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JP4586618B2 - 人体通信システム及び通信装置 - Google Patents
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JP4586618B2 - 人体通信システム及び通信装置 - Google Patents

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Description

本発明は、人体を伝送路に用いてデータ通信を行なう人体通信システム及び通信装置に係り、特に、人体の介在により形成される電界を通じてデータ通信を行なう人体通信システム及び通信装置に関する。
さらに詳しくは、本発明は、人体を経由して音声のような比較的大きなデータ量の伝送を行なう人体通信システム及び通信装置に係り、特に、人体を経由して、秘匿性があり、低消費電力で、近隣する他の通信システムを干渉しないデータ伝送を行なう人体通信システム及び通信装置に関する。
従来、ウォークマン(登録商標)に代表される携帯型音楽再生装置にヘッドフォンを接続して音楽を聴くことが広く行なわれている。再生装置本体は鞄やポケットの中に入れたり、ベルトによって身体に装着したりすることが可能である。ところが、ヘッドフォンを利用する場合には、ケーブルが邪魔であり、身体に巻きついてユーザの動作の制約になってしまうことが多い。
携帯型音楽再生機器とヘッドフォンの間をケーブルレスにする1つの方法として、IrDAなどの赤外線通信の利用が考えられる。しかしながら、屋外での使用を考えた場合、自然光の影響を受けて満足できる通信品質を得られないことがある。また、赤外線通信は指向性が強いために、送受信機器の位置関係が著しい制約を受ける(例えば、見通し範囲内にあり、機器間に遮蔽物が何も存在しない状況を確保しなければならない)。また、送信機側ではLEDの発光により消費電力が大きくなり、バッテリ駆動の携帯機器での実用には不向きと考えられる。
また、微弱電波を利用した無線通信技術としてBluetooth通信が普及してきており、当該通信方式を携帯型音楽再生機器とヘッドフォンの間での音楽データ伝送に利用することも考えられ、一部実用化されている。しかしながら、Bluetooth通信では、免許不要のISM帯(Industrial Scientific and Medical Frequency Band)である2.4GHz帯を使用することから、家庭内の電子レンジや無線LANなどの同じ周波数帯を使用する他の無線電波との干渉を避けることができず、通信品質や秘匿性の観点からも、十分な伝送方式とは言い難い。
最近では、人体を伝送路に組み込んだ人体通信技術が脚光を浴び始めている。例えば、人体表皮に当接された状態で装着される人体側通信機と、人体の近傍に機器側通信機とを設け、人体通信機側の電極を介して人体に交流電圧を印加することで、人体通信機及び機器側通信機における各電極間に介在する人体を媒体としたコンデンサの作用により、機器側通信機の電極で生ずる静電誘導現象を用いて、簡単な情報データを送受信する様になされた通信システム(個人認証や会計精算等向けに)が提案されている(例えば、非特許文献1を参照のこと)。
本発明者らは、携帯音楽再生機器とヘッドフォン間を人体通信で接続することで、ワイヤレスで音声データを伝送することが可能であると考えている。例えば、電極を有する2つの互いに独立且つそのままでは互いに通信するには不十分な程度の微弱電波を発信する装置間の通信を、人体を媒介として電波を強化することによって可能にすることが知られている(例えば、特許文献1を参照のこと)。
人体は導体としての性質と誘電体としての性質を備えている。前者の性質を利用した人体通信システムは電流方式と呼ばれるものであるが、この場合は携帯音楽再生機器とヘッドフォンそれぞれの送受信電極が常に人体に接触している必要があるため、ユーザに違和感若しくは不快感を与えてしまうなど、使い勝手に問題がある。
また、人体の誘電体としての性質を利用した人体通信システムは、電界方式と呼ばれるものである。この場合、人体を挟むようにして配置された送受信電極間では、空間を伝わる放射電界、誘電性電磁界、人体の帯電を利用した(伝搬ではない)準静電界のいずれかが形成され、かかる電界で作用する電位差に基づいて信号を伝送することができる。電界方式の人体通信システムに関しては幾つかの提案があるが、これらいずれの電界を利用したものであるか、十分に解明されていないのが実情である。
例えば電界方式の人体通信により携帯型音声再生機器とヘッドフォンが接続される場合、良好な音声データ伝送を実現できたとしても、人体の介在により形成される電界が準静電界ではなく放射電界である場合には、同一周波数帯を使用する近隣の無線システムに対する妨害波となったり、逆に他の無線システムから干渉を受けたりする。この場合、人体通信は傍受も可能となることから秘匿性を保つことができない。さらに、余分な(必要以上の)電界を人体外に放射していることになるので、電力の浪費となり、とりわけバッテリ駆動の携帯機器にとってはクリティカルである。
また、従来の人体通信システムは、送受信用の電極間に介在する人体を媒質としたコンデンサの作用を前提としている。このような場合、電極面積を相当大きくしないと所望の情報通信速度を得ることができないため、機器側通信機は小型化が難しくなる。そうすると逆に周囲からのノイズを受け易くなって、通信品質が低下してしまうという問題もある。
特開平7−170215号公報、米国特許第5,914,701号明細書 「人体通信 一部は既に実用化,10Mビット/秒の試作機も」(NIKKEI BYTE 2004 December)
本発明の目的は、人体の介在により形成される電界を通じてデータ通信を行なうことができる、優れた人体通信システム及び通信装置を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、人体を経由して音声のような比較的大きなデータ量の伝送を好適に行なうことができる、優れた人体通信システム及び通信装置を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、人体を経由して、秘匿性があり、低消費電力で、近隣する他の通信システムを干渉しないデータ伝送を行なうことができる、優れた人体通信システム及び通信装置を提供することにある。
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、送信機及び受信機の通信電極をそれぞれ人体の極近傍に配設して、人体の介在により形成される電界を通じて前記送信機と前記受信機でデータ通信を行なう人体通信システムであって、
前記送信機は、前記通信電極を人体の極近傍に配設したときに、人体外で形成される放射電界に対し、人体内で形成される準静電界が支配的となるような周波数帯域からなる電位差信号を送信データに応じて生成して前記通信電極から送出し、
前記受信機は、前記電界における電位差信号を前記通信電極によって読み取ってデータ受信を行ない、
前記送信機の通信電極は、該送信機のグランドと接続されたグランド電極と前記電位差信号を送信する信号電極で構成し、
前記受信機の通信電極は、該受信機のグランドと接続されたグランド電極と前記電位差信号を受信する信号電極で構成し、
前記送信機と前記受信機の少なくともいずれかの通信電極は、前記信号電極を前記人体の表面に配置して、前記グランド電極を前記信号電極に対向する形に配置したほぼ平行平板電極の構成として、他の通信電極は、前記信号電極と前記グランド電極をともに前記人体の表面に配置する構成とする
ことを特徴とする人体通信システムである。
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない(以下、同様)。
人体通信システムは、例えば携帯音楽再生機器とヘッドフォン間をワイヤレスで音声データを伝送することが可能で、またウェアラブル機器として快適に身体に装着できる通信方式として期待されている。
ところが、人体の誘電体としての性質を利用した電界方式の人体通信システムでは、現実的には空間を伝わる放射電界、誘電性電磁界、人体の帯電を利用した準静電界のうちいずれがデータ通信に寄与しているのかが十分に解明されていない。
人体の介在により形成される電界が人体内を通過する準静電界ではなく人体外に形成される放射電界である場合には、近隣の通信システムとの干渉や、データ通信の秘匿性、携帯型通信機器の消費電力などの点で問題となる。
そこで、本発明に係る人体通信システムでは、前記送信機及び前記受信機は、前記送信電極及び前記受信電極をそれぞれ人体の極近傍に配設したときに、人体外で形成される放射電界に対し、人体内で形成される準静電界が支配的となるような周波数帯域からなる電位差信号を利用するようにした。人体通信が準静電界で行なわれる結果、近隣の通信システムとの干渉はなくなるとともに、データ通信の秘匿性が確保される。また、送受信機間で微弱電力で動作する情報データ伝送が可能であり、送信機側では余分な電界を形成するような無駄な電力消費をしなくて済む。
ここで、人体内で形成される準静電界が支配的となるような周波数帯域とは、具体的には3MHz以下の周波数帯である。但し、あまり低いキャリア周波数を使うと、データ転送のために占有する帯域幅も狭くなり、低いデータレートしか得られなくなってしまうことから、例えばATRAC3−plusで規定される48kbpsを支障なく伝送することができる500Hz以上であることが実用的である。
また、電界方式の人体通信システムでは、これらの通信電極が人体に接触している必要はないが、皮膚表面の極近傍に配置されることから人体と接触する機会は多い。そこで、本発明では、送受信機の入出力信号電極の最表面を、導電性不織布又は導電布で構成している。人体と接触する可能性のある電極を導電性の布で構成することにより、身体に装着しても快適なウェアラブル機器を実現することができる。また、金属アレルギーがある人に対しても、使用時の不快感を大幅に低減することができる。
また、送信機と受信機が同じ基準電位を持つことが重要であるが、携帯型音楽再生機器やヘッドフォンなどのモバイル系の機器では接地面を得ることが容易ではない。そこで、本発明では、配線基板上のグランドを通信電極まで取り出すことで、より安定した基準電位を得るようにしている。
この場合の通信機の入出力電極は、電位差信号の送受信する信号電極と、配線基板のグランドから取り出されたグランド電極で構成される。電極構造として、信号電極とグランド電極をともに人体表面に配置する平行配置と、信号電極のみを人体表面に配置してグランド電極は信号電極に対向させた垂直配置の2通りが考えられる。本発明者らは、後者によれば伝送損失の軽減効果がより高いことを実証している。
また、送信機の電極面積を大きくするほど伝送損失が軽減されるが、受信機側の電極面積を大きくしても伝送損失の改善には繋がらない。したがって、人体経由で情報信号を伝達するための送受信機の、送信機側の出力電極の面積を、受信器側の入力電極の面積よりも大きくなるように構成すればよい。
本発明によれば、人体を経由して音声のような比較的大きなデータ量の伝送を好適に行なうことができる、優れた人体通信システム及び通信装置を提供することができる。
また、本発明によれば、人体を経由して、秘匿性があり、低消費電力で、近隣する他の通信システムを干渉しないデータ伝送を行なうことができる、優れた人体通信システム及び通信装置を提供することができる。
また、本発明によれば、人体の介在により微弱電力で動作が可能な近距離情報データ伝送を行なうことができる、ウェアラブル型の情報伝送システムを提供することができる。
本発明に係る人体通信システムによれば、人体を経由して行なう情報信号の伝達が、高い通信品質で可能となり、またウェアラブル機器として快適に身体に装着できる、ワイヤレスの携帯型オーデイオ再生装置を提供できる。さらには、近距離情報データ伝送における秘匿性向上、低消費電力化が図れるようになる。
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
本発明は、人体を伝送路に用いてデータ通信を行なう人体通信システムに関するものであり、特に、人体の介在により形成される電界を通じてデータ通信を行なう人体通信システムに関する。人体通信システムは、例えば携帯音楽再生機器とヘッドフォン間をワイヤレスで音声データを伝送することが可能で、またウェアラブル機器として快適に身体に装着できる通信方式として期待されている(図1を参照のこと)。
人体は導体としての性質と誘電体としての性質を備え、前者の性質を利用した電流方式と、後者の性質を利用した電界方式の人体通信システムがそれぞれ考えられる。前者の場合、携帯音楽再生機器とヘッドフォンそれぞれの送受信電極が常に人体に接触している必要があるため、ユーザに違和感若しくは不快感を与えてしまうなど、使い勝手に問題がある。そこで、本発明に係る人体通信システムは、電界方式を採用している。
図2には、本発明の一実施形態に係る人体通信システムの構成を模式的に示している。同図に示すように、人体通信システム1は、人体を介在して、携帯型音楽再生機器として構成される送信機10と、ヘッドフォン・スピーカとして構成される受信機20が対峙している。
送信機10側では、オーディオ・プレイヤ11などの情報源からの音声入力をベースバンド送信信号処理部12にてA/D変換を行なう。なお、後段でそのままキャリア伝送するようにしてもよいが、このデジタル処理部にてBPSKやQPSKなどの符号化(マッピング)処理を施すことも可能である。そして、変調部13にて音声信号を変調処理し、送信ミキサ14にて、発振器15からのローカル周波数と音声信号を周波数合成してアップコンバートする。ここでは、人体外で形成される放射電界に対し、人体内で形成される準静電界が支配的となるような周波数帯域を伝送周波数帯として使用する。周波数合成した後に、バンドパス・フィルタ(BPF)16では、送信信号のうち所定の周波数帯域のみを通過させ、さらに送信電力増幅器(PA)17で送信信号を電力増幅し、人体近傍に設置された送信電極18から電位差信号としてデータ送信する。
一方、受信機20側では、人体近傍に設置された受信電極21で電位の変化を読み取ると、これを高周波増幅器(LNA)22で電力増幅し、さらに受信ミキサ23にて、発振器24からのローカル周波数と受信信号を周波数合成してダウンコンバートする。ダウンコンバートした後の音声変調信号は復調部25にて復調され、次いで、ベースバンド受信信号処理部26にてデジタル音声信号に復号される。さらに出力増幅部27にて音声信号が増幅され、ヘッドフォン・スピーカ28から可聴音として音声出力される。
ここで、人体の誘電体としての性質を利用した電界方式の人体通信システムでは、現実的には空間を伝わる放射電界、誘電性電磁界、人体の帯電を利用した準静電界のうちいずれがデータ通信に寄与しているのかが不明であるという問題がある。以下では、この点について議論する。
一般に、電気双極子(微小ダイポールアンテナ)に電流を流した場合、アンテナからの距離rの点における電界Eと磁界Hは、図3に示すような形で表わされる。下式で示すように、微小電流素子から放射される電磁界の強さは、距離r、距離rの2乗、距離rの3乗にそれぞれ反比例する3つの成分のベクトル和となる。このうち磁界Hの成分には1/r3の項はない。但し、微小電流素子と座標系の関係を図4のように設定する。
Figure 0004586618
これらの距離r、距離rの2乗、距離rの3乗にそれぞれ反比例する各成分はそれぞれ、放射電磁界、誘導電磁界、準静電界と呼ばれる。距離rに反比例する放射電界は、r-1に比例して減衰するが(自由空間損失)、距離rが長くなると(r>λ/2π)支配的となる。また、この成分は、EθとHφのみ存在し、電界Eと磁界Hが互いに直交することからr成分(すなわち進行方向)に対しても直交する平面波である。
図3からも分かるように、放射電磁界(1/rの項)、誘導電磁界(1/r2の項)、準静電界(1/r3の項)の強度はλ/2πの距離において等しくなり、距離rがこれ以下の場合は、急激に増加する。例えば周波数が10MHzならばこの距離rは約4.8mであり、周波数が3MHzならばこの距離rは約15.9mになる。本実施形態に係る情報伝送システムは、人体近傍における準静電界を主として使用した伝送方式である。なお、一般的な無線電送では、アンテナからの距離が十分離れた使い方になるので、放射電磁界(1/rの項)を使用していることになる。
従来の人体通信システムは、送受信用の電極間に介在する人体を媒質としたコンデンサの作用を前提としている。このような場合、電極面積を相当大きくしないと所望の情報通信速度を得ることができないため、機器側通信機は小型化が難しくなる。そうすると逆に周囲からのノイズを受け易くなって、通信品質が低下してしまうという問題もある。
これに対し、本発明では、人体を経由したウェアラブル型の音楽再生装置で音声信号を伝達するような、例えばワイヤレス・ヘッドホンを高品質に実現するために、適当な伝送周波数帯の選択を行なうとともに、送受信それぞれの電極部の構成を工夫している。
伝送周波数帯の選択:
図5には、FM変調した音声信号を人体経由で伝送した場合の、受信機での全高調波歪み率を、キャリア周波数を変えて実測した値の一例を示している。但し、電極面積を30×30mm、伝送距離を30mmとする。
同図から、キャリア周波数が3〜9MHzの場合と、20MHz以上の場合に、全高調波歪み率が大きくなり、音声信号の伝送品質が劣化していることが分かる。言い換えれば、500kHz〜3MHz、並びに10MHz〜19MHzの周波数帯では高周波歪みが小さく、良好な通信品質が得られるということである。
3〜30MHzのいわゆる短波帯は、短波放送、アマチュア無線、商業用無線等で良く使われており、それ以上の超短波帯(30〜300MHz)は、FMラジオ放送、VHFテレビ、一部の移動通信などで使われており、それらによる電波干渉の悪影響が歪みの一因になっているものと思われる。これ以下の中波帯(300kHz〜3MHz)もAMラジオ放送で使われているが、特に影響は受けていないことが分かる。
因みに、人体とほぼ同等の電気的特性を有するように複合誘電材料で作成した擬似人体モデル(ファントム)を用いて同様の実験を行なったが、実際に人の身体を使って実験した場合と概ね一致する評価結果を得ることができた。
また、図6には、送受信機間で各種の媒体を介してFM変調した音声信号を伝送した場合に、S/N=30dBを確保することができる送信側の出力信号強度について、キャリア周波数を変えながら実測した結果を示している。同図から、人体を経由して伝送することで、空間伝送時に比べて低い強度の信号出力によって、音質を維持した音声信号を伝送できていることが分かる。
また、図7には、図6の結果から、人体通信と空間伝送とで音声信号を送る場合に必要な出力信号強度の差をプロットしたものを示している。但し、同図では、S/N比=30、並びにS/N比=20の場合を並記している。
同図では、10MHz以下の低いキャリア周波数を使った場合に、人体通信と空間伝送との差が大きく現われるという結果が示されている。このことは、10MHz以下の伝送周波数帯域では、放射電界による空間伝送よりも準静電界による本来の人体通信が支配的となることを意味するものである。すなわち、他の電波干渉の影響を無くして、通信の秘匿性を確保する意味で、放射電界による空間伝送を抑えて、準静電界による人体通信を支配的な伝搬モードにするためには、より低いキャリア周波数を使うことが有効であると言える。
ところが、あまり低いキャリア周波数を使うと、データ転送のために占有する帯域幅も狭くなり、低いデータレートしか得られなくなってしまうという問題がある。
データ伝送では使用周波数帯域の約10分の1に相当するデータレートを確保できると考えられる。ここで、現在普及している各音声データ・フォーマットにおけるデータレートは以下の通りである。
リニアPCM(CD) … 1411kbps
MP3(MPEG−1 Audio Layer−3)
… 96/112/128/160/192/224/256/320kbp
WMA … 48〜192kbps
ATRAC3 … 66/105/132kbps
ATRAC3plus … 48/64/256kbps
したがって、ATRAC3plusの48kbpsの音声信号を通す帯域を充分に確保するためには、キャリア周波数として、おおよそ500kHz以上であることが好ましいと言える。
音声信号伝送用の人体通信システムにおける伝送周波数帯の選択に関して、以下のように結言することができる。
「人体を経由して音声信号を伝達するための送受信機に、少なくとも500kHzから3MHzまでの間の周波数帯域に、音声信号を変調(復調)する音声信号変調(復調)手段を設ける。」
送信機側では、音声再生信号データに対して、伝送品質の高い送信周波数を選択して変調した準静電界を発生することにより、性質上極めて良好に帯電する人体が、その表面から周囲へ等方的に準静電界を伝搬させるアンテナとして作用することができる。一方、受信機側では、交流電圧を印加された人体の帯電状態の変化に基づいて、伝送品質の高い受信周波数帯で情報データを復調するようにすれば、その結果として、準静電界通信に不要な誘導電磁界や放射電界を抑制した通信が可能となる。
このような人体通信システムによれば、通信に必要なエネルギーを低くできるとともに、不要伝播を抑えて空間分解能を向上させることができるため、人体を経由した情報通信(音声信号伝送)の安定化、秘匿性向上、低消費電力化が図れるようになる。
人体は極めて少ない電荷の移動(マイクロアンペア・オーダと言われている)によって帯電し、その帯電状態の変化は瞬間的に人体表面に伝わって、その周囲へ等方的に準静電界の等電位面が形成される。本実施形態に係る人体通信システムでは、準静電界が支配的となる極近傍界でキャリア周波数を選択することによって、放射電界や誘導電磁界の影響をより一層排除し、人体を準静電界のアンテナとして、より効果的に機能させているのである。
通信電極の構成:
まず、送信機10の送信電極18並びに受信機20の受信電極21で使用する材質について考察する。
電界方式の人体通信システムでは、これらの通信電極が人体に接触している必要はないが、皮膚表面の極近傍に配置されることから人体と接触する機会は多い。
本実施形態では、送受信機の入出力信号電極18、21の最表面を、導電性不織布(例えば、PET/CuをNi鍍金したもの)又は導電布(ex.アクリル/CuをNi鍍金したもの)で構成している。導電性の布としては、通常の織物であっても、不織布を使用したものであっても良い。
ここで使用される導電性繊維は、合成繊維の表面に、AgやCu、Ni、Snのうちの少なくとも1種類を無電解鍍金した繊維である。合成繊維としては、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリビニル・アルコールなどの繊維を用いることができる。無電界鍍金の材料には、導電性、耐腐食性、抗菌性などの観点から、上記の4金属(Ag、Cu、Ni、Sn)を用いるのが良い。導電性を重視する場合にはAgが好ましい。
また、導電性を有する不織布とは、短繊維を水流や気流などによって互いに絡ませて、熱やバインダなどで短繊維を連結した不織布の表面に、導電性を有する上記の4金属を薄膜蒸着などの方法によりコーティングしたものである。
このように、人体と接触する可能性のある電極を導電性の布で構成することにより、身体に装着しても快適なウェアラブル機器を実現することができる。また、金属アレルギーがある人に対しても、使用時の不快感を大幅に低減することができる。
続いて、送信機10の送信電極18並びに受信機20の受信電極21における機械的構造について考察する。人体の帯電状態の変化に基づいて効率よく情報信号を伝達するためには、送受信機の電極配置をどのように構成すべきかを十分に検討する必要がある。
通信システムでは一般に、送信機と受信機が同じ基準電位を持つことが通信品質を確保する上で重要である。据え置き型の一般的な通信機器であれば、接地面から安定した基準電位を得ることができる。これに対して、モバイル系の機器においては可搬性の代償として接地面を得ることができないため、配線基板に設けたグランド・プレーンなどで代用しているのが実情である。この場合、微弱電力で動作する人体通信システムにとって十分な伝送特性を得られない可能性がある。
そこで、本実施形態では、配線基板上のグランドを通信電極まで取り出すようにした。すなわち、送信電極18や受信電極21などの通信電極を、人体に形成される準静電界から電位差信号の送受信を行なう信号電極18A/21と、配線基板から取り出したグランド電極18B/21Bのペアで構成し、これら両電極を対向する形に配置してほぼ平行平板電極にして用いる(図8を参照のこと)。各回路コンポーネントは、配線基板上のグランドから基準電位を得ているが、このグランドが通信信号ラインとともに基板から取り出され、グランド電極を構成している。これによって、グランドで得られる基準電位の安定化を図っている。
この場合の電極構造として、信号電極とグランド電極をともに人体表面に配置する平行配置と、信号電極のみを人体表面に配置してグランド電極は信号電極に対向させた垂直配置の2通りが考えられる。図9には、各々の場合における伝送損失の測定結果を示している。同図からは、後者の垂直配置により、平行配置に対し約9dBの伝送損失が改善されることが分かる。送信機か受信機のどちらか一方の電極構成を、平行平板電極(垂直配置)にすることでも、伝送損失がある程度軽減される。
因みに、実際に試作機で音声信号を伝送したときの感触では、送信機(オーディオ信号再生機)側は平行平板電極にしないとノイズが乗ってしまい、明らかに通信品質が低下することが確認できる。
最後に、送受信機それぞれについての通信電極のサイズについて考察する。
静電結合による電気容量(静電容量)は電極の面積に比例し、電極間の距離に反比例する。このことから、非特許文献1(前述)の図1に示したような人体通信システムでは、電極の面積を大きくとることにより伝送特性の向上が期待できるが、この方法は機器の小型化とは相反する。
図10には、本実施形態に係る準静電界を利用した人体通信システムにおいて、送信機と受信機の電極面積を変えた場合の伝送損失の測定結果を示している。但し、ここでは図5及び図7で示した結果から導出される500KHz〜3MHz帯を伝送周波数として用いている。
同図から、送信機の電極面積を大きくするほど伝送損失が軽減されるが、受信機側の電極面積を大きくしても伝送損失の改善には繋がらないことが分かる。したがって、人体経由で情報信号を伝達するための送受信機のうち、送信機側の出力電極の面積を、受信機側の入力電極の面積よりも大きくなるように構成すればよいことになる(好ましくは2mm□より大なる面積である)。
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
本明細書では、携帯音楽再生機器とヘッドフォン間をワイヤレスで音声データ伝送するウェアラブル型情報伝送に適用した実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。人体を介在させて微弱電力により動作する他の形態の情報伝送システムや、音声以外のデータを伝送する人体通信に対しても、同様に本発明を適用することができる。
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
図1は、人体通信を利用したウェアラブル方情報伝送装置の構成を示した図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る人体通信システムの構成を模式的に示した図である。 図3は、波源からの距離と電磁界の強さの関係を示した図である。 図4は、微小電流素子と座標系の関係を示した図である。 図5は、FM変調した音声信号を人体経由で伝送した場合の、受信機での全高調波歪み率を、キャリア周波数を変えて実測した値の一例を示した図である。 図6は、送受信機間で各種の媒体を介してFM変調した音声信号を伝送した場合に、S/N=30dBを確保することができる送信側の出力信号強度について、キャリア周波数を変えながら実測した結果を示した図である。 図7は、人体通信と空間伝送とで音声信号を送る場合に必要な出力信号強度の差をプロットした図である。 図8は、人体通信装置の通信電極を信号電極とグランド電極のペアで構成した回路例を示した図である。 図9は、信号電極とグランド電極とを人体表面に対し平行配置及び垂直配置した場合についての伝送損失を測定した結果を示した図である。 図10は、準静電界を利用した人体通信システムにおいて、送信機と受信機の電極面積を変えた場合の伝送損失の測定結果を示した図である。
符号の説明
10…送信機
11…オーディオ・プレイヤ
12…ベースバンド送信信号処理部
13…変調部
14…送信ミキサ
15…発振器
16…バンドパス・フィルタ
17…送信電力増幅器
18…送信電極
20…受信機
21…受信電極
22…高周波増幅器
23…受信ミキサ
24…発振器
25…復調部
26…ベースバンド受信信号処理部
27…出力増幅部
28…ヘッドフォン・スピーカ

Claims (11)

  1. 送信機及び受信機の通信電極をそれぞれ人体の極近傍に配設して、人体の介在により形成される電界を通じて前記送信機と前記受信機でデータ通信を行なう人体通信システムであって、
    前記送信機は、前記通信電極を人体の極近傍に配設したときに、人体外で形成される放射電界に対し、人体内で形成される準静電界が支配的となるような周波数帯域からなる電位差信号を送信データに応じて生成して前記通信電極から送出し、
    前記受信機は、前記電界における電位差信号を前記通信電極によって読み取ってデータ受信を行ない、
    前記送信機の通信電極は、該送信機のグランドと接続されたグランド電極と前記電位差信号を送信する信号電極で構成し、
    前記受信機の通信電極は、該受信機のグランドと接続されたグランド電極と前記電位差信号を受信する信号電極で構成し、
    前記送信機と前記受信機の少なくともいずれかの通信電極は、前記信号電極を前記人体の表面に配置して、前記グランド電極を前記信号電極に対向する形に配置したほぼ平行平板電極の構成として、他の通信電極は、前記信号電極と前記グランド電極をともに前記人体の表面に配置する構成とすることを特徴とする人体通信システム。
  2. 前記送信機及び前記受信機は、3MHz以下の周波数帯域を利用する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の人体通信システム。
  3. 前記送信機及び前記受信機は、所望のデータレートを得ることができる周波数帯域を利用する、
    ことを特徴とする請求項2に記載の人体通信システム。
  4. 前記送信機及び前記受信機は、500kHz以上の周波数帯域を利用する、
    ことを特徴とする請求項3に記載の人体通信システム。
  5. 前記送信機又は前記受信機のうち少なくとも一方は、導電性不織布又は導電布で構成される通信電極を備える、
    ことを特徴とする請求項1に記載の人体通信システム。
  6. 送信機側の出力電極の面積を、受信機側の入力電極の面積よりも大きくなるように構成した、
    ことを特徴とする請求項1に記載の人体通信システム。
  7. 通信電極を人体の極近傍に配設して、人体の介在により形成される電界を通じてデータ通信を行なう通信装置であって、
    送信データ信号に応じた電位差を生成して前記電界を発生させる送信電極と、
    前記送信電極を人体の極近傍に配設したときに、人体外で形成される放射電界に対し、人体内で形成される準静電界が支配的となるような伝送周波数帯域を用いて前記送信データ信号を生成する送信信号処理手段とを備え、
    前記送信電極は、電位差信号を送信する信号電極と、配線基板のグランドから取り出されたグランド電極で構成して、前記信号電極を前記人体の表面に配置して、前記グランド電極を前記信号電極に対向する形に配置したほぼ平行平板電極の構成とする
    ことを特徴とする通信装置。
  8. 3MHz以下の周波数帯域を前記伝送周波数帯域として用いる
    ことを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
  9. 所望のデータレートを得ることができる周波数帯域を前記伝送周波数帯域として利用する、
    ことを特徴とする請求項8に記載の通信装置。
  10. 500kHz以上の周波数帯域を前記伝送周波数帯域として利用する、
    ことを特徴とする請求項9に記載の通信装置。
  11. 前記送信電極の人体に対向する面は導電性不織布又は導電布で構成される、
    ことを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
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