JP4647119B2 - コンプレッサ用ヘリカルブレードおよびその製造方法、並びにこのブレードを使用したコンプレッサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷凍サイクル装置に用いられるコンプレッサに使用するヘリカルブレード、特に寸法精度および表面平滑性に優れ、且つ耐疲労特性に優れたPFA樹脂製ヘリカルブレードおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、冷凍サイクル装置には冷媒ガスを圧縮するコンプレッサが備えられている。
この用途のコンプレッサには良く知られたレシプロ式コンプレッサやロータリ式コンプレッサの他に、螺旋状ブレード(以下、ヘリカルブレードという)を採用したヘリカルコンプレッサがある。
【0003】
このヘリカルコンプレッサは、密閉ケース内にシリンダが配置され、このシリンダ内にローラが偏芯して配置され、このローラはシリンダ内を公転するようになっている。
ローラの外周面に形成される螺旋状溝内にヘリカルブレードが嵌め込まれ、ブレードは ローラとシリンダとの間に介装される。
【0004】
そして、上記ヘリカルブレードによりシリンダとローラとの間に複数の圧縮室が軸方向に沿って区画形成される。冷媒ガスはローラの一端側から圧縮室に吸い込まれ、ローラの公転(偏芯回転)に伴って圧縮室がローラの他端側に移動する間に徐々に連続的に圧縮され、ローラ他端側から密閉ケース内に高圧となった冷媒ガスが吐出される。
【0005】
ヘリカルコンプレッサは、レシプロ式コンプレッサやロータリ式コンプレッサに比べ部品点数が少なく、部品の製造・組立てが容易である他、冷媒ガスを連続かつスムーズに圧縮できる特徴を有し、吐出脈動が生じ難い利点がある。
【0006】
しかし、ヘリカルコンプレッサに備えられるヘリカルブレードは、ローラの不等ピッチの螺旋状溝に嵌め込まれ、ローラの公転に伴って螺旋状溝内を出入りする。ヘリカルブレードがローラの螺旋状溝内を出入りする際に、ローラとヘリカルブレードの相対的動きの違いから、ヘリカルブレードが螺旋ピッチの異なる箇所(螺旋溝)を通過することがあり、ヘリカルブレードは出入り毎に疲労を受ける。
【0007】
また、ヘリカルブレードとローラの螺旋状溝との双方の螺旋ピッチが極端に異なると、螺旋状溝内に出入りするヘリカルブレードに大きな変形力が強制的に作用し、ヘリカルブレードは大きな歪みを受けると共に、ローラの螺旋状溝への出入りがメカニカルロスとなることから、ローラの螺旋溝と同じピッチを有するヘリカルブレードが使用される。
【0008】
ヘリカルコンプレッサに用いられるヘリカルブレードの特性を考慮し、ヘリカルブレードには、柔軟性、耐熱性、耐環境性(冷凍機油、温度、冷媒)、低摩擦係数等の材料特性を有するフッ素樹脂材が使用される。
特に、耐熱性や耐環境性、低摩擦係数特性に優れ、射出成形等の加熱溶融加工性が良好であるテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下PFA樹脂と略称する)が適している。
【0009】
ローラの螺旋状溝と同じピッチを有するヘリカルブレードの製造方法としては、射出成形加工が適している。射出成形加工は生産性に優れるという特徴がある。射出成形加工時に使用される金型には、ローラの螺旋状溝と同じ不等ピッチの螺旋溝が形成され、この金型の螺旋溝に溶融した成形樹脂材(フッ素樹脂材)を圧入し、金型内で冷却固化させることでローラ溝と同じ不等ピッチのヘリカルブレードを形成できる。
金型は、例えば特開平4−72489号で開示したものを使用することができる。この公報は、金型の注入ゲートの構成に関する提案であり、この金型構成により、ヘリカルブレードはローラの螺旋状溝と同一の不等ピッチで形成され、しかも注入ゲートの痕跡が残らない平滑なシール面を確保できる。
さらに、射出成形によって成形されたヘリカルブレードは、ブレード表面に樹脂層(スキン層)が形成されることで、良好な摺動特性が得られる利点がある。
【0010】
また、特許第2839569号公報には、ヘリカルブレードを上記のように射出成形によって成形するにあたっては、メルトフローレートMFR(メルトフローインデックスと同意義;以下MFRとも略称する)が20g/10min以上のパーフルオロアルコキシ樹脂材(PFA樹脂材)を使用すれば、その高い流動性により、ヘリカルブレードの寸法精度の向上が図れ、平滑なシール面が得られることが記載されている。
尚、MFRは、ASTM D3307で定義されており、射出成形時の熱可塑性樹脂材料の流動性を表す尺度で用いられ、所定の温度で所定の荷重を作用させたとき、所要口径のオリフィスを通って、10分間に押し出されるグラム数をいう。
上記のような、高い溶融流動性を有する樹脂を使用することが好ましいのは、溶融流動性の低い樹脂を用いて射出成形を行うと、金型の螺旋溝端部から成形樹脂素材を注入した場合、溶融成形樹脂素材の流れるべき距離が長いために、成形圧力の伝達が悪く、ヘリカルブレードに高い寸法精度やブレード表面の平滑性が得られないためであった。
【0011】
しかし、樹脂の流動性を表す尺度であるMFRは、成形樹脂材料の分子量と密接な関係があり、MFRが大きいほど分子量は小さく、逆にMFRが小さければ分子量は大きい。
一方、ヘリカルブレードの信頼性に関わる疲労特性も、分子量と密接な関係にあり、分子量が大きいほど疲労特性に優れることを知見した。すなわち、成形樹脂材料の流動性が高いことは、疲労特性の低下に繋がり、ブレード信頼性の低下を招くことになる。
【0012】
さらに、差圧を受けた状態でヘリカルブレードとローラの螺旋状溝が摺動するために、PFA樹脂だけでは摩耗が生ずる問題があった。そこで、耐摩耗性を向上させるためにガラス繊維などの充填材を複合する方法がある(以下、PFA複合樹脂と略称する)。
しかしながら、PFA複合樹脂はMFRを低下させるため、ベースとなる成形樹脂材料にMFRの高い材料(分子量が小)を予め使用する必要がある。また、PFA複合樹脂は、充填材の混入によって疲労特性を大幅に低下させるという課題がある。
つまり、PFA複合樹脂材料の使用に当たっては、さらに分子量が小さい成形樹脂材料が必要となり、また充填材によってさらに疲労特性の低下に繋がるために、より一層のブレード信頼性の低下を招くことになる。
【0013】
またPFA複合樹脂材料は、摺動の際に充填材が摩擦抵抗となり、動摩擦係数が増加する。このため、ブレードと摺動するローラ、シリンダとの動摩擦係数が増加し、ひいては摺動ロスが増えるためにコンプレッサ性能の効率低下を招くことになる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、寸法精度および表面平滑性に優れ、且つ摺動特性と耐疲労特性に優れたPFA樹脂製ヘリカルブレードおよびその製造方法と、このヘリカルブレードを使用することによって高い信頼性とコンプレッサ性能のヘリカルコンプレッサを提供する。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、−CH2OH末端基を有し且つ末端基の安定化処理を行っていないテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA樹脂)に無機質充填剤を複合したPFA複合樹脂を使用し、射出成形加工によってヘリカルブレードに成形加工したのち280〜300℃の温度で10時間以上且つ300時間以下の加熱処理に付すことを特徴とするコンプレッサ用ヘリカルブレードの製造方法に関する。
特に、本発明は、前記加熱処理前のPFA複合樹脂の流動性がMFR(メルトフローレート)値として15g/10min以上である上記コンプレッサ用ヘリカルブレードの製造方法に関する。
また、本発明は、上記の方法によって得られる分子量が、MFR値で表して10g/10min以下に高められたPFA樹脂製のコンプレッサ用ヘリカルブレードに関する。
さらに、本発明は、シリンダと、このシリンダ内に偏芯して配置されたローラと、前記シリンダとローラのいずれか一方に設けられ一端側から他端側に向かってピッチが徐々に小さくなるように形成された螺旋状の溝に出没自在に設けられたヘリカルブレードを有するコンプレッサにおいて、ヘリカルブレードが、上記方法により形成されることを特徴とするコンプレッサに関する。
【0016】
本発明の特徴は、射出成形に最適な流動性を有するPFA樹脂を使用して寸法精度および表面平滑性に優れた成形体を形成し、次いで成形体を特定の温度で加熱処理することにより成形体を構成しているPFA樹脂の重量平均分子量を向上させるものであり、これによって耐疲労特性をはじめとする物理的特性に優れた成形体に変換するところにある。
【0017】
【発明の実施の形態】
即ち、本発明は、−CH2OH末端基を有し且つ末端基の安定化処理を行っていない、流動性がMFR(メルトフローレート)値として15g/10min以上である、無機質充填材を複合したPFA複合樹脂を射出成形加工によってヘリカルブレードに成形加工したのち280〜300℃の温度で10時間以上且つ300時間以下の加熱処理に付すことによって、寸法精度および表面平滑性に優れ、且つ耐疲労特性と摺動特性に優れたPFA複合樹脂製のヘリカルブレードおよびこのヘリカルブレードを採用したヘリカルコンプレッサを製造するものである。
【0018】
類似の技術として、International wire & cable Symposium Proceedings, p.94-99(1980)には、PFA樹脂の場合、285℃で20,000時間エージングすることによりPFA樹脂の引っ張り強度が増加すること、および空気中で高温(230℃および280℃)でエージングした場合にメルトフローインデックスが低下し、これが末端基の結合による分子量の増加によることを意味すると記載されている。しかし、この変化は数1,000時間、少なくても1,000時間以上の極めて長時間における変化を記載しているに過ぎず、実用に結びつかない現象である。
【0019】
これに対して、本発明では、−CH2OH末端基を有し且つ末端基の安定化処理を行っていない、溶融成形可能な流動性を有する、特定の無機質充填材を複合したPFA複合樹脂を用いることにより、実用可能な10時間以上且つ300時間以下という現実的な処理時間で、PFA複合樹脂の物理特性を改良するものである。
本発明の方法によって得られたヘリカルブレード成形体は、PFA複合樹脂の分子量がMFR値で表して10g/10min以下の大きさに増加しており、この分子量増大によって成形体として優れた物性、特に耐疲労特性と摺動特性が付与される。
【0020】
本発明のヘリカルブレードを成形するために使用するPFA複合樹脂の好ましい範囲はMFR値で表して15〜50g/10minである。15g/10min未満では溶融粘度が高すぎて、ヘリカルブレードの長い螺旋形状を末端まで流動させることが困難になり、高い寸法精度と表面の平滑性が得られなくなる。一方、50g/10minを越えると逆に粘度が高すぎてバリが発生したり、耐熱性が低下することから、射出成形時に熱劣化が起こり易くなり、安定した生産が困難になる。
つまり、本発明の特徴は、成形が容易な高い流動性を有する比較的低分子量のPFA樹脂と無機充填剤とのPFA複合樹脂を用いて成形を行ったのち、特定の条件で熱処理することによって、耐疲労特性、摺動特性に優れたヘリカルブレードを得ることを可能にしたところにある。
【0021】
本発明で使用できる成形樹脂素材は、−CH2OH末端を有し且つ安定化処理を行っていないPFA樹脂である。
末端基である−CH2OHの数は、炭素原子106個当たり40個以上且つ400個以下が適している。特に100〜400個が好ましい。40個未満では、速やかな分子量向上が期待できず、分子量の向上に要する時間が長くなりすぎ、また400個より多くなると熱安定性が低下する。
【0022】
PFA樹脂は、熱安定性や化学的安定性向上の目的で、通常は分子末端が−CF3や−CONH2のような形で安定化されるが、本発明で使用するPFA樹脂は、末端基の安定化処理を行ってないPFA樹脂である。ここで、末端基の安定化処理を行っていないPFA樹脂とは、末端が−CF=CF2、−CH2OH、−COF、−COOCH3、−COOHのような構造を残存しているものを言う。
【0023】
本発明で使用するPFA複合樹脂は、280〜300℃の温度で10時間以上且つ300時間以下の熱処理により、分子量が増加し、ヘリカルブレード成形体の耐疲労性、摺動特性が向上する。
【0024】
上記PFA複合樹脂の分子量増加反応は、PFA樹脂そのものの反応であり、次の反応機構で進行するものと推定される。
【化1】
また、その他の不安定な末端基は加熱によって〜CF=CF2に変化する。これは赤外吸収スペクトルにおける−CH2OH基(3650cm−1)に相当するピークの減少と−COF基(1883cm−1)の増加によって裏付けられる。
【0025】
本発明で使用するPFA複合樹脂は、280〜300℃での熱処理時間が10時間未満では十分な分子量向上が期待できず、また300時間より長くなると反応の進行は微小となり、それ以上時間をかけても生産効率が悪くなるだけである。
また、熱処理温度が280℃より低いと短い時間での分子量増加反応が十分進まず、300℃を超えると融点に接近して、ヘリカルブレード成形体の形状、寸法精度が保持できなくなる。
【0026】
なお、本発明の熱処理は、分子量増加反応に酸素が関与することから、空気中、または酸素中で行うことが好ましい。
また、ヘリカルブレードの耐摩耗特性を向上させる充填材には、材質で大別して無機質と有機質がある。充填材の前提条件として、PFA樹脂の高い成形加工温度で熱劣化しない耐熱性が要求される。
無機質の充填材として、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、カーボンウィスカー、シリコンカーバイドウィスカー、サファイアウィスカーなどの無機繊維およびウィスカー類、グラファイト、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、炭化ケイ素、その他のセラミックス類などの粒子が挙げられる。
【0027】
一方、有機質の充填材として、芳香族ポリイミド、全芳香族ポリエステルなどを原料とした繊維類および粒子が挙げられる。
しかしながら、有機質の充填材は、本発明の熱処理によって酸化作用(微量な酸化劣化)が生じ、酸素を消費するためにPFA樹脂の分子量増加反応が十分に行われなくなる。
このため、ヘリカルブレードの耐疲労特性、摺動特性が得られなくなることから、熱処理の温度で酸化等の特性に変化が生じない無機質の充填材が適している。
また、無機質充填材の充填量は、1〜15重量%の範囲が好ましい。充填量が1重量%未満では耐摩耗特性向上の効果がほとんど得られず、一方、充填量が15重量%を越えると、PFA樹脂の疲労特性が極端に落ちるとともに、流動性が低下し、成形性が悪化する。
【0028】
本発明のヘリカルブレードについて、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明を適用したヘリカルコンプレッサを示す縦断面図である。このヘリカルコンプレッサ10は、冷蔵庫、空気調和機等の冷凍サイクル装置に備えられる。ヘリカルコンプレッサ10は、螺旋状のブレード、すなわちヘリカルブレード25を採用した横置きタイプのコンプレッサであり、この横形ヘリカルコンプレッサ10には密閉ケース11内の一側に収容される電動機12と、この電動機12にて駆動されるヘリカルブレード式圧縮機構13とが設けられる。
【0029】
圧縮機構13は、密閉ケース11内に収容され、固定されるスリーブ状シリンダ23と、このシリンダ23内に偏芯して収容されるローラ24と、上記シリンダ23とローラ24との間に介装される螺旋状のヘリカルブレード25を有する。上記シリンダ23の両側には外周フランジ23a、23bが一体に設けられ、これらの外周フランジ23a、23bにメインベアリング20とサブベアリング21が締付ネジ等の締着手段で固定される。
【0030】
ヘリカルブレード式圧縮機構13のローラ24は、クランクシャフト18のクランク部18aに回転フリーに軸装され、クランクシャフト18の回転運動に伴って偏芯旋回運動するようになっている。ローラ24とサブベアリング21との間にオルダム機構27が設けられ、ローラ24の自転を防止している。このオルダム機構27によりローラ24の自転が規制され、ローラ24はシリンダ22内を自転することなく、公転運動するようになっている。
【0031】
また、ローラ24の外周面には螺旋状溝28が形成される。この螺旋状溝28はサブベアリング21側からメインベアリング20側に向って溝ピッチが小さくなる不等ピッチに形成される。ローラ24の螺旋状溝28にヘリカルブレード25が嵌め込まれる。
このヘリカルブレード25によりシリンダ23とローラ24の間に複数の圧縮室30が軸方向に沿って複数個形成される。
【0032】
ヘリカルブレード25は、ローラ24の螺旋状溝28に直径を強制的に縮小した状態で嵌め込まれており、ヘリカルブレード25の外周面がシリンダ23の内周壁面に全周に亘り、弾力的に接触する状態で組み付けられ、シリンダ23内周壁面をヘリカルブレード25でシールしている。
ヘリカルブレード25の螺旋ピッチは不等ピッチであり、ローラ24の螺旋状溝28と同じピッチに形成される。
射出成形によって成形される本発明のヘリカルブレードの1例を図2に示している。図2(A)はヘリカルブレード全体の側面図、(B)はヘリカルブレードの横断面図である。
【0033】
【実施例】
以下実施例により本発明をより詳細に説明する。
実施例 1:原料PFA複合樹脂のMFR値と射出成形性、熱処理によるMFR値変化の関係
MFR値とヘリカルブレードの寸法精度の関係を把握するため、MFR値の異なるPFA複合樹脂について図3に示される金型中子47を用いて射出成形実験を行った。
末端−CH2OH基の数の測定は、PFA複合樹脂の厚さが約200μmのプレスフィルムを用いてFT-IRにより赤外吸収スペクトルを測定しておこなった。末端基の定量は、試料スペクトルと完全フッ素化された標準試料との差スペクトルにより算出した。炭素数106個当たりの−CH2OH末端基数を計算するための補正係数をモデル化合物から決定し、補正係数を差スペクトルの吸収ピークの高さに乗ずることによって対象とするPFA末端基数を算出した。使用した吸収ピークと補正係数は次の通りである。
【0034】
【表1】
【0035】
具体的には、下記のMFRが13g/10min、18g/10min、30g/10minのPFA樹脂にガラス繊維(日本電気硝子社製;EPG−70)を10重量%充填し、下記の混練条件で、MFRが10g/10min、15g/10min、25g/10minのPFA複合樹脂ペレット(成形樹脂素材)を得た。
【0036】
金型中子47に形成された螺旋溝46は注入ゲート48から4巻とし、図2(b)に示したような矩形断面の金型中子47を用意し、次の成形条件で射出成形機40により、ヘリカルブレード25を成形した。
この実験で得られたヘリカルブレード25の螺旋流動長さと図2(b)に示した断面精度の関係をPFA複合樹脂のMFR値毎に示したのが図4である。
【0037】
〔成形条件〕
射出成形機:日本製鋼所製 J100EII型−P
成形温度 :樹脂温度 380℃、金型温度 220℃、射出圧力 75MPa
【0038】
また、上記射出成形実験において、図2(b)に示した断面の精度は、辺aおよび辺bの中央部に相当する成形体の寸法a'およびb'の測定を行い、規定寸法aおよびbに対する相対比率、すなわち
断面寸法精度 = a'/a または b'/b
で示している。断面精度の悪化は、肉ひけと称される凹面形状になることから、断面寸法精度が1より小さくなる。
【0039】
図4に示すように、MFR5g/10minおよび10g/10minのPFA複合樹脂は、規定螺旋巻数の4巻きに到達せず、樹脂が到達した部分でも断面精度は低かった。つまり、PFA複合樹脂の流動性が不足し、機能を満たすヘリカルブレード25は得られなかった。
【0040】
これに対し、MFR15g/10minおよび25g/10minのPFA複合樹脂は、規定螺旋巻数の4巻きの末端まで到達し、断面精度も良好である。特にMFR25g/10minのPFA複合樹脂材は断面精度に優れ、MFRが高いほど、ヘリカルブレード25の高い精度が得られることが確認された。
【0041】
図3に示される金型中子47は、ヘリカルブレード25の形態を示す一例であって、MFR値大の流動性が高いPFA複合樹脂を用いることは、高い寸法精度が得られることはもちろんのこと、断面小(熱膨張や膨潤時の寸法変化が小さく、ローラの螺旋状溝28とヘリカルブレード間のクリアランス小で広い使用範囲でのシール性を高める)や巻数の増加(差圧を小さくしてヘリカルブレード25の信頼性を高める)が可能となり高い信頼性とコンプレッサー運転効率が得られることはいうまでもない。
【0042】
実施例 2:加熱処理による成形体の性能改良
次に、PFA複合樹脂の加熱処理によるMFR値低下(分子量大)の効果を調べるため、図4で実施したMFR値25g/10minのPFA複合樹脂で射出成形のヘリカルブレード25(寸法精度が高い)を使用して、250、270、280、290、300および305℃の各温度に設定した熱風恒温槽(東上熱学社製)に配置し、300時間まで加熱処理を行った。時間の設定は、生産性を考慮して最大300時間とした。
図5は、上記ヘリカルブレード25の加熱処理後にMFRを測定し、MFR値と加熱時間の関係を加熱温度毎に示している。
【0043】
上記PFA複合樹脂の加熱処理による物理的特性向上の効果を調べるため、上記の成形条件で平板試験片(12×12×2mm)を射出成形し、上記のヘリカルブレード25と同時に250、270、280、290、300および305℃の各温度に設定した熱風恒温槽(東上熱学社製)に配置し、10時間および300時間の加熱処理を行った。
【0044】
射出成形しただけの試験片とこれに上記加熱処理を施した試験片の両方について、物理特性として、耐繰返し曲げ疲労特性(フレックスライフ性)と油潤滑下での摺動特性を、また、比較として上記PFA複合樹脂の素材であるPFA樹脂(MFR30g/10min;旭硝子社製商品「アフロンP62X」)で射出成形しただけの試験片を加えた。
〔物理的特性および樹脂特性の評価方法〕
(1)繰返し曲げ疲労特性(フレックスライフ性)
繰返し曲げ試験機を用いて、繰返し曲げ試験を行い、試験片に亀裂が生じるまでの繰返しサイクル数によって寿命を評価した。
試験片幅 :3mm
試験幅把握長 :3mm
曲げ角度 :15°
繰返しサイクル:600cpm(サイクル/分)
(2)摺動特性(摩耗量、動摩擦係数)
JIS K−7218法に準じて次のように行った。
平板試験片と円筒状の相手金属材を接触させて、一定荷重下で一方を回転させ、試験片の重量減少量によって摩耗量を評価した。また、動摩擦係数は、回転しない試験片を支える側にトルクメーターが取り付けられ、試験中の回転トルクから算出した回転力を荷重で割った値である。
相手金属材料:S45C(硬度:HRC18、表面粗さ:0.8μmRa)
荷重 :16kg/cm2
回転速度:0.75m/秒
試験時間:24時間
潤滑油 :SUNISO 4GSD(日本サン石油製、冷凍機油)
(3)MFR
JIS K−7210 B法に準じて行った。
【0045】
加熱処理温度および加熱処理時間を変えたときのMFR値の変化を表2、繰返し曲げ疲労回数を表3、摩耗量を表4、動摩擦係数を表5に、それぞれ加熱処理前およびベースのPFA樹脂のものと比較して示した。
なお、実施例2の加熱処理後の試験片を、融点以上の320℃まで加熱したところ溶融し、架橋していないことが確認された。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
上記結果によれば、加熱処理温度280〜305℃の範囲でMFRが低下し、物理特性の向上が見られるが、305℃ではヘリカルブレード25が熱変形し形状保持ができない。また、加熱処理時間10〜300時間にてMFRおよび物理特性の変化が顕著であった。
詳細には、PFA樹脂を複合することによって、摩擦特性は向上するが、曲げ疲労特性、動摩擦係数の特性が低下する。しかし、処理温度280〜300℃、処理時間10〜300時間の加熱処理によって、これらが向上して、ヘリカルブレード25に要求される特性を満たすことがわかる。
特に、加熱処理後のMFR値10g/10min以下では、これらの物理特性が優れる。
【0051】
実施例 3:PFA複合樹脂の充填材種と加熱処理による成形体のMFR変化
実施例1の30g/10minのPFA樹脂「アフロンP62X」(旭硝子社製商品;炭素数106個当たりの−CH2OH末端基の数:220)を使用し、充填材の種類と加熱処理効果について実験を行った。
具体的には、PFA樹脂の成形加工温度で熱分解しない耐熱性のある充填材を選定し、無機質としてガラス繊維(日本電気硝子社製;EPG−70)、炭素繊維(ペトカ社製;MM207)、グラファイト(日本黒鉛社製;J−ACP)、有機質としてポリイミド樹脂(三笠産業社製;PAW−20)とし、それぞれ上記PFA樹脂に実施例1の混練条件で充填した。なお、得られたPFA複合樹脂は、MFR値が比較できるように、充填材の比重、形状を考慮して充填量を決定してMFR値が15g/10min、25g/10minになるように調整した。
【0052】
上記のPFA複合樹脂を使用して、実施例2と同様に試験片を射出成形し、280℃、300時間の加熱処理を行ったのちに、MFRの測定を行った。
結果を表6に示した。
【0053】
【表6】
【0054】
上記結果によれば、熱的に安定なガラス繊維、炭素繊維、グラファイトを複合したPFA樹脂は、加熱処理によりMFRが低下した。しかし、ポリイミド樹脂の複合は、MFRの低下が小さく、充填材がPFA樹脂の反応を阻害していることが分かる。
つまり、ヘリカルブレード25の諸特性を向上させる充填材として、無機質充填材が適していることは言うまでもない。
【0055】
実施例 4:PFA樹脂の末端基数と加熱処理による成形体のMFR変化
PFA複合樹脂の末端−CH2OH基数と加熱処理によるMFR変化を調べるため、次のベースPFA樹脂に実施例1と同様のガラス繊維を複合し、MFR25g/10minのPFA複合樹脂を作成した。
〔PFA樹脂〕
MFR30g/10min(旭硝子社製商品「アフロンP62X」)
(1)炭素数106個当たりの−CH2OH末端基の数:52
(2)炭素数106個当たりの−CH2OH末端基の数:220
(3)炭素数106個当たりの−CH2OH末端基の数:380
(4)比較として、末端基が安定化処理された三井デュポンフロロケミカル社製のテフロン「テフロン420HP」:
MFR30g/10min(「テフロン420HP」)
炭素数106個当たりの−CH2OH末端基の数:0
を加えた。
上記PFA複合樹脂を使用して、実施例2と同様にヘリカルブレード25を射出成形し、280℃、300時間の加熱処理を行ったのちに、MFRの測定を行った。
結果を表7に示した。
【0056】
【表7】
【0057】
上記結果から、−CH2OH末端基が0の安定化されたPFA樹脂を使用した場合は、加熱処理の効果が得られないことが分かる。また、加熱処理による効果は、−CH2OH末端基数が多いほど効果が得られやすい傾向であるが、一方で、材料の熱安定性が低下することから射出成形加工時の加熱で熱劣化のおそれがあり、安定した精度が得られない問題が生じる。
よって、炭素数106個当たり40個以上且つ400個以下の−CH2OH末端基を有するPFA樹脂が適している。
【0058】
実施例 5:加熱処理によるPFA複合樹脂ヘリカルブレードを適用したヘリカルコンプレッサの性能変化
実施例2のMFRが15g/10minと25g/10minのPFA複合樹脂で射出成形した寸法精度の異なるヘリカルブレード25に290℃、300時間加熱処理を行い、図1のヘリカルコンプレッサに搭載してコンプレッサー性能を測定した。また、比較として加熱処理をしていない同ヘリカルブレード25も使用した。
具体的には、冷媒ガスに「フレオン134a」を使用し、50rpsの回転速度を与える。そして、50時間運転後の負荷電力、冷凍能力を測定し、運転効率(冷凍能力/負荷電力)を求め、表8に示した。
表8には、負荷電力、冷凍能力、運転効率がMFR15g/10minのPFA複合樹脂製、加熱処理を行った実施例を100とした相対比率で示している。
【0059】
【表8】
【0060】
表8から、加熱処理によって、ヘリカルブレード25とローラ溝24の動摩擦係数が低減し、負荷電圧が小さく、結果として高い運転効率が得られる。また、MFR大のPFA複合樹脂によって高い寸法精度が得られるため、冷媒ガスのシール性高め、冷凍能力が向上し、同効果が得られる。
さらに、PFA複合樹脂によって耐摩耗性が付与され、一方で低下する耐疲労性を加熱処理で高めることにより、信頼性が著しく向上できる。
【0061】
また、本発明の一実施形態では、ローラの螺旋状溝にヘリカルブレードを嵌挿させた例を説明したが、螺旋状溝をシリンダの内周壁に形成し、シリンダに形成される螺旋状溝にヘリカルブレードを嵌挿させてもよい。この場合、ヘリカルブレードの内周壁がローラの外周面に、常時摺接する関係に保たれる。
また、電動機部内に圧縮機構部を嵌挿し、シリンダ、ローラ、ブレードが自転するタイプにおいても、各部品の相対的な動き、ヘリカルブレードに要求される機能は同じであり、適用できることは言うまでもない。
【0062】
【発明の効果】
本発明に係るヘリカルコンプレッサのブレード構造およびブレード製造方法においては、−CH2OH末端基の安定化処理を行っていないテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA樹脂)に無機充填材を複合したPFA複合樹脂を使用し、射出成形加工によってヘリカルブレードに成形加工したのち280〜300℃の温度で10時間以上且つ300時間以下の加熱処理で短時間にPFA樹脂材の分子量を高めたので、ヘリカルブレードの生産性が高く、かつ、ブレード寸法精度の向上を図ることができ、ヘリカルブレードの信頼性を高め、コンプレッサ性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るヘリカルコンプレッサの一実施形態を示す縦断面図。
【図2】 本発明のヘリカルブレードの一般的形状図
(a)正面図、 (b)横断面図。
【図3】 ヘリカルブレード成形用射出成形金型の断面図。
【図4】 MFR値の異なるPFA複合樹脂を用いたヘリカルブレード成形時の射出成形品の断面精度と螺旋巻数との関係を示す特性図。
【図5】ヘリカルブレード射出成形品の各加熱処理でのPFA複合樹脂のMFR値変化と加熱時間の関係を示す特性図。
【符号の説明】
10:ヘリカルコンプレッサ、
13:ヘリカルブレード式圧縮機構、
23:シリンダ、
24:ローラ、
25:ヘリカルブレード、
28:螺旋状溝、
30:圧縮室、
31:吸込部、
32:吐出孔、
40:射出成形機、
41:金型、
43:固定側金型、
44:可動側金型、
46:螺旋溝、
47:金型中子、
48:注入ゲート、
50:成形樹脂素材。
Claims (5)
- −CH2OH末端基を有し且つ末端基の安定化処理を行っていないテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA樹脂)に無機質充填剤を複合したPFA複合樹脂を使用し、射出成形加工によってヘリカルブレードに成形加工したのち280〜300℃の温度で10時間以上且つ300時間以下の加熱処理に付すことを特徴とするコンプレッサ用ヘリカルブレードの製造方法。
- 前記加熱処理前のPFA複合樹脂の流動性がMFR(メルトフローレート)値として15g/10min以上であることを特徴とする請求項1に記載のコンプレッサ用ヘリカルブレードの製造方法。
- 請求項1または2に記載の方法によって得られる分子量が高められたPFA樹脂製のコンプレッサ用ヘリカルブレード。
- 高められた分子量がMFR値で表して10g/10min以下である請求項3に記載のコンプレッサ用ヘリカルブレード。
- シリンダと、このシリンダ内に偏芯して配置されたローラと、前記シリンダとローラのいずれか一方に設けられ一端側から他端側に向かってピッチが徐々に小さくなるように形成された螺旋状の溝に出没自在に設けられたヘリカルブレードを有するコンプレッサにおいて、ヘリカルブレードが、−CH2OH末端基を有し且つ末端基の安定化処理を行っていないテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA樹脂)に無機質充填剤を複合したPFA複合樹脂を使用し、射出成形加工によってヘリカルブレードに成形加工したのち280〜300℃の温度で10時間以上且つ300時間以下の加熱処理に付すことにより形成されることを特徴とするコンプレッサ。
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