JP4726099B2 - モータ式シートベルトリトラクター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、EA機構及びプリテンショナー機構を備えたリトラクタ、特にはモーターを利用したEA機構及びプリテンショナー機構を備えたモータ式シートベルトリトラクタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来は、機械式EA機構及び火薬式プリテンショナー機構を備えたシートベルトリトラクタが用いられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
機械式EA機構及び火薬式プリテンショナー機構以外の方式で、EA機構及びプリテンショナー機構を行えるシートベルトリトラクタの出現が望まれている。
【0004】
また、この種のシートベルトリトラクターを用いて繰り返し発生する衝突に対処するための制御システムを備えたシートベルトリトラクターの出現が望まれている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
また、本発明に係るモータ式シートベルトリトラクターは、危険状態検知手段からの危険状態を告げる信号を受けて衝突発生前にウエビングを巻き取り搭乗者を拘束する巻き取り手段を備えたモータ式シートベルトリトラクターにおいて、巻き取り手段が、危険状態検知手段からの危険状態を告げる信号を受ける度に繰り返し作動可能であるとともに、危険状態を告げる信号が前記危険状態検知手段から所定時間出力されない場合に搭乗者の拘束を解除することを特徴とする。
【0006】
このように構成すれば、危険状態に遭遇する度に何度もウエビングの巻き取り動作を繰り返すことが可能となるので、その後の衝突に対しても搭乗者を確実に拘束することが可能となる。
【0007】
また、本発明の実施にあたり、巻き取り手段は、危険状態が回避された場合に搭乗者の拘束が解除されるのが好適である。
【0008】
このように構成すれば、危険状態が回避された場合、不要となった搭乗者の拘束を速やかに解除することができる。
【0010】
また、危険状態検知手段は、少なくとも衝突予知装置を備えているのが良い。
【0011】
このように構成すれば、衝突前に巻き取り手段を作動させることが可能となり、搭乗者の初期拘束がより確実になる。
また、危険状態検知手段は、少なくとも車両挙動検知装置を備えているのが好適である。
【0012】
このように構成すれば、衝突前に巻き取り手段を作動させることが可能となり、搭乗者の初期拘束がより確実になる。
【0013】
また、危険状態検知手段は、少なくともスリップ検知装置を備えているのが、好ましい。
【0014】
このように構成すれば、車両がスリップ状態にあることを検知することが可能となるので、衝突前に巻き取り手段を作動させて搭乗者の初期拘束をより確実にする。
【0015】
また、危険状態検知手段は、少なくとも加速度減速度検知装置を備えているのが好適である。
【0016】
このように構成すれば、車両の急減速、急加速時に搭乗者を確実に初期拘束することが可能となる。
また、危険状態検知手段は、少なくとも着座状態検知装置を備えているのが、良い.
このように構成すれば、搭乗者が正規の着座位置にいないことが判明するので、搭乗者を正規な着座位置に拘束することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図中、各構成成分の大きさ、形状および配置関係は、この発明が理解できる程度に概略的に示してあるにすぎず、また、以下に説明する数値的条件は単なる例示にすぎないことを理解されたい。
【0018】
第1の発明に係るリトラクターの実施例につき説明する。
図1は、第1の発明に係るリトラクターの実施例を示す分解斜視図である。
図2は、本実施例のリトラクターのギヤの係合関係を示す図である。なお、図1では、火薬式プリテンショナー機構については図面上省略されている。
【0019】
以下、図1,2を用いて本実施例に係るリトラクターの構成につき説明する。このリトラクター200は、以下に示すような構成要素から構成される。
(1) リテーナ20
(2) リテーナ20に一体的に装着されたDCモータ21
(3) DCモータ21のモータ軸に一体的に設けられたモータギヤ22
(4) リテーナ20に設けられた突片に軸支されていて、モータギヤ22と係合する第1ギヤ23(詳しくは第1ギヤ23は、一体的な2段ギヤ(大ギヤ23aと小ギヤ23b)から構成され、モータギヤ22は大ギヤ23aと係合する)
(5) リテーナ20に設けられた突片に軸支されていて、第1ギヤ23(詳しくは小ギヤ23b)と係合する第2ギヤ24(詳しくは第2ギヤ24は、一体的な2段ギヤ(大ギヤ24aと小ギヤ24b)から構成され、小ギヤ23bは大ギヤ24aと係合する)
(6) 第2ギヤ24(詳しくは小ギヤ24b)と係合する第3ギヤ25(詳しくは第3ギヤ25は、一体的な2段ギヤ(大ギヤ25aと小ギヤ25b)から構成され、小ギヤ24bは大ギヤ25aと係合する)
(7) 第3ギヤ25(詳しくは小ギヤ25b)と係合する3つのプラネタリーギヤ26
(8) 内側に形成された内歯27aに3つのプラネタリーギヤ26と係合するインターナルギヤ27
(9) インターナルギヤ27の外周面に形成された外歯27b
(10) 外歯27bに嵌合してインターナルギヤ27の時計方向の回転を係止する係止片30
(11) 係止片30を一端で支持するバネからなるレバー31
(12) レバー31の他端をカール状に形成したリング部材32
(13) リング部材32が巻き付く凸状の環状部材33(なお、環状部材33は第1ギヤ23と同一回転中心に一体形成されている)
(14) 環状部材33の頂面の周縁部に突設されていて、リング部材32を押圧して摩擦力を与える摩擦片34
(15) 3つのプラネタリーギヤ26を載置するためのキャリヤー35
(16) 3つのプラネタリーギヤ26をキャリヤー35に回転自在に支持してキャリヤー35に固着する3つのピン36
(17) 3つのピン36と3つのプラネタリーギヤ26との間に揺動自在に挿入される減速プレート37
(18) キャリヤー35の回転中心穴に先端部38aを貫通させて先端部38aの根元部で一体的に嵌合させ、更に先端部38aが第3ギヤの回転中心穴に摺動回転自在に挿入されるスプール38
(19) スプール38に一端が固定された身体を拘束するためのウエビングW(矢印AはウエビングWの引き出し方向、矢印BはウエビングWの引き込み方向)
(20) ギヤ群全体を被覆するカバー39
(21) カバー39をリテーナ20に装着する複数のネジ40
(22) DCモータ21を短絡又は非短絡に接続制御すると共にDCモータ21の回転軸を時計方向又は反時計方向に回転させるように動作制御する制御回路(図示せず)
以下、上述した構成要素を用いて本発明のリテーナの動作につき説明する。
図3は、本実施例の動作を示す図であって、(A)はモータが時計方向(CW方向)に回転する場合の状態を示す図であり、(B)はモータが反時計方向(CCW方向)に回転する場合の状態を示す図である。
このリトラクター200は、通常時(急ブレーキ時や衝突時等の緊急時以外)は、図2、図3(B)に示すように係止片30は外歯27bから離間していて、インターナルギヤ27は拘束されないので、遊星歯車の特性上、キャリヤー35の回転力は、第3ギヤには伝達されなくなる。したがって、キャリヤー35に一体的に嵌合されたスプール38の回転力は、第3ギヤに係合するDCモータ21の回転軸には伝達されなくなる。
【0020】
次に、急ブレーキ時や衝突時等の緊急時には、図示しないASB(アンチスキッドブレーキ)機構や図示しない衝突予知装置等からの出力信号によってプリテンショナー機構(火薬式プリテンショナー機構に先だってウエビングWを巻き上げてテンションを増加させる機構)を作動させてDCモータ21の回転軸を図3(A)に示すように時計方向(矢印方向)に回転させる。するとモータギヤ22の時計方向の回転力が第1ギヤ23に反時計方向(矢印方向)の回転力として伝達されて、係止片30がインターナルギヤ27の外歯27bに係合してインターナルギヤ27の時計方向(矢印方向)の回転を係止する。これによって、第3ギヤ25の回転力は、スプール38が一体的に嵌合されているキャリヤー35に伝達可能となる。 また、第1ギヤ23の回転力は、第2ギヤ24に時計方向(矢印方向)の回転力として伝達され、第3ギヤ25に反時計方向(矢印方向)の回転力が伝達される。したがって、第3ギヤ25に反時計方向の回転は、第3ギヤ25と一体の小ギヤ25bを反時計方向に回転させ、3つのプラネタリーギヤ26のそれぞれに時計方向(矢印方向)の回転力を伝達させる。3つのプラネタリーギヤ26は、係止片30によって回転が拘束されたインターナルギヤ27の内歯27aに係合しながら小ギヤ25bの周囲を遊星のように反時計方向(矢印方向)に回動し、3つのプラネタリーギヤ26を軸支するキャリヤー35を反時計方向(矢印方向)に回転させる。よって、キャリヤー35に嵌合するスプール38は反時計方向に回転し、ウエビングWを巻き取る(矢印B方向)。したがって、DCモータ21の時計方向の回転力は、ウエビングWを巻き取る回転力として伝達される。
【0021】
次に、衝突によって車体に衝撃力が伝わり、図示しない加速度センサーや図示しないクラッシュセンサーから衝撃検知信号が出力され、図示しない火薬式のプリテンショナー機構が作動しウエビングWがリトラクターに200に引き込まれて乗員の初期拘束が確保される。
次に、乗員の前方方向への慣性力によりウエビングWが引き出される(図3(A)の矢印A)。この際、図3(A)に示すように、係止片30が外歯27bを係止した状態にあるので、スプール38からウエビングWが引き出される力は、DCモータ21の回転軸に反時計方向(矢印と反対方向)に回転力が伝達される。DCモータ21は、通電状態あるいは短絡状態にあれば、回転軸の回転によって逆起電力が発生し、回転を妨げるような回転抗力を生ずる。第1の発明では、この回転抗力をロック機構やEA機構に積極的に活用しようとするものである。
【0022】
以下、この回転抗力の特性について図を用いて説明する。
図4は、乗員が搭乗した車両が壁に衝突した時点(図上0点)から完全に車両がクラッシュするまでの、短絡したDCモータの回転抗力F[Nm](単位はニュートンメートル)と時間T[sec](単位は秒)との関係を示すグラフであって、体重別(Light、Middle、Heavy)のグラフを示している。
図5は、乗員が搭乗した車両が壁に衝突した時点(図上0点)から完全に車両がクラッシュするまでの、短絡したDCモータの回転抗力F[Nm](単位はニュートンメートル)と時間T[sec](単位は秒)との関係を示すグラフであって、衝突速度別(Low Speed、Middle Speed、High Speed)のグラフをそれぞれ示している。
【0023】
図4に示すように、体重が軽い程、曲線の立ち上がりの勾配が低く(図面上の実線のグラフ)、体重が重いほど曲線の立ち上がりの勾配が高く(図面上の二点鎖線のグラフ)、体重が中位だと曲線の立ち上がりの勾配は体重が軽い場合と体重が重い場合の中間の勾配となることが分かる。また、立ち下がりの勾配については、体重差に関わらず、なだらかに立ち下がる。この結果から、回転抗力をEA機構に用いれば、体重が軽い乗員に対しては、比較的なだらかにEA荷重が増加するので、身体にかかる総荷重量が比較的少なくなる。一方、体重が重い乗員に対しては、比較的急峻にEA荷重が増加するので、身体にかかる総荷重量が比較的多くなる。そして、EA荷重の減少勾配については、体重差に関わらずなだらかに立ち下がり、ソフトランディングが可能となる。
【0024】
また、図5に示すように、車両の壁に衝突する時の衝突速度が速い程、回転抗力Fのロードリミット値(EA加重限界値)は高くなり(図面上の二点鎖線のグラフ)、衝突速度が遅い程、回転抗力Fのロードリミット値は低くなる(図面上の実線のグラフ)。すなわち、衝突速度の速いか遅いかによって、ロードリミット値が上下するので理想的な乗員拘束能力を発揮することができる。
【0025】
なお、従来の機械式EA機構、例えばトーションバーでは、体重差や衝突速度差に何ら関係なく、EA加重の立ち上がりの勾配は一定であり、また、ロードリミット値も一定である。
また、このロードリミット値は、以下のように様々な手法で任意に設定することができる。例えば、スプール38の回転をDCモータ21に伝達するギヤ比を変えることによって回転抗力Fのロードリミット値、立ち上がり勾配、立ち下がり勾配を任意に設定することが可能である。また、抵抗を介してDCモータ21を通電あるいは短絡させれば、抵抗値を変えることによって、回転抗力のロードリミット値、立ち上がり勾配、及び立ち下がり勾配を任意に調整することもできる。例えば、抵抗値を高くするほど、ロードリミット値は低く、立ち上がり勾配はなだらかに、及び立ち下がり勾配は急峻になる。この場合、異なる抵抗値の抵抗を回路上で選択可能に接続しておき、シビアリティの大小によって最適な抵抗に自動的に接続できるように構成することもできる。これによってより理想的な拘束性能を期待することが可能となる。
【0026】
なお、抵抗値を接続する以外に、ヒューズを接続すると、所定の電流値を越えると、EA機構が解除され、EA加重を下げることもできる。
また、通電によってDCモータ21の回転軸にウエビングWを引き込むようにに弱い回転力(図3(A)の矢印方向)を与えてやれば、回転抗力にプラスのモータアシスト負荷を与えることもできるし、逆にDCモータ21の回転軸にウエビングWを引き出すように弱い回転力(図3(A)の矢印と反対方向)を与えてやれば、回転抗力にマイナスのモータアシスト負荷を与えることもできる。また、出力の異なるモーターを取り替えることによっても、ロードリミット値、立ち上がり勾配、及び立ち下がり勾配を調整することができる。また、ロードリミット値、立ち上がり勾配、及び立ち下がり勾配を調整する別の手法としては、DCモータ21を短絡する時間t1および非短絡t2をそれぞれ任意に変えて、パルス状の矩形波を作り、この矩形波でDCモータ21の短絡/非短絡を制御することで、回転抗力のロードリミット値、立ち上がり勾配、及び立ち下がり勾配を任意に設定することができる。例えば、t1をt2に比べて長くするほど、ロードリミット値は高く、立ち上がり勾配は急峻に、及び立ち下がり勾配はなだらかになる。また、t2をt1に比べて長くするほどロードリミット値は低く、立ち上がり勾配はなだらかに、及び立ち下がり勾配は急峻になる。
【0027】
なお、EA機構を始動するタイミングは、エアバッグの点火を指示するECUで行うこともできるし、プリテンショナー用ECUで行うこともできる。
また、ロードリミット値、立ち上がり勾配、及び立ち下がり勾配を調整は、ダミーを用いた実車による実験等のウエビングWの引き出し特性を見て適当に設定することが好ましい。また、DCモータ21の代わりに銅管内に磁石を備えた回転軸を設ければ、短絡する必要が無くなるので、廉価かつ簡単な構造でEA機構を設けることもできる。
【0028】
また、これらEA機構をバックルプリテン等の各種プリテン機構と組み合わせて用いると更に効果的である。
また、ビークルセンサーをリトラクターに組み込んで、EAスイッチとして使うこともできる。
また、上述した図1に示した実施例のようなリトラクターでも、第1の発明を適用して短絡されたモータの回転抗力をEA機構として利用する手法を加えることも可能である。
【0029】
次に、第2の発明に係るリトラクターの実施例につき説明する。
本実施例に係るリトラクター400は、これまでに説明してきた第1の発明に係るEA機構をモーターリトラクター400に適用して、多重衝突、即ち1回目の衝突の後、2回目の衝突を起こすように連続して起こす衝突事故に対処できる新規なモーターリトラクター400であって、特にその制御システムにつき以下に説明する。
【0030】
図6は、第2の発明に係るモーターリトラクター400の制御システムを概念的に示した図である。
また、図7は、この制御システムのフローを示す図である。
また、図8は、この制御システムを用いたモーターリトラクターで搭乗者を拘束する場合の動作状態を時系列的に示す図である。
【0031】
図6に示すように、本制御システムは、様々な搭乗者及び車両の状態を検知するためのセンサー500と、センサー500から送られてきた信号によって搭乗者及び車両の状態を判断すると共に安全上で相応しい動作をモーターリトラクター401に行わせるために必要な制御信号をモーター402に出力する制御回路520と、この制御回路520からの制御信号を受けて駆動する緊急ロック機能と制御回路520からの制御信号を受けて駆動するプリテンショナー機能と制御回路からの制御信号を受けて駆動するEA機能とを備えたモータ402を有するモーターリトラクター401と,主に肩から胸を拘束するショルダーベルト403と,主に腰を拘束するラップベルト404と,ショルダーベルト403のベルトテンションを測定するベルトテンションセンサー501aと,ラップベルト404のベルトテンションを測定するベルトテンションセンサー501b,ショルダーベルト403を摺動自在に支持するショルダーアンカー407と,ラップベルト404の一端を支持するラップアンカー408と,ラップベルト404を摺動自在に支持するバックル409と,を含むシートベルト装置400と、搭乗者が着座する座席シート410と、を備えている。
【0032】
このセンサー500は、例えばショルダーベルト403及びラップベルト404のテンション(張力)をそれぞれ検知するベルトテンションセンサー501a,501bと、自己の車両と他者の車両との相対距離を計測する車間距離センサー502と、搭乗者の体格を検知するための体格検知センサー503と、搭乗者の体重を検知する体重検知センサー504と、座席シートに座った搭乗者の着座状態を検知する着座状態検知センサー505と、走行中の車両のタイヤのスリップ状態を検知するスリップ検知センサー506と、走行中の車両の速度を検知する車速検知センサー507と、走行中の車両の加速度及び減速度を検知する加速・減速度検知センサー508と、走行中の車両の挙動、例えば車両のスピンやドリフト、ロールオーバー等を検知する車両挙動検知センサー509と、衝突状態を検知するクラッシュセンサー510と、を含んでいる。これらセンサー500から出力される各種信号を制御回路520が受信して、搭乗者及び車両の状況を予め記憶装置(図示略)に記憶してある基準値と比較して診断し、診断結果に基づいて制御信号がモーター402に出力される。その制御信号に応じたモーター402の挙動によって、モーターリトラクター401は、緊急ロック機能やプリテンショナー機能やEA機能がそれぞれ作動する。
【0033】
ここで、EA機能は、第1の発明の実施例で既に説明したような各種手法で構成されている。これらの構成についての説明は重複を避けて特にここでは行わない。また、プリテンショナー機能とは、上述した各種センサーから送られてくる搭乗者及び車両の状況から搭乗者及び車両が危険状況にあると制御回路520が診断した場合に、制御回路520から危険状況を告げる信号が出力され、例えば衝突等に先だってベルトを巻き取ることによってベルトの弛みを除去し搭乗者を確実に拘束する機能である。ここで、危険状況とは、衝突する可能性を有する状況、あるいは車両がスリップ等により運転者が車両をコントロールできない状況等を示している。
なお、衝突後であっても、ベルトの巻き取りのための信号を制御回路520から出力するタイミングを早めることで搭乗者を拘束することが可能である。
【0034】
緊急ロック機能とは、各種センサー500からの出力信号を制御回路520が受けて危険状態にあると診断された時に作動するロック機構を示している。詳しくは、モータの回転軸に回転トルクを与えてベルトが引き出されるのを阻止するロック機構や短絡されたモータにおいてモータの回転軸を回転させまいとする回転抗力を発生させベルトの引き出しを防止するロック機構が用いられている。
【0035】
次に、本発明の制御システムの動作について図7及び図8を用いて説明する。図7に示すように、まず、車両が衝突する可能性が高い状態になると、各種センサー500から制御回路520に信号が出力される(S1)。各種センサー500からの出力信号を受けて、制御回路520は予め記憶された基準値と比較して比較結果に基づいて所定の駆動信号をモーターリトラクター401のモーター402にプリテンショナー動作(急激な巻き締めによりスラックを除去する動作をすると共に搭乗者を座席シートに強く引きつけ固定させる動作)を行わせるための駆動信号が送られる(S2)。このプリテンショナー動作により搭乗者は座席シート410に強く固定され初期拘束が確保される(S3、図8(A))。
【0036】
次のステップS4では、「衝突が発生していない」(no:いいえ)の場合はステップS10へ移動し、危険状態が回避されていなければ(no:いいえ)、再びステップS4に復帰する。危険状態が回避されていれば(yes:はい)、モーター式シートベルトリトラクタ401は、ベルトをやや強く巻き取った後にベルトの巻き取り力を解放するように駆動する。この動作を少なくとも1回行う。この動作によって、ベルト403、404のエンドロック(ロック機構においてベルトがロック状態から開放されない状態)を解除することができる。こうして、搭乗者はベルトの拘束から解放される(S11)。この動作をエンドロック解除駆動という。
【0037】
また、ステップS4において「衝突が発生した」(yes:はい)場合はステップS5へ移動する。ここでは搭乗者が前方へ飛び出そうとする力によりベルト403、404がモーター式シートベルトリトラクタ401から引き出されないが、この時、第1の発明で述べたような短絡されたモータ402の回転軸の回転により生じる回転抗力をEA機構として利用する手法やベルトが引き出される方向へ回転軸が回転するのに対して反対の回転方向に回転トルクを適度に与えることによって生ずる回転抗力をEA機構として利用する手法を用いてEA機構が作動する(S5、図8(B))。EA機構が作動することにより、搭乗者はベルト403、404から受ける荷重が所定の上限値(荷重上限値)を維持しながら前方に移動する。こうして乗員に作用するベルト張力は時間の経過とともになだらかに減少するので、搭乗者に与えられる衝撃が吸収され、搭乗者はソフトランディングすることができる(S6、図8(B))。搭乗者に与えられる衝撃力が無くなると、モーター式シートベルトリトラクタ401によって再度巻き取られる(S7、図8(C))。これによって搭乗者は引き戻されて着座位置に復帰する(S8、図8(C))。こうして搭乗者は座席シートに再度拘束される(S9、図8(C))。
【0038】
次に、ステップS10において、危険状態が回避されていれば(yes:はい)、モーター式シートベルトリトラクタ401は、上述したエンドロック解除の駆動をして搭乗者をベルトの拘束から解放する(S11)。
また、ステップS10で1回目の衝突後に危険状態が回避されず(S10でno)、2回目の衝突が起こった場合(S4でyes)は、搭乗者が前方へ飛び出そうとする力によりベルト403、404がモーター式シートベルトリトラクタ401から引き出される。この時、ベルトテンションセンサー501a、401は、ベルトのテンションの上昇を検知し、制御回路502に信号を出力する。この信号がしきい値を越えたら、第1の発明で述べたような短絡されたモータ402の回転軸の回転により生じる回転抗力をEA機構として利用する手法やベルトが引き出される方向へ回転軸が回転するのに対して反対の回転方向に回転トルクを適度に与えることによって生ずる回転抗力をEA機構として利用する手法を用いることによってEA機構を作動させる(S5、図8(B))。EA機構が作動することにより、搭乗者はベルト403、404から受ける荷重が所定の上限値(荷重上限値)を維持しながら前方に移動する。こうして搭乗者に与えられる衝撃が吸収され搭乗者はソフトランディングすることができる(S6、図8(B))。搭乗者に与えられる衝撃力が無くなるとベルトのテンションが低下し、ベルトテンションセンサー501a、401からの信号がしきい値を下回る。信号がしきい値を下回ったことをトリガーにして引き出されたベルト403、404は、モーター式シートベルトリトラクタ401によって再度巻き取られる(S7、図8(C))。これによって搭乗者は引き戻されて着座位置に復帰する(S8、図8(C))。こうして搭乗者は座席シートに再度拘束される(S9)。
【0039】
次に、ステップS10において、2回目の衝突後、危険状態が回避されない場合(S10でno)は、ステップS4に復帰する。また、2回目の衝突後、危険状態が回避された場合(S10でyes)は、乗員を解放する(S11)。
例え危険状態から回避されたと判断された(S10でyes)後で、2回目以降の衝突が発生した場合でもステップS1からスタートして同様の搭乗者の拘束を行うことが可能である。
【0040】
このような制御システムを用いれば、 ステップS1〜ステップS11までの一連の動作が衝突が続く限り働き続け、多重衝突から搭乗者を安全に保護する極めて有効な手段となる。
なお、詳細については触れなかったが、体格検知センサー503及び体重検知センサー504は、搭乗者の体格及び体重に応じた適度なEA荷重を選定する場合に用いることができる。
【0041】
また、着座状態検知センサー505は、体格検知センサー503及び体重検知センサー504と共に用いて、例えば搭乗者が小柄でかつ適正な位置から外れた位置(いわゆるアウトオブポジション)に居ることを検知して、より適度なEA荷重を選定する場合に用いることもできる。より具体的にはドライバーが前方にアウトオブポジションしていてハンドルにかなり接近している場合に、搭乗者がハンドルに衝突しないように適度なEA荷重に選定する場合に用いることもできる。
【0042】
また、スリップ検知センサー506及び車両挙動検知センサー509は、車両がスリップ、スピン、ドリフト、ロールオーバー等を起こした時に、早めにプリテンショナー機能を作動させて搭乗者を座席シートに引きつけて固定し早期拘束させる場合に用いることもできる。
また、車間距離センサー502及び車速検知サンサー507は、車両対車両、或いは車両対障害物、或いは車両対人の衝突の可能性を事前に予測し、早めにプリテンショナー機能を作動させるようにする場合に用いることもできる。
【0043】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係るモータ式シートベルトリトラクタは、このように構成したので、危険状態に遭遇する度に何度もウエビングの巻き取り動作を繰り返すことが可能となるので、その後の衝突に対しても搭乗者を確実に拘束することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明に係るリトラクターの実施例を示す分解斜視図である。
【図2】第1の発明に係るリトラクターの実施例におけるギヤの係合関係を示す図である。
【図3】第1の発明に係るリトラクターの実施例の動作を示す図であって、(A)はモータが時計方向(CW方向)に回転する場合の状態を示す図であり、(B)はモータが反時計方向(CCW方向)に回転する場合の状態を示す図である。
【図4】乗員が搭乗した車両が壁に衝突した時点(図上0点)から完全に車両がクラッシュするまでの、短絡したDCモータの回転抗力F[Nm](単位はニュートンメートル)と時間T[sec](単位は秒)との関係を示すグラフであって、体重別(Light、Middle、Heavy)のグラフを示している。
【図5】乗員が搭乗した車両が壁に衝突した時点(図上0点)から完全に車両がクラッシュするまでの、短絡したDCモータの回転抗力F[Nm](単位はニュートンメートル)と時間T[sec](単位は秒)との関係を示すグラフであって、衝突速度別(Low Speed、Middle Speed、High Speed)のグラフをそれぞれ示している。
【図6】第2の発明に係るモーターリトラクターの制御システムを概念的に示した図である。
【図7】この制御システムのフローを示す図である。
【図8】この制御システムを用いたモーターリトラクターで搭乗者を拘束する場合の動作状態を時系列的に示す図である。
【符号の説明】
20: リテーナ、21:DCモータ、22:モータギヤ、23:第1ギヤ、24:第2ギヤ、25:第3ギヤ、26:プラネタリーギヤ、27:インターナルギヤ、27a:内歯、27b:外歯、30:係止片、31:レバー、32:リング部材、33:環状部材、34:摩擦部材、35:キャリヤー、36:ピン、37:減速プレート、38:スプール、23a、24a,25a:大ギヤ、23b、24b、25b:小ギヤ、200:リトラクター、400:シートベルト装置、401:モーターリトラクタ、402:モータ、403:ショルダーベルト、404:ラップベルト、407:ショルダーアンカー、408:ラップアンカー、409:バックル、410:座席シート、500:センサー、501,501a,501b:ベルトテンションセンサー、502:車間距離センサー、503:体格検知センサー、504:体重検知センサー、505:着座状態検知センサー、506:スリップ検知センサー、507:車速検知センサー、508:加速・減速度検知センサー、509:車両挙動検知センサー、510:クラッシュセンサー、520:制御回路、
Claims (7)
- 危険状態検知手段からの危険状態を告げる信号を受けて衝突発生前にウエビングを巻き取って搭乗者を拘束する巻き取り手段を備えたモータ式シートベルトリトラクターにおいて、
前記巻き取り手段は、前記危険状態検知手段からの危険状態を告げる信号を受ける度に繰り返し作動可能であるとともに、危険状態を告げる信号が前記危険状態検知手段から所定時間出力されない場合に搭乗者の拘束を解除することを特徴とするモータ式シートベルトリトラクター。 - 前記巻き取り手段は、危険状態が回避された場合に搭乗者の拘束を解除することを特徴とする請求項1に記載のモータ式シートベルトリトラクター。
- 前記危険状態検知手段は、少なくとも衝突予知装置を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ式シートベルトリトラクター。
- 前記危険状態検知手段は、少なくとも車両挙動検知装置を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のモータ式シートベルトリトラクター。
- 前記危険状態検知手段は、少なくともスリップ検知装置を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のモータ式シートベルトリトラクター。
- 前記危険状態検知手段は、少なくとも加速度減速度検知装置を備えていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のモータ式シートベルトリトラクター。
- 前記危険状態検知手段は、少なくとも着座状態検知装置を備えていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のモータ式シートベルトリトラクター。
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