JP4624367B2 - 柿渋の発色促進剤 - Google Patents
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Description
また、合成樹脂塗料の溶媒には、主として有機溶媒が用いられており、これらは揮発性有機化合物であるため、シックハウス症候群の一因である可能性が指摘されている。
近年、環境保護意識や身近な物質に対する安全意識の高まりから、自然素材を積極的に活用しようとする機運が高まっている。
柿渋を用いた技術として、製材した木材に柿渋を塗布した後、火炎で焦げ目を付け、更に柿渋を塗布することにより、木材の表面に、年代を経た古代色を呈するような着色を付ける技術が知られている(特許文献1参照)。
この柿渋特有の色合いや質感は、日本建築の歴史において、木材の風合いを引き出す仕上げ方法として親しまれてきた。
しかしながら、近年では、発色が遅いために室内デザインの色合い調整が難しかったり、太陽光の当たる部分のみ発色が先行することが不都合であったり、あるいは、初期からの発色を望み、半年や1年も発色に時間を要するのを待てないといった声も聞かれる。
柿渋を発色させるには、太陽光下に暴露して、紫外線により柿渋成分の呈色を促進させたり、または、紫外線を人工的に照射したり、もしくは、酸化剤を柿渋に予め添加して、酸化させること等が考えられる。しかしながら、太陽光下に暴露したり、人工的に紫外線を照射したりする方法は時間がかかったり、天候に左右されたり、広い場所や専用の設備が必要であったりする上に、発色はそれほど早くはない。また、酸化剤の多くはその成分の安全面に問題があったり、自然塗料の主旨になじまない合成化合物であったりするので、同様にしてふさわしくない。
尚、顔料や染料を加えて着色させることは、柿渋の発色を促進させる本発明の目的にそぐわない。
また、本発明の目的は、柿渋を簡便且つ早期に発色させ得る柿渋の発色促進方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、早期に色が安定する柿渋塗装物の製造方法を提供することにある。
本発明は、このような知見に基づき、さらに検討を重ねて完成されたものである。
また、本発明は、柿渋を被塗装物に塗装して柿渋塗装物を得る柿渋塗装物の製造方法であって、第2又は第3発明の発色促進方法により、塗装された柿渋の発色を促進することを特徴とする柿渋塗装物の製造方法を提供するものである。
本発明の柿渋塗装物の製造方法によれば、早期に色が安定する柿渋塗装物を提供することができる。
尚、本発明においては、染料や顔料を用いる必要がない。
第1発明の柿渋の発色促進剤は、塩基性の水溶性化合物又はその水溶液からなり、柿渋に混合されて用いられる。
第2発明の柿渋の発色促進方法においては、塩基性の水溶性化合物又はその水溶液を柿渋に添加した後、該柿渋を被塗装物に塗装する。
発色促進剤として用いる塩基性の水溶性化合物(以下、単に発色促進剤ともいう)は、その水溶液が塩基性を示すものを用いることができる。塩基性の水溶性化合物の例としては、水酸化ナトリウムに代表されるアルカリ金属の水酸化物と弱酸との塩、水酸化カルシウムに代表されるアルカリ土類金属の水酸化物と弱酸の塩、アミン(アンモニア等)と弱酸の塩等を例示することができる。本願発明においては、発色促進剤として、カルボン酸とアルカリ金属又はアルカリ土類金属との塩である塩基性の水溶性化合物を用いる。塩基性の水溶性化合物は、一種を単独で又は2以上を組み合わせて用いることができる。
このような観点から、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アジピン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム等の弱酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩(但し、水溶液がアルカリ性を示すものに限る)が好ましく、弱酸がカルボン酸である金属塩がより好ましく、特に安全性や価格の観点から酢酸ナトリウムを用いることが好ましい。
好ましく用いられる柿渋の一例としては、品種は天王柿で、発酵年数が半年、タンニン含有量が5%で、酸性度が3〜4のものを挙げることができる。柿渋は、例えば、タンニンの含有割合が0.5〜10重量%、特に1〜5重量%となるように調整して用いることが好ましい。
ここで、「部」は「重量部」である。また、発色促進剤を水溶液として添加する場合の該水溶液の添加量は0.1〜300部とすることが好ましい。
なお、発色促進剤と柿渋の混合物は、本発明の効果を妨げないことを限度として、pH調整剤や緩衝剤、乾燥を促進させるアルコール、塗膜性能を高める無機充填剤等の他の添加剤を含んでいても良い。
(2)被塗装物に塩基性の水溶性化合物の水溶液を塗布した後、その上から柿渋を塗布する場合、柿渋の塗布は、被塗装物に先に塗布した塩基性の水溶性化合物の水溶液が乾燥した状態で行うことが好ましい。
また、(1)及び(2)のいずれの場合も、水溶性化合物の水溶液中の水溶性化合物の割合は、溶媒である水100部に対して、溶解前の水溶性化合物の重量が0.1〜50部であることが好ましく、0.5〜30部であることが好ましい。
尚、第2発明は、第3発明に比して塗装作業が一度で済むという利点があり、第3発明は、第2発明に比して塗装後にも発色の調整が可能であるという利点がある。
第3発明の方法により柿渋と塩基性の水溶性化合物の水溶液とを被塗装物に塗布して乾燥させて得られる柿渋塗装物も、本発明の柿渋塗装物の一実施形態である。
〔発色促進剤(弱塩基性の塩)の添加量と発色の程度の関係の検証〕
市販の柿渋((株)トミヤマ製,液状)を用いて、以下の評価を行った。
前記市販の柿渋は、タンニンを5重量%程度含む液状のもので、以下の実施例においては、それを希釈せずに柿渋液として用いた。
柿渋液100部に対して酢酸ナトリウム(固体)を0部、1.5部又は3部添加し、それぞれ充分に混ざり合うまで攪拌した。得られた水溶液を、酢酸ナトリウム(発色促進剤)の添加量が少ない順に水溶液1,2,3とした。
次に、水溶液1、2、3をスギ板に塗布し、自然乾燥させた。この塗布及び乾燥の操作を3回繰返して、各水溶液に対応する柿渋塗装物のサンプルを得た。
各サンプルについて、それぞれの色彩の変化を色彩色差計(ミノルタ社製CR−200)を用いて経時的に測定し、色差ΔEを計算した。
なお、ΔEはL*a*b*表色計より、ΔE=〔(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2〕1/2として算出した(ただし、L*:明度、a*、b*:彩度である)。
表1及び図1中、「コントロール」は、水溶液1(酢酸ナトリウム添加量0部)を塗布乾燥させて用いて得たサンプルであり、「1.5部」は、水溶液2(酢酸ナトリウム添加量1.5部)を塗布乾燥させて得たサンプルであり、「3.0部」は、水溶液3(酢酸ナトリウム添加量3.0部)を塗布乾燥させて得たサンプルである。
図1から明らかなように、酢酸ナトリウムをごく少量添加した場合(1.5部)でも十分に発色が促進されており、しかも、従来(コントロール)に比して、極めて短期間に発色が完了している。
尚、酢酸ナトリウム自体は透明の結晶であり、その水溶液もまた無色透明である。また、酢酸ナトリウム水溶液のみを木材などに塗布しただけでは木材は変色しない。したがって、本試験で観察された発色が酢酸ナトリウムの柿渋への作用によって生じる現象であることは明らかである。
また、実施例1において、酢酸ナトリウムを添加した柿渋を塗布乾燥してサンプルの60日経過後の色は、柿渋のみを塗工して得られる従来の柿渋塗装物の長期間経過後の色と同様の色彩を呈し、柿渋特有の赤褐色〜茶褐色の色を発色していた。
イオン交換水、酢酸ナトリウムをイオン交換水100部に対して1.5部溶解して得た水溶液、及び酢酸ナトリウムをイオン交換水100部に対して3.0部溶解して得た水溶液(順に水溶液1、2、3とする)を、それぞれ、スギ板に塗布し、自然乾燥させた。この操作(塗布及び乾燥)を、3回繰り返した。
次いで、水溶液1〜3を塗工したスギ板の表面が自然乾燥させた状態下に、該各スギ板の前記一面に、市販の柿渋((株)トミヤマ製,液状)を塗布し、自然乾燥させた。この柿渋の塗布及び乾燥の操作を3回繰返して柿渋塗装物のサンプルを得た。
それらのサンプルについて実施例1と同様にして評価を行った。
色彩(L*、a*、b*)及びΔEの変化を表2及び図2に示した。
表2及び図2中、「コントロール」は、水溶液1(酢酸ナトリウム添加量0部)を塗布した後に柿渋を塗布して得たサンプルであり、「1.5部」は、水溶液2(酢酸ナトリウム添加量1.5部)を塗布乾燥させて得たサンプルであり、「3.0部」は、水溶液3(酢酸ナトリウム添加量3.0部)を塗布乾燥させて得たサンプルである。
実施例2において、柿渋と水溶液1、2、3の塗布の順序を逆にした以外は、実施例2と同様にして、柿渋塗装物のサンプルを得た。尚、柿渋は、塗布及び自然乾燥を3回繰り返した。また、水溶液1〜3の塗布は3回を行い、その後、自然乾燥した。
得られたサンプルについて実施例1と同様にして評価を行った。
色彩(L*、a*、b*)及びΔEの変化を表3及び図3に示した。
表3及び図3中、「コントロール」は、柿渋を塗布した後に水溶液1(酢酸ナトリウム添加量0部)を塗布して得たサンプルであり、「1.5部」は、柿渋を塗布した後に水溶液2(酢酸ナトリウム添加量1.5部)を塗布して得たサンプルであり、「3.0部」は、柿渋を塗布した後に水溶液3(酢酸ナトリウム添加量3.0部)を塗布して得たサンプルである。
〔発色促進剤(強塩基性の塩)の添加量と発色の程度の関係の検証〕
実施例1において、酢酸ナトリウムに代えて水酸化ナトリウム(固体)を、柿渋(液状)100部に対して0部、1.5部又は3部添加する以外は、実施例1と同様にして柿渋塗装物のサンプルを得、それらのサンプルについて実施例1と同様にして評価を行った。
色彩(L*、a*、b*)及びΔEの変化を表4及び図4に示した。
表4及び図4中、「コントロール」は、水溶液1(水酸化ナトリウム添加量0部)を塗布乾燥させて用いて得たサンプルであり、「1.5部」は、水溶液2(水酸化ナトリウム添加量1.5部)を塗布乾燥させて得たサンプルであり、「3.0部」は、水溶液3(水酸化ナトリウム添加量3.0部)を塗布乾燥させて得たサンプルである。
〔発色促進剤(強めの弱塩基性の塩)の添加量と発色の程度の関係の検証〕
実施例1において、酢酸ナトリウムに代えて炭酸ナトリウム(固体)を、柿渋(液状)100部に対して0部、1.5部又は3部添加する以外は、実施例1と同様にして柿渋塗装物のサンプルを得、それらのサンプルについて実施例1と同様にして評価を行った。
色彩(L*、a*、b*)及びΔEの変化を表5及び図5に示した。
表5及び図5中、「コントロール」は、水溶液1(炭酸ナトリウム添加量0部)を塗布乾燥させて用いて得たサンプルであり、「1.5部」は、水溶液2(炭酸ナトリウム添加量1.5部)を塗布乾燥させて得たサンプルであり、「3.0部」は、水溶液3(炭酸ナトリウム添加量3.0部)を塗布乾燥させて得たサンプルである。
〔中性の塩の添加量と発色の程度の関係の検証〕
実施例1において、酢酸ナトリウムに代えて酢酸アンモニウムを、柿渋(液状)100部に対して0部、1.5部又は3部添加する以外は、実施例1と同様にして柿渋塗装物のサンプルを得、それらのサンプルについて実施例1と同様にして評価を行った。
色彩(L*、a*、b*)及びΔEの変化を表6及び図6に示した。
表6及び図6中、「コントロール」は、水溶液1(酢酸アンモニウム添加量0部)を塗布乾燥させて用いて得たサンプルであり、「1.5部」は、水溶液2(酢酸アンモニウム添加量1.5部)を塗布乾燥させて得たサンプルであり、「3.0部」は、水溶液3(酢酸アンモニウム添加量3.0部)を塗布乾燥させて得たサンプルである。
発色が促進されることによって、柿渋塗装物の色が早期に安定しあるいは変化の傾向が判るため、室内デザインの色合い調整が容易となり、また、需要者の希望される色の柿渋塗装物を早期に提供することができる。また、発色を促進するために操作が容易であり、必要な装置も簡易であるため、色の安定した柿渋塗装物を安価に提供することができる。
Claims (6)
- カルボン酸(但しクエン酸を除く)とアルカリ金属又はアルカリ土類金属との塩である塩基性の水溶性化合物又はその水溶液からなり、柿渋に混合されて用いられることを特徴とする、柿渋の発色促進剤。
- 前記水溶性化合物が、酢酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1記載の柿渋の発色促進剤。
- カルボン酸(但しクエン酸を除く)とアルカリ金属又はアルカリ土類金属との塩である塩基性の水溶性化合物又はその水溶液を柿渋に添加した後、該柿渋を被塗装物に塗装することを特徴とする、柿渋の発色促進方法。
- 柿渋を被塗装物に塗布した後、その上からカルボン酸とアルカリ金属又はアルカリ土類金属との塩である塩基性の水溶性化合物の水溶液を塗布するか、又は、被塗装物に前記水溶性化合物の水溶液を塗布した後、その上から柿渋を塗布することを特徴とする、柿渋の発色促進方法。
- 前記水溶性化合物が、酢酸ナトリウムであることを特徴とする請求項3又は4記載の柿渋の発色促進方法。
- 柿渋を被塗装物に塗装して柿渋塗装物を得る柿渋塗装物の製造方法であって、
請求項3〜5の何れかに記載の発色促進方法により、塗装された柿渋の発色を促進することを特徴とする柿渋塗装物の製造方法。
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