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JP4593382B2 - 金属の腐食速度の測定方法およびこれによる金属の防食方法 - Google Patents
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JP4593382B2 - 金属の腐食速度の測定方法およびこれによる金属の防食方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属の腐食状況を評価する際に、金属の腐食速度パラメータを算出して腐食速度を測定する方法、および、これを用いた電気防食または腐食抑制剤による金属の防食方法に関するものである。
腐食性の環境で使用される金属の防食方法として、従来から、電気防食方法が多用されている。しかしながら、電気防食における最適設定電位については、明確な理論的根拠が提示されていない実態にある。
すなわち、電気防食においては熱力学的な電位−pHダイアグラムにおいて知られている不感態領域に金属表面電位を維持することが必要とされ、そのためには、防食電位を可能な限り低くすることが望ましいとされている。
しかし、防食電位を必要以上に低く設定することは、徒に経済性を低下させるのみならず、防食対象金属表面での水素発生量が増大し、防食対象金属の水素脆化や、塗装面の剥離を惹起するなどの副次的な問題が発生する。
一般に、金属のアノード溶解反応速度は、一例として、非特許文献1にも記載されているように、[式4]で表される。
Figure 0004593382
ここで、βaはアノード反応のターフェル勾配、Ecorrは自然腐食状態(すなわち直流分極を印加しない状態)における腐食電位、icorrは自然腐食状態(すなわち直流分極を印加しない状態)における腐食速度、Eは任意の設定電位、iaは任意の設定電位における腐食速度である。
したがって、[式4]が具体的な定量的指標として決定できれば、目標とする電気防食状態下での設定電位における腐食速度iaを定めることで、設定すべき防食電位Eの具体的な値を決定することが可能となる。
βaを実測するには、|E|および|ia|を非常に大きな値として、すなわち、|E|>>0のときに、[式4]が、[式5]で近似されるため、この[式5]を用いて、対象物に大電流およびアノード溶解大分極を与えて、log|ia|−Eの直線勾配からβaを決定する方法が知られている。
Figure 0004593382
しかしながら、本方法でβaを精度良く測定するには、金属を溶解する、すなわち、腐食状態を加速する大分極が必要となり、さらに、その電流密度は、自然腐食状態の10〜100倍が必要とされ、βaを決定するために対象物を腐食加速する危険を伴うため、上記方法は実用化されていない。
このような状況にあって、特許文献1には、従来に比較してより理論的な防食電位の設定方法として、設定防食電位を変化させつつ分極抵抗を測定し、分極抵抗が最大値を示す電位を最適防食電位とする防食電位の設定方法が開示されている。
しかしながら、この方法では、実際の電気防食系において、分極抵抗の最大値を測定することが必要で、測定のために、実際の電気防食を実施するのに必要以上の大規模な電源装置を必要とするなど、実用の観点からはいくつかの課題を内包している。
金属の腐食反応速度を評価する手段の一つとして、腐食速度から判定する方法が知られている。そして、腐食速度を測定する方法としては、試料金属試験片の分極抵抗Rpあるいはその逆数で定義される分極コンダクタンスYcorrを測定して、腐食速度icorrを算出する電気化学的手法が知られている。
ところで、腐食反応の速度パラメータYcorrと、試料金属片に流れるファラデー電流iおよび微小分極値Eとの間には、[式6]の関係があることが知られている。
Figure 0004593382
一方、理論的には、分極コンダクタンスYcorrと腐食速度icorrとの間には、[式7]のような関係が成立する。
Figure 0004593382
なお、本式において、βaおよびβcは、それぞれ、アノード反応およびカソード反応のターフェル勾配である。
一方、腐食速度icorrと質量減少速度Vの間には、[式8]の関係がある。
Figure 0004593382
なお、[式8]において、Mは試料金属の原子量、Zは溶出金属のイオン価数、Fはファラデー定数、ρは金属の密度である。
ここで、ターフェル勾配βaとβcは、金属と腐食環境の組み合わせによって定まると言われている。
したがって、マクロには、βaとβcは、金属と腐食環境により決定される定数であるとされているが、実際の腐食環境は、腐食の進行と共に、含有するイオン濃度が変化したり、腐食界面に特定の腐食環境中物質などが濃縮するなど、また、金属界面においても経時的に腐食生成物が堆積するなど、厳密にまたはミクロには、金属界面の状態および腐食環境は時々刻々と変化するものであり、金属の腐食状態は一定ではない。
したがって、正確に腐食速度icorrを評価するためには、分極コンダクタンスYcorrとターフェル勾配βaとβcを測定することが必要となる。また、ターフェル勾配βaとβcは、腐食速度icorrを決定するアノード反応およびカソード反応における重要なパラメータである。
さらに、腐食抑制剤は、一般に、アノード反応やカソード反応に直接働きかけて、上記したアノード反応およびカソード反応のターフェル勾配βaおよびβcを直接変化させて、腐食を抑制させるものであり、腐食抑制剤の効果を電気化学的に捉え、腐食抑制剤を添加した後の腐食速度icorrを正確に測定するためには、分極コンダクタンスYcorrと、ターフェル勾配βaとβcを測定することが必要となる。
したがって、分極コンダクタンスYcorr、および、ターフェル勾配βaとβcの値を同時にかつ正確に求めることは、腐食速度から金属材料の腐食評価あるいは防食方法の検討等を行う際には極めて重要となる。
分極抵抗Rpまたは分極コンダクタンスYcorrを求める手段としては、従来、分極抵抗法が知られている。いわゆる、直線分極抵抗法として知られるこの方法は、微少な分極を与えたときの自然電位からの電位の変化ΔEと、そのときに流れる電流密度Δiから、[式9]により求められる。
Figure 0004593382
しかし、この方法では、βaとβcを求めることはできない。
このように、Rpの値だけが測定可能で、βaとβcを測定できない分極抵抗法に対して、|ΔE|および|Δi|を非常に大きな値として、[式10]および[式11]の関係で表されることを利用して、ΔE−log|Δi|の実測データから、βaとβc、icorrを求める方法もある。
Figure 0004593382
Figure 0004593382
しかしながら、この方法では、金属の腐食状態を大きく変化させてしまうような、大きなΔEやΔiの外部からの印加が不可欠で、この印加によって金属の腐食状態が大きく変化するという問題があった。
また、βaとβcを分極抵抗Rpまたは分極コンダクタンスYcorrと同時に測定することは困難と判断し、目標とする環境と対象金属の組み合わせに近い環境を模擬し、質量減少測定や、上記したΔE−log|Δi|の実測データから、βa・βc/2.303(βa+βc)を決定し、これを定数として取扱う方法が使用されているが、測定精度は±200%と言われており、その測定誤差は極めて大きいという問題があった。
また、見かけのβa・βc/2.303(βa+βc)の値は設定できるが、βaおよびβcを、個々のパラメータとして決定することはできず、得られる速度パラメータとしては限界がある。
さらには、腐食抑制剤は、一般に、アノード反応やカソード反応に直接働きかけて、上記したアノード反応およびカソード反応のターフェル勾配βaおよびβcを直接変化させて、これらの双方またはいずれか一方の反応速度を低下せしめ、その結果として、腐食を抑制するものであるが、腐食抑制剤の添加濃度や種類等によって、上記パラメータは様々に変化するものである。
したがって、実時間測定ではない上記した方法では、腐食抑制剤による腐食抑制効果を定量的に精度良く評価することは困難である。
これに対して、特許文献2には、金属に一定電荷量を印加し、その時に観測される分極値|ΔE|の時間応答変化から、分極抵抗Rpあるいは分極コンダクタンスYcorrとターフェル勾配βaとβcを得る方法が開示されている。
本手法は、原理的に優れた手法であるが、その一方で、一定荷電量を対象金属に与えるために専用の機器を必要とし、一般に流布しているポテンシオスタットやガルバノスタットでは測定が不可能であるといった問題があった。
特開昭61−235580号公報 特開昭54−054092号公報 藤島昭他:電気化学測定法、博報堂出版(1984)
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、一般に流布している電気化学測定装置を用いて、ノイズ環境においても、容易に金属の腐食反応における分極コンダクタンスYcorr、および、ターフェル勾配βaとβcを同時に求めることが可能であり、それにより、金属の腐食速度を、精度良くかつ迅速に測定する方法を提供し、さらには、この金属の腐食速度の測定方法を用いて算出される、目標として設定する腐食速度に応じた電気防食の防食電位を制御し、または、所望の腐食速度範囲となるような腐食抑制剤の添加量を制御して、的確に金属を防食できる金属の防食方法を提供することにある。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 対象金属の腐食状態を損なわない程度に微少な直流分極を与えた状態で測定される直流分極電流密度isと分極コンダクタンスYp、および、直流分極を与えていない状態で測定される分極コンダクタンスYcorrから、[式1]の関係を満足するアノードターフェル勾配βaおよびカソードターフェル勾配βcを算出し、次に、[式2]により腐食速度icorrを算出することを特徴とする、金属の腐食速度の測定方法。
Figure 0004593382
Figure 0004593382
(2) 電気防食による金属の防食方法において、請求項1に記載の金属の腐食速度の測定方法により、アノードターフェル勾配βaおよび腐食速度icorrを算出し、さらに、測定される腐食電位Ecorrから、[式3]の関係を満足するように、任意に設定した目標腐食速度iaに応じて算出される防食電位Eにより電気防食することを特徴とする、金属の防食方法。
Figure 0004593382
(3) 腐食抑制剤を添加した環境中にある金属の防食方法であって、請求項1に記載の金属の腐食速度の測定方法により腐食速度icorrを算出し、腐食速度を定量的に監視するとともに、算出された前記腐食速度icorrに基き、所望の腐食速度の範囲となるように、腐食抑制剤の添加量を制御することを特徴とする、金属の防食方法。
本発明によれば、一般に流布している電気化学測定装置を用いて、簡便にかつ容易に金属の腐食反応における分極コンダクタンスYcorr、および、ターフェル勾配βaとβcを同時に求めることが可能となり、よって、腐食状況を測定する際に、迅速にかつ精度良く金属の腐食速度の測定を行うことができる。
また、この金属の腐食速度の測定方法を用いて定量的に算出される、目標として設定する腐食速度iaに応じた電気防食の防食電位Eを制御し、または、所望の腐食速度範囲となるような腐食抑制剤の添加量を制御して、的確に金属を防食できる金属の防食方法を提供することができる。
本発明者は、簡便にかつ容易に金属の腐食反応における分極コンダクタンスYcorr、および、ターフェル勾配βaとβcを同時に求めることを検討したところ、前記[式1]を新たに導出し、これにより、迅速にかつ簡便に、分極コンダクタンスYcorr、および、ターフェル勾配βaとβcを同時に求め、さらに、金属の腐食速度を精度良く算出できることを新たに見出した。
電気防食の場合は、金属のアノード反応腐食速度と電位との関係を定量的に算出することができ、それにより、目標腐食速度iaに応じて、金属を電気防食する際の防食電位Eを定量的に決定することを可能とするものである。
ここで、[式1]は、非特許文献1などに記載されているように、従来から知られている複合電極反応理論に基づく電気化学反応の反応速度論に関するButler-Volmerの式を基本として、定常的直流電流密度isの存在下での分極コンダクタンスYp、および、直流分極を与えていない状態で測定される分極コンダクタンスYcorrの相互の関係を解析して求め、相互の具体的関係を見出すことに成功したものである。
その結果、[式2]により腐食速度icorrを迅速に、かつ、簡便に金属の腐食速度を精度良く測定することを可能とした。
さらに、電気防食による金属の防食方法では、[式3]により目標腐食速度iaに応じて、金属を電気防食する際の防食電位Eを定量的に決定することを可能とした。
また、腐食速度は、数週間から数年という長い期間について論じられ、かつ、その期間内での腐食状態の変化やその有無の把握などが必要となるが、本方法によれば、腐食速度さらには[式3]の把握は、数分から数十分の時間内で可能であり、ほぼリアルタイムでの腐食状態の評価や、所用の電気防食電位の決定をすることができる。
すなわち、電気防食を適用する場合、電気防食状態下における目標腐食速度ia(目標とするアノード反応速度電流密度)を具体的に決定し、それを達成するに必要な電気防食目標電位を、[式3]によって迅速に決定することが可能となる。
また、腐食抑制剤による金属の防食方法では、腐食抑制剤を適宜添加した後で、本方法によって腐食速度icorrを測定し、具体的な腐食速度として所望の抑制効果が発現しているか否かを確認可能である。
また、所望の腐食抑制効果が得られていない場合には、さらに腐食抑制剤を適宜添加して、十分な所望の腐食抑制効果が得られる状態まで、腐食抑制剤の添加量を管理することが可能となる。
腐食速度の測定方法およびそれに基づく電気防食電位の設定方法について、また、腐食抑制剤が添加された環境中での、腐食状況の調査対象金属の腐食速度の測定方法について、以下に詳細に説明する。
まず、腐食状況の調査の対象とする金属に直流分極を印加しない状態における腐食電位Ecorrと、腐食電位における分極コンダクタンスYcorrを測定する。なお、腐食抑制剤が添加された環境中での測定の場合も同様である。
一方、腐食電位から任意の、腐食状態を損なわない程度の微少な直流分極状態下で、直流分極電流密度isと、直流分極状態下での分極コンダクタンスYpを測定する。
ここで、腐食状態を損なわない程度に微少な直流分極状態とは、対象とする金属の腐食状態を大幅に変化させることのない程度の直流分極電位であればよく、特に、直流分極電位の数値範囲を規定するものではないが、測定環境におけるノイズ量によって、ノイズのない測定環境では、最大でも±100mV程度、ノイズのある測定環境では、最大でも±1〜±2V程度となるのが一般的である。
一方、その下限値は、測定機器の測定精度およびノイズの存在状態によって、任意に決定されるものであるが、ノイズを無視し得る状況下では、1mV〜数mVが一般的な下限値となる。
これら、腐食電位の測定には市販のエレクトロメータが、直流分極の印加には、市販のポテンシオスタットまたはガルバノスタットなどの電源装置が使用できる。
本発明は、3電極法以外に、2電極法を用いることも可能で、その際は、腐食電位としては、試料と対極との電位差で代用することができる。
また、分極コンダクタンスの測定には直流分極法、サイン波を用いたインピーダンス法、さらには、矩形波等を用いた測定方法、および、これらにFFT(Fast Fourier Transfer)等の周波数領域での分析手法を組み合わせた方法が使用できる。
精度良く腐食速度icorrを測定するためには、直流分極を少なくとも腐食電位に対して3水準以上に変化させて測定を行うことが好ましい。また、直流分極の範囲は、上記の通り、腐食状態を損わない程度に小さいことが好ましいが、その範囲は、金属と腐食環境の組み合わせによって、任意に設定することが可能である。
また、分極コンダクタンスYcorrおよびYpの測定においても、直流分極に重畳した分極を与えることが必要となるが、分極コンダクタンスを測定するための分極の範囲は、金属と腐食環境の組み合わせによって任意に設定することが可能である。
ただし、分極コンダクタンスは、分極曲線の直流分極電位における接線の傾きの逆数として定義されることから、その分極程度は、小さい方が定義に忠実となり、200mV以下とすることが好ましい。
さらに、20mV以下では、直流分極電位Eと直流分極電流iとの関係式:E=a×ln(bi)(ただし、a、bは定数)を、i≒0のとき、E≒abiとする簡便な近似式が成立するため、20mV以下とすることがより好ましい。
以上の通り、腐食電位Ecorr、腐食電位における分極コンダクタンスYcorr、直流分極状態における直流分極電流密度is(少なくとも3水準以上の直流分極状態)、および、各直流分極状態におけるYpを測定する。直流分極電流密度isについては、前述の通り、水準数が多いほど測定の精度は向上する。
次に、上記の測定結果から、[式1]を満足するアノードおよびカソードターフェル勾配βaとβcを計算によって求める。
Figure 0004593382
[式1]は、βa,βcに関して陰関数であるために、解析的にβa,βcを算出することは、一般に困難であるが、その解の算出には、計算機による数値解析を用いることが可能である。
また、[式1]の近似的として、[式12]を使用することが可能であり、[式12]は、同様に、βaとβcに関して陰関数であるために、解析的にβaとβcを算出することは、一般に困難であるが、その解の算出には、計算機による数値解析を用いることが可能である。
Figure 0004593382
以上の計算の結果、算出されたβaおよびβcと、実測されたYcorrを用いて、腐食速度icorrは、[式2]によって算出される。
Figure 0004593382
この方法によれば、腐食速度が把握には、数分から数十分の時間内で、精度良く測定を行うことができる。したがって、対象の金属について、本発明方法による測定時点に対して、短時間で腐食速度を測定できるため、ほぼリアルタイムで腐食状況を評価することができる。そのため、腐食状況に応じて、種々の検討や対応を迅速に行うことができる。
電気防食を適用する場合、さらに、実測された腐食電位Ecorrを用いて、金属のアノード反応速度電流密度(すなわち腐食速度)iaおよび金属のカソード反応速度電流密度icは、[式13]によって算出することが可能となる。
Figure 0004593382
したがって、これらの定量的関係に基づいて、電気防食を適用した際の目標とするアノード反応速度電流密度、すなわち、目標とする腐食速度iaを任意に設定し、これを達成するに必要な電位Eを[式13]によって導きだし、よって、金属を電気防食する際の防食電位を決定できる。
ここで、防食電位としては、[式13]によって導出された電位Eとして決定することができるが、この導出された電位Eよりも卑な電位を防食電位として決定してもよい。
また、近年では、高張力鋼の使用や防食を目的としたチタンライニング等が使用されているが、電気防食の適用によって発生する水素が、これらの材料の脆化を引き起こす場合もあり、水素発生量は、可能な限り少なくすることが望ましいとされている。
このように、水素発生が問題となる場合に、水素の発生速度は、同様に、[式13]のicとして定量的に把握が可能となり、本方法によれば、水素発生icと防食程度iaの双方を考慮して、金属を電気防食する際の防食電位を決定することもできる。
腐食抑制剤が添加された環境中における腐食速度も、上記の手順によって最終的に[式2]から算出した具体的な腐食速度icorrを、測定時点とほぼリアルタイムで測定できるため、測定時点における防食状態が、目的とする防食状態を達成するものか否かを定量的に判定することができる。
したがって、腐食抑制剤を添加した後に、適宜間隔で同様に測定を行うことで、防食状態の経時的な推移を定量的に監視することができる。
さらに、上記のように、防食状態の経時的な推移を定量的に監視することにより、算出された腐食速度icorrに基き、所望の腐食速度の範囲を超えるような状態、すなわち、腐食抑制剤の効果が不十分となった場合は、腐食抑制剤の添加量を制御して、必要に応じて、上記測定を繰返すことによって、腐食抑制剤の添加量の管理を行うことで、所望の腐食速度の範囲内となるように調整できる。
ここで、腐食抑制剤の添加量の制御方法については、特に規定するものではなく、1回の添加量で調整しても、複数回に分けてそれぞれの添加量を調整してもよく、さらに、腐食抑制剤の濃度で調整してもよく、さらに、これらを任意に組み合わせて行ってもよい。
また、所望の腐食速度の範囲は、特に規定するものではなく、耐用年数や使用環境、または、コストの制約等を考慮して、適宜設定すればよい。
また、以上の測定は、計算機制御あるいは専用機器とすることで、自動運転が可能であり、腐食抑制剤の効果のモニタリングや、腐食抑制剤の添加量の管理を、無人で行うことも可能である。
具体的には、腐食抑制剤もしくはこれを適切な濃度に希釈した溶液を、使用する腐食抑制剤の効能に従って、目的環境中に適宜添加することとなるが、目的環境中への腐食抑制剤の投入量後のその効果を、迅速に、本発明の方法でモニターしつつ、十分な効果が得られた時点で投入を中止することで、最適添加量を得ることが可能となる。
さらに、腐食抑制剤の投入とその効果のモニターでは、モニター測定の計算機制御による自動化が可能であり、また、腐食抑制剤の既存シーケンス制御または計算機制御による腐食抑制剤の投入量のコントロールによる自動化が可能であり、両者を組み合わせることで、腐食抑制剤の添加量の管理を、無人で行うことも可能となる。
以下に、本発明の実施例を示す。
対象金属の例として、鋼(JIS SS400鋼)、アルミニウム、および、亜鉛を取り上げた。
試験片は、市販の圧延材を30mm×50mmに切出したものを用いて、試験面を#800のエメリー紙にて研磨し、本試験片に、電気化学測定のためのリード線を接続し、試験面以外の全ての面を、樹脂にて塗装を行い試験に供した。
試験溶液には、NaCl3.0質量%と、同0.03質量%の溶液を用い、腐食試験前のpHを、2、7、13の3水準に設定し、これらの溶液に試験片を浸漬して測定を実施した。なお、全ての試験は、空気開放環境、室温(20〜30℃程度)の条件で実施した。
腐食期間は、金属と溶液の組み合わせによって異なるが、試験片の腐食質量減少測定が安定に実施できる2〜30日とした。
電気化学測定には、ポテンシオスタット(東方技研製 モデル2000)を用い、これにファンクションジェネレータ(東方技研製 FG−8)を組み合わせて使用した。
また、実施例の全ての電気化学測定は3電極法によって実施したが、その際に必要となる対極には白金板を、また、参照電極には、自作のAg/AgCl電極を使用した。
なお、一般に、電気化学測定は、外乱要因の少ない低ノイズ環境で実施されるが、本実施例では、あえて外乱因子が存在する実用的環境における実用性を含めた評価を行う目的から、±80mVの商用周波数ノイズが存在する環境で測定を実施した。
以上の測定構成を用い、以下の手順で各種測定と測定結果に基づく腐食速度パラメータの算出および腐食速度の算出を行った。
(I)腐食電位Ecorrを、ポテンシオスタットに内蔵のエレクトロメータによって測定する。観測された腐食電位に定電位保持する。
(II)定電位保持された電位で、電位制御によって直線分極法、インピーダンス測定、および、矩形波定電位による測定によって、分極コンダクタンスYcorrを求める。
インピーダンス測定および矩形波定電位による測定では、腐食電位からの分極は±20mVとし、周波数は0.01Hzとし、ここで求まる抵抗を全抵抗とした。
また、溶液抵抗を補正するために、インピーダンス測定および矩形波定電位による測定によって±20mV、10kHzの波形を印加し、溶液抵抗を求め、低周波測定で観測された全抵抗から差引き、これを分極抵抗Rcorrとして、また、その逆数をYcorrとして評価した。
なお、直線分極法、インピーダンス測定、および、矩形波による測定によって測定評価した分極コンダクタンスYcorrは、ほぼ同等の結果を与えることから、最終評価値は、測定が最も安定に行えた矩形波定電位による測定値を採用した。
(III)引続き定電位に保持されている状態の電位から、−15mVの直流分極を行い、分極保持3分後に観測される直流分極に要する直流分極電流密度isを測定する。さらに、(II)と同等の手順によって、直流分極下での分極コンダクタンスYpを測定する。
(IV)以上、(II)(III)の測定を最低3回繰返し、is=0のときのYcorr、および、isとYpの測定値をセットとして、それぞれ3点以上を得る。測定完了後は、直ちに、直流分極等の一切の外部分極を中止し、自然腐食状態を継続する。
測定によって得られた数値を用い、[式1]を満足するβaおよびβcを、計算機による数値解析によって求める。
Figure 0004593382
次に、求めたβa,βcによって、腐食速度icorrを、[式2]によって算出する。
Figure 0004593382
以上、(I)〜(IV)の測定を、1〜2.5時間間隔で繰返し、腐食速度icorrの経時変化を測定した。この測定された腐食速度の経時変化の結果を時間で積分し、腐食試験片の取出し時までの平均腐食速度を求めた。なお、全ての測定、計算と機器の制御はマイクロコンピュータにて行った。
一方、腐食試験後に取出したサンプルの被覆および腐食生成物を除去し、腐食試験前後の質量変化を測定した。本質量変化に基づいて、腐食試験期間の質量減少による平均腐食速度を算出した。
以上の手順の通り、本発明によって算出した平均腐食速度と、質量減少の実測によって求めた平均腐食速度の対応を、図1〜図3に示した。
これらの図に明らかなように、本発明によって算出した平均腐食速度は、質量減少によって求めた平均腐食速度と極めて良い対応関係にあり、全ての条件で±15%以内の優れた定量的対応にあることがわかった。
従来の分極抵抗法では、図1〜図3と同等の対応関係を議論する際には、両対数図が用いられ、その精度が±200%であれば、優れた対応にあると判断されていたが、本発明によれば、極めて高い精度で、かつ、迅速に腐食速度を測定することが可能となる。
次に、電気防食を施す場合の実施例について説明する。
まず、試験対象金属、試験条件、電気化学測定条件は、実施例1と同じ条件とし、腐食速度パラメータの算出および腐食速度の算出も実施例1と同様に行った。
さらに、[式3]において、電気防食を施した金属の目標腐食速度iaを0.01μA/cm2と設定して、これに必要な電気防食電位Eを決定した。
Figure 0004593382
以上の測定によって決定した、金属と溶液の組み合わせに応じた電気防食電位に保持した試験を、各金属と各溶液の組み合わせ毎に、3年間実施した。
3年間の電気防食を行った後に、電気防食対象試験片の被覆および付着物を除去し、試験前後の質量変化を求めたが、全ての試験片で、使用した秤量器の質量測定限界である0.1mg未満の質量変化結果となり、全ての金属と溶液の組み合わせで、良好な電気防食状態にあったことを確認した。
次に、腐食抑制剤による金属の防食に関する実施例について説明する。
対象金属の例として、鋼(JIS SS400鋼)を取り上げた。試験片は、市販の圧延材を30mm×50mmに切出したものを用いて、試験面を#800のエメリー紙にて研磨し、本試験片に電気化学測定のためのリード線を接続し、試験面以外の全ての面を樹脂にて塗装を行い、試験に供した。
試験溶液には、3質量%、0.3質量%、および、0.03質量%のNaCl溶液を用い、腐食抑制剤を添加しない状態でのpHを7に設定し、腐食抑制剤の一例としてポリリン酸ナトリウムを初期濃度0.05ppmに調製した上記溶液に試験片を浸漬して試験を実施した。
なお、試験は、空気開放環境、室温(20〜30℃程度)の条件で実施した。腐食期間は1年とした。
電気化学測定、および、腐食速度パラメータの算出から自然腐食状態での腐食速度の算出(I)〜(IV)までは、実施例1と同様に行った。さらに、本実施例では、前記の(I)〜(IV)に加えて、以下の腐食抑制剤の添加の手順(V)を追加した。
(V) 測定された腐食速度icorrが、測定時点の速度として、この試験における所望の腐食量と設定した0.01mm/年を越える測定結果が得られた場合には、コンピュータ制御によって、自動で溶液中のポリリン酸ナトリウム添加量を、全溶液濃度で約0.05ppm増大させた。
腐食抑制剤の添加後5分以内に、実施例1の(I)〜(IV)の測定と上記(V)の腐食抑制剤の添加を繰り返す手順とした。この手順は、測定時点の腐食速度icorrが0.01mm/年未満となるまで繰り返される制御構成とした。
以上の腐食速度icorrの測定および腐食抑制剤添加量の制御を繰り返し行う一連の手順を、1日間隔で実施し、腐食速度icorrの経時変化を測定した。このようにして測定された腐食速度icorrの経時変化の結果を時間で積分し、腐食試験片取出し時までの平均腐食速度を求めた。その結果、全ての試験片で0.006mm/y以下の腐食量となった。
一方、一年にわたる本腐食試験後に取り出したサンプルの被覆および表面付着物を除去し、腐食試験前後の質量変化を測定した。本質量変化に基づいて、腐食試験期間の質量減少による平均腐食速度を算出した。その結果、全ての試験片で0.005mm/y以下の腐食量であった。
以上のことから、本発明の方法によって腐食抑制剤を含む環境での腐食速度を測定することで、腐食状況を的確にモニタリングすることができ、さらに、腐食抑制剤の添加量を管理することで、金属を所望の防食状態に安定に維持できることがわかった。
本発明によれば、前述したように、金属の腐食速度を迅速かつ精度良く測定することができ、また、電気防食を適用する場合は最適な防食電位を定量的に設定でき、さらには、腐食抑制剤による防食の場合は、その効果の確認、および、腐食抑制剤の添加量の適正な管理が可能となるので、本発明は金属の腐食評価および防食に有効に利用できるものである。
本発明によって評価した平均腐食速度と質量減少によって評価した平均腐食速度の対比を、縦軸0〜8000μA/cm2、横軸0〜8000μA/cm2として表示した図である。 本発明によって評価した平均腐食速度と質量減少によって評価した平均腐食速度の対比を、縦軸0〜1000μA/cm2、横軸0〜1000μA/cm2として表示した図である。 本発明によって評価した平均腐食速度と質量減少によって評価した平均腐食速度の対比を、縦軸0〜100μA/cm2、横軸0〜100μA/cm2として表示した図である。

Claims (3)

  1. 対象金属の腐食状態を損なわない程度に微少な直流分極を与えた状態で測定される直流分極電流密度isと分極コンダクタンスYp、および、直流分極を与えていない状態で測定される分極コンダクタンスYcorrから、[式1]の関係を満足するアノードターフェル勾配βaおよびカソードターフェル勾配βcを算出し、次に、[式2]により腐食速度icorrを算出することを特徴とする金属の腐食速度の測定方法。
    Figure 0004593382
    Figure 0004593382
  2. 電気防食による金属の防食方法において、請求項1に記載の金属の腐食速度の測定方法により、アノードターフェル勾配βaおよび腐食速度icorrを算出し、さらに、測定される腐食電位Ecorrから、[式3]の関係を満足するように、任意に設定した目標腐食速度iaに応じて算出される防食電位Eにより電気防食することを特徴とする金属の防食方法。
    Figure 0004593382
  3. 腐食抑制剤を添加した環境中にある金属の防食方法であって、請求項1に記載の金属の腐食速度の測定方法により腐食速度icorrを算出し、腐食速度を定量的に監視するとともに、算出された前記腐食速度icorrに基き、所望の腐食速度の範囲となるように、腐食抑制剤の添加量を制御することを特徴とする金属の防食方法。
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