上記の如き第一および第二の油流制御弁を有する油圧制御装置によれば、これら第一および第二の油流制御弁が正常に作動している限り、油圧サーボ装置の作動状態を前記第一の方向に変えるべきときには、第二の油流制御弁を圧油源からの油の供給を遮断し且つ排油通路への導通を遮断した状態にして、第一の油流制御弁のみを操作してそれを行い、油圧サーボ装置の作動状態を前記第二の方向に変えるべきときには、第一の油流制御弁を圧油源からの油の供給を遮断し且つ排油通路への導通を遮断した状態にして、第二の油流制御弁のみを操作してそれを行うことができ、また第一または第二の油流制御弁に油流の供給が止まらない障害が生じたときには、第二または第一の油流制御弁の作動により第一または第二の油流制御弁からの過剰な油の供給を逃がすことができる。しかし、第一または第二の油流制御弁に油流の供給が止まらない障害が生じたときとは、同時に第一または第二の油流制御弁に排油通路への導通が止まらない障害が生じたときでもある。そのため、第一または第二の油流制御弁に油流の供給が止まらない障害が生じたとき、障害が生じた油流制御弁から送られる油を障害が生じていない他方の油流制御弁により逃がすことはできても、障害が生じていない油流制御弁から送られる油は障害が生じた油流制御弁により逃がされ、結局、互いに他からの油を逃がし合うだけで、サーボ装置に於ける油圧の制御はできないという問題がある。油圧サーボ装置には、変速機の変速制御装置の場合に於ける駆動力の如く、その作動中それにその作動状態を一方の方向に偏倚させようとする荷重が作用する場合が多く、その場合、油圧が制御されなくなると、油圧サーボ装置の作動状態は一方の方向にその終端まで偏倚する虞れがある。
本発明は、この問題に対処し、第一のポートから油が供給され第二のポートから油が排出されるとき第一の方向に作動状態を変え,前記第二のポートから油が供給され前記第一のポートから油が排出されるとき前記第一の方向とは逆の第二の方向に作動状態を変える油圧サーボ装置のための油圧制御装置にして、それぞれが圧油源からの油の供給を制御する油供給制御部と排油通路への導通を制御する油排出制御部とを有する第一および第二の油流制御弁と、前記第一および第二の油流制御弁の作動を制御する制御弁作動制御手段とを有し、前記第一のポートは前記第一の油流制御弁の前記油供給制御部より油を供給され得るようになっていると共に前記第二の油流制御弁の前記油排出制御部を経て油を排出され得るようになっており、前記第二のポートは前記第二の油流制御弁の前記油供給制御部より油を供給され得るようになっていると共に前記第一の油流制御弁の前記油排出制御部を経て油を排出され得るようになっており、前記制御弁作動制御手段による前記第一および第二の油流制御弁の作動制御により前記油圧サーボ装置の作動状態を制御するようになっている油圧制御装置を、その第一および第二の油流制御弁の一方に排油通路への導通が止まらない障害が生じたとき、油圧サーボ装置の作動状態を前記第一または第二の方向にその終端まで変化させてしまうことのないよう改良することを課題としている。
上記の課題を解決するものとして、本発明は、第一のポートから油が供給され第二のポートから油が排出されるとき第一の方向に作動状態を変え,前記第二のポートから油が供給され前記第一のポートから油が排出されるとき前記第一の方向とは逆の第二の方向に作動状態を変える油圧サーボ装置のための油圧制御装置にして、それぞれが圧油源からの油の供給を制御する油供給制御部と排油通路への導通を制御する油排出制御部とを有する第一および第二の油流制御弁と、前記第一および第二の油流制御弁の作動を制御する制御弁作動制御手段とを有し、前記第一のポートは前記第一の油流制御弁の前記油供給制御部より油を供給され得るようになっていると共に前記第二の油流制御弁の前記油排出制御部を経て油を排出され得るようになっており、前記第二のポートは前記第二の油流制御弁の前記油供給制御部より油を供給され得るようになっていると共に前記第一の油流制御弁の前記油排出制御部を経て油を排出され得るようになっており、前記制御弁作動制御手段による前記第一および第二の油流制御弁の作動制御により前記油圧サーボ装置の作動状態を制御するようになっており、更に前記第一のポートからの前記第二の油流制御弁の前記油排出制御部を経る油の排出を前記第二の油流制御弁の作動とは独立して選択的に阻止し得る臨時油流阻止手段を有していることを特徴とする油圧制御装置を提供するものである。尚、本発明は、更に前記第二のポートからの前記第一の油流制御弁の前記油排出制御部を経る油の排出を前記第一の油流制御弁の作動とは独立して選択的に阻止し得る臨時油流阻止手段を同時に設けることを排除するものではない。
上記の如き油圧制御装置に於いて、前記制御弁作動制御手段は、前記油圧サーボ装置の作動状態を前記第一の方向に変えるべきときには、前記第二の油流制御弁を前記圧油源からの油の供給を遮断し且つ前記排油通路への導通を遮断した状態にして、前記第一の油流制御弁のみを操作してそれを行うようになっており、その際前記第二の油流制御弁が何らかの故障により前記排油通路への導通を遮断しないときには、前記臨時油流阻止手段がそれを遮断するようになっていてよい。また、前記臨時油流阻止手段をバイパスする絞り通路が設けられてもよい。
また、油圧制御装置には、前記臨時油流阻止手段により前記第一のポートからの前記第二の油流制御弁の前記油排出制御部を経る油の排出を阻止されるとき前記第一の油流制御弁の前記油供給制御部を経ることなく前記第一のポートへ油圧を供給する臨時油供給手段が設けられてもよい。かかる臨時油供給手段が作動されるときには、該臨時油供給手段から供給される油圧に応じて油圧サーボ装置へ入力されるトルク等の負荷荷重が制御されるようになっていてよい。
油圧サーボ装置は車輌用変速装置であり、前記第一のポートは前記車輌用変速装置の作動状態をアップシフト側へ変化させるとき油圧が供給されるポートであってよく、また車輌用変速装置はトロイダル式無段変速機であってよい。
或はまた、上記の課題は、本発明によれば、第一のポートから油が供給され第二のポートから油が排出されるとき第一の方向に作動状態を変え,前記第二のポートから油が供給され前記第一のポートから油が排出されるとき前記第一の方向とは逆の第二の方向に作動状態を変える油圧サーボ装置のための油圧制御装置にして、それぞれが圧油源からの油の供給を制御する油供給制御部と排油通路への導通を制御する油排出制御部とを有する第一および第二の油流制御弁と、前記第一および第二の油流制御弁の作動を制御する制御弁作動制御手段とを有し、前記第一のポートは前記第一の油流制御弁の前記油供給制御部より油を供給され得るようになっていると共に前記第二の油流制御弁の前記油排出制御部を経て油を排出され得るようになっており、前記第二のポートは前記第二の油流制御弁の前記油供給制御部より油を供給され得るようになっていると共に前記第一の油流制御弁の前記油排出制御部を経て油を排出され得るようになっており、前記制御弁作動制御手段による前記第一および第二の油流制御弁の作動制御により前記油圧サーボ装置の作動状態を制御するようになっており、更に前記第二の油流制御弁の前記油供給制御部を経る前記第二のポートへの油の供給を前記第二の油流制御弁の作動とは独立して選択的に阻止し得る臨時油流阻止手段を有していることを特徴とする油圧制御装置によっても達成される。
この場合にも、前記制御弁作動制御手段は、前記油圧サーボ装置の作動状態を前記第一の方向に変えるべきときには、前記第二の油流制御弁を前記圧油源からの油の供給を遮断し且つ前記排油通路への導通を遮断した状態にして、前記第一の油流制御弁のみを操作してそれを行うようになっており、その際前記第二の油流制御弁が何らかの故障により前記圧油源からの油の供給を遮断しないときには、前記臨時油流阻止手段がそれを遮断するようになっていてよい。また、前記臨時油流阻止手段をバイパスする絞り通路が設けられてもよい。
上記の如く、第一のポートから油が供給され第二のポートから油が排出されるとき第一の方向に作動状態を変え,前記第二のポートから油が供給され前記第一のポートから油が排出されるとき前記第一の方向とは逆の第二の方向に作動状態を変える油圧サーボ装置のための油圧制御装置において、それぞれが圧油源からの油の供給を制御する油供給制御部と排油通路への導通を制御する油排出制御部とを有する第一および第二の油流制御弁と、前記第一および第二の油流制御弁の作動を制御する制御弁作動制御手段とが設けられ、前記第一のポートは前記第一の油流制御弁の前記油供給制御部より油を供給され得るようになっていると共に前記第二の油流制御弁の前記油排出制御部を経て油を排出され得るようになっており、前記第二のポートは前記第二の油流制御弁の前記油供給制御部より油を供給され得るようになっていると共に前記第一の油流制御弁の前記油排出制御部を経て油を排出され得るようになっており、前記制御弁作動制御手段による前記第一および第二の油流制御弁の作動制御により前記油圧サーボ装置の作動状態を制御するようになっており、更に前記第一のポートからの前記第二の油流制御弁の前記油排出制御部を経る油の排出を前記第二の油流制御弁の作動とは独立して選択的に阻止し得る臨時油流阻止手段が設けられていれば、第一および第二の油流制御弁が正常に作動しているときには、第一または第二の油流制御弁のみを作動させて油圧サーボ装置の作動状態を第一の方向または第二の方向に変えることができ、また油圧サーボ装置の作動状態を前記第一の方向に変えるべきとき、或は油圧サーボ装置の作動状態が前記第二の方向に過度に変化するのを阻止すべきときに、前記第二の油流制御弁が何らかの故障により前記第一のポートの前記排油通路への導通を遮断しないとき、前記臨時油流阻止手段によりそれを遮断することにより油圧サーボ装置の作動状態が前記第二の方向へ異常に偏倚することを阻止し、或は更に前記第一の方向へ偏倚させることができる。
即ち、第一および第二の油流制御弁が正常に作動しているときには、油圧サーボ装置の作動状態を第一の方向に変えるべきときには、第二の油流制御弁は圧油源からの油の供給を遮断し且つ排油通路への導通を遮断した状態とし、第一の油流制御弁のみを制御してそれを行い、油圧サーボ装置の作動状態を第二の方向に変えるべきときには、第一の油流制御弁は圧油源からの油の供給を遮断し且つ排油通路への導通を遮断した状態とし、第二の油流制御弁のみを制御してそれを行うよう、油圧サーボ装置の全ての作動状態に対し、その都度一時に一つの油流制御弁を作動させた制御により対応することができ、一つの4ポート型制御弁が2つに分けて設けられても制御上何らの複雑化は生じない。
その上で、基本的には、第一の油流制御弁にスティックが生じて第一の油流制御弁からの油の供給が止まらなくなったときには、第二の油流制御弁を開方向に作動させれば、第一の油流制御弁からの油を適宜排油通路へ逃がすことにより油圧サーボ装置が第一の方向へ所定の目標位置を越えて行き過ぎてしまうことを阻止することができ、また油圧サーボ装置の第一の方向への行き過ぎを元の位置へ向けて戻すことも可能である。この場合、第一の油流制御弁からの止まらなくなった油の供給が弁の全開に当る量でない限り、第二の油流制御弁の開度を適宜増大させることにより第一の油流制御弁からの止まらなくなった油の供給に打ち勝って油圧サーボ装置を第二の方向へ状態変化させる機能も失わないようにすることができる。第二の油流制御弁にスティックが生じて第二の油流制御弁からの油の供給が止まらなくなったときには、第一の油流制御弁により同様の補助制御が得られる。
しかし、油圧サーボ装置が車輌用トロイダル型無段変速装置の変速制御装置の如く、その作動中油圧サーボ装置の作動状態を一方の方向に偏倚させる大きな負荷荷重を受けるような場合には、その負荷荷重を受けるポートからの油の排出を止める油流制御弁の油排出制御部が閉じなくなると、他方の油流制御弁の油供給制御部より該ポートへ油を補給しても油圧サーボ装置は負荷荷重に押されて該一方の方向に偏倚してしまう虞れがある。この場合、そのようなポートを前記第一のポートとし、該第一のポートより油を排出する油排出部を与える油流制御弁を前記第二の油流制御弁とし、該第一のポートから該第二の油流制御弁の油排出制御部を経る油の排出を該第二の油流制御弁の作動とは独立に選択的に停止し得る臨時油阻止手段が設けられていれば、それを作動させることにより大きな負荷荷重の作用の下に於いても油圧サーボ装置が該一方の方向へ偏倚することを確実に阻止することができる。
更に、前記臨時油流阻止手段をバイパスする絞り通路が設けられていれば、第二の油流制御弁に開状態のスティックが生じ、前記臨時油流阻止手段が作動した状態でも、該第一のポートからは該絞り通路を経て油が連続して徐々に抜ける状態が得られるので、開状態にスティックした第二の油流制御弁より他方の第二のポートに油が供給されつつある状態にあっても、他方の第一の油流制御弁を開いて第一のポートへ油を補給すると同時に第二のポートより油を排出する状態と、第一の油流制御弁を閉じて第一のポートへの油の補給を停止すると同時に第二のポートよりの油の排出も停止する状態の実行時間の比(デューティ比)を制御することにより、第一のポートに於ける油圧を油圧サーボ装置の有効な作動に必要な圧力に保ちつつ油圧サーボ装置の第一および第二の方向への作動状態を変えることができる。
また、前記臨時油流阻止手段により第一のポートからの第二の油流制御弁の油排出制御部を経る油の排出を阻止したとき、第一の油流制御弁の油供給制御部を経ることなく第一のポートへ圧油源からの油圧を供給する臨時油供給手段が設けられていれば、かかる臨時油供給手段からの油圧により第一のポートの油圧を適当に維持し、第一のポートに於ける油圧を油圧サーボ装置の有効な作動に必要な圧力に保つことができる。この場合、臨時油供給手段から供給される油圧に応じて油圧サーボ装置へ入力されるトルク等の負荷荷重が制御されれば、油圧サーボ装置への制御された入力負荷加重と臨時油供給手段から供給される油圧との釣合いによっても油圧サーボ装置の第一および第二の方向への作動状態を変えることができる。
油圧サーボ装置が車輌用変速装置であり、前記第一のポートが車輌用変速装置の作動状態をアップシフト側へ変化させるとき油圧が供給されるポートであれば、かかる第一のポートに油圧が得られなくなることによって変速装置が最低速段までダウンシフトされることが回避され、変速制御性が確保される。
油圧サーボ装置がトロイダル型無段変速機の変速制御装置であるときには、制御油圧は変速装置をアップシフトすべきとき或いはダウンシフトをすべきときに限って個別の油圧として供給されることが求められるので、個別の油圧を個別の油流制御弁により制御する本発明はこれによく適したものである。
また、第一のポートから油が供給され第二のポートから油が排出されるとき第一の方向に作動状態を変え,前記第二のポートから油が供給され前記第一のポートから油が排出されるとき前記第一の方向とは逆の第二の方向に作動状態を変える油圧サーボ装置のための油圧制御装置に於いて、それぞれが圧油源からの油の供給を制御する油供給制御部と排油通路への導通を制御する油排出制御部とを有する第一および第二の油流制御弁と、前記第一および第二の油流制御弁の作動を制御する制御弁作動制御手段とを有し、前記第一のポートは前記第一の油流制御弁の前記油供給制御部より油を供給され得るようになっていると共に前記第二の油流制御弁の前記油排出制御部を経て油を排出され得るようになっており、前記第二のポートは前記第二の油流制御弁の前記油供給制御部より油を供給され得るようになっていると共に前記第一の油流制御弁の前記油排出制御部を経て油を排出され得るようになっており、前記制御弁作動制御手段による前記第一および第二の油流制御弁の作動制御により前記油圧サーボ装置の作動状態を制御するようになっており、更に前記第二の油流制御弁の前記油供給制御部を経る前記第二のポートへの油の供給を前記第二の油流制御弁の作動とは独立して選択的に阻止し得る臨時油流阻止手段が設けられていれば、第一および第二の油流制御弁が正常に作動しているときには、第一または第二の油流制御弁のみを作動させて油圧サーボ装置の作動状態を第一の方向または第二の方向に変えることができ、また油圧サーボ装置の作動状態を前記第一の方向に変えるべきとき、或は油圧サーボ装置の作動状態が前記第二の方向に過度に変化するのを阻止すべきときに、前記第二の油流制御弁が何らかの故障により前記第二のポートへの油の供給を停止しないとき、前記臨時油流阻止手段によりそれを阻止し、前記第一の油流制御弁による前記第一のポートへの油の供給がその効果を有効に発揮できるようにすることにより油圧サーボ装置の作動状態が前記第二の方向へ異常に偏倚することを阻止し、或は更に前記第一の方向へ偏倚させることができる。
またこの場合にも、前記臨時油流阻止手段をバイパスする絞り通路が設けられていれば、前記臨時油流阻止手段により第二のポートへの油の供給は阻止されていても、絞り通路を経て第二のポートへの緩やかな油の供給が行われるので、この絞り通路を通る第二のポートへの油の供給に対向して、前記第一の油流制御弁により第一のポートへの油の供給を制御することにより、第一のポートに於ける油圧を油圧サーボ装置の有効な作動に必要な圧力に保ちつつ油圧サーボ装置の第一および第二の方向への作動状態を変えることができる。
添付の図1は本発明をトロイダル型無段変速機の変速制御用油圧制御装置に適用した一つの実施の形態を示す概略図である。図に於いて、10はトロイダル型無段変速機としては周知の構造に於けるパワーローラであり、トラニオン12より偏心軸14を経て支持されて図には示されていない一対のディスクの間に挾圧された状態に配置され、一対のディスクに対する傾動角を変えることにより一対のディスク間に伝達される回転動力の変速比を変更するようになっている。一対のディスクに対するパワーローラの傾動角の変更は、トラニオン12が油圧アクチュエータ16により図にて上下に一時的に変位されることによりもたらされる。
即ち、パワーローラの中心軸線がディスクの中心軸線に交差しているときには、パワーローラがディスクに対し如何なる傾動角にあっても、駆動側ディスクがパワーローラとの接触点に於いてパワーローラに及ぼす力はパワーローラの傾動軸線に平行に作用し、従ってパワーローラには傾動角を変更させる力は作用しないが、パワーローラの中心軸線がディスクの中心軸線に対し上下何れか一方に変位されると、パワーローラと駆動側ディスクとの接点で見て、変位方向がディスクの回転方向に沿う方向であれば、パワーローラにはそれを駆動側ディスクの中心へ向かわせる方向の力が作用することから、パワーローラは変速比を増大させる方向(即ちダウンシフト方向)に傾動され、また逆に、変位方向がディスクの回転方向に逆らう方向であれば、パワーローラにはそれを駆動側ディスクの中心より遠ざける方向の力が作用することから、パワーローラは変速比を減小させる方向(即ちアップシフト方向)に傾動される。
かくして変速比を一定に保つべきときには、駆動側ディスクよりパワーローラに及ぼされる駆動力に抗するだけの力をトラニオンに与えてパワーローラをその中心軸線が駆動ディスク(従ってまた被駆動ディスク)の中心軸線に交差する位置に維持し、変速比を変更すべきときには、随時パワーローラの中心軸線をディスクの中心軸線に対し一時変位させることにより変速比を増減させることができる。図示の実施の形態に於いては、パワーローラ10は図には示されていない駆動ディスクとの接触点に於いて下向きに駆動されるようになっており、パワーローラ10がその中心軸線を駆動ディスクの中心軸線に交差させる中立位置より下方へ変位されると変速比は増大側に変更され(即ちダウンシフトされ)、パワーローラ10がその中立位置より上方へ変位されると変速比は減小側に変更される(即ちアップシフトされる)ようになっている。
油圧アクチュエータ16はトラニオン12の下端と連結されたピストン18と、該ピストンの下方に形成された油圧室20と、該ピストンの上方に形成された油圧室22とを有しており、ポート24より油圧室20内へ油が給入され、ポート26より油圧室22内の油が排出されることによりピストン18が上向きに変位されてアップシフトを生じ、逆にポート26より油圧室22内へ油が給入され、ポートを24より油圧室20内の油が排出されることによりピストン18が下向きに変位されてダウンシフトを生ずるようになっている。
パワーローラと駆動ディスクおよび被駆動ディスクの間には必要な回転動力を伝達するに足る摩擦力を発生させるべく強い押圧力が作用されている。パワーローラ10には上記の通り駆動側ディスクより下向きの駆動力が及ぼされており、またピストン18にはトラニオンその他の重力が作用しているので、トラニオン12を上向きに変位させるにはこれらの力に抗する力が必要である。トラニオンを上下に偏倚させるための油の処理は所謂油圧制御であるが、トロイダル型無段変速機に於ける変速制御は、本質的にはパワーローラの上下変位の制御であり、油は非圧縮性であるので、本発明の対象である油圧制御装置の作動は、本質的には油圧室20および22に対する油の出し入れの量の制御である。
油圧室20および22に対する油の給排制御のための図示の油圧制御装置は、油圧ポンプ等よりなる圧油源28と、2つの油流制御弁30および32と、排油溜34とを含んでいる。油流制御弁30は、給油取入れポート36、給油取出しポート38、排油取入れポート40、排油取出しポート42を備えた弁ハウジング44と、ポート36と38の間の連通または遮断およびポート40と42の間の連通または遮断を制御する弁スプール46と、該弁スプールをポート36と38の間を遮断しまたポート40と42の間を遮断する位置へ付勢する圧縮コイルばね48と、弁スプール46を圧縮コイルばね48のばね力に抗してポート36と38の間を連通しまたポート40と42の間を連通する位置へ駆動する電磁駆動装置50とを含んでいる。
同様に、油流制御弁32は、給油取入れポート52、給油取出しポート54、排油取入れポート56、排油取出しポート58を備えた弁ハウジング60と、ポート52と54の間の連通または遮断およびポート56と58の間の連通または遮断を制御する弁スプール62と、該スプールをポート52と54の間を遮断しまたポート56と58の間を遮断する位置へ付勢する圧縮コイルばね64と、弁スプール62を圧縮コイルばね64のばね力に抗してポート52と54の間を連通しまたポート56と58の間を連通する位置へ駆動する電磁駆動装置66とを含んでいる。
圧油源28は、一方では、油路68と70を経て油流制御弁30の給油取入れポート36に接続され、これに対応する給油取出しポート38は油路72と74を経てトロイダル型無段変速機のポート24に接続されている。かかる給油経路に対応して、トロイダル型無段変速機のポート26は油路76と78を経て油流制御弁30の排油取入れポート40に接続され、これに対応する排油取出しポート42は油路80と82を経て排油溜34に接続されている。
また、圧油源28は、他方では、油路68と84を経て油流制御弁32の給油取入れポート52に接続され、これに対応する給油取出しポート54は油路86と76を経てトロイダル型無段変速機のポート26に接続されている。かかる給油経路に対応して、トロイダル型無段変速機のポート24は、油路74と88を経て油流制御弁32の排油取入れポート56に接続され、これに対応する排油取出しポート58は油路90と82を経て排油溜34に接続されている。油流制御弁30および32の電磁駆動装置50および66への通電は、マイクロコンピュータを備えた制御弁作動制御手段92により制御されるようになっている。
油路90の途中には、常時は図1に示されている如き切換え状態にあって油路90を連通させ、これより切換え状態が反転されると油路90の途中を遮断する切換弁94が設けられている。尚、切換弁94は図中仮想線にて示されている如く油路88の途中に設けられていてもよい。切換弁94の遮断位置への切換えは、油圧室20内の油圧が所定の低下速度を越える速さで低下したときそれをポート24からの油を排出する通路74,88に於ける油圧の低下率から検知する油圧低下率センサ96、トラニオン12が下方への終端位置まで下がったことを検知する終端位置センサ98、図には示されていないパワーローラ偏向角度センサ、その他の油流制御弁32が開位置でスティックしたことを感知する任意のセンサの作動に応答して行われてよい。
上記の如き構成に於いて、任意の変速比を所定の目標値まで減小させるべきときには、制御弁作動制御手段92の制御により、先ず、油流制御弁30の電磁駆動装置50のみに電流Iuが供給される。図2のAに示す如く電流値がIuo以上となったところで給油取入れポート36と給油取出し38の間の連通が始まり、トロイダル型無段変速機のピストン室20に対する供給油圧は、最大油圧Pu1まで急速に増大する。しかし、隣接するポート36と38の間には幾分かの油漏れがあるので、トロイダル型無段変速機のピストン室20へ供給される油量Q(L/min)は、図2のBに示す如く電流Iuの大きさに略比例して増大する。また油流制御弁の電磁駆動装置50および66への電流の供給は或る比較的短い周期でオンオフを繰り返す所謂デューティ制御により行われてよく、その場合Iuはデューティ比に比例するので、いずれにしてもトロイダル型無段変速機のピストン室20へ供給される油量Qは電流Iuに応じて制御される。このとき反対側のポート26は排油取入れポート40と排油取出しポート42の連通により排油溜り34に連通される。尚、図2のAおよびBに於けるIdおよびそれに対応するPdやQの値は、油流制御弁32の電磁駆動装置66に電流を供給してその給油取入れポート52と給油取出し54の間を連通させることに対する電流と供給油圧と油量の関係を示す。
こうしてピストン18が上方へ変位されると、パワーローラは変速比を減小させる方向(アップシフト方向)に偏向されるので、その結果生じた変速比の変化が図には示されていないパワーローラの偏向角度を検出するセンサ等により検出され、その信号が制御弁作動制御手段92へ送られる。変速比の変化につれて制御弁作動制御手段92は適当なフィードバック制御を実行し、パワーローラ10に所望の傾動が生じ或いは生ずる見通しが立ったところで、電磁駆動装置50への供給電流を停止する。次いで油流制御弁32の電磁駆動装置66のみへ電流Idを供給してピストン18を中立位置まで戻すことが行なわれる。このときには、油圧Pdは電流IdがIdoを越えたところから急速に最大値Pd1まで上昇する。トロイダル型無段変速機のピストン室22には電流Idに応じた油量Q(L/min)(但し流れ方向を考慮すれば−Q(L/min)))が供給される。またこのとき反対側のポート24は排油取入れポート56と排油取出しポート58の連通により排油溜り34に連通される。
無段変速機の変速比を増大させるダウンシフト制御は、上記と逆に、先ず油流制御弁32のみを作動させてパワーローラ10を下方へ変位させ、次いで油流制御弁30のみを作動させてパワーロータ10を上方へ変位させて元の中立位置に戻す要領にて行われる。
かかる構成に於いて、今、油流制御弁32を作動させて無段変速機の変速比を増大させるダウンシフト制御を行っている最中に油流制御弁32に異物の噛込み等によるスティックが生じ、電磁駆動装置66への通電を切っても弁スプール62が全閉位置まで戻らなくなったとする。この場合、ダウンシフトが継続し、最大変速比に固定される不具合が生じる虞れがある。
そこで、そのような油流制御弁32の開状態でのスティックが生じ、そのことが油圧低下率センサ96、トラニオン終端位置センサ98、或は図には示されていないパワーローラ偏向角度センサにより検知されたときには、切換弁94を遮断位置へ切り換えてポート24からの油の排出を阻止すれば、油流制御弁32の給油取出しポート54に現れる油圧Pd1に対向する油圧(図2のBにおける−Pd1)とトラニオン12に掛かる図にて下向きの負荷荷重に対応する油圧の和に相当する油圧を油圧室20内に発生させることができ、無段変速機の異常な変速比増大を直ちに停止させることができる。尚、油流制御弁32が開位置にスティックし、油路74,88内の油圧が急落したり、それに応じてトラニオン12が下方の終端位置まで下がり、それによってパワーローラ10が変速比増大方向に偏向するには時間遅れがあるので、油圧低下率センサ96やトラニオン終端位置センサ98の作動に応答して直ちに切換弁94が切り換えられ、また必要なら油流制御弁30を開く制御が行われれば、変速比の急増を阻止することができる。
尚、油流制御弁30を作動させて無段変速機の変速比を減小させるアップシフト制御を行っている最中に油流制御弁30に異物の噛込み等によるスティックが生じ、電磁駆動装置50への通電を切っても弁スプール46が全閉位置まで戻らなくなった場合、無段変速機の油圧室20への油の供給が続けられると、トラニオン12はそれに掛かる図にて下向きの負荷荷重に抗して上昇し、無段変速機が最小変速比に固定された状態となる虞れがある。変速機が最小変速比に固定されると、車輌の再発進ができなくなる虞れはあるが、走行中の発生による危険性はない。この場合には、車輌の再発進に先立って油流制御弁32を適当に開いて油圧室22へ油を供給すると同時に油圧室20より油を逃がしてやれば、一時的に対処することができる。
また、油流制御弁30および32には、電磁駆動装置50または66に係る電気系統の故障または弁座部に於ける異物の噛込み等により、電磁駆動装置50または66に通電を行っても弁スプールに所期の変位が生ぜず、それらの給油取出しポート38または54に所期の圧油が現れないという障害が生ずる恐れもある。
油流制御弁30が開かなければ、アップシフトはできず、トラニオン12には図にて下向きの負荷荷重が掛かることにより、無段変速機は最終的に最大減速比までダウンシフトされることになるが、油流制御弁32が開かない場合には、トラニオン12に図にて下向きに掛かる負荷荷重の作用を利用して油流制御弁30により変速制御を行うことは可能である。
図3は図1に示した実施の形態に於ける切換弁94にこれをバイパスする絞り100を備えたバイパス通路102を設けた実施の形態を示す図1と同様の図である。かかる絞りバイパス通路が設けられていれば、油流制御弁32に開状態のスティックが生じ、切換弁94が閉じられた状態でも、ポート24からは絞り通路を経て油が連続して徐々に抜ける状態が得られるので、開状態にスティックした油流制御弁32よりポート22に油が供給されつつある状態にあっても、油流制御弁30を開いてポート24へ油を補給すると同時にポート26より油を排出する状態と、油流制御弁30を閉じてポート24への油の補給を停止すると同時にポート26よりの油の排出も停止する状態の作動時間比(デューティ比)を制御することにより、ポート24に於ける油圧をトラニオンに作用する負荷荷重を支えるに必要な圧力に保ちつつ、変速比をアップシフト方向またはダウンシフト方向へ変えることができる。
図4は、図1に示した実施の形態に於ける切換弁94に代えて、油流制御弁32に開状態のスティックが生じたとき、油流制御弁32の排出ポート56,58を経るポート24の排油通路を遮断すると共に、別の油圧源より適当な油圧Pmをポート24へ向けて供給することができる切換弁104を設けた実施の形態を示す図1と同様の図である。このようにポート24から油流制御弁32の排出ポート56,58を経る油の排出を阻止したとき、ポート24へ別の圧油源からの油を供給する臨時油供給手段が設けられれば、かかる臨時油供給手段からの油圧によりポート24の油圧を適当に維持し、ポート24に於ける油圧をトラニオンに作用する負荷荷重を支えるに必要な圧力に保ちつつ、変速比をアップシフト方向またはダウンシフト方向へ変えることをより適切に行うことができる。この場合、臨時油供給手段より供給される油圧Pmに対応して変速装置に作用する荷重トルクを制御すれば、このことによってもアップシフトまたはダウンシフトを制御することができる。
図5は図4に示した実施の形態に於ける切換弁104にこれをバイパスする絞り100を備えたバイパス通路102を設けた実施の形態を示す図4と同様の図である。切換弁104による臨時油供給手段が設けられている場合にも、切換弁104に対し絞りバイパス通路が設けられていれば、油流制御弁32に開状態のスティックが生じ、臨時油供給手段が作動されているとき、ポート24からは絞り通路を経て油が連続して徐々に抜ける状態が得られるので、開状態にスティックした油流制御弁32よりポート22に油が供給されつつある状態にあっても、臨時油供給手段によりポート24へ油を補給しつつ油流制御弁30を開いてポート24へ油を補給すると同時にポート22より油を排出する状態と、油流制御弁30を閉じてポート24への油の供給を停止するが、ポート26よりの油の排出も停止する状態のデューティ比を制御することにより、ポート24に於ける油圧をトラニオンに作用する負荷荷重を支えるに必要な圧力に保ちつつ、変速比をアップシフト方向またはダウンシフト方向へ変えることを適当に行うことができる。
図6は、図1に示した実施の形態に於ける切換弁94に代えて、油流制御弁32に開状態のスティックが生じたとき、油流制御弁32の給油ポート52,54を経るポート26の油の供給を阻止することができる切換弁106を油路86の途中に設けた実施の形態を示す図1と同様の図である。このように油流制御弁32に開状態のスティックが生じたとき、その給油ポート52,54を経る油圧アクチュエータ16のポート26への油の供給が阻止されれば、油流制御弁30を制御して油圧アクチュエータ16のポート24へ油圧を供給することにより、油流制御弁32の開状態スティックによりピストン18が下方へ下がり過ぎることを阻止し、また必要ならピストン18を上方へ押し戻すこともできる。これはピストン18にローラ10より駆動トルクによる図にて下向きの力が作用している状態の下に於いても可能である。切換弁106は図中仮想線にて示されている如く油路84の途中に設けられていてもよい。
図7は図6に示した実施の形態に於ける切換弁106にこれをバイパスする絞り108を備えたバイパス通路110を設けた実施の形態を示す図6と同様の図である。かかる絞りバイパス通路が設けられていれば、油流制御弁32に開状態のスティックが生じ、切換弁106が閉じられた状態でも、ポート26へは絞り通路を経て油が連続して徐々に供給されるので、開状態にスティックした油流制御弁32よりポート26に油が供給されつつある状態にあっても、油流制御弁30を開いてポート24へ油を補給すると同時にポート26より油を排出する状態と、油流制御弁30を閉じてポート24への油の補給を停止すると同時にポート26よりの油の排出も停止する状態の作動時間比(デューティ比)を制御することにより、ポート24に於ける油圧をトラニオンに作用する負荷荷重を支えるに必要な圧力に保ちつつ、変速比をアップシフト方向またはダウンシフト方向へ変えることができる。
以上に於いては本発明をいくつかの実施の形態について詳細に説明したが、これらの実施の形態について本発明の範囲内にて種々の変更が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
10…パワーローラ、12…トラニオン、14…偏心軸、16…油圧アクチュエータ、18…ピストン、20,22…油圧室、24,26…ポート、28…圧油源、30,32…油流制御弁、34…排油溜、36…給油取入れポート、38…給油取出しポート、40…排油取入れポート、42…排油取出しポート、44…弁ハウジング、46…弁スプール、48…圧縮コイルばね、50…電磁駆動装置、52…給油取入れポート、54…給油取出しポート、56…排油取入れポート、58…排油取出しポート、60…弁ハウジング、62…弁スプール、64…圧縮コイルばね、66…電磁駆動装置、68〜90…油路、92…制御弁作動制御手段、94…切換弁、96…油圧低下率センサ、98…トラニオン終端位置センサ、100…絞り、102…バイパス通路、104,106…切換弁、108…絞り、110…バイパス通路