JP4636719B2 - 半導体膜の処理方法及び光起電力素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜半導体の特性を向上するための半導体膜の処理方法、及び、特性が良好な光起電力素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体を用いた太陽電池,光センサ等の光起電力素子における光起電力層の材料として、その光起電力素子の製造コストを低減するために、既に高い変換効率を実現している単結晶シリコンに代わって、より安価な材料である多結晶シリコンまたは非晶質シリコンの利用が進められている。特に、非晶質シリコンは、資源が豊富である点、光の吸収係数が大きいためにその厚さは0.5μm程度で十分である点、作製工程が簡単であって作製エネルギが少なくて済む点などにより、単結晶シリコンの場合と比べて光起電力素子の製造コストを大幅に削減することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、非晶質シリコンを光起電力層に用いた光起電力素子には、光劣化(光照射の継続に伴って変換効率が低下していく現象)の問題があり、その普及にとって大きな障害となっている。この光劣化は、光照射によって非晶質シリコンの結合が弱い部分が切断され、ダングリングボンド(未結合手)などの欠陥準位が生成することに起因している。
【0004】
そこで、反応性が高いCN- イオン(シアノイオン)を非晶質シリコンに取り込ませて、弱い結合部分を置換したり、ダングリングボンドを終端することにより、Si−CN結合を形成し、欠陥準位を消滅させて光劣化を防止する方法が理論的に考えられてきている。しかしながら、CN- イオンを非晶質シリコンに取り込ませる技術について種々のものが試みられてはいるが、その有効的な手法は未だに確立されていない。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、簡単な手法によりCN- イオンを効率良く非晶質相または微結晶相に取り込ませることができる半導体膜の処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の他の目的は、この半導体膜の処理方法を光起電力層に適用することにより、光劣化を防止して長期にわたって優れた変換効率を実現できる光起電力素子を製造する光起電力素子の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1発明に係る半導体膜の処理方法は、非晶質相及び/または微結晶相を含む半導体膜を処理する方法において、シアン化合物含有の溶液中に前記半導体膜を浸漬し、浸漬させた状態で前記溶液中の対極を通じて前記半導体膜に電圧を印加することを特徴とする。
【0008】
第1発明にあっては、非晶質相及び/または微結晶相を含む半導体膜を、シアン化合物含有の溶液中に浸漬し、浸漬させた状態の半導体膜に溶液中の対極を通じて電圧を印加して、半導体膜の非晶質相または微結晶相にCN- イオンを取り込ませる。シアン化合物の正イオンは捕捉されて半導体膜と接触しないために、正イオンによる半導体膜の汚染を防止できる。更に、溶媒としてキシレンなどの有機物を用いるため、水溶液を用いたときとは異なり、CN- イオンは溶媒和されない。この結果、CN- イオンの取り込みが促進される。また、このときに電圧を印加することにより、CN- イオンが半導体膜の内部にまで浸入して取り込まれる。この結果、ダングリングボンドなどの欠陥準位がCN- イオンにて解消されて、半導体膜の特性が向上する。
【0009】
第2発明に係る半導体膜の処理方法は、第1発明において、前記半導体膜はシリコンを含んでいることを特徴とする。
【0010】
第2発明にあっては、非晶質シリコン及び/または微結晶シリコンに対してCN- イオンが効率良く取り込まれ、シリコン半導体膜の特性が向上する。
【0011】
第3発明に係る半導体膜の処理方法は、第1または第2発明において、前記半導体膜に印加する電圧は、0.1V以上100V以下であることを特徴とする。
【0012】
第3発明にあっては、0.1V以上100V以下の電圧を半導体膜に印加する。印加する電圧を0.1V未満とした場合には、CN- イオンの内部浸入の十分な効果が得られない。一方、印加する電圧を100Vより大きくした場合には、半導体膜の破壊の虞れがある。よって、印加電圧の最適範囲を0.1V以上100V以下とすることにより、ダメージを与えることなくCN- イオンの内部浸入を促進できる。
【0013】
第4発明に係る光起電力素子の製造方法は、基板上に、一導電型の第1導電層、非晶質相及び/または微結晶相を含む光起電力層、並びに、他導電型の第2導電層をこの順に有する光起電力素子を製造する方法において、前記光起電力層を形成した後の中間物をシアン化合物含有の溶液中に浸漬し、浸漬させた状態で前記溶液中の対極を通じて前記光起電力層に電圧を印加することを特徴とする。
【0014】
第4発明にあっては、非晶質相及び/または微結晶相を含む光起電力層を形成した後の中間物を、シアン化合物含有の溶液中に浸漬し、浸漬させた状態の光起電力層に溶液中の対極を通じて電圧を印加することにより、第1発明と同様に、光起電力層の非晶質相または微結晶相にCN- イオンを取り込ませる。この結果、ダングリングボンドなどの欠陥準位がCN- イオンにて解消されて、光起電力層の膜特性が向上し、光劣化は防止されて、光起電力素子の長期にわたる高い変換特性が達成される。
【0015】
第5発明に係る光起電力素子の製造方法は、第4発明において、前記光起電力層は、複数の光起電力層を有しており、前記複数の光起電力層夫々を形成した後の各中間物をシアン化合物含有の溶液中に浸漬し、浸漬させた状態で前記溶液中の対極を通じて前記複数の光起電力層夫々に電圧を印加することを特徴とする。
【0016】
第5発明にあっては、複数の光起電力層夫々を形成した後に、シアン化合物含有の溶液中への浸漬及び浸漬させた状態での電圧印加の処理を繰り返して行う。よって、光起電力層へのCN- イオンの取り込みが増加する。
【0017】
第6発明に係る光起電力素子の製造方法は、第4または第5発明において、前記光起電力層はシリコンを含んでいることを特徴とする。
【0018】
第6発明にあっては、非晶質シリコンからなる光起電力層及び/または微結晶シリコンからなる光起電力層に対して、CN- イオンが効率良く取り込まれ、シリコン光起電力層の特性が向上する。
【0019】
第7発明に係る光起電力素子の製造方法は、第4〜第6発明の何れかにおいて、前記溶液中の対極を通じて前記光起電力層に印加する電圧は、0.1V以上100V以下であることを特徴とする。
【0020】
第7発明にあっては、0.1V以上100V以下の電圧を光起電力層に印加することにより、第3発明と同様に、ダメージを与えることなくCN- イオンの内部浸入を促進できる。
【0021】
第8発明に係る光起電力素子の製造方法は、第4〜第7発明の何れかにおいて、光照射によって前記光起電力層に起電力を発生させ、発生させた起電力を用いて、前記溶液中の対極を通じて前記光起電力層に前記電圧を印加することを特徴とする。
【0022】
第8発明にあっては、光照射によって発生させた起電力を印加用の電圧に利用する。よって、特別な電圧印加機構が不要となり、より簡便にCN- イオンの取り込みを行える。
【0029】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の一般的な処理形態について説明する。本発明では、クラウンエーテル(例えば18−クラウン−6)を含むシアン化合物の溶液(例えばKCN溶液)中に半導体膜(例えば非晶質シリコン膜)を浸漬し、浸漬させた状態で半導体膜に電圧を印加する処理を行って、非晶質相及び/または微結晶相を含む半導体膜にシアン処理(例えば水素で終端化しきれていないa-Si:Hのダングリングボンドまたは結合が弱い部分をCN- イオンと結合させて終端化する処理)を施す。
【0030】
このシアン処理は、非晶質シリコンをKCN溶液に浸すだけで、簡便に行うことができる。しかしながら、KCN溶液にはK+ イオンも含まれており、このK+ イオンが可動イオンとして、膜特性に悪影響を与えることが考えられる。
【0031】
そこで、CN- イオンの効果を保ちながらK+ イオンを除去するために、クラウンエーテルの一種であり、K+ イオンと最も安定した錯体を形成する18−クラウン−6(C12H24O6 )という相間移動触媒を用いる。この18−クラウン−6は分子内に2.7Åのホールを持っており、直径2.66ÅのK+ イオンを効果的に捕捉することができる。
【0032】
具体的には、キシレン(ジメチルベンゼン)に18−クラウン−6を溶解してKCN水溶液と混合させることによって、18−クラウン−6がK+ イオンを捕捉してキシレン層に移動させることができる。また、CN- イオンも静電的にキシレン層に移動するが、K+ イオンは18−クラウン−6にて遮蔽されているため、正の電荷は弱まっていて、CN- イオンの活性は高まっている。更に、CN- イオンはキシレン溶液中では溶媒和されない。そこで、このキシレン層に非晶質シリコン(a-Si:H)を浸漬することによって、CN- イオンはより効果的にダングリングボンドなどの欠陥準位と結合することができる。
【0033】
ところで、このようなCN- イオンによる欠陥準位の終端化は、非晶質相(a-Si:H)の表面近傍だけでなくその中心部(バルク内)まで行き渡らせる必要がある。そこで、本発明では、その半導体膜(非晶質シリコン膜)の浸漬中に正電圧を印加することによって、CN- イオンをバルク内に効率良く浸入させる。この場合の印加電圧の大きさは、0.1V以上100V以下であることが好ましい。
【0034】
印加電圧を種々に変化させて、上記処理を行った結果、0.1V未満では十分な効果が得られず、100Vを超えると逆に特性低下が生じる可能性が高くなることが判明した。0.1V未満にて十分な効果が得られなかった理由は、半導体と金属などの他の物質との界面には元来0.1V程度の接合電位が存在しており、外部からの印加電圧の効果が打ち消されたためと考えられる。一方、100Vを超えた場合には、半導体自身に耐電圧以上の電圧が印加されることになって破壊が生じたことが、特性低下の原因と考えられる。
【0035】
以下、本発明における具体例について説明する。
(実施例1)
図1は、実施例1における非晶質シリコン膜の作製工程を示す図である。この実施例1では、クラウンエーテルを含むシアン化合物の溶液に浸漬して電圧を印加する処理(以下、この処理のことを電圧印加クラウンエーテルシアン処理という)を行って、光劣化を防止した非晶質シリコン膜を作製する。
【0036】
まず、透明導電膜(TCO)2が形成されたガラス基板1を洗浄した(図1(a))。そして、これをプラズマCVD用真空チャンバに挿入して、チャンバ内を一旦真空に排気した後、表1に示す条件で、透明導電膜2上に水素化非晶質シリコン(a-Si:H)膜3を形成した(図1(b))。
【0037】
【表1】
【0038】
次に、前記チャンバから図1(b)に示す試料を取り出して、真空蒸着用チャンバに挿入した。2×10-4Paまで排気した後、マスクを用いてアルミニウム膜4(直径:3mm,厚さ:0.1μm)を真空蒸着した(図1(c))。
【0039】
次に、真空蒸着用チャンバから図1(c)に示す試料を取り出し、透明導電膜2上に電極5を形成した後(図1(d))、KCNのキシレン溶液6に浸漬した(図1(e))。このKCNのキシレン溶液6は、以下の方法で作成した。5.3gの18−クラウン−6を10mlのキシレンに溶解させて、濃度2Mの溶液を調整した。また、0.65gのKCNを10mlの水に溶解させて、濃度1Mの溶液を調整した。これらの2種類の溶液を分液ロートに入れて、よく撹拌した後、30分間放置した。二層に分離したキシレン溶液の上層を分液ロートから取り出し、取り出したものを使用するキシレン溶液6とした。
【0040】
図1(d)に示す試料と白金電極7とを、電極5及び白金電極7を結線した状態でこのようなキシレン溶液6に浸し、白金電極7に対して電極5に+8Vの電圧を2分間印加した(図1(e))。その後、試料をキシレン溶液6から取り出し、室温のアセトン,エタノール,水にて各2回洗浄した。
【0041】
図2は、以上のような電圧印加クラウンエーテルシアン処理を行って作製した水素化非晶質シリコン膜(実施例1)における光電流密度の光照射に伴う経時変化を示すグラフである。図2において、横軸は強さ300mW/cm2 の光の照射時間を表し、縦軸は光電流密度を表している。光電流密度の測定は、擬似太陽光源AM1.5,100mW/cm2 を用いてアルミニウム膜をアース電位にして透明導電膜に0.1Vの電圧を印加した状態で行った。水素化非晶質シリコン膜を形成した後、電圧印加クラウンエーテルシアン処理を行うことにより、光照射によって光電流密度は減少せずに逆に増加しており、実施例1の水素化非晶質シリコン膜に全く光劣化が生じていないことが、図2の測定結果から分かる。
【0042】
図3は、このような電圧印加クラウンエーテルシアン処理を行わなかった水素化非晶質シリコン膜(比較例1)における光電流密度の光照射に伴う経時変化を示すグラフである。この場合の測定条件は実施例1の場合と同じであり、図3の横軸,縦軸は図2と同じである。電圧印加クラウンエーテルシアン処理を行わない場合には、光照射時間の増加と共に光電流密度は減少しており、比較例1の水素化非晶質シリコン膜は光劣化したことが、図3の測定結果から分かる。
【0043】
図4は、クラウンエーテルを含むシアン化合物の溶液には浸漬させるが電圧を印加しない処理(以下、この処理のことを単にクラウンエーテルシアン処理という)を行って作製した水素化非晶質シリコン膜(対照例1)における光電流密度の光照射に伴う経時変化を示すグラフである。この場合の測定条件は実施例1の場合と同じであり、図4の横軸,縦軸は図2と同じである。クラウンエーテルシアン処理時に電圧印加しなかった場合には、光照射時間の増加に伴う光電流密度の減少度は全く処理を行わなかった比較例1に比して小さくなっているが、光電流密度は減少していることが、図4の測定結果から分かる。
【0044】
また、図5は、上記実施例1の水素化非晶質シリコン膜における暗電流密度の光照射に伴う経時変化を示すグラフである。図5において、横軸は強さ300mW/cm2 の光の照射時間を表し、縦軸は暗電流密度を表している。暗電流密度の測定は、暗状態でアルミニウム膜をアース電位にして透明導電膜に0.1Vの電圧を印加した状態で行った。光照射した後でも暗電流密度は変化せずに一定であり、実施例1の水素化非晶質シリコン膜には全く光劣化が生じていないことが、図5の測定結果からも分かる。
【0045】
図6は、上記比較例1の水素化非晶質シリコン膜における暗電流密度の光照射に伴う経時変化を示すグラフである。この場合の測定条件は実施例1の場合と同じであり、図6の横軸,縦軸は図5と同じである。光照射によって暗電流密度は著しく減少しており、比較例1の水素化非晶質シリコン膜は光劣化したことが、図6の測定結果からも分かる。
【0046】
図7は、上記対照例1の水素化非晶質シリコン膜における暗電流密度の光照射に伴う経時変化を示すグラフである。この場合の測定条件は実施例1の場合と同じであり、図7の横軸,縦軸は図5と同じである。光照射による暗電流密度の減少度は比較例1に比して小さくなっているが、光電流密度は減少していることが、図7の測定結果から分かる。
【0047】
これらの図2〜図7に示す測定結果を考察した場合、電圧印加クラウンエーテルシアン処理によって、非晶質シリコン膜の光劣化が完全に防止されていることが分かり、しかも、電圧印加クラウンエーテルシアン処理を施した非晶質シリコン膜(実施例1)では、光照射時間の増加に伴って光電流密度が増加している。これは、光照射によってCN- イオンの浸入及び欠陥準位との反応が促進され、光照射時間の増加に伴って欠陥準位密度が減少したためと考えられる。
【0048】
また、電圧印加を行わないでクラウンエーテルシアン処理を施した非晶質シリコン膜(対照例1)では、光劣化の程度は減少するが、光劣化を完全に防止することはできない。これは、電圧印加を行わない場合、非晶質シリコン膜の表面の近傍に存在する欠陥準位及び欠陥準位の前駆体(弱い結合,歪みがある結合など)にはCN- イオンが反応してこれらは消滅するが、CN- イオンは非晶質シリコン膜の表面から奥深くには浸入できないため、奥深くに存在する欠陥準位及び欠陥準位の前駆体は消滅しないためと考えられる。一方、クラウンエーテルシアン処理中に非晶質シリコン膜に正電圧を印加した場合、負の電荷を持つCN- イオンの非晶質シリコン膜内部への浸入が促進されて、奥深くに存在する欠陥準位及び欠陥準位の前駆体にもCN- イオンが反応してそれらが消滅し、光劣化は完全に防止される。よって、光劣化の完全防止には、電圧印加が必須であることが分かる。
【0049】
また、一旦形成されたSi−CN結合は強固であるので光照射によっても切断されず、欠陥準位の光生成は起こらない。電圧印加クラウンエーテルシアン処理を行った場合に生じる光照射時間の増加に伴う光電流密度の増加は、i型非晶質シリコン中に存在する未反応のCN- イオンの浸入及び欠陥準位との反応が光照射によって促進されて、欠陥準位にCN- イオンが効率良く結合する結果であると考えられる。
【0050】
(実施例2)
図8は、実施例2における光起電力素子の製造工程を示す図である。この実施例2では、光起電力層に電圧印加クラウンエーテルシアン処理を施す。
【0051】
まず、透明導電膜(TCO)12が形成されたガラス基板11(図8(a))上に、表2に示す条件で、第1導電層としてのp型a-SiC層、光起電力層としてのi型a-Si層、第2導電層としてのn型a-Si層をこの順に積層してなる光電変換膜13を形成する(図8(b))。
【0052】
【表2】
【0053】
次に、透明導電膜12上に電極15を形成した後(図8(c))、KCNのキシレン溶液16に浸漬した(図8(d))。このKCNのキシレン溶液16は、実施例1と同様の手順にて作成した。浸漬時間は2分として、白金電極17に対して電極15に15Vの正電圧を印加した。その後、試料をキシレン溶液16から取り出し、室温のアセトン,エタノール,水にて各2回洗浄した。洗浄した試料を乾燥させた後、Agからなる裏面金属膜18を光電変換膜13上に形成して、光起電力素子を製造した(図8(e))。
【0054】
このようにして製造した光起電力素子(実施例2)の特性(開放電圧Voc,短絡電流Isc,曲線因子FF,変換効率)を測定した。その測定結果を下記表3に示す。また、電圧印加クラウンエーテルシアン処理を行わずに、他の条件は実施例2と同一にして製造した光起電力素子(比較例2)の特性の測定結果も表3に併せて示す。なお、表3での各パラメータの値は、比較例2での規格化値を表している。
【0055】
【表3】
【0056】
表3から、実施例2の変換効率が比較例2に比べて大幅に向上していることが分かる。高いRFパワーにて光起電力層(i型a-Si層)を形成しているため、比較例2ではその界面近傍の特性が悪くて低い変換効率しか得られないが、実施例2では、電圧印加クラウンエーテルシアン処理によって、この原因となる欠陥準位を減少させることができて、高い変換効率を実現できている。
【0057】
また、実施例2及び比較例2に対して光照射(照射条件:300mW/cm2 ,25時間)を行った後の特性を測定した。その測定結果を下記表4に示す。なお、表4での各パラメータの値は、比較例2での規格化値を表している。
【0058】
【表4】
【0059】
実施例2と比較例2との変換効率の差は、光照射前(光劣化前)よりも大きくなっており、電圧印加クラウンエーテルシアン処理により、光劣化後の特性を顕著に改善できていることが分かる。これは、電圧印加クラウンエーテルシアン処理を施しておいたことによって、光照射による新たな欠陥準位の生成を大いに抑制できたことを示している。
【0060】
(実施例3)
図9は、実施例3における光起電力素子の製造工程を示す図である。この実施例3では、実施例2と同様に光起電力層に電圧印加クラウンエーテルシアン処理を施すが、その際に印加する電圧として、自身の光起電力を利用する。
【0061】
まず、透明導電膜(TCO)22が形成されたガラス基板21(図9(a))上に、上記表2に示す条件で、第1導電層としてのp型a-SiC層、光起電力層としてのi型a-Si層、第2導電層としてのn型a-Si層をこの順に積層してなる光電変換膜23を形成する(図9(b))。
【0062】
次に、この試料をKCNのキシレン溶液26に浸漬した(図9(c))。このKCNのキシレン溶液26は、実施例1と同様の手順にて作成した。ここで、p型a-SiC層側の外部から光を照射した。照射光には、AM1.5,100mW/cm2 の擬似光源を使用した。試料に光を照射することにより、ガラス基板21とn型a-Si層との間に光起電力が生じて、キシレン溶液26中のCN- イオンの光起電力層への取り込みは促進する。この光照射は10分間行った。その後、試料をキシレン溶液26から取り出し、室温のアセトン,エタノール,水にて各2回洗浄した、洗浄した試料を乾燥させた後、Agからなる裏面金属膜28を光電変換膜23上に形成して、光起電力素子を製造した(図9(d))。
【0063】
このようにして製造した光起電力素子(実施例3)の特性を測定した。その測定結果を下記表5に示す。また、電圧印加クラウンエーテルシアン処理を行わずに、他の条件は実施例3と同一にして製造した光起電力素子(比較例3)の特性の測定結果も表5に併せて示す。また、実施例3及び比較例3に対して光照射(照射条件:300mW/cm2 ,25時間)を行った後の特性を測定した。その測定結果を下記表6に示す。なお、表5,表6での各パラメータの値は、比較例3での規格化値を表している。
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
表5から、実施例3の変換効率が比較例3に比べて大幅に向上しており、電圧印加クラウンエーテルシアン処理が有効であることが分かる。また、表5,表6の比較により、実施例3と比較例3との変換効率の差が、光照射前(光劣化前)よりも光照射後(光劣化後)の方が大きくなっていることが分かる。これは、光劣化によって欠陥密度が増加したので、電圧印加クラウンエーテルシアン処理の効果がより顕著になったためである。
【0067】
実施例3では、外部から電圧を印加するのではなく、光照射を行いながらクラウンエーテルシアン処理を施し、光照射による光起電力によってCN- イオンの内部への浸入を図っている。この際、非晶質シリコンの場合の開放電圧は0.8Vであって実施例2での印加電圧15Vと比べると小さいが、処理時間を10分間と長くすることによって、十分な電圧印加クラウンエーテルシアン処理を行うことができる。実施例3では、電圧印加処理のための電極,配線などの部材が不要であり、手間がかからず、処理コストの削減を図れる。
【0068】
(実施例4)
図10は、実施例4における光起電力素子の製造工程を示す図である。この実施例4では、CN- イオンの浸透の程度を調べるために、光起電力層にその処理時間を異ならせて電圧印加クラウンエーテルシアン処理を施す。
【0069】
まず、金属基板31(図10(a))上に、表7に示す条件で、第1導電層としてのn型a-Si層、光起電力層としてのi型a-Si層、第2導電層としてのp型a-SiC層をこの順に積層してなる光電変換膜33を形成する(図10(b))。
【0070】
【表7】
【0071】
次に、金属基板31上に電極35を形成した後(図10(c))、実施例1と同様の手順にて作成したKCNのキシレン溶液36に浸漬し、白金電極37に対して電極35に15Vの正電圧を印加した(図10(d))。ここで浸漬時間を0分(処理なし),2分,30分と変化させ、その後、各試料をキシレン溶液36から取り出し、室温のアセトン,エタノール,水にて各2回洗浄した。洗浄した各試料を乾燥させた後、表面透明電極(TCO)38及びAgからなるくし型集電極39を光電変換膜33上に形成して、処理時間0分の光起電力素子(比較例4),処理時間2分の光起電力素子(実施例4-1),処理時間30分の光起電力素子(実施例4-2)を夫々製造した(図10(e))。
【0072】
このようにして製造した3種の光起電力素子(比較例4,実施例4-1,実施例4-2)の光照射前後(光劣化前後)における変換効率の測定結果を下記表8に示す。なお、表8での各パラメータの値は、比較例4での規格化値を表している。実施例4-1,実施例4-2は何れも、変換効率の改善が見られるが、処理時間を2分とした実施例4-1の方が処理時間を30分とした実施例4-2よりも改善の幅が大きいことが、表8の測定結果から分かる。
【0073】
【表8】
【0074】
図11は、実施例4-1と実施例4-2とにおける効果の差を検証するために、光起電力層(i型a-Si層)中のCNの含有量をSIMSにて測定した結果を示すグラフである。図11において、横軸はi型a-Si層のp型a-SiC層側からの深さを表し、縦軸はCN含有量を表している。
【0075】
図11のグラフから分かるように、実施例4-2の場合には光起電力層(i型a-Si層)全体にわたって比較的均一にCNが分布しているのに対して、実施例4-1の場合にはp型a-SiC層との界面近傍でCNの含有量が多くなっている。一般的に、光起電力層中の欠陥密度はバルクよりも界面近傍の方が大きいことが知られており、p型層側から光入射を行う光起電力素子にあっては光起電力層のp型層との界面近傍で最も多くの光が吸収されるので、そのp型層との界面近傍の特性が変換効率に大きく寄与する。
【0076】
実施例4-1では、p型a-SiC層との界面近傍に多くのCNを含有させることにより、この部分での欠陥密度の低減に大いに貢献し、結果として実施例4-2よりも高い変換効率を実現できた。光照射(光劣化)による欠陥準位も、p型層との界面近傍にて顕著に発生するので、光照射後(光劣化後)の変換効率も、実施例4-1では実施例4-2よりも優れた結果が得られている。
【0077】
なお、処理時間2分は実施例4における最適値であり、光起電力層の膜質,印加電圧の大きさなどの他の要因によって、この処理時間の最適値は変動する。しかしながら、最適な処理を行った光起電力素子にあっては、光起電力層中のCN含有量が、p型層またはn型層の何れか一方との界面近傍領域において、特に、光入射側のp型層との界面近傍領域において、他の領域よりも多くなっていることは、良好な変換効率を得るためには重要な点である。
【0078】
(実施例5)
図12,図13は、実施例5における光起電力素子の製造工程を示す図である。この実施例5では、光起電力層に電圧印加クラウンエーテルシアン処理を施すが、光起電力層を2層構成とし、各光起電力層を形成した後に電圧印加クラウンエーテルシアン処理を夫々行う。
【0079】
まず、透明導電膜(TCO)42が形成されたガラス基板41(図12(a))上に、表9に示す条件で、第1導電層としてのp型a-SiC層、一層目の光起電力層としての第1i型a-Si層をこの順に積層してなる第1光電変換膜43aを形成した(図12(b))。
【0080】
【表9】
【0081】
次に、透明導電膜42上に電極45を形成し、この試料を、実施例1と同様の手順にて作成したKCNのキシレン溶液46に浸漬した(図12(c))。浸漬時間は1分として、白金電極47に対して電極45に15Vの正電圧を印加した。その後、試料をキシレン溶液46から取り出し、室温のアセトン,エタノール,水にて各2回洗浄した。
【0082】
次いで、第1光電変換膜43a上に、表9に示す条件で、二層目の光起電力層としての第2i型a-Si層からなる第2光電変換膜43bを形成した(図13(d))。再び透明導電膜42上に電極45を形成し、この試料をKCNのキシレン溶液46に浸漬し、浸漬時間は1分として、白金電極47に対して電極45に15Vの正電圧を印加した(図13(e))。
【0083】
その後、試料をキシレン溶液46から取り出し、室温のアセトン,エタノール,水にて各2回洗浄した。次に、第2i型a-Si層43b上に、表9に示す条件で、第2導電層としてのn型a-Si層からなる第3光電変換膜43cを作成し、最後にAgからなる裏面金属膜48をn型a-Si層43c上に形成して、光起電力素子(実施例5-1)を製造した(図13(f))。
【0084】
また、上述した製造工程において1回目の電圧印加クラウンエーテルシアン処理(図12(c)に該当)を省略して、上記第1i型a-Si層,第2i型a-Si層を連続して形成し、つまり膜厚300nmのi型a-Si層を一括して形成し、その後に上述した製造工程と同様の電圧印加クラウンエーテルシアン処理,n型a-Si層及び裏面金属膜の作成を行って、光起電力素子(実施例5-2)を製造した。但し、この電圧印加クラウンエーテルシアン処理において、印加電圧は15Vとし、処理時間は2分とした。
【0085】
更に、この実施例5-2において、電圧印加クラウンエーテルシアン処理を全く行わずに光起電力素子(比較例5)を製造した。
【0086】
このようにして製造した3種の光起電力素子(比較例5,実施例5-1,実施例5-2)の光照射前後(光劣化前後)における変換効率の測定結果を下記表10に示す。なお、表10での各パラメータの値は、比較例4での規格化値を表している。
【0087】
【表10】
【0088】
実施例5-1,実施例5-2は何れも、変換効率の改善が見られるが、2回の電圧印加クラウンエーテルシアン処理を施した実施例5-1の方がその処理回数を1回とした実施例5-2よりも改善の幅が大きいことが、表10の測定結果から分かる。実施例5-1では、p型a-SiC層側に位置する第1i型a-Si層(膜厚:50nm)を形成した後に電圧印加クラウンエーテルシアン処理を施しているので、光起電力層(i型a-Si層)の光入射側であるp型層に近い領域で他の領域よりもCNが多くなり、実施例5-2と比べて、効果的に電圧印加クラウンエーテルシアン処理を施せて、欠陥準位の低減及び光照射(光劣化)による欠陥発生の抑制をより良く行えたと言える。
【0089】
表2,表9から分かるように、比較例2と比較例5とは同じ形成条件を有しており、同一の変換効率の特性が得られている。これに対して、実施例2と実施例5-2とを比較した場合、光照射前後(光劣化前後)の何れの場合においても後者が前者より変換効率は高くなっている。これは、実施例2ではn型a-Si層を形成した後に電圧印加クラウンエーテルシアン処理を施しているが、実施例5-2ではn型a-Si層の形成前に電圧印加クラウンエーテルシアン処理を施しており、より効果的に電圧印加クラウンエーテルシアン処理を行えたためである。
【0090】
なお、上述した実施例では半導体膜(光起電力層)として非晶質シリコンを用いる場合について説明したが、これに限らず、非晶質相及び/または微結晶相を含む全ての半導体膜に対しても同様の効果が得られる。
【0091】
また、上述した実施例では1組のpin接合を有する単接合型光起電力素子について説明したが、複数組のpin接合を有する2スタック型,3スタック型などのタンデム型の光起電力素子においても同様の効果が得られる。
【0092】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明では、非晶質相及び/または微結晶相を含む半導体膜にシアン化合物含有の溶液中に浸漬させた状態で溶液中の対極を通じて電圧を印加するようにしたので、容易にCN- イオンを効率良く非晶質相または微結晶相に取り込ませることができ、その膜性を大幅に向上することができる。このような処理手法を、光起電力素子の光起電力層に適用するようにしたので、光劣化の影響を受けない優れた特性を有する光起電力素子を製造することができる。この結果、光起電力層に非晶質シリコンを使用した製造コストが低い光起電力素子における光劣化の問題の解決を図ることができる。
【0093】
また、本発明では、印加電圧の大きさを0.1V以上100V以下としたので、半導体膜(光起電力層)にダメージを与えることなくCN- イオンの内部浸入を促進することができる。
【0094】
また、本発明では、光照射によって発生させた起電力を印加電圧に用いるようにしたので、特別な電圧印加機構を設けることなく、簡便にCN- イオンの取り込みを行うことができる。
【0095】
更に、本発明では、光起電力素子の光起電力層において、欠陥準位が多く発生する光入射側の導電層(p型層)との界面領域でのCN含有率が、他の領域でのCN含有率より多くなるようにしたので、より効率良く欠陥準位を解消することができて、光劣化を防止して長期間にわたる高い変換効率を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における非晶質シリコン膜の作製工程を示す図である。
【図2】実施例1の水素化非晶質シリコン膜における光電流密度の光照射に伴う経時変化を示すグラフである。
【図3】比較例1の水素化非晶質シリコン膜における光電流密度の光照射に伴う経時変化を示すグラフである。
【図4】対照例1の水素化非晶質シリコン膜における光電流密度の光照射に伴う経時変化を示すグラフである。
【図5】実施例1の水素化非晶質シリコン膜における暗電流密度の光照射に伴う経時変化を示すグラフである。
【図6】比較例1の水素化非晶質シリコン膜における暗電流密度の光照射に伴う経時変化を示すグラフである。
【図7】対照例1の水素化非晶質シリコン膜における暗電流密度の光照射に伴う経時変化を示すグラフである。
【図8】実施例2における光起電力素子の製造工程を示す図である。
【図9】実施例3における光起電力素子の製造工程を示す図である。
【図10】実施例4における光起電力素子の製造工程を示す図である。
【図11】実施例4-1及び実施例4-2での光起電力層(i型a-Si層)中のCNの含有量の測定結果を示すグラフである。
【図12】実施例5における光起電力素子の製造工程を示す図である。
【図13】実施例5における光起電力素子の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
1,11,21,41 ガラス基板
2,12,22,42 透明導電膜
3 水素化非晶質シリコン膜
4 アルミニウム膜
5,15,35,45 電極
6,16,26,36,46 KCNのキシレン溶液
7,17,37,47 白金電極
13,23,33 光電変換膜
18,28,48 裏面導電膜
38 表面透明電極
39 くし型集電極
41a 第1光電変換膜
41b 第2光電変換膜
41c 第3光電変換膜
Claims (8)
- 非晶質相及び/または微結晶相を含む半導体膜を処理する方法において、シアン化合物含有の溶液中に前記半導体膜を浸漬し、浸漬させた状態で前記溶液中の対極を通じて前記半導体膜に電圧を印加することを特徴とする半導体膜の処理方法。
- 前記半導体膜はシリコンを含んでいる請求項1記載の半導体膜の処理方法。
- 前記半導体膜に印加する電圧は、0.1V以上100V以下である請求項1または2記載の半導体膜の処理方法。
- 基板上に、一導電型の第1導電層、非晶質相及び/または微結晶相を含む光起電力層、並びに、他導電型の第2導電層をこの順に有する光起電力素子を製造する方法において、前記光起電力層を形成した後の中間物をシアン化合物含有の溶液中に浸漬し、浸漬させた状態で前記溶液中の対極を通じて前記光起電力層に電圧を印加することを特徴とする光起電力素子の製造方法。
- 前記光起電力層は、複数の光起電力層を有しており、前記複数の光起電力層夫々を形成した後の各中間物をシアン化合物含有の溶液中に浸漬し、浸漬させた状態で前記溶液中の対極を通じて前記複数の光起電力層夫々に電圧を印加する請求項4記載の光起電力素子の製造方法。
- 前記光起電力層はシリコンを含んでいる請求項4または5記載の光起電力素子の製造方法。
- 前記溶液中の対極を通じて前記光起電力層に印加する電圧は、0.1V以上100V以下である請求項4〜6の何れかに記載の光起電力素子の製造方法。
- 光照射によって前記光起電力層に起電力を発生させ、発生させた起電力を用いて、前記溶液中の対極を通じて前記光起電力層に前記電圧を印加する請求項4〜7の何れかに記載の光起電力素子の製造方法。
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