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JP4631202B2 - 熱線反射着色膜被覆ガラスとその製造方法 - Google Patents
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JP4631202B2 - 熱線反射着色膜被覆ガラスとその製造方法 - Google Patents

熱線反射着色膜被覆ガラスとその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱線反射着色膜被覆ガラスとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車等の車両等の冷房効率を上げるための一手段として、日射エネルギー透過率(直接透過するエネルギーと入射する太陽エネルギーとの比)の低い熱線反射ガラスが採用されるようになってきている。日射エネルギー透過率を低くする方法としては、着色ガラスを用いる方法と、透明なソーダライムガラスや透過率の高い着色ガラスに熱線反射能に優れた着色膜を被覆する方法があるが、ガラスのリサイクル性と熱線反射能という点では後者の方が望ましい。
【0003】
そのような熱線反射着色膜被覆ガラスにおいて求められることとしては、日射エネルギー透過率が低いこと、可視光透過率が日射エネルギー透過率に比して高いこと、車両用等としての十分な耐久性があること、車両等のデザインを損なわない色調を持つこと、シート抵抗が高いこと等が挙げられる。これらの要求を満たす熱線反射着色膜被覆ガラスとしては、コバルト酸化物を主成分とし、鉄を10質量%以上(総金属量に対する割合、以下も同様)、クロムを5質量%以上含有する酸化物膜をスプレー法により10〜50nmの厚さで成膜したガラスが知られている。
しかし、そのようなガラスは、膜厚、組成等のムラが多く、歩留まりが悪いという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
コバルト酸化物を主成分とし、鉄酸化物を5質量%以上含有する膜を成膜したガラスをスパッタリング法により得ることは文献的には知られている。例えば、特開平9−30837号公報には、コバルト:65〜96質量%、クロム:2〜25質量%、鉄:2〜33質量%の金属組成でこれらの酸化物の被膜を形成した熱線反射ガラスが記載されており、該被膜を形成する方法としてスパッタリング法が挙げられている。
しかし、成膜速度が従来法より飛躍的に速く、膜厚および組成が均一な膜を大量生産するのに適し、かつ現在工業的に利用されているスパッタリング法であるマグネトロンスパッタリング法においては、コバルトおよび鉄からなる合金ターゲットは強磁性体であるため、マグネトロンの磁束がターゲット表面に形成されなくなるので、実質的に用いることができない。上記公報においても、スパッタリング法についての具体的記載はなく、スプレー法のみが具体的に記載されている。
また、以前より、自動車の窓ガラスの周辺部や中央部にセラミックカラー組成物をペースト化したセラミックペーストをスクリーン印刷し、乾燥し、曲げ加工工程において焼き付けることが行われている。このセラミックカラーペーストは、ガラス周辺部等に焼き付けて着色不透明層を形成することにより、接着剤の紫外線による劣化を防止し、また、接着部を車外より透視できないようにするために用いられる。このようなセラミックカラー組成物としては、ガラスフリットに耐熱性着色顔料を混ぜたものが知られており、通常、黒色またはダークグレー色の色調を呈している。このようなものは、黒セラミック塗料と称される。
しかし、従来のコバルト酸化物を主成分とし、鉄を10質量%以上、クロムを5質量%以上含有する酸化物膜をスプレー法により成膜したガラスに、そのようなセラミックカラーペーストをプリントすると、白っぽくなり発色が不良となるという問題があった。
【0005】
さらに、自動車のリアガラス等として用いる場合、くもり防止のために発熱材料である銀ペーストを線状に印刷焼成する、いわゆる銀プリントが行われるが、従来のコバルト酸化物を主成分とし、鉄を10質量%以上、クロムを5質量%以上含有する酸化物膜をスプレー法により成膜したガラスは、この銀プリントの発色が悪い(例えば、だいだい色の発色する)という問題もあった。
【0006】
したがって、上記熱線反射着色膜被覆ガラスは、現実には、マグネトロンスパッタリング法を用いて製造できるものではなく、また上述したスプレー法で製造する場合のムラの発生、セラミックカラープリントにおける白っぽくなる発色不良、銀プリント発色の悪さという問題は、解消されていない。
【0007】
本発明は、スパッタリング法により製造することができ、膜厚および組成の均一性に優れ、熱線反射能に優れる熱線反射着色膜被覆ガラスとその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、膜厚および組成の均一性に優れ、セラミックカラープリントにおいて白っぽくなる発色不良を発生させず、銀プリント発色にも優れる熱線反射着色膜被覆ガラスとその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究の結果、1)ガラス基板と、該ガラス基板の一方の側にスパッタリング法により順に積層してなる、特定の第一層と、特定の第二層とを備える熱線反射着色膜被覆ガラスは、膜厚および組成の均一性に優れ、熱線反射能に優れること、また、2)該熱線反射着色膜被覆ガラスを熱処理することにより得られる熱線反射着色膜被覆ガラスは、日射エネルギー透過率が低いこと、可視光透過率が日射エネルギー透過率に比して高いこと、車両用等としての十分な耐久性があること、車両等のデザインを損なわない色調を持つこと、シート抵抗が高いこと等の基本的な要求特性を満たすだけでなく、膜厚および組成の均一性に優れ、セラミックカラープリントにおいて白っぽくなる発色不良を発生させず、銀プリント発色に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、ガラス基板と、該ガラス基板の一方の側にスパッタリング法により順に積層してなる、鉄酸化物を含有する第一層と、コバルト酸化物を含有する第二層とを備える熱線反射着色膜被覆ガラスであって、
該第一層は、総金属量に対する鉄の量が、60質量%以上であり、
該第二層は、総金属量に対するコバルトの量が、60質量%以上であることを特徴とする熱線反射着色膜被覆ガラス(以下「熱線反射着色膜被覆ガラスA」ともいう。)を提供する。
【0010】
また、本発明は、ガラス基板と、該ガラス基板の一方の側にスパッタリング法により順に積層してなる、コバルト酸化物を含有する第一層と、鉄酸化物を含有する第二層とを備える熱線反射着色膜被覆ガラスであって、
該第一層は、総金属量に対するコバルトの量が、60質量%以上であり、
該第二層は、総金属量に対する鉄の量が、60質量%以上であることを特徴とする熱線反射着色膜被覆ガラス(以下「熱線反射着色膜被覆ガラスB」ともいう。)を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、ガラス基板と、該ガラス基板の一方の側にスパッタリング法により順に積層してなる、鉄酸化物とクロム酸化物とニッケル酸化物とを含有する第一層と、コバルト酸化物を含有する第二層とを備える熱線反射着色膜被覆ガラスであって、
該第一層は、総金属量に対する鉄、クロムおよびニッケルの量が、
鉄 :60質量%以上85質量%以下、
クロム :10質量%以上28質量%以下、
ニッケル: 5質量%以上24質量%以下
であり、
該第二層は、総金属量に対するコバルトの量が、60質量%以上であることを特徴とする熱線反射着色膜被覆ガラス(以下「熱線反射着色膜被覆ガラスC」ともいう。)を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、ガラス基板と、該ガラス基板の一方の側にスパッタリング法により順に積層してなる、コバルト酸化物を含有する第一層と、鉄酸化物とクロム酸化物とニッケル酸化物とを含有する第二層とを備える熱線反射着色膜被覆ガラスであって、
該第一層は、総金属量に対するコバルトの量が、60質量%以上であり、
該第二層は、総金属量に対する鉄、クロムおよびニッケルの量が、
鉄 :60質量%以上85質量%以下、
クロム :10質量%以上28質量%以下、
ニッケル: 5質量%以上24質量%以下
であることを特徴とする熱線反射着色膜被覆ガラス(以下「熱線反射着色膜被覆ガラスD」ともいう。)を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、ガラス基板の一方の表面上に、鉄酸化物を含有する金属酸化物ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、第一層を積層する工程と、
該第一層の上に、コバルトを含有する金属ターゲットを用い、酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、または、コバルト酸化物を含有する金属酸化物ターゲットを用い、酸化性ガスを含有しないスパッタガス雰囲気もしくは酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、第二層を積層する工程と
を含む上記熱線反射着色膜被覆ガラスAの製造方法を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、ガラス基板の一方の表面上に、コバルトを含有する金属ターゲットを用い、酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、または、コバルト酸化物を含有する金属酸化物ターゲットを用い、酸化性ガスを含有しないスパッタガス雰囲気もしくは酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、第一層を積層する工程と、該第一層の上に、鉄酸化物を含有する金属酸化物ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、第二層を積層する工程と
を含む上記熱線反射着色膜被覆ガラスBの製造方法を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、ガラス基板の一方の表面上に、鉄とクロムとニッケルとを成分として含有する金属ターゲットを用い、酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気中でスパッタリングすることにより、第一層を積層する工程と、
該第一層の上に、コバルトを含有する金属ターゲットを用い、酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、または、コバルト酸化物を含有する金属酸化物ターゲットを用い、酸化性ガスを含有しないスパッタガス雰囲気もしくは酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、第二層を積層する工程と
を含む上記熱線反射着色膜被覆ガラスCの製造方法を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、ガラス基板の一方の表面上に、コバルトを含有する金属ターゲットを用い、酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、または、コバルト酸化物を含有する金属酸化物ターゲットを用い、酸化性ガスを含有しないスパッタガス雰囲気もしくは酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、第一層を積層する工程と、該第一層の上に、鉄とクロムとニッケルとを成分として含有する金属ターゲットを用い、酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気中でスパッタリングすることにより、第二層を積層する工程と
を含む上記熱線反射着色膜被覆ガラスDの製造方法を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、上記熱線反射着色膜被覆ガラスA、B、CまたはDを熱処理することにより得られる熱線反射着色膜被覆ガラス(以下「熱線反射着色膜被覆ガラスE」ともいう。)を提供する。
【0018】
前記熱線反射着色膜被覆ガラスEは、膜被覆面の表面シート抵抗が、10Ω/□以上であるのが好ましい。
【0019】
前記熱線反射着色膜被覆ガラスEは、可視光透過率が20〜40%であり、膜被覆面および他方の面の可視光反射率がそれぞれ20〜40%および10〜25%であるのが好ましい。
【0020】
さらに、本発明は、上記のいずれかの製造方法により得られる熱線反射着色膜被覆ガラスA、B、CまたはDに、セラミックカラーペーストおよび/または銀ペーストを塗布する工程と、
その後、熱処理を行う工程と
を含む前記熱線反射着色膜被覆ガラスEの製造方法を提供する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスA、B、CおよびDは、いずれも、ガラス基板と、該ガラス基板の一方の側にスパッタリング法により順に積層してなる、所定の第一層と、所定の第二層とを備える熱線反射着色膜被覆ガラスである。以下、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスA、B、CおよびDについて説明する。
【0022】
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスA、B、CおよびDに用いられるガラス基板は、特に限定されず、一般に広く用いられている無色透明なソーダライムガラス、グリーン、ブロンズ、グレー等に着色された熱線吸収ガラスや、熱線吸収・紫外線吸収性を有するガラス等を用いることができる。
【0023】
熱線反射着色膜被覆ガラスAの第一層は、鉄酸化物を含有する。本発明においては、下記組成の範囲内であれば、鉄酸化物の他に、クロム酸化物、ニッケル酸化物、ニオブ酸化物、モリブデン酸化物、マンガン酸化物、シリコン酸化物、銅酸化物、バナジウム酸化物、亜鉛酸化物、ジルコニウム酸化物、炭素等を含有することができる。
熱線反射着色膜被覆ガラスAの第一層は、総金属量に対する鉄の量が、60質量%以上である。上限値は特に限定されず100%以下で用いられる。また、日射エネルギー透過率低減の観点から、90%以上、特に97%以上で用いられることが好ましい。
熱線反射着色膜被覆ガラスAの第一層の厚さは、所望の光学特性に応じて選択することができる。例えば、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスの可視光透過率を20〜40%とし、膜被覆面および他方の面の可視光反射率をそれぞれ20〜40%および10〜25%とする場合には、第一層の厚さを3〜15nmとするのが好ましい。
【0024】
熱線反射着色膜被覆ガラスAの第二層は、コバルト酸化物を含有する。本発明においては、下記組成の範囲内であれば、コバルト酸化物の他に、ニオブ酸化物、モリブデン酸化物、マンガン酸化物、シリコン酸化物、銅酸化物、バナジウム酸化物、亜鉛酸化物、ジルコニウム酸化物、炭素等を含有することができる。
熱線反射着色膜被覆ガラスAの第二層は、総金属量に対するコバルトの量が、60質量%以上である。上限値は特に限定されず100%以下で用いられる。また、日射エネルギー透過率低減の観点から、90%以上、特に97%以上で用いられることが好ましい。
熱線反射着色膜被覆ガラスAの第二層の厚さは、所望の光学特性に応じて選択することができる。例えば、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスの可視光透過率を20〜40%とし、膜被覆面および他方の面の可視光反射率をそれぞれ20〜40%および10〜25%とする場合には、第二層の厚さを10〜50nmとするのが好ましい。
【0025】
熱線反射着色膜被覆ガラスBの第一層は、組成、好適な厚さ等について、前記熱線反射着色膜被覆ガラスAの第二層と同様である。
熱線反射着色膜被覆ガラスBの第二層は、組成、好適な厚さ等について、前記熱線反射着色膜被覆ガラスAの第一層と同様である。
【0026】
熱線反射着色膜被覆ガラスCの第一層は、鉄酸化物とクロム酸化物とニッケル酸化物とを含有する。本発明においては、下記組成の範囲内であれば、これらの酸化物の他に、ニオブ酸化物、モリブデン酸化物、マンガン酸化物、シリコン酸化物、銅酸化物、バナジウム酸化物、亜鉛酸化物、ジルコニウム酸化物、炭素等を含有することができる。
熱線反射着色膜被覆ガラスCの第一層は、マグネトロンスパッタリング法による成膜のし易さと熱線反射性能の観点から、総金属量に対する鉄、クロムおよびニッケルの量が、鉄:60質量%以上85質量%以下、クロム:10質量%以上28質量%以下、ニッケル:5質量%以上24質量%以下である。
熱線反射着色膜被覆ガラスCの第一層の厚さは、所望の光学特性に応じて選択することができる。例えば、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスの可視光透過率を20〜40%とし、膜被覆面および他方の面の可視光反射率をそれぞれ20〜40%および10〜25%とする場合には、第一層の厚さを3〜15nmとするのが好ましい。
【0027】
熱線反射着色膜被覆ガラスCの第二層は、組成、好適な厚さ等について、前記熱線反射着色膜被覆ガラスAの第二層と同様である。
【0028】
熱線反射着色膜被覆ガラスDの第一層は、組成、好適な厚さ等について、前記熱線反射着色膜被覆ガラスCの第二層と同様である。
熱線反射着色膜被覆ガラスDの第二層は、組成、好適な厚さ等について、前記熱線反射着色膜被覆ガラスCの第一層と同様である。
【0029】
なお、本発明においては、耐久性を向上させたり、反射率を変化させる等の目的で、第二層の上、第一層とガラス基板との間、または熱線反射着色膜の被覆面とは反対側の面に、該目的を達成する機能層を設けることができる。
該機能層としては、シリコン、チタン、亜鉛、錫、銅、ジルコニウム、マンガン、ニオブおよびアルミニウムからなる群から選ばれる1種以上の元素や、該元素の酸化物や窒化物からなる層が挙げられる。
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスは、スパッタリング法で成膜可能な膜構成であるので、膜厚および組成の均一性に優れている。
【0030】
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスA、B、CおよびDの製造方法は、前記第一層および前記第二層を前記ガラス基板の一方の側にスパッタリング法により順に積層すればよいが、特に以下のようにするのが、従来公知のスパッタリングターゲットを用いることができる点で好ましい。なお、以下の製造方法は、好適な具体例の一つであり、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスA、B、CおよびDの製造方法はこれに限定されるものではない。
(1)熱線反射着色膜被覆ガラスAの場合
ガラス基板の一方の表面上に、鉄酸化物を含有する金属酸化物ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、第一層を積層する工程と、
該第一層の上に、コバルトを含有する金属ターゲットを用い、酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、または、コバルト酸化物を含有する金属酸化物ターゲットを用い、酸化性ガスを含有しないスパッタガス雰囲気もしくは酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、第二層を積層する工程と
を含む方法により、熱線反射着色膜被覆ガラスAを製造する。
【0031】
第一層を積層する工程に用いられる金属酸化物ターゲットは、鉄酸化物を含有するものを用いる。特に、第一層の組成を上記のようにするためには、鉄酸化物を、総金属量に対する鉄量で60〜100質量%含有するものが好ましい。
【0032】
スパッタガスは、酸化性ガスを含有しないものを用いてもよく、酸化性ガスを含有するものを用いてもよい。
酸化性ガスを含有しないスパッタガスは、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の不活性ガスが挙げられる。中でも、経済性および放電のしやすさの点から、アルゴンが好ましい。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
酸化性ガスは、例えば、酸素、オゾンが挙げられ、酸素とオゾンとの混合ガスでもよい。酸化性ガスを含有するスパッタガスとして、酸化性ガスおよび上述の不活性ガスの混合ガスを用いることもできる。
【0033】
スパッタリングには、通常、成膜速度等に優れるマグネトロンスパッタリング装置が用いられるが、磁界を使用しないタイプのスパッタリング装置を用いることもできる。
また、電源には、直流電源、パルス波状に電力を印加する電源、交流電源、高周波電源のいずれも用いることができる。
【0034】
第二層を積層する工程に用いられるターゲットは、コバルトを含有する金属ターゲット、または、コバルト酸化物を含有する金属酸化物ターゲットを用いる。特に、第二層の組成を上記のようにするためには、コバルトを含有する金属ターゲットを用いる場合は、コバルトを60〜100質量%含有するものが好ましく、コバルト酸化物を含有する金属酸化物ターゲットを用いる場合は、コバルト酸化物を、総金属量に対するコバルト量で60〜100質量%含有するものが好ましい。
【0035】
スパッタガスは、コバルトを含有する金属ターゲットを用いる場合は、酸化性ガスを含有するものを用いる。酸化性ガスについては、上述したものを用いることができる。
また、スパッタガスは、コバルト酸化物を含有する金属酸化物ターゲットを用いる場合は、酸化性ガスを含有しないものを用いてもよく、酸化性ガスを含有するものを用いてもよい。これらも、上述したものを用いることができる。
いずれのターゲットを用いる場合においても、酸化性ガスと不活性ガスとの混合ガス等を用いることができる。
【0036】
スパッタリング装置は、第一層を積層する工程の場合と同様である。
【0037】
(2)熱線反射着色膜被覆ガラスBの場合
ガラス基板の一方の表面上に、コバルトを含有する金属ターゲットを用い、酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、または、コバルト酸化物を含有する金属酸化物ターゲットを用い、酸化性ガスを含有しないスパッタガス雰囲気もしくは酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、第一層を積層する工程と、
該第一層の上に、鉄酸化物を含有する金属酸化物ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、第二層を積層する工程と
を含む方法により、熱線反射着色膜被覆ガラスBを製造する。
【0038】
第一層を積層する工程に用いられる金属ターゲット、スパッタガスおよびスパッタリング装置は、(1)の第二層の場合と同様である。
第二層を積層する工程に用いられる金属ターゲット、スパッタガスおよびスパッタリング装置は、(1)の第一層の場合と同様である。
【0039】
(3)熱線反射着色膜被覆ガラスCの場合
ガラス基板の一方の表面上に、鉄とクロムとニッケルとを成分として含有する金属ターゲットを用い、酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気中でスパッタリングすることにより、第一層を積層する工程と、
該第一層の上に、コバルトを含有する金属ターゲットを用い、酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、または、コバルト酸化物を含有する金属酸化物ターゲットを用い、酸化性ガスを含有しないスパッタガス雰囲気もしくは酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、第二層を積層する工程と
を含む方法により、熱線反射着色膜被覆ガラスCを製造する。
【0040】
第一層を積層する工程に用いられる金属ターゲットは、構成、構造を特に限定されず、鉄、クロムおよびニッケルのうち、2以上の金属が一つの結晶相を形成していてもよく、固溶体となっていてもよく、また、前記の2以上の金属の結晶相または非晶相が混在していてもよく、さらには前記の2以上の金属の塊がそれぞれ別個に存在していてもよい。本発明においては、放電の観点から金属ターゲットとして、鉄とクロムとニッケルとを成分として含有する金属ターゲットを用いる。特に、第一層の組成を上記のようにするために、
鉄 :63〜78質量%
クロム :16〜24質量%
ニッケル:6〜13質量%
という組成であるものが好ましい。例えば、非磁性ステンレス、より具体的には、JIS G4304−1987に規定されているオーステナイト系の非磁性ステンレスが挙げられる。中でも、SUS 304が好ましい。
第二層を積層する工程に用いられるターゲットの好ましい例としては、CoターゲットやCoターゲットが挙げられる。
スパッタガスは、酸化性ガスを含有するものを用いる。酸化性ガスについては、上述した通りである。また、酸化性ガスおよび不活性ガスの混合ガスを用いることができる。
スパッタリングに用いられる装置は、(1)の第一層の場合と同様である。
第二層を積層する工程は、(1)の場合と同様である。
【0041】
(4)熱線反射着色膜被覆ガラスDの場合
ガラス基板の一方の表面上に、コバルトを含有する金属ターゲットを用い、酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、または、コバルト酸化物を含有する金属酸化物ターゲットを用い、酸化性ガスを含有しないスパッタガス雰囲気もしくは酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、第一層を積層する工程と、
該第一層の上に、鉄とクロムとニッケルとを成分として含有する金属ターゲットを用い、酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気中でスパッタリングすることにより、第二層を積層する工程と
を含む方法により、熱線反射着色膜被覆ガラスDを製造する。
【0042】
第一層を積層する工程に用いられる金属ターゲット、スパッタガスおよびスパッタリング装置は、(3)の第二層の場合と同様である。
第二層を積層する工程に用いられる金属ターゲット、スパッタガスおよびスパッタリング装置は、(3)の第一層の場合と同様である。
【0043】
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスA、B、CおよびDは、熱線反射能に優れる。具体的には、日射エネルギー透過率が可視光透過率より小さいのが好ましく、特に40%以下(さらには35%以下)であるのが好ましい。
【0044】
以上に説明したように、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスA、B、CおよびDは、スパッタリング法により製造することができるので、膜厚および組成の均一性に優れる。また、優れた熱線反射能を発揮する。さらに、後述するように、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスA、B、CおよびDは、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスEの製造に好適に用いられる。
【0045】
つぎに、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスEについて説明する。
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスは、前記熱線反射着色膜被覆ガラスA、B、CまたはDを熱処理することにより得られる。
熱処理により、膜被覆面の表面シート抵抗が向上し、膜被覆面の表面シート抵抗が好ましくは10Ω/□以上となり、電波透過性が向上する。したがって、車両用、建築用として好適に用いられる。
また、熱処理により、膜被覆面の可視光反射率が低下して、好ましくは20〜40%となり、車両用として好適な値となる。
【0046】
熱処理は、特に限定されず、所望の光学特性に応じて条件を変動させることができる。好適な具体例の一つとして、酸素を含有する雰囲気(例えば、大気雰囲気)の中で、500〜700℃で3〜5分間熱処理することが挙げられる。
【0047】
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスEは、自動車等の車両等に好適に用いられる。自動車の車両等に用いられるガラスは、曲げ加工する場合、大気雰囲気中で、630〜690℃以上で3〜7分間程度の熱処理を行う。したがって、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスEは、熱線反射着色膜被覆ガラスA、B、CまたはDを曲げ加工に供し、その際の熱処理を利用することによって得ることもできる。
【0048】
また、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスA、B、CまたはDに、黒セラミック塗料等のセラミックカラーペーストによるプリントや、銀プリントを施す場合、大気雰囲気中で、630〜690℃以上で3〜7分間程度の熱処理(焼成)を行う。したがって、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスEは、熱線反射着色膜被覆ガラスA、B、CまたはDにセラミックカラーペーストによるプリントや、銀プリントを施し、その際の熱処理(焼成)を利用することによって得ることもできる。
さらには、曲げ加工と、セラミックカラーペーストによるプリントや銀プリントとを同時に行い、その際の熱処理を利用することもできる。
【0049】
即ち、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスEの製造方法としては、上記の(1)〜(4)のいずれかの製造方法により得られる熱線反射着色膜被覆ガラスA、B、CまたはDに、セラミックカラーペーストおよび/または銀ペーストを塗布する工程と、
その後、熱処理を行う工程と
を含む製造方法が好適に挙げられる。
セラミックカラーペーストおよび/または銀ペーストの塗布は、一般的な方法により行うことができる。例えば、スクリーン印刷機を用いて、スクリーン印刷する方法が挙げられる。セラミックカラーペーストおよび銀ペーストの両方を塗布する場合には、別々に塗布してもよいし、同時に塗布してもよい。
熱処理の条件は、これらを塗布しない場合と同様である。
セラミックカラーペーストとしては、例えば、結晶質ガラスフリット(および/または非晶質ガラスフリット)、耐熱性着色顔料および耐火物フィラーを含むものなどが挙げられる。セラミックカラーペーストは、例えば、結晶質ガラスフリット(および/または非晶質ガラスフリット)、耐熱性着色顔料および耐火物フィラーを、有機ビヒクルに均一に混合し、塗布に適した粘度に調整して用いられる。
銀ペーストとしては、銀の微粒子とガラスフリットを、有機ビヒクルに均一に混合したものを、塗布に適した粘度に調整して用いられる。
【0050】
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスEは、熱線反射能に優れる。具体的には、日射エネルギー透過率が可視光透過率より小さいのが好ましく、特に40%以下(さらには35%以下)であるのが好ましい。
【0051】
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスEは、膜被覆面の表面シート抵抗が10Ω/□以上であるのが好ましい。上記範囲であると、自動車等の車両等において、ラジオ、テレビ、携帯電話、自動車電話等の電波の透過性を十分に確保することができる。
また、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスEを自動車のリアガラスとして用い、アンテナを形成する場合等においては、膜被覆面の表面シート抵抗が10Ω/□以上であるのが好ましい。
【0052】
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスEは、可視光透過率が20〜40%であり、膜被覆面および他方の面の可視光反射率がそれぞれ20〜40%および10〜25%であるのが、好ましい値の一例である。上記範囲であると、自動車等の用途において好適である。
【0053】
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスEは、着色膜がスパッタリング法により成膜されるので、従来のスプレー法によるものと比べ、膜厚および組成の均一性に優れる。
【0054】
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスEは、理由は分かっていないが、従来のコバルト酸化物を主成分とし、鉄を10質量%以上、クロムを5質量%以上含有する酸化物膜をスプレー法により成膜したガラスとは異なり、黒セラミック塗料等のセラミックカラーペーストによるプリントを施した場合に、白っぽくなり発色が不良となることがない。
【0055】
また、本発明の熱線反射着色膜被覆Eガラスは、理由は分かっていないが、従来のコバルト酸化物を主成分とし、鉄を10質量%以上、クロムを5質量%以上含有する酸化物膜をスプレー法により成膜したガラスとは異なり、銀プリントの発色に優れる。
【0056】
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスEの用途は、特に限定されない。例えば、自動車等の車両用や建築用の用途が挙げられる。
また、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスは、合わせガラスや複層ガラスとしてもよい。
【0057】
本発明の熱線反射着色膜被覆Eガラスは、基本的な要求特性を満たすだけでなく、膜厚および組成の均一性に優れ、セラミックカラープリントにおいて白っぽくなる発色不良を発生させず、銀プリント発色に優れるので、各種用途に好適に用いられる。
【0058】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
1.熱線反射着色膜被覆ガラスの作製
参考例1)
100mm角に切断した厚さ3.5mmのグリーン着色ソーダライムガラスを酸化セリウムの粉末と中性洗剤で洗浄した後、純水とエタノールですすぎ、基板ガラスとした。前記グリーン着色ソーダライムガラスの可視光透過率は81.6%、可視光反射率は7.4%、日射透過率は59.5%、日射反射率は6.2%であった。
この基板ガラスに、直径101.6mmのFeO(総金属量に対する鉄量:99.9質量%)のスパッタリングターゲットを用いて、直流マグネトロンスパッタリング装置で、Arガス圧4.8×10−1Pa、投入電力0.3kW、成膜時間6秒間の条件で成膜を行い、厚さ6nmの膜(第一層)を作製した。
さらにその膜の上に、直径101.6mmのCo(総金属量に対するコバルト量:99.9質量%)のスパッタリングターゲットを用いて、直流マグネトロンスパッタリング装置で、Arガス圧4.8×10−1Pa、投入電力0.3kW、成膜時間147秒間の条件で成膜を行い、厚さ30nmの膜(第二層)を作製し、線反射着色膜被覆ガラスAを得た。
【0059】
つぎに、セラミックカラーペーストおよび導電性銀ペーストをスクリーン印刷に適した粘度に調節した後、得られた熱線反射着色膜被覆ガラスAの膜被覆面に、セラミックカラーペーストをスクリーン印刷機により印刷し、乾燥し、ついで、導電性銀ペーストをスクリーン印刷機により印刷した。120℃にて10〜15分間乾燥した後、ベルト炉で、大気雰囲気中、約15分間熱処理を行った。500℃以上で保持された時間は約6分間、最高温度650℃で保持された時間は約3分間であった。熱処理後、放冷して、線反射着色膜被覆ガラスEを得た。
なお、用いたセラミックカラーペーストは、非晶質ガラスフリット、耐熱性着色顔料および耐火物フィラーを、有機ビヒクルに均一に混合し、塗布に適した粘度に調整したものである。また、用いた導電性銀ペーストは、銀の微粒子とガラスフリットを、有機ビヒクルに均一に混合したものを、塗布に適した粘度に調整したものである。
【0060】
参考例2)
第一層と第二層の成膜順序を逆にした以外は、参考例1と同様の方法により、線反射着色膜被覆ガラスBを得た。第一層の厚さは30nm、第二層の厚さは6nmであった。
つぎに、得られた熱線反射着色膜被覆ガラスBに対して参考例1と同様の方法により印刷、熱処理した後、放冷して、線反射着色膜被覆ガラスEを得た。
【0061】
(実施例
100mm角に切断した厚さ3.5mmの参考例1と同じグリーン着色ソーダライムガラスを酸化セリウムの粉末と中性洗剤で洗浄した後、純水とエタノールですすぎ、基板ガラスとした。
この基板ガラスに、直径152.4mmのSUS304ステンレス(鉄74質量%、クロム18質量%、ニッケル8質量%)のスパッタリングターゲットを用いて、直流マグネトロンスパッタリング装置で、Oガス圧2.6×10−1Pa、投入電力0.5kW、成膜時間30秒間の条件で成膜を行い、厚さ6nmの膜を作製した。
さらにその膜の上に、直径152.4mm、厚さ3mmのコバルト(コバルト99.9質量%)のスパッタリングターゲットを用いて、直流マグネトロンスパッタリング装置で、Oガス圧2.6×10−1Pa、投入電力0.5kW、成膜時間150秒間の条件で成膜を行い、厚さ30nmの膜を作製し、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスCを得た。
つぎに、得られた熱線反射着色膜被覆ガラスCに対して参考例1と同様の方法により印刷、熱処理した後、放冷して、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスEを得た。
【0062】
(参考例3)
第一層と第二層の成膜順序を逆にした以外は、実施例1と同様の方法により、線反射着色膜被覆ガラスDを得た。第一層の厚さは30nm、第二層の厚さは6nmであった。
つぎに、得られた熱線反射着色膜被覆ガラスDに対して参考例1と同様の方法により印刷、熱処理した後、放冷して、線反射着色膜被覆ガラスEを得た。
【0063】
2.熱線反射着色膜被覆ガラスの被膜の組成
参考例1〜3、および、実施例1の上記製造過程において、第一層成膜後第二層成膜前に第一層の組成を分析し、第二層成膜後熱処理前に、第二層の組成を分析した。組成の分析は、高周波誘導結合プラズマ質量分析装置を用いた元素分析により行った。
その結果、参考例1において、第一層における総金属量に対する鉄の量は、99.9質量%であり、第二層における総金属量に対するコバルトの量は、99.9質量%であった。参考例2において、第一層における総金属量に対するコバルトの量は、99.9質量%であり、第二層における総金属量に対する鉄の量は、99.9質量%であった。
また、実施例において、第一層における総金属量に対する鉄、クロムおよびニッケルの量は、鉄:74質量%、クロム:18質量%、ニッケル:8質量%であり、第二層における総金属量に対するコバルトの量は、99.9質量%であった。参考例3において、第一層における総金属量に対するコバルトの量は、99.9質量%であり、第二層における総金属量に対する鉄、クロムおよびニッケルの量は、鉄:74質量%、クロム:18質量%、ニッケル:8質量%であった。
【0064】
3.日射エネルギー透過率の測定
参考例1〜3、および、実施例1で得られた熱線反射着色膜被覆ガラスA〜Dについて、日射エネルギー透過率(JIS R3106による)を分光測定器(島津製作所製の分光計「UV−3100PC」)により測定した。
その結果、日射エネルギー透過率は、いずれも30%以下であった。
また、参考例1〜3、および、実施例1で得られた熱線反射着色膜被覆ガラスEについて、日射エネルギー透過率(JIS R3106による)を分光測定器(島津製作所製の分光計「UV−3100PC」)により測定した。
その結果、日射エネルギー透過率は、いずれも29%であった。
【0065】
4.表面シート抵抗の測定
参考例1〜3、および、実施例1で得られた熱線反射着色膜被覆ガラスEについて、シート抵抗測定器を用いて、膜被覆面の表面シート抵抗を測定した。
その結果、膜被覆面の表面シート抵抗は、いずれも1.0×10Ω/□であった。
【0066】
5.可視光透過率および可視光反射率の測定
参考例1〜3、および、実施例1で得られた熱線反射着色膜被覆ガラスEについて、可視光透過率(JIS R3106による)、ならびに、膜被覆面および他方の面の可視光反射率(JIS R3106による)を分光測定器(島津製作所製の分光計「UV−3100PC」)によりC光源を用いて測定した。
その結果、可視光透過率はいずれも31%、膜被覆面の可視光反射率はいずれも36%、他方の面の可視光反射率はいずれも21%であった。
なお、参考例1〜3、および、実施例1で得られた熱線反射着色膜被覆ガラスEにおける測定部位による差異は、可視光透過率についてはいずれも0.5%以内であり、可視光反射率についてはいずれも0.5%以内であった。一方、従来のスプレー法により得られるサンプルでは、測定部位による差異が、可視光透過率については1〜2%であり、可視光反射率については1〜2%であった。この結果から、本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスは膜厚の均一性、組成の均一性に優れることが判る。
【0067】
6.耐擦傷性の測定
参考例1〜3、および、実施例1で得られた熱線反射着色膜被覆ガラスEについて、JIS R3212の耐磨耗性試験に準じて、テーバー試験機を用いて4.9Nの荷重で1000回転の条件で膜被覆面側のテーバー試験を行い、テーバー試験前後の可視光透過率を比較した。
その結果、可視光透過率の変化は、いずれも+12%であり、+20%以下であるので実用上十分な耐擦傷性を有していた。
【0068】
7.耐薬品性の測定
参考例1〜3、および、実施例1で得られた熱線反射着色膜被覆ガラスEを0.05mol/L(50mol/m)硫酸水溶液または0.1mol/L(100mol/m)苛性ソーダ水溶液に室温20℃で24時間浸し、水溶液に浸せきした前と後の可視光透過率ならびに膜被覆面および他方の面の可視光反射率を比較した。
その結果、いずれの熱線反射着色膜被覆ガラスEも、硫酸水溶液または苛性ソーダ水溶液を用いた場合において、可視光透過率と、膜被覆面および他方の面の可視光反射率の変化は1%よりも小さい値であった。
【0069】
8.セラミックカラープリントおよび銀プリントの色調測定
参考例1〜3、および、実施例1で得られた熱線反射着色膜被覆ガラスEについて、カラーメーターを用いて、セラミックカラーペースト部のガラス面からの色調を測定した。その結果、色調は、いずれもL=39、a=7.5、b=0.0であった。これは、従来のコバルトを63質量%、鉄を26質量%、クロムを11質量%含有する酸化物膜をスプレー法により成膜したガラスを用いた場合に比較して、明度が低く、ニュートラルな色調に近い良好な発色であった。
また、銀ペースト部は、前記従来のスプレー法による膜が成膜されたガラスでは、だいだい色に発色し、良好な発色が得られないのに対し、本発明のサンプルでは、いずれも赤褐色に発色し、良好な発色を得ることができた。
【0070】
【発明の効果】
本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスA、B、CおよびDは、マグネトロンスパッタリング法により調製することができ、特に本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスの製造方法によれば従来公知のスパッタリングターゲットを用いることができるので製造が容易であり、かつ、膜厚および組成の均一性に優れる。
また、前記熱線反射着色膜被覆ガラスA、B、CまたはDを熱処理することにより得られる本発明の熱線反射着色膜被覆ガラスEは、基本的な要求特性を満たすだけでなく、膜厚および組成の均一性に優れ、セラミックカラープリントにおいて白っぽくなる発色不良を発生させず、銀プリント発色にも優れるので自動車用窓ガラスとして好適である。

Claims (7)

  1. ガラス基板と、該ガラス基板の一方の側に形成される熱線反射着色膜とを備えた熱線反射着色膜被覆ガラスであって、
    前記熱線反射着色膜は、
    前記ガラス基板の前記一方の側に、63〜78質量%の鉄と16〜24質量%のクロムと6〜13質量%のニッケルとを含有するスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングして酸化物層である第一層を形成し、前記第一層上に、60〜100質量%のコバルトを含有するスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングして酸化物層である第二層を形成し、前記第一層および第二層が形成された前記ガラス基板を熱処理することにより形成されることを特徴とする熱線反射着色膜被覆ガラス。
  2. 前記熱線反射着色膜の表面シート抵抗が、10 Ω/□以上である請求項1に記載の熱線反射着色膜被覆ガラス。
  3. 分光測定器のC光源を用いて測定において、前記熱線反射着色膜の可視光透過率(JIS R310)及び可視光反射率(JIS R3106)の測定部位による差異が、いずれも0.5%以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱線反射着色膜被覆ガラス。
  4. JIS R3212の耐磨耗性試験に準じて、4.9Nの荷重で1000回転の条件で、前記熱線反射着色膜のテーバー試験を実施した際の、該テーバー試験前後の可視光透過率の変化が+20%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱線反射着色膜被覆ガラス。
  5. 0.05mol/L硫酸水溶液または0.1mol/L苛性ソーダ水溶液に室温20℃で24時間浸せきした前後の可視光透過率及び可視光反射率の変化がいずれも1%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱線反射着色膜被覆ガラス。
  6. ガラス基板の一方の表面上に、63〜78質量%の鉄と16〜24質量%のクロムと6〜13質量%のニッケルとを成分として含有する金属ターゲットを用い、酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気中でスパッタリングすることにより、酸化物層である第一層を積層する工程と、
    該第一層の上に、60質量%以上のコバルトを含有する金属ターゲットを用い、酸化性ガスを含有するスパッタガス雰囲気でスパッタリングすることにより、酸化物層である第二層を積層する工程と、
    前記第一層および第二層が形成された前記ガラス基板を熱処理する工程と、を含むことを特徴とする熱線反射着色膜被覆ガラスの製造方法。
  7. セラミックカラーペーストおよび導電性銀ペーストの粘度を調整する工程と、
    前記粘度が調整された前記セラミックカラーペーストをスクリーン印刷機により、前記第二層上に印刷して乾燥させる工程と、
    前記粘度が調整された前記導電性銀ペーストをスクリーン印刷機により、前記第セラミックカラーペースト上に印刷して乾燥させる工程と、
    を備えたことを特徴とする請求項6に記載の熱線反射着色膜被覆ガラスの製造方法。
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