SBT膜におけるその他の領域でのタンタルの濃度と比較して約2倍になっている。このように、SBT膜におけるタンタルの濃度は、その膜厚方向において非常に不均一であることが分かる。
一方、図9から明らかなように、通常の塗布法を用いて形成されたSBT膜の場合には、図9に示したようなタンタルの濃度が不均一な箇所は見られない。すなわち、SBT膜におけるタンタルの濃度は、その膜厚方向において均一であることが分かる。
このように、通常のCVD法を用いて形成された強誘電体膜におけるタンタルの濃度が膜厚方向において不均一となる理由について鋭意検討を重ねた結果、その理由は、CVD法を用いて強誘電体膜を形成する際における熱、及びその熱によるビスマスの熱拡散に主に起因していることが見出された。以下に具体的に説明する。
通常、CVD法では、300〜400℃程度の熱により、CVD用ガスを互いに反応させながら、強誘電体膜の成膜を行なっているが、第1の実施形態でも説明したように、成膜の初期段階ではビスマスが下地の白金膜よりなる電極中へ熱拡散してしまう。このため、気相中においては、ビスマスが減少するので、その減少する分だけストロンチウムとタンタルとの反応が増加する。従って、形成されたSBT膜における下部の領域においてタンタルの濃度が上昇しているものと主に考えられる。一方、通常、塗布法では、塗布時における温度はほぼ常温であるので、ビスマスが白金膜よりなる電極中へ熱拡散することがほとんどないので、その結果として強誘電体膜におけるタンタルの濃度は変動していないものと考えられる。
従って、本発明の第2の実施形態では、強誘電体膜の成膜の初期段階においてビスマスが下地の電極中へ熱拡散し易いことに鑑みて、下地となる下部電極5中にビスマスが熱拡散する分だけタンタルが多く反応してしまうため、その分タンタルの濃度を低くしたCVD用ガスを用いて第1の強誘電体膜6cを形成すると共に、該第1の強誘電体膜6cを形成するために用いるCVD用ガスにおけるタンタルの濃度よりも高い通常用いるタンタルの濃度を有するCVD用ガスを用いて第2の強誘電体膜6dを形成することが特徴である。
図10は、SIMSにより、本発明の第2の実施形態における第1の強誘電体膜6c及び第2の強誘電体膜6dの膜厚方向におけるタンタルの濃度分布を分析した結果を示している。なお、図10においては、第1の強誘電体膜6a及び第2の強誘電体膜6b中のストロンチウムの濃度分布を合わせて規格化して示している。
図10から明らかなように、第1の強誘電体膜6c及び第2の強誘電体膜6dにおけるタンタルの濃度はほぼ等しいことが分かる。すなわち、本発明の第2の実施形態における第1の強誘電体膜6c及び第2の強誘電体膜6dでは、タンタルの濃度の膜厚方向における均一性が、図8の場合と比べて、大きく向上していることが分かる。
ここで、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置及び従来例に係る半導体装置のそれぞれおける電気的特性について説明する。なお、以下で説明する立体型キャパシタは、熱処理工程及び加工工程などの所望の製造工程を経て形成されたものであることは言うまでもない。
本発明の第2の実施形態に係る半導体装置を構成する立体型キャパシタのPnv値を求めると共に、従来例に係る半導体装置を構成する立体型キャパシタのPnv値を求めることにより、それぞれの立体型キャパシタの電気的特性を評価したところ、本発明の第2の実施形態の場合におけるPnv値は、従来例の場合におけるPnv値よりも良好な数値が得られた。なお、Pnv値(分極量)は、値が大きいほどメモリの電荷保持性能が優れていることを意味する。このような結果が得られた理由は以下の通りである。
すなわち、従来例では、強誘電体膜における下部の領域においてビスマスの濃度が上昇していたために、その領域において強誘電体膜としての特性を十分に発揮することができなかった。しかしながら、本発明の第2の実施形態によると、第1の強誘電体膜6c及び第2の強誘電体膜6dよりなる強誘電体膜の下部を構成する第1の強誘電体膜6cの形成時に、気相中におけるタンタルの濃度を低くしているために、ビスマスが下地の下部電極5中に熱拡散した後であっても、ビスマスが下部電極5中に熱拡散した分だけタンタルとストロンチウムとが反応するという現象を抑制することができる。このため、第1の強誘電体膜6cにおけるタンタルの濃度は、図8に示したような上昇を示しておらず、第1の強誘電体膜6c及び第2の強誘電体膜6dにおけるタンタルの濃度は均一になっている。このため、従来例における半導体装置の電気的特性と比較して、第1の強誘電体膜6c及び第2の強誘電体膜6dを備えた第2の実施形態に係る半導体装置の電気的特性が向上したものと考えられる。
本発明の第2の実施形態において、第1の強誘電体膜6cを形成するために用いるCVD用ガスに含まれるタンタルの濃度を、第2の強誘電体膜6dを形成するために用いるCVD用ガスに含まれるタンタルの濃度よりも低く設定した場合について説明したが、これに加えて、第1の実施形態で説明したように、第1の強誘電体膜6cを形成するために用いるCVD用ガスに含まれるビスマスの濃度を、第2の強誘電体膜6dを形成するために用いるCVD用ガスに含まれるビスマスの濃度よりも高く設定することもできる。このようにすると、第1の強誘電体膜6cにおけるストロンチウム、ビスマス、及びタンタルのそれぞれの濃度が、第2の強誘電体膜6dにおけるストロンチウム、ビスマス、及びタンタルのそれぞれの濃度にほぼ等しくなる。これにより、より優れた電気的特性を有する半導体装置を実現することができる。
なお、本発明の第2の実施形態においては、CVD法により、SBT膜よりなる強誘電体膜を形成する場合について説明したが、CVD法によってNbを含むSBTN膜を形成する場合、又は、CVD法によってBLT膜等のビスマス層状構造を有する強誘電体膜を形成する場合であっても、前述と同様の効果を得ることができる。
また、本発明の第2の実施形態においては、熱CVD法によって強誘電体膜を形成する場合について説明したが、プラズマCVD法等の熱を加える他のCVD法によって強誘電体膜を形成する場合であっても、前述と同様の効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について、図11を参照しながら説明する。
図11は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャート図である。
予め、半導体基板上に、酸化イリジウム/イリジウム/窒化アルミチタンよりなる積層膜を形成した後、該積層膜を覆うように半導体基板上にシリコン酸化膜を形成する。さらに、シリコン酸化膜に該積層膜の表面を露出させる凹部を形成しておく(以上、図示せず)。
次に、ステップS31において、スパッタ法により、シリコン酸化膜の凹部の内面に沿って白金(Pt)よりなる下部電極を形成する。なお、下部電極は、白金(Pt)/酸化イリジウム(IrOx)の積層膜よりなる場合でもよい。
次に、ステップS32において、リソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、ステップS31にて形成された下部電極をパターニングする。
次に、ステップS33aにおいて、CVD法により、ステップS32にてパターニングされた下部電極の上に、約20nmの膜厚を有する第1の強誘電体膜としてのSBT(SrBi2Ta2O9)膜を形成する。なお、ここで用いるCVD用ガスは、第1の強誘電体膜におけるSr:Bi:Taの最終組成比が1:2.24:2となるように、そのCVD用ガスの組成比を調整して設定されている。
次に、ステップS33bにおいて、大気解放を行なうことなく、第1の強誘電体膜を形成した反応室と同一の反応室、又は同一設備を備えた別の反応室において、CVD法により、ステップS33aにて形成された第1の強誘電体膜の上に、約40nmの膜厚を有する第2の強誘電体膜としてのSBT(SrBi2Ta2O9)膜を形成する。なお、ここで用いるCVD用ガスは、第2の強誘電体膜におけるSr:Bi:Taの最終組成比が1:2.24:2となるように、そのCVD用ガスの組成比を調整して設定されている。
次に、ステップS34において、スパッタ法により、ステップS33bにて形成された第2の強誘電体膜の上に、白金膜よりなる上部電極を形成する。
次に、ステップS35において、リソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、ステップS34にて形成された上部電極をパターニングする。
以下に、本発明の第3の実施形態において、ステップS33aにおける第1の強誘電体膜の形成からステップS33bにおける第2の強誘電体膜の形成までの間に大気解放を行なうことなく真空中にて連続して、第1の強誘電体膜と第2の強誘電体膜とを形成した理由について説明する。
図12は、本実施形態とは異なり、第1の強誘電体膜を形成後に一旦大気解放してから第2の強誘電体膜を形成する場合のように、第1の強誘電体膜と第2の強誘電体膜とを不連続で形成した場合において、SIMSにより、その第1の強誘電体膜及び第2の強誘電体膜における膜厚方向のビスマスの濃度分布を分析した結果を示している。なお、図12においては、第1の強誘電体膜及び第2の強誘電体膜中のストロンチウムの濃度分布を合わせて規格化して示している。
図12から明らかなように、第1の強誘電体膜と第2の強誘電体膜との界面には、ストロンチウムの濃度又はビスマスの濃度が異常となっている変質層が形成されていることが分かる。なお、タンタルの濃度は図示されていないが、同様に異常が見られた。このような結果が得られた理由としては、第1の強誘電体膜を形成した後に大気解放したために、第1の強誘電体膜が大気と接することによって変質層が形成されたからであると考えられる。なお、この方法を用いて形成された第1の強誘電体及び第2の強誘電体膜を備えた立体型キャパシタのPnv値は9.5であり、電気的特性として優れた値ではないことが分かる。
一方、本実施形態のように、第1の強誘電体膜と第2の強誘電体膜との形成を大気解放することなく真空中にて連続して形成した場合には、図12に示したような変質層は確認されなかった。さらに、本実施形態に加えて、前述した本発明に係る第1の実施形態及び第2の実施形態で説明した方法を用いて行なうことにより、第1の強誘電体膜及び第2の強誘電体膜における膜厚方向の組成として均一な値が得られ、この場合における立体型キャパシタのPnv値は12.0以上で良好な値が得られることを確認している。
以上のように、本発明に係る第3の実施形態では、第1の強誘電体膜と第2の強誘電体膜との形成を大気解放を行なくことなく真空中にて連続して行なうことにより、第1の強誘電体膜と第2の強誘電体膜との間に変質層が形成されることを防止することが特徴である。なお、この点、前述した本発明に係る第1及び第2の実施形態においては、第1の強誘電体及び第2の強誘電体膜の各々の形成に用いるCVD用ガスに特徴があったので特筆しなかったが、前述した第1及び第2の実施形態においても、第1の強誘電体膜と第2の強誘電体膜との形成は、大気解放することなく真空中にて連続して形成している。このようにしたのは、前述したように、第1の強誘電体膜と第2の強誘電体膜との間に変質層が形成されることを防止することが目的であるが、第1の実施形態で用いた図5及び第2の実施形態で用いた図10からも明らかなように、第1の強誘電体膜と第2の強誘電体膜との間には変質層が形成されていないことが明らかである。また、同様の目的で、後述する第4及び第5の実施形態においても、第1の強誘電体膜と第2の強誘電体膜との形成は、大気解放することなく真空中にて連続して形成している。
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図13を参照しながら説明する。
図13は、本発明の第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャート図である。
予め、半導体基板上に、酸化イリジウム/イリジウム/窒化アルミチタンよりなる積層膜を形成した後、該積層膜を覆うように半導体基板上にシリコン酸化膜を形成する。さらに、シリコン酸化膜に該積層膜の表面を露出させる凹部を形成しておく(以上、図示せず)。
次に、ステップS41において、スパッタ法により、シリコン酸化膜の凹部の内面に沿って酸化イリジウム(IrOx)よりなる下部電極を形成する。
次に、ステップS42において、リソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、ステップS41にて形成された下部電極をパターニングする。
次に、ステップS43aにおいて、CVD法により、ステップS42にてパターニングされた下部電極の上に、約20nmの膜厚を有する第1の強誘電体膜としてのSBT(SrBi2Ta2O9)膜を形成する。本ステップにおける第1の強誘電体膜は、温度350℃、圧力1.33×102Pa(1Torr)の条件下、ECH(エチルシクロヘキサン)中にST−1[Sr(Ta(OEt)5(OC2H4OMe))2]が0.1mol%の濃度で希釈されたガスを流量100×10−3ml/minで、ECH(エチルシクロヘキサン)中にBi(MMP)3が0.2mol%の濃度で希釈されたガスを流量190×10−3ml/minで、ECH(エチルシクロヘキサン)中にPET[Ta(OC2H5)5]が0.1mol%の濃度で希釈されたガスを流量100×10−3ml/minで、酸素(O2)ガスを流量1000×10−3ml/minで、及びアルゴン(Ar)ガスを流量1900×10−3ml/minで流しながら、約10分間これらのソースガスを互いに反応させることによって形成される。
次に、ステップS43bにおいて、CVD法により、ステップS43aにて形成された第1の強誘電体膜の上に、約40nmの膜厚を有する第2の強誘電体膜としてのSBT(SrBi2Ta2O9)膜を形成する。本ステップにおける第2の強誘電体膜は、温度350℃、圧力1.33×102Pa(1Torr)の条件下、ECH(エチルシクロヘキサン)中にST−1[Sr(Ta(OEt)5(OC2H4OMe))2]が0.1mol%の濃度で希釈されたガスを流量100×10−3ml/minで、ECH(エチルシクロヘキサン)中にBi(MMP)3が0.2mol%の濃度で希釈されたガスを流量200×10−3ml/minで、ECH(エチルシクロヘキサン)中にPET[Ta(OC2H5)5]が0.1mol%の濃度で希釈されたガスを流量100×10−3ml/minで、酸素(O2)ガスを流量1000×10−3ml/minで、及びアルゴン(Ar)ガスを流量1900×10−3ml/minで流しながら、約20分間これらのソースガスを互いに反応させることによって形成される。
ここで、前述したように、ステップS43aにおける第1の強誘電体膜の成長条件では、ECH中にBi(MMP)3が希釈されたガスの流量を190×10−3ml/minと設定する一方、ステップS43bにおける第2の強誘電体膜の成長条件では、ECH中にBi(MMP)3が希釈されたガスの流量を200×10−3ml/minと設定している。このように、第1の強誘電体膜を形成するために用いるCVD用ガスに含まれるビスマスの濃度は、第2の強誘電体膜を形成するために用いるCVD用ガスに含まれるビスマスの濃度よりも低く設定されている。
次に、ステップS44において、スパッタ法により、ステップS43bにて形成された第2の強誘電体膜の上に、酸化イリジウムよりなる上部電極を形成する。
次に、ステップS45において、リソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、ステップS44にて形成された上部電極をパターニングする。
以上に示した製造工程を経ることにより、本実施形態に係る半導体装置を製造することができる。この半導体装置における第1の強誘電体膜中のSr:Bi:Taの組成比は1:2.24:2であり、第2の強誘電体膜中のSr:Bi:Taの組成比を1:2.24:2であった。このように、第1の強誘電体膜中のビスマスの濃度は、第2の強誘電体膜中のビスマスの濃度とはほぼ等しくなっている。なお、本実施形態に係る半導体装置の構造については、例えば前述した図2と同様であるので、ここでは図示を省略している。
以下に、本発明の第4の実施形態において、第1の強誘電体膜を形成するために用いるCVD用ガスに含まれるビスマスの濃度を、第2の強誘電体膜を形成するために用いるCVD用ガスに含まれるビスマスの濃度よりも低く設定している理由について説明する。
本発明の第4の実施形態が、本発明の第1の実施形態と異なる一つの点は、第1の強誘電体膜の下地となる下部電極が酸化イリジウムによって構成されている点である。
下部電極が酸化イリジウムよりなる場合、ビスマスとイリジウムと酸素とによって酸化ビスマス・イリジウム化合物が形成される。このため、ビスマスが下部電極中へ熱拡散することはなく、逆に、酸化ビスマス・イリジウム化合物が形成されることで、下部電極と第1の強誘電体膜との界面には、ビスマスの濃度が高い変質層が形成される。この点、データによる図示は省略しているが、下部電極と第1の強誘電体膜との界面に変質層が形成されることが確認されており、この変質層が形成された立体型キャパシタのPnv値は8.5と悪かった。
そこで、本発明の第4の実施形態では、第1の強誘電体膜を形成するために用いるCVD用ガスに含まれるビスマスの濃度を、第2の強誘電体膜を形成するために用いるCVD用ガスに含まれるビスマスの濃度よりも低く設定することにより、下部電極と第1の強誘電体膜との界面にビスマスの濃度が高い変質層が形成されることを防止している。
前述した第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法を用いて第1の強誘電体膜及び第2の強誘電体膜を形成すると、第1の強誘電体膜及び第2の強誘電体膜におけるビスマスの組成比は略等しくなり、この第1の強誘電体膜及び第2の強誘電体膜を備えた立体型キャパシタのPnv値は12.5で良好な値を得ることができた。なお、本実施形態における立体型キャパシタのPnv値が第1の実施形態における立体型キャパシタのPnv値よりも大きい値が得られた理由は明確ではないが、ビスマス層状構造の強誘電体膜には、Pnv値に寄与しないC軸配向成分が存在することが知られており、白金を材料とする下部電極から酸化イリジウムを材料とする下部電極に変えることにより、SBT膜におけるPnv値に寄与する配向成分が増加したためであると考えられる。
本発明の第4の実施形態においては、酸化イリジウムよりなる下部電極、及び酸化イリジウムよりなる上部電極を用いる場合について説明したが、下部電極の材料としてイリジウムを用いる場合であっても、イリジウムが酸化されて酸化イリジウムとなるので、前述と同様の効果を得ることができる。また、上部電極は、イリジウム、酸化イリジウム、又は白金等の金属膜よりなる単層又は積層よりなる材料を用いてもよい。
なお、本発明の第4の実施形態においては、CVD法により、SBT膜よりなる強誘電体膜を形成する場合について説明したが、CVD法によってNbを含むSBTN膜を形成する場合、又は、CVD法によってBLT膜等のビスマス層状構造を有する強誘電体膜を形成する場合であっても、前述と同様の効果を得ることができる。
また、本発明の第4の実施形態においては、熱CVD法によって強誘電体膜を形成する場合について説明したが、プラズマCVD法等の熱を加える他のCVD法によって強誘電体膜を形成する場合であっても、前述と同様の効果を得ることができる。
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図14を参照しながら説明する。
図14は、本発明の第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャート図である。
予め、半導体基板上に、酸化イリジウム/イリジウム/窒化アルミチタンよりなる積層膜を形成した後、該積層膜を覆うように半導体基板上にシリコン酸化膜を形成する。さらに、シリコン酸化膜に該積層膜の表面を露出させる凹部を形成しておく(以上、図示せず)。
次に、ステップS51において、スパッタ法により、シリコン酸化膜の凹部の内面に沿って白金(Pt)よりなる下部電極を形成する。なお、下部電極は、白金(Pt)/酸化イリジウム(IrOx)の積層膜よりなる場合でもよい。
次に、ステップS52において、リソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、ステップS51にて形成された下部電極をパターニングする。
次に、ステップS53aにおいて、CVD法により、ステップS52にてパターニングされた下部電極の上に、約20nmの膜厚を有する第1の強誘電体膜としてのSBT(SrBi2Ta2O9)膜を形成する。本ステップにおける第1の強誘電体膜は、温度330℃、圧力2.66×102Pa(2Torr)の条件下、ECH(エチルシクロヘキサン)中にST−1[Sr(Ta(OEt)5(OC2H4OMe))2]が0.1mol%の濃度で希釈されたガスを流量100×10−3ml/minで、ECH(エチルシクロヘキサン)中にBi(MMP)3が0.2mol%の濃度で希釈されたガスを流量200×10−3ml/minで、ECH(エチルシクロヘキサン)中にPET[Ta(OC2H5)5]が0.1mol%の濃度で希釈されたガスを流量100×10−3ml/minで、酸素(O2)ガスを流量2100×10−3ml/minで、及びアルゴン(Ar)ガスを流量1900×10−3ml/minで流しながら、約10分間これらのソースガスを互いに反応させることによって形成される。
次に、ステップS53bにおいて、CVD法により、ステップS53aにて形成された第1の強誘電体膜の上に、約40nmの膜厚を有する第2の強誘電体膜としてのSBT(SrBi2Ta2O9)膜を形成する。本ステップにおける第2の強誘電体膜は、温度330℃、圧力2.66×102Pa(2Torr)の条件下、ECH(エチルシクロヘキサン)中にST−1[Sr(Ta(OEt)5(OC2H4OMe))2]が0.1mol%の濃度で希釈されたガスを流量100×10−3ml/minで、ECH(エチルシクロヘキサン)中にBi(MMP)3が0.2mol%の濃度で希釈されたガスを流量200×10−3ml/minで、ECH(エチルシクロヘキサン)中にPET[Ta(OC2H5)5]が0.1mol%の濃度で希釈されたガスを流量100×10−3ml/minで、酸素(O2)ガスを流量1000×10−3ml/minで、及びアルゴン(Ar)ガスを流量1900×10−3ml/minで流しながら、約20分間これらのソースガスを反応させることによって形成される。
ここで、前述したように、ステップS53aにおける第1の強誘電体膜の成長条件では、酸素(O2)ガスのガス流量を2100×10−3ml/minと設定する一方、ステップS53bにおける第2の強誘電体膜の成長条件では、酸素(O2)ガスのガス流量を1000×10−3ml/minと設定している。このように、第1の強誘電体膜を形成するために用いるCVD用ガスに含まれる酸素の濃度を、第2の強誘電体膜を形成するために用いるCVD用ガスに含まれる酸素の濃度よりも高く設定している。
次に、ステップS54において、スパッタ法により、ステップS53bにて形成された第2の強誘電体膜の上に、白金膜よりなる上部電極を形成する。
次に、ステップS55において、リソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、ステップS54にて形成された上部電極をパターニングする。
以上に示した製造工程を経ることにより、本実施形態に係る半導体装置を製造することができる。また、この半導体装置における第1の強誘電体膜中のビスマスの濃度と第2の強誘電体膜中のビスマスの濃度とは、ほぼ等しくなっている。なお、本実施形態に係る半導体装置の構造については、例えば前述した図2と同様であるので、ここでは図示を省略している。
以下に、本発明の第5の実施形態において、第1の強誘電体膜を形成するために用いるCVD用ガスに含まれる酸素の濃度を、第2の強誘電体膜を形成するために用いるCVD用ガスに含まれる酸素の濃度よりも高く設定している理由について説明する。
CVD法では、300〜400℃程度の熱により、CVD用ガスを互いに反応させながら、強誘電体膜の成膜を行なっているが、成膜の初期段階ではビスマスが下地の白金膜よりなる電極中へ熱拡散してしまう。このため、形成されたSBT膜における下部の領域においてビスマスの濃度が下がっているものと考えられる。このため、本発明の第1の実施形態では、前述したように、ビスマスが下地の白金よりなる下部電極中に拡散する分だけビスマスの濃度を高くしたCVD用ガスを用いて第1の強誘電体膜を形成すると共に、該第1の強誘電体膜を形成するために用いるCVD用ガスにおけるビスマスの濃度よりも低い通常のビスマスの濃度を有するCVD用ガスを用いて第2の強誘電体膜を形成することにしている。
ところで、概ね350℃の条件下で行なうCVD法では、CVD用ガスの供給変化に応じて形成されるSBT膜における濃度変化が発生する。その理由は、CVD法によるSBT膜の成膜が、ガス供給律速で進行しているからであると考えられる。一方、立体型キャパシタを形成する場合、凹凸形状を有する下地上に強誘電体膜を形成する必要があるが、ガス供給律速による成膜が行なわれる場合、概ね350℃という温度は、強誘電体膜の段差被覆特性が劣化し始める温度である。このため、凹凸形状の下地上に段差被覆性良く強誘電体膜を安定的に量産できる温度範囲が狭いという問題がある。この点、CVD法における温度条件として300〜350℃程度の熱によってガスを反応させながら成膜を行なうということも考えられるが、300〜350℃程度という温度範囲ではガス反応律速に支配された成膜となるので、強誘電体膜が所望の組成を有するようにCVD用ガスの供給を調整しても、その供給の変化に対応していない組成を有するSBT膜が得られる。
このような問題に鑑みた鋭意検討の結果、反応律速下における成膜であっても、所望の組成を有するSBT(SrBi2Ta2O9)膜を得る手法を見い出した。すなわち、反応律速下における成膜の場合、CVD用ガスにおけるストロンチウム、ビスマス、及びタンタルの濃度とはほぼ無関係に、組成ずれがないSBT膜(SrBi2Ta2O9)膜を得ることが可能なのであるが、現実には、前述してきたように、ビスマスが下部電極中へ熱拡散するので、反応律速下においても組成ずれが生じてしまう。このため、本実施形態では、第1の強誘電体膜を形成する際に酸素を十分供給して酸素リッチな雰囲気下とすることにより、ビスマスが下部電極中へ熱拡散することを排除することができる。これにより、形成された第1の強誘電体膜におけるビスマスの濃度と第2の強誘電体膜におけるビスマスの濃度とをほぼ等しくすることができる。このようにして、第1の強誘電体膜及び第2の強誘電体膜におけるビスマスの濃度の均一性を膜厚方向において向上させることができる。
また、本発明の第5の実施形態に係る半導体装置を構成する立体型キャパシタのPnv値は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を構成する立体型キャパシタのPnv値とほぼ等しい値であった。このため、本発明の第5の実施形態に係る半導体装置の電気的特性は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の電気的特性と同様に、優れた値を有することが分かる。
また、本発明の第5の実施形態においては、第1の強誘電体膜及び第2の強誘電体膜におけるビスマスの濃度が等しくなるように、第1の強誘電体膜を形成するために用いるCVD用ガスの酸素濃度を調整したが、これに加えて、本発明の第2の実施形態のように、第1の強誘電体膜を形成するために用いるCVD用ガスにおけるタンタル濃度を低くしてもよい。このようにすると、第1の強誘電体膜及び第2の強誘電体膜に含まれるストロンチウム、ビスマス、及びタンタルの濃度がほぼ等しくなるので、さらに優れた電気的特性を有する半導体装置を実現することができる。
なお、本発明の第5の実施形態においては、CVD法により、SBT膜よりなる強誘電体膜を形成する場合について説明したが、CVD法によってNbを含むSBTN膜を形成する場合、又は、CVD法によってBLT膜等のビスマス層状構造を有する強誘電体膜を形成する場合であっても、前述と同様の効果を得ることができる。
また、本発明の第5の実施形態においては、熱CVD法によって強誘電体膜を形成する場合について説明したが、プラズマCVD法等の熱を加える他のCVD法によって強誘電体膜を形成する場合であっても、前述と同様の効果を得ることができる。