JP4582866B2 - タングステン線およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はタングステン線およびその製造方法に係り、特に高電圧ランプ用フィラメントとして使用でき、ランプ製造時のフラッシング工程で電圧を印加した場合においても変形の発生量が少ないタングステン線およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からTV用電子銃のカソードヒータや各種電極材,自動車ランプ,家電機器の照明ランプおよび複写機のランプなどのフィラメント材として種々のタングステン線が使用されている。従来、この種のタングステン線は一般に下記のような製造プロセスを経て製造されていた。
【0003】
すなわち、タングステンのアンモニウム塩を水素または大気中で分解したタングステン酸化物にAl,Si,Kなどのドープ剤を添加し、水素中で還元した後に酸洗浄を行ってドープタングステン原料粉末を調製する。次に得られた原料粉末を金型プレス機等で成形後、焼結し、得られた焼結体を転打,線引などの加熱加工および一次再結晶化熱処理などの熱処理を段階的に繰り返して所定直径のタングステン線を作製している。こうして得られたタングステン線を巻回してフィラメントを作製した後、さらにランプ点灯による熱処理(フラッシング)を実施して一次再結晶化して、ランプフィラメントとして使用している。
【0004】
近年、100ボルト(V)用フィラメントよりフィラメント長が長く、200ボルトを超える高電圧用ランプのフィラメント材としてのタングステン線の需要も増加している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に高電圧用のフィラメントはフィラメント長が低電圧用に比べ長くなり、点灯による熱が加わった際に変形し易くなる傾向がある。特に線径が82μm以下のタングステン線をコイリングした後に、カット、熱処理を施し、ランプ内に組み込み、排気する(真空にしたり、あるいは不活性ガスを封入する)という一般的なランプ製造工程を経た後に実施される初期点灯において、組織が繊維状態から一次再結晶組織に変化する際に、フィラメントはその自重によって変形が発生し易くなるという問題点があった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、特に熱処理後の一次再結晶の形状が最適に形成されるタングステン線を使用することによって、フィラメントの初期点灯時の変形を低減することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本願発明者らは、特に線径が82μm以下のタングステン線を対象とし、伸線時の加工率および中間焼鈍を実施するタイミングについて実験を行い、これらの条件を適切に設定することにより、フィラメントとした後の初期点灯時の変形性が大幅に改善されるという結果を得た。すなわち、フィラメントとして使用される線径に加工されるまでの減面率が99%以上となる線径より、1ダイス当たりの減面率が最大で35%,最小で13%となるように設定し、また、中間焼鈍においても、その実施により線の引張強さが800N/mm2以上低下しないように設定することにより、変形量が少ないタングステン線が得られるという知見を得た。
【0008】
本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。すなわち、本発明に係るタングステン線は、Kを20〜100ppm、AlおよびSiの少なくとも一方の元素を30ppm以下含有し残部W及び不可避的不純物から成るタングステン線であり、熱処理により一次再結晶化させたタングステン線において、タングステン線の長手方向の断面組織に形成された結晶粒の短径に対する長径の比(アスペクト比)が7以上である結晶粒の面積割合が30%以上であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他のタングステン線は、Kを20〜100ppm、AlおよびSiの少なくとも一方の元素を30ppm以下含有し残部W及び不可避的不純物から成るタングステン線であり、熱処理により一次再結晶化させたタングステン線において、タングステン線の長手方向の断面組織に形成された結晶粒の短径に対する長径の比(アスペクト比)が10以上である結晶粒の面積割合が20%以上であることを特徴とする。
【0010】
また、上記タングステン線において、前記タングステン線の線径が0.01〜0.4mmの範囲であるときに、特に機械的特性が良好なタングステン線が得られる。また、前記タングステン線を構成する結晶粒の短径の平均値が1μm以下であることが好ましい。
【0011】
上記タングステン線において、タングステン線の長手方向の断面組織に形成された結晶粒の短径に対する長径の比(アスペクト比)が7以上である結晶粒の面積割合が30%未満である場合には、タングステン線材の長手方向への結晶粒の伸長が十分に長大化しておらず、粒界すべりによる変形が起こり易い。そのため、アスペクト比が7以上の結晶粒の面積割合は30%以上とされるが、40%以上がさらに望ましい。さらに同様の観点から、アスペクト比が10以上である結晶粒の面積割合が20%以上であることがさらに望ましい。
【0012】
また、本発明において、タングステン線の結晶組織を微細化して細長い結晶粒の割合を高め高強度を実現するために、上記タングステン線を構成する結晶粒の短径の平均値を1μm以下とすることが好ましい。
【0013】
また、タングステン線がKを20〜100ppm、AlおよびSiの少なくとも一方の元素を30ppm以下含有するとよい。
【0014】
また、本発明に係るタングステン線は、例えば、タングステン粉末の成形体を焼結し、得られた焼結体を出発材料として所定の減面率で伸線加工して製造されるものであるが、上記出発材料としての焼結体の断面積は、焼結性を考慮して50〜200mm2であることが望ましい。
【0015】
さらに、焼結体の断面積がタングステン線の断面積の6.3×103〜1×107倍であることが好ましい。
【0016】
さらに、加工性を考慮すると、焼結体からの加工率が75〜98%になった段階で再結晶化処理を施すことが望ましい。また、焼結体からの加工率が75〜98%になった段階で複数回の再結晶化処理を施すことが、さらに好ましい。
【0017】
ここで本発明は、特に200ボルト以上の高電圧用フィラメントを構成する線径82μm以下の細いタングステン線に適用した場合に優れた効果を発揮する。
【0018】
上記のように高電圧用のフィラメントとして使用されるタングステン線は、その高温耐変形性を確保するために、K,Al,Siなどのドープ剤が所定量添加される。そして、このドープ剤のタングステン組織中での分散状態がタングステン線の高温耐変形性に大きく影響する。
【0019】
Kの含有量が20ppm未満である場合には粒界のピンニング効果が少なく長繊維状の結晶が得られにくくなる。一方、Kの含有量が100ppmを超えたり、Al,Siの少なくとも一方の元素の含有量が30ppmを超える場合においても加工性が低下することにより、良好なタングステン線を得ることが困難になる。
【0020】
本発明に係るタングステン線は、例えば下記の製法により製造できる。すなわち、タングステン酸化物に上記Al,Si,Kなどのドープ剤を添加し、水素雰囲気中で還元した後に、酸洗浄を行い、成形後、焼結して、K含有量が20〜100ppmであり、Al,Siの少なくとも一方の元素を30ppm以下含有する焼結体を作製し、この焼結体を加熱加工して線径が50μm以下の高電圧用フィラメント材となるタングステン線が形成される。このタングステン線を1600℃以上の温度で5分間以上熱処理して一次再結晶化させたとき、タングステン線の長手方向の断面組織において、アスペクト比が7以上である結晶粒の面積割合が30%以上であるインターロック構造を有するタングステン線が得られる。
【0021】
また、伸線工程における減面率を調整することにより、タングステン線の長手方向の断面組織において短径に対する長径の比(アスペクト比)が10以上である結晶粒の面積割合が20%以上であるタングステン線が得られる。
【0022】
熱処理したときの一次再結晶組織が上記のようなインターロック構造であるタングステン線においては、フィラメントの初期点灯によってフラッシングを行う工程において、繊維組織から一次再結晶組織に変化する際の粒界滑りが生じにくいため、フィラメントの自重に起因する応力によるフィラメントの垂下(サグ)が小さい。またK含有量を多くすると、粒界のピンニング効果が高まり、粒界滑りが生じにくくなる。
【0023】
また上記製造方法では、焼結体に伸線加工等を施し、所定の線径サイズまで減面加工して最終的なフィラメント製品にしている。そして出発材料である焼結体の大きさとタングステン線中のドープ剤の分散状態とは密接に関係しており、本発明では上記焼結体の断面積は50〜200mm2の範囲とすることが好ましい。
【0024】
すなわち、焼結体の断面積が概ね200mm2以下になると高温耐変形性が良好になる。しかし、断面積が50mm2以下になると焼結操作中において、焼結体の曲がり変形が大きくなるとともに、生産効率の面で不利となる。したがって、上記の通り、焼結体の最適な断面積は50〜200mm2である。
【0025】
また、焼結体とタングステン線との断面積比が6.3×103〜1×107倍であるときに、ドープ剤の分散状態が良好で高温耐変形性が優れたタングステン線が得られる。上記断面積比は1×104〜3.1×105倍の範囲がより好ましい。
【0026】
さらに、上記焼結体を用いた場合には、焼結体からの加工率(減面率)が75〜98%になった段階で再結晶化処理を施したり、減面率が75〜98%になった段階で複数回の再結晶化熱処理を施したり、1ダイス当りの減面率が最大で35%,最小で13%となるように設定したり、また、中間焼鈍における引張強さの低下が800N/mm2以下となるように調整することにより、初期点灯時におけるフィラメントの変形性を改善したタングステン線が得られる。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態について、以下の実施例に基づいて具体的に説明する。
【0028】
実施例
ドープ剤としてのK,Al,Siの最終的な含有量がそれぞれ60ppm,5ppm以下,5ppm以下残存するように不純物含有量が少ないタングステン酸化物を選択し、所定量のK,Al,Siをドープした後に水素雰囲気中で還元を行い、さらに脱イオン水を使用して酸洗浄を行って、タングステン粉末を調製した。次に、このタングステン粉末を金型で成形し、得られた成形体を温度1400℃で仮焼結した後に、水素気流中で最高約3000℃で通電焼結してそれぞれW焼結体を作製した。
【0029】
次に、得られた各焼結体について、1400℃に加熱して実施する転打加工と2000℃で行う再結晶化処理と1300℃に加熱して実施する再度の転打加工とを実施した後に、1ダイス当り減面率が13〜35%となるように伸線ダイスを通す伸線加工を実施することにより、表面に潤滑剤と酸化膜とが付着した線径が37μmのタングステン線(ブラック線)をそれぞれ調製した。さらに上記潤滑剤および酸化膜を除去するために各ブラック線を電解研磨処理して表面部分を厚さ1μmだけ除去し、35μmの線径を有するホワイト線状のタングステン線をそれぞれ調製した。この各ホワイト線を水素炉中で温度1700℃で5分間加熱する一次再結晶化処理を実施することにより、各実施例に係るタングステン線をそれぞれ調製した。
【0030】
比較例
一方、伸線ダイスを通す伸線加工時において1ダイス当りの減面率が最大で30%,最小で10%となるように設定した点以外は、実施例と同一条件で処理することにより、各比較例に係るタングステン線をそれぞれ調製した。
【0031】
上記のように調製した各実施例および比較例に係るタングステン線について、単位長さ(10mm)をカットし、その表面組織を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、長尺に伸長した各結晶粒の短径および長径を測定するとともに、短径に対する長径の比(アスペクト比)が7以上および10以上の結晶粒が結晶組織全体に占める面積割合を画像処理により測定した。実施例および比較例に係るタングステン線の表面組織を示す電子顕微鏡写真を、それぞれ図1および図2に示す。
【0032】
上記図1に示す組織形状から明らかなように、伸線加工時の減面率を適正化した各実施例に係るタングステン線においては、長尺に伸長した結晶粒の面積割合が多くなり、図2に示す比較例に係るタングステン線と比較して、引張強さおよび伸びを向上させることが可能であることが確認できる。
【0033】
電子顕微鏡(SEM)による組織観察(図1)から明らかなように、各実施例に係るタングステン線の一次再結晶化組織においては、結晶粒がタングステン線材の伸線方向に長く伸ばされており、アスペクト比が大きい結晶粒が相互にインターロックした状態であった。
【0034】
一方、各比較例に係るタングステン線においては、伸線加工時における減面率が最大で30%,最小で10%であったため、一次再結晶化組織を構成するW結晶粒子のアスペクト比は小さく、インターロックも弱くなり、初期点灯によるフラッシングで変形し易いことが判明した。なお、各実施例および比較例に係るタングステン線を用いてフィラメントを作製し、フラッシング前後における垂下割合(サグ値)を測定したところ、実施例においては平均17.3%であった一方、比較例では平均29.8%であった。
【0035】
【発明の効果】
以上説明の通り、本発明に係るタングステン線によれば、伸線工程時の減面率を最適化しているため、一次再結晶組織を構成するタングステン結晶粒のアスペクト比が大きく、長大にインターロックした構造を有する。そのため、フィラメント長が長くなる高電圧用ランプのフィラメント構成材として使用した場合においても、初期点灯時におけるフィラメントの変形を効果的に防止でき、信頼性に優れたフィラメント用タングステン線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるタングステン線の表面組織を示す電子顕微鏡写真。
【図2】従来のタングステン線の表面組織を示す電子顕微鏡写真。
Claims (5)
- Kを20〜100ppm、AlおよびSiの少なくとも一方の元素を30ppm以下含有し残部W及び不可避的不純物から成るタングステン線であり、熱処理により一次再結晶化させたタングステン線において、タングステン線の長手方向の断面組織に形成された結晶粒の短径に対する長径の比(アスペクト比)が7以上である結晶粒の面積割合が30%以上であることを特徴とするタングステン線。
- Kを20〜100ppm、AlおよびSiの少なくとも一方の元素を30ppm以下含有し残部W及び不可避的不純物から成るタングステン線であり、熱処理により一次再結晶化させたタングステン線において、タングステン線の長手方向の断面組織に形成された結晶粒の短径に対する長径の比(アスペクト比)が10以上である結晶粒の面積割合が20%以上であることを特徴とするタングステン線。
- 前記タングステン線の線径が0.01〜0.4mmの範囲であることを特徴とする請求項1または2記載のタングステン線。
- 前記タングステン線を構成する結晶粒の短径の平均値が5μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載のタングステン線。
- Kを20〜100ppm、AlおよびSiの少なくとも一方の元素を30ppm以下含有し残部W及び不可避的不純物から成るドープタングステン原料粉末を調製する工程と、得られた原料粉末を成形後、焼結する工程と、得られた焼結体を転打,線引加工し線材とする工程と、得られた線材に上記転打,線引加工および温度1600℃以上で5分間以上の再結晶化熱処理を段階的に繰り返す工程とを備え、上記焼結体からの加工率が75〜98%になった段階で上記再結晶化処理を施すことにより、タングステン線の長手方向の断面組織に形成された結晶粒の短径に対する長径の比(アスペクト比)が7以上である結晶粒の面積割合が30%以上であるタングステン線を作製することを特徴とするタングステン線の製造方法。
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