[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子の製造方法は、例えば、薄膜磁気ヘッドにおける再生ヘッドに含まれる磁気抵抗効果素子に適用される。
始めに、図3および図4を参照して、上記薄膜磁気ヘッドの構成の一例について説明する。図3は薄膜磁気ヘッドの媒体対向面および基板に垂直な断面を示す断面図、図4は薄膜磁気ヘッドの磁極部分の媒体対向面に平行な断面を示す断面図である。
図3および図4に示した薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面20を備えている。また、薄膜磁気ヘッドは、アルティック(Al2O3・TiC)等のセラミック材料よりなる基板1と、この基板1の上に配置されたアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料よりなる絶縁層2と、この絶縁層2の上に配置された磁性材料よりなる第1のシールド層3と、この第1のシールド層3の上に配置されたMR素子5と、このMR素子5の2つの側部に隣接するように配置された2つのバイアス磁界印加層6と、MR素子5およびバイアス磁界印加層6の周囲に配置された絶縁層7とを備えている。MR素子5は、媒体対向面20の近傍に配置されている。絶縁層7は、アルミナ等の絶縁材料によって形成されている。
薄膜磁気ヘッドは、更に、MR素子5、バイアス磁界印加層6および絶縁層7の上に配置された磁性材料よりなる第2のシールド層8と、この第2のシールド層8の上に配置されたアルミナ等の非磁性材料よりなる分離層18と、この分離層18の上に配置された磁性材料よりなる下部磁極層19とを備えている。第2のシールド層8および下部磁極層19に用いる磁性材料は、NiFe、CoFe、CoFeNi、FeN等の軟磁性材料である。なお、第2のシールド層8、分離層18および下部磁極層19の代わりに、下部磁極層を兼ねた第2のシールド層を設けてもよい。
薄膜磁気ヘッドは、更に、下部磁極層19の上に配置されたアルミナ等の非磁性材料よりなる記録ギャップ層9を備えている。記録ギャップ層9には、媒体対向面20から離れた位置においてコンタクトホール9aが形成されている。
薄膜磁気ヘッドは、更に、記録ギャップ層9の上に配置された薄膜コイルの第1層部分10を備えている。第1層部分10は、銅(Cu)等の導電材料によって形成されている。なお、図3において、符号10aは、第1層部分10のうち、後述する薄膜コイルの第2層部分15に接続される接続部を表している。第1層部分10は、コンタクトホール9aの周囲に巻回されている。
薄膜磁気ヘッドは、更に、薄膜コイルの第1層部分10およびその周辺の記録ギャップ層9を覆うように配置された絶縁材料よりなる絶縁層11と、磁性材料よりなる上部磁極層12と、接続部10aの上に配置された導電材料よりなる接続層13とを備えている。接続層13は、磁性材料によって形成されていてもよい。絶縁層11の外周および内周の各端縁部分は、丸みを帯びた斜面形状となっている。
上部磁極層12は、トラック幅規定層12aと連結部分層12bとヨーク部分層12cとを有している。トラック幅規定層12aは、絶縁層11のうちの媒体対向面20側の斜面部分から媒体対向面20側にかけての領域において、記録ギャップ層9および絶縁層11の上に配置されている。トラック幅規定層12aは、記録ギャップ層9の上に形成され、上部磁極層12の磁極部分となる先端部と、絶縁層11の媒体対向面20側の斜面部分の上に形成され、ヨーク部分層12cに接続される接続部とを有している。先端部の幅は記録トラック幅と等しくなっている。接続部の幅は、先端部の幅よりも大きくなっている。
連結部分層12bは、コンタクトホール9aが形成された位置において、下部磁極層19の上に配置されている。ヨーク部分層12cは、トラック幅規定層12aと連結部分層12bとを連結している。ヨーク部分層12cの媒体対向面20側の端部は、媒体対向面20から離れた位置に配置されている。また、ヨーク部分層12cは、連結部分層12bを介して下部磁極層19に接続されている。
薄膜磁気ヘッドは、更に、連結部分層12bおよび連結部分層12bの周囲に配置されたアルミナ等の無機絶縁材料よりなる絶縁層14を備えている。トラック幅規定層12a、連結部分層12b、接続層13および絶縁層14の上面は平坦化されている。
薄膜磁気ヘッドは、更に、絶縁層14の上に配置された薄膜コイルの第2層部分15を備えている。第2層部分15は、銅(Cu)等の導電材料によって形成されている。なお、図3において、符号15aは、第2層部分15のうち、接続層13を介して薄膜コイルの第1層部分10の接続部10aに接続される接続部を表している。第2層部分15は、連結部分層12bの周囲に巻回されている。
薄膜磁気ヘッドは、更に、薄膜コイルの第2層部分15およびその周辺の絶縁層14を覆うように配置された絶縁層16を備えている。絶縁層16の外周および内周の各端縁部分は、丸みを帯びた斜面形状となっている。ヨーク部分層12cの一部は、絶縁層16の上に配置されている。
薄膜磁気ヘッドは、更に、上部磁極層12を覆うように配置されたオーバーコート層17を備えている。オーバーコート層17は、例えばアルミナによって構成されている。
次に、図3および図4に示した薄膜磁気ヘッドの製造方法の概略について説明する。この製造方法では、まず、基板1の上に、スパッタ法等によって絶縁層2を、例えば0.2〜5μmの厚みに形成する。次に、絶縁層2の上に、めっき法等によって第1のシールド層3を、所定のパターンに形成する。次に、図示しないが、全体に、例えばアルミナよりなる絶縁層を形成する。次に、例えば化学機械研磨(以下、CMPという。)によって、第1のシールド層3が露出するまで絶縁層を研磨して、第1のシールド層3および絶縁層の上面を平坦化する。
次に、第1のシールド層3の上に、MR素子5と、2つのバイアス磁界印加層6と、絶縁層7とを形成する。次に、MR素子5、バイアス磁界印加層6および絶縁層7の上に、第2のシールド層8を形成する。第2のシールド層8は、例えばめっき法またはスパッタ法によって形成される。次に、第2のシールド層8の上に、スパッタ法等によって、分離層18を形成する。次に、この分離層18の上に、例えばめっき法またはスパッタ法によって、下部磁極層19を形成する。
次に、下部磁極層19の上に、スパッタ法等によって、記録ギャップ層9を、例えば50〜300nmの厚みに形成する。次に、磁路形成のために、後に形成される薄膜コイルの中心部分において、記録ギャップ層9を部分的にエッチングしてコンタクトホール9aを形成する。
次に、記録ギャップ層9の上に、薄膜コイルの第1層部分10を、例えば2〜3μmの厚みに形成する。第1層部分10は、コンタクトホール9aの周囲に巻回される。
次に、薄膜コイルの第1層部分10およびその周辺の記録ギャップ層9を覆うように、フォトレジスト等の、加熱時に流動性を有する有機絶縁材料よりなる絶縁層11を所定のパターンに形成する。次に、絶縁層11の表面を平坦にするために所定の温度で熱処理する。この熱処理により、絶縁層11の外周および内周の各端縁部分は、丸みを帯びた斜面形状となる。
次に、絶縁層11のうちの後述する媒体対向面20側の斜面部分から媒体対向面20側にかけての領域において、記録ギャップ層9および絶縁層11の上に、上部磁極層12のトラック幅規定層12aを形成する。
トラック幅規定層12aを形成する際には、同時に、コンタクトホール9aが形成された位置において下部磁極層19の上に連結部分層12bを形成すると共に、接続部10aの上に接続層13を形成する。
次に、磁極トリミングを行う。すなわち、トラック幅規定層12aの周辺領域において、トラック幅規定層12aをマスクとして、記録ギャップ層9および下部磁極層19の磁極部分における記録ギャップ層9側の少なくとも一部をエッチングする。これにより、図3に示したように、上部磁極層12の磁極部分、記録ギャップ層9および下部磁極層19の磁極部分の少なくとも一部の各幅が揃えられたトリム(Trim)構造が形成される。このトリム構造によれば、記録ギャップ層9の近傍における磁束の広がりによる実効的なトラック幅の増加を防止することができる。
次に、ここまでの工程によって形成された積層体の上面全体の上に絶縁層14を、例えば3〜4μmの厚みに形成する。次に、この絶縁層14を、例えばCMPによって、トラック幅規定層12a、連結部分層12bおよび接続層13の表面に至るまで研磨して平坦化する。
次に、平坦化された絶縁層14の上に、薄膜コイルの第2層部分15を、例えば2〜3μmの厚みに形成する。第2層部分15は、連結部分層12bの周囲に巻回される。
次に、薄膜コイルの第2層部分15およびその周辺の絶縁層14を覆うように、フォトレジスト等の、加熱時に流動性を有する有機絶縁材料よりなる絶縁層16を所定のパターンに形成する。次に、絶縁層16の表面を平坦にするために所定の温度で熱処理する。この熱処理により、絶縁層16の外周および内周の各端縁部分は、丸みを帯びた斜面形状となる。次に、トラック幅規定層12a、絶縁層14,16および連結部分層12bの上に、ヨーク部分層12cを形成する。
次に、ここまでの工程によって形成された積層体の上面全体を覆うように、オーバーコート層17を形成する。次に、オーバーコート層17の上に配線や端子等を形成する。最後に、上記各層を含むスライダの機械加工を行って媒体対向面20を形成して、記録ヘッドおよび再生ヘッドを含む薄膜磁気ヘッドが完成する。
このようにして製造される薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面20と再生ヘッドと記録ヘッドとを備えている。再生ヘッドは、記録媒体からの信号磁界を検出するために媒体対向面20の近傍に配置されている。再生ヘッドの構成については、後で詳しく説明する。
記録ヘッドは、媒体対向面20側において互いに対向する磁極部分を含むと共に、互いに磁気的に連結された下部磁極層19および上部磁極層12と、この下部磁極層19の磁極部分と上部磁極層12の磁極部分との間に設けられた記録ギャップ層9と、少なくとも一部が下部磁極層19および上部磁極層12の間に、これらに対して絶縁された状態で配設された薄膜コイル10,15とを有している。この薄膜磁気ヘッドでは、図2に示したように、媒体対向面20から、絶縁層11の媒体対向面20側の端部までの長さが、スロートハイトTHとなる。なお、スロートハイトとは、媒体対向面20から、2つの磁極層の間隔が大きくなり始める位置までの長さ(高さ)をいう。なお、図3および図4には、長手磁気記録方式用の記録ヘッドを示したが、本実施の形態が適用される薄膜磁気ヘッドにおいて、記録ヘッドは垂直磁気記録方式用の記録ヘッドであってもよい。
次に、図1および図2を参照して、再生ヘッドの構成について詳しく説明する。図1は再生ヘッドの媒体対向面に平行な断面を示す断面図、図2は再生ヘッドの媒体対向面および基板に垂直な断面を示す断面図である。図1および図2に示したように、再生ヘッドは、所定の間隔を開けて配置された第1のシールド層3および第2のシールド層8と、第1のシールド層3と第2のシールド層8との間に配置されたMR素子5とを備えている。MR素子5および第2のシールド層8は第1のシールド層3に積層されている。
再生ヘッドは、更に、MR素子5の2つの側部に隣接するように配置され、MR素子5に対してバイアス磁界を印加する2つのバイアス磁界印加層6と、第1のシールド層3およびMR素子5とバイアス磁界印加層6との間に配置された絶縁層4とを備えている。
バイアス磁界印加層6は、硬磁性層(ハードマグネット)や、強磁性層と反強磁性層との積層体等を用いて構成される。具体的には、バイアス磁界印加層6は、例えばCoPtやCoCrPtによって形成される。絶縁層4は、例えばアルミナによって形成される。
MR素子5は、電流狭窄型のCPP−GMR素子になっている。このMR素子5には、磁気的信号検出用の電流であるセンス電流が、MR素子5を構成する各層の面と交差する方向、例えばMR素子5を構成する各層の面に対して垂直な方向に流される。第1のシールド層3と第2のシールド層8は、センス電流を、MR素子5に対して、MR素子5を構成する各層の面と交差する方向、例えばMR素子5を構成する各層の面に対して垂直な方向に流すための一対の電極を兼ねている。なお、第1のシールド層3および第2のシールド層8とは別に、MR素子5の上下に一対の電極を設けてもよい。MR素子5は、外部磁界、すなわち記録媒体からの信号磁界に応じて抵抗値が変化する。MR素子5の抵抗値はセンス電流より求めることができる。このようにして、再生ヘッドによって、記録媒体に記録されている情報を再生することができる。
図1および図2には、MR素子5の構成の一例を示している。このMR素子5は、信号磁界に応じて磁化の方向が変化する強磁性層である自由層25と、磁化の方向が固定された強磁性層である固定層23と、自由層25と固定層23との間に配置されたスペーサ層24とを備えている。本実施の形態では、固定層23と自由層25のうち、固定層23の方が第1のシールド層3に近い位置に配置されている。MR素子5は、更に、固定層23におけるスペーサ層24とは反対側に配置された反強磁性層22と、第1のシールド層3と反強磁性層22との間に配置された下地層21と、自由層25と第2のシールド層8との間に配置された保護層26とを備えている。図1および図2に示したMR素子5では、第1のシールド層3の上に、下地層21、反強磁性層22、固定層23、スペーサ層24、自由層25および保護層26が順に積層されている。本実施の形態において、固定層23は本発明における第1の磁性層に対応し、自由層25は本発明における第2の磁性層に対応する。
反強磁性層22は、固定層23との交換結合により、固定層23における磁化の方向を固定する層である。下地層21は、その上に形成される各層の結晶性や配向性を向上させ、特に、反強磁性層22と固定層23との交換結合を良好にするために設けられる。保護層26は、その下の各層を保護するための層である。
下地層21の厚みは、例えば2〜8nmである。下地層21としては、例えばTa層とNiFeCr層との積層体が用いられる。
反強磁性層22の厚みは、例えば5〜30nmである。反強磁性層22は、例えば、Pt、Ru、Rh、Pd、Ni、Cu、Ir、CrおよびFeからなる群のうちの少なくとも1種MIIと、Mnとを含む反強磁性材料により構成されている。このうちMnの含有量は35原子%以上95原子%以下、その他の元素MIIの含有量は5原子%以上65原子%以下であることが好ましい。この反強磁性材料には、熱処理しなくても反強磁性を示し、強磁性材料との間に交換結合磁界を誘起する非熱処理系反強磁性材料と、熱処理により反強磁性を示すようになる熱処理系反強磁性材料とがある。この反強磁性層22は、そのどちらにより構成されていてもよい。非熱処理系反強磁性材料にはγ相を有するMn合金等があり、具体的には、RuRhMn、FeMnあるいはIrMn等がある。熱処理系反強磁性材料には規則結晶構造を有するMn合金等があり、具体的には、PtMn、NiMnおよびPtRhMn等がある。
なお、固定層23における磁化の方向を固定する層として、上記のような反強磁性層22の代わりに、CoPt等の硬磁性材料よりなる硬磁性層を設けてもよい。この場合には、下地層21の材料としては、Cr、CrTi、TiW等が用いられる。
固定層23では、反強磁性層22との界面における交換結合により、磁化の向きが固定されている。本実施の形態における固定層23は、反強磁性層22の上に順に積層されたアウター層31、非磁性中間層32およびインナー層33を有し、いわゆるシンセティック固定層になっている。アウター層31およびインナー層33は、例えば、CoおよびFeからなる群のうちの少なくともCoを含む強磁性材料により構成された強磁性層を含んでいる。アウター層31とインナー層33は、反強磁性的に結合し、磁化の方向が互いに逆方向に固定されている。アウター層31の厚みは、例えば3〜7nmである。インナー層33の厚みは、例えば3〜10nmである。
非磁性中間層32の厚みは、例えば0.35〜1.0nmである。非磁性中間層32は、例えば、Ru、Rh、Ir、Re、Cr、ZrおよびCuからなる群のうち少なくとも1種を含む非磁性材料により構成されている。この非磁性中間層32は、インナー層33とアウター層31の間に反強磁性交換結合を生じさせ、インナー層33の磁化とアウター層31の磁化とを互いに逆方向に固定するためのものである。なお、インナー層33の磁化とアウター層31の磁化が互いに逆方向というのは、これら2つの磁化の方向が互いに180°異なる場合のみならず、2つの磁化の方向が180°±20°異なる場合を含む。
後で詳しく説明するが、本実施の形態におけるスペーサ層24は、その面に平行な断面において混在するように絶縁部と導電部とを含んでいる。
自由層25の厚みは、例えば2〜10nmである。自由層25は、保磁力が小さい強磁性層によって構成されている。自由層25は、積層された複数の強磁性層を含んでいてもよい。
保護層26の厚みは、例えば0.5〜20nmである。保護層26としては、例えばCu層とRu層との積層体が用いられる。
なお、インナー層33と自由層25の少なくとも一方は、ホイスラー合金層を含んでいてもよい。
次に、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの作用について説明する。薄膜磁気ヘッドは、記録ヘッドによって記録媒体に情報を記録し、再生ヘッドによって、記録媒体に記録されている情報を再生する。
再生ヘッドにおいて、バイアス磁界印加層6によるバイアス磁界の方向は、媒体対向面20に垂直な方向と直交している。MR素子5において、信号磁界がない状態では、自由層25の磁化の方向は、バイアス磁界の方向に揃えられている。一方、固定層23の磁化の方向は、媒体対向面20に垂直な方向に固定されている。
MR素子5では、記録媒体からの信号磁界に応じて自由層25の磁化の方向が変化し、これにより、自由層25の磁化の方向と固定層23の磁化の方向との間の相対角度が変化し、その結果、MR素子5の抵抗値が変化する。MR素子5の抵抗値は、第1および第2のシールド層3,8によってMR素子5にセンス電流を流したときのシールド層3,8間の電位差より求めることができる。このようにして、再生ヘッドによって、記録媒体に記録されている情報を再生することができる。
本実施の形態におけるMR素子5では、スペーサ層24は、その面に平行な断面において混在するように絶縁部と導電部とを含んでいる。そのため、本実施の形態におけるMR素子5では、スペーサ層24において電流が導電部を局所的に流れる。これにより、本実施の形態におけるMR素子5では、スペーサ層が非磁性導電層のみによって構成された一般的なCPP−GMR素子に比べて、MR素子5の面積抵抗、抵抗値および抵抗変化量を大きくすることができると共に、スピントルクの影響を抑制することができる。
次に、本実施の形態に係るMR素子5の製造方法について説明する。本実施の形態に係るMR素子5の製造方法は、第1のシールド層3の上に順に下地層21、反強磁性層22、固定層23、スペーサ層24、自由層25および保護層26を形成する各工程を備えている。スペーサ層24以外の各層は、例えばスパッタ法によって形成される。ここで、固定層23を形成する工程は本発明における第1の磁性層を形成する工程に対応し、自由層25を形成する工程は本発明における第2の磁性層を形成する工程に対応する。
以下、図9ないし図14を参照して、本実施の形態におけるスペーサ層24の形成方法について詳しく説明する。図9ないし図14は、それぞれ、スペーサ層24の形成過程における積層体の断面図である。
本実施の形態におけるスペーサ層24の形成方法では、まず、図9に示したように、固定層23の上に、非磁性金属材料よりなる第1の非磁性金属層41を形成する。第1の非磁性金属層41を構成する非磁性金属材料としては、例えばCuが用いられる。第1の非磁性金属層41は、例えばスパッタ法によって形成される。また、形成当初の第1の非磁性金属層41の厚みは、例えば2nmとする。
次に、第1の非磁性金属層41の上に、島状構造となるように、あるいは上面が凹凸を有するように、非磁性金属材料よりなる第2の非磁性金属層42を形成する。ここで、第1の非磁性金属層41および第2の非磁性金属層42よりなる積層体を積層膜51と呼ぶ。なお、図9には、島状構造となるように第2の非磁性金属層42を形成した例を示している。図9に示した状態から更に第2の非磁性金属層42の成膜を続けることにより、上面が凹凸を有するように第2の非磁性金属層42を形成することができる。第2の非磁性金属層42を構成する非磁性金属材料としては、例えばAgが用いられる。Agの薄膜は島状に成長しやすいので、第2の非磁性金属層42を構成する非磁性金属材料としては、特にAgが好ましい。また、第2の非磁性金属層42は、例えば真空蒸着法によって形成される。第2の非磁性金属層42は、スパッタ法によって形成してもよいが、真空蒸着法によって形成した方が、第2の非磁性金属層42が島状に成長しやすいので好ましい。また、形成当初の第2の非磁性金属層42における最大の厚みは、例えば1nmとする。
次に、図10に示したように、第2の非磁性金属層42が除去されると共に第1の非磁性金属層41の上面に凹凸が形成されるように、積層膜51の上面をエッチングする。この工程は、本発明における第1のエッチングに対応する。この工程におけるエッチングは、例えばイオンミリングを用いて行われる。図9に示したように、このエッチングを行う前の状態における積層膜51の上面は凹凸を有している。そのため、第2の非磁性金属層42が除去されるように積層膜51の上面をエッチングすると、図10に示したように、第1の非磁性金属層41の上面には、図9に示した積層膜51の上面における凹凸に対応した形状の凹凸が形成される。なお、第1の非磁性金属層41の材料としてCuを用い、第2の非磁性金属層42の材料としてAgを用いた場合、第1の非磁性金属層41と第2の非磁性金属層42のイオンミリングにおけるエッチング速度はほぼ等しい。
この工程では、第2の非磁性金属層42が確実に除去されるように、形成当初の第2の非磁性金属層42における最大の厚みより大きい厚みだけ、積層膜51の上面をエッチングしてもよい。例えば、形成当初の第1の非磁性金属層41の厚みが2nmで、形成当初の第2の非磁性金属層42における最大の厚みが1nmの場合には、積層膜51の上面を例えば1.2nmだけエッチングしてもよい。この場合、エッチング後の第1の非磁性金属層41の厚みは、凸部に対応する部分で1.8nmとなり、凹部に対応する部分で0.8nmとなる。
なお、積層膜51の上面をエッチングする前の時点では、積層膜51の上面近傍には酸化によって薄い酸化層が形成されている。しかし、積層膜51の上面をエッチングすることにより、この酸化層は完全に除去される。
次に、図11に示したように、第1の非磁性金属層41の上に、絶縁材料よりなる絶縁層43を形成する。絶縁層43の形成工程は、図10に示したエッチング工程の後、積層体を一旦大気中に開放することなく行われる。絶縁層43を構成する絶縁材料としては、例えばAl2O3が用いられる。絶縁層43は、例えばスパッタ法によって形成される。形成当初の絶縁層43の厚みは、第1の非磁性金属層41の上面における凹部が絶縁層43によって埋まる程度とする。形成当初の絶縁層43のうち、第1の非磁性金属層41の上面における凸部の上に配置された部分の厚みは、第1の非磁性金属層41の上面における凹部の上に配置された部分の厚みよりも小さい。形成当初の絶縁層43における最大の厚みは、例えば1.5〜2.0nmの範囲内とする。
次に、図12に示したように、第1の非磁性金属層41の上面における凸部が露出し、且つ第1の非磁性金属層41の上面における凹部に絶縁層43が残るように、絶縁層43の一部をウェットエッチングによってエッチングする。この工程は、本発明における第2のエッチングに対応する。この工程において、エッチャントとしては、例えば、低濃度の現像液が用いられる。
前述のように、形成当初の絶縁層43のうち、第1の非磁性金属層41の上面における凸部の上に配置された部分の厚みは、第1の非磁性金属層41の上面における凹部に配置された部分の厚みよりも小さい。また、ウェットエッチングにおけるエッチング速度は、絶縁層43のうち、第1の非磁性金属層41の上面における凸部の上に配置された部分の方が、第1の非磁性金属層41の上面における凹部に配置された部分よりも大きい。これらのことから、エッチング時間を調整することにより、第1の非磁性金属層41の上面における凸部が露出し、且つ第1の非磁性金属層41の上面における凹部に絶縁層43が残るように絶縁層43の一部をエッチングすることが可能である。
絶縁層43の一部をウェットエッチングによってエッチングした後、第1の非磁性金属層41の上面のうち露出した部分に形成される薄い酸化層を除去するために、例えばイオンミリングによって、第1の非磁性金属層41および絶縁層43の上面をわずかにエッチングしてもよい。
次に、図13に示したように、第1の非磁性金属層41および絶縁層43の上に、非磁性金属材料よりなる第3の非磁性金属層44を形成する。第3の非磁性金属層44を構成する非磁性金属材料としては、例えばCuが用いられる。第3の非磁性金属層44は、例えばスパッタ法によって形成される。また、第3の非磁性金属層44の厚みは、例えば1.5nmとする。スパッタ法によって形成された第3の非磁性金属層44の上面は、ほぼ平坦になる。
以上の工程により、第1の非磁性金属層41、絶縁層43および第3の非磁性金属層44よりなるスペーサ層24が形成される。その後、図14に示したように、スペーサ層24の上に自由層25が形成される。
なお、図13に示した工程を省略して、図12に示した工程の後、第3の非磁性金属層44を形成せずに、第1の非磁性金属層41および絶縁層43の上に自由層25を形成しもよい。
図15は、図14における15−15線で示す位置におけるスペーサ層24の断面を示している。この断面は、スペーサ層24の面に平行な断面である。この断面には、絶縁層43によって形成された絶縁部63と、第1の非磁性金属層41によって形成された導電部61とが混在している。図14に示したように、スペーサ層24の面に垂直な断面を見ると、絶縁部63と導電部61との境界の近傍に配置される絶縁層43の縁部は、第1の非磁性金属層41の上面における凸部に若干乗り上げるような形状となっている。
なお、図15に示した例では、スペーサ層24の面に平行な断面において、孤立した複数の導電部61が存在し、この孤立した複数の導電部61の間に絶縁部63が配置されている。このような分布は、図9に示した工程において、島状構造となるように第2の非磁性金属層42を形成した場合や、第2の非磁性金属層42の上面において複数の孤立した凸部が形成されるように第2の非磁性金属層42を形成した場合に実現することができる。これとは逆に、スペーサ層24の面に平行な断面において、孤立した複数の絶縁部63が存在し、この孤立した複数の絶縁部63の間に導電部61が配置されるように、スペーサ層24を形成することも可能である。これは、図9に示した工程において、第2の非磁性金属層42の上面において複数の孤立した凹部が形成されるように第2の非磁性金属層42を形成した場合に実現することができる。
[第1の実験]
次に、図12に示した工程におけるエッチング時間(以下、ウェットエッチング時間という。)を調整することにより、図15に示したように、スペーサ層24の面に平行な断面において絶縁部63と導電部61とが混在する構造のスペーサ層24を実現できることを確認した第1の実験について説明する。この実験では、図16に示した構成の試料1〜4を作成した。試料1〜4は、下部電極膜73と、この下部電極膜73の上に配置されたMR素子5と、下部電極膜73の上においてMR素子5の周囲に配置された絶縁層74と、MR素子5および絶縁層74の上に配置された上部電極膜78とを備えている。試料1〜4におけるMR素子5の構成は、図1に示したMR素子5と同様である。下部電極膜73はNiFeによって形成した。上部電極膜78はCuによって形成した。絶縁層74はAl2O3によって形成した。試料1〜4におけるMR素子5は、上面の形状が直径0.3μmの円形となる円錐台形状となるように、イオンミリングによって加工した。
試料1〜4におけるMR素子5の具体的な膜構成を、以下の表1に示す。なお、以下、CoをM原子%、FeをN原子%含むCoFe合金をCoMFeNと表す。また、Niを81原子%、Feを19原子%含むNiFe合金をNi81Fe19と表す。
試料1〜4におけるスペーサ層24は、以下のような条件で、図9ないし図13に示した工程に従って形成した。図9に示した工程では、第1の非磁性金属層41を構成する非磁性金属材料としてCuを用い、形成当初の第1の非磁性金属層41の厚みを2nmとした。また、第2の非磁性金属層42は、島状構造となるように形成した。第2の非磁性金属層42を構成する非磁性金属材料としてはAgを用い、形成当初の第2の非磁性金属層42における最大の厚みを1nmとした。図10に示した工程では、積層膜51の上面を1.2nmだけエッチングした。従って、エッチング後の第1の非磁性金属層41のうち凹部に対応する部分における厚みは0.8nmである。図11に示した工程では、絶縁層43を構成する絶縁材料としてAl2O3を用い、形成当初の絶縁層43における最大の厚みを1.5nmとした。図12に示した工程では、エッチャントとしての現像液として、濃度2.38%のTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)の水溶液を用いた。均一な厚みのAl2O3膜の上記現像液に対するエッチング速度は、0.05nm/秒であった。なお、図12に示した工程において、絶縁層43のうち、第1の非磁性金属層41の上面における凸部の上に配置された部分の上記現像液に対するエッチング速度は、0.05nm/秒よりも大きくなると予想される。試料1〜4では、ウェットエッチング時間が互いに異なっている。図13に示した工程では、第3の非磁性金属層44を構成する非磁性金属材料としてCuを用い、第3の非磁性金属層44の厚みを1.5nmとした。
表1において、スペーサ層24中の、物質が「Cu/Al2O3」と表記された厚み1.5nmの層は、スペーサ層24のうち、スペーサ層24の面に平行な断面においてCuよりなる導電部61とAl2O3よりなる絶縁部63とが混在する領域を表している。また、表1において、スペーサ層24中の厚み0.8nmのCu層は、スペーサ層24のうちの上記の領域よりも下側の部分を表している。また、表1において、スペーサ層24中の厚み1.5nmのCu層は、スペーサ層24のうちの上記の領域よりも上側の部分を表している。
実験では、試料1〜4とはスペーサ層の構成および形成方法のみが異なる試料である比較例1も作成した。比較例1におけるMR素子の具体的な膜構成を以下の表2に示す。比較例1は、試料1〜4におけるスペーサ層24の代わりに、スパッタ法によって形成された厚み3nmのCu層よりなるスペーサ層を備えている。従って、比較例1におけるMR素子は、一般的なCPP−GMR素子になっている。
実験では、試料1〜4におけるMR素子5と比較例1におけるMR素子について、面積抵抗(Ω・μm2)とMR比(%)を測定した。以下の表3に、比較例1について面積抵抗およびMR比を示すと共に、試料1〜4について、ウェットエッチング時間、面積抵抗およびMR比を示す。
表3から分かるように、ウェットエッチング時間が10秒である試料1では、試料2〜4に比べて面積抵抗が大幅に大きい。また、試料1ではMR比が小さい。このことから、試料1では、ウェットエッチング時間が短いために、図12に示した工程において第1の非磁性金属層41の上面における凸部が露出せず、第1の非磁性金属層41の上面全体に絶縁層43が残ったと考えられる。これに対し、ウェットエッチング時間が15秒以上である試料2〜4では、試料1に比べて、面積抵抗が大幅に小さくなっており、MR比は大きくなっている。このことから、第1の実験における条件では、ウェットエッチング時間を15秒以上とすることにより、図12に示した工程において第1の非磁性金属層41の上面における凸部が露出し、スペーサ層24中に導電部が形成されることが分かる。ただし、ウェットエッチング時間が長すぎると、図12に示した工程において絶縁層43の全体が除去されて、スペーサ層24中に絶縁部が形成されなくなってしまう。従って、ウェットエッチング時間には上限がある。比較例1におけるMR素子は一般的なCPP−GMR素子になっていることから、比較例1では試料2〜4に比べて面積抵抗が大幅に小さくなっている。
以上の第1の実験により、ウェットエッチング時間を調整することにより、スペーサ層24の面に平行な断面において絶縁部63と導電部61とが混在する構造のスペーサ層24を実現できることが分かる。なお、この構造を実現するためウェットエッチング時間は、絶縁層43を構成する絶縁材料や、形成当初の絶縁層43の厚みや、エッチャント等によって異なるため、これらの条件に応じて適宜設定すればよい。
[第2の実験]
次に、本実施の形態に係る製造方法によって製造されたMR素子5と、スペーサ層形成時に酸化処理を行う製造方法によって製造されたMR素子とでMR比を比較した第2の実験について説明する。この実験では、第1の実験において作製した試料3と、試料3とはスペーサ層の構成および形成方法のみが異なる試料である比較例2とについて、MR比を比較した。試料3におけるMR素子5は、本実施の形態に係る製造方法によって製造されたものである。比較例2におけるMR素子の具体的な膜構成を以下の表4に示す。比較例2におけるスペーサ層は、以下のようにして形成した。まず、インナー層33の上に厚み0.5nmのCu層を形成した。次に、このCu層の上に、厚み1nmのAlCu層を形成した。次に、このAlCu層に希ガスのイオンビームを照射して、AlとCuとを分離させた。次に、AlCu層に対して酸化処理を施して、Alを酸化させて、Al2O3よりなる絶縁部とCuよりなる導電部とが混在する層を形成した。次に、この層の上に厚み0.5nmのCu層を形成して、比較例2におけるスペーサ層を完成させた。また、比較例2におけるMR素子は、試料3におけるMR素子5の面積抵抗(0.25Ω・μm2)と同じ値の面積抵抗を有するように作製した。
以下の表5に、比較例2と試料3についての面積抵抗とMR比を示す。
表5から分かるように、比較例2と試料3では、MR素子の面積抵抗は等しいが、MR素子のMR比は試料3の方が大きくなっている。このことから、本実施の形態に係る製造方法によって製造されたMR素子5では、スペーサ層形成時に酸化処理を行う製造方法によって製造されたMR素子に比べて、MR比が大きくなることが分かる。スペーサ層形成時における酸化処理の有無によってMR比が異なるのは、酸化処理の有無によって固定層のうちスペーサ層との界面の近傍の部分における磁化の消失量が異なるためと考えられる。
[第3の実験]
次に、比較例2と試料3における固定層の磁化量を比較した第3の実験について説明する。第3の実験では、比較例2に対応する磁化量測定用の試料である比較例3と、試料3に対応する磁化量測定用の試料である試料5とを作製した。比較例3と試料5は、いずれも、反強磁性層と自由層とを備えていない。従って、比較例3と試料5では、下地層の上に固定層が配置され、スペーサ層の上に保護層が配置されている。比較例3におけるその他の構成および作製方法は比較例2と同じであり、試料5におけるその他の構成および作製方法は試料3と同じである。比較例3と試料5に反強磁性層と自由層を含めなかったのは、比較例3と試料5における固定層の磁化量のみを測定するためである。第3の実験では、比較例3と試料5における固定層の磁化量を、振動試料型磁力計によって測定した。
比較例3と試料5は、同じ構成の固定層を含んでいる。スペーサ層の形成に伴う磁化量の減少がない場合における固定層の磁化量は予め分かっている。これを基準として、比較例3における固定層の磁化量の減少量と、試料5における固定層の磁化量の減少量を求めた。比較例3における固定層の磁化量の減少量は、固定層の最上層であるCo50Fe50層の厚みに換算すると、およそ0.5nm分に相当した。一方、試料5における固定層の磁化量の減少量は、固定層の最上層であるCo50Fe50層の厚みに換算すると、およそ0.1nm分に相当した。このことから、本実施の形態に係る製造方法によって製造されたMR素子5では、スペーサ層形成時に酸化処理を行う製造方法によって製造されたMR素子に比べて、固定層のうちスペーサ層との界面の近傍の部分における磁化の消失量が少ないことが分かる。そして、これにより、本実施の形態に係る製造方法によって製造されたMR素子5では、スペーサ層形成時に酸化処理を行う製造方法によって製造されたMR素子に比べて、MR比が大きくなると考えられる。
[第4の実験]
次に、本実施の形態に係る製造方法によって製造されたMR素子5と、スペーサ層形成時に酸化処理を行う製造方法によって製造されたMR素子とで、特性のばらつきを比較した第4の実験について説明する。この実験では、比較例2と同じ膜構成であるが形状が異なる比較例4と、試料3と同じ膜構成であるが形状が異なる試料6とを、それぞれ36個ずつ作製した。比較例4と試料6におけるMR素子の形状は、いずれも、保護層の上面の形状が縦0.1μm、横0.1μmの矩形となる四角錐台形状である。また、36個の比較例4と、36個の試料6は、それぞれ1枚のウェハ上に形成した。36個の比較例4は、1枚のウェハ上で、縦方向と横方向にそれぞれ15mm間隔で6個ずつ並び、且つ36個の比較例4が配置された領域の中心がウェハの中心と一致するように配置した。同様に、36個の試料6は、1枚のウェハ上で、縦方向と横方向にそれぞれ15mm間隔で6個ずつ並び、且つ36個の試料6が配置された領域の中心がウェハの中心と一致するように配置した。
第4の実験では、上記の36個の比較例4と36個の試料6について、MR素子の抵抗値を測定し、その標準偏差を求めた。この抵抗値の標準偏差は、MR素子の特性のばらつきを示す1つの指標となる。以下の表6に、比較例4と試料6についての面積抵抗(Ω・μm2)、抵抗値の平均値(Ω)および抵抗値の標準偏差(%)を示す。
表6から分かるように、試料6の抵抗値の標準偏差は、比較例4の抵抗値の標準偏差よりも小さい。このことから、本実施の形態に係る製造方法によって製造されたMR素子5では、スペーサ層形成時に酸化処理を行う製造方法によって製造されたMR素子に比べて、特性のばらつきが小さくなることが分かる。
以上説明したように、本実施の形態に係るMR素子5の製造方法によれば、酸化処理を行わずに、絶縁部63と導電部61とを含むスペーサ層24を形成することができる。従って、本実施の形態によれば、酸化処理に伴うMR素子5のMR比の低下は生じない。また、本実施の形態によれば、絶縁部63と導体部61の分布は、酸化処理によって決定されるのではなく、第2の非磁性金属層42の形状によって決定される。具体的には、第2の非磁性金属層42が島状構造となるように形成される場合には、島の分布によって絶縁部63と導体部61の分布が決まる。また、第2の非磁性金属層42が、その上面が凹凸を有するように形成される場合には、その上面における凹凸の分布によって絶縁部63と導体部61の分布が決まる。これらのいずれの場合においても、絶縁部63と導体部61の分布が酸化処理によって決定される場合に比べると、絶縁部63と導体部61の分布を均質にすることができる。以上のことから、本実施の形態によれば、MR素子5のMR比の低下を抑制でき、且つMR素子5の特性のばらつきを小さくすることができる。
以下、本実施の形態が適用される薄膜磁気ヘッドを含むスライダ、ヘッドジンバルアセンブリ、ヘッドアームアセンブリおよび磁気ディスク装置について説明する。まず、図5を参照して、スライダ210について説明する。磁気ディスク装置において、スライダ210は、回転駆動される円盤状の記録媒体である磁気ディスクに対向するように配置される。このスライダ210は、主に図3における基板1およびオーバーコート層17からなる基体211を備えている。基体211は、ほぼ六面体形状をなしている。基体211の六面のうちの一面は、磁気ディスクに対向するようになっている。この一面には、媒体対向面20が形成されている。磁気ディスクが図5におけるz方向に回転すると、磁気ディスクとスライダ210との間を通過する空気流によって、スライダ210に、図5におけるy方向の下方に揚力が生じる。スライダ210は、この揚力によって磁気ディスクの表面から浮上するようになっている。なお、図5におけるx方向は、磁気ディスクのトラック横断方向である。スライダ210の空気流出側の端部(図5における左下の端部)の近傍には、本実施の形態が適用される薄膜磁気ヘッド100が形成されている。
次に、図6を参照して、ヘッドジンバルアセンブリ220について説明する。ヘッドジンバルアセンブリ220は、スライダ210と、このスライダ210を弾性的に支持するサスペンション221とを備えている。サスペンション221は、例えばステンレス鋼によって形成された板ばね状のロードビーム222、このロードビーム222の一端部に設けられると共にスライダ210が接合され、スライダ210に適度な自由度を与えるフレクシャ223と、ロードビーム222の他端部に設けられたベースプレート224とを有している。ベースプレート224は、スライダ210を磁気ディスク262のトラック横断方向xに移動させるためのアクチュエータのアーム230に取り付けられるようになっている。アクチュエータは、アーム230と、このアーム230を駆動するボイスコイルモータとを有している。フレクシャ223において、スライダ210が取り付けられる部分には、スライダ210の姿勢を一定に保つためのジンバル部が設けられている。
ヘッドジンバルアセンブリ220は、アクチュエータのアーム230に取り付けられる。1つのアーム230にヘッドジンバルアセンブリ220を取り付けたものはヘッドアームアセンブリと呼ばれる。また、複数のアームを有するキャリッジの各アームにヘッドジンバルアセンブリ220を取り付けたものはヘッドスタックアセンブリと呼ばれる。
図6は、ヘッドアームアセンブリを示している。このヘッドアームアセンブリでは、アーム230の一端部にヘッドジンバルアセンブリ220が取り付けられている。アーム230の他端部には、ボイスコイルモータの一部となるコイル231が取り付けられている。アーム230の中間部には、アーム230を回動自在に支持するための軸234に取り付けられる軸受け部233が設けられている。
次に、図7および図8を参照して、ヘッドスタックアセンブリと磁気ディスク装置について説明する。図7は磁気ディスク装置の要部を示す説明図、図8は磁気ディスク装置の平面図である。ヘッドスタックアセンブリ250は、複数のアーム252を有するキャリッジ251を有している。複数のアーム252には、複数のヘッドジンバルアセンブリ220が、互いに間隔を開けて垂直方向に並ぶように取り付けられている。キャリッジ251においてアーム252とは反対側には、ボイスコイルモータの一部となるコイル253が取り付けられている。ヘッドスタックアセンブリ250は、磁気ディスク装置に組み込まれる。磁気ディスク装置は、スピンドルモータ261に取り付けられた複数枚の磁気ディスク262を有している。各磁気ディスク262毎に、磁気ディスク262を挟んで対向するように2つのスライダ210が配置される。また、ボイスコイルモータは、ヘッドスタックアセンブリ250のコイル253を挟んで対向する位置に配置された永久磁石263を有している。
スライダ210を除くヘッドスタックアセンブリ250およびアクチュエータは、本発明における位置決め装置に対応し、スライダ210を支持すると共に磁気ディスク262に対して位置決めする。
磁気ディスク装置では、アクチュエータによって、スライダ210を磁気ディスク262のトラック横断方向に移動させて、スライダ210を磁気ディスク262に対して位置決めする。スライダ210に含まれる薄膜磁気ヘッドは、記録ヘッドによって、磁気ディスク262に情報を記録し、再生ヘッドによって、磁気ディスク262に記録されている情報を再生する。
[第2の実施の形態]
次に、図17を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図17は、本実施の形態が適用される再生ヘッドの媒体対向面に平行な断面を示す断面図である。本実施の形態における再生ヘッドの構成は、MR素子5の構成を除いて第1の実施の形態と同様である。本実施の形態におけるMR素子5は、第1のシールド層3の上に順に積層された下地層21、自由層25、スペーサ層24、固定層23、反強磁性層22および保護層26を有している。このように、本実施の形態におけるMR素子5では、固定層23と自由層25のうち、自由層25の方が第1のシールド層3に近い位置に配置されている。本実施の形態では、自由層25が本発明における第1の磁性層に対応し、固定層23が本発明における第2の磁性層に対応する。
本実施の形態における固定層23は、スペーサ層24の上に順に積層されたインナー層33、非磁性中間層32およびアウター層31を有し、いわゆるシンセティック固定層になっている。
本実施の形態における下地層21としては、例えばNiCr層が用いられる。本実施の形態における保護層26としては、例えばRu層とTa層との積層体が用いられる。本実施の形態におけるMR素子5を構成する他の層の厚みや材料は、第1の実施の形態と同様である。
本実施の形態に係るMR素子5の製造方法は、第1のシールド層3の上に順に下地層21、自由層25、スペーサ層24、固定層23、反強磁性層22および保護層26を形成する各工程を備えている。スペーサ層24以外の各層は、例えばスパッタ法によって形成される。本実施の形態では、自由層25を形成する工程が本発明における第1の磁性層を形成する工程に対応し、固定層23を形成する工程が本発明における第2の磁性層を形成する工程に対応する。本実施の形態におけるスペーサ層24の形成方法は、第1の実施の形態と同じである。
次に、本実施の形態に係る製造方法によって製造されたMR素子5と、スペーサ層形成時に酸化処理を行う製造方法によって製造されたMR素子とで、MR比および自由層の保磁力を比較した実験について説明する。自由層の保磁力は、自由層の軟磁気特性の1つであり、自由層には、保磁力が小さいことが求められる。この実験では、第1の実施の形態の説明において用いた試料3に類似した試料7を作成した。試料7が試料3と異なる点は、MR素子5の膜構成だけである。試料7におけるMR素子5の具体的な膜構成を、以下の表7に示す。試料7におけるスペーサ層24の形成方法は、試料3と同じである。
また、実験では、試料7とはスペーサ層の構成および形成方法のみが異なる試料である比較例5を作製した。比較例5におけるスペーサ層の構成および形成方法は、第1の実施の形態の説明において用いた比較例2と同じである。すなわち、比較例5では、スペーサ層形成時に酸化処理が行われている。
比較例5と試料7は、共にMR素子の面積抵抗が0.25Ω・μm2となるように作製した。実験では、比較例5と試料7について、MR素子の面積抵抗と自由層の保磁力とを測定した。その結果を、以下の表8に示す。なお、1Oeは、79.6A/mである。
表8から分かるように、比較例5におけるMR素子と試料7におけるMR素子5の面積抵抗は等しいが、試料7におけるMR素子5のMR比は、比較例5におけるMR素子のMR比よりも大きい。また、試料7における自由層の保磁力は、比較例5における自由層の保磁力よりも小さい。このことから、本実施の形態に係る製造方法によって製造されたMR素子5では、スペーサ層形成時に酸化処理を行う製造方法によって製造されたMR素子に比べて、自由層の保磁力が小さくなり、MR比が大きくなることが分かる。スペーサ層形成時に酸化処理を行うと、酸化処理によって、自由層の軟磁気特性が劣化して保磁力が増大し、その結果、MR比が小さくなると考えられる。これに対し、本実施の形態に係る製造方法によって製造されたMR素子5では、スペーサ層形成時に酸化処理を行わないため、自由層の軟磁気特性が劣化せず、その結果、MR比が大きくなると考えられる。
また、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、MR素子5の特性のばらつきを小さくすることができる。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、固定層23はシンセティック固定層に限らない。また、実施の形態では、基体側に再生ヘッドを形成し、その上に、記録ヘッドを積層した構造の薄膜磁気ヘッドについて説明したが、この積層順序を逆にしてもよい。また、読み取り専用として用いる場合には、薄膜磁気ヘッドを、再生ヘッドだけを備えた構成としてもよい。
1…基板、2…絶縁層、3…第1のシールド層、4…絶縁層、5…MR素子、6…バイアス磁界印加層、7…絶縁層、8…第2のシールド層、9…記録ギャップ層、10…薄膜コイルの第1層部分、12…上部磁極層、15…薄膜コイルの第2層部分、17…オーバーコート層、18…分離層、19…下部磁極層、20…媒体対向面、22…反強磁性層、23…固定層、24…スペーサ層、25…自由層。