JP4692039B2 - 微生物群の培養方法、該培養方法によって得られた培養液、並びに地下水及び/又は土壌の浄化方法 - Google Patents
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土壌や地下水を分解する能力を有する微生物としては、有機塩素系化合物を嫌気的分解する微生物が用いられるが、このような微生物は継代培養することが容易でなく、有機塩素系化合物の分解活性を安定して維持することは困難であった。
ヒト及び生態系への影響を考慮すると、土壌及び/又は地下水の原位置バイオオーギュメンテーションに用いる培養液に関しては、高度に限定(純化)された微生物で構成され、その構成が継続的に安定していることが好ましい。
また、特許文献2には、培養液が連続的に一端から供給され、他端から排出されるチューブ状の培養槽で微生物を培養する、微生物の連続培養方法が開示されている。該特許文献2に開示された方法によれば、微生物の連続培養の効率を向上することができる。
従って、本発明の目的は、有機塩素系化合物を嫌気的に分解することのできる微生物の活性を安定化して維持し、かつ微生物の構成を高度に限定させることのできる培養方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記培養方法によって得られた培養液を用いる、地下水及び/又は土壌の浄化方法を提供することにある。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、微生物群を連続的に培養し、得られた培養液を植種源として回分培養を行なうことを特徴とする、微生物群の培養方法を提供するものである。
また、本発明は、上記培養方法によって得られた、微生物群を含む培養液を提供する。該培養液は、有機塩素系化合物により汚染された土壌及び/又は地下水のバイオオーギュメンテーションに用いられる。
また、本発明は、上記培養液を、有機塩素系化合物によって汚染された地下水及び/又は土壌中に注入することを特徴とする、地下水及び/又は土壌の浄化方法を提供する。
また、本発明の地下水及び/又は土壌の浄化方法は、本発明の微生物群の培養方法によって得られた培養液を用いており、有機塩素系化合物の分解活性が安定されるため、地下水及び/又は土壌中の有機塩素系化合物の分解効率が向上したものとなる。
本発明の微生物群の培養方法は、微生物群を連続的に培養し、得られた培養液を植種源として回分培養を行うことを特徴とする。
本発明の微生物群の培養方法においては、先ず微生物群を連続的に培養する。本明細書において、「連続的に培養」とは、連続的に培地を供給し、培養物を連続的に取り出す方法を意味するものとする。
図1に示す培養装置は、微生物群を連続的に培養する、カラム10と、微生物群を回分培養する回分培養容器20とから主に構成される。
微生物群は、ポンプ14によって加圧され、微生物群及び培地供給管12を通ってカラム10に供給される。ここで用いられる微生物群としては、有機塩素系化合物分解菌を含むものが挙げられる。有機塩素系化合物としては、例えば、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、トランス−1,2−ジクロロエチレン、1,1,−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、塩化ビニルモノマー、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエタンからなる群から選択される1種以上の化合物が挙げられ、本発明の微生物群の培養方法において用いられる微生物は、上記化合物を分解する微生物である。
担体の形状は、球状、ペレット状、中間筒状、糸状等、任意の形状でよい。大きさは、球状の場合、平均粒径が好ましくは0.1〜10mmであり、更に好ましくは0.3〜1mmである。なお、担体としては、有機塩素系化合物によって汚染された現場を模擬して、粒径が0.1〜1.0mm程度の川砂を用いることが好ましい。
図1に示す装置においては、カラム10を1個有して成るが、本発明の微生物群の培養方法においては、カラム10を複数個連結させた装置を用いてもよい。このようにカラム10を連結させることによって、有機塩素系化合物分解菌の活性の安定化が更に向上する。
回分培養容器20は、密閉して微生物群を培養することのできる容器であれば、どのような材質のものであっても使用可能であるが、培地中に有機塩素系化合物を添加することを考慮すると、ガラス製又はステンレス製の容器を用いることが好ましく、容器の蓋としてはテフロン(登録商標)製のものが好ましい。
図2は、本発明の第二の実施の形態にかかる微生物群の培養方法を実施するための培養装置の構成を示す図である。
図2に示す培養装置は、基本的な構成は図1に示す培養装置とほぼ同様である。図2に示す構成部品のうち、図1と同じものは同じ符号を付し、その説明を省略する。
混合培養槽30中には、微生物群を培養するための培地が含まれており、また、担体が該培地中に懸濁されている。図1に示した方法と同様に、担体に生物膜が形成された状態で微生物群を連続培養するため、担体は培地中に浮遊状態にあることが好ましい。担体を浮遊状態にするためには、混合培養槽30中の培地を撹拌しながら培養を行うことにより実施することが好ましい。培地の撹拌速度は、担体の大きさや比重によって異なってくるので、適宜選択することができる。用いられる担体としては、上述したものと同様なものが用いられる。
図2における混合培養槽30内で連続的に培養された培養液中には、有機塩素系化合物分解活性を有する微生物群が含まれており、この培養液を回分培養容器20に注入して回分培養を行うことにより、菌相が単純化され、有機塩素系化合物分解活性を有する微生物のみが増殖することとなり、この方法により得られた培養液には、有機塩素系化合物を分解する能力を有する微生物が含まれる。
本発明の微生物群の培養方法によって得られた培養液は、微生物群を含んでおり、特に有機塩素系化合物分解菌を含んでいる培養液は、有機塩素系化合物により汚染された土壌及び又は地下水のバイオオーギュメンテーションに用いることができる。
バイオオーギュメンテーションとは、有害物質(例えば、有機塩素系化合物)の分解活性を有する微生物を大量培養し、この微生物を、有害物質に汚染された地下水及び/又は土壌に注入して、有害物質の分解を行わせる方法のことである。本発明の培養液は、原位置バイオオーギュメンテーションに用いることができるのみならず、汚染現場から揚水された地下水、掘削された土壌を浄化するためにも用いることができる。
地下水又は土壌に注入される培養液の量、注入速度等については、汚染された地下水及び/又は土壌の汚染状況によって異なり、適宜選択することが可能である。
本発明の地下水及び/又は土壌の浄化方法は、上記培養液を、有機塩素系化合物によって汚染された地下水及び/又は土壌中に注入することを特徴とする。
具体的には、本発明の地下水及び/又は土壌の浄化方法は、地下水及び/又は土壌のバイオオーギュメンテーションによって行なうことができる。バイオオーギュメンテーションについては上述した通りであり、本発明の地下水及び/又は土壌の浄化方法は、上記培養液を、有機塩素系化合物によって汚染された地下水及び又は土壌中に注入することを特徴とし、すなわち原位置バイオオーギュメンテーションで行なうことができる。しかし、本発明の地下水及び/又は土壌の浄化方法は、原位置バイオオーギュメンテーションのみならず、汚染現場から揚水された地下水、掘削された土壌を浄化するためにも用いることができる。なお、地下水及び/又は土壌に注入する培養液の量、注入速度等については、汚染された地下水の汚染状況によって異なり、適宜選択することができる。
実施例1
図3に示す培養装置を作成した。
図3は、本実施例で微生物群を培養するために用いた連続培養装置の培養装置の構成を示す図である。図3に示す連続培養装置は、微生物群を培養するためのカラム50、カラム52及びカラム54が連結されてなる。図3に示す連続培養装置においては、ポンプ51を加圧し、微生物群及び培地供給管56からカラム54に無機培地を供給する。また、ポンプ53を加圧し、培地の成分としてのシス−1,2−ジクロロエチレンをカラム50に供給し、ポンプ55を加圧し、培地成分としての栄養剤をカラム50に供給する。なお、本実施例においては、無機培地、シス−1,2−ジクロロエチレン及び栄養剤の供給速度は、それぞれ、23ml/時間、0.25ml/時間及び2.5ml/時間となるように、ポンプ51、53及び55の圧力が調整されている。
NH4Cl 38mg/L
NaH2PO4 80mg/L
K2HPO4 50mg/L
CaCl2・2H2O 6mg/L
MgCl2・6H2O 17mg/L
FeCl2・4H2O 2mg/L
微量金属 0.1mL/L
レザズリン 0.5mg/L
MnCl2・4H2O 1,000mg/L
CoCl2・2H2O 1,900mg/L
ZnCl2 700mg/L
CuSO4・5H2O 40mg/L
H3BO3 60mg/L
NiCl2・6H2O 250mg/L
Na2Mo4・2H2O 440mg/L
HCl 1mL/L
クエン酸三ナトリウム 500mg/L
Na2S・9H2O 250mg/L
NaHCO3 100mg/L
図5に示す培養装置を作成した。
図5は、微生物群を培養するために用いた回分培養を行うための培養容器の構成を示す図である。図4に示す回分培養容器は、微生物群を培養するための容器20、植種口及びサンプリング口24を有してなる。図4に示す回分培養容器に、下記組成からなる培地にシス−1,2−ジクロロエチレンを含有させた培地を作成し、この培地90mlを容器50に注入した。
酵母エキス 100mg/L
NaHCO3 2,520mg/L
Tris 2,290mg/L
NaCl 500mg/L
KCl 300mg/L
NH4Cl 300mg/L
KH2PO4 200mg/L
CaCl2・2H2O 15mg/L
MgCl2・6H2O 500mg/L
微量金属 1mL/L
レザズリン 1mg/L
HCl 1mL/L
Na2S・9H2O 480mg/L
FeCl2・4H2O 200mg/L
なお、上記において、微量金属は実施例1で用いたものと同一のものである。
実施例1に示す培養装置を用いて100日間培養を行った。培養100日目に、図3に示す培養装置のサンプリング用バイアル瓶63からサンプリングし、この培養液を用いて回分培養を行った。回分培養は、実施例2で示す培養容器と同じ形状であり、容量が10Lの容器を用いて行い、上記培養液を、回分培養容器の培地に対して2質量%となるように植菌して行った。30℃の温度で35日間培養を行った後、植種口及びサンプリング口24から培養液をサンプリングし、シス−1,2−ジクロロエチレン、塩化ビニル及びエチレンの定量を実施例1と同様の方法で行った。定量の結果を図6に示す。図6は、各種揮発性成分の定量試験の結果を示すグラフであり、横軸は培養日数を表し、縦軸は各種揮発性成分の定量値を表す。図6に示すように、シス−1,2−ジクロロエチレンは、培養が進むにつれ、徐々に減少するのが認められた。また、塩化ビニルは、培養開始から初期は増加したが、徐々に減少した。エチレンは、培養開始直後は検出されなかったが、徐々に増加した。培養を開始して33日経過後には、シス−1,2−ジクロロエチレン及び塩化ビニルはほとんど検出されず、ほとんどがエチレンであった。この結果は、回分培養においてもシス−1,2−ジクロロエチレンが完全にエチレンにまで分解されたことを示す。
実施例1で培養を行った培養液に含まれる微生物、及び実施例3で回分培養を行った培養液に含まれる微生物の菌相解析を行った。菌相解析の手順について以下に説明する。
培養液10〜20mLを、孔径0.2μmのフィルターで濾過して微生物をフィルター上に収穫した。次いで、フィルターを2mL容のエッペンドルフチューブに入れ、凍結融解、SDS処理を行い、次いでBead Beater処理を行った。抽出したDNAを50μLのTEバッファー(10mmol/L Tris、1mmol/L EDTA、pH7.5)に溶解した。
次に、この優占種が安全な菌であるかどうかを調べるため、優占種の同定を行った。手順は以下に示すとおりである。
実施例4で用いたDNA溶液1μLをテンプレートとして16S rDNAをPCR増幅した。実施例4で用いたPCR反応条件によりPCR 反応を行った。この際、プライマーはBact0009f(GAGTTTGATCCTGGCTCAG 、配列番号:1)及びBact1492r(ACGGYTACCTTGTTACGACTT、配列番号:2)を用いた。PCR増幅産物を1.0%アガロース電気泳動にかけ、目的である16S rDNA(約1.5 kb)断片を確認した。次いで、この断片を含むPCR増幅産物をプラスミドT-Vectorのマルチクローニングサイト(MCS)に挿入した。ライゲーション反応にはLigation high(東洋紡製)を使用し、16℃にて一晩反応させた。その後、大腸菌 JM109に形質転換させL broth寒天培地(Ampicillin 100 mg/mLを含有する)に塗布し、37℃で一晩培養した後、形質転換体を得た。16S rDNAクローンを含む大腸菌の少量をTEバッファーに懸濁し、95℃で2分間熱処理し、大腸菌を含むTEバッファー1μLをテンプレートとしてPCR反応を行った。プライマーペアは、MCSの上流および下流の塩基配列からデザインしたKNA80f(TTCACCGTCATCACCGAAACG、配列番号:3)及びKNA80r (CATCCGCCAAAACAGCCAAGC、配列番号:4)を用いた。PCR組成、反応条件は、第2段階のアニーリング温度を60℃とした以外は、基本的には実施例4と同じである。
ヒトおよび生態系への影響を考慮すると、土壌及び/又は地下水の原位置バイオオーギュメンテーションに用いられる培養液に関しては、高度に限定された微生物で構成され、その構成が継続的に安定していることが望ましい。以上のように、土壌カラムで培養することにより長期に安定して分解菌の活性を維持することができ、またカラム内で形成された複雑な菌相は、回分培養に植え継ぐことにより高度に限定された安全な菌によって構成されるようになる。
14 ポンプ 16 培養液排出管
18 ポンプ 20 回分培養容器
20 容器 24 植種口及びサンプリング口
30 混合培養槽 50 カラム
52 カラム 54 カラム
51 ポンプ 56 微生物群及び培地供給管
53 ポンプ 55 ポンプ
60 サンプリング用バイアル瓶 61 サンプリング用バイアル瓶
62 サンプリング用バイアル瓶 63 サンプリング用バイアル瓶
Claims (8)
- 有機塩素系化合物を分解する能力を有する微生物群を、有機塩素系化合物を含む培地中で連続的に培養し、得られた培養液を植種源として回分培養を行なうことを特徴とする、微生物群の培養方法。
- 有機塩素系化合物を分解する能力を有する微生物群として、有機塩素系化合物で汚染された土壌又は地下水を植種源として用いる、請求項1記載の微生物群の培養方法。
- 有機塩素系化合物の培地中の濃度が0.1〜100mg/Lである、請求項1又は2記載の微生物群の培養方法。
- 上記有機塩素系化合物が、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、トランス−1,2−ジクロロエチレン、1,1,−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、塩化ビニルモノマー、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエタンからなる群から選択される1種以上の化合物である、請求項1〜3のいずれか1項記載の微生物群の培養方法。
- 微生物群を固定床に付着させた状態で連続的に培養を行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の微生物群の培養方法。
- 担体を充填したカラム内で、微生物群を連続的に培養する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の微生物群の培養方法。
- 上記担体の平均粒径が0.3〜1mmである、請求項8に記載の微生物群の培養方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項記載の培養方法により得られた培養液を、有機塩素系化合物によって汚染された地下水及び/又は土壌中に注入することを特徴とする、地下水及び/又は土壌の浄化方法。
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