JP4677142B2 - 太陽熱で浮上する熱気球 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、気球と飛行船に関する。ここでは、全体として空気よりも軽くて浮上するものを気球といい、推進力を持っている気球を飛行船という。
【0002】
【従来の技術】
かつては、気球又は飛行船の浮上用気体といえば水素であったが、爆発事故が多発したことから、現在はヘリウムを浮上用気体とすることが絶対条件となっている。ヘリウムは国内生産ができず、非常に高価なため、非常時に全量放出の操作を行うとその飛行船の運用会社は倒産すると言われている。現在の浮上用気体の唯一の例外(ヘリウム以外を用いること)は、プロパンガス等を燃やして空気を直接に加熱して飛ぶ熱気球および熱飛行船であるが、加熱燃料がなくなると急速に浮力を失うために航続距離が比較的短く、レジャ−やスポ−ツ用に限られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明では、より安価に浮上用気体が得られる気球又は飛行船を提案する。
【0004】
【課題を解決するための手段と作用】
一般に、気球等(飛行船を含む)の重さは表面積に比例するのに対し、浮力は体積に比例するので、気球等を大型化することによって重さを上回る浮力が得られやすくなる。また、周知のように太陽光線は物を加熱する熱線成分を持っており、この熱線成分の単位面積あたりのエネルギーは微弱であっても、受光面積が大きくなると膨大なエネルギーが得られることが知られている。
本発明者の研究によって、両事象と温室効果を組合せて用いると、太陽熱によってバルーン内気体を加熱して浮上する熱気球が実現できることが確認された。例えば半径64mの球体の空気バル−ンを想定すると、表面積は5万1千平米、体積は108万立米となり、複数枚の膜をあわせた単位重量を平米あたり900gとすると、バルーン内気温を外気温より平均で15℃高めるだけで3tをこえる実効浮力(気球の自重を除外した搭載重量)が得られる事がわかる。一方この球体の受光面積は単純に円で計算すると1万3千平米であり、平米あたり0.4KW毎秒の直接日射を受けると全体で5.1GWの熱量が流入する。熱伝導率を0.005KW毎秒とし、バルーン内外の温度差を15℃とした場合の全体の流失熱量は3.8GWとなる。即ち、熱的平衡するバルーン内外の温度差は15℃以上であり、3t以上の実効浮力が得られる事がわかる。ちなみに熱輻射による流出はバルーンの膜により抑制されるので、むしろ全天空輻射による流入より小さい。これを考えると、さらに大きなバルーン内外の温度差が得られることが確認される。なお、上記の数字は相当の安全率を持って採用されており、容易に実現可能な実際的な数値である。
従ってバルーンの断熱性を向上させてバルーンを大型化すると、自重を上回る浮力が得られる温度差以上にバルーン内空気を太陽熱によって加熱することができる。最も安価な空気と太陽熱によって浮上する熱気球が得られるのである。
【0005】
本発明に係る熱気球は、バルーンを2重以上の膜で構成し、外側膜を透明又は半透明膜とし、内側膜を熱線吸収膜とし、温室効果によってバルーン内気体を加熱して浮上する熱気球であって、内側膜の内側空間に水を散布する手段が設けられていることを特徴とする。なおこの熱気球に推進力を持たせることが可能であり、ここでいう熱気球は推進力を持たない気球に限られるものでない。バルーン内気体には空気が使用できるが、空気に限られず、例えば水蒸気等の加熱されると空気よりも軽くなる種々の気体を使用することができる。
この熱気球は、大型化することによって、自重を上回る浮力が得られるバルーン内温度以上にバルーン内気体を太陽熱によって加熱することができ、太陽熱で浮上する。
水蒸気は乾燥空気の6割程度の重さなので、加熱された内側膜の内側空間に水を散布して蒸発させると、さらに浮力を増大させる事ができる。太陽熱が得られない夜間に浮力が不足する場合、内側膜の内側空間に水を散布すると、気温が低下して浮力が減少する効果以上に水蒸気による浮力増大効果が得られる。
また飛行高度が上昇すると外部の気温と気圧が低下し、空気密度も低下するが、直達日射量は増大し、気体の体積あたりの熱容量は小さくなり、断熱性も向上するので、より大きな内外温度差を得ることができ、気圧の低下に伴なって浮上空気に占める水蒸気の分圧が増大し、より大きな効果が得られる。
【0006】
上記の太陽熱気球の場合、内側膜の上部と下部に弁をとりつけて内側膜の内側気体の対流を制御することによって浮力を調節することができる。
対流を活発にして内側膜の内側空間の温度分布を均質化することで大きな浮力が得られる。
【0007】
太陽熱気球の場合、内側膜の頂部近傍を透明または半透明膜とし、残部を熱線吸収膜とすることによって内側膜の内側気体の対流を促進することが好ましい。
この場合、気球の上部から照射する太陽光は、頂部近傍の透明または半透明膜から内側膜の内側空間に入り込み、内側から熱線吸収膜を加熱する。この結果、内側膜の内側空間の下方部が選択的に加熱され、内側膜の内側気体が活発に対流し、内側膜の内側空間の温度分布を均質化し、大きな浮力が実現される。
【0008】
多層膜を持つ太陽熱気球の場合、膜間空間に居住区や貨物室を配置することが好ましい。
通常の気球又は飛行船の場合、ゴンドラを懸架して居住区や貨物室を確保する。この場合、ゴンドラ周辺部分に応力集中がおきやすく、これがゴンドラの大型化を妨げている。膜間空間に居住区や貨物室を配置すると、過大な応力集中を回避しながら、大きな居住区や貨物室を確保することができる。
【0010】
バルーンを2重以上の膜で構成する熱気球は、膜間空間に不活性ガスを高圧に封入し、内側膜の内側空間に空気よりも軽い可燃性ガスを低圧に封入した可燃性ガス搬送用の気球として活用することができる。
膜間空間に封入する不活性ガスには、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが適している。内側膜の内側空間には、天然ガスやメタンや水素などの空気よりも軽い可燃性ガスを封入することができる。これにより、例えば日本から天然ガスの産出地までは太陽熱気球として航行し、天然ガスの産出地から日本までは、天然ガスを詰めたエアタンカ−として航行するといった運用が可能となる。
外側に不活性ガスを高圧に充填しておけば、可燃性ガス大気に漏洩することが無く、安全に航行することが可能となる。
【0011】
機体が大型すると、気球に運動能力を与える動力ユニットも大型となる。大型の動力ユニットをバルーンに取付けると過大な応力集中が発生する。これが軟質飛行船の大型化を妨げている。
そこで、バルーンに動力ユニットを取付けて推進力が得られるようにする場合、外側膜の外側の複数箇所に動力ユニットを分散配置することが好ましい。過大な応力集中を回避しながら、必要な推進力を得ることが可能となる。
【0012】
動力ユニットのそれぞれが、プロペラとプロペラ駆動モータとモータ用電源と無線通信装置とコンピュータを持っており、中央コンピュータが無線によって各動力ユニットを制御することが好ましい。
この場合、船体に動力ケーブルと信号ケーブルを張り渡す必要がなく、船体の軽量化がはかられる。
【0013】
動力ユニットの廃熱で浮上用気体を加熱することが極めて望ましい。
【0014】
従来の飛行船は空気より重い燃料(主にガソリン)を使用していたために、長時間飛行して燃料を消費すると、全体として軽くなり過ぎる。そこで着陸時に浮力を削減するために最悪の場合は貴重なヘリウムをすてなければならなかった。なお機体に太陽熱が加わってヘリウムが膨張する場合も同じ問題が起こり、太陽熱は飛行船の運行を難しくする要因となっていた。
そこで、空気より重い燃料と空気より軽い燃料を持ち、前者を消費して浮力を上昇させ、後者を消費して浮力を減じることが好ましい。
例えば、燃料電池は、空気より重い燃料(例えばガソリン)と、空気より軽い燃料(例えばメタン)を燃料として電力を発生する。そこで、浮力が不足するときにはガソリンから電力を得、浮力が大きすぎるときにはメタンから電力を得る。
あるいは、空気より重いプロパンと、空気より軽いメタンを使い分けることによって、浮力を調整することができる。プロパンを燃料とすればバラストを捨てるのと同じ効果が得られる。徐々に下降したい場合にはメタンを燃料として浮力を減ずる。
【0015】
推進力を得るためのモータ用電源には、太陽電池が適している。この場合、内側膜に太陽電池が蒸着されていることが好ましい。
太陽電池が内側膜外面に蒸着されているか、あるいは太陽電池が蒸着されている電池膜を利用して内側膜を形成すると荷重は大幅に低減する。太陽電池の変換効率は10数パ−セントが限界であり、あとは熱に変わるので、太陽電池を内側膜に取付けることで太陽電池を熱源として有効利用することができる。また外側膜で太陽電池を保護することが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
巨大な船体を広告媒体として活用することは良く行われているが、図9に示すように、バルーン内部にリアプロジェクタ−20を仕込み、船体膜面の全方位に映像を提供することでイベントの目玉にすることが可能である。
【0017】
長さ280mで最大直径70m程度の本発明の膜構成を持つ回転楕円体形状の気球に飽和水蒸気を封入し、内側膜の内側空間と膜間空間とも約14分の1気圧とし、バルーン内外の気温差を80度以上に保って気温マイナス60度の成層圏に浮かべると、単位膜重量が400グラムとしても20トン程度の実効浮力が得られるので、無人で地上観測や無線中継基地とすることができる。(成層圏プラットフォ−ム)。
【0018】
水蒸気で浮上する方式をヘリウムと併用することができる。水蒸気を併用すると、ヘリウム気球の高度が低下しても、水とエネルギ−は外気と雲と太陽から調達可能なので、水蒸気を利用して高度低下を防ぐことができる。ヘリウム飛行船で成層圏プラットフォ−ムを実現する場合に、長期に運用すると主として温度変化の影響によってヘリウムが失われて高度を失っていくという問題が懸念されているが、水蒸気によって浮力を確保する技術を併用すると、気球の有効浮遊期間を大幅に伸ばすことができる。
【0019】
水蒸気を浮上用気体とする、長さ21mで最大直径7m程度の回転楕円体形状の気球に100度近い飽和水蒸気を封入すると、200キログラム以上の浮力が得られるので、2名程度の乗員を載せて浮上することが可能となる。この気球は高度を獲得するとともに温度低下に伴ない内部の圧力を急速に失うので、残った内圧と風圧で翼形状を形成しバラグライダ−のように滑空して下降することが可能となる。これはある程度の断熱性が確保できれば単層膜でも可能となる。
【0020】
昼間の余った熱や電気を蓄熱もしくは蓄電しておいて夜間に備える。気球に積載している水を電気分解して水素を得ることもできる。得られた水素は圧縮ないし吸蔵しておくよって浮力に影響しないようにできる。夜間は、蓄熱もしくは蓄電したエネルギを利用して浮上用気体を加熱して高度の低下を防ぐ。あるいは、昼間に電気分解して得た高圧の水素を気球内に放出して高度を上げる。
【0021】
通常のヘリウム飛行船でも下部にバロネットと呼ばれるバラスト調整用の空気室を持っており、大型化すればここに居住空間を設けることは可能である。
また推進器など荷重の分散化はヘリウム式軟式飛行船でも大型化にともなって有効な技術である。
【0022】
この発明は特許請求の範囲に記載した気球以外に、次ぎの各種気球に具現化することができる。
(形態1) 膜間空間に居住区や貨物室を配置した多重膜の気球。この多重膜気球は太陽熱で浮上する気球であってもよいし、バルーン内気体の比重が元々空気よりも軽いために浮上する気球であってもよい。膜間空間に居住区や貨物室を配置することによって、居住区や貨物室や気球の大型化が可能となる。
(形態2) バルーン外側の複数箇所に動力ユニットを分散配置した推進力を持つ気球。この気球は、多重膜気球に限られず、単膜気球であってもよい。また、太陽熱で浮上する気球であってもよいし、バルーン内気体の比重が元々空気よりも軽いために浮上する気球であってもよい。動力ユニットを分散配置することによって推進力を持つ軟質気球の大型化が可能となる。
(形態3) 複数の動力ユニットを分散配置する場合、動力ユニットのそれぞれが無線通信装置とコンピュータを持ち、中央コンピュータが無線によって各動力ユニットを制御することが好ましい。この気球もまた、多重膜気球に限られず、単膜気球であってよい。また、太陽熱で浮上する気球であってもよいし、バルーン内気体の比重が元々空気よりも軽いために浮上する気球であってもよい。分散配置された複数の動力ユニットが無線で制御されるために、複雑な配線が不要となり、気球の大型化が可能となる。
(形態4) 動力ユニットの廃熱で浮上用気体を加熱する気球。この気球もまた多重膜気球に限られず、単膜気球であってよい。また、太陽熱で浮上する気球であってもよいし、バルーン内気体の比重が元々空気よりも軽いために浮上する気球であってもよい。動力ユニットの廃熱で浮上用気体を加熱して浮力を補助する気球はいまだ存在しない。
(形態5) 空気より重い燃料と空気より軽い燃料を持ち、前者を消費して浮力を上昇させ、後者を消費して浮力を減じる飛行船。この気球もまた多重膜飛行船に限られず、単膜飛行船であってよい。また、太陽熱で浮上する飛行船であってもよいし、バルーン内気体の比重が元々空気よりも軽いために浮上する飛行船であってもよい。空気より重い燃料と空気より軽い燃料を使い分けて浮力を調整する飛行船はいまだ存在しない。
(形態6) バルーンを2重以上の膜で構成し、外側膜を透明又は半透明膜とし、内側膜を熱線吸収膜とし、温室効果によってバルーン内水蒸気を加熱して浮上する熱気球。
(形態7) 水蒸気を主成分とする浮上気体を封入して浮上し、高度を獲得した後に水蒸気が液化して浮力を失ったときに、残った内圧と風圧および索引力で気球自体をパラグライダ−状の翼形状として滑空して降下する気球。
この気球も多重膜飛行船に限らず単膜気球であってもよいし、太陽熱を利用しなくてもよい。水蒸気を主成分とする浮上気体を封入して浮上し、浮力を失ったときに、残った内圧と風圧および索引力で気球自体をパラグライダ−状の翼形状として滑空して降下する気球はいまだ存在しない。
(形態8)バル−ン内部にプロジェクタ−を設置し、膜面を映写面として利用する気球。
この気球もまた多重膜気球に限らず、単膜気球であってもよい。また太陽熱で浮上する気球であってもよいし、バル−ン内気体の比重が元々空気よりも軽いために浮上する気球であってもよい。バル−ン内部にプロジェクタ−を設置し、膜面を映写面として利用する気球はいまだ存在しない。
【0023】
【発明の実施例】
図1に、本発明を具現化した実施例の一例を示す。図1において参照符号1は外側膜を示し、透明又は半透明膜で形成されている。2は内側膜を示し、熱線吸収膜で形成されている。3は、外側膜1と内側膜2で形成される膜間空間を複数区画に仕切る仕切り膜を示し、外側膜1と内側膜2間の間隔を維持する機能を持つ。またこの仕切り膜は対流を抑制するとともに、内圧に対抗する引っ張り応力を分担する機能を持つ。4は外側膜1の上部に設けられた空気弁、5は内側膜2上部に設けられた空気弁、6は仕切り膜3に設けられた空気弁、7は内側膜2下部に設けられた空気弁、8は外側膜1の下部に設けられた空気弁を示す。11は内側膜2の頂部近傍に設けられた透過膜を示し、内側膜2は頂部近傍では透明又は半透明膜で形成され、残部では熱線吸収膜で形成されている。10は居室又は貨物室であり、外側膜1と内側膜2で形成される膜間空間に形成されており、地上と同じ気圧と気温に維持される。
図中の9は排気管を示し、太陽光線で内側膜2の内側空気が暖められて熱膨張したときに、下部の冷たい空気を排気菅9を通してバルーン外に排出する。
図2に示す太陽熱気球の実施例は、地球の10万分の1のスケールであり、半径64mであり、太陽光に曝されると、バルーンの内部気温が外気温よりも15℃以上上昇し、浮上する。
【0024】
太陽光線は熱線吸収膜で形成されている内側膜2を照射するによって内側膜2を加熱し、その内外の空気を暖める。バルーン内の空気の全体を効率的に加熱したい場合は、内側膜2の上部空気弁5と仕切り膜3に設けられた空気弁6と内側膜2の下部空気弁7を開く。すると、図4に示すような対流が生じ、内側膜2の内側空間の温度分布が均質化する。温度と高度を下げたい場合は、図5に示すように、外側膜の上部空気弁4を開いて高温の空気を外に逃がすとともに、外側膜の下部空気弁8から低温の外気を取り込む。急速に温度と高度を下げたい場合は、図5に示すように、全部の空気弁4,5,6,7,8を開いて、高温の空気をバルーン外に逃がして低温の外気をバルーンに取り込む。
【0025】
内側膜2の頂部近傍を透明又は半透明膜11で形成し、残部を熱線吸収膜21で形成しておくと(図6参照)、頂部近傍の透明又は半透明膜に入射した太陽光線は内側膜2の内側空間に入り込み、日影側下部の熱線吸収膜21を照射し、内側膜2の内側空間の下側を効率的に暖める。この結果、内側膜2の内側空間に活発な対流が生じ、内側膜2の内側空間の温度分布が均質化する。
夜間は基本的にすべての空気弁を閉じ、対流を抑制し、気密性を上げることで、高度を維持する。
【0026】
夜間等において、大きな浮力を得たい場合には、図7に示すように、スプリンクラ−23などから水22(通常の飛行船はバラスト用に水を搭載している)を内側膜2の内側空間に散布する。散布された水は、加熱された空気に曝されて気化して水蒸気となる。水蒸気は乾燥した空気の6割程度の重さなのでさらに浮力を増大させる事ができる。
上記の操作を日中に実行すると、大きな浮力が得られ、太陽熱を潜熱化することで一時的に気温を下げて熱の流出を防ぐことができ、さらに夜間の温度低下を最小限に押さえることができる(夜間に水蒸気が凝固するときに潜熱が放出される)。
【0027】
この熱気球の場合、膜間空間には空気が存在するために、膜間空間の下側に居住区間や貨物空間を確保することができる。通路などの固い床が必要とされる部分にのみ床を配置し、あとは柔らかい膜で床と壁を形成すれば全体の軽量化に大きく寄与する。また、ゴンドラ部分を少なくすることでゴンドラ周辺部分の膜面の応力集中を無くし、その分構造を軽量化できる。また突起物がなくなることで空気抵抗が少なくなり、飛行船全体の運動性能の向上に役立つ。
なによりも透明な床を通して広がる地上のパノラマは搭乗者に空中浮遊感をもたらし、飛行機と全く違う飛行船の魅力を引き出せる。操縦もテレビカメラによる画像を最大限活用するが、どうしても直接の前方視界が必要となる場合は、爆撃機の銃座のように最小限のキャノピ−14(図7参照)を船体前部に突出させる。
この技術を使った飛行船はヘリウム型にくらべて気積容量が大きくかつ柔構造でないと成立しないが、従来の柔構造飛行船は固いゴンドラ部分に客室と駆動装置を集中配置させる必要があったためにゴンドラ周辺部とカテナリ−ワイヤ周辺に応力集中がおき、ある程度以上の大型化が困難とされてきた。本発明では固くて重いゴンドラを廃するために、必要なだけ大型化することができる。
【0028】
本実施例の太陽熱気球のすべての空気弁を閉じると、完全な多重膜構造を備えた気球にすることができる。この場合、外側の膜間空間に窒素やアルゴンやヘリウムなどの不活性ガスをやや高圧に充填し、内側膜の内側空間に天然ガスやメタンや水素などの可燃性で空気より軽い気体をやや低圧に充填することができる。この場合、高圧の不活性ガスによって可燃性ガスが大気に漏洩することが防止でき、安全に航行することが可能となる。このように用いる場合、太陽熱から浮力を得るのでなく、内側膜の内側空間に充填された空気より軽い気体による浮力で浮上する気球となる。
この気球は、日本から天然ガスの産出地までは太陽熱飛行船として航行し、天然ガスの産出地から日本までは、天然ガスを詰めたエアタンカ−として航行するといった運用が可能となる。
【0029】
この気球は全長200メ−トル以上と大型であり、推進力を得るための動力ユニットを搭載して自力で航行する飛行船とすることができる。大型の動力ユニットを軟質のバルーンに固定することは難しい。そこで、この実施例では、図8に示す小型の動力ユニットを外側膜1の外側の複数箇所に分散配置した。
図8において、12は小型の動力ユニットを示し、チルトプロペラとチルトプロペラを駆動するモ−タ−、2軸制御のサ−ボモ−タとモータ用電源(太陽電池)13と無線通信装置とコンピュータを持ち、その運転は、中央コンピュータ24から発信される無線25によって制御される。飛行船は動力ユニット12以外にも方向舵や昇降舵を持ち、これらも、中央コンピュータ24から無線25によって制御される。
この動力ユニット12は、図1と図3と図6に示されるように、外側膜1の外側の複数箇所に分散配置されている。なお動力ユニット12は数十キロ程度の重さになるので、図8に示すように、外側膜1を気密性を保ちつつ貫通し、外側膜1と内側膜2の両者に固定され、推力を有効に船体に伝えるとともに、外側膜1と内側膜2の二重膜を補強することにも貢献している。なお、太陽電池13は内側膜2の外面に蒸着することによって荷重を低減する。あるいは、太陽電池を蒸着した電池膜を利用して内側膜2を形成しても良い。太陽電池の変換効率は10数パ−セントが限界であとは熱に変わるので、太陽電池13を内側膜2に直接取付けることで太陽電池13を熱源として有効に利用することができ、また、外側膜1で太陽電池13を保護することが可能となる。
【0030】
太陽電池と併用するもの又は太陽電池に代るものとして、燃料電池を用いることができる。燃料電池と改質機は現在乗用車への搭載をはかるために軽量化と高効率化が進められているが、各動力ユニット12に個別に取付けるのは非効率的なので船体中央部重心付近の膜を補強してこれらをとりつける。この場合、図6と7に示すように、燃料改質機15と燃料電池16の上部に、膜で形成された燃料用プロパン用の貯蔵バック(空気よりも重い燃料用バック)17と、膜で形成された燃料用メタン用の貯蔵バック(空気よりも軽い燃料用バック)18を取付ける。
従来の飛行船は空気より重い燃料(主にガソリン)を使用するために、長時間飛行すると決定的に空気より軽くなり、係留に支障を来たしたり、貴重なヘリウムをすてたりしなければならなかった。
図6と7の飛行船の場合、浮力がほしい場合はプロパンを燃料とすることでバラストを捨てるのと同じ効果が得られる。また徐々に下降したい場合はメタンを燃料とすることで浮力を減ずることができる。プロパンの替りにガソリンなどの液体燃料でも同様の効果が得られる。
また改質機15および燃料電池16の廃熱は浮上気体の加熱に有効利用される他、どうしても熱量が不足する場合は通常の熱気球同様に、プロパンなどをバ−ナ−で燃焼させて浮力を維持することも可能である。なお、図中の14はコックピットである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 飛行船の機構を示す断面投影図である。
【図2】 気球型の側面図である。
【図3】 飛行船型の側面図である。
【図4】 加熱時の空気の流れを示す断面図である。
【図5】 放熱時の空気の流れを示す断面図である。
【図6】 燃料タンクと燃料電池を示す断面図である。
【図7】 飛行船全体の横断面図である。
【図8】 推進制御ユニットの集中制御を表す投影図である。
【図9】 気球内部にプロジェクタを取り付けた構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1:外側膜
2:内側膜
3:仕切り膜
4:外側膜上部空気弁
5:内側膜上部空気弁
6:仕切り膜空気弁
7:内側膜下部空気弁
8:外側膜下部空気弁
9:排気管
10:居室、貨物室
11:頂部透過膜
12:動力ユニット
13:太陽電池
14:コックピット
15:燃料改質機
16:燃料電池
17:空気よりも重い燃料用バック
18:空気よりも軽い燃料用バック
19:カテナリ−ワイヤ−
20:プロジェクタ
21:熱線吸収膜
22:バラスト水
23:スプリンクラ−
24:集中制御コンピュ−タ
25:電波
Claims (9)
- バルーンを2重以上の膜で構成し、外側膜を透明又は半透明膜とし、内側膜を熱線吸収膜とし、温室効果によってバルーン内気体を加熱して浮上する熱気球であって、内側膜の内側空間に水を散布する手段を設けた熱気球。
- 内側膜の上部と下部に弁をとりつけ、内側膜の内側気体の対流を制御することによって浮力を調節する請求項1に記載の熱気球。
- 内側膜の頂部近傍を透明または半透明膜とし、残部を熱線吸収膜とすることによって内側膜の内側気体の対流を促進する請求項1に記載の熱気球。
- 膜間空間に居住区や貨物室を配置した請求項1に記載の熱気球。
- 外側膜の外側の複数箇所に動力ユニットを分散配置した請求項1から4のいずれか一項に記載の熱気球。
- 動力ユニットのそれぞれが、プロペラとプロペラ駆動モータとモータ用電源と無線通信装置とコンピュータを持ち、中央コンピュータが無線によって各動力ユニットを制御する請求項5に記載の熱気球。
- 動力ユニットの廃熱で浮上用気体を加熱する請求項5又は6に記載の熱気球。
- 空気より重い燃料と空気より軽い燃料を持ち、前者を消費して浮力を上昇させ、後者を消費して浮力を減じる請求項5から7のいずれか一項に記載の熱気球。
- 内側膜に太陽電池が蒸着されている請求項5から8のいずれか一項に記載の熱気球。
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