JP4696382B2 - 三本鎖dnaの形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二本鎖DNAと一本鎖DNAとを含む複合体の形成方法、二本鎖DNAと一本鎖DNAとを含む複合体、及びサザンハイブリダイゼーションに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、二本鎖DNAと一本鎖DNAとを含む複合体の形成方法が知られている。即ち、図19に示すように、ターゲットDNA(二本鎖DNA)を用意すると共に、このターゲットDNAのいずれか一方のDNA鎖の一部の塩基配列と、相補的な塩基配列を有するプローブDNA(一本鎖DNA)を用意する。次に、緩衝剤等を含む反応液に、これらのDNAと大腸菌(Escherichia coli)のRecAタンパク質を混ぜて、十分な時間保温する。
【0003】
そうすると、ターゲットDNAとプローブDNAとRecAタンパク質とからなるDNA−タンパク質複合体が形成される。具体的には、まず、プローブDNAにRecAタンパク質が結合してプローブDNA−RecAタンパク質複合体が形成される。続いて、このプローブDNA−RecAタンパク質複合体が、ターゲットDNAに結合し、三本鎖形成領域を有するDNA-タンパク質複合体が形成される。その際、プローブDNAは、RecAタンパク質が関与した状態で、ターゲットDNAのうち、プローブDNAと相補的な塩基配列からなる領域に結合すると考えられている。この状態のDNA−タンパク質複合体は、三本鎖形成領域を有するにも拘わらず、比較的安定なものである。詳しくは、B. Jagadeeshwar Rao et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,88,2984-2988(1991)、Gurucharan Reddy et al.,Biochemistry,33,11486-11492(1994)、Efim I. Golub et al.,Mutation Research,351,117-124(1996)等を参照されたい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図19に示すように、このDNA−タンパク質複合体に、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)やタンパク質分解酵素(例えば、プロティナーゼK)などを加えて十分な時間保温し、RecAタンパク質を失活させると、DNA−タンパク質複合体からRecAタンパク質が除去されるだけでなく、ターゲットDNAとプローブDNAとの結合も解消される。つまり、DNA−タンパク質複合体は、RecAタンパク質の存在下においてのみ、その構造が安定に維持され、RecAタンパク質がない状態では、安定な三本鎖DNAを形成することができなかった。遺伝子工学等の分野において、三本鎖DNAを利用しようとした場合、RecAタンパク質が結合した状態の複合体では、RecAタンパク質の存在により多くの制限を受け、その利用範囲が狭くなる。そこで、このようなタンパク質が存在しなくても安定な構造を維持することができる三本鎖DNAの形成方法の開発が待たれていた。
【0005】
本発明はかかる現状に鑑みてなされたものであって、複合体中にタンパク質を含有しないにもかかわらず、安定な状態を維持することができる三本鎖DNAの形成方法、三本鎖DNA、及び、三本鎖DNAを利用したサザンハイブリダイゼーションを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
その解決手段は、直鎖状の二本鎖DNA、この二本鎖DNAのうち一方のDNA鎖の5'末端近傍の塩基から始まる塩基配列と、実質的に相補的な塩基配列を含む直鎖状の一本鎖DNA、RecAタンパク質、並びに、大腸菌(Escherichia coli)のエキソヌクレアーゼI、を反応させて、上記二本鎖DNAのうち、上記一方のDNA鎖の5'末端近傍を含む末端近傍包含領域に、上記一本鎖DNAのうち、上記相補的な塩基配列を有する相補的領域が、少なくとも上記RecAタンパク質が関与した状態で結合してなるDNA−タンパク質複合体を形成するDNA−タンパク質複合体形成工程と、上記RecAタンパク質及び上記エキソヌクレアーゼIを失活させて、上記二本鎖DNAの末端近傍包含領域に上記一本鎖DNAの相補的領域が結合してなる三本鎖形成領域を有する三本鎖DNAを形成するタンパク質失活工程と、を備える三本鎖DNAの形成方法である。
【0007】
本発明によれば、DNA−タンパク質複合体形成工程において、二本鎖DNAと一本鎖DNAとRecAタンパク質と大腸菌(Escherichia coli)のエキソヌクレアーゼIから、DNA−タンパク質複合体を形成する。そしてその後、タンパク質失活工程において、RecAタンパク質及びエキソヌクレアーゼIを失活させると、二本鎖DNAの末端近傍包含領域に一本鎖DNAの相補的領域が結合した三本鎖形成領域を有する三本鎖DNAを形成することができる。このような三本鎖DNAは、その構造を安定化させるための特別なタンパク質等(例えば、前述したRecAタンパク質)が存在しなくても、多少の熱を加えるなどしても解離することなく、安定な状態を維持することができる。なお、本発明では、三本鎖形成領域は、二本鎖DNAの一方の末端近傍包含領域に形成するだけでなく、二本鎖DNAの両方の末端近傍包含領域に形成することも可能である。
【0008】
このような三本鎖DNAの形成方法は、例えば、サザンハイブリダイゼーションにおいて利用可能である。従来のサザンハイブリダイゼーションは、例えば、次のように行う。即ち、ターゲットDNAとして、適当な制限酵素で切断した直鎖状の二本鎖DNAを用意すると共に、プローブDNAとして、T4 Polynucleotide kinaseと[γ-32P]ATPを用いて、5'末端を32Pで標識した一本鎖DNAを用意する。そして、ターゲットDNA(二本鎖DNA)について、アガロースゲル電気泳動を行う。その後、アガロースゲルをメンブレン上に載せて吸引等を行い、アガロースゲル中のターゲットDNA(二本鎖DNA)をメンブレン上に移す。その後、熱処理等を行って、ターゲットDNA(二本鎖DNA)をメンブレンに固定すると共に、ターゲットDNA(二本鎖DNA)を解離させて一本鎖の状態にする。次に、このメンブレンをプローブDNA溶液(標識した一本鎖DNAの溶液)に浸して、ハイブリダイゼーションを行う。その後、メンブレンを洗浄する。その後は、このメンブレンのオートラジオグラムをとり、標識プローブDNA(標識した一本鎖DNA)からのシグナルをX線フィルム上に記録する。
【0009】
これに対し、本発明を利用したサザンハイブリダイゼーションは、例えば、次のように行うことができる。即ち、従来と同様に、ターゲットDNA(二本鎖DNA)と標識プローブDNA(標識した一本鎖DNA)を用意する。ここで、本発明を利用した場合、これらのDNAとRecAタンパク質と大腸菌(Escherichia coli)のエキソヌクレアーゼIにより、DNA−タンパク質複合体を形成する(DNA−タンパク質複合体形成工程)。そしてその後、RecAタンパク質及びエキソヌクレアーゼIを失活させ、三本鎖形成領域を有する安定な三本鎖DNAを形成する(タンパク質失活工程)。次に、この三本鎖DNAについて、アガロースゲル電気泳動を行う。電気泳動後は、アガロースゲルを濾紙等の上に載せてゲル乾燥機で乾燥させた後、アガロースゲルのオートラジオグラムをとり、標識プローブDNA(標識した一本鎖DNA)からのシグナルをX線フィルム上に記録する。
【0010】
このように、サザンハイブリダイゼーションに本発明を適用した場合、従来と比較すれば、容易かつ短時間でサザンハイブリダイゼーションを行うことができる。アガロースゲル中のDNAをメンブレンに移す作業や、このメンブレンをプローブDNA溶液に浸す作業、また、メンブレンを洗浄する作業など、熟練を要する作業かつ比較的長い時間を要する作業がなくなるからである。なお、プローブDNAとして、蛍光物質等で化学的に標識した一本鎖DNAを利用する場合においても、同様なことが言える。
【0011】
ここで、三本鎖DNAは、二本鎖DNAの少なくとも一方の末端近傍包含領域に、一本鎖DNAの相補的領域が結合して三本鎖形成領域を形成したものであれば、その結合形態は問われない。つまり、二本鎖DNAと一本鎖DNAとの間で、必ずしも、ワトソン・クリック型塩基対やフーグスティーン型塩基対のような特定の構造をとっている必要はなく、二本鎖DNAの末端近傍包含領域と一本鎖DNAの相補的領域との間で、何らかの特異的な相互作用によって三本鎖形成領域が形成されていればよい。
【0012】
二本鎖DNAは、直鎖状であれば、いかなるものを用いてもよい。即ち、いかなる塩基配列からなるものであってもよく、また、理論上それらの鎖長に上限は存在しない。従って、例えば、3000Mbpといわれるヒトゲノムの全長を持つような巨大なDNAであっても構わない。勿論、二本鎖DNAの由来は問われない。従って、ウィルスや微生物、動植物のゲノム由来のDNAやそれらを改変したDNAであっても、微生物等のもつプラスミドDNA等やプラスミドDNA等に異種のDNA断片を挿入したキメラDNA等であっても、あるいは、人工的に合成したオリゴヌクレオチドなどであっても構わない。
【0013】
一本鎖DNAは、二本鎖DNAのうち一方のDNA鎖の5'末端近傍の塩基から始まる塩基配列と、実質的に相補的な塩基配列を含む直鎖状のものであれば、いかなるもの用いてもよい。即ち、この条件を満たす限り、いかなる塩基配列からなるものであってもよく、また、理論上それらの鎖長に上限は存在しない。また、その由来も問われない。これらの点は、二本鎖DNAと同様である。
【0014】
実質的に相補的な程度は、一般的には、およそ70〜80%以上の相補性を有することが必要とされ、より好ましくは、ほぼ100%の相補性を有することである。相補性が高いほど、より安定な三本鎖形成領域(三本鎖DNA)を形成することができるからである。但し、必要とされる相補性の程度は、相補的領域の長さによって若干変動する。また、相補的領域全体の相補性は同じ(例えば70%)であっても、相補的領域内全体でほぼ等しい相補性(70%)を有する場合と、相補的領域内に相補性が高い領域(例えば90%)と低い領域(例えば50%)が偏在する場合とによっても、若干変動する。
【0015】
また、一本鎖DNAは、相補的領域を含むものであればよいから、一本鎖DNA全体が相補的領域からなるものであっても、あるいは、相補的領域にさらに他の塩基配列が付加されたものであっても構わない。但し、一本鎖DNA全体が相補的領域からなるものの方が、より安定な三本鎖DNAを形成しやすいので好ましい。なお、一本鎖DNAが、二本鎖DNAのうち一方のDNA鎖の「末端近傍の塩基から始まる塩基配列」と、実質的に相補的な塩基配列を含む必要があるのは、次のような理由による。即ち、一本鎖DNAが、二本鎖DNAの一方のDNA鎖の末端近傍以外の塩基配列(例えば、中央付近の塩基配列)にだけ相補的である場合には、DNA−タンパク質複合体形成工程において安定なDNA−タンパク質複合体を形成することができるが、タンパク質失活工程でタンパク質を失活させると、二本鎖DNAと一本鎖DNAが解離してしまい、安定な三本鎖DNAが得られないからである。
【0016】
また、一本鎖DNAが、二本鎖DNAのうち一方のDNA鎖の「5'末端近傍」の塩基から始まる塩基配列と、実質的に相補的な塩基配列を含む必要があるのも、同様な理由による。即ち、一本鎖DNAが、二本鎖DNAのうち一方のDNA鎖の「3'末端近傍」の塩基配列にだけ相補的である場合には、DNA−タンパク質複合体形成工程において安定なDNA−タンパク質複合体を形成することはできるが、タンパク質を失活させると、二本鎖DNAと一本鎖DNAが解離してしまい、安定な三本鎖DNAが得られないからである。
【0017】
RecAタンパク質として、具体的には、大腸菌(Escherichia coli)に由来するRecAタンパク質の他、耐熱性細菌(Thermus thermophilus)やその他の腸内細菌においてRecA遺伝子によりコードされている多機能タンパク質、あるいは、アグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、枯草菌(Bacillus subtilis)、メチロフィルス メチロトローファス(Methylophilus methylotrophus)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、ウスティラゴ メイディス(Ustilago maydis)等に由来するRecA類似タンパク質などが挙げられる。また、酵母(Saccharomyces cerevisiae)やヒトなど真核生物に由来するRecA類似タンパク質もこれに含まれる。
【0018】
【0019】
【0020】
DNA−タンパク質複合体形成工程は、ヌクレオシド三リン酸またはその類似体の存在下において、緩衝液中で行うのが好ましい。効率よく、安定なDNA−タンパク質複合体を形成することができるからである。緩衝液は、反応の最適条件を得るため適宜変更することできる。例えば、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)と酢酸や塩酸等の適当な酸とにより、pHを約4.0〜9.0、より好ましくは、約7.0〜8.0に調節したトリス系の緩衝液を使用すればよい。緩衝剤は、一般に約10〜100mM、好ましくは、約30mMで使用する。
【0021】
ヌクレオシド三リン酸またはその類似体としては、例えば、アデノシン5'−三リン酸(ATP)、グアノシン5'−三リン酸(GTP)、UTP、CTPや、アデノシン(γ−チオ)−三リン酸(ATP-γS)、グアノシン(γ−チオ)−三リン酸(GTP-γS)、dATP、dUTP、dCTPなどを挙げることができる。これらは、さらにヌクレオシド二リン酸(例えば、ADP)と組み合わせて使用することもできる。なお、特に、DNA−タンパク質複合体を形成する系において、ATP等ヌクレオシド三リン酸が生化学的な分解を伴う場合には、ヌクレオシド三リン酸の類似体(例えば、ATP-γS)を使用するのが好ましい。これらヌクレオシド三リン酸等は、0.1〜10mM、好ましくは、約5mMで使用する。
【0022】
反応液中の核酸(二本鎖DNA及び一本鎖DNA)の濃度は、核酸が十分に溶解することができる濃度であればよく、適宜変更することができる。二本鎖DNAに対する一本鎖DNAの割合は、モル比で約1〜100倍とするのが好ましい。また、RecAタンパク質は、一本鎖DNAの3塩基当たり1分子に相当するように加えるのが好ましい。また、大腸菌(Escherichia coli)のエキソヌクレアーゼIは、二本鎖DNAの1μg当たり約1unit加えるのが好ましい。このように調製した反応液は、4〜60℃、好ましくは約37℃のおいて、5分間以上、一般には約60分間保温することにより、DNA−タンパク質複合体を形成することができる。
【0023】
なお、この工程では、上記のように反応液中にすべてのもの加えて一定時間保温する方法の他、次のような方法を採ることもできる。即ち、まず、ヌクレオシド三リン酸等を含む緩衝液に、二本鎖DNAと一本鎖DNAとRecAタンパク質とを加えて、4〜60℃、好ましくは約37℃のおいて、数分間以上、好ましくは約10分間保温する。そしてその後、この反応液に大腸菌(Escherichia coli)のエキソヌクレアーゼIを加えて、さらに、4〜60℃、好ましくは約37℃のおいて、5分以上、一般には約30分間保温する。
【0024】
このような方法で反応させると、特に安定なDNA−タンパク質複合体を形成することができる。その理由としては、エキソヌクレアーゼIは、本来、一本鎖DNAを末端から切断していく酵素であるから、最初から反応液に加えると、一本鎖DNAが削られてしまうことがある。しかし、このようにエキソヌクレアーゼIを後から加えると、一本鎖DNAには先にRecAタンパク質が結合して、エキソヌクレアーゼIから保護されるため、一本鎖DNAが切断されにくくなり、安定なDNA−タンパク質複合体を形成することができると考えられるからである。
【0025】
タンパク質失活工程で、タンパク質を失活させるには、反応液にキレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸)を加えるか、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加えるか、または、タンパク質分解酵素(例えば、プロティナーゼK)を加え、あるいは、これらの処理を組み合わせて行った後、例えば、約37℃で10分間以上保温すればよい。こうして得られる反応液から三本鎖DNAだけを回収するには、フェノール、クロロホルム等の溶媒抽出により除タンパク質処理を行った後、適当なカラムクロマトグラフィーで回収する方法を利用したり、あるいは、エタノール沈殿で一旦DNAを析出させる方法を利用すればよい。
【0026】
さらに、上記の三本鎖DNAの形成方法であって、前記一本鎖DNAは、前記実質的に相補的な塩基配列が20mer以上からなる三本鎖DNAの形成方法とすると良い。
【0027】
一本鎖DNAの相補的領域は、理論上短くても、二本鎖DNAのそれに対応する末端近傍包含領域に結合して三本鎖形成領域を形成することができる。しかし、一本鎖DNAの相補的領域が短いと、具体的には、20merよりも短いと、三本鎖形成領域が不安定になりやすい。つまり、三本鎖DNAが不安定になりやすい。これに対し、本発明では、実質的に相補的な塩基配列が20mer以上からなる一本鎖DNAを使用する。従って、この相補的領域と二本鎖DNAのそれに対応する末端近傍包含領域とはより強く結合して安定な三本鎖形成領域を形成することができる。つまり、より安定な三本鎖DNAを形成することができる。なお、一本鎖DNAの実質的に相補的な塩基配列が約30mer以上からなるものであると、さらに、安定な三本鎖DNAを形成することができるので好適である。
【0028】
さらに、上記のいずれかに記載の三本鎖DNAの形成方法であって、前記一本鎖DNAは、前記二本鎖DNAのうち一方のDNA鎖の5'末端から約20mer以内の塩基から始まる塩基配列と、実質的に相補的な塩基配列を含む三本鎖DNAの形成方法とするのが好ましい。
【0029】
前述したように、一本鎖DNAが、二本鎖DNAのうち一方のDNA鎖の5'末端近傍の塩基から始まる塩基配列と、実質的に相補的な塩基配列を含むものであれば、二本鎖DNAの末端近傍包含領域と一本鎖DNAの相補的領域が結合して三本鎖形成領域を形成することができる。しかし、一本鎖DNAの相補的領域が、二本鎖DNAの末端から離れて結合するほど、三本鎖形成領域が不安定で解離しやすくなる。即ち、三本鎖DNAを形成したときに、一本鎖DNAの3'末端の延長上に二本鎖形成領域が長くできるほど、この二本鎖形成領域の存在による構造ストレスにより、三本鎖形成領域が不安定になり、三本鎖形成領域が解消されやすくなる。
【0030】
これに対し、本発明では、二本鎖DNAのうち一方のDNA鎖の5'末端から20mer以内の塩基から始まる塩基配列と、実質的に相補的な塩基配列を含む一本鎖DNAを使用する。つまり、この一本鎖DNAの相補的領域は、二本鎖DNAの末端のごく近傍から始まる領域に対して相補的である。従って、この方法により形成される三本鎖DNAは、一本鎖DNAの3'末端の延長上にできる二本鎖形成領域が短くなる、あるいは、このような二本鎖形成領域ができなくなる。このため、二本鎖形成領域の存在による構造ストレスが生じにくく、三本鎖形成領域が安定化される。つまり、本発明によれば、より安定な三本鎖DNAを形成することができる。
【0031】
特に、一本鎖DNAは、二本鎖DNAのうち一方のDNA鎖の5'末端の塩基から始まる塩基配列と、実質的に相補的な塩基配列を含むのが好ましい。三本鎖DNAを形成したときに、一本鎖DNAの3'末端の延長上に二本鎖形成領域ができなくなるので、三本鎖形成領域を最も安定化することができる。従って、最も安定な三本鎖DNAを形成することができる。なお、一本鎖DNAの相補的領域は、約60mer以下の塩基配列からなるのが好ましい。このように一本鎖DNAの相補的領域が比較的短いと、三本鎖形成領域(三本鎖DNA)が不安定になりやすく、この場合に特に、一本鎖DNAの相補的領域を二本鎖DNAの末端のごく近傍から始まる領域に対して相補的であるようにして、三本鎖形成領域(三本鎖DNA)の安定化を図るべきだからである。
【0032】
さらに、上記のいずれかに記載の三本鎖DNAの形成方法であって、前記RecAタンパク質は、大腸菌(Escherichia coli)のRecAタンパク質である三本鎖DNAの形成方法とすると良い。
【0033】
前述したように、RecAタンパク質には、様々なものを適宜選択することができる。これらのうち、入手容易性、安全性、機能性を考えると、大腸菌に由来するRecAタンパク質を用いるのが好ましい。
【0034】
【0035】
【0036】
また、他の解決手段は、直鎖状の二本鎖DNAと、この二本鎖DNAのうち一方のDNA鎖の5'末端近傍の塩基から始まる塩基配列と、実質的に相補的な塩基配列を含む直鎖状の一本鎖DNAと、からなり、上記二本鎖DNAのうち、上記一方のDNA鎖の5'末端近傍を含む末端近傍包含領域に、上記一本鎖DNAのうち、上記相補的な塩基配列を有する相補的領域が結合してなる三本鎖形成領域を有する三本鎖DNAである。
【0037】
本発明の三本鎖DNAは、従来のようにタンパク質を含まず、二本鎖DNAと一本鎖DNAのみが結合してなるものである。そして、一本鎖DNAの相補的領域が、二本鎖DNAの少なくとも一方の末端近傍包含領域に結合した三本鎖形成領域を有する。このような三本鎖DNAは、その構造を安定化させるための特別なタンパク質等(例えば、前述したRecAタンパク質)が存在しなくても、多少の熱を加えるなどしても解離することなく、安定な状態を維持することができる。なお、本発明の三本鎖DNAには、二本鎖DNAの一方の末端近傍包含領域が三本鎖形成領域となったものの他、二本鎖DNAの両方の末端近傍包含領域がそれぞれ三本鎖形成領域となったものも含まれる。
【0038】
このような三本鎖DNAは、例えば、サザンハイブリダイゼーションにおいて利用可能である。即ち、ターゲットDNAとして、適当な制限酵素で切断した直鎖状の二本鎖DNAを用意すると共に、プローブDNAとして、T4 Polynucleotide kinaseと[γ-32P]ATPを用いて、5'末端を32Pで標識した一本鎖DNAを用意する。そして、これらのDNAから、一本鎖DNAの相補的領域が二本鎖DNAの少なくとも一方の末端近傍包含領域に結合した三本鎖形成領域を有する三本鎖DNAを形成する。次に、この三本鎖DNAについて、アガロースゲル電気泳動を行う。電気泳動後は、アガロースゲルを濾紙等の上に載せてゲル乾燥機で乾燥させた後、アガロースゲルのオートラジオグラムをとり、プローブDNA(標識した一本鎖DNA)からのシグナルをX線フィルム上に記録する。
【0039】
このように、サザンハイブリダイゼーションに本発明の三本鎖DNAを利用した場合、従来と比較すれば、容易かつ短時間でサザンハイブリダイゼーションを行うことができる。アガロースゲル中のDNAをメンブレンに移す作業や、このメンブレンをプローブDNA溶液に浸す作業、また、メンブレンを洗浄する作業など、熟練を要する作業かつ比較的長い時間を要する作業がなくなるからである。なお、プローブDNAとして、蛍光物質等で化学的に標識した一本鎖DNAを利用する場合においても、同様なことが言える。
【0040】
さらに、上記の三本鎖DNAであって、前記三本鎖形成領域は、DNA1本鎖当たり約20mer以上の塩基配列からなる三本鎖DNAとすると良い。
【0041】
三本鎖形成領域は理論上短くてもできるが、極端に短いと、具体的には、DNA1本鎖当たり20merよりも短いと、三本鎖形成領域が不安定になりやすい。つまり、三本鎖DNAが不安定になりやすい。これに対し、本発明では、三本鎖形成領域が、DNA1本鎖当たり約20mer以上の塩基配列からなるので、三本鎖形成領域が安定であり、三本鎖DNAも安定である。なお、三本鎖形成領域が、DNA1本鎖当たり約30mer以上の塩基配列からなるものであると、さらに、三本鎖形成領域(三本鎖DNA)が安定であるので、好適である。
【0042】
さらに、上記のいずれかに記載の三本鎖DNAであって、前記三本鎖形成領域を構成する前記一本鎖DNAの3'末端の延長上には、二本鎖形成領域が存在しない、または、約20bp以下の二本鎖形成領域が存在する三本鎖DNAとするのが好ましい。
【0043】
三本鎖形成領域は、二本鎖DNAの末端近傍包含領域に形成することができる。しかし、三本鎖形成領域が二本鎖DNAの末端から離れれば離れるほど、三本鎖形成領域は不安定で解離しやすくなる。さらに具体的に説明すると、三本鎖形成領域を構成する一本鎖DNAの3'末端の延長上に二本鎖形成領域が長くできるほど、この二本鎖形成領域の存在による構造ストレスにより、三本鎖形成領域が不安定になり、三本鎖形成領域が解消されやすくなる。これに対し、本発明では、三本鎖形成領域を構成する一本鎖DNAの3'末端の延長上に、二本鎖形成領域が存在しないか、あるいは、二本鎖形成領域が存在しても約20bp以下の短いものでしかない。従って、この三本鎖DNAは、二本鎖形成領域の存在による構造ストレスが生じない、あるいは生じにくく、三本鎖形成領域が安定化される。つまり、本発明の三本鎖DNAは安定な構造を維持することができる。なお、三本鎖形成領域がDNA1本鎖当たり約60mer以下の塩基配列からなるのが好ましい。このように三本鎖形成領域が比較的短いと、三本鎖形成領域(三本鎖DNA)が不安定になりやすく、この場合に特に、三本鎖形成領域を構成する一本鎖DNAの3'末端の延長上に、二本鎖形成領域が存在しないか、約20bp以下の短い二本鎖形成領域が存在するようにして、三本鎖形成領域(三本鎖DNA)の安定化を図るべきだからである。
【0044】
また、他の解決手段は、直鎖状の二本鎖DNAと、標識した一本鎖DNAであって、上記二本鎖DNAのうち一方のDNA鎖の5'末端近傍の塩基から始まる塩基配列と実質的に相補的な塩基配列を含む直鎖状の一本鎖DNAと、からなり、上記二本鎖DNAのうち、上記一方のDNA鎖の5'末端近傍を含む末端近傍包含領域に、上記一本鎖DNAのうち、上記相補的な塩基配列を有する相補的領域が結合してなる三本鎖形成領域を有する三本鎖DNAについて、アガロースゲル電気泳動を行う電気泳動工程と、上記三本鎖DNAを含むアガロースゲルを乾燥させる乾燥工程と、乾燥した上記アガロースゲルから上記標識した一本鎖DNA由来のシグナルを検出する検出工程と、を備えるサザンハイブリダイゼーションである。
【0045】
本発明によれば、ターゲットDNA(二本鎖DNA)と標識プローブDNA(標識した一本鎖DNA)とからなる三本鎖DNAを用いて、これについてアガロースゲル電気泳動を行う(電気泳動工程)。電気泳動後は、アガロースゲルを濾紙等の上に載せてゲル乾燥機等で乾燥させた後(乾燥工程)、アガロースゲルから標識プローブDNA(標識した一本鎖DNA)由来のシグナルを検出する(検出工程)。このようなサザンハイブリダイゼーションは、前述した従来の方法と比較すれば、アガロースゲル中のDNAをメンブレンに移す作業や、このメンブレンをプローブDNA溶液に浸す作業、また、メンブレンを洗浄する作業など、熟練を要する作業かつ比較的長い時間を要する作業がなくなる。従って、サザンハイブリダイゼーションを容易かつ短時間で行うことができる。
【0046】
なお、標識プローブDNAである標識した一本鎖DNAは、放射性元素を用いて標識したものであっても、蛍光物質等の化学物質を用いて標識したものであってもよい。放射性元素を用いて標識すれば、サザンハイブリダイゼーションの検出能力を向上させることができる。一方、化学物質を用いて標識すれば、サザンハイブリダイゼーションの各工程をより安全に行うことができる。また、ロボット等により各工程を自動化することも可能である。
【0047】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
以下、本発明の実施例を、図を参照しつつ説明する。まず、三本鎖DNAの形成方法及びこの方法により形成される三本鎖DNAについて説明する。図1に示すように、ターゲットDNAとして、環状プラスミドDNAの1つであるpBR322 DNA(4.4kbp)を制限酵素ScaI及びNruIで切断した2種類の直鎖状の二本鎖DNA(DNA断片1及びDNA断片2)を用意した。DNA断片1は約2.9kbp、DNA断片2は約1.5kbpである。
【0048】
また、図1に示すように、プローブDNAとして、上記DNA断片1のScaI切断部位の近傍に相補的な一本鎖DNA(オリゴヌクレオチド1(配列番号:1))を用意した。具体的には、DNA断片1のうち、ScaI切断部位側に5'末端が位置するDNA鎖の5'末端の塩基から始まる60merの塩基配列と、100%相補的な60merの塩基配列からなるオリゴヌクレオチド1を用意した。また、別のプローブDNAとして、上記DNA断片2のScaI切断部位の近傍に相補的な一本鎖DNA(オリゴヌクレオチド2(配列番号:2))も用意した。具体的には、DNA断片2のうち、ScaI切断部位側に5'末端が位置するDNA鎖の5'末端の塩基から始まる60merの塩基配列と、100%相補的な60merの塩基配列からなるオリゴヌクレオチド2を用意した。
【0049】
これらのオリゴヌクレオチド1及び2は、DNA断片1及びDNA断片2の塩基配列に基づいて公知の手法により合成すればよい。その後、これらのオリゴヌクレオチド1及び2について、T4 Polynucleotidekinaseと[γ-32P]ATPを用いて、32Pで5'末端をそれぞれ標識した。
オリゴヌクレオチド1:5'-cact gcataattct cttactgtca tgccatccgt aagatgcttt tctgtgactg gtgagt-3'
オリゴヌクレオチド2:5'-acgccgggca agagcaactc ggtcgccgca tacactattc tcagaatgac ttggttgagt-3'
【0050】
また、組換えタンパク質として大腸菌(Escherichia coli)のRecAタンパク質を、また、ヌクレアーゼとして大腸菌(Escherichia coli)のエキソヌクレアーゼI(ExonucleaseI)を用意した。さらに、ヌクレオシド三リン酸またはその類似体として、ATP-γSを、また、緩衝液として、酢酸マグネシウム及び酢酸トリスからなるものを用意した。
【0051】
次に、DNA−タンパク質複合体形成工程において、図2に示すように、200ngのターゲットDNA(DNA断片1及びDNA断片2)と、標識プローブDNA(1pmolの標識オリゴヌクレオチド1及び1pmolの標識オリゴヌクレオチド2)と、3.0μgのRecAタンパク質と、4unitのエキソヌクレアーゼIとを、4.8mMのATP-γS、20mMの酢酸マグネシウム及び30mMの酢酸トリス(pH7.2)中で、37℃において30分間保温した。この反応液の全量は、約20μlである。なお、図2は、簡略化して、ターゲットDNA(DNA断片)とプローブDNA(オリゴヌクレオチド)の2つの組み合わせのうち、一方のみを図示した説明図である。
【0052】
これにより、2種類のDNA−タンパク質複合体が形成される。即ち、DNA断片1のScaI切断部位側の末端近傍領域に、オリゴヌクレオチド1全体が、少なくともRecAタンパク質が関与した状態で結合してなるDNA−タンパク質複合体が形成される。また、DNA断片2のScaI切断部位側の末端近傍領域に、オリゴヌクレオチド2全体が、少なくともRecAタンパク質が関与した状態で結合してなるDNA−タンパク質複合体が形成される。
【0053】
具体的には、まず、オリゴヌクレオチド1(プローブDNA)にRecAタンパク質が結合してプローブDNA−RecAタンパク質複合体が形成される。続いて、このプローブDNA−RecAタンパク質複合体が、DNA断片1(ターゲットDNA)に結合し、DNA-タンパク質複合体を形成する。その際、このDNA−タンパク質複合体は、少なくともRecAタンパク質が関与した状態で、オリゴヌクレオチド1が、DNA断片1のうち、オリゴヌクレオチド1と相補的な塩基配列からなる領域(ScaI切断部位側の末端近傍領域)に結合すると考えられる。なお、エキソヌクレアーゼIは、このDNA−タンパク質複合体の安定化に作用するものと考えられる。同様に、オリゴヌクレオチド2(プローブDNA)にRecAタンパク質が結合してプローブDNA−RecAタンパク質複合体が形成され、続いて、これが、DNA断片2(ターゲットDNA)に結合し、DNA-タンパク質複合体を形成する。その際、このDNA−タンパク質複合体は、少なくともRecAタンパク質が関与した状態で、オリゴヌクレオチド2が、DNA断片2のうち、オリゴヌクレオチド2と相補的な塩基配列からなる領域(ScaI切断部位側の末端近傍領域)に結合すると考えられる。なお、エキソヌクレアーゼIは、このDNA−タンパク質複合体の安定化に作用するものと考えられる。これらのDNA−タンパク質複合体は、三本鎖形成領域を有するにも拘わらず、比較的安定なものである。
【0054】
次に、タンパク質失活工程において、図2に示すように、この反応液に、0.5%(W/Vol)SDSと0.7mg/mlプロティナーゼKを加え、37℃において30分間保温し、RecAタンパク質とエキソヌクレアーゼIを失活させた。これにより、二種類の三本鎖DNAが形成される。即ち、DNA断片1のScaI切断部位側の末端近傍領域に、オリゴヌクレオチド1全体が結合してなる三本鎖形成領域を有する三本鎖DNAが形成される。また、DNA断片2のScaI切断部位側の末端近傍領域に、オリゴヌクレオチド2全体が結合してなる三本鎖形成領域を有する三本鎖DNAが形成される。
【0055】
従来の方法では、前述したように、三本鎖形成領域を有する安定なDNA−タンパク質複合体ができても、タンパク質を失活させると、三本鎖形成領域が解消され、ターゲットDNA(二本鎖DNA)とプローブDNA(一本鎖DNA)に解離していた。しかし、本実施例1では、タンパク質(RecAタンパク質及びエキソヌクレアーゼI)を失活させても、安定な三本鎖DNAを得ることができる。このような三本鎖DNAは、その構造を維持するために特別なタンパク質等を必要とせず、多少の熱を加えても、安定な状態を維持することができる。
【0056】
なお、RecAタンパク質等の相同的組換えタンパク質等と、エキソヌクレアーゼI等と、ATP-γS等のヌクレオシド三リン酸等と、酢酸トリス等を含む緩衝剤とは、キットとして用意しておくと便利である。このようなキットを利用すれば、ターゲットDNAやプローブDNAの種類が変わっても、容易に三本鎖DNAを形成することができるからである。
【0057】
次いで、上記の三本鎖DNAを利用したサザンハイブリダイゼーションについて説明する。まず、上述したようにして三本鎖DNAを形成した。即ち、DNA−タンパク質複合体形成工程において、DNA断片1及び2と、標識オリゴヌクレオチド1及び2と、RecAタンパク質と、エキソヌクレアーゼIとを反応させて、2種類のDNA−タンパク質複合体を形成した。その後、タンパク質失活工程において、RecAタンパク質とエキソヌクレアーゼIを失活させて、DNA断片1のScaI切断部位側の末端近傍領域にオリゴヌクレオチド1全体が結合して三本鎖形成領域を形成してなる三本鎖DNAと、DNA断片2のScaI切断部位側の末端近傍領域にオリゴヌクレオチド2全体が結合して三本鎖形成領域を形成してなる三本鎖DNAとを形成した。
【0058】
次に、電気泳動工程において、反応液の半分量(約10μl)について、1%のアガロースゲルで電気泳動を行った。そして、電気泳動後のアガロースゲルをエチジウムブロミドの溶液に浸してアガロースゲル中のDNAを染色し、その後、染色されたDNAの写真を記録した。その結果を図3(B)のレーン2に示す。次に、乾燥工程において、このアガロースゲルを濾紙の上に載せてゲル乾燥機で乾燥させた。その後、検出工程において、乾燥させたアガロースゲルのオートラジオグラムをとり、標識オリゴヌクレオチド1及び2由来のシグナルをX線フィルム上に記録した。その結果を図3(A)のレーン2に示す。図3(A)及び(B)において、上方の約2.9kbp付近に検出されたシグナルは、DNA断片1にオリゴヌクレオチド1が結合した三本鎖DNAによるものであり、下方の約1.5kbp付近に検出されたシグナルは、DNA断片2にオリゴヌクレオチド2が結合した三本鎖DNAによるものである。
【0059】
このようなサザンハイブリダイゼーションは、従来の方法と比較すれば、アガロースゲル中のDNAをメンブレンに移す作業や、このメンブレンをプローブDNA溶液に浸す作業、また、メンブレンを洗浄する作業など、熟練を要する作業かつ比較的長い時間を要する作業がなくなる。従って、サザンハイブリダイゼーションを容易かつ短時間で行うことができる。
【0060】
次いで、図3に結果を示した比較実験について説明する。レーンMは、DNAサイズマーカーである。図中の左端には、その大きさが示してある。このDNAサイズマーカーは、λDNAを制限酵素HindIIIで切断し、その後、T4 Polynucleotide kinaseと[γ-32P]ATPをを用いて、各DNA断片の5'末端を32Pでそれぞれ標識したものである。レーン1は、上述のDNA−タンパク質複合体形成工程において、エキソヌクレアーゼIを加えず、その代わりに4unitのMug Bean nucleaseを加えて、レーン2と同じ反応を行った結果を示す。それ以外の各工程は、上述したレーン2と同じである。レーン3は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、エキソヌクレアーゼIを加えず、その代わりに4unitのエキソヌクレアーゼIII(ExonucleaseIII)を加えて、レーン2と同じ反応等を行った結果を示す。レーン4は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、エキソヌクレアーゼIを加えず、その代わりに4unitのT4 PNKを加えて、レーン2と同じ反応等を行った結果を示す。レーン5は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、エキソヌクレアーゼIを加えず、その代わりに4unitのT4 DNA Ligaseを加えて、レーン2と同じ反応等を行った結果を示す。レーン6は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、エキソヌクレアーゼIを加えず、それ以外はレーン2と同じ反応等を行った結果を示す。
【0061】
図3(A)の結果から明らかなように、レーン2のみにシグナルが検出され、それ以外のレーン1,3〜6にはシグナルが検出されなかった。レーン2及び6の結果より、安定な三本鎖DNAを形成するためには、DNA−タンパク質複合体形成工程において、エキソヌクレアーゼIが必要となることが判る。また、レーン1,3,4,5の結果より、エキソヌクレアーゼIの代わりに、Mug Bean nucleaseやエキソヌクレアーゼIII、T4 PNK、T4 DNA Ligaseを用いても、安定な三本鎖DNAを形成できないことが判る。このことから、安定な三本鎖DNAを形成するためには、DNA−タンパク質複合体形成工程において、エキソヌクレアーゼIまたはエキソヌクレアーゼIと類似する機能を有するタンパク質が必要であると考えられる。
【0062】
(実施例2)
次いで、第2の実施例について説明する。なお、上記実施例1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図4に示すように、ターゲットDNAとして、環状プラスミドDNAの1つであるpUC118 DNA(約3.2kbp)を制限酵素HincIIで切断した直鎖状の二本鎖DNAを用意した。なお、pUC118 DNAの塩基配列については、GeneBank登録番号U07650を参照されたい。
【0063】
また、図4に示すように、プローブDNAとして、上記ターゲットDNAの一方の末端近傍領域(図中右方)に相補的な一本鎖DNA(オリゴヌクレオチド3(配列番号:3))を用意した。具体的には、ターゲットDNAのうち、一方のDNA鎖(図中下方のDNA鎖)の5'末端の塩基から始まる60merの塩基配列と、100%相補的な60merの塩基配列からなるオリゴヌクレオチド3を用意した。そして、このオリゴヌクレオチド3について、T4 Polynucleotide kinaseと[γ-32P]ATPを用いて、32Pで5'末端を標識した。
オリゴヌクレオチド3:5'-cgacgttgta aaacgacggc cagtgaattc gagctcggta cccggggatc ctctagagtc-3'
【0064】
次に、DNA−タンパク質複合体形成工程において、200ngのターゲットDNA(直鎖状のpUC118 DNA)と、1pmolの標識プローブDNA(標識オリゴヌクレオチド3)と、3.0μgのRecAタンパク質と、4unitのエキソヌクレアーゼIとを、4.8mMのATP-γS、20mMの酢酸マグネシウム、30mMの酢酸トリス(pH7.2)中で、37℃において30分間保温した。これにより、上記実施例1と同様に、DNA−タンパク質複合体が形成される。即ち、ターゲットDNAの一方の末端近傍領域(図4中右方)に、オリゴヌクレオチド3全体が、少なくともRecAタンパク質が関与した状態で結合してなる安定なDNA−タンパク質複合体が形成される(図2参照)。
【0065】
次に、タンパク質失活工程において、この反応液に、0.5%(W/Vol)のSDSと0.7mg/mlのプロティナーゼKを加え、37℃において30分間保温し、RecAタンパク質とエキソヌクレアーゼIを失活させた。これにより、上記実施例1と同様に、安定な三本鎖DNAが形成される。即ち、ターゲットDNAの一方の末端近傍領域(図4中右方)に、オリゴヌクレオチド3全体が結合してなる三本鎖形成領域を有する三本鎖DNAが形成される(図2参照)。この三本鎖DNAも、その構造を維持するために特別なタンパク質等を必要とせず、多少の熱を加えても、安定な状態を維持することができる。
【0066】
次に、上記実施例1と同様に、電気泳動工程において、反応液の半分量について1%のアガロースゲルで電気泳動を行った。そして、電気泳動後のアガロースゲルをエチジウムブロミドの溶液に浸してアガロースゲル中のDNAを染色し、その後、染色されたDNAの写真を記録した。その結果を図5(B)のレーン1に示す。その後も、上記実施例1と同様に、乾燥工程を行った後、検出工程において、アガロースゲルのオートラジオグラムをとり、標識オリゴヌクレオチド3由来のシグナルをX線フィルム上に記録した。その結果を図5(A)のレーン1に示す。 図5(A)及び(B)において、約3.2kbp付近に検出されたシグナルは、ターゲットDNAにオリゴヌクレオチド3が結合した三本鎖DNAによるものである。なお、このサザンハイブリダイゼーションも、上記実施例1と同様な工程によるものであるから、熟練を要する作業かつ比較的長い時間を要する作業が少なく、容易かつ短時間で行うことができる。
【0067】
一方、図4に示すように、上記のプローブDNA(オリゴヌクレオチド3)とは別のプローブDNAとして、上記ターゲットDNAのうち、上述した末端近傍領域とは異なる側の末端近傍領域(図中左方)に相補的な一本鎖DNA(オリゴヌクレオチド4(配列番号:4))を用意した。具体的には、ターゲットDNAのうち、他方のDNA鎖(図中上方のDNA鎖)の5'末端の塩基から始まる60merの塩基配列と、100%相補的な60merの塩基配列からなるオリゴヌクレオチド4を用意した。そして、このオリゴヌクレオチド4について、T4 Polynucleotide kinaseと[γ-32P]ATPを用いて、32Pで5'末端を標識した。
オリゴヌクレオチド4:5'-caatttcaca caggaaacag ctatgaccat gattacgcca agcttgcatg cctgcaggtc-3'
【0068】
そして、DNA−タンパク質複合体形成工程を、上述の標識オリゴヌクレオチド3の代わりに標識オリゴヌクレオチド4を用いて行い、ターゲットDNAの他方の末端近傍領域(図4中左方)に、オリゴヌクレオチド4全体が、少なくともRecAタンパク質が関与した状態で結合してなる安定なDNA−タンパク質複合体が形成した(図2参照)。その後、上述のタンパク質失活工程を行い、ターゲットDNAの他方の末端近傍領域に(図4中左方)、オリゴヌクレオチド4全体が結合してなる三本鎖形成領域を有する三本鎖DNAを形成した(図2参照)。勿論、この三本鎖DNAも安定なものである。次に、上述の通り、電気泳動工程を行い、染色されたDNAの写真を記録した。その結果を図5(B)のレーン3に示す。その後も、上述の通り、乾燥工程及び検出工程を行った。その結果を図5(A)のレーン3に示す。
【0069】
次いで、図5に結果を示した比較実験について説明する。レーンMは、上記実施例1と同様なDNAサイズマーカーである。レーン2は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、標識プローブDNAとして標識オリゴヌクレオチド5(配列番号:5)を加え、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。このオリゴヌクレオチド5は、図4に示すように、ターゲットDNAの一方の末端近傍領域(図中右方)に相補的な一本鎖DNAである。但し、このオリゴヌクレオチド5は、オリゴヌクレオチド3とは異なり、ターゲットDNAのうち、図中上方のDNA鎖の3'末端近傍の60merの塩基配列と、100%相補的な60merの塩基配列からなる。なお、このオリゴヌクレオチド5も、オリゴヌクレオチド3,4等と同様な方法で標識した。
オリゴヌクレオチド5:5'-gactctagag gatccccggg taccgagctc gaattcactg gccgtcgttt tacaacgtcg-3'
【0070】
レーン4は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、標識プローブDNAとして標識オリゴヌクレオチド6(配列番号:6)を加え、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。このオリゴヌクレオチド6は、図4に示すように、ターゲットDNAの他方の末端近傍領域(図中左方)に相補的な一本鎖DNAである。しかし、このオリゴヌクレオチド6は、オリゴヌクレオチド4とは異なり、ターゲットDNAのうち、図中下方のDNA鎖の3'末端近傍の60merの塩基配列と、100%相補的な60merの塩基配列からなる。なお、このオリゴヌクレオチド6も、オリゴヌクレオチド3,4等と同様な方法で標識した。
オリゴヌクレオチド6:5'-gacctgcagg catgcaagct tggcgtaatc atggtcatag ctgtttcctg tgtgaaattg-3'
【0071】
図5(A)の結果から明らかなように、レーン1とレーン3にシグナルが検出されたが、レーン2とレーン4にはシグナルが検出されなかった。レーン1,3の結果より、三本鎖形成領域は、ターゲットDNAのいずれの末端近傍領域にも形成できることが判る。しかし、レーン2,4の結果より、プローブDNAが、ターゲットDNAのうち、いずれか一方のDNA鎖の「3'末端近傍」の塩基配列と相補的である場合には、安定な三本鎖DNAを形成できないことが判る。このことから、安定な三本鎖DNAを形成するためには、プローブDNA(一本鎖DNA)が、ターゲットDNA(二本鎖DNA)のうち、いずれか一方のDNA鎖の「5'末端近傍」の塩基配列と相補的でなければらないと考えられる。
【0072】
なお、レーン2,4のように、プローブDNAが、ターゲットDNAのうち、いずれか一方のDNA鎖の「3'末端近傍」の塩基配列と相補的である場合でも、DNA−タンパク質複合体形成工程においては、安定なDNA−タンパク質複合体を形成することが判っている。しかし、タンパク質失活工程で、RecAタンパク質及びエキソヌクレアーゼIを失活させると、三本鎖形成領域が解消してしまうので、安定な三本鎖DNAを得ることはできない。
【0073】
(実施例3)
次いで、第3の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図6に結果を示した比較実験について説明する。レーンMは、上記各実施例と同様なDNAサイズマーカーである。レーン1は、上記実施例2のレーン2と同じ反応等を行ったものである(図5参照)。即ち、ターゲットDNAとしてpUC118 DNAを制限酵素HincIIで切断した直鎖状の二本鎖DNAを、プローブDNAとして標識オリゴヌクレオチド5(ターゲットDNAのうち一方のDNA鎖の3'末端近傍の塩基配列と相補的な塩基配列からなるもの)を用いた(図4参照)。そして、DNA−タンパク質複合体形成工程において、反応液を30分間保温した。レーン2は、DNA−タンパク質複合体形成工程において反応液を60分間保温し、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。レーン3は、DNA−タンパク質複合体形成工程において反応液を120分間保温し、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。レーン4は、DNA−タンパク質複合体形成工程において反応液を180分間保温し、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。
【0074】
レーン5は、上記実施例2のレーン1と同じ反応等を行ったものである(図5参照)。即ち、ターゲットDNAとしてpUC118 DNAを制限酵素HincIIで切断した直鎖状の二本鎖DNAを、プローブDNAとして標識オリゴヌクレオチド3(ターゲットDNAのうち一方のDNA鎖の5'末端近傍の塩基配列と相補的な塩基配列からなるもの)を用いた(図4参照)。そして、DNA−タンパク質複合体形成工程において、反応液を30分間保温した。レーン6は、DNA−タンパク質複合体形成工程において反応液を60分間保温し、それ以外はレーン5と同じ反応等を行った結果を示す。レーン7は、DNA−タンパク質複合体形成工程において反応液を120分間保温し、それ以外はレーン5と同じ反応等を行った結果を示す。レーン8は、DNA−タンパク質複合体形成工程において反応液を180分間保温し、それ以外はレーン5と同じ反応等を行った結果を示す。
【0075】
図6(A)の結果から明らかなように、レーン1〜4にはシグナルが検出されなかったが、レーン5〜8にはシグナルが検出された。また、レーン5〜8のシグナルは、レーン5が最も弱く、レーン6、レーン7といくにつれて強く、レーン8で最も強く検出された。レーン1〜4の結果より、プローブDNAが、ターゲットDNAのうち一方のDNA鎖の「3'末端近傍」の塩基配列と相補的である場合には、たとえDNA−タンパク質複合体形成工程において反応時間を長くとっても、安定な三本鎖DNAを形成できないことが判る。
【0076】
一方、レーン5〜8の結果より、プローブDNAが、ターゲットDNAのうち一方のDNA鎖の「5'末端近傍」の塩基配列と相補的である場合には、比較的短い時間(30分間)でも、安定な三本鎖DNAを形成できることが判る。さらに、実験データは省略するが、反応時間を5分程度としても、安定な三本鎖DNAを形成できることが判っている。また、上記の結果より、DNA−タンパク質複合体形成工程において反応時間を長くとるほど、安定な三本鎖DNAがより多く形成されることが判る。なお、反応時間が30分間と60分間との間では、シグナルの強さの違いが大きいのに対し、60分間と120分間、120分間と180分間との間では、シグナルの強さにそれほど大きな違いがないことから、60分間程度の反応時間でターゲットDNA(二本鎖DNA)の多くが、三本鎖DNAになるものと考えられる。このことから、DNA−タンパク質複合体形成工程における反応時間は、5分間以上で、できるだけ長くとるのが好ましいが、一般には、60分間程度とするのが適当であると考えられる。
【0077】
(実施例4)
次いで、第4の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図7に結果を示した比較実験について説明する。レーンMは、上記各実施例と同様なDNAサイズマーカーである。レーン1は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ATP-γSを加えずに、それ以外は上記実施例3のレーン1(図6参照)と同じ反応等を行った結果を示す。即ち、ターゲットDNAとしてpUC118 DNAを制限酵素HincIIで切断した直鎖状の二本鎖DNAを、プローブDNAとして標識オリゴヌクレオチド5(ターゲットDNAのうち一方のDNA鎖の3'末端近傍の塩基配列と相補的な塩基配列からなるもの)を用いた(図4参照)。そして、DNA−タンパク質複合体形成工程において、反応液を30分間保温した。レーン2は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ATP-γSを加えずに、それ以外は上記実施例3のレーン2(図6参照)と同じ反応等を行った結果を示す。DNA−タンパク質複合体形成工程の反応時間は60分間である。レーン3は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ATP-γSを加えずに、それ以外は上記実施例3のレーン3(図6参照)と同じ反応等を行った結果を示す。DNA−タンパク質複合体形成工程の反応時間は120分間である。レーン4は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ATP-γSを加えずに、それ以外は上記実施例3のレーン3(図6参照)と同じ反応等を行った結果を示す。DNA−タンパク質複合体形成工程の反応時間は180分間である。
【0078】
レーン5は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ATP-γSを加えずに、それ以外は上記実施例3のレーン5(図6参照)と同じ反応を行った結果を示す。プローブDNAはオリゴヌクレオチド3(ターゲットDNAのうち一方のDNA鎖の5'末端近傍の塩基配列と相補的な塩基配列からなるもの)であり、DNA−タンパク質複合体形成工程の反応時間は30分間である。レーン6は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ATP-γSを加えずに、それ以外は上記実施例3のレーン6(図6参照)と同じ反応を行った結果を示す。DNA−タンパク質複合体形成工程の反応時間は60分間である。レーン7は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ATP-γSを加えずに、それ以外は上記実施例3のレーン7(図6参照)と同じ反応を行った結果を示す。DNA−タンパク質複合体形成工程の反応時間は120分間である。レーン8は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ATP-γSを加えずに、それ以外は上記実施例3のレーン8(図6参照)と同じ反応を行った結果を示す。DNA−タンパク質複合体形成工程の反応時間は180分間である。
【0079】
図7(A)の結果から明らかなように、いずれのレーン1〜8にもシグナルが検出されなかった。レーン1〜4の結果は、ATP-γSを加えてDNA−タンパク質複合体形成工程を行った上記実施例3のレーン1〜4においても、シグナルが検出されなかった(三本鎖DNAが形成されなかった)のであるから、ATP-γSを加えずに反応を行ってもシグナルが検出されない(三本鎖DNAが形成されない)のは、容易に予想され得る結果である。一方、レーン5〜8の結果より、ATP-γSを加えてDNA−タンパク質複合体形成工程を行った上記実施例3のレーン5〜8においてはシグナルが検出されたが、本実施例4では反応時間を長くとった場合でもシグナルが検出されなかったから、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ATP-γSが必要とされることが判る。
【0080】
このことから、少なくとも、組換えタンパク質としてRecAを利用し、ヌクレアーゼとしてエキソヌクレアーゼIを利用する場合には、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ATP-γSまたはこれと類似する機能を有するものが必要であると考えられる。しかし、別の実験結果(後述する実施例6を参照)によれば、ATP-γSを加えなくても、ごく少量、具体的には、ATP-γSを加えた場合に比して、1/50〜1/100程度の三本鎖DNAが形成されることが判っている。従って、三本鎖DNAを形成するためには、必ずしもATP-γSまたはこれと類似する機能を有するものが必要であるとは言えないが、効率よく安定な三本鎖DNAを形成するためには、ATP-γS等を加えてDNA−タンパク質複合体形成工程を行うのが好ましいと考えられる。
【0081】
(実施例5)
次いで、第5の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図8に結果を示した比較実験について説明する。レーン1〜4は、上記実施例2のレーン1〜4(図5参照)とそれぞれ同じ反応等を行った結果を示す。即ち、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ターゲットDNA(直鎖状にしたpUC118 DNA)と、標識オリゴヌクレオチド3,4,5または6と、RecAタンパク質と、エキソヌクレアーゼIとを、ATP-γS、酢酸マグネシウム及び酢酸トリス中で反応させたものである。レーン1は標識オリゴヌクレオチド3を、レーン2は標識オリゴヌクレオチド5を、レーン3は標識オリゴヌクレオチド4を、レーン4は標識オリゴヌクレオチド6を使用している(図4参照)。
【0082】
レーン5〜8は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ヌクレオシド三リン酸またはその類似体として、ATP-γSの代わりに4.8mMのATPを加え、それ以外はレーン1〜4とそれぞれ同じ反応等を行った結果を示す。レーン9〜12は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ヌクレオシド三リン酸またはその類似体として、ATP-γSの代わりに4.8mMのGTP-γSを加え、それ以外はレーン1〜4とそれぞれ同じ反応等を行った結果を示す。レーン13〜16は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ヌクレオシド三リン酸またはその類似体として、ATP-γSの代わりに4.8mMのGTPを加え、それ以外はレーン1〜4とそれぞれ同じ反応等を行った結果を示す。
【0083】
この図8(A)の結果から明らかなように、レーン1,3,5,7,9,11にシグナルが検出されたが、それ以外のレーン2,4,6,8,10,12,13〜16にはシグナルが検出されなかった。レーン1〜4は、上記実施例2のレーン1〜4と同じ反応等を行ったものであるから、同様な結果となっている(図5参照)。レーン5〜8は、シグナルの強さは弱いものの、レーン1〜4の場合と同様にシグナルが検出されている。従って、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ヌクレオシド三リン酸またはその類似体としてATPを用いても、安定な三本鎖DNAを形成できることが判る。レーン9〜12は、レーン1〜4の場合と同様に、同程度の強さのシグナルが検出されている。従って、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ヌクレオシド三リン酸またはその類似体としてGTP-γSを用いても、安定な三本鎖DNAを形成できることが判る。レーン13〜16には、シグナルが検出されていない。従って、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ヌクレオシド三リン酸またはその類似体としてGTPを用いても、検出レベル以上の量の三本鎖DNAを形成できないことが判る。
【0084】
これらのことから、安定な三本鎖DNAを形成するために、適切なヌクレオチド三リン酸またはそれらの類似体を選択することが好ましいと考えられる。即ち、少なくとも、RecAタンパク質とエキソヌクレアーゼIを使用する場合には、ATP-γS、ATPまたはGTP-γSを、さらには、ATP-γSまたはGTP-γSを用いるのが好ましいと考えられる。但し、ATPを用いたときに、三本鎖DNAの形成量が少なくなるのは、ATPが反応液中で生化学的に分解されるためであると考えられる。従って、このような分解が起こりにくい反応液を選択すれば、ATPを用いても三本鎖DNAの形成量を増加させることができるものと考えられる。また、データは省略するが、ヌクレオシド三リン酸として、UTPやCTPについても同様な実験を行ったが、少なくともRecAタンパク質とエキソヌクレアーゼIを使用する場合には、GTPと同様、検出レベル以上の量の三本鎖DNAは形成されなかった。
【0085】
なお、前述したように、別の実験結果(後述する実施例6を参照)によれば、ATP-γSを加えなくても、ごく少量だが、三本鎖DNAが形成されることが判っている。従って、三本鎖DNAを形成するためには、ヌクレオチド三リン酸またはそれらの類似体が必ずしも必要であるとは言えないが、効率よく安定な三本鎖DNAを形成するためには、DNA−タンパク質複合体形成工程において、上述のようにヌクレオチド三リン酸等を適宜選択するのが好ましい。
【0086】
(実施例6)
次いで、第6の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図9に結果を示した比較実験について説明する。レーン2は、上記実施例2のレーン1と同じ反応を行った結果を示す(図5参照)。即ち、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ターゲットDNA(直鎖状のpUC118 DNA)と、標識プローブDNA(標識オリゴヌクレオチド3)と、RecAタンパク質と、エキソヌクレアーゼIとを、ATP-γS、酢酸マグネシウム及び酢酸トリス中で反応させたものである。つまり、タンパク質(酵素)としては、RecAタンパク質とエキソヌクレアーゼIを加えている。
【0087】
レーン1は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、酵素としてRecAタンパク質のみを加え(エキソヌクレアーゼIは加えない)、それ以外はレーン2と同じ反応等を行った結果を示す。レーン3は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、酵素としてRecAタンパク質とエキソヌクレアーゼIとエキソヌクレアーゼVII(ExonucleaseVII)とを加え、それ以外はレーン2と同じ反応等を行った結果を示す。レーン4は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、酵素としてエキソヌクレアーゼIのみを加え、それ以外はレーン2と同じ反応等を行った結果を示す。レーン5は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、酵素としてエキソヌクレアーゼIとエキソヌクレアーゼVIIとを加え、それ以外はレーン2と同じ反応等を行った結果を示す。レーン6は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、酵素としてエキソヌクレアーゼVIIのみを加え、それ以外はレーン2と同じ反応等を行った結果を示す。レーン7は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、酵素としてRecAタンパク質とエキソヌクレアーゼVIIとを加え、それ以外はレーン2と同じ反応等を行った結果を示す。レーン8〜レーン14は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ATP-γSを加えずに、それ以外はレーン1〜7とそれぞれ同じ反応を行った結果を示す。
【0088】
図9(A)の結果から明らかなように、レーン2,3,9にシグナルが検出されたが、それ以外のレーン1,4〜8,10〜14にはシグナルが検出されなかった。レーン1〜7の結果より、DNA−タンパク質複合体形成工程において、タンパク質(酵素)として、少なくともRecAタンパク質とエキソヌクレアーゼIが必要であることが判る。なお、レーン2(RecAタンパク質とエキソヌクレアーゼIを加えた場合)に比べ、レーン3(RecAタンパク質とエキソヌクレアーゼIとエキソヌクレアーゼVIIを加えた場合)のシグナルが弱くなっているのは、次のような理由によるものと考えられる。即ち、エキソヌクレアーゼVIIにより、ターゲットDNAまたはプローブDNAの末端の一部が削られて、三本鎖形成領域が形成されにくくなったと思われる。つまり、DNAを末端から切断するというエキソヌクレアーゼI本来の活性は、RecAタンパク質が存在することによりブロックされる。しかし、同じくDNAを末端から切断するエキソヌクレアーゼVII本来の活性は、RecAタンパク質が存在してもブロックされにくく、このため、ターゲットDNAまたはプローブDNAが削られて、三本鎖形成領域が形成されにくくなったと考えられる。
【0089】
レーン8〜14の結果より、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ATP-γSが存在しなくても、タンパク質(酵素)として、RecAタンパク質とエキソヌクレアーゼIがあれば、安定な三本鎖DNAを形成できることが判る。但し、レーン2と比較してレーン9のシグナルの強さがかなり弱い(1/50〜1/100)ことから、安定な三本鎖DNAは、ATP-γSの存在下で効率よく形成されると考えられる。なお、レーン10にはシグナルが検出されていないが、レーン3でシグナルが検出されたことから考えると、レーン10においても、恐らく検出レベル以下のごく少ない量ではあるが、三本鎖DNAが形成されているものと推測される。以上のことから、安定な三本鎖DNAを形成するためには、DNA−タンパク質複合体形成工程において、タンパク質(酵素)として、RecAタンパク質またはこれと類似する機能を有するものと、エキソヌクレアーゼIまたはこれと類似する機能を有するものが必要であることを考えられる。また、安定な三本鎖DNAを効率よく形成するためには、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ATP-γSなど、ヌクレオシド三リン酸またはその類似体を加えるのが好ましいと考えられる。
【0090】
(実施例7)
次いで、第7の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図10に結果を示した比較実験について説明する。レーン1は、ATP-γSを加えず、それ以外は上記実施例2のレーン1と同じ反応等を行った結果を示す(図5参照)。即ち、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ターゲットDNA(直鎖状のpUC118 DNA)と、標識プローブDNA(標識オリゴヌクレオチド3)(図4参照)と、RecAタンパク質と、エキソヌクレアーゼIとを、酢酸マグネシウム及び酢酸トリス中で反応させたものである。レーン2は、ATP-γSを加えず、それ以外は上記実施例2のレーン3と同じ反応等を行った結果を示す(図5参照)。即ち、標識プローブDNAは、標識オリゴヌクレオチド4である(図4参照)。
【0091】
レーン3は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、標識オリゴヌクレオチドを加えず、それ以外は上記実施例2と同様な反応を行い、さらに、タンパク質失活工程を行った。その後、エタノール沈殿の行い、DNAを1倍濃度のSSC溶液に溶かし、これに1pmolの標識オリゴヌクレオチド3を加えて、60℃で30分間保温した。そして、その半分量についてアガロースゲル電気泳動等を上記各実施例と同様に行った。レーン4は、標識プローブDNAとして標識オリゴヌクレオチド3の代わりに標識オリゴヌクレオチド5を用いて、それ以外はレーン3と同じ反応等を行った結果を示す。レーン5は、標識プローブDNAとして標識オリゴヌクレオチド3の代わりに標識オリゴヌクレオチド4を用いて、それ以外はレーン3と同じ反応等を行った結果を示す。レーン6は、標識プローブDNAとして標識オリゴヌクレオチド3の代わりに標識オリゴヌクレオチド6を用いて、それ以外はレーン3と同じ反応等を行った結果を示す。レーン7は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、エキソヌクレアーゼIを加えず、それ以外はレーン3と同じ反応等を行った結果を示す。即ち、標識プローブは、オリゴヌクレオチド3である。レーン8は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、エキソヌクレアーゼIを加えず、それ以外はレーン5と同じ反応等を行った結果を示す。即ち、標識プローブは、オリゴヌクレオチド4である。
【0092】
図10(A)の結果から明らかなように、いずれのレーン1〜8にもシグナルが検出されなかった。レーン1,2の結果より、DNA-タンパク質複合体形成工程においてATP-γSの存在しない場合には、三本鎖DNAがほとんど形成されないことが判る。レーン3〜6の結果より、DNA−タンパク質複合体形成工程においてプローブDNA(オリゴヌクレオチド)を加えなければ、タンパク質失活工程後にこれを加えても、安定な三本鎖DNAを形成できないことが判る。また、これまでに述べてきた三本鎖DNAは、エキソヌクレアーゼIによりターゲットDNAの末端が一本鎖となり、これにプローブDNAが結合しているわけでないことが判る。
【0093】
レーン7,8の結果から、DNA−タンパク質複合体形成工程においてエキソヌクレアーゼIとプローブDNA(オリゴヌクレオチド)を加えず反応させて、タンパク質失活工程後にプローブDNA(オリゴヌクレオチド)を加えても、安定な三本鎖DNAを形成できないことが判る。これらのことから、安定な三本鎖DNAを形成するためには、プローブDNAをDNA−タンパク質複合体形成工程で加え、ターゲットDNAとプローブDNAとタンパク質とからなるDNA−タンパク質複合体を一旦形成する必要があると考えられる。
【0094】
(実施例8)
次いで、第8の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図12に結果を示した比較実験について説明する。まず、図11に示すように、ターゲットDNAとして、M13mp18 RF DNA(約7.2kbp)を制限酵素SnaBIで切断した直鎖状の二本鎖DNAを用意した。なお、M13mp18 RF DNAの塩基配列については、GeneBank登録番号X02513を参照されたい。
【0095】
また、プローブDNAとして、上記ターゲットDNAの一方の末端近傍(図中右方)に相補的な一本鎖DNA(オリゴヌクレオチド7(配列番号:7))を用意した。このオリゴヌクレオチド7は、ターゲットDNAのうち、一方のDNA鎖(図中下方のDNA鎖)の5'末端の塩基から始まる80merの塩基配列と、100%相補的な80merの塩基配列からなる。また、別のプローブDNAとして、上記ターゲットDNAの一方の末端近傍(図中右方)に相補的な一本鎖DNA(オリゴヌクレオチド8(配列番号:8))を用意した。このオリゴヌクレオチド8は、ターゲットDNAのうち、一方のDNA鎖(図中下方のDNA鎖)の5'末端の塩基から始まる60merの塩基配列と、100%相補的な60merの塩基配列からなる。また、別のプローブDNAとして、上記ターゲットDNAの一方の末端近傍(図中右方)に相補的な一本鎖DNA(オリゴヌクレオチド9(配列番号:9))を用意した。このオリゴヌクレオチド9は、ターゲットDNAのうち、一方のDNA鎖(図中下方のDNA鎖)の5'末端の塩基から始まる50merの塩基配列と、100%相補的な50merの塩基配列からなる。また、別のプローブDNAとして、上記ターゲットDNAの一方の末端近傍(図中右方)に相補的な一本鎖DNA(オリゴヌクレオチド10(配列番号:10))を用意した。このオリゴヌクレオチド10は、ターゲットDNAのうち、一方のDNA鎖(図中下方のDNA鎖)の5'末端の塩基から始まる40merの塩基配列と、100%相補的な40merの塩基配列からなる。また、別のプローブDNAとして、上記ターゲットDNAの一方の末端近傍(図中右方)に相補的な一本鎖DNA(オリゴヌクレオチド11(配列番号:11))を用意した。このオリゴヌクレオチド11は、ターゲットDNAのうち、一方のDNA鎖(図中下方のDNA鎖)の5'末端の塩基から始まる30merの塩基配列と、100%相補的な30merの塩基配列からなる。また、別のプローブDNAとして、上記ターゲットDNAの一方の末端近傍(図中右方)に相補的な一本鎖DNA(オリゴヌクレオチド12(配列番号:12))を用意した。このオリゴヌクレオチド12は、ターゲットDNAのうち、一方のDNA鎖(図中下方のDNA鎖)の5'末端の塩基から始まる20merの塩基配列と、100%相補的な20merの塩基配列からなる。また、別のプローブDNAとして、上記ターゲットDNAの一方の末端近傍(図中右方)に相補的な一本鎖DNA(オリゴヌクレオチド13(配列番号:13))を用意した。このオリゴヌクレオチド13は、ターゲットDNAのうち、一方のDNA鎖(図中下方のDNA鎖)の5'末端の塩基から始まる10merの塩基配列と、100%相補的な10merの塩基配列からなる。そして、これらのオリゴヌクレオチド7〜13について、T4 Polynucleotidekinaseと[γ-32P]ATPをを用いて、32Pで5'末端をそれぞれ標識した。
【0096】
オリゴヌクレオチド7:5'-acgagggtag caacggctac agaggctttg aggactaaag actttttcat gaggaagttt ccattaaacg ggtaaaatac-3'
オリゴヌクレオチド8:5'-agaggctttg aggactaaag actttttcat gaggaagttt ccattaaacg ggtaaaatac-3'
オリゴヌクレオチド9:5'-aggactaaag actttttcat gaggaagttt ccattaaacg ggtaaaatac-3'
オリゴヌクレオチド10:5'-actttttcat gaggaagttt ccattaaacg ggtaaaatac-3'
オリゴヌクレオチド11:5'-gaggaagttt ccattaaacg ggtaaaatac-3'
オリゴヌクレオチド12:5'-ccattaaacg ggtaaaatac-3'
オリゴヌクレオチド13:5'-ggtaaaatac-3'
【0097】
次に、DNA−タンパク質複合体形成工程において、200ngのターゲットDNA(直鎖状にしたM13mp18 RF DNA)と、1pmolの標識オリゴヌクレオチド7と、3.0μgのRecAタンパク質と、4unitのエキソヌクレアーゼIとを、4.8mMのATP-γS、20mMの酢酸マグネシウム、30mMの酢酸トリス(pH7.2)中で、37℃において30分間保温した。これにより、上記実施例1等と同様に、DNA−タンパク質複合体が形成される。即ち、ターゲットDNAの一方の末端近傍領域(図11中右方)に、オリゴヌクレオチド7全体が、少なくともRecAタンパク質が関与した状態で結合してなる安定なDNA−タンパク質複合体が形成される(図2参照)。
【0098】
次に、タンパク質失活工程において、この反応液に、0.5%(W/Vol)のSDSと0.7mg/mlのプロティナーゼKを加え、37℃において30分間保温し、RecAタンパク質とエキソヌクレアーゼIを失活させた。これにより、上記実施例1等と同様に、安定な三本鎖DNAが形成される。即ち、ターゲットDNAの一方の末端近傍領域(図11中右方)に、オリゴヌクレオチド7全体が結合してなる三本鎖形成領域を有する三本鎖DNAが形成される(図2参照)。この三本鎖DNAも、その構造を維持するために特別なタンパク質等を必要とせず、多少の熱を加えても、安定な状態を維持することができる。
【0099】
次に、上記実施例1等と同様に、電気泳動工程において、反応液の半分量について1%のアガロースゲルで電気泳動を行った。そして、電気泳動後のアガロースゲルをエチジウムブロミドの溶液に浸してアガロースゲル中のDNAを染色し、その後、染色されたDNAの写真を記録した。その結果を図12(B)のレーン1に示す。その後も、上記実施例1等と同様に、乾燥工程を行った後、検出工程において、アガロースゲルのオートラジオグラムをとり、標識オリゴヌクレオチド7由来のシグナルをX線フィルム上に記録した。その結果を図12(A)のレーン1に示す。図12(A)及び(B)において、約7.2kbp付近に検出されたシグナルは、ターゲットDNAにオリゴヌクレオチド7が結合した三本鎖DNAによるものである。なお、このサザンハイブリダイゼーションも、上記実施例1等と同様な工程によるものであるから、熟練を要する作業かつ比較的長い時間を要する作業が少なく、容易かつ短時間で行うことができる。
【0100】
レーン2は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、標識プローブDNAとして標識オリゴヌクレオチド8を加え、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。レーン3は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、標識プローブDNAとして標識オリゴヌクレオチド9を加え、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。レーン4は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、標識プローブDNAとして標識オリゴヌクレオチド10を加え、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。レーン5は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、標識プローブDNAとして標識オリゴヌクレオチド11を加え、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。レーン6は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、標識プローブDNAとして標識オリゴヌクレオチド12を加え、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。レーン7は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、標識プローブDNAとして標識オリゴヌクレオチド13を加え、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。
【0101】
図12(A)の結果から明らかなように、いずれのレーン1〜7にもシグナルが検出された。レーン1〜4では強いシグナルが検出され、レーン5ではそれらよりも若干弱いシグナルが検出され、レーン6ではさらに弱いシグナルが検出され、レーン7ではそれよりもさらに弱いシグナルが検出されている。これらの結果から、プローブDNA(オリゴヌクレオチド)の長さが長いほど、安定な三本鎖DNAが形成されやすいことが判る。十分な量の安定な三本鎖DNAを形成するには、DNA-タンパク質複合体形成工程の反応時間にもよるが、プローブDNA(オリゴヌクレオチド)の長さが20mer以上であり、さらには、30mer以上であるのが好ましいと考えられる。
【0102】
(実施例9)
次いで、第9の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図14に結果を示した比較実験について説明する。まず、図13に示すように、ターゲットDNAとして、上記実施例8と同様に、M13mp18 RF DNA(約7.2kbp)を制限酵素SnaBIで切断した直鎖状の二本鎖DNAを用意した。
【0103】
また、図13に示すように、プローブDNAとして、上記実施例8で用いたオリゴヌクレオチド8を用意した。また、別のプローブDNAとして、ターゲットDNAのうち、一方のDNA鎖(図中下方)の5'末端から数えて11番目の塩基から始まる60merの塩基配列と、100%相補的な60merの塩基配列からなるオリゴヌクレオチド14(配列番号:14)を用意した。また、別のプローブDNAとして、ターゲットDNAのうち、一方のDNA鎖(図中下方のDNA鎖)の5'末端から数えて21番目の塩基から始まる60merの塩基配列と、100%相補的な60merの塩基配列からなるオリゴヌクレオチド15(配列番号:15)を用意した。また、別のプローブDNAとして、ターゲットDNAのうち、一方のDNA鎖(図中下方のDNA鎖)の5'末端から数えて31番目の塩基から始まる60merの塩基配列と、100%相補的な60merの塩基配列からなるオリゴヌクレオチド16(配列番号:16)を用意した。そして、これらのオリゴヌクレオチド8,14〜16について、T4 Polynucleotide kinaseと[γ-32P]ATPをを用いて、32Pで5'末端をそれぞれ標識した。
【0104】
オリゴヌクレオチド14:5'-caacggctac agaggctttg aggactaaag actttttcat gaggaagttt ccattaaacg-3'
オリゴヌクレオチド15:5'-acgagggtag caacggctac agaggctttg aggactaaag actttttcat gaggaagttt-3'
オリゴヌクレオチド16:5'-cagcatcgga acgagggtag caacggctac agaggctttg aggactaaag actttttcat-3'
【0105】
図14において、レーンMは、上記各実施例と同様なDNAサイズマーカーである。レーン1は、上記実施例8のレーン2と同様な反応等を行った結果を示す(図12参照)。即ち、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ターゲットDNAとして直鎖状にしたM13mp18 RF DNAを、プローブDNAとしてオリゴヌクレオチド8を使用した。レーン2は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、プローブDNAとしてオリゴヌクレオチド14を加え、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。レーン3は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、プローブDNAとしてオリゴヌクレオチド15を加え、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。レーン4は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、プローブDNAとしてオリゴヌクレオチド16を加え、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。
【0106】
図14(A)の結果から明らかなように、レーン1〜3にはシグナルが検出されたが、レーン4にはシグナルが検出されなかった。また、レーン1〜3のうち、レーン1のシグナルが最も強く、レーン3のシグナルが最も弱かった。このことから、三本鎖DNAを形成したときに、三本鎖形成領域を構成するプローブDNAの3'末端の延長上に、二本鎖形成領域が存在しないと(レーン1の場合)、最も安定な三本鎖DNAを形成できることが判る。また、三本鎖DNAを形成したときに、三本鎖形成領域を構成するプローブDNAの3'末端の延長上に、二本鎖形成領域が存在しても、二本鎖形成領域が存在しても約20bp以下の短いものであれば(レーン2または3の場合)、安定な三本鎖DNAを形成できることが判る。一方、三本鎖DNAを形成したときに、三本鎖形成領域を構成するプローブDNAの3'末端の延長上に、長い二本鎖形成領域が存在する場合(レーン4)、安定な三本鎖DNAを形成できないことが判る。
【0107】
このような結果となる理由は、三本鎖形成領域を構成するプローブDNAの3'末端の延長上に存在する二本鎖形成領域により、構造ストレスが生じ、三本鎖形成領域が解消されやすくなるためであると考えられる。従って、安定な三本鎖DNAを形成するためには、三本鎖DNAを形成したときに、三本鎖形成領域を構成するプローブDNAの3'末端の延長上にできる二本鎖形成領域が20bp以下の短いものであり、さらには、このような二本鎖形成領域が存在しないのが好ましいと考えられる。
【0108】
(実施例10)
次いで、第10の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図15に結果を示した比較実験について説明する。レーンMは、上記各実施例と同様なDNAサイズマーカーである。レーン1は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、酢酸マグネシウムを加えず、それ以外は上記実施例2のレーン1(図5参照)と同じ反応等を行った結果を示す。レーン2は、上記実施例2のレーン1と同じ反応等を行った結果を示す(図5参照)。酢酸マグネシウムの量は20mMである。レーン3は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、酢酸マグネシウムの量を40mMとし、それ以外はレーン2と同じ反応等を行った結果を示す。レーン4は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、酢酸マグネシウムの量を60mMとし、それ以外はレーン2と同じ反応等を行った結果を示す。
【0109】
図15(A)の結果から明らかなように、レーン2〜4にシグナルが検出されたが、レーン1にはシグナルが検出されなかった。また、レーン2〜4のシグナルの強さはほぼ同程度であった。このことから、安定な三本鎖DNAを形成するためには、少なくとも、RecAタンパク質とエキソヌクレアーゼIを用いる場合、DNA−タンパク質複合体形成工程において、酢酸マグネシウム、具体的にはMgイオンまたはそれに類似する機能を有するものが必要であると考えられる。また、その量は、20mM程度あれば十分であると考えられる。
【0110】
(実施例11)
次いで、第11の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図16に結果を示した比較実験について説明する。レーンMは、上記各実施例と同様なDNAサイズマーカーである。レーン1は、上記実施例2のレーン1と同じ反応等を行った結果を示す(図5参照)。即ち、DNA−タンパク質複合体形成工程において、反応液に20mMの酢酸マグネシウムを加えている。レーン2は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、酢酸マグネシウムを加えず、その代わりに10mMの塩化コバルトを加えて、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。レーン3は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、さらに10mMの塩化コバルトを加えて、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。レーン4は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、酢酸マグネシウムを加えず、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。
【0111】
レーン5は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、4.8mMのATP-γS、10mMの酢酸マグネシウム、66mMの酢酸カルシウム、33mMの酢酸トリス(pH7.8)、及び、0.5mMのDTT中で、ターゲットDNA(pUC118 DNA)と標識オリゴヌクレオチド3とRecAタンパク質とエキソヌクレアーゼIとを反応させた結果を示す。それ以外はレーン1と同様である。レーン6は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、さらに10mMの塩化コバルトを加えて、それ以外はレーン5と同じ反応等を行った結果を示す。レーン7は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ATP-γSを加えず、その代わりに4.8mMのGTPを加えて、それ以外はレーン5と同じ反応等を行った結果を示す。レーン8は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ATP-γSを加えず、その代わりに4.8mMのATPを加えて、それ以外はレーン5と同じ反応等を行った結果を示す。
【0112】
図16(A)の結果から明らかなように、レーン1にのみシグナルが検出され、それ以外のレーンにはシグナルが検出されなかった。レーン1,4の結果から、少なくともRecAタンパク質とエキソヌクレアーゼIを用いる場合には、効率的に安定な三本鎖DNAを形成するために、DNA−タンパク質複合体形成工程において、Mgイオンが必要であることが判る。また、レーン2の結果から、Coイオンでは、Mgイオンに代用できないことが判る。一方、レーン3,5,6の結果から、Mgイオンがあっても、CaイオンやCoイオンが存在する場合には、安定な三本鎖DNAを形成することが困難であることが判る。また、レーン7,8の結果から、レーン5の反応液においてATP-γSの代わりにATPやGTPを用いても、効率的に安定な三本鎖DNAを形成できないことが判る。これらのことから、効率的に安定な三本鎖DNAを形成するためには、少なくともRecAタンパク質とエキソヌクレアーゼIを用いる場合、DNA−タンパク質複合体形成工程において、Mgイオンが必要であると考えられる。
【0113】
(実施例12)
次いで、第12の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図17に示すように、ターゲットDNAとして、ヒトのゲノムDNAを制限酵素HindIIIとPvuIIで切断した直鎖状の二本鎖DNAを用意した。この中には、p53遺伝子がコードされた約2.2kbpのDNA断片1が含まれる。また、別のターゲットDNAとして、ヒトのゲノムDNAを制限酵素HindIIIとEcoRIで切断した直鎖状の二本鎖DNAを用意した。この中には、p53遺伝子がコードされた約7.5kbpのDNA断片2が含まれる。また、別のターゲットDNAとして、ヒトのゲノムDNAを制限酵素PvuIIとEcoRIで切断した直鎖状の二本鎖DNAを用意した。この中には、p53遺伝子がコードされた約5.4kbpのDNA断片3が含まれる。なお、これらのDNA断片1〜3を含むヒトp53遺伝子の塩基配列については、GeneBank登録番号U94788を参照されたい。
【0114】
一方、図17に示すように、プローブDNAとして、上記DNA断片1及び2のHindIII切断部位側の末端近傍領域に相補的な一本鎖DNA(オリゴヌクレオチド17(配列番号:17))を用意した。具体的には、上記DNA断片1,2のうち、一方のDNA鎖のHindIII切断部位側の5'末端の塩基から始まる60merの塩基配列と、100%相補的な60merの塩基配列からなるオリゴヌクレオチド17を用意した。また、別のプローブDNAとして、上記DNA断片2及び3のEcoRI切断部位側の末端近傍領域に相補的な一本鎖DNA(オリゴヌクレオチド18(配列番号:18))を用意した。具体的には、上記DNA断片2,3のうち、一方のDNA鎖のEcoRI切断部位側の5'末端の塩基から始まる60merの塩基配列と、100%相補的な60merの塩基配列からなるオリゴヌクレオチド18を用意した。そして、これらのオリゴヌクレオチド17,18について、T4 Polynucleotide kinaseと[γ-32P]ATPを用いて、32Pで5'末端をそれぞれ標識した。
オリゴヌクレオチド17:5'-ctttg cagtgaaagg aatcaaagaa atggagccgt gtatcaggtg gggaagggtg ggggc-3'
オリゴヌクレオチド18:5'-ctgtgggtt gattccacac ccccgcccgg cacccgcgtc cgcgccatgg ccatctacaa g-3'
【0115】
次に、DNA−タンパク質複合体形成工程において、上記DNA断片1を含む5μgのターゲットDNA(ヒトのゲノムDNAを制限酵素HindIIIとPvuIIで切断したもの)と、5pmolの標識オリゴヌクレオチド17と、10.0μgのRecAタンパク質と、4unitのエキソヌクレアーゼIとを、4.8mMのATP-γS、20mMの酢酸マグネシウム、30mMの酢酸トリス(pH7.2)中で、37℃において30分間保温した。これにより、上記実施例1等と同様に、DNA−タンパク質複合体が形成される。即ち、ターゲットDNAに含まれる上記DNA断片1のHindIII切断部位側の末端近傍領域に、オリゴヌクレオチド17全体が、少なくともRecAタンパク質が関与した状態で結合してなる安定なDNA−タンパク質複合体が形成される(図2参照)。
【0116】
次に、タンパク質失活工程において、反応液に、0.5%(W/Vol)SDSと0.7mg/mlプロティナーゼKを加え、37℃において30分間保温し、RecAタンパク質とエキソヌクレアーゼIを失活させた。これにより、上記実施例1等と同様に、安定な三本鎖DNAが形成される。即ち、ターゲットDNAに含まれる上記DNA断片1のHindIII切断部位側の末端近傍領域に、オリゴヌクレオチド17全体が結合してなる三本鎖形成領域を有する三本鎖DNAが形成される(図2参照)。この三本鎖DNAも、その構造を維持するために特別なタンパク質等を必要とせず、多少の熱を加えても、安定な状態を維持することができる。
【0117】
その後、この反応液について、フェノール・クロロホルム抽出を1回行った後、S-400スピンカラム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)の操作を2回行い、未反応の標識オリゴヌクレオチド17を除去した。次に、その全量(約20μl)について、1%のアガロースゲルで電気泳動を行った。そして、電気泳動後のアガロースゲルをエチジウムブロミドの溶液に浸してアガロースゲル中のDNAを染色し、その後、染色されたDNAの写真を記録した。その結果を図18(B)のレーン1に示す。
【0118】
次に、このアガロースゲルを濾紙の上に載せてゲル乾燥機で乾燥させた。その後、アガロースゲルのオートラジオグラムをとり、標識オリゴヌクレオチド17からのシグナルをX線フィルム上に記録した。その結果を図18(A)のレーン1に示す。図18(A)において、約2.2kbp付近に検出されたシグナルは、DNA断片1にオリゴヌクレオチド17が結合した三本鎖DNAによるものである。なお、このようなジェノミックサザンハイブリダイゼーションも、上記実施例1等と同様な工程によるものであるから、熟練を要する作業かつ比較的長い時間を要する作業が少なく、容易かつ短時間で行うことができる。
【0119】
次いで、図18に結果を示した比較実験について説明する。レーンMは、上記各実施例と同様なDNAサイズマーカーである。レーン2は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ターゲットDNAとして、上記DNA断片2を含む5μgのターゲットDNA(ヒトのゲノムDNAを制限酵素HindIIIとEcoRIで切断したもの)を使用した。それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。レーン3は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、ターゲットDNAとして、上記DNA断片3を含む5μgのターゲットDNA(ヒトのゲノムDNAを制限酵素PvuIIとEcoRIで切断したもの)を使用した。それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。
【0120】
レーン4は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、標識プローブDNAとして標識オリゴヌクレオチド18を加え、それ以外はレーン1と同じ反応等を行った結果を示す。即ち、ターゲットDNAは、ヒトのゲノムDNAを制限酵素HindIIIとPvuIIで切断したものを用いている。レーン5は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、標識プローブDNAとしてオリゴヌクレオチド18を加え、それ以外はレーン2と同じ反応等を行った結果を示す。即ち、ターゲットDNAは、ヒトのゲノムDNAを制限酵素HindIIIとEcoRIで切断したものを用いている。レーン6は、DNA−タンパク質複合体形成工程において、標識プローブDNAとしてオリゴヌクレオチド18を加え、それ以外はレーン3と同じ反応等を行った結果を示す。即ち、ターゲットDNAは、ヒトのゲノムDNAを制限酵素PvuIIとEcoRIで切断したものを用いている。
【0121】
図18(A)の結果から明らかなように、レーン1,2,5,6にはシグナルが検出されたが、レーン3,4にはシグナルが検出されなかった。レーン1,2,5,6の結果より、これらのレーンでは、レーン1について上述したように、安定な三本鎖DNAが形成されていることが判る。レーン2の約7.5kbp付近のシグナルは、DNA断片2とオリゴヌクレオチド17とが結合した三本鎖DNAによるものである。レーン5の約7.5kbp付近のシグナルは、DNA断片2とオリゴヌクレオチド18とが結合した三本鎖DNAによるものである。レーン6の約5.4kbp付近のシグナルは、DNA断片3とオリゴヌクレオチド18とが結合した三本鎖DNAによるものである。
【0122】
一方、レーン3,4の結果より、三本鎖DNAを形成したときに、三本鎖形成領域を構成するオリゴヌクレオチドの3'末端の延長上に長い二本鎖形成領域が形成されると、三本鎖形成領域が解消し、安定な三本鎖DNAを形成することができないことが判る。これは、長い二本鎖形成領域による構造ストレスにより、三本鎖形成領域が解消されるためであると考えられる。これらのことから、ジェノミックサザンハイブリダイゼーションにおいても、三本鎖DNAを利用することが有効であると考えられる。また、安定な三本鎖DNAを形成するためには、三本鎖DNAを形成したときに、三本鎖形成領域を構成するオリゴヌクレオチドの3'末端の延長上に長い二本鎖形成領域ができないようにする必要があると考えられる。
【0123】
以上において、本発明の実施の形態を実施例に即して説明したが、本発明は上記各実施例1〜12に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。例えば、上記各実施例では、プローブDNA(一本鎖DNA)として、ターゲットDNA(二本鎖DNA)の一部と100%相補的なオリゴヌクレオチドを使用したが、プローブDNAは、実質的に相補的、具体的には70〜80%以上の相補性があれば、一般に三本鎖DNAを形成することができる。また、プローブDNA(一本鎖DNA)は、二本鎖DNAと相補的な領域の他に、二本鎖DNAと相補的でない他の塩基配列が付加されたものでもよい。このようなプローブDNAでも、ターゲットDNAに結合して三本鎖DNAを形成できるからである。但し、より安定な三本鎖DNAを形成するためには、上記各実施例のように、プローブDNA(一本鎖DNA)は、その全体がターゲットDNA(二本鎖DNA)の一部と100%相補的であるのが好ましい。また、プローブDNAは、人工的に合成したオリゴヌクレオチドである必要ななく、その由来は問われない。プローブDNAにオリゴヌクレオチド以外のものを用いても、安定な三本鎖DNAを形成することができるからである。
【0124】
また、上記各実施例では、組換えタンパク質としてRecAタンパク質を使用したが、前述したように、それ以外のものを使用することも可能である。但し、入手容易性、安全性、機能性を考慮すると、RecAタンパク質が最も適していると思われる。また、上記各実施例では、三本鎖DNAを形成するためのヌクレアーゼとして、エキソヌクレアーゼIを使用したが、前述したように、これと類似する機能を有するタンパク質を利用することも可能である。但し、これも入手容易性、安全性、機能性を考慮すると、エキソヌクレアーゼIが最も適していると思われる。また、上記各実施例では、タンパク質失活工程において、タンパク質を失活させるために、SDSとプロティナーゼKを加えているが、前述したように、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤を利用してもよい。このようなものでも、タンパク質を失活させることができるからである。
【0125】
また、上記各実施例では、ターゲットDNA(二本鎖DNA)のどちらか一方の末端近傍領域に、プローブDNA(一本鎖DNA)結合させて三本鎖形成領域を形成したが、ターゲットDNA(二本鎖DNA)の両方の末端近傍領域に、プローブDNA(一本鎖DNA)を結合させて、両方の末端近傍領域に三本鎖形成領域を形成することもできる。このような三本鎖DNAも、上記各実施例で述べた三本鎖DNAと同様に、特別なタンパク質等がなくても安定な構造を維持することができる。
【0126】
【配列表】
<110> アイシン精機株式会社 AISIN SEIKI CO.,LTD
<120> 三本鎖DNAの形成方法、三本鎖DNA、及びサザンハイブリダイゼーション
<130> AK000537
<160> 18
<210> 1
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> pBR322のScaI認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
<400> 1
cactgcataa ttctcttact gtcatgccat ccgtaagatg cttttctgtg actggtgagt 60
<210> 2
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> pBR322のScaI認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
<400> 2
オリゴヌクレオチド2:
acgccgggca agagcaactc ggtcgccgca tacactattc tcagaatgac ttggttgagt 60
<210> 3
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> pUC118のHincII認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
<400> 3
cgacgttgta aaacgacggc cagtgaattc gagctcggta cccggggatc ctctagagtc 60
<210> 4
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> pUC118のHincII認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
<400> 4
caatttcaca caggaaacag ctatgaccat gattacgcca agcttgcatg cctgcaggtc 60
<210> 5
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> pUC118のHincII認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
<400> 5
gactctagag gatccccggg taccgagctc gaattcactg gccgtcgttt tacaacgtcg 60
<210> 6
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> pUC118のHincII認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
<400> 6
gacctgcagg catgcaagct tggcgtaatc atggtcatag ctgtttcctg tgtgaaattg 60
<210> 7
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<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> M13mp18 RFのSnaBI認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
<400> 7
acgagggtag caacggctac agaggctttg aggactaaag actttttcat gaggaagttt 60
ccattaaacg ggtaaaatac 20
<210> 8
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> M13mp18 RFのSnaBI認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
<400> 8
agaggctttg aggactaaag actttttcat gaggaagttt ccattaaacg ggtaaaatac 60
<210> 9
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<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> M13mp18 RFのSnaBI認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
<400> 9
aggactaaag actttttcat gaggaagttt ccattaaacg ggtaaaatac 50
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<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> M13mp18 RFのSnaBI認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
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actttttcat gaggaagttt ccattaaacg ggtaaaatac 40
<210> 11
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<212> DNA
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<220>
<223> M13mp18 RFのSnaBI認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
<400> 11
gaggaagttt ccattaaacg ggtaaaatac 30
<210> 12
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> M13mp18 RFのSnaBI認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
<400> 12
ccattaaacg ggtaaaatac 20
<210> 13
<211> 10
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> M13mp18 RFのSnaBI認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
<400> 13
ggtaaaatac 10
<210> 14
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> M13mp18 RFのSnaBI認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
<400> 14
caacggctac agaggctttg aggactaaag actttttcat gaggaagttt ccattaaacg 60
<210> 15
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> M13mp18 RFのSnaBI認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
<400> 15
acgagggtag caacggctac agaggctttg aggactaaag actttttcat gaggaagttt 60
<210> 16
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> M13mp18 RFのSnaBI認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
<400> 16
cagcatcgga acgagggtag caacggctac agaggctttg aggactaaag actttttcat 60
<210> 17
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> ヒトp53遺伝子のHindIII認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
<400> 17
ctttgcagtg aaaggaatca aagaaatgga gccgtgtatc aggtggggaa gggtgggggc 60
<210> 18
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> ヒトp53遺伝子のEcoRI認識部位近傍の塩基配列を参考にして合成
<400> 18
ctgtgggttg attccacacc cccgcccggc acccgcgtcc gcgccatggc catctacaag 60
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1に関し、ターゲットDNAとプローブDNAについて示す説明図である。
【図2】実施例1に関し、DNA−タンパク質複合体の形成及び三本鎖DNAの形成について示す説明図である。
【図3】実施例1に関し、三本鎖DNAを利用したサザンハイブリダイゼーションの結果を示す図面に代わる写真である。(A)は標識オリゴヌクレオチド由来のシグナルを記録したX線フィルムの写真であり、(B)はアガロースゲル電気泳動を行い、DNAを染色した後のアガロースゲルの写真である。
【図4】実施例2に関し、ターゲットDNAとプローブDNAについて示す説明図である。
【図5】実施例2に関し、三本鎖DNAを利用したサザンハイブリダイゼーションの結果を示す図面に代わる写真である。(A)は標識オリゴヌクレオチド由来のシグナルを記録したX線フィルムの写真であり、(B)はアガロースゲル電気泳動を行い、DNAを染色した後のアガロースゲルの写真である。
【図6】実施例3に関し、三本鎖DNAを利用したサザンハイブリダイゼーションの結果を示す図面に代わる写真である。(A)は標識オリゴヌクレオチド由来のシグナルを記録したX線フィルムの写真であり、(B)はアガロースゲル電気泳動を行い、DNAを染色した後のアガロースゲルの写真である。
【図7】実施例4に関し、三本鎖DNAを利用したサザンハイブリダイゼーションの結果を示す図面に代わる写真である。(A)は標識オリゴヌクレオチド由来のシグナルを記録したX線フィルムの写真であり、(B)はアガロースゲル電気泳動を行い、DNAを染色した後のアガロースゲルの写真である。
【図8】実施例5に関し、三本鎖DNAを利用したサザンハイブリダイゼーションの結果を示す図面に代わる写真である。(A)は標識オリゴヌクレオチド由来のシグナルを記録したX線フィルムの写真であり、(B)はアガロースゲル電気泳動を行い、DNAを染色した後のアガロースゲルの写真である。
【図9】実施例6に関し、三本鎖DNAを利用したサザンハイブリダイゼーションの結果を示す図面に代わる写真である。(A)は標識オリゴヌクレオチド由来のシグナルを記録したX線フィルムの写真であり、(B)はアガロースゲル電気泳動を行い、DNAを染色した後のアガロースゲルの写真である。
【図10】実施例7に関し、三本鎖DNAを利用したサザンハイブリダイゼーションの結果を示す図面に代わる写真である。(A)は標識オリゴヌクレオチド由来のシグナルを記録したX線フィルムの写真であり、(B)はアガロースゲル電気泳動を行い、DNAを染色した後のアガロースゲルの写真である。
【図11】実施例8に関し、ターゲットDNAとプローブDNAについて示す説明図である。
【図12】実施例8に関し、三本鎖DNAを利用したサザンハイブリダイゼーションの結果を示す図面に代わる写真である。(A)は標識オリゴヌクレオチド由来のシグナルを記録したX線フィルムの写真であり、(B)はアガロースゲル電気泳動を行い、DNAを染色した後のアガロースゲルの写真である。
【図13】実施例9に関し、ターゲットDNAとプローブDNAについて示す説明図である。
【図14】実施例9に関し、三本鎖DNAを利用したサザンハイブリダイゼーションの結果を示す図面に代わる写真である。(A)は標識オリゴヌクレオチド由来のシグナルを記録したX線フィルムの写真であり、(B)はアガロースゲル電気泳動を行い、DNAを染色した後のアガロースゲルの写真である。
【図15】実施例10に関し、三本鎖DNAを利用したサザンハイブリダイゼーションの結果を示す図面に代わる写真である。(A)は標識オリゴヌクレオチド由来のシグナルを記録したX線フィルムの写真であり、(B)はアガロースゲル電気泳動を行い、DNAを染色した後のアガロースゲルの写真である。
【図16】実施例11に関し、三本鎖DNAを利用したサザンハイブリダイゼーションの結果を示す図面に代わる写真である。(A)は標識オリゴヌクレオチド由来のシグナルを記録したX線フィルムの写真であり、(B)はアガロースゲル電気泳動を行い、DNAを染色した後のアガロースゲルの写真である。
【図17】実施例12に関し、ターゲットDNAとプローブDNAについて示す説明図である。
【図18】実施例12に関し、三本鎖DNAを利用したサザンハイブリダイゼーションの結果を示す図面に代わる写真である。(A)は標識オリゴヌクレオチド由来のシグナルを記録したX線フィルムの写真であり、(B)はアガロースゲル電気泳動を行い、DNAを染色した後のアガロースゲルの写真である。
【図19】従来技術に関し、三本鎖DNA(DNA−タンパク質複合体)の形成及び三本鎖DNAの解離について示す説明図である。
Claims (3)
- 直鎖状の二本鎖DNA、
この二本鎖DNAのうち一方のDNA鎖の5'末端近傍の塩基から始まる塩基配列と、実質的に相補的な塩基配列を含む直鎖状の一本鎖DNA、
RecAタンパク質、並びに、
大腸菌(Escherichia coli)のエキソヌクレアーゼI、
を反応させて、上記二本鎖DNAのうち、上記一方のDNA鎖の5'末端近傍を含む末端近傍包含領域に、上記一本鎖DNAのうち、上記相補的な塩基配列を有する相補的領域が、少なくとも上記RecAタンパク質が関与した状態で結合してなるDNA−タンパク質複合体を形成するDNA−タンパク質複合体形成工程と、
上記RecAタンパク質及び上記エキソヌクレアーゼIを失活させて、上記二本鎖DNAの末端近傍包含領域に上記一本鎖DNAの相補的領域が結合してなる三本鎖形成領域を有する三本鎖DNAを形成するタンパク質失活工程と、を備える
三本鎖DNAの形成方法。 - 請求項1に記載の三本鎖DNAの形成方法であって、
前記一本鎖DNAは、前記実質的に相補的な塩基配列が20mer以上からなる
三本鎖DNAの形成方法。 - 請求項1または請求項2に記載の三本鎖DNAの形成方法であって、
前記RecAタンパク質は、大腸菌(Escherichia coli)のRecAタンパク質である
三本鎖DNAの形成方法。
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