JP4714377B2 - ソホロースリピッドの精製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、培養で生成されたソホロースリピッドの精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
微生物により産生される界面活性剤であるバイオサーファクタントは、化学合成による界面活性剤と同等の性能を示し、かつ生分解性が高く低毒性であるため、様々な産業分野での応用が期待されている。
【0003】
その中でもカンジダ ボンビコラ(Candida bombicola)あるいはカンジダ アピコラ(C.apicola)などのカンジダ属酵母により産生されるソホロースリピッド(Sophorose lipids;「ソホロリピッド」ともいわれる;以下、SLとも称する)は、比較的安価な原料から生成されることおよび生産性の高さから、より広い商業利用への期待が大きい。
【0004】
SLは、上記菌株を、適当な液体培地を用いて通気攪拌培養することにより、培養液中に蓄積される。炭素源としては、グルコースおよび油脂類が頻繁に使用される。通常、1週間程度のバッチ培養で、乾燥物として100g/L以上のソホロースリピッドが得られる。これは、他のバイオサーファクタントの生産性が数g/L程度のものが多いのに比べると、際だって高いといえる。
【0005】
しかしながら、化学合成による界面活性剤と比較した場合の価格差は未だ歴然としており、商業利用をコストパフォーマンスの高い物に限定する要因となっている(Kozaric編、surfactant science series vol.48,Biosurfactants pp.378−382(1993))。生産コストを引き上げている要因の一つは、培養終了液からの分離精製工程である。
【0006】
培養の進行と共に培地が酸性化すると、生成したSLは分散状態で存在するが、攪拌を停止すれば、このSLは、粘稠性の含水物として速やかに沈殿する性質を持つ。そのため、培養終了液を静置あるいは遠心分離することにより、他の液体成分からは簡便に分離できるものの、この方法では、菌体などの固形成分がSL層の直上にあるか層内に混入するため、濾過による除去が必要となる。ところが、上述したように、SLは、粘稠性であるため、濾材を透過しにくく、濾過助剤を用いてもあまり改善されない。
【0007】
もう1つの方法として、有機溶媒による抽出法がある。この方法において、培養終了液をノルマルヘキサン(n−ヘキサンとも称する)で洗浄して未反応の残留油脂類を除去し、次いで酢酸エチルと混合してSLを溶解させて水相から分離し、溶剤を加熱減圧により揮発除去する。この方法では、菌体などの固形成分が除去されるが、培養液の数倍容量の有機溶媒を使用する必要がある。ここで得られたSL含水物から有機溶媒を除去回収したり、有機溶媒を含む廃液を処理したりするには、専用の設備およびエネルギーが必要となり、生産コストの上昇につながる。さらに、有機溶媒の使用は、一般的に環境への負荷および作業者の健康面への影響という観点からも好ましいものではない。
【0008】
従って、有機溶媒を用いることなく、さらに菌体などの固形成分をも除去できる、簡便な精製法が求められている。このような精製方法によれば、SLは、より安価に、かつより少ない環境負荷をもって、市場に提供されることになり、産業上極めて有利となり得る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、有機溶媒を用いることなく、培養終了液から液体および固形成分を除去し、高濃度のSL含水物を得る方法を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、酸性下で不溶性のソホロースリピッドを含有する培養終了液を、攪拌しながら、アルカリを添加して中和すると、SL成分全体が、可溶化あるいは安定した分散状態になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、ソホロースリピッドの精製方法であって、以下の工程を包含する方法を提供する。すなわち、本発明のソホロースリピッドの精製方法は、
培養で得られた不溶性のソホロースリピッドを含む酸性の培養液を中和して、上記ソホロースリピッドを可溶化する工程;
上記培養液を固液分離に供し、該培養液中の固形物を除去する工程;
上記培養液を酸性にし、該ソホロースリピッドを再び不溶化する工程;および
上記ソホロースリピッドを沈降させ、上澄を除去する工程
を包含し、これにより、高濃度のソホロースリピッド含水物が得られる、方法である。
【0012】
1つの実施形態では、上記精製方法は、上記ソホロースリピッド含水物を水を用いて1回以上洗浄する工程、および得られた上澄を除去する工程をさらに包含する。
【0013】
別の実施形態では、上記精製方法は、培養終了時にpH2.0〜3.5である培養液を用いる。
【0014】
なお別の実施形態では、上記精製方法は、培養終了時に、炭素源として添加した油性基質の残留が、n−ヘキサン抽出物として、培養終了液の重量基準で0.2%以下である培養液を用いる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、ソホロースリピッドを含む培養液中から、夾雑固形物をほとんど含まない高濃度のソホロースリピッド含水物を分離精製するための、簡便であり、かつ有機溶媒を用いることのない方法を提供する。
【0016】
ソホロースリピッド(SL)は、ソホロースあるいはヒドロキシル基が一部アセチル化したソホロースと、ヒドロキシ脂肪酸とからなる糖脂質である。ソホロースとは、β1→2結合した2分子のブドウ糖からなる糖である。ヒドロキシ脂肪酸は、ヒドロキシル基を有する脂肪酸である。ソホロースリピッドはまた、ヒドロキシ脂肪酸のカルボキシル基が遊離した酸型と分子内のソホロースと結合したラクトン型とに大別される。以下にそれぞれの構造式を表す(右側、酸型;左側、ラクトン型):
【0017】
【化1】
(ここで、各構造式において、R1およびR2はそれぞれ、独立して、水素またはアセチル基であり、nは、一般に、11〜20の整数であり、より通常には、13〜17、さらにより通常には14〜16である)。
【0018】
SLは、カンジダ属酵母を培養することにより生成され得る。培養生成されたSLは、複数分子種の混合物であって、通常、ラクトン型を50%以上含む。従って、本明細書中では、ソホロースリピッド(SL)とは、単一の物質のみならず、複数分子種の混合物をも意味する。
【0019】
培養に使用される酵母としては、カンジダ ボンビコラ(Candida bombicola)、カンジダ アピコラ(C.apicola)、カンジダ ペトロフィラム(C.petrophilum)、およびカンジダ ボゴリエンシス(C.bogoriensis)が挙げられる。これらは、保存機関から分譲された菌株またはその継代培養であり得る。
【0020】
SLは、上記のような菌株を、適当な液体培地を用いて培養することにより、培養液中に蓄積される。
【0021】
使用され得る液体培地の組成について、以下に説明する。
【0022】
炭素源としては、糖類および油性基質が用いられ得る。糖類としては、グルコース、フルクトース、ガラクトースなどの単糖類、およびスクロース、マルトースなどの二糖類が挙げられる。好ましくは、グルコースが使用される。培養初発濃度は、30〜150g/L、好ましくは90〜120g/Lである。油性基質としては、培養によるSL産生に使用され得ることが報告されているいずれの油性基質もが使用可能であり、このような油性基質として、植物性油脂(Zhouら、J.Am.Oil.Chem.Soc.、69:89−91(1992)など)、動物性油脂(Deshpandeら、Bioresource Technol.,54:143−150(1995))、脂肪酸(Asmerら、J.Am.Oil.Chem.Soc.,65:1460−1466(1988)など)、脂肪酸エステル(Davilaら Appl.Microbiol.Biotechnol.38:6−11(1992))、n−アルカン(Tullochら、Can.J.Chem.,46:3337−3351(1968)などが報告されている。好ましくは、植物性油脂または脂肪酸、あるいは植物油脂を原料とする脂肪酸エステルが使用され得る。植物性油脂として、通常、食用植物油が使用され得る。使用される植物油としては、例えば、ダイズ油、ナタネ油、綿実油、ヒマワリ油、カポック油、ゴマ油、コーン油、コメ油、落花生油、ベニバナ油、オリープ油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油など、またはこれらの混合物が挙げられる。ダイズ油、ナタネ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、またはこれらの混合物が好ましい。このような脂肪酸の炭素数は、6〜24、好ましくは、12〜20の範囲であり、さらにそれぞれの分子内に0〜3箇所の不飽和結合を含んでもよい。用いられる脂肪酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベへン酸、およびリグノセリン酸のような飽和脂肪酸、ならびにトウハク酸、リンデル酸、ツズ酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、エルカ酸、リノール酸、γ−リノレン酸、およびリノレン酸のような不飽和脂肪酸、ならびにこれらの混合物が挙げられる。脂肪酸エステルとしては、前出の脂肪酸のエステルが挙げられる。培養の開始時に添加され得る油性基質の濃度は、50〜200g/L、好ましくは100〜150g/Lの範囲である。連続的に供給される場合、上記濃度に相当する量の油性基質が、培養期間中に均等速度で培養系に添加される。
【0023】
窒素源としては、2〜5g/Lの酵母エキス、0.5〜2g/Lの尿素などが添加され得るが、これらに限定されない。
【0024】
さらに、酵母の生育に必要な各種有機物および無機塩類(リン酸塩、マグネシウム塩を含む)が適当量で添加され得る。
【0025】
培養形態は、上記のような液体培地を用いたバッチ培養、または培養系に油性基質を連続添加する流加培養であり得、通気攪拌することが望ましい。培養pH条件は、開始時にpH約3.5〜約6.0であり、好ましくは、約4.0〜約5.5である。通常、培養中、pHは、外部から調節されない。培養温度は、上記菌株が、ソホロースリピッド産生して生育し得るのに適当な温度であり、通常、20〜35℃であり、好ましくは28〜30℃である。5L〜5kL容量の培養の場合、通気攪拌の速度は、0.1〜2.0vvm、100〜600rpmであり得る。攪拌速度に関して、培養槽が大きくなるにつれて、同じ溶存酸素条件を作るために必要とされる攪拌速度は遅くなる。このような攪拌は、培養液中に十分な溶存酸素条件を提供するために行われ得、従って、酵母の培養に適切な溶存酸素条件を与えるような、いずれの攪拌速度も望ましい。
【0026】
培地中の糖類と油性基質とは、培養過程で同時に利用され、時間の経過と共に濃度が低下する。糖類が先に完全消費される。SLの生成は、培地中の油性基質が全て消費されると停止する。培地に残留している油性基質は、培養液を湯浴中で加熱後、遠心分離することで油層となって分離するため、SLの生成の終点を、培養中の培養液を一部、分取して上記操作を行い、油層の消失を確認することによって、容易に知ることができる。従って、SLの生成を、培地に残留している油性基質の量を測定することによりモニタリングすることにより、最大収量のSLを含有する培養液を滅菌処理して菌体を殺菌した後、本精製方法に供し得る。
【0027】
また、精製したSLを製品への配合において利用するために、精製の過程における油性基質の残留はできるだけ少ないことが望ましい。従って、本精製方法に用いる培養液は、炭素源として添加した油性基質の残留が、n−ヘキサン抽出物として、培養終了液の重量基準で0.5%以下であることが望ましい。炭素源として添加した油性基質の残留は、好ましくは0.2%以下、さらにより好ましくは0.1%以下である。残留する油性基質の測定は、以下の手順で行われ得る。培養液を密栓容器に取り、この培養液と実質的に等量のn−ヘキサンを添加して激しく振り混ぜた後、遠心分離(例えば、1,000×gで10分間)し、分離したヘキサン層を回収する。この工程は3回以上繰り返され得る。ヘキサン層を回収して、ヘキサン溶媒を揮発除去し、残留物の重量を測定する。
【0028】
上記菌株を培養する場合、培養の進行と共に培養液が酸性化する傾向がある。従って、培養を終了する時点で、培養液は酸性化されている。この培地のpHの範囲は、5.5未満であり得、しばしば、4.0以下、より頻繁には、3.5以下であり、一方、しばしば下限が2.0、より頻繁には、2.5であり得る。培養終了時点での培養液のpHは、培養に使用した培地の組成、培養条件などに依存し得る。本精製方法においては、代表的には、出発培養液として、pHが2.0〜3.5である培養液が使用され得る。従って、通常、含水グルコース80〜120g、酵母エキス1〜5g、リン酸一カリウム5〜15g、硫酸マグネシウム7水和物5〜15g、塩化ナトリウム0.5〜2g、ダイズ油80〜120g、尿素0.5〜2g(量は全て培地1kg当たりの量である)の組成の培地を用いて、温度約30℃、通気攪拌0.5〜1.0vvm、250〜600rpm、初発pH4.0〜5.0、培養期間4〜12日間で、上記菌株が培養され得る。
【0029】
酸性化した培養液中において、生成したSLは分散状態で存在するが、攪拌を停止すれば、このSLは、粘稠性の含水物として速やかに沈殿する性質を持つ。すなわち、培養の進行に伴って酸性化した培養液中では、SLは、難溶性または不溶性であり、静置状態では沈殿している。これは、酸型SLのカルボキシル基が酸性下で非解離型になっていること、ならびにラクトン型SLがもともと疎水的な分子構造を持っているためと考えられる。
【0030】
本精製方法では、上述のような酸性化した培養液を、アルカリを添加することによって中和し、上述のような不溶化SLを可溶化する。好ましくは、培養液を高温(例えば、80〜95℃)に加熱して殺菌して培養を終了し、室温まで冷却して静置(例えば、室温下で半日〜1日間)し、生じた上澄を取り除き、そして取り除いた上澄と実質的に等しい量の水(例えば、工業用水または井水)を添加し、これを精製のために用いる。中和の条件は、pH5.5以上、より好ましくはpH6.0〜7.5の範囲である。アルカリは、中和のために添加されるものであればいずれでもよく、このようなアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。好ましくは、水酸化ナトリウムである。通常、48%水酸化ナトリウムが使用され得る。上記アルカリを、培養液のpHが上記範囲になるようにモニタリングしながら添加する。好ましくは、上記アルカリを攪拌しながら添加する。ラクトン型SLは中性下ではなお難水溶性であると考えられるが(Inoueら、Agric.Biol.Chem.,44:2221−2223(1980))、本工程によって、ラクトン型SLを含むSL成分全体が、中性下において可溶化あるいは安定した分散状態になる。
【0031】
本精製方法では、次いで、上記工程により得られた、中和状態の溶液を固液分離し、溶液中の固形分を除去する。この固液分離のための技術としては、濾過または遠心分離が挙げられる。濾過は、そのままでも可能であるし、水を加えて粘度を下げることで、濾過速度をより速くすることもできる。本工程で使用され得る濾過は、加圧濾過(例えば、板枠型圧濾過器を用いる)、減圧濾過(例えば、回転円筒真空濾過器を用いる)が好ましい。ラボスケールでは、ブフナロートなどを用いる減圧濾過もまた可能である。濾過は、当該分野で一般に使用されている装置を用いて実施され得る。遠心分離は、当該分野で一般に使用されている装置を用いて実施され得る。例えば、連続遠心分離機による連続的な遠心分離が使用され得る。連続遠心分離機としては、かご型遠心分離機、ディスク型遠心分離機などが挙げられる。連続遠心分離の場合、連続的に液を流し込むことにより、分離に供され得る。例えば、約2kL/時で流し込まれ得る。バッチ型の遠心分離の場合、例えば、1000×gで15分間で実施され得る。上記のような濾過または遠心分離によって、固形分と、可溶化した状態のSLを含む溶液とを容易に分離することができる。この固形分には、菌体および、培養におけるSLの生成において生じた不純物が含まれ得る。
【0032】
次いで、固形分を除去したSL溶液を、酸を添加することにより酸性化し、SLを再び不溶化する。添加する酸としては、無機酸(例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など)、および有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルクロン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸など)が挙げられる。なお、有機物と反応することのない酸が好ましい。塩酸および硫酸が好ましい。例えば、5%〜36%の塩酸、20〜98%の硫酸が用いられ得る。酸性化の条件は、pH5.5以下、より好ましくはpH4.0以下、より好ましくはpH3.5以下、さらにより好ましくはpH3.0以下であって、下限がpH2.0である範囲である。通常、pH2.5〜4.0の範囲が使用され得る。上記酸を、培養液のpHが上記範囲になるようにモニタリングしながら添加する。好ましくは、上記酸を攪拌しながら添加する。
【0033】
次いで、再不溶化したSLを沈降させ、上澄を取り除く。再不溶化したSLの沈降は、静置あるいは遠心分離により生じ得る。この静置は、通常、室温下で半日〜2日間、行われ得る。遠心分離は、数十〜数百×gで10分から1時間で実施され得る。沈降物と上澄との分離は、デカンテーションなどで可能である。したがって、高濃度のSLを比較的容易に含水物として得ることができる。上記により得られたSL生成物は、酸型SLおよびラクトン型SLの混合物に加えて水分を含む、含水物である。この水分は、SLを高温または減圧下に置いたとき失われ得る。
【0034】
上記SL含水物中に存在し得る、SL以外の不純物をさらに取り除くために、上記SL含水物に水を添加して攪拌し、次いで、例えば、静置または遠心分離を行うことによりSLを沈降させ、例えば、デカンテーションにより上澄を除去し、SLを回収し得る。例えば、上記SL含水物に、例えば、蒸留水(または脱イオン水または工業用水もしくは井水)がSL含水物と実質的に等しい量で添加され、50〜250rpmで攪拌される。次いで、SLを沈降させるために、例えば、室温で半日〜2日間、静置され得る。あるいは、SLを沈降させるために、例えば、室温で500×gで約30分の遠心分離に供され得る。上澄の除去のためには、デカンテーションを行い得る。上記の手順は、必要に応じて、繰り返され得る。これにより、このSL含水物に含まれ得る、培地中の、あるいは精製過程で添加したアルカリ、酸などに由来する少量の混入物(例えば、水溶性(無機)塩類、低分子および高分子の水溶性有機物など)が、SLをほとんど損失することなく除去され得る。
【0035】
本発明の精製方法により得られたSL含水物は、そのまま原料として、製品に配合され得る。SL含水物はまた、種々の誘導体の出発物質として利用され得る。SLは、ラクトン型と酸型に分離することなく混合物の形態で十分に利用され得る。ソホロースリピッドは、小麦製品の品質改良において利用されることが公知である(特開昭61−205449号公報)。ソホロースリピッド誘導体は、化粧品の湿潤剤(油化学、36、748−753(1987))、およびゲル化剤(特公平7−17668号公報)として利用されている。
【0036】
本発明の精製方法で得られたSL含水物のメタノール溶液、および中和処理前のSL含水物をメタノールに溶解した後フィルター濾過で不溶物を除いたものを、HPLCで分析すると、基本的に同一のクロマトグラムが得られる。これは、本精製方法における工程において、酸型SLだけでなく、本来難水溶性のラクトン型SLもまた、可溶化および再不溶化沈殿で回収され、特定のSL成分が大量に分解および損失することはないことを示している。
【0037】
本発明の精製方法で使用される化学薬品は、基本的にアルカリおよび酸のみであり、必要な設備は、処理槽と、固液分離に必要な装置(例えば、連続遠心分離機あるいは菌体除去に使われ得る一般的な濾過装置)程度である。また、本発明の精製方法は、有機溶媒を使用しない。
【0038】
従って、本発明により、培養液からのSL分離精製に必要なコストを低減するだけでなく、環境および作業者への負荷を軽減することで、SLは、より安価にかつより安全に市場に提供され得る。
【0039】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されない。本実施例で使用した材料、試薬、装置などは、他に特定のない限り、商業的な供給源から入手可能である。使用され得る試薬は、工業的に利用可能な等級の試薬である。
【0040】
【実施例】
(実施例1)
2L容量の三角フラスコに20g/L含水グルコース、10g/Lポリペプトンおよび5g/L酵母エキスからなる液体培地800ml(pH4.6)を調製し、通気性のある蓋をして蒸気滅菌した。ここにカンジダ ボンビコラ ATCC22214株1白金耳を植菌し、スターラーで攪拌しながら30℃にて50時間培養した。これを前培養液とする。30L容量の培養槽(ファーメンテーター)に、100g/L含水グルコース、100g/Lダイズ油、2.5g/L酵母エキス、10g/Lリン酸一カリウム、10.25g/L硫酸マグネシウム7水和物、1g/L塩化ナトリウムおよび1g/L尿素からなる液体培地18kg(ほぼ18L)を調製し、塩酸を使用してpHを4.5に調整してから蒸気滅菌した。ただし不溶物の生成を避けるため尿素は別溶液として蒸気滅菌し、冷却後に混合した。混合後の培地のpHは4.6であった。1時間以上通気攪拌を行ってから、この培地に、前述の前培養液800mlを添加した。これを、30℃で10日間、通気攪拌培養(1.0vvm、250rpm)した。
【0041】
ここで、培地由来の残留油脂量を調べた。培養液を密栓容器に取り、この培養液と等量のn−ヘキサンを添加して激しく振り混ぜた後、1,000×gで10分間遠心分離し、分離したヘキサン層を回収した。この工程を3回繰り返した。ヘキサン層を回収して、ヘキサン溶媒を60〜80℃程度の湯浴上にて揮発除去し、残留物の重量を測定した。培地由来の残留油脂は、n−ヘキサン抽出物として、上記培養液の重量の約0.1%であった。
【0042】
次いで、培養液を90℃で15分処理し、培養終了液を得た。この培養終了液は、pH2.7であった。この培養終了液は、室温で半日〜1日間の静置により、下から順に、液状の褐色沈殿物層、主に菌体と思われる乳白色の固形物層、上澄の3層に分離した。よく混合均一化した培養終了液を一部分取し、分取した培養終了液と等容量のn−ヘキサンでこの培養終了液を洗浄した後、2倍容量の酢酸エチルで3回抽出し、溶媒および水分を加熱減圧下で除去した。この結果、この培養終了液は、14%のSLを含有すると見積もられた。
【0043】
培養終了液15kgを室温で半日〜1日間静置し、生じた上澄を除去した後、工業用水または井水を、除去した上澄に等しい量で添加した。得られた培養終了液に攪拌しながら48重量%の水酸化ナトリウム溶液を徐々に加え、pH6.5とし、SLを可溶化した。連続遠心分離機(ウェストファリア(ウェストファリアセパレーターAG製))を用いて2kL/時で処理することにより、この乳白色の固形物を沈殿させ、上澄を回収した。回収した上澄に攪拌しながら78重量%の硫酸を徐々に加え、pH3.0とし、SLを再不溶化した。室温で2日間静置後、デカンテーションにより上澄を可能な限り除去し、SL含水物3.97kgを得た。
【0044】
このSL含水物は、室温で1日以上静置すると、濁りのない液状の褐色沈殿物と若干量の上澄とに分離し、これら二層の界面において固形物はほとんど認められなかった。よく混合均一化したものの一部分取を分析した結果、得られたSL含水物は、105℃乾燥による重量の減少から53%の水分を含むと見積もられた。
【0045】
次いで、上述の手順に従って、培地由来の残留油脂量を調べた。培地由来の残留油脂は、n−ヘキサン抽出物として、SL含水物の乾燥重量に対し0.5%含んでいた。
【0046】
次いで、水溶性塩類の混入を調べた。ビーカーおよび濾紙の重量を正確に測定しておいた。濾紙は105℃で1時間以上乾燥した後、デシケーター内で放冷したものを使用した。ビーカーにSL含水物約10gを正確に量り取り、エタノールを試料水分の20倍重量以上で添加して湯浴上で加熱溶解した。この溶液を上述の濾紙を用いて濾過した。ビーカー内の不溶物を、熱エタノールを用いて2〜3回洗い出すことにより、完全に濾紙上に移した。濾紙を105℃の乾燥機で1時間乾燥し、デシケーターで放冷後、重量を正確に測定した。次式から、エタノール不溶分を算出した:エタノール不溶分(重量%)=濾紙上残留物重量(g)/[SL含水物重量(g)×(100−水分量(%))]×10,000。このSL含水物における水溶性塩類の混入は、エタノール不溶分として2.3%であった。
【0047】
また、このSL含水物は、上述した方法(n−ヘキサン洗浄−酢酸エチル抽出−溶媒・水分除去)を用いて、48%のSLを含有すると見積もられた。
【0048】
(実施例2)
実施例1で得られたSL含水物に等重量(3.9kg)の蒸留水を添加し、250rpmで30分、攪拌した。次いで、これを、室温で半日間、静置した。デカンテーションを行うことにより、上澄を除去した。この手順を、3回、繰り返した。
【0049】
実施例1と同様に、このSL含水物の組成について分析した。得られたSL含水物は、51%の水分を含むと見積もられた。培地由来の残留油脂を、n−ヘキサン抽出物として、SL含水物の乾燥重量に対し0.5%含んでいた。また水溶性塩類の混入は、エタノール不溶分として0.1%であった。
【0050】
また、このSL含水物は、実施例1の方法(n−ヘキサン洗浄−酢酸エチル抽出−溶媒・水分除去)を用いて、50%のSLを含有すると見積もられた。
【0051】
【発明の効果】
従って、本発明により、有機溶媒を用いることなく、培養終了液から液体および固形成分を除去し、高濃度のSL含水物を得る方法が提供される。
Claims (4)
- ソホロースリピッドの精製方法であって、
培養で得られた不溶性のソホロースリピッドを含む酸性の培養液を中和して、該ソホロースリピッドを可溶化する工程;
該培養液を固液分離に供し、該培養液中の固形物を除去する工程;
該培養液を酸性にし、該ソホロースリピッドを再び不溶化する工程;および
該ソホロースリピッドを沈降させ、上澄を除去する工程
を包含し、これにより、高濃度のソホロースリピッド含水物が得られる、
精製方法。 - 前記ソホロースリピッド含水物を水を用いて1回以上洗浄する工程、および得られた上澄を除去する工程をさらに包含する、請求項1に記載の精製方法。
- 培養終了時にpH2.0〜3.5である培養液が用いられる、請求項1または2に記載の精製方法。
- 培養終了時に、炭素源として添加した油性基質の残留が、n−ヘキサン抽出物として、培養終了液の重量基準で0.2%以下である培養液を用いる、請求項1から3のいずれか一項に記載の精製方法。
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