JP4540428B2 - 熱間圧延型非調質棒鋼の製造方法 - Google Patents
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しかしながら、特許文献3の技術は、その実施例からも判るように比較的直径の小さな小径の棒鋼を対象として考案されたものであり、直径の大きな大径の棒鋼には必ずしも適用することができないという問題があった。
すなわち、特許文献3の技術は、熱間圧延後の冷却中に微細析出物を分散析出させることを基本としているが、直径が大きくなり、棒鋼の冷却速度が0.2℃/s以下になると、析出物が十分に微細とはならず、所定の特性が得られない場合があった。また、棒鋼の表層部と中央部の冷却速度差に配慮していないため、冷却速度が比較的早い表層部にはベイナイト等の低温変態相が生成し、表層部と中央部とで引張強度および降伏強度に大きな差異を生じる場合があることが知見された。
具体的には、圧延後の冷却中に生じるフェライト変態の変態開始温度と析出物の析出開始温度との差が小さく、フェライト変態と析出物の析出が競合するような場合に、析出物が効果的に微細化されることの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
1.質量%で、
C:0.060〜0.120%、
Si:0.5%以下、
Mn:下記(1)式の範囲、
Al:0.1%以下、
Ti:0.03〜0.35%および
Mo:0.05〜0.8%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼素材を、1100℃以上に加熱後、仕上温度:850℃以上で仕上径を120〜400mmとして熱間圧延を終了したのち、冷却することを特徴とする熱間圧延型非調質棒鋼の製造方法。
記
-0.239×log(CR1)+0.889≦Mn≦-0.524×log(CR2)+1.218 ・・・(1)
ここで、CR1:圧延後、500℃までの棒鋼中央部の平均冷却速度(℃/s)
CR2:圧延後、500℃までの棒鋼表層部の平均冷却速度(℃/s)
0.5≦(C/12)/[(Ti/48)+(Mo/96)]≦1.5 ・・・(2)
Nb:0.08%以下、
V:0.15%以下および
W:1.5%以下
のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする熱間圧延型非調質棒鋼の製造方法。
0.5≦(C/12)/[(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184)]≦1.5 ・・・(3)
また、本発明によれば、調質処理が不要なだけでなく、棒鋼の寸法に制約がないので、産業上極めて有用である。
まず、本発明において、鋼の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.060〜0.120%
Cが0.060%に満たないと微細析出物の析出量が不足して、700MPa以上の引張強度が得られず、一方Cを0.120%を超えて含有させると析出物が粗大化し、やはり700MPa以上の引張強度が得られないため、C量は0.060〜0.120%の範囲に限定した。
Siは、冷間加工性を向上させるために添加するが、含有量が0.5%を超えると、むしろその効果が損なわれるため、Si量は0.5%以下とする。より好ましくは0.15%以下である。
記
-0.239×log(CR1)+0.889≦Mn≦-0.524×log(CR2)+1.218 ・・・(1)
ここで、CR1:圧延後、500℃までの棒鋼中央部の平均冷却速度(℃/s)
CR2:圧延後、500℃までの棒鋼表層部の平均冷却速度(℃/s)
Mnは、析出物を微細に析出させるため、並びに表層部におけるベイナイト等の低温変態相の生成を防止するために、上掲(1)式の範囲に制御することが重要である。
なお、熱間圧延に際しては、熱間圧延後の冷却速度を変化させるために、棒鋼の仕上寸法を20mmφ〜400mmφの範囲で変えると共に、圧延後の冷却を空冷、保温カバー内徐冷、ミスト冷却の3種の方法で行った。冷却速度についてはオンラインでの測定が困難なため、熱間圧延での仕上寸法と同サイズの短尺の棒鋼を準備し、表層から中心方向に6mm深さ入った位置(以下表層部という)と棒鋼中心(以下中心部という)に熱電対を装着し、これをオフラインで900℃に加熱後、上記の熱間圧延の場合と同様に、空冷 、保温カバー内徐冷、ミスト冷却することで、500℃までの平均冷却速度を求めた。
Mn量が 直線aおよび直線bで挟まれる領域、すなわち冷却速度から計算される値{-0.239×log(CR)+0.889}以上、{-0.524×log(CR)+1.218}以下である場合に、フェライト単相で、しかもこのフェライト中に粒径:10nm未満の微細析出物が分散した組織が得られている。
これに対し、Mn量が冷却速度から計算される値{-0.239×log(CR)+0.889}を下回る場合には、フェライト単相とはなるものの、析出物の粒径は10nm以上になってしまう。また、Mn量が{-0.524×log(CR)+1.218}を超えた場合には、組織の一部にフェライトが存在するものの、大部分はベイナイト等の低温変態相になってしまう。
しかしながら、棒鋼の冷却速度は、必ずしも均等ではなく、中央部が最も小さく、表層部で最も大きい。
なお、フェライト変態および析出物の析出とも500℃までに終了するので、冷却速度については、圧延後から500℃までを考えれば良い。
図1に示したとおり、析出物が10nm未満に微細化するためのMn量の下限は冷却速度が遅いほど上昇するが、これもフェライト変態と析出の競合関係から、以下のように説明することができる。
そこで、本発明では、Mnを添加し、フェライト変態温度の低下を図るのである。この場合、フェライト変態温度が高くなる低冷却速度側ほどフェライト変態温度の下げ代が増大するため、Mnの添加量を増大することが必要になるのである。
そのため、図1に示したように、析出物微細化のためのMn量の下限は冷却速度が遅いほど上昇するのである。
Alは、脱酸剤として作用する。しかしながら、含有量が 0.1%を超えるとその効果が飽和するため、Al量は0.1%以下とする。より好ましくは0.05%以下である。
Tiは、Ti系炭化物やTi−Mo系炭化物を含む析出物を微細に析出させて、強度を向上させる有用元素である。ここに、引張強度:700MPa以上を確保するためには0.03%以上のTi添加が必要であるが、0.35%を超えて添加すると析出物が粗大化し、強度、靭性が低下する。そのため、Ti量は0.03〜0.35%の範囲に限定した。より好ましくは0.03〜0.20%の範囲である。
Moは、Mo系炭化物やTi−Mo系炭化物を含む析出物を微細に析出させて、強度を向上させる有用元素である。また、Moは、拡散速度が遅く、Tiと共に析出する場合、析出物の成長速度が低下して、微細な析出物が得易いという利点もある。ここに、引張強度:700MPa以上を確保するためには0.05%以上のMo添加が必要であるが、0.8%を超えて添加するとベイナイト等の低温変態相を形成し、微細析出物による析出強化が不足し、強度が低下するため、Mo量は0.05〜0.8%の範囲に限定した。より好ましくは0.15〜0.50%の範囲である。
0.5≦(C/12)/[(Ti/48)+(Mo/96)]≦1.5 ・・・(2)
この(2)式で示すパラメーターは、析出物の大きさに影響を与えるもので、0.5以上、1.5以下とした場合に、粒径:10nm未満の微細析出物の形成が容易となりとりわけ有利である。
Nb:0.08%以下
Nbは、Tiと微細析出物を形成して強度上昇に寄与する。また、組織を微細化し、結晶粒を整粒化することで延性を向上させる。しかしながら、Nbを0.08%を超えて含有させると過度に微細化し、かえって延性が低下するため、添加量は0.08%以下とする。より好ましくは0.04%以下である。
Vも、Tiと微細析出物を形成して強度上昇に寄与する。しかしながら、0.15%を超えて含有させると析出物が粗大化するようになるため、含有量は0.15%以下とする。より好ましくは0.10%以下である。
Wも、Tiと徹細析出物を形成して強度上昇に寄与する。しかしながら、1.5%を超えて含有させると析出物が粗大化するようになるため、含有量は1.5%以下とする。より好ましくは1.0%以下である。
0.5≦(C/12)/[(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184)]≦1.5 ・・・(3)
この(3)式で示すパラメーターも、前掲(2)式と同様、析出物の大きさに影響を与えるもので、この値を0.5以上、1.5以下とした場合に、粒径:10nm未満の微細析出物の形成が容易となる。
ここに、S量を0.03〜0.1%としたのは、S量が0.03%に満たないと切削性の向上が図れず、一方0.1%を超えると靭性や延性が劣化するからである。また、Pb,Ca,BiおよびBについても、これらの元素がそれぞれ上限値を超えると靭性や延性が低下するからである。
また、さらに棒鋼の靱性を向上させるためには、不可避的不純物であるPとNを低減することが望ましい。具体的には、Pについては0.03%以下に規制することが好ましい。Nについては0.01%以下に規制することが好ましく、0.005%以下に規制することがさらに好ましい。
まず、本発明において、鋼組織をフェライト単相組織とした理由は、鋼組織をフェライト単相にすることで調質材に匹敵する靭性が得られるからである。
析出物の粒径が10nm以上の場合、自動車をはじめとする輸送機械や建設機械などの機械構造部品として必要な引張強度700MPa以上が得難い。また、フェライト単相組織に粒径:10nm未満の微細析出物を析出させた場合、降伏比が上昇し、調質材に匹敵する高降伏比が得られる。降伏比が高いと、降伏強度の上昇に対して引張強度の上昇が抑えられ鋼の硬化を小さくできるため、調質鋼に匹敵する被削性が得られる。なお、微細析出物は熱間圧延後の冷却中に析出させる。
これらの微細析出物の分布形態は特に規定しないが、母相中に均一分散することが好ましい。また、析出物の大きさは、全析出物のうちの90%以上が10nm未満であれば700MPa以上の引張強度が得られる。但し、粒径があまりに大きい析出物は、微細析出物形成元素を消費し、強度に悪影響を与えるため、存在する析出物の粒径は、50nm以下に抑えることが好ましい。
電子顕微鏡試料をツインジェット法を用いた電解研磨法で作成し、加速電圧200kVで観 察する。その際、微細析出物が母相に対して計測可能なコントラストになるように母相の結晶方位を制御し、析出物の数え落としを最小限に抑えるために、焦点を正焦点からずらしたデフォーカス法で観察を行う。また、析出物粒子の計測を行った領域の試料厚さは電子エネルギー損失分光法を用いて、弾性散乱ピークと非弾性散乱ピーク強度を測定することで評価する。
・加熱温度
本発明では、熱間圧延後の冷却中に析出物を微細に析出させるために、熱間圧延前の鋳片に析出している析出物を、加熱炉にて一旦固溶させる必要がある。その際、加熱温度が1100℃未満であると、Ti−Mo系炭化物等が十分に固溶しないため、加熱温度は1100℃以上とする。
本発明では、微細析出物を得るために、熱間圧延後の冷却速度に応じてMn量を調整し、フェライト変態の開始温度を制御することで、フェライト変態と析出の競合を図っている。ところが、熱間圧延おける仕上温度が低い場合には、圧延で導入される歪がフェライト変態の開始温度を変化させ、Mn量の適正範囲に影響を及ぼしてしまう。これを避けるには、仕上温度を歪の影響が現れない高温にすれば良い。この点から、仕上温度は850℃以上とする 。
フェライト変態の開始温度を制御し、フェライト変態と析出を競合させれば析出物は微細に析出する。本発明では、熱間圧延後の冷却速度に応じてMn量を調整することでフェライト変態の開始温度を制御する。また、冷却速度に応じてMn量を調整すれば、ベイナイト等の低温変態相の生成を防止することができる。
このように、本発明では冷却速度を制御するのではなく、冷却速度に応じてMn量を調整することで適正組織が得られるため、冷却速度については特に規定する必要はない。
組織観察としては.棒鋼断面をナイタールで腐食後、棒鋼の表層部と中心部を光学顕微鏡で観察した。
また、棒鋼の表層部と中心部から電解研磨にて薄膜試料を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより、析出物の粒子径を測定すると共に、エネルギー分散型X線分光装置(EDX)を併用し、析出物を同定した。
衝撃試験では、JIS3号のUノッチ衝撃試験片を用い、棒鋼中心部の試験温度:20℃における吸収エネルギーを測定した。
表中のNo.は個々の結果を区分するためのものであり、供試鋼と熱延条件の組合せが明 示されるよう、鋼番と熱延条件を組み合せて起番した(例えば、鋼番1を条件Aで熱間圧延した場合は1−Aと起番した)。
析出物については、平均粒子径を記載した。なお、粒子径のバラツキは10nm未満の析出物では最大でも±1nm、それ以上の大きさの析出物では±3nmから±10nmであった。また、組織に低温変態相が生成した場合、転位密度が高くなり析出物の観察が困難となるため、粒子径の測定は省略した。
ここで、引張強度が700MPa以上、また絶対値で△YSが100MPa以下、△TSが80MPa以下 を満たすことが本発明の要件の一つである。
No.6−Aは、Cが低いため、微細析出物の析出量が不足しており、引張強度が低い。
No.7−Aは、Cが高すぎるため、析出物が粗大化しており.引張強度が低い。また、吸収エネルギーuE20も88J/cm2と低く、靱性に劣る。
No.8−A、16−Bは、Mnが低いため、中央部の析出物が粗大化しており、引張強度が低い 。また、表層部と中央部の降伏強度の差△YSおよび引張強度の差△TSとも大きく、直径方向の強度の均一性に劣る。さらに、吸収エネルギーuE20も低く、靱性にも劣る。
No.29−Cも、Mnが低いが、この例では表層部、中央部とも析出物が粗大化しており、引張強度が低い。また、吸収エネルギーuE20も85J/cm2と低く、靱性に劣る。
Mnの高いNo.9−A、17−B、30−Cでは、表層部に低温変態相が生成してしまう。また、表層部と中央部の降伏強度の差△YSおよび引張強度の差△TSの少なくとも一方が大きく、直径方向の強度の均一性に劣る。
No.18−Bは、Tiが低いため、引張強度が低い。一方、Tiが高いNo.19−Bでは、表層部、中央部とも析出物が粗大化しており、引張強度が低く、吸収エネルギーも低い。
No.20−Bは、Moが低いため、引張強度が低い。一方、Moが高いNo.21−Bでは、表層部、中央部とも低温変態相が生成しており、微細析出物による析出強化が不足するため、引張強度が低い。また、表層部と中央部の引張強度の差△TSが大きく、直径方向の強度の均一性に劣る。さらに、吸収エネルギーuE20も51J/cm2と低く、靱性にも劣る。
No.1−Hは、仕上温度が低いため、圧延で導入された歪がフェライト変態の開始温度を変化させ、Mn量の適正範囲に影響を及ぼした。このため、中央部で析出物が粗大化しており、引張強度が低い。また、表層部と中央部の降伏強度の差△YSおよび引張強度の差△TSとも大きく、直径方向の強度の均一性に劣る。さらに、吸収エネルギーuE20も低く、靱性にも劣る。
なお、本実施例において、発明例について観察された微細析出物(粒径<10nm)は、主にMo,Tiの炭化物、またNb,V,Wのいずれかが含まれている鋼の場合には、Mo,Tiと、Nb,V,Wのうちいずれかが含まれる炭化物であることを同定できた。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.060〜0.120%、
Si:0.5%以下、
Mn:下記(1)式の範囲、
Al:0.1%以下、
Ti:0.03〜0.35%および
Mo:0.05〜0.8%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼素材を、1100℃以上に加熱後、仕上温度:850℃以上で仕上径を120〜400mmとして熱間圧延を終了したのち、冷却することを特徴とする熱間圧延型非調質棒鋼の製造方法。
記
-0.239×log(CR1)+0.889≦Mn≦-0.524×log(CR2)+1.218 ・・・(1)
ここで、CR1:圧延後、500℃までの棒鋼中央部の平均冷却速度(℃/s)
CR2:圧延後、500℃までの棒鋼表層部の平均冷却速度(℃/s) - 請求項1において、鋼中のC,TiおよびMo量が、次式(2)の関係を満足することを特徴とする熱間圧延型非調質棒鋼の製造方法。
0.5≦(C/12)/[(Ti/48)+(Mo/96)]≦1.5 ・・・(2) - 請求項1または2において、鋼素材が、さらに質量%で
Nb:0.08%以下、
V:0.15%以下および
W:1.5%以下
のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする熱間圧延型非調質棒鋼の製造方法。 - 請求項3において、鋼中のC,Ti,Mo,Nb,VおよびW量が、次式(3)の関係を満足することを特徴とする熱間圧延型非調質棒鋼の製造方法。
0.5≦(C/12)/[(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184)]≦1.5 ・・・(3)
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