しかしながら、上述した特許文献1または特許文献2に記載のような従来の誘導加熱装置では、異なる2つの周波数の電力を重畳して供給することで、被加熱物の透磁率が変化し、特に高い周波数の電力を供給する電源におけるインピーダンスが変動し、加熱効率が低下するおそれがある。このため、被加熱物の所望の焼入れが得られなくなるおそれがある問題点がある。
本発明の目的は、このような問題点に鑑み、良好な誘導加熱が得られる誘導加熱制御装置、誘導加熱装置、および、誘導加熱方法を提供することにある。
本発明の誘導加熱制御装置は、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルに複数の共振手段からそれぞれ異なる周波数の電力を供給して前記被加熱物を誘導加熱する加熱装置の制御をする誘導加熱制御装置であって、前記共振手段で供給する電力の異なる少なくとも2つの周波数を重畳して前記誘導加熱コイルに電力を供給することにより前記被加熱物の透磁率の変化に対応して高い周波数の電力を供給する共振手段で大きさが変化する電力を、前記異なる少なくとも2つの周波数を重畳して供給する直前で供給していた電力状態に維持させるための変換値を取得する変換値取得手段と、この変換値取得手段で取得した変換値に基づいて、前記高い周波数の電力を供給する共振手段から供給する電力の供給状況を変更させる処理手段と、を具備したことを特徴とする。
この発明では、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルへそれぞれ異なる周波数の電力を供給する複数の共振手段で、供給する電力の異なる少なくとも2つの周波数を重畳して誘導加熱コイルに電力を供給することにより、制御手段の変換値取得手段で、変化する被加熱物の透磁率に対応して高い周波数の電力を供給する共振手段で大きさが変化する電力を周波数が重畳した供給の直前で供給していた電力状態に維持させるための変換値を取得し、制御手段の処理手段で、変換値に基づいて高い周波数の電力を供給する共振手段から供給する電力の供給状況を変更している。このため、異なる周波数が重畳する状態で複数の共振手段から電力を供給することで、被加熱物の透磁率が変動して特に高い周波数の電力を供給する共振手段におけるインピーダンスが変動して電力が変動する分を良好に補正でき、安定して高周波の交流電力を供給でき、良好な誘導加熱効率が得られる。
また、本発明の誘導加熱制御装置は、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルに複数の共振手段からそれぞれ異なる周波数の電力を供給して前記被加熱物を誘導加熱する加熱装置の制御をする誘導加熱制御装置であって、前記共振手段で供給する電力の異なる少なくとも2つの周波数を重畳して前記誘導加熱コイルに電力を供給することにより高い周波数の電力を供給する前記共振手段のインピーダンスの変化に対応して、この高い周波数の電力を供給する共振手段で大きさが変化する電力を前記異なる少なくとも2つの周波数を重畳して供給する直前で供給していた電力状態に維持させるための変換値を取得する変換値取得手段と、この変換値取得手段で取得した変換値に基づいて、前記高い周波数の電力を供給する共振手段から供給する電力の供給状況を変更させる処理手段と、を具備したことを特徴とする。
この発明では、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルへそれぞれ異なる周波数の電力を供給する複数の共振手段で、供給する電力の異なる少なくとも2つの周波数を重畳して誘導加熱コイルに電力を供給することにより、制御手段の変換値取得手段で、高い周波数の電力を供給する共振手段における変動するインピーダンスに対応して高い周波数の電力を供給する共振手段で大きさが変動する電力を、周波数が重畳した供給の直前で供給していた電力状態に維持させるための変換値を取得し、制御手段の処理手段で、変換値に基づいて高い周波数の電力を供給する共振手段から供給する電力の供給状況を変更している。このため、異なる周波数が重畳する状態で複数の共振手段から電力を供給することで、被加熱物の透磁率の変動に対応して変動する特に高い周波数の電力を供給する共振手段におけるインピーダンスの変動により、供給する電力が変動する分を良好に補正でき、安定して高周波の交流電力を供給でき、良好な誘導加熱効率が得られる。
そして、本発明では、前記変換値取得手段は、前記変換値を演算により取得する構成とすることが好ましい。この発明では、変換値取得手段にて変換値を演算して取得している。このため、例えば被加熱物の形状や材質、焼入れ状態などに対応して変換値を演算すればよく、汎用性を向上できる。
また、本発明では、前記変換値取得手段は、あらかじめ演算され記憶手段に記憶された前記変換値を読み出して取得する構成とすることが好ましい。この発明では、変換値取得手段にて、あらかじめ演算されて記憶手段に記憶された変換値を読み出して取得する。このため、あらかじめ変換値を記憶させておくことで、安定して高周波の交流電力を供給するための変換値を迅速に取得でき、処理速度を向上できる。
本発明の誘導加熱装置は、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイル、および、異なる周波数の電力を少なくとも異なる2つの周波数が重畳されて前記誘導加熱コイルへ供給可能な複数の共振手段を備えた加熱装置と、この加熱装置の前記共振手段を制御する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の誘導加熱制御装置と、を具備したことを特徴とする。
この発明では、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルと、異なる周波数の電力を少なくとも異なる2つの周波数が重畳されて供給可能な複数の共振手段を備えた加熱装置における共振手段を、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の誘導加熱制御装置にて制御する。このため、異なる周波数が重畳する状態で供給する電力が変動する分を補正でき、安定して高周波の交流電力を供給できる請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の誘導加熱制御装置を利用するので、良好な誘導加熱効率が容易に得られる。
また、本発明の誘導加熱装置は、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルと、この誘導加熱コイルに所定の周波数の電力を供給して前記被加熱物を誘導加熱させる第1の共振手段と、前記誘導加熱コイルに前記第1の共振手段の周波数より低い周波数の電力を供給して前記被加熱物を誘導加熱させる第2の共振手段と、前記第1の共振手段に1次側が接続され前記第2の共振手段に2次側が接続された変圧器と、前記第1の共振手段および前記第2の共振手段を制御して所定の周波数の電力を供給させる制御手段と、を具備し、前記制御手段は、前記第1の共振手段で供給する電力の周波数と前記第2の共振手段で供給する電力の周波数とを重畳して前記誘導加熱コイルに電力を供給することにより前記被加熱物の透磁率が変化する割合に対応して前記第1の共振手段で供給する電力の大きさを制御することを特徴とする。
この発明では、制御手段により、変圧器の1次側に接続され被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルに所定の周波数の電力を供給して被加熱物を誘導加熱させる第1の共振手段と、変圧器の2次側に接続され第1の共振手段の周波数より低い周波数の電力を誘導加熱コイルに供給して被加熱物を誘導加熱させる第2の共振手段とを制御して、第1の共振手段で供給する電力の周波数と第2の共振手段で供給する電力の周波数とを重畳して誘導加熱コイルに電力を供給することにより変化する被加熱物の透磁率の変化割合に対応して、第1の共振手段で供給する電力の大きさを制御している。このため、異なる周波数が重畳する状態で第1の共振手段および第2の共振手段から電力を供給することで、被加熱物の透磁率が変化して特に高い周波数の電力を供給する第1の共振手段におけるインピーダンスが変化して供給する電力が変化する状態でも、制御手段により変化する電力分を制御して供給するので、安定して高周波の電力を供給でき、良好な誘導加熱効率が得られる。
そして、この発明では、前記制御手段は、前記第2の共振手段で周波数を重畳させて電力を供給することにより変動する前記第1の共振手段のインピーダンスの割合に基づいて前記被加熱物の透磁率が変化する割合を認識し、前記第1の共振手段で供給する電力の大きさを制御する構成とすることが好ましい。この発明では、制御手段により、第2の共振手段で周波数を重畳させて電力を供給することにより変動する第1の共振手段のインピーダンスの割合に基づいて、被加熱物の透磁率が変化する割合を認識し、第1の共振手段で供給する電力の大きさを制御している。このため、被加熱物の透磁率の変化の割合に対応した第1の共振手段で供給する電力の大きさをインピーダンスにより容易に認識でき、安定した電力供給のための制御が容易にできる。
さらに、本発明の誘導加熱装置は、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルと、この誘導加熱コイルに所定の周波数の電力を供給して前記被加熱物を誘導加熱させる第1の共振手段と、前記誘導加熱コイルに前記第1の共振手段の周波数より低い周波数の電力を供給して前記被加熱物を誘導加熱させる第2の共振手段と、前記第1の共振手段に1次側が接続され前記第2の共振手段に2次側が接続された変圧器と、前記第1の共振手段および前記第2の共振手段を制御して所定の周波数の電力を供給させる制御手段と、を具備し、前記制御手段は、前記第2の共振手段で周波数を重畳させて電力を供給することにより変動する前記第1の共振手段のインピーダンスの変動状況に対応して、前記第1の共振手段で供給する電力の大きさを制御することを特徴とする。
この発明では、制御手段により、変圧器の1次側に接続され被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルに所定の周波数の電力を供給して被加熱物を誘導加熱させる第1の共振手段と、変圧器の2次側に接続され第1の共振手段の周波数より低い周波数の電力を誘導加熱コイルに供給して被加熱物を誘導加熱させる第2の共振手段とを制御して、第2の共振手段で周波数を重畳させて電力を供給することにより変動する第1の共振手段のインピーダンスの変動状況に対応して、第1の共振手段で供給する電力の大きさを制御している。このため、異なる周波数が重畳する状態で第1の共振手段および第2の共振手段から電力を供給することで、被加熱物の透磁率の変動に対応して変動する第1の共振手段におけるインピーダンスの変動により供給する電力が変化する状態でも、制御手段により変化する電力分を制御して供給するので、安定して高周波の電力を供給でき、良好な誘導加熱効率が得られる。
そして、本発明では、前記制御手段は、前記第1の共振手段のインピーダンスが前記第2の共振手段から電力を供給する直前のインピーダンスに維持される状態に前記第1の共振手段で供給する電力の大きさを制御する構成とすることが好ましい。この発明では、制御手段により、第1の共振手段で供給する電力の大きさの制御として、第1の共振手段のインピーダンスが第2の共振手段から電力を供給する直前のインピーダンスに維持される状態としている。このため、第1の共振手段で供給する電力の変動前の状態で維持させる簡単な制御ででき、第1の共振手段で供給する電力の大きさの制御が容易にできる。
また、本発明では、前記制御手段は、以下の式1に基づいて、前記第1の共振手段で供給する電力の大きさを制御する
式1:VRn=(1/((1−Y)e-x/p+Y)1/2)×VR1
VRn:補正後の第1の共振手段から供給する電力割合
VR1:補正前の第1の共振手段から供給する電力割合
x:第2の共振手段から供給する電力割合
Y:第2の共振手段から規格最大電力値(VR2max)で供給する際の第1の共振手段の負荷抵抗
p:減衰定数(p=VR2max/ABS{ln(1%)},ABS{m}:mの絶対値)
構成とすることが好ましい。この発明では、式1に基づいて演算処理して第1の共振手段で供給する電力の大きさを制御するので、第1の共振手段で供給する電力の変動分を適切な電力の大きさとする制御が演算のみででき、第1の共振手段で供給する電力の大きさの制御が容易にできる。さらには、被加熱物の形状や誘導加熱条件などが異なる場合でも式1にて制御でき、汎用性を向上できる。
さらに、本発明では、前記第1の共振手段は、供給される直流電力を所定の周波数の交流電力に変換して前記誘導加熱コイルに供給する第1の発振手段を備え、前記第2の共振手段は、供給される直流電力を前記第1の発振手段で変換する周波数より低い周波数の交流電力に変換して前記誘導加熱コイルに供給する第2の発振手段を備え、前記制御手段は、前記第1の共振手段から供給する電力の周波数に前記第2の共振手段で周波数を重畳させて電力を供給することで前記第1の発振手段に供給される直流電力の変動を検出し、前記第2の共振手段で周波数を重畳させて電力を供給する直前の直流電力に維持する状態に、前記第1の共振手段で供給する電力の大きさを制御する構成とすることが好ましい。この発明では、制御手段により、供給される直流電力を所定の周波数の交流電力に変換して誘導加熱コイルに供給する第1の共振手段における第1の発振手段に供給される直流電力の変動を検出し、第2の共振手段における第2の発振手段で供給される直流電力を第1の発振手段で変換する周波数より低い周波数の交流電力に変換して周波数を重畳させて誘導加熱コイルに供給する直前での第1の発振手段に供給される直流電力の状態に維持させる制御をする。このため、周波数が重畳する状態で電力が供給される前の第1の共振手段で供給する電力状態で維持する制御が、簡単な制御で容易に得られる。
また、本発明の誘導加熱装置は、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルと、この誘導加熱コイルに所定の周波数の電力を供給して前記被加熱物を誘導加熱させる第1の共振手段と、前記誘導加熱コイルに前記第1の共振手段の周波数より低い周波数の電力を供給して前記被加熱物を誘導加熱させる第2の共振手段と、前記第1の共振手段に1次側が接続され前記第2の共振手段に2次側が接続された変圧器と、前記第1の共振手段で供給する電力の周波数と前記第2の共振手段で供給する電力の周波数とを重畳して前記誘導加熱コイルに電力を供給可能に前記第1の共振手段および前記第2の共振手段を制御するとともに、以下の式1に基づいて前記第1の共振手段で供給する電力の大きさを制御する制御手段と、
式1:VRn=(1/((1−Y)e-x/p+Y)1/2)×VR1
VRn:補正後の第1の共振手段から供給する電力割合
VR1:補正前の第1の共振手段から供給する電力割合
x:第2の共振手段から供給する電力割合
Y:第2の共振手段から規格最大電力値(VR2max)で供給する際の第1の共振手段の負荷抵抗
p:減衰定数(p=VR2max/ABS{ln(1%)},ABS{m}:mの絶対値)
を具備したことを特徴とする。
この発明では、制御手段により、変圧器の1次側に接続され被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルに所定の周波数の電力を供給して被加熱物を誘導加熱させる第1の共振手段と、変圧器の2次側に接続され第1の共振手段の周波数より低い周波数の電力を誘導加熱コイルに供給して被加熱物を誘導加熱させる第2の共振手段とを制御して、式1に基づいて第1の共振手段で供給する電力の大きさを制御している。このため、異なる周波数が重畳する状態で第1の共振手段および第2の共振手段から電力を供給することで、被加熱物の透磁率の変動に対応して変動する第1の共振手段におけるインピーダンスの変動により供給する電力が変化する状態でも、制御手段により変化する電力分を式1に基づく演算にしたがって制御して供給するので、簡単な構成で安定して高周波の電力を供給でき、良好な誘導加熱効率が得られる。
さらに、本発明の誘導加熱装置は、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルと、供給される直流電力を所定の周波数の交流電力に変換する第1の発振手段を備え、この変換した交流電力を前記誘導加熱コイルに供給して前記被加熱物を誘導加熱させる第1の共振手段と、供給される直流電力を前記第1の発振手段で変換する周波数より低い周波数の交流電力に変換する第2の発振手段を備え、この変換した交流電力を前記誘導加熱コイルに供給して前記被加熱物を誘導加熱させる第2の共振手段と、前記第1の共振手段に1次側が接続され前記第2の共振手段に2次側が接続された変圧器と、前記第1の発振手段および前記第2の発振手段に供給される直流電力を、前記第1の共振手段で供給する交流電力の周波数と前記第2の共振手段で供給する交流電力の周波数とを重畳して前記誘導加熱コイルに交流電力を供給可能に制御するとともに、前記第1の発振手段に供給される直流電力を前記第2の共振手段で周波数を重畳させて交流電力を供給する直前の直流電力に維持する状態に制御する制御手段と、を具備したことを特徴とする。
この発明では、制御手段により、変圧器の1次側に接続され第1の発振手段で供給される直流電力を所定の周波数の交流電力に変換して被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルに供給して被加熱物を誘導加熱させる第1の共振手段と、変圧器の2次側に接続され第2の発振手段で第1の発振手段で変換する周波数より低い周波数の電力を誘導加熱コイルに供給して被加熱物を誘導加熱させる第2の共振手段とにおける供給される直流電力を制御し、周波数を重畳させて第2の共振手段から交流電力を供給する直前における第1の共振手段の第1の発振手段に供給される直流電力に維持させる。このため、異なる周波数が重畳する状態で第1の共振手段および第2の共振手段から電力を供給することで、被加熱物の透磁率の変動に対応して変動する第1の共振手段におけるインピーダンスの変動により供給する電力が変化する状態でも、制御手段により変化する電力分を、交流電力に変換する前の直流電力で制御して交流電力を供給するので、簡単な構成で安定して高周波の電力を供給でき、良好な誘導加熱効率が得られる。
そして、本発明では、前記第1の共振手段は、前記第1の発振手段の出力側で前記変圧器の1次側に直列に接続され前記変圧器および前記誘導加熱コイルの無効電力を補償するとともに前記変圧器で前記第2の共振手段から帰還される周波数成分を減衰させるコンデンサを備え、前記第2の共振手段は、前記第2の発振手段の出力側で前記変圧器の2次側に直列に接続され前記第1の共振手段からの周波数の帰還を抑制するとともに前記変圧器および前記誘導加熱コイルの無効電力を補償するコンデンサを備えた構成とすることが好ましい。この発明では、第1の共振手段の第1の発振手段に1次側が接続された変圧器の1次側に直列にコンデンサを接続し、変圧器および誘導加熱コイルの無効電力を補償させるとともに変圧器で低い周波数を供給する第2の共振手段から帰還される周波数成分を減衰させる。さらに、変圧器の2次側に直列に第2の共振手段のコンデンサを直接に接続して第1の共振手段からの周波数の帰還を抑制するとともに変圧器および誘導加熱コイルの無効電力を補償させる。このため、変圧器の2次側が低いインダクタンスとすることで、第2の共振手段にて供給される低い方の周波数の電流にとって低いインピーダンスとなるので、低い方の周波数の電流のバイパスとなり、第2の共振手段の低い方の周波数により誘導加熱コイルで被加熱物を効率的に加熱する。また、第2の共振手段のコンデンサは、低いインダクタンスとした変圧器の無効電力を補償するので、第1の共振手段の高い方の周波数の電流にとって低いインピーダンスに設定することが容易で、第2の共振手段のコンデンサが高い方の周波数の電流のバイパスとなり、第1の共振手段の高い方の周波数により誘導加熱コイルが効率的に加熱される。そして、変圧器の2次側が第1の共振手段の高い周波数の帰還を阻止するためのリアクトルとして機能するので、第2の共振手段に第1の共振手段の高い周波数の帰還を阻止するためのリアクトルなどを設ける必要がなく、構成が簡略化する。
また、本発明では、前記第2の共振手段は、第2の発振手段が電圧形であり、この第2の発振手段の出力側および前記変圧器の2次側に直列に接続され前記第1の共振手段の周波数の帰還を減衰させるリアクトルを備えた構成とすることが好ましい。この発明では、第2の共振手段における電圧形の第2の発振手段の出力側と変圧器の2次側に直列に、第1の共振手段の周波数の帰還を減衰させるリアクトルを接続するので、周波数の帰還を減衰させる程度の比較的に小さいリアクトルを設ける簡単な構成で、第2の発振手段として、例えば交流電源を直流電源に変換した後に所定の周波数の交流電源に変換する構成が容易な電圧形を利用することが可能となる。
そして、本発明の誘導加熱方法は、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルに複数の共振手段からそれぞれ異なる周波数の電力を供給させて前記被加熱物を誘導加熱する誘導加熱方法であって、前記共振手段から供給する電力の少なくとも2つの周波数を重畳して前記誘導加熱コイルに電力を供給することにより前記被加熱物の透磁率が変化する割合に応じて高い周波数の電力を供給する前記共振手段の供給する電力の大きさを制御することを特徴とする。
この発明では、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルにそれぞれ異なる周波数の電力を供給させて被加熱物を誘導加熱させる複数の共振手段から少なくとも2つの異なる周波数を重畳して誘導加熱コイルに電力を供給することにより被加熱物の透磁率が変化する割合に応じて、高い周波数の電力を供給する共振手段で供給する電力の大きさを制御する。このため、異なる周波数が重畳する状態で複数の共振手段から電力を供給することで、被加熱物の透磁率が変動して特に高い周波数の電力を供給する共振手段におけるインピーダンスが変動して供給する電力が変動する分を適切に制御し、安定して高周波の交流電力を供給でき、良好な誘導加熱効率が得られる。
また、本発明の誘導加熱方法は、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルに複数の共振手段からそれぞれ異なる周波数の電力を供給させて前記被加熱物を誘導加熱する誘導加熱方法であって、前記共振手段から供給する電力の少なくとも2つの周波数を重畳して前記誘導加熱コイルに電力を供給することにより高い周波数の電力を供給する前記共振手段のインピーダンスの変動状況に対応して前記高い周波数の電力を供給する共振手段の供給する電力の大きさを制御することを特徴とする。
この発明では、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルにそれぞれ異なる周波数の電力を供給させて被加熱物を誘導加熱させる複数の共振手段から少なくとも2つの異なる周波数を重畳して誘導加熱コイルに電力を供給することにより高い周波数の電力を供給する共振手段のインピーダンスの変動状況に対応して、高い周波数の電力を供給する共振手段で供給する電力の大きさを制御する。このため、異なる周波数が重畳する状態で複数の共振手段から電力を供給することで、被加熱物の透磁率の変動に対応して変動する特に高い周波数の電力を供給する共振手段におけるインピーダンスの変動により電力が変動する分を適切に制御し、安定して高周波の交流電力を供給でき、良好な誘導加熱効率が得られる。
さらに、本発明の誘導加熱方法は、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルに複数の共振手段からそれぞれ異なる周波数の電力を供給させて前記被加熱物を誘導加熱する誘導加熱方法であって、前記共振手段から供給する電力の少なくとも2つの周波数を重畳して前記誘導加熱コイルに電力を供給する際に、以下の式1に基づいて、高い周波数の電力を供給する前記共振手段で供給する電力の大きさを制御する
式1:VRn=(1/((1−Y)e-x/p+Y)1/2)×VR1
VRn:補正後の高い周波数側の共振手段から供給する電力割合
VR1:補正前の高い周波数側の共振手段から供給する電力割合
x:低い周波数側の共振手段から供給する電力割合
Y:低い周波数側の共振手段から規格最大電力値(VR2max)で供給する際の第1の共振手段の負荷抵抗
p:減衰定数(p=VR2max/ABS{ln(1%)},ABS{m}:mの絶対値)
ことを特徴とする。
この発明では、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルにそれぞれ異なる周波数の電力を供給させて被加熱物を誘導加熱させる複数の共振手段から少なくとも2つの異なる周波数を重畳して誘導加熱コイルに電力を供給することにより高い周波数の電力を供給する共振手段で供給する電力の大きさを、式1に基づいて制御する。このため、異なる周波数が重畳する状態で複数の共振手段から電力を供給することで、被加熱物の透磁率の変動に対応して変動する高い周波数の電力を供給する共振手段におけるインピーダンスの変動により供給する電力が変化する状態でも、制御手段により変化する電力分を式1に基づく演算にしたがって制御して供給するので、簡単な構成で安定して高周波の電力を供給でき、良好な誘導加熱効率が得られる。
また、本発明の誘導加熱方法は、直流電力を所定の異なる周波数の交流電力にそれぞれ変換する複数の共振手段から被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルにそれぞれ供給させて前記被加熱物を誘導加熱する誘導加熱方法であって、前記共振手段から供給する交流電力の少なくとも2つの周波数を重畳して前記誘導加熱コイルに交流電力を供給する際に、高い周波数の交流電力を供給する前記共振手段に供給される直流電力を、低い周波数の交流電力を重畳して供給する前記共振手段で交流電力を供給する直前における直流電力に維持する状態に制御することを特徴とする。
この発明では、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルに直流電力をそれぞれ異なる周波数の交流電力に変換してそれぞれ供給させる複数の共振手段から、少なくとも2つの異なる周波数を重畳して誘導加熱コイルに交流電力を供給する際に、高い周波数の交流電力を供給する共振手段に供給される直流電力を、低い周波数の交流電力を重畳して供給する共振手段で交流電力を供給する直前における直流電力に維持する状態に制御する。このため、異なる周波数が重畳する状態で複数の共振手段から電力を供給することで、被加熱物の透磁率の変動に対応して変動する高い周波数の交流電力を供給する共振手段におけるインピーダンスの変動により供給する電力が変化する状態でも、変化する供給電力分を、交流電力に変換する前の直流電力で制御して交流電力を供給するので、簡単な構成で安定して高周波の電力を供給でき、良好な誘導加熱効率が得られる。
以下、本発明の一実施の形態における誘導加熱装置を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態における誘導加熱装置は、例えば異なる2つの周波数を用いて、被加熱物を誘導加熱処理する構成について説明するが、異なる周波数としては、2種類に限らず、複数の周波数を重畳してもよい。また、被加熱物としては、表面に複数の凹凸を有する複雑な形状の例えば歯車やねじ、ボルト、ナットなどの他、シャフトのような筒状の部材、異なる材料が積層する複合材料など、いずれを対象とすることができる。図1は、本実施の形態における誘導加熱装置の概略構成を示す回路図である。
〔誘導加熱装置の構成〕
図1において、100は誘導加熱装置で、この誘導加熱装置100は、異なる2つの周波数を利用して、例えば歯車などの凹凸の被加熱面を有する被加熱物101を誘導加熱して焼入れする装置である。この誘導加熱装置100は、被加熱物101を誘導加熱する誘導加熱コイル110と、変圧器としての第1の変圧器120と、誘導加熱コイル110に所定の周波数、例えば周波数が50kHz以上1MHz以下の高周波の電力を供給して誘導加熱させる第1の共振手段130と、誘導加熱コイル110に第1の共振手段130の周波数より低い周波数、例えば1kHz以上50kHz以下の中周波の電力を供給して加熱させる第2の共振手段140と、制御手段150と、を備えている。
誘導加熱コイル110は、第1の共振手段130および第2の共振手段140に直列に接続されている。そして、誘導加熱コイル110は、第1の共振手段130からの高周波の交流電力および第2の共振手段140からの中周波の交流電力が供給され、被加熱物101を誘導加熱する。
第1の変圧器120は、第1の共振手段130および第2の共振手段140に接続されるとともに誘導加熱コイル110に接続され、所定の周波数の交流電力を誘導加熱コイル110に供給する。この第1の変圧器120は、例えば自己インダクタンスが小さいもの、すなわち空芯結合形のもので、2次側となる2次巻線122および3次巻線123が1回巻きで、これら2次巻線122および3次巻線123のインダクタンスの値と、誘導加熱コイル110のインダクタンスの値とが略同一となる状態に設定されたものである。そして、第1の変圧器120は、2次巻線122の一端側と、3次巻線123の他端側との間に、誘導加熱コイル110が接続されている。
第1の共振手段130は、第1の発振手段131と、第2の変圧器132と、第1のコンデンサC1と、を備えている。また、第1の発振手段131は、第1のコンバータ131Aと、第1の平滑コンデンサCf1と、第1のインバータ131Bと、を備えている。第1のコンバータ131Aは、例えば各種のブリッジ整流回路が用いられる順変換回路で、商用交流電源eに接続されて商用交流電源eの交流電力を直流電力に変換する。この変換した直流電力は、第1の平滑コンデンサCf1を介して適宜平滑され、第1のインバータ131Bへ出力される。第1のインバータ131Bは、例えば電圧形インバータで、第1の平滑コンデンサCf1を介して入力される直流電力を所定の周波数である上述した高周波の交流電力に変換する。また、第1のインバータ131Bの出力端子間には、第2の変圧器132の1次巻線132Aが直列に接続されている。
そして、第1の共振手段130は、第2の変圧器132の2次巻線132Bの出力端子間に、第1のコンデンサC1および第1の変圧器120の1次巻線121の直列回路が直列に接続されて構成される。すなわち、第1のコンデンサC1は、第1のインバータ131Bから出力され第2の変圧器132を介して供給される所定の高周波の交流電力により直列共振状態となり、誘導加熱コイル110にて被加熱物101を誘導加熱させる。また、第1のコンデンサC1は、第1の変圧器120および誘導加熱コイル110の無効電力を補償するとともに、第1の変圧器120で第2の共振手段140から帰還される交流電力の中周波成分を減衰する。そして、第1の共振手段130は、上述したように、周波数が50kHz以上1MHz以下の高周波の交流電力を第1の変圧器120を介して誘導加熱コイル110に供給し、第1のコンデンサC1で直列共振により、被加熱物101を誘導加熱させる。ここで、周波数が50kHzより低くなると、特に歯車での被加熱面が凹凸の被加熱物101の良好な焼入れが得られなくなるおそれがある。一方、1MHzより高くなると、良好な誘導加熱が得られにくくなるおそれがある。このため、第1の共振手段130で供給する周波数は、50kHz以上1MHz以下の範囲に設定することが好ましい。
第2の共振手段140は、第2の発振手段141と、リアクトルL1と、第2のコンデンサC2と、第3の変圧器142と、第3のコンデンサC3と、第4のコンデンサC4と、を備えている。また、第2の発振手段141は、第1の共振手段130と同様に、第2のコンバータ141Aと、第2の平滑コンデンサCf2と、第2のインバータ141Bと、を備えている。第2のコンバータ141Aは、例えば各種のブリッジ整流回路が用いられる順変換回路で、商用交流電源eに接続されて商用交流電源eの交流電力を直流電力に変換する。この変換した直流電力は、第2の平滑コンデンサCf2を介して適宜平滑され、第2のインバータ141Bへ出力される。第2のインバータ141Bは、例えば電圧形インバータで、第2の平滑コンデンサCf2を介して入力される直流電力を所定の周波数である上述した中周波の交流電力に変換する。
そして、第2の共振手段140は、第2のインバータ141Bの出力端子間に、リアクトルL1と、第2のコンデンサC2と、第3の変圧器142の1次巻線142Aとの直列回路が接続されている。また、第2の共振手段140は、第3の変圧器142の2次巻線142B間に、第3のコンデンサC3および第4のコンデンサC4の直列回路が接続されている。この第3のコンデンサC3および第4のコンデンサC4の接続点は、グランドに接続されている。さらに、第2の共振手段140は、第3の変圧器142の2次巻線142Bの出力端子が、第1の変圧器120の2次巻線122の他方および3次巻線123の一方に接続されている。そして、第2の共振手段140は、リアクトルL1が第1の共振手段130の高周波の帰還成分を減衰し、直列共振回路を構成する。また、第3のコンデンサC3および第4のコンデンサC4は、中周波の交流電流をバイパスするために第1の変圧器120の2次側を低いインダクタンスとした第1の変圧器120の無効電力を補償する。そして、第2の共振手段140は、上述したように、周波数が1kHz以上50kHz以下の中周波の交流電力を誘導加熱コイル110に供給し、リアクトルL1および第2のコンデンサC2の直列共振により、被加熱物101を誘導加熱させる。ここで、周波数が1kHzより低くなると、良好な誘導加熱が得られにくくなるおそれがある。一方、50kHzより高くなると、被加熱物101の内部に亘る良好な誘導加熱が得られなくなるおそれがある。このことから、第2の共振手段140にて供給する周波数は、1kHz以上50kHz以下が好ましい。
制御手段150は、第1の共振手段130および第2の共振手段140の動作を制御する。この制御手段150は、第1の共振手段130および第2の共振手段140から誘導加熱コイル110に供給する交流電力の大きさを、作業者による入力操作にて設定する図示しない操作手段を備えている。具体的には、操作手段は、例えば作業者が入力操作可能な操作つまみを有する操作手段を備え、第1の共振手段130および第2の共振手段140の最大出力をそれぞれ100%として、0%以上100%以下の範囲で操作つまみが入力操作されることで、第1の共振手段130および第2の共振手段140を電流一定制御にて、それぞれ入力操作された設定値に対応する電流値となる交流電力をそれぞれ設定入力する。そして、制御手段150は、第1の共振手段130で所定の高周波の交流電力を、設定された出力割合で電流値が一定となる状態に電流一定制御で誘導加熱コイル110に供給させる。さらに、制御手段150は、第2の共振手段140で所定の中周波の交流電力を、同様に電流一定制御で設定された出力割合の交流電力を誘導加熱コイル110に供給させる。これら高周波の交流電力および中周波の交流電力は、それぞれ独立して供給可能であるとともに、高周波および中周波が適宜重畳する状態に供給可能となっている。そして、制御手段150は、高周波および中周波が重畳する状態に交流電力を供給させる際、以下に示す式1に基づいて、第1の共振手段130の設定値を補正し、一定の交流電力を供給する状態に制御する。なお、電流一定制御であることから、設定値と供給される電流値とは正比例する関係、例えば最大規格値が10000Aである場合、設定値が9%であれば約900A、50%であれば約5000A、100%であれば約10000Aとなる。
すなわち、制御手段150は、プログラムとしての、図示しない変換値取得手段と、処理手段と、などを備えている。変換値取得手段は、異なる高周波および中周波を重畳する状態で交流電力を第1の共振手段130および第2の共振手段140から供給することにより、被加熱物101の透磁率が変化し、この変化する透磁率に対応して高い周波数側となる第1の共振手段130におけるインピーダンスが低下し、第1の共振手段130から供給する交流電力が低下することとなる。このことにより、変換値取得手段は、低下する電力分を、重畳する前の状態に補正するための変換値としての補正値を、式1に基づいて演算する。すなわち、設定値と電流値が正比例する関係であることから、1次関数で補正値が演算される。なお、式1は、例えば制御手段150に構成された図示しないメモリなどの記憶手段に適宜記憶される。また、本実施の形態では、変換値として、設定値を補正する補正値である補正された設定値を演算する構成について説明するが、変換値としてはこの限りではなく、例えば被加熱物101の形状や材質、誘導加熱条件などに基づいてあらかじめマトリックス状に設定された変換値を読み取ったり、被加熱物101の形状や材質など毎に、式1からより詳細に設定された式に基づいて演算、具体的には設定値と電流値とが正比例の関係でない2次や指数などの関数関係である場合、その関数に基づいて演算すればよい。そして、記憶する構成としては、あらかじめ式や変換値が記録された記録媒体から制御手段150に記憶させたり、操作手段による入力操作にて制御手段150に設定して記憶させるなど、いずれの方法が利用できる。そして、この変換値取得手段で演算した補正値に基づいて、処理手段が第1の共振手段130を制御し、変換した補正後の設定による電流値の交流電力を供給させる。
(式1)
VRn=(1/((1−Y)e-x/p+Y)1/2)×VR1
VRn:補正後の高い周波数側の共振手段から供給する電力割合
(すなわち補正後の第1の共振手段130における設定値)
VR1:補正前の高い周波数側の共振手段から供給する電力割合
(すなわち補正前の第1の共振手段130における設定値)
x:低い周波数側の共振手段から供給する電力割合
(すなわち第2の共振手段140における設定値(=VR2))
Y:低い周波数側の共振手段(第2の共振手段140)から規格最大電力値(規格最大設定値:VR2max)で供給する際の第1の共振手段130の負荷抵抗
p:減衰定数(p=VR2max/ABS{ln(1%)},ABS{m}:mの絶対値)
〔誘導加熱装置の動作〕
(誘導加熱処理)
次に、上述した一実施の形態における誘導加熱装置100の動作として、誘導加熱処理の動作を説明する。
制御手段150により、あらかじめ誘導加熱する状態に対応して設定された設定値に基づいて第1の共振手段130における第1の発振手段131で変換された高周波の交流電力が出力されると、第1のコンデンサC1が直列共振状態となり、第1の変圧器120を介して誘導加熱コイル110に供給され、誘導加熱コイル110により被加熱物101を誘導加熱する。この誘導加熱コイル110へ高周波の交流電力を供給している際、第2の共振手段140において、リアクトルL1が第1の共振手段130の高周波の帰還成分を減衰するとともに、第3のコンデンサC3および第4のコンデンサC4が第1の変圧器120の無効電力を補償する。
また、制御手段150により、あらかじめ誘導加熱する状態に対応して設定された設定値に基づいて第2の共振手段140における第2の発振手段141で変換された中周波の交流電力が出力されると、リアクトルL1および第2のコンデンサC2が直列共振状態となり、第1の変圧器120の2次巻線122および3次巻線123をバイパスして、誘導加熱コイル110に供給され、誘導加熱コイル110により被加熱物101を誘導加熱する。この誘導加熱コイル110へ中周波の交流電力を供給している際、第1のコンデンサC1が中周波の帰還を減衰し、第1の変圧器120の2次巻線122および3次巻線123をバイパスして誘導加熱コイル110に中周波の交流電力が供給される。
ここで、高周波および中周波の交流電力を、高周波と中周波とが重畳する状態で供給する場合、供給する中周波の交流電力の電流値が高くなるにしたがって、被加熱物101の透磁率の変化に伴って高周波側となる第1の共振手段130における交流電力のインピーダンスが低下する。このことにより、制御手段150は、第1の共振手段130におけるインピーダンスの低下による供給する交流電力の電流値の低下分を、上述した式1に基づいて補う補正制御をする。具体的には、制御手段150の変換値取得手段にて、記憶手段に記憶された式1に基づいて、操作手段で作業者により設定された設定値VR1から補正後の設定値VRnを演算する。この演算した補正後の設定値VRnで第1の共振手段130から交流電力を供給させる状態で、制御手段150の処理手段で第1の共振手段130を制御し、周波数が重畳する状態で交流電力を供給する直前で供給していた状態と同様の大きさの交流電力を供給させる。
(補正値)
ここで、第1の共振手段130から供給する電力の低下分を補正するための上述した式1について、以下に図面を参照して説明する。図2は、本発明のおける高周波側の第1の共振手段で供給する電力の大きさを制御する制御方法を設定するための実験装置を示す回路図である。図3は、異なる周波数の交流電力の供給状況による第1の共振手段における電圧値および電流値を測定するタイミングを説明するタイミングチャートで、(A)は第1の共振手段における交流電力の供給状況を示す波形図、(B)は第2の共振手段における交流電力供給状況を示す波形図である。図4は、第2の共振手段で周波数を重畳して交流電力を供給した際の中周波のバイアス電流の大きさに対する第1の共振手段におけるインピーダンスの変化率を示すグラフである。
まず、周波数が重畳する状態で交流電力を供給した場合の高周波側のインピーダンスが低下する状況を認識する実験を実施した。実験装置として、図2に示す構成の誘導加熱装置200を利用した。なお、図1に示す誘導加熱装置100と同一の構成については同一の符号を付して、説明を省略する。
図2に示す誘導加熱装置200は、上述した図1に示す誘導加熱装置100における電圧形直列共振タイプの第2の共振手段140に代えて、電流形並列共振タイプの第2の共振手段240としたものである。すなわち、誘導加熱装置200は、誘導加熱コイル110と、変圧器としての第1の変圧器120と、高周波側が電圧形直列共振タイプの第1の共振手段130と、中周波側が電流形並列共振タイプの第2の共振手段240と、などを備えている。誘導加熱コイル110は、例えば内径135.0mm、幅寸法140.0mm、巻数1回のものである。第1の変圧器120は、第1の変圧器120と同様に、自己インダクタンスが小さいもの、例えば空芯結合形のもので、さらには2次側である2次巻線122が1回巻きで誘導加熱コイル110のインダクタンスの値と略同一に設定されたものである。第1の共振手段130は、誘導加熱装置100と同様に、第1の発振手段131における第1のインバータ131Bの出力端子間に、第1のコンデンサC1および第1の変圧器120の1次巻線121の直列回路が接続されて構成されている。そして、第1のコンデンサC1は、第1のインバータ131Bから出力される所定の電圧で所定の高周波の交流電力により、第1のコンデンサC1が直列共振状態となり、誘導加熱コイル110にて被加熱物101を誘導加熱させる。この第1のコンデンサC1は、第1の変圧器120および誘導加熱コイル110の無効電力を補償するとともに、第1の変圧器120で第2の共振手段240から帰還される交流電力の中周波成分を減衰する。
第2の共振手段240は、第2のコンバータ141A、第2のリアクトルLf2、および第2のインバータ241Bを備えた第2の発振手段241と、第3のコンデンサC3と、を備えている。第2の発振手段241の第2のコンバータ141Aは、第1のコンバータ131Aと同様に、順変換回路で、商用交流電源eに接続されて商用交流電源eからの交流電力を直流電力に変換し、第2のリアクトルLf2を介して直流電流が急変しないように第2のインバータ241Bへ出力する。第2のインバータ241Bは、例えば電流形インバータで、第2のリアクトルLf2を介して入力される直流電力を所定の周波数である中周波の交流電力に変換して出力する。第3のコンデンサC3は、誘導加熱コイル110に並列で第1の変圧器120の2次巻線122に直列に接続され、第2のインバータ241Bから出力される中周波の交流電力により並列共振状態となり、誘導加熱コイル110にて被加熱物101を誘導加熱させる。この第3のコンデンサC3は、第1の共振手段130の高周波の電流にとって十分に小さいインピーダンスに設定され、第1の変圧器120および誘導加熱コイル110の無効電力を補償する。すなわち、第2のコンデンサC3は、インダクタンスが小さく設定された第1の変圧器120の無効電力と、第1の変圧器120が略同一に設定されたインダクタンスである誘導加熱コイル110の無効電力とを補償する程度に設定されていればよく、高周波の交流電流にとって低いインピーダンスに設定される。さらに、第3のコンデンサC3は、第1の共振手段130からの高周波の帰還を抑制する。
そして、誘導加熱装置200は、第1の共振手段130の第1の発振手段131から高周波の交流電力が出力されると、第1のコンデンサC1が直列共振状態となり、第1の変圧器120で所定の電圧に変換して2次巻線122から誘導加熱コイル110へ供給される。この誘導加熱コイル110への高周波の供給の際、第2の共振手段240の第3のコンデンサC3は、インピーダンスが十分に小さく設定されているので、高周波の電流のバイパスとなり、高周波が誘導加熱コイル110に効率よく供給され、誘導加熱コイル110で被加熱物101を誘導加熱する。なお、第2の共振手段240の第3のコンデンサC3により、第1の共振手段130からの高周波の帰還が抑制され、高周波の帰還による第2の共振手段240の損傷が防止される。また、第2の発振手段241から中周波の交流電力が出力されると、第3のコンデンサC3が並列共振状態となり、誘導加熱コイル110へ中周波の交流電力が供給されて被加熱物101が誘導加熱される。この中周波の供給の際、第1の変圧器120の2次巻線122が低いインダクタンスであることから中周波の交流電流にとって低いインピーダンスとなるので、第1の変圧器120の2次巻線122が中周波の交流電流のバイパスとなり、中周波が誘導加熱コイル110へ効率よく供給される。なお、第1の共振手段130の第1のコンデンサC1により、第1の変圧器120で第2の共振手段240からの中周波の帰還が減衰され、中周波の帰還による第1の共振手段130の損傷が防止される。
この誘導加熱装置200を用いて、誘導加熱を実施し、交流電力の供給状況を測定する実験を実施した。被加熱物101としては、外形が115.0mmの鋼管を用いた。また、誘導加熱装置200は、第1の共振手段130における第1の発振手段131を出力200kWで周波数212kHz、第2の共振手段240における第2の発振手段241を出力200kWで周波数12kHzに設定した。そして、誘導加熱の処理は、まず第1の共振手段130で設定値が40%、交流電流が180A、周波数が212kHzの高周波の交流電力を誘導加熱コイル110へ供給させる電流一定制御をし、被加熱物101が誘導加熱されて供給する交流電力が安定した状態で第2の共振手段240から、各設定値の出力で中周波の交流電力を誘導加熱コイル110へ高周波に重畳する状態に電圧一定制御で電圧が安定するまで供給し、鋼管を誘導加熱した。この中周波の供給開始時の直前および直後と、中周波の供給停止時の直前および直後との4点のタイミングで第1の共振手段130における交流電力の供給状況を測定、すなわち、図3に示す測定点A,B,C,Dのタイミングで電圧値および電流値をそれぞれ測定した。そして、これら電圧値および電流値に基づいてインピーダンスを演算し、第1の共振手段130におけるインピーダンスの変化状況を確認した。その結果を、表1、表2および図4に示す。
これら表1、表2および図4に示す結果から、中周波の供給開始時の前後と供給停止時の前後とにおける第1の共振手段130でのインピーダンスの変化の割合(ZB/ZAとZC/ZD)には、ほぼ等しく、被加熱物101の誘導加熱による温度の影響はあまり認められなかった。そして、中周波を重畳して供給することにより、第1の共振手段130は電流一定制御をしているので、第2の共振手段240から供給する交流電力のバイアス電流値が高くなるにしたがって、第1の共振手段130から供給する高周波の交流電力の電圧値が低下、すなわち第1の共振手段130におけるインピーダンスが低下することが認められた。すなわち、異なる周波数を重畳して誘導加熱コイル110に交流電力を供給することで、被加熱物101の透磁率が低下する状態に変動し、特に高周波側のインピーダンスが低下するものと考えられる。したがって、第1の共振手段130からの高周波の出力が低下することとなるので、高周波による被加熱物101の表面における所望する焼入れが得られるためには、第1の共振手段130から供給する高周波の交流電力を、第2の共振手段240から中周波の交流電力を供給する直前の状態に維持する必要がある。すなわち、周波数を重畳する状態で交流電力を供給する場合では、透磁率の変動に対応して高周波側のインピーダンスの低下により、必要な高周波のコイル電流に対して減少する分を補う処理が必要となる。
具体的には、第1の共振手段130のみから交流電力を供給する高周波単独運転では、第1の共振手段130の設定値VR1を40%とした場合、表1に示すように、交流電力の電圧値Vdcは約193Vで電流値Idcは180Aとなり、電力値Pdcは約34.7kW(=193〔V〕×180〔A〕)となる。また、誘導加熱装置200の第1の共振手段130における直流インピーダンスと逆変換器出力インピーダンスとの変換係数を0.8とすると、第1の共振手段130から見た誘導加熱コイル110のインピーダンスZは、0.8×Zdc=0.8×(193/180)≒0.86〔Ω〕となる。
一方、高周波に中周波を重畳して交流電力を供給する状態では、第2の共振手段240の設定値VR2を70%とした場合、第1の共振手段130からの交流電力の電圧値Vdcは115Vで電流値Idcは180Aとなり、電力値Pdcは約20.7kW(=115〔V〕×180〔A〕)となる。このため、第1の共振手段130から見た誘導加熱コイル110のインピーダンスZは、0.8×Zdc=0.8×(115/180)=0.51〔Ω〕となる。このため、インピーダンスの減少割合は、0.51/0.86≒0.59となる。すなわち、投入する電力も20.7/34.7≒0.6となり、60%減少することとなる。
そして、上述したように、設定値と電流値とが正比例となる電圧形で電流一定制御をしている。このため、補う電流値分が設定値にほぼ対応することとなるので、設定値をインピーダンスの減少割合に対応して補正すればよいこととなる。すなわち、以下に示す式2にて、インピーダンスの減少割合の逆数で設定値を補正できることとなる。
(式2)
VRn=K×VR1
VRn:補正後の第1の共振手段における設定値
VR1:補正前の第1の共振手段における設定値
K:補正定数
ここで、第1の共振手段130における設定値は電流のため、交流電力と2乗の関係ある。このことにより、補正定数Kは、以下に示す式3で表される。
(式3)
K=(1/y)1/2
y:インピーダンスの減少割合
そして、第2の共振手段240の設定値が約35%となる誘導加熱コイル110におけるコイル電流が3600Aから高くなると、インピーダンスはほぼ安定した。すなわち、インピーダンスの減少割合は、図4のグラフ形状からも分かるように、ある程度の中周波のバイアス電流値で安定し、おおよそ指数関係となっている。したがって、インピーダンスの減少割合yは、以下に示す式4で表される。
(式4)
y=(1−Y)e-x/p+Y
x:第2の共振手段における設定値(=VR2)
(すなわち、0≦VR1≦1)
Y:第2の共振手段における最大設定値(VR2max)時の第1の共振手段におけるインピーダンスの減少割合(ZB/ZA)
(すなわち、第1の共振手段におけるインピーダンスが安定する減少分)
p:減衰定数
ここで、所望の焼入れが得られるように誤差分を小さくすべく、第2の共振手段240における最大設定値時で第1の共振手段130におけるインピーダンスが安定する漸近線に対する誤差を1%以下に設定する。すなわち、減衰定数pは、以下に示す式5で表される。
(式5)
p=VR2max/ABS{ln(1%)}
=1/4.6
=0.217
ABS{m}:mの絶対値
これら式2ないし式5に基づいて、周波数が重畳する状態で高周波のインピーダンスが低下する分を補正するための補正値を演算する関係式は、上述した式1で表される。すなわち、インピーダンスの低下分を補うために設定値が補正された補正値は、式1に基づいて演算される。
そして、式1を用いて、上述した誘導加熱装置200における鋼管を輪郭焼入れ、すなわち外面から所定の厚さで焼入れする処理では、以下の式6に示すように補正値が演算される。
(式6)
VRn=(1/((1−Y)e-x/p+Y)1/2)×VR1
=(1/((1−0.59)e(-70/21.7)+0.59)1/2)×0.40
=1.285×0.40
=0.514
一方、この得られた補正値である新たな設定値で運転した場合、第1の共振手段130からの交流電力の電圧値Vdcは115〔V〕×1.285=148〔V〕、電流値Idcは180〔A〕×1.285=231〔A〕となり、電力値Pdcは34.2kW(=148〔V〕×231〔A〕)となる。そして、第1の共振手段130からのみ交流電力を供給する単独運転時、すなわち測定点Aでは上述したように、34.7kWであることから、ほぼ同じ値となり、良好に補正できることがわかる。なお、補正後におけるインピーダンスは、0.8×(148〔V〕/231〔A〕)=0.51〔Ω〕で、測定点Bにおける周波数を重畳して供給することによるインピーダンスと同一であるが、電力値は34.2kWである。このことから、制御手段150による制御により、周波数を重畳して供給することによる高周波のインピーダンスが低下する分を補償し、周波数を重畳して交流電力を供給する直前の測定点Aにおける誘導加熱と同一の状態で誘導加熱できる。
なお、被加熱物101として鋼管に代えて歯車を輪郭焼入れする条件でも同様に実験した結果、第1の共振手段130におけるインピーダンスの変化率は、同様に、ほぼ指数関数的に減少することが認められた。
〔誘導加熱装置の作用効果〕
上述したように、上記実施の形態では、被加熱物101を誘導加熱する誘導加熱コイル110へそれぞれ異なる周波数の電力を供給する第1の共振手段130および第2の共振手段140,240で、供給する交流電力の異なる少なくとも2つの周波数である高周波と中周波とを重畳して誘導加熱コイル110に交流電力を供給することにより、制御手段150の変換値取得手段で、変化する被加熱物101の透磁率に対応して高い周波数の電力を供給する第1の共振手段130で大きさが変化する電力を周波数が重畳した供給の直前で供給していた電力状態に維持させるための補正値を取得すなわち演算し、制御手段150の処理手段で、演算した補正値に基づいて高い周波数の交流電力を供給する第1の共振手段130から供給する電力の供給状況を変更している。このため、異なる周波数が重畳する状態で第1の共振手段130および第2の共振手段140,240から電力を供給することで、被加熱物101の透磁率が変動して特に高い周波数の交流電力を供給する第1の共振手段130におけるインピーダンスが変動して電力が変動する分を補正でき、安定して高周波の交流電力を供給でき、良好な誘導加熱効率が得られ、良好な輪郭焼入れ処理が得られる。
そして、制御手段150は、第2の共振手段140,240で周波数を重畳させて交流電力を供給することにより変動する第1の共振手段130のインピーダンスの変化の割合に基づいて被加熱物101の透磁率が変化する割合を認識し、第1の共振手段130で供給する交流電力の大きさを制御している。このため、被加熱物101の透磁率の変化の割合に対応した第1の共振手段130で供給する電力の大きさをインピーダンスにより容易に認識でき、安定した電力供給のための制御が容易にできる。
さらに、制御手段150は、具体的に式1に基づいて、第1の共振手段130で供給する電力の大きさを制御している。このため、第1の共振手段130で供給する電力の変動分を適切な電力の大きさとする制御が演算のみででき、第1の共振手段130で透磁率の変動に対応してインピーダンスが変動する状況に応じて供給する電力の大きさの制御が容易にできる。特に、実験値に基づいてインピーダンスの変化率に基づき、この変化する割合分を補正する式1、すなわち指数関数的に変動するインピーダンスの変化率に対応した式1を求め、この式1に基づいて補正値を演算している。このため、適切に電力の減少分を補う制御が得られる。さらには、被加熱物101の形状や誘導加熱条件などが異なる場合でも式1にて制御でき、汎用性を向上できる。また、制御手段150の変換値取得手段は、式1に基づいて演算により変動する電力分を補正する補正値を取得している。このため、被加熱物101の形状や材質、焼入れ状態などの誘導加熱条件などに対応して補正値を適宜演算すればよく、汎用性を向上できる。
また、制御手段150により、供給される直流電力を所定の周波数の交流電力に変換して誘導加熱コイル110に供給する第1の共振手段130における第1の発振手段131の第1のインバータ131Bに供給される直流電力の変動を検出し、第2の共振手段140,240における第2の発振手段141,241の第2のインバータ141B,241Bで供給される直流電力を第1の発振手段131で変換する周波数より低い周波数の交流電力に変換して周波数を重畳させて誘導加熱コイル110に供給する直前での第1の発振手段131における第1のインバータ131Bに供給される直流電力の状態に維持させる制御をする。このため、周波数が重畳する状態で電力が供給される前の第1の共振手段130で供給する電力状態で維持する制御が、直流電力の簡単な制御で容易に得られる。
そして、図1に示す誘導加熱装置100の構成では、第2の共振手段140は、第2の発振手段141が電圧形であり、この第2の発振手段141の出力側および第1の変圧器120の2次側に対して直列に接続され第1の共振手段130の周波数の帰還を減衰させるリアクトルL1を備えた構成としている。このため、周波数の帰還を減衰させる程度の比較的に小さいリアクトルL1を設ける簡単な構成で、第2の発振手段141として、例えば交流電源を直流電源に変換した後に所定の周波数の交流電源に変換する構成が容易な電圧形を利用することができる。
また、図2に示す誘導加熱装置200の構成では、第1の共振手段130として、第1の発振手段131の出力側で第1の変圧器120の1次側に直列に接続され第1の変圧器120および誘導加熱コイル110の無効電力を補償するとともに第1の変圧器120で第2の共振手段240から帰還される周波数成分を減衰させる第1のコンデンサC1を備えた構成としている。また、第2の共振手段240としては、第2の発振手段241の出力側で第1の変圧器120の2次側に直列に接続され第1の共振手段130からの周波数の帰還を抑制するとともに第1の変圧器120および誘導加熱コイル110の無効電力を補償する第3のコンデンサC3を備えた構成としている。このため、第1の変圧器120の2次側を低いインダクタンスとすることで、第2の共振手段240にて供給される低い方の周波数の電流にとって低いインピーダンスとなるので、低い方の周波数の電流のバイパスとなり、第2の共振手段240の低い方の周波数により誘導加熱コイル110で被加熱物101を効率的に加熱する。また、第2の共振手段240の第3のコンデンサC3は、低いインダクタンスとした第1の変圧器120の無効電力を補償するので、第1の共振手段130の高い方の周波数の電流にとって低いインピーダンスに設定することが容易で、第2の共振手段240の第3のコンデンサC3が高い方の周波数の電流のバイパスとなり、第1の共振手段130の高い方の周波数により誘導加熱コイル110で被加熱物101が効率的に誘導加熱される。そして、第1の変圧器120の2次側が第1の共振手段130の高い周波数の帰還を阻止するためのリアクトルとして機能するので、第2の共振手段240に第1の共振手段130の高い周波数の帰還を阻止するためのリアクトルなどを設ける必要がなく、構成が簡略化する。
〔実施の形態の変形例〕
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などの種々の変更は本発明に含まれるものである。
例えば、図1に示す誘導加熱装置100、すなわち第1の共振手段130として電圧形直列共振タイプで、第2の共振手段140として電圧形直列共振タイプとした構成としては、例えば図5に示す構成としてもよい。図5は、本発明におけるさらに他の実施の形態に係る誘導加熱装置の概略構成を示す回路図で、図1に示す誘導加熱装置100および図2に示す誘導加熱装置200と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。具体的には、図5に示す誘導加熱装置300は、誘導加熱コイル110と、第1の変圧器120と、高周波側となる電圧形直列共振タイプの第1の共振手段330と、中周波側となる電圧形直列共振タイプの第2の共振手段340と、を備えている。
第1の共振手段330は、図1に示す誘導加熱装置100と同様の第1の発振手段131と、第1のコンデンサC1と、を備えている。この第1の共振手段330は、誘導加熱装置100と同様に、第1の発振手段131における第1のインバータ131Bの出力端子間に、第1のコンデンサC1および第1の変圧器120の1次巻線121の直列回路が接続されている。
第2の共振手段340は、図1に示す誘導加熱装置100と同様の第2の発振手段141と、リアクトルL1と、第3のコンデンサC3と、を備えている。リアクトルL1は、第2のインバータ141Bの出力端に第1の変圧器120の2次巻線122および誘導加熱コイル110の直列回路に直列で、第3のコンデンサC3に並列に接続され、第1の共振手段330における高周波の帰還成分を減衰し、直列共振回路を構成している。
そして、誘導加熱装置300は、第1の共振手段330の第1の発振手段131で変換された高周波の交流電力が出力されと、第1のコンデンサC1が直列共振状態となり、第1の変圧器120で所定の電圧に変換して2次巻線122から誘導加熱コイル110に供給される。この誘導加熱コイル110への高周波の供給の際、第2の共振手段340の第3のコンデンサC3は、インピーダンスが十分に小さく設定されているので、高周波の電流のバイパスとなり、高周波が誘導加熱コイル110に効率よく供給される。この高周波の供給により、誘導加熱コイル110が被加熱物101を誘導加熱させる。なお、第2の共振手段340のリアクトルL1により、第1の共振手段330からの高周波の帰還を減衰し、高周波の帰還による第2の共振手段340の損傷が防止される。
また、第2の共振手段340の第2の発振手段141で変換された中周波の交流電力が出力されると、第3のコンデンサC3およびリアクトルL1が直並列共振状態となり、誘導加熱コイル110に中周波の交流電力が供給されて被加熱物101が誘導加熱される。この中周波の供給の際、図1に示す誘導加熱装置100と同様に、第1のコンデンサC1が中周波の帰還を減衰し、第1の変圧器120の2次巻線122がバイパスとなり、中周波が効率よく供給される。
この図5に示す誘導加熱装置300では、図1に示す誘導加熱装置100と同様に、中周波の供給として電圧形インバータである第2のインバータ141Bを用い、この第2のインバータ141Bの出力端にリアクトルL1を直列に接続して第1の共振手段330,130における高周波の帰還を減衰させて直並列共振回路を構成させている。このため、所定の周波数の交流電力に変換することが容易な電圧形が、リアクトルL1を設ける簡単な構成で得られる。そして、リアクトルL1は、高周波の帰還を減衰させる程度でよいことから、電流形インバータを用いる場合に必要となるリアクトルLfより安価となり、コストの低減が容易に図れる。
また、本発明の誘導加熱装置として、高周波側および中周波側にそれぞれ電流形インバータを用いてもよい。すなわち、図2に示す誘導加熱装置200の第1の共振手段130における電圧形インバータに代えて、図6に示すように、電流形インバータを用いてもよい。図6は、本発明におけるさらに他の実施の形態に係る誘導加熱装置の概略構成を示す回路図で、図1に示す誘導加熱装置100および図2に示す誘導加熱装置200と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。具体的には、図6に示す誘導加熱装置400は、誘導加熱コイル110と、第1の変圧器120と、高周波側となる第1の共振手段430と、中周波側となる第2の共振手段240と、を備えている。
そして、第1の共振手段430は、第1の発振手段431と、並列コンデンサC5と、直列コンデンサC6と、を備えている。第1の発振手段431は、第2の発振手段241と同様に、第1のコンバータ131Aと、第1のリアクトルLf1と、第1のインバータ431Bと、を備えている。第1のインバータ431Bは、電流がインバータで、第1のリアクトルLf1を介して直流電流が急変しないように第1のコンバータ131Aから入力される直流電力を所定の周波数となる高周波の交流電力に変換する。並列コンデンサC5は、第1の変圧器120の1次巻線121に並列に接続され、第1のインバータ431Bから出力される所定の電圧で所定の高周波の交流電力により並列共振状態となる。この並列コンデンサC5は、第1の変圧器120および誘導加熱コイル110の無効電力を補償する。直列コンデンサC6は、第1の変圧器120の1次巻線121に直列に接続され、並列コンデンサC5とにより並直列共振回路を構成する。この直列コンデンサC6は、第1の変圧器120および誘導加熱コイル110の無効電力を補償するとともに、第1の変圧器120で第2の共振手段240から帰還される交流電力の中周波成分を減衰する。
この図6に示す誘導加熱装置400は、第1の共振手段430の第1の発振手段431で変換された高周波の交流電力が出力されると、並列コンデンサC5および直列コンデンサC6が並直列共振状態となり、第1の変圧器120で所定の電圧に変換されて2次巻線122から誘導加熱コイル110に供給し、被加熱物101を誘導加熱させる。この誘導加熱コイル110への高周波の供給の際、図2に示す誘導加熱装置200と同様に、第2の共振手段240の第3のコンデンサC3により、高周波の帰還を抑制し、第3のコンデンサC3がバイパスとなって、高周波が誘導加熱コイル110に効率よく供給される。
また、第2の共振手段240の第2の発振手段241で変換された中周波の交流電力が出力されると、図2に示す誘導加熱装置200と同様に、第3のコンデンサC3が並列共振状態となり、誘導加熱コイル110に中周波の交流電力が供給されて被加熱物101を誘導加熱させる。この中周波の供給の際、図2にしめす誘導加熱装置200と同様に、第1の変圧器120の2次巻線122がバイパスとなり、中周波が誘導加熱コイル110に効率よく供給される。また、直列コンデンサC6が第1の変圧器120で第2の共振手段240から帰還される交流電力の中周波成分を減衰する。
この図6に示す誘導加熱装置400では、高周波の供給として電流形インバータである第1のインバータ431Bを用い、第1の変圧器120の1次巻線121に並列に並列コンデンサC5を接続し、第1の変圧器120および誘導加熱コイル110の無効電力を補償させ、第1の変圧器120で第2の共振手段240から帰還される交流電力の中周波成分を減衰する直列コンデンサC6とにて並直列共振回路を構成させている。このため、仮に誘導加熱コイル110が短絡するなどの損傷が生じても、高周波の電流値は規格的に小さいことから、第1の発振手段431が損傷するなどを抑制できる。
さらに、本発明の誘導加熱装置として、図2に示す誘導加熱装置200の電圧形インバータの構成と電流形インバータの構成とを逆、すなわち、図5に示す誘導加熱装置300の第1の共振手段130における電圧形インバータに代えて、図7に示すように、電流形インバータを用いてもよい。図7は、本発明におけるさらに他の実施の形態に係る誘導加熱装置の概略構成を示す回路図で、上述した各誘導加熱装置100〜400と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。具体的には、図7に示す誘導加熱装置500は、誘導加熱コイル110と、第1の変圧器120と、図6に示す誘導加熱装置400と同様の第1の共振手段430と、図5に示す誘導加熱装置300と同様の第2の共振手段340と、を備えている。
そして、この誘導加熱装置500は、第1の共振手段430の第1の発振手段431で変換された高周波の交流電力が出力されると、並列コンデンサC5および直列コンデンサC6が並直列共振状態となり、第1の変圧器120で所定の電圧に変換して2次巻線122から誘導加熱コイル110に供給され、被加熱物101を誘導加熱する。この誘導加熱コイル110への高周波の供給の際、図5に示す誘導加熱装置300と同様に、第2の共振手段340のリアクトルL1により、第1の共振手段430からの高周波の帰還を減衰し、第3のコンデンサC3がバイパスとなり、高周波が誘導加熱コイル110に効率よく供給される。また、第2の共振手段340の第2の発振手段141で変換された中周波の交流電力が出力されると、第3のコンデンサC3およびリアクトルL1が直並列共振状態となり、誘導加熱コイル110に中周波の交流電力が供給されて被加熱物101が誘導加熱される。この中周波の供給の際、図6に示す誘導加熱装置400と同様に、直列コンデンサC6が第1の変圧器120で第2の共振手段340から帰還される交流電力の中周波成分を減衰し、第1の変圧器120の2次巻線122がバイパスとなり、中周波が誘導加熱コイル110に効率よく供給される。
また、本発明の誘導加熱装置として、図5に示す誘導加熱装置300におけるコンバータおよび平滑コンデンサを、図8に示すように、共有化したものである。すなわち、図1に示す誘導加熱装置100や図5に示す誘導加熱装置300のように、それぞれのインバータが電圧形の場合、直流電力を供給する電源側の共有化を図ることができる。図8は、本発明におけるさらに他の実施の形態に係る誘導加熱装置の概略構成を示す回路図で、上述した各誘導加熱装置100〜500と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。この図8に示す誘導加熱装置600は、誘導加熱コイル110と、第1の変圧器120と、交流電力を直流電力に変換する直流変換手段であるコンバータ650と、平滑コンデンサCfと、第1の共振手段630と、第2の共振手段640と、を備えている。
コンバータ650は、例えば各種のブリッジ整流回路が用いられる順変換回路で、商用交流電源eに接続され交流電力を直流電力に変換する。第1の共振手段630は、第1の発振手段として機能する第1のインバータ131Bと、第1のコンデンサC1と、を備えている。第1のインバータ131Bは、コンバータ650で変換され平滑コンデンサCfを介して平滑されて入力される直流電力を所定の周波数となる高周波の交流電力に変換する。第2の共振手段640は、第2の発振手段として機能する第2のインバータ141Bと、第3のコンデンサC3と、リアクトルL1と、を備えている。そして、第2のインバータ141Bは、コンバータ650で変換され平滑コンデンサCfを介して平滑されて入力される直流電力を所定の周波数となる中周波の交流電力に変換する。
そして、図8に示す誘導加熱装置600は、コンバータ650で変換され平滑コンデンサCfで平滑された直流電力を、第1のインバータ131Bにて所定の高周波の交流電力に変換するとともに、第2のインバータ141Bにて所定の中周波の交流電力に変換する。そして、第1の共振手段630の第1のインバータ131Bから高周波の交流電力が出力されると、第1のコンデンサC1が直列共振状態となり、第1の変圧器120で所定の電圧に変換して2次巻線122から誘導加熱コイル110に供給され、被加熱物101を誘導加熱する。この高周波の供給の際、上述したように、第2の共振手段640のリアクトルL1により、第1の共振手段630からの高周波の帰還を減衰し、第3のコンデンサC3がバイパスとなり、高周波が誘導加熱コイル110に効率よく供給される。また、第2の共振手段640の第2のインバータ141Bから中周波の交流電力が出力されると、第3のコンデンサC3およびリアクトルL1が直並列共振状態となり、誘導加熱コイル110に中周波の交流電力が供給されて被加熱物101を誘導加熱する。この中周波の供給の際、上述したように、第1のコンデンサC1が中周波の帰還を減衰し第1の変圧器120の2次巻線122がバイパスとなり、中周波が効率よく供給される。
この図8に示す誘導加熱装置600では、コンバータ650および平滑コンデンサCfが共有化され、部品点数が減少し、製造性の向上や装置コストの低減、小型軽量化が得られる。さらには、接続する電源が1つで済み設備が縮小化するなども容易に得られる。
また、本発明の誘導加熱装置としては、図8に示す誘導加熱装置600におけるコンバータ650を共有化する構成において、例えば図9に示すように、誘導加熱装置600の第1のインバータ131Bに電流形インバータを用いた構成である。すなわち、図7に示す誘導加熱装置500におけるコンバータの共有化を図ったものである。図9は、本発明におけるさらに他の実施の形態に係る誘導加熱装置の概略構成を示す回路図で、上述した各誘導加熱装置100〜600と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。具体的には、図9に示す誘導加熱装置700は、誘導加熱コイル110と、第1の変圧器120と、コンバータ650と、平滑コンデンサCfと、第1の共振手段730と、第2の共振手段640と、を備えている。
第1の共振手段730は、第1の発振手段731と、並列コンデンサC5と、直列コンデンサC6と、を備えている。第1の発振手段731は、コンバータ650に平滑コンデンサCfを介して接続されるチョッパ回路760と、リアクトルL3と、第1のインバータ431Bと、を備えている。そして、第1の発振手段731は、コンバータ650で変換され平滑コンデンサCfで平滑された直流電力を、チョッパ回路760で適宜遮断し、リアクトルL3を介して直流電流が急変しないように第1のインバータ431Bに入力させ、所定の周波数となる高周波の交流電力に変換する。
そして、図9に示す誘導加熱装置700は、コンバータ650で変換され平滑コンデンサCfで平滑された直流電力を、チョッパ回路760にて適宜遮断してリアクトルL3を介して直流電流が急変しないように第1のインバータ131Bに入力させ、所定の周波数となる高周波の交流電力に変換するとともに、第2のインバータ141Bにて所定の中周波の交流電力に変換する。そして、第1の共振手段730の第1の発振手段731で変換された高周波の交流電力が出力されると、上述したように、並列コンデンサC5および直列コンデンサC6が並直列共振状態となり、第1の変圧器120で所定の電圧に変換されて2次巻線122から誘導加熱コイル110に供給され、被加熱物101を誘導加熱する。この高周波の供給の際、上述したように、第2の共振手段640のリアクトルL1により、第1の共振手段730からの高周波の帰還を減衰し、第3のコンデンサC3がバイパスとなり、高周波が誘導加熱コイル110に効率よく供給される。また、第2の共振手段640の第2のインバータ141Bで変換された中周波の交流電力が出力されると、第3のコンデンサC3およびリアクトルL1が直並列共振状態となり、誘導加熱コイル110に中周波の交流電力が供給されて被加熱物101を誘導加熱する。この中周波の供給の際、上述したように、第1のコンデンサC1が中周波の帰還を減衰し第1の変圧器120の2次巻線122がバイパスとなり、中周波が効率よく供給される。
さらに、本発明の誘導加熱装置として、図9に示す誘導加熱装置700で、高周波側に電流がインバータを用いる構成について例示したが、その逆に、中周波側に電流形インバータを用いてよい。さらには、双方に電流形インバータを用いる構成についてもコンバータの共用化を図った構成としてもよい。
また、被加熱物101としては、上述したように、鋼管や表面に複数の凹凸を有した複雑な形状の歯車や複数の部材が積層するような複合材料など、誘導加熱されるいずれのものを対象とすることができる。また、高周波と中周波とを供給する構成について説明したが、さらに他の周波数を供給する構成としてもよい。さらには、高周波および中周波のみに限らず、少なくとも2つの異なる周波数を重畳して供給可能な構成とすることができる。
そして、誘導加熱装置100〜700の構成において、誘導加熱コイル110を備えた構成として説明したが、誘導加熱コイル110を別体として、誘導加熱する被加熱物101に対応して構成した誘導加熱コイル110を適宜接続する構成としてもよい。
また、制御手段150として、第1の発振手段131,431および第2の発振手段141,241の双方を制御、あるいは、コンバータ650と、第1のインバータ131Bおよび第2のインバータ141Bとをそれぞれ制御、さらには、コンバータ650と、チョッパ回路760と、第1のインバータ131Bおよび第2のインバータ141Bとをそれぞれ制御して説明したが、例えば第1の発振手段131,431を制御する高周波側の制御手段と、第2の発振手段141,241を制御する中周波側の制御手段とに分けて、それぞれで制御するなどしてもよい。
さらに、式1に基づいて演算して得られた補正値で制御する構成に限らず、例えば上述したように、被加熱物101の形状や材質、誘導加熱条件などに基づいてあらかじめマトリックス状に設定された補正値を読み取ったり、被加熱物101の形状や材質など毎に、式1からより詳細に設定された式に基づいて演算、具体的には設定値と電流値とが正比例の関係でない2次や指数などの関数関係である場合、その関数に基づいて補正する演算をするなど、被加熱物101が変動する透磁率に対応して供給する高周波側の電力の低減分を補正するいずれの制御方法を利用することができる。
また、誘導加熱装置100〜700を構成する制御手段150に限らず、誘導加熱するための装置に適宜接続可能とし、適切に交流電力を供給させる制御をする制御手段150を独立した構成としてもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構成に変更するなどしてもよい。