JP4686105B2 - 耐熱性セパレータ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性及び耐収縮性に優れたコイン電池用セパレータ及びその製造方法に関し、特に、高温になってもセパレータの形状を保持して溶融破断(メルトダウン)のような爆発的暴走を防止する、安全性に優れたコイン電池用セパレータ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリオレフィン、特にポリプロピレンのメルトブロー不織布が、その特性を生かし、各種の分離膜や、電池用セパレータ、電解コンデンサー用セパレータ、キャパシター用セパレータ、ポリマー電池セパレータ等に使用されている。特にリチウム電池(一次、二次)においては、有機溶媒に不溶で電解質や電極活物質に安定なセパレータとして多用されている。
【0003】
一般に、電池内部および外部で短絡が起きた場合、大電流が放電され、それによりジュール熱や化学反応熱により、対向する正及び負極電極間のセパレータが熱収縮するかセパレータが熱溶融して、正負電極が直接ショートする結果、内部ショートが拡大し、多量の熱を周囲に放出し、多量のガスが噴出するという問題があった。従来用いられてきているポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン不織布によるセパレータは、ポリエチレンの融点が125〜140℃程度であり、ポリプロピレンの融点が160〜180℃程度であるため、高温での長時間使用においては、セパレータの溶解による短絡がおこりやすかった。このような問題点を解決するためには、イオンが通らなくすることによって電流を遮断する機能であるシャットダウン機能や、セパレータ自身が収縮したり、溶融しない機能を有することが望まれていた。
【0004】
さらに、今後、自動車に取り付けが法制化されてきている自動車タイヤの空気圧を自動車の走行中にも測定管理できるように構成されたタイヤ空気圧監視システム用電源は、走行中における回転するタイヤ内での高温の付加という過酷な雰囲気下で使用されるため、そこに用いられる基板実装のコイン型電池においては、特に、耐熱性が要求されるようになってきている。
【0005】
このような問題点を解決するセパレータとして、耐熱性樹脂であるポリフェニレンスルフィド樹脂製のメルトブロー不織布が用いられてきているが、ポリフェニレンスルフィド樹脂のメルトブロー不織布は、100℃以上の温度で収縮する割合が大きく、ポリフェニレンスルフィド樹脂のメルトブロー不織布をそのままセパレータとして使用した場合、樹脂融点よりもかなり低温において、セパレータの収縮が起こり、電極がショートする等、耐熱電池としての機能を果たさない場合があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、かかる従来技術の背景に鑑み、セパレータの薄膜化に十分対応できる上に、耐熱性及び耐収縮性に優れた、ポリフェニレンスルフィド樹脂のメルトブロー不織布を用いたコイン電池用セパレータ及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題を解決するために、鋭意研究の結果、特定物性を有するポリフェニレンスルフィド製メルトブロー不織布を特定条件でアニール処理することにより、薄膜化、耐熱性、耐破れ性、耐収縮性に優れたコイン電池用耐熱性セパレータが得られることを見出し、発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、繊維径が3.0〜8.0μm、目付が20〜70g/m2、通気度が20〜100cc/cm2/sec、厚みが100〜500μmのポリフェニレンスルフィドのメルトブロー不織布からの耐熱性セパレータであって、加熱したロール間を加圧せずに沿わせて130〜200℃でのアニール処理により180℃における寸法変化が5%未満であることを特徴とする耐熱性セパレータが提供される。
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、繊維径が3.0〜8.0μm、目付が20〜70g/m2、通気度が20〜100cc/cm2/sec、厚みが100〜500μmのポリフェニレンスルフィドのメルトブロー不織布を、加熱したロール間を加圧せずに沿わせて130〜200℃でアニール処理することを特徴とする第1の発明に係る耐熱性セパレータの製造方法が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、ポリフェニレンスルフィド製メルトブロー不織布をアニール処理することにより寸法安定性を付与したセパレータであり、耐熱性、耐破れ性、耐収縮性に優れ、高温になってもセパレータの形状を保持して溶融破断(メルトダウン)のような爆発的暴走を防止する、安全性に優れたセパレータである。以下に詳細を説明する。
【0011】
(1)ポリフェニレンスルフィド
本発明において用いるポリフェニレンスルフィドは、耐熱性、耐薬品性に優れた樹脂で、構成単位の90モル%以上が[C6H4S]で構成される重合体であり、特に、溶融粘度(V6)が200〜500ポイズのポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すことがある。)が好ましい。
【0012】
なお、上記ポリフェニレンスルフィドには、必要に応じて、着色剤、無機フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常使用されている添加剤を混合使用することができ、さらに、ポリオレフィン、熱可塑性エラストマー等の樹脂を本発明の機能を阻害しない範囲で加えることができる。
【0013】
(2)ポリフェニレンスルフィドのメルトブロー不織布
本発明のセパレータに用いるポリフェニレンスルフィドの不織布は、メルトブロー法により得られるメルトブロー不織布である。このメルトブロー法は、公知の方法を採用することができる。例えば、溶融したポリフェニレンスルフィドを、一列に配列した複数のノズル孔から溶融ポリマーとして吐出し、オリフィスダイに隣接して設備した噴射ガス口から高温高速空気を噴射せしめて、吐出された溶融ポリマーを細繊維化し、次いで、繊維流をコレクタであるコンベヤネット上等に捕集して不織布を製造する方法である。ポリフェニレンスルフィドは、融点が比較的高く、分解温度が融点に近いことから、メルトブロー条件には注意が必要である。本発明においては、特に、次のメルトブロー法の条件で製造したメルトブロー不織布が好ましい。
【0014】
メルトブロー装置ダイにおいて、ノズル孔径は、0.2〜0.8mmφが好ましく、ノズル個数は、5〜15個/cmであるのが好ましい。ノズル孔径が上記範囲未満では吐出樹脂圧力が高くなり、上記範囲を超えると繊維を細くすることができない。また、ノズル個数が上記範囲未満では、PPS樹脂吐出圧力が高くなり、上記範囲を超えると繊維同士が融着しすぎて、不織布の均一性を失うことになる。
【0015】
また、メルトブロー法の製造条件において、PPS樹脂の押出温度は、280〜360℃が好ましく、樹脂吐出量は、0.2〜3g/min/holeが好ましく、高速空気温度は、280〜360℃が好ましい。樹脂の押出温度が低すぎると、吐出樹脂圧力が低くなり、高すぎると樹脂の劣化が促進される。樹脂吐出量が低すぎると吐出樹脂圧力が低くなり、均一な不織布が得られず、樹脂吐出量が高いと細い繊維が得られない。高速空気温度が低すぎると細い繊維が得られず、高いと連続繊維が得られずに、切れてコンベヤネットに捕集することが困難になる。
【0016】
本発明のポリフェニレンスルフィド製のセパレータに用いる上記のメルトブロー法によって得られたポリフェニレンスルフィドのメルトブロー不織布は、次の物性を有していることが好ましい。
【0017】
(i)繊維径
本発明で用いるメルトブロー不織布の繊維径は、3.0〜8.0μmであり、好ましくは4.0〜8.0μmである。平均繊維径が3.0μm未満では、電池の内部抵抗が大きくなりすぎ、8.0μmを超えると内部短絡の危険性が高まる。
【0018】
(ii)目付
本発明で用いるメルトブロー不織布の平均目付は、20〜70g/m2であり、好ましくは25〜55g/m2である。目付が20g/m2未満では、セパレータ強度が不足し、アセンブリでの信頼性が低下したり、ショートが起こりやすいため好ましくない。一方、目付が70g/m2を超えると、電池の内部抵抗が上昇する。
【0019】
(iii)通気度
本発明で用いるメルトブロー不織布の平均通気度は、10〜200cc/cm2/secであり、好ましくは20〜100cc/cm2/secである。通気度が10cc/cm2/sec未満では電池の内部抵抗が高くなり、200cc/cm2/secを超えると内部短絡の危険性が高まる。
【0020】
(iv)厚み
本発明で用いるメルトブロー不織布の厚みは、100〜500μmであり、好ましくは120〜300μmである。厚みが100μm未満であると電解液保持能力が低下し、500μmを超えると不織布強度が得られない。
【0021】
(v)引張強度
本発明で用いるメルトブロー不織布の引張強度は、10N/50mm以上であり、好ましくは15〜70N/50mmである。引張強度が10N/50mm未満であればアセンブリでの信頼性が低下する。
【0022】
(vi)引張伸度
本発明で用いるメルトブロー不織布の引張伸度は、5%以上であり、好ましくは5〜80%である。引張伸度が5%未満では、アセンブリでの信頼性が低下する。
【0023】
(3)不織布のアニール処理
本発明の耐熱性セパレータは、上記のメルトブロー法によって得られたポリフェニレンスルフィドのメルトブロー不織布をアニール処理する必要がある。メルトブロー法により製造されるポリフェニレンスルフィド樹脂の不織布は、非晶質状態で極細繊維化されるため、加熱により収縮が起きやすい。したがって、アニール処理することにより、セパレータとして用いる際に、寸法安定性、耐破れ性が付与されるという効果があり、特に、耐熱性、耐収縮性に優れたセパレータとすることができる。
【0024】
本発明におけるアニール処理は、メルトブロー不織布を成形後、または耐熱セパレータ用の加工前に、30秒〜5分間、130〜200℃、好ましくは140〜180℃で行う。具体的な方法としては、メルトブロー不織布を所定の温度に加熱した2対のロール間を加圧せずに沿わせて加温処理する方法、メルトブロー不織布の両端をピンテンターで挟み所定温度に維持したオーブン中で加温処理する方法等が挙げられる。
アニール温度が、130℃未満であると、不織布がアニーリングにより結晶化されず、180℃で熱収縮が起きる。200℃を超えると、激しい伸度低下が起こる。
【0025】
(4)アニール処理後の物性
本発明のポリフェニレンスルフィドのメルトブロー不織布は、その寸法変化が、180℃における寸法変化試験において、5%未満であり、好ましくは3%未満である。なお、ここで、寸法変化試験とは、180℃オーブン中で5分間加熱したときの、MD方向とCD方向の長さの変化率を表す。
【0026】
(5)セパレータ
上記のアニール処理ポリフェニレンスルフィドのメルトブロー不織布は、熱収縮率が小さく、耐熱性であるため、コイン電池用セパレータに用いることができる。特に、高温になってもセパレータの形状を保持して、溶融破断(メルトダウン)のような爆発的熱暴走を防止する安全性に優れた電池セパレータとして用いることができる。
【0027】
また、本発明のセパレータは、その目的に応じて、グラフト重合やプラズマ処理、コロナ処理、界面活性剤塗布等により不織布表面の親液性を向上させて用いることができる。
【0028】
【実施例】
本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性値は、下記の方法で測定した。
【0029】
(1)繊維径:試験片の任意な5箇所を電子顕微鏡で5枚の写真撮影を行い、1枚の写真につき20本の繊維の直径を測定し、これら5枚の写真について行い、合計100本の繊維径を平均して求めた。
(2)目付:試料長さ方向より、100×100mmの試験片を採取し、水分平衡状態の重さを測定し、1m2当たりに換算して求めた。
(3)厚み:試料長さ方向より、100×100mmの試験片を採取し、ダイヤルシックネスゲージで測定した。
(4)通気度:試料長さ方向より、100×100mmの試験片を採取し、JIS L 1096に準拠し、フラジール型試験機を用いて測定した。
(5)最大孔径:ASTM E−128に準拠し、常盤製作所製ポアーサイズ試験機を用いて測定した。試験容器に試料を設置し、その上側にエタノールを満たし、下側より0.4kg/cm2Gの空気圧を与え、エタノール中に気泡の発生する圧力を求め、予め標準試料で求めた検量線から孔径に換算した。
(6)引張強度、引張伸度:JIS L 1085に準拠して測定した。つかみ間隔は10cm、引っ張り速度は30cm/分とした。
(7)MD寸法変化、CD寸法変化:20cm角の不織布試料の中心及び端にMD、CD角方向に約10cmの線を引き、180℃に設定したオーブンで5分間加熱後、線長を測定し、その維持率を求めた。維持率は、100%の場合は、熱収縮が起きていないことを表す。
(8)電解液吸液速度:PC(プロピレンカーボネート)とDME(1,2−ジメトキシエタン)とを重量比1:1で混合した溶液を入れた水槽上に所定の高さの水平棒を設置し、その水平棒に試験片(20mm×200mm)をピン止めし、次いで、水平棒を降下させて試料片の端を5mmだけ上記混合液に浸漬させ、この浸漬後30分間において毛細現象により上記混合液が上昇した高さ(mm)を測定し、その測定値を電解液の吸液速度とした。
【0030】
実施例1
PPS(トープレン製TR−03P、溶融粘度300ポイズ)を押出温度310℃にてメルトブローし、平均繊維径5.23μm、目付29.6g/m2、厚み183μm、通気度33.5cc/cm2/sec、最大孔径39.4μm、引張強度24N/50mm、引張伸度15%のポリフェニレンスルフィドのメルトブロー不織布を得た。得られた不織布を170℃でアニール処理してセパレータを得た。アニール処理は、不織布の四隅を固定し、170℃に設定したオーブン中で1分間加熱して行った。アニール処理をして得られたセパレータは、目付29.6g/m2、厚み143μm、通気度37.2cc/cm2/sec、最大孔径37.8μm、引張強度25N/50mm、引張伸度3%であった。また、MD寸法変化及びCD寸法変化は、共に100%であった。またセパレータとしての特性である電界液の吸液速度を測定した。その結果を表1に示す。
【0031】
実施例2
アニール処理温度を150℃に変更する以外は、実施例1と同様にしてセパレータを得た。その物性の測定結果を表1に示す。
【0032】
比較例1
アニール処理温度を100℃に変更する以外は、実施例1と同様にしてセパレータを得た。その物性の測定結果を表1に示す。
【0033】
比較例2
アニール処理を行わない以外は、実施例1と同様にしてセパレータを得た。その物性の測定結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1より明らかなように、本発明のアニール処理をしたPPSメルトブロー不織布からのセパレータは、熱収縮をおこさず、吸液速度、強度に優れたセパレータとすることができる(実施例1及び2)。一方、アニール処理を行わない(比較例2)か、行っても温度が低すぎると(比較例1)、180℃における寸法変化が大きく、約半分の大きさになってしまい、セパレータとしての実用に供することはできなかった。
【0036】
【発明の効果】
本発明の耐熱性セパレータは、短絡などの発熱時において、高温になってもセパレータの形状を保持して、溶融破断(メルトダウン)のような爆発的熱暴走を防止することができる安全性に優れたセパレータであり、特に安全性を重視する高エネルギー密度の電池セパレータとして使用できる。
Claims (2)
- 繊維径が3.0〜8.0μm、目付が20〜70g/m2、通気度が20〜100cc/cm2/sec、厚みが100〜500μmのポリフェニレンスルフィドのメルトブロー不織布からの耐熱性セパレータであって、加熱したロール間を加圧せずに沿わせて130〜200℃でのアニール処理により180℃における寸法変化が5%未満であることを特徴とする耐熱性セパレータ。
- 繊維径が3.0〜8.0μm、目付が20〜70g/m2、通気度が20〜100cc/cm2/sec、厚みが100〜500μmのポリフェニレンスルフィドのメルトブロー不織布を、加熱したロール間を加圧せずに沿わせて130〜200℃でアニール処理することを特徴とする請求項1に記載の耐熱性セパレータの製造方法。
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