JP4605950B2 - ポリイミド系積層フィルム及びそれを用いてなる金属積層体並びに金属積層体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレクトロニクス分野で急速に需要が伸びている高密度多層基板において、寸法安定性が良好であり、かつ熱硬化性の接着剤を用いることなく、金属との熱融着による多層化が容易なポリイミド系積層フィルムとこのフィルムを用いた金属積層体並びにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プリント配線板を使用した情報・電子機器の小型化、高密度化により、部品・素子の高密度実装が可能な、ポリイミド系金属箔積層板の利用が増大している。しかしながら、従来の金属箔積層板は、エポキシ樹脂等の熱硬化性接着剤を用いて、ポリイミドフィルムと金属箔とを貼り合わせることにより製造されているために、耐熱性・耐薬品性・電気特性等の特性は、使用される接着剤の特性に支配され、ポリイミドの優れた諸特性が十分に活かされず、ハンダ処理などの高温に曝される加工工程、又は、高温に曝される用途では使用できないという問題があり、特に耐熱性の点で十分なものではなかった。
その対策として、耐熱性のある接着剤の検討が種々行われているが、高い耐熱性を有する接着剤は、積層工程が高温を必要としたり、複雑な積層工程を必要としたり、また、得られた積層体が充分な接着性を示さないことが多い等の問題があり、実用的ではなかった。
この接着剤を有する従来の金属箔積層板の欠点を克服するために、金属箔上にポリイミド溶液またはポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を直接流延塗布することにより、通常の接着剤層を有しない、絶縁層が全てポリイミドから成る金属箔積層板(フレキシブル基板など)を得ようとする試みがなされている。また、ポリイミドフィルムの片面または両面に、熱可塑性の芳香族ポリイミドなどの熱融着性を有するポリイミドを積層し、このポリイミド積層体と金属箔とを重ね合わせ加熱圧着して、同様に絶縁層が全てポリイミドから成るフレキシブル金属箔積層板を得ようとする試みもなされている。
しかしながら、これらの方法で得られた金属箔積層板は、フレキシブル基板など金属層と樹脂層の2層基板、あるいは樹脂層の両面に金属層が形成された用途の場合には特に問題は生じないが、近年使用量が急速に増加しているビルドアップ基板や一括多層基板のような金属層と絶縁層が数多く積層されている多層基板の用途では、なお、多層化の為にエポキシ樹脂等の熱硬化性接着剤が主に用いられており、接着剤の特性に由来する耐熱性不足の問題、また作業性、作業環境などの問題があり、さらなる改良が期待されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、エレクトロニクス分野で急速に需要が伸びている高密度多層基板において、寸法安定性が良好であり、かつ熱硬化性の接着剤を用いることなく、金属との熱融着による多層化が容易なポリイミド系積層フィルムとこのフィルムを用いた金属積層体並びにその製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定組成の熱融着性を有する樹脂フィルムを高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルムに一体に積層させることにより、上記課題を解決することのできるポリイミド系積層フィルムを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨とするところは、結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)と非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)とを主成分とする混合樹脂フィルムの少なくとも片面に熱可塑性芳香族ポリイミド層(C)を介して高耐熱性の芳香族ポリイミド層(D)とが一体に積層されていることを特徴とするポリイミド系積層フィルムに存する。
【0005】
また、本発明の別の要旨は、該ポリイミド系積層フィルムの混合樹脂フィルム側に金属体が、加熱圧着により接合されていることを特徴とする金属積層体に存し、
さらに、該ポリイミド系積層フィルムの混合樹脂フィルムを介して金属体を、加熱圧着により一体化することを特徴とする金属積層体の製造方法に存する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のフィルムは、結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)と非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)とを主成分とする混合樹脂フィルムの少なくとも片面に熱可塑性の芳香族ポリイミド層(C)を介して高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルム(D)とが一体に積層されていることを特徴とするポリイミド系積層フィルムである。
ここで、本発明を構成する結晶性ポリアリールケトン樹脂は、その構造単位に芳香核結合、エーテル結合及びケトン結合を含む熱可塑性樹脂であり、その代表例としては、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン等があるが、本発明においては、下記構造式(1)に示す繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンが好適に使用される。この繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンは、VICTREX社製の商品名「PEEK151G」、「PEEK381G」、「PEEK450G」などとして市販されている。なお、使用する結晶性ポリアリールケトン樹脂は、1種類を単独で、2種類以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0007】
【式1】
【0008】
また、非晶性ポリエーテルイミド樹脂は、その構造単位に芳香核結合、エーテル結合及びイミド結合を含む非晶性熱可塑性樹脂であり、特に制限されるものでない。具体的には、下記構造式(2)、(3)に示す繰り返し単位を有するポリエーテルイミドがそれぞれ、ゼネラルエレクトリック社製の商品名「Ultem CRS5001」、「Ultem 1000」として市販されており、ともに使用することができるが、本発明においては下記構造式(3)に示す繰り返し単位を有するポリエーテルイミドがより好適に使用される。
【0009】
【式2】
【0010】
【式3】
【0011】
非晶性ポリエーテルイミド樹脂の製造方法は特に限定されるものではないが、通常、上記構造式(2)を有する非晶性ポリエーテルイミド樹脂は、4,4´−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)ジフタル酸二無水物とp−フェニレンジアミンとの重縮合物として、また上記構造式(3)を有する非晶性ポリエーテルイミド樹脂は、4,4´−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)ジフタル酸二無水物とm−フェニレンジアミンとの重縮合物として公知の方法によって合成される。また、上述した非晶性ポリエーテルイミド樹脂には、本発明の主旨を超えない範囲でポリイミド単位などの共重合可能な他の単量体単位を導入してもかまわない。なお、使用する非晶性ポリエーテルイミド樹脂は、1種類を単独で、2種類以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0012】
上記混合樹脂フィルムにおいては、結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)の結晶融解ピーク温度が260℃以上であり、ポリアリールケトン樹脂(A)と非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)とが混合重量比でA/B=70〜30/30〜70である樹脂組成物を用いることが好ましい。
ここで、結晶性ポリアリールケトン樹脂が70重量%を超えたり、非晶性ポリエーテルイミド樹脂が30重量%未満では、組成物全体としてのガラス転移温度を向上させる効果が少ないため耐熱性が不充分となり易かったり、結晶化に伴う体積収縮(寸法変化)が大きくなり回路基板としての信頼性が低下し易いため好ましくない。
また、結晶性ポリアリールケトン樹脂が30重量%未満であったり、非晶性ポリエーテルイミド樹脂が70重量%を超えると組成物全体としての結晶性自体が低く、また結晶化速度も遅くなり過ぎ、結晶融解ピーク温度が260℃以上であってもはんだ耐熱性が低下するため好ましくない。
ここで、混合樹脂フィルムを構成する組成物全体としてのガラス転移温度としては、140℃〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、180℃〜250℃である。該ガラス転移温度が140℃未満では、耐熱性が不充分となりやすく、一方、250℃を越えると低温での熱融着による多層化が困難となる。また、通常、結晶性ポリアリールケトン樹脂のガラス転移温度の上限値は、170℃程度、非晶性ポリエーテルイミド樹脂のガラス転移温度の上限値は、250℃程度である。
このことから本発明においては、上記結晶性ポリアリールケトン樹脂65〜35重量%と非晶性ポリエーテルイミド樹脂35〜65重量%とからなる樹脂組成物がエレクトロニクス用基板の部材として特に好適に用いられる。
【0013】
本発明のポリイミド系積層フィルムの寸法安定性を重視する場合には、混合樹脂フィルムを構成する結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)と非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)とからなる樹脂組成物100重量部に対して充填材を5〜50重量部の範囲で混合することが好ましい。ここで混合する充填材が50重量部を超えると、フィルムの可とう性、端裂抵抗値が著しく低下するため好ましくない。一方、5重量部未満では、線膨張係数を低下して寸法安定性を向上させる効果が少ないため好ましくない。このことから好適な充填材の混合量は、上述した樹脂組成物100重量部に対して10〜40重量部であり、さらにフィルムの寸法安定性と可とう性あるいは端裂抵抗値とのバランスを重視する場合には、20〜35重量部の範囲で制御することが好ましい。また、用いる充填材としては、特に制限はなく、公知のものを使用することができる。例えば、タルク、マイカ、クレー、ガラス、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、窒化珪素などの無機充填材、ガラス繊維やアラミド繊維などの繊維が挙げられ、これらは1種類を単独で、2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、用いる充填材には、チタネートなどのカップリング剤処理、脂肪酸、樹脂酸、各種界面活性剤処理などの表面処理を行ってもよい。特に、平均粒径が0.5〜20μm程度、特には1〜10μm、平均アスペクト比(粒径/厚み)が20〜30程度以上、特には50以上の無機充填材が好適に用いられる。
【0014】
また、混合樹脂フィルムを構成する樹脂組成物には、その性質を損なわない程度に、他の樹脂や充填材以外の各種添加剤、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、着色剤、滑剤、難燃剤等を適宜配合しても良い。また充填材を含めた各種添加剤の混合方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、(a)各種添加剤を結晶性ポリアリールケトン樹脂及び/又は非晶性ポリエーテルイミド樹脂などの適当なベース樹脂に高濃度(代表的な含有量としては10〜60重量%程度)に混合したマスターバッチを別途作製しておき、これを使用する樹脂に濃度を調整して混合し、ニーダーや押出機等を用いて機械的にブレンドする方法、(b)使用する樹脂に直接各種添加剤をニーダーや押出機等を用いて機械的にブレンドする方法などが挙げられる。上記混合方法の中では、(a)のマスターバッチを作製し、混合する方法が分散性や作業性の点から好ましい。
【0015】
本発明を構成する混合樹脂フィルムの製膜方法としては、公知の方法、例えばTダイを用いる押出キャスト法やカレンダー法等を採用することができ、特に限定されるものではないが、フィルムの製膜性や安定生産性等の面から、Tダイを用いる押出キャスト法が好ましい。Tダイを用いる押出キャスト法での成形温度は、組成物の流動特性や製膜性等によって適宜調整されるが、概ね融点以上、430℃以下である。また、該フィルムの厚みは、特に制限されるものではないが、通常5〜200μm程度、好ましくは、10〜100μmである。さらに、フィルムの表面にはハンドリング性の改良等のために、エンボス加工やコロナ処理等を適宜施してもかまわない。
【0016】
次に、本発明を構成する高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルムは、市販されているポリイミドフィルムを使用しても、流延法、射出法、延伸法等の公知の方法で形成したものを使用してもよい。
該高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルムとしては、30モル%以上、特には50モル%以上のビフェニルテトラカルボン酸成分(特に3、3’、4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)と50モル%以上のフェニレンジアミン成分(特にp−フェニレンジアミン)とから、重合およびイミド化によって得られる芳香族ポリイミドであることが、得られるポリイミドフィルムおよび金属積層体の耐熱性、機械的強度、線膨張係数、寸法安定性などの点から好ましい。市販されているフィルムの具体例としては、宇部興産製の商品名「ユーピレックスS」、鐘淵化学工業製の商品名「アピカルAH」、「アピカルNPI」、東レ・デュポン製の商品名「カプトンHタイプ」などを挙げることができる。
該高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルムの厚みは特に限定されるものではないが、代表的には5〜150μm、好ましくは10〜50μmである。またその表面にプラズマ処理、あるいはポリアミック酸フィルムの段階でその表面をアミノシランカップリング剤で処理、乾燥、加熱処理したものが好ましい。
【0017】
本発明を構成する熱可塑性の芳香族ポリイミドは、主鎖にイミド構造を有するポリマーであって、ガラス転移温度が、概ね150〜350℃、好ましくは200〜300℃の範囲内にあり、ガラス転移温度以上の温度領域で、弾性率が急激に低下するものである。
上記熱可塑性の芳香族ポリイミドとしては、芳香族テトラカルボン酸成分としてベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物も使用可能であるが、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3、3’、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。そのなかでも特に芳香族テトラカルボン酸成分として、2、3、3’、4’−ビフェニルテトラカルボン二無水物を芳香族テトラカルボン酸成分中30モル%以上、特に50モル%以上使用したものが好ましい。また、芳香族ジアミン成分としては、ジアミノジフェニルエーテル類、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン類、ビス(アミノフェノキシフェニル)スルホン類、ビス(アミノフェノキシフェニル)プロパン類が好ましい。また、ジアミン成分として、5〜25モル%のジアミノシロキサンと75〜95モル%の芳香族ジアミンとを使用したものが好適に使用される。
【0018】
高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルム(D)の少なくとも片面に熱可塑性の芳香族ポリイミド層(C)を形成する方法としては、熱可塑性の芳香族ポリイミド溶液を高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルム(D)上に塗布し、これを乾燥のため50〜350℃程度の温度で加熱処理するという公知の方法によって作製することができる。
ここで、熱可塑性の芳香族ポリイミド溶液は、芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸成分とを、芳香族ポリイミドが塗布に適した低対数粘度であってかつ熱可塑性となるように各成分を選択し、有機極性溶媒中で重合することによって得ることができる。該有機極性溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスホルアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン、エチレングリコール等を挙げることができる。これらの有機極性溶媒は、ベンゼン、トルエン、ベンゾニトリル、キシレン、ソルベントナフサ、およびジオキサンのような他の有機溶媒と混合して使用することもできる。
また、塗布する方法には特に限定はなく、コンマコーター、ナイフコーター、ロールコーター、リバースコーター、ダイコーター、グラビアコーター、ワイヤーバー等公知の塗布装置を使用することができる。
【0019】
ここで、熱可塑性の芳香族ポリイミド層(C)を設けた高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルム(D)は、全体の厚さが8〜250μm、好ましくは10〜150μm、更に好ましくは12〜50μm程度である。ここで、熱可塑性の芳香族ポリイミド層(C)の厚みを増加させることは、ポリイミドフィルムに熱可塑性の芳香族ポリイミド溶液を塗布・乾燥する工程において、乾燥の長時間化や塗面の均一性の保持の困難さなど、技術的あるいは経済的な問題を招くことがあるため、上述した混合樹脂フィルムとの接着強度が確保できる必要最小限の厚み(概ね0.5μm〜10μm程度)にすることがより好ましい。また、高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルム(D)の片面に熱可塑性の芳香族ポリイミド層(C)を設けた2層構成のフィルムであっても、その両面に熱可塑性の芳香族ポリイミド層(C)を設けた3層構成のフィルムであってもかまわない。
さらに本発明においては、高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルム(D)の少なくとも片面に熱可塑性の芳香族ポリイミド層(C)が既に形成された市販品を使用してもよい。市販されている具体例としては、宇部興産製の商品名「ユーピレックスVT」を挙げることができる。
【0020】
次に、結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)と非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)とを主成分とする混合樹脂フィルムと熱可塑性の芳香族ポリイミド層(C)を設けた高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルム(D)とを一体に積層する方法としては、公知の各種の方法が採用でき、特に制限されないが、次のような方法を例示することができる。
熱可塑性の芳香族ポリイミド層(C)を設けた高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルム(D)を上述した方法により作製するか、あるいは市販品をあらかじめ準備しておき、結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)と非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)とを主成分とする混合樹脂フィルムを押出、製膜する際に、熱可塑性の芳香族ポリイミド層(C)を介して押出ラミネートする方法、あるいは、熱可塑性の芳香族ポリイミド層(C)を設けた高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルム(D)と結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)と非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)とを主成分とする混合樹脂フィルムをそれぞれ別に準備しておき、熱プレスやラミネートにより積層する方法などを挙げることができる。
【0021】
次に本発明の金属積層体は、上述したポリイミド系積層フィルムの混合樹脂フィルム側に金属体が、加熱圧着により接合されていることを特徴とする金属積層体である。
ここで本発明に用いられる金属としては、銅、銀、金、鉄、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、ニッケルなど、またはこれらの合金類が挙げられる。これらは1種類を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることが出来る。さらに、本発明を妨げない範囲の表面処理、例えばアミノシラン剤などによる処理が施された金属であっても良い。
金属体の形状としては、構造部材としての形状の他、電気、電子回路を形成するための細線やエッチング処理にて回路を形成するための箔状(厚み3〜70μm程度)などが挙げられる。放熱を主目的とするためにはアルミニウム(板、箔)が、耐食性、高強度、高電気抵抗性などが必要な場合はステンレス(板、箔)が好ましく、複雑で微細な回路形成のためには銅箔であることが好ましい。この場合、表面を黒色酸化処理等の化成処理を施したものが好適に使用される。金属体は、接着効果を高めるために、混合樹脂成形体との接触面(重ねる面)側を予め化学的または機械的に粗化したものを用いることが好ましい。表面粗化処理された銅箔の具体例としては、電解銅箔を製造する際に電気化学的に処理された粗化銅箔などが挙げられる。
【0022】
金属体と上述したポリイミド系積層フィルムとを接着剤を用いることなく混合樹脂フィルムを介して熱融着させる方法としては、加熱、加圧できる方法であれば公知の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、所望の熱融着温度に設定されたプレス装置にてフィルムと金属体とを加圧する方法、予め熱融着温度に熱せられた金属体をフィルムに圧着する方法、熱融着温度に設定された熱ロールにてフィルムと金属体とを連続的に加圧する方法、又はこれらを組み合わせた方法などが挙げられる。プレス装置を用いる場合、プレス圧力は面圧力で0.98〜9.8MPa(10〜100kg/cm2)程度の範囲で、減圧度973hPa(ヘクトパスカル)程度の減圧下で行うと、金属体の酸化を防止でき好ましい。また、各々のフィルムと金属体は、フィルムと金属体の片面同士が接合(積層)されても良いし、片方または各々の両面が接合(積層)される形状であっても良い。
また、ここでは金属体との熱融着についてのみ説明したが、金属体以外にもセラミック類や他のエンジニアリングプラスチックフィルムなどとの熱融着にも利用可能である。
【0023】
また、本発明の金属積層体をフレキシブルプリント配線基板、リジッドフレックス基板、ビルドアップ多層基板、一括多層基板、金属ベース基板などのエレクトロニクス用基板の基材として適用する場合において、金属体に導電性回路を形成させる方法についても、エッチングなどの公知の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。さらに多層基板とした場合の層間接続の方法としては、例えば、スルーホールに銅メッキする方法やスルーホール、インナーバイアホール中へ導電性ペーストやはんだボールを充填する方法、微細な導電粒子を含有した絶縁層による異方導電性材料を応用する方法などが挙げられる。
【0024】
【実施例】
以下に実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向とよぶ。
【0025】
(1)線膨張係数
セイコーインスツルメンツ(株)製の熱応力歪み測定装置TMA/SS6100を用いて、フィルムから切り出した短冊状の試験片(長さ10mm、断面積1mm2)を引張荷重9.807×10−4Nで固定し、30℃から5℃/分の割合で200℃まで昇温させ、縦方向(α1(縦))と横方向(α1(横))の熱膨張量の温度依存性を求めた。
【0026】
(2)熱融着特性
フィルムの被接着面同士を重ね合わせ、時間30分、圧力2.94MPaの条件で、温度を200℃から10℃間隔で順次上昇させて熱プレスし、界面のピール強度を測定(90度剥離、試験速度:200mm/分)し、ピール強度が10N/cm以上の値を示す最も低い温度を測定した。記載温度が低い方がより低温での多層化が可能となる目安となる。
【0027】
(3)接着強度
JIS C6481の常態の引き剥がし強さに準拠して測定した。
【0028】
(4)はんだ耐熱性
JIS C6481の常態のはんだ耐熱性に準拠し、260℃のはんだ浴に試験片を銅箔側とはんだ浴とが接触するように20秒間浮かべ、室温まで冷却した後、膨れやはがれ等の有無を目視によって調べ、良否を判定した。
【0029】
(実施例1)
ポリエーテルエーテルケトン樹脂[ビクトレックス社製、PEEK381G、Tg:143℃、Tm:334℃](以下、単にPEEKと略記する)50重量部と、ポリエーテルイミド樹脂[ゼネラルエレクトリック社製、Ultem−1000、Tg:216℃](以下、単にPEIと略記する)50重量部及び市販のマイカ(平均粒径:10μm、アスペクト比:50)30重量部とからなる混合組成物を、Tダイを備えた押出機を用いて設定温度380℃で混練・押出し、同時に宇部興産製の商品名「ユーピレックスVT」(高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルムの両面に約2.5μmの熱可塑性の芳香族ポリイミド層が既に形成されている市販品、ユーピレックスVTのみで測定した線膨張係数は、α1(縦):17×10−6/℃、α1(横):19×10−6/℃であった。)30μmをロール温度250℃でラミネート後、急冷することにより目的のポリイミド系積層フィルム(全層厚み50μm、4層構成:(PEEK/PEI混合樹脂フィルム)/熱可塑性の芳香族ポリイミド層/高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルム/熱可塑性の芳香族ポリイミド層)を得た。このポリイミド系積層フィルムの線膨張係数は、α1(縦):18×10−6/℃、α1(横):20×10−6/℃であった。次いでこのフィルムのPEEK/PEI混合樹脂フィルム面同士、銅箔(ジャパンエナジー製、BHY−02B−T、18μm)の粗化面およびユーピレックスVT(熱可塑性の芳香族ポリイミド層)との熱融着特性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0030】
(比較例1)
実施例1で得られたフィルムとPEEK/PEI混合樹脂フィルム面、銅箔(ジャパンエナジー製、BHY−02B−T、18μm)の粗化面および熱可塑性の芳香族ポリイミド層同士(ユーピレックスVT同士)との熱融着特性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0031】
(実施例2)
実施例1と同様にして、押出およびラミネート法により銅箔(ジャパンエナジー製、BHY−02B−T、18μm)/(PEEK/PEI混合樹脂フィルム)(20μm)/ユーピレックスVT(30μm)/(PEEK/PEI混合樹脂フィルム)(20μm)構成の銅箔積層板を得た。さらに得られた銅箔積層板をA4サイズに切り出し、エッチングにより所望の回路を形成後、スールホールをドリル加工し、導電性ペーストを充填した。次いでアルミ板(厚み1mm)の上に、導電性ペーストを充填した銅箔積層板を8枚、金属層/樹脂層の順になるように交互に積層し、温度250℃、時間30分、圧力2.94MPaの条件で真空プレスし、アルミベース多層基板を作製した。得られたアルミベース多層基板は、基板のそりもなく、また、銅箔の接着強度は、12.1N/cmであり、はんだ耐熱性も良好であった。さらに、SEM(走査型電子顕微鏡)による断面観察を行った結果、回路の歪がほとんどなく、各層の回路の包埋性も良好であることが観察された。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例、比較例および表1より、本発明で規定する構成のポリイミド系積層フィルムは、高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルムが有する寸法安定性を保持しつつ、低温での多層化が容易であり、かつ、はんだ耐熱性や各層の回路の包埋性も良好であることが確認できる(実施例1、2)。一方、熱融着層として熱可塑性の芳香族ポリイミド層を設けた高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルムは、寸法安定性は良好であり、フィルム同士あるいは金属体との熱融着も可能であるが、より高温での熱融着が必要であることが確認される(比較例1)。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、寸法安定性が良好であり、かつ熱硬化性の接着剤を用いることなく、金属との熱融着による多層化が容易なポリイミド系積層フィルムとこのフィルムを用いた金属積層体並びにその製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリイミド系積層フィルムの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の金属積層体の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 PEEK/PEI混合樹脂フィルム
2 熱可塑性の芳香族ポリイミド層
3 高耐熱性の芳香族ポリイミドフィルム
4 金属体
Claims (6)
- 結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)と非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)とからなる樹脂組成物100重量部に対して充填材を20〜35重量部の範囲で混合してなる混合樹脂フィルムの少なくとも片面に熱可塑性の芳香族ポリイミド層(C)を介して高耐熱性の芳香族ポリイミド層(D)とが一体に積層されていることを特徴とするポリイミド系積層フィルム。
- 請求項1記載の充填材が、平均粒径が1〜10μm、平均アスペクト比(粒径/厚み)が50以上の無機充填材であることを特徴とするポリイミド系積層フィルム。
- 請求項1又は2に記載のポリイミド系積層フィルムの混合樹脂フィルム側に金属体が、加熱圧着により接合されていることを特徴とする金属積層体。
- 請求項1又は2に記載のポリイミド系積層フィルムの混合樹脂フィルムを介して金属体を、加熱圧着により一体化することを特徴とする金属積層体の製造方法。
- 金属体が、銅、アルミニウム、及びステンレスからなる群から少なくとも1つ選ばれることを特徴とする請求項3記載の金属積層体。
- 金属体が、銅、アルミニウム、及びステンレスからなる群から少なくとも1つ選ばれることを特徴とする請求項4記載の金属積層体の製造方法。
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