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JP4729889B2 - 分子構造最適化システム - Google Patents
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Description

本発明は,複数のコンピュータを用いた並列処理による分子構造最適化システムなどに関する。
シミュレーションによって分子の安定構造を求めることは,ナノテクノロジー分野のみならずバイオテクノロジー分野などにおいても重要である。例えば,実際に,タンパク質の立体構造を解明した例が多数報告され,この立体構造に基づいて医薬が開発されたこともある。通常,分子はエネルギー的に安定な構造の近傍の構造をとる確率が高い。そのため,安定構造における分子の性質が分子全体の性質を反映する場合が多い。すなわち,分子の安定構造を解明することは,その分子の機能を解明する有力な手段となる。従って,分子の安定構造を求めるシミュレーションは極めて重要である。ところが,量子化学計算によって,大きな(原子数の多い)分子の安定構造を求めるためには,多くの時間が必要となる。
一般的に,コンピュータの処理能力を高める方法として,並列処理が知られている。特に,最近は,インターネットを介して多数のパソコンを連携させて大規模な計算を可能にするグリッドコンピューティングによる並列処理が研究されている。グリッドコンピューティングは,LAN環境や,ADSLや光ファイバー通信等によるWAN環境の発展によって,今や世界中のコンピュータがネットワークでつながっているといってもよい状況の下,パソコンを有効利用しようとするものである。
しかし,量子化学計算での分子の構造最適化を並列処理させる研究は,なされていない。マルチCPUコンピュータでの共有メモリあるいは分散メモリによる計算が,量子化学計算でも可能となってきてはいる。しかし,これらは分子軌道を求める計算における並列処理であって,構造最適化計算に関して,並列処理を行った例はない。
また,ナノテクノロジーやバイオテクノロジー分野等でのシミュレーションにおける,グリッドコンピューティングの活用は,発展途上の段階である。今までの活用例は,数多くの別個の計算を別々のコンピュータで実行してその結果を単に集めるという完全分散処理的なもの,眠っているコンピュータを有効利用するための処理振り分け的な利用法や一般利用者に簡単な利用環境を提供するものが大多数である。即ち,一つの計算を高度に並列処理して実行させる活用例は少ない。その主な理由は,ネットワーク通信が高速化されつつあるものの,複雑な並列計算に使える程には通信速度が高速ではないためと,グリッドコンピューティングを活用するに足るアルゴリズムが未熟なためである。
一方,従来の分子構造最適化は,ガウシアン(Gaussian) 03 プログラムのように準ニュートン法に基づいて逐次的に行うアルゴリズムに基づいており,並列処理できなかった。準ニュートン法では,試行構造qk(ここで,ベクトルqkは,直前に計算されたk番目の試行構造の座標を表す)でのエネルギーの座標による一次微分のベクトルgkとその一次微分の変化に基づき更新していく近似ヘシアンBk(ここで,へシアンはエネルギーの座標による二次微分の行列を意味する。)を用いて,qk+1 = qk - Bk -1gk (式1)に従って,新規試行構造qk+1を得る作業を繰り返す。このため,新規試行構造は旧試行構造の計算が完了しないと決められないからであった。即ち,このアルゴリズムは並列化には不向きである。
ところで,量子化学計算に関するグリッドコンピューティングの応用としては,産業総合研究所での量子化学計算グリッド 手法(下記非特許文献1)や,NEC等での生体分子の量子化学計算における活用手法(下記非特許文献2)がある。前者の手法は,広範囲な科学者や技術者に大規模量子化学計算の実行環境を提供しようとするものであり,大規模計算の高速化を目指したものではない。また,後者の手法では,QM/MM分子動力学法での活用に主眼が置かれている。従って,量子化学計算における分子構造最適化でのグリッドコンピューティングの応用例は無い。
一方,分子力場法に基づく,グリッドコンピューティングによる構造最適化の手法が,筑波大の中島等によってなされている(下記非特許文献3)。しかし,この手法は,数多く存在する立体配座のそれぞれを別々の計算機で構造最適化することで,高速化を成し遂げるようとするものである。即ち,この手法は一つの最安定構造を高速に求めようとする構造最適化に関してのものではない。ナノテクノロジー分野のシミュレーションでは,数多くの立体配座を求めることよりもむしろ,最安定な構造のみを高速に求めたい場合の方が多い。なぜなら,化学的経験で,大よその最安定構造は計算しなくとも予測できることも多いからである。
以上のように,グリッドコンピューティングを活用した,一つの安定構造を最適化するアルゴリズムは,前例がない。
T. Nishikawa, et al., "Design and implementation of Intelligent Scheduler for Gaussian Portal on Quantum Chemistry Grid", Lecture Notes in Computer Science (LNCS) 2003, 2659, 244. 高田俊和等,"GRIDコンピューティングによるタンパク質の量子化学計算",分 子構造総合討論会2003講演要旨集,1Dp05. 中島佳宏等, "CONFLEX-G: OmniRPCによるグリッド環境上での分子立体配座探索 プログラムの実装と性能評価",情報処理学会論文誌コンピューティングシステム,2004, 45 , 254.
本発明は,従来に比べ高速に対象分子の最適化構造を解明できる分子構造最適化システムを提供することを目的とする。
本発明は,基本的には,多数の試行構造でのエネルギーの座標による一次微分の情報を集めれば,新しい試行構造を見出すのに必要なヘシアンを正確かつ高速に求めることができるという知見に基づく。すなわち,初期試行構造を複数発生させ,それらに関して別々のコンピュータを用いて並列的に一次微分の計算を実行させ,いずれかのコンピュータでの計算が終了するごとに計算結果からへシアンを更新して新たな試行構造を発生させ,新規試行構造に関しての一次微分の計算を実行させることを繰り返すことで,高速に構造最適化することができる。従来の構造最適化は,“ある一つ”の試行構造でのエネルギーの座標による一次微分を計算し,その計算結果からへシアンを更新して新たな試行構造を発生させ,新規試行構造に関しての一次微分の計算を実行させることを逐次的に繰り返していた。したがって,並列処理を行っても限界があったが,本発明のシステムでは,複数の試行構造を求めそれらに関する量子化学計算を同時に行うので,並列処理の利点を生かし,安定構造を迅速に求めることができる。
〔1〕 すなわち,本発明の分子構造最適化システムは,ホストコンピュータと,前記ホストコンピュータに連結された複数のクライアントコンピュータによって構成される分子構造最適化システムであって,前記ホストコンピュータは,前記ホストコンピュータが構造を最適化しようとする計算に関する情報を入力するための手段と,前記計算に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信するための手段と,前記ホストコンピュータに構造を最適化しようとする分子の構造に関する情報を入力するための手段と, 前記入力された分子の構造に関する情報から,複数の試行構造を求めるための手段と,前記複数の試行構造に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信するための手段と,前記各クライアントコンピュータがホストコンピュータへ送信した量子化学計算の結果に関する情報を受け取るための手段と,前記量子化学計算の結果に関する情報から,分子の構造が最適化されたかどうか判断するための手段と,分子の構造が最適化されていたと判断した場合は,各クライアントコンピュータへ量子化学計算を中止するように指令を出すための手段と,分子の構造が最適化されていなかったと判断した場合は,前記量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段と,前記新たな試行構造に関する情報を,前記量子化学計算の結果を送信してきたクライアントコンピュータに送信するための手段と,を具備し,前記ホストコンピュータに連結されたクライアントコンピュータは,それぞれ,前記ホストコンピュータから送信された計算に関する情報を入力するための手段と,前記ホストコンピュータから送信された試行構造に関する情報を入力するための手段と,前記ホストコンピュータから送信された試行構造及び計算に関する情報を用いて,量子化学計算により前記試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分に関する情報を求めるための手段と,前記量子化学計算が終了したかどうか判断するための手段と,前記量子化学計算が終了したと判断した場合に,量子化学計算の結果に関する情報を前記ホストコンピュータに送信するための手段と,を具備し,前記ホストコンピュータに,構造を最適化しようとする計算に関する情報を入力する工程と,前記ホストコンピュータが,前記計算に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信する工程と,前記ホストコンピュータに,構造を最適化しようとする分子の構造に関する情報を入力する工程と,前記ホストコンピュータが,前記入力された分子の構造に関する情報から複数の試行構造を求める工程と,前記ホストコンピュータが,前記複数の試行構造に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信する工程と,前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記ホストコンピュータから送信された計算に関する情報を入力する工程と,前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記ホストコンピュータから送信された試行構造に関する情報を入力する工程と,前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記ホストコンピュータから送信された試行構造及び計算に関する情報を用いて,量子化学計算により前記試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分に関する情報を求める工程と,前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記量子化学計算が終了したかどうか判断する工程と,前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記量子化学計算が終了したと判断した場合に,量子化学計算の結果に関する情報を前記ホストコンピュータに送信する工程と,前記ホストコンピュータが,前記クライアントコンピュータがホストコンピュータへ送信した量子化学計算の結果に関する情報を受け取る工程と,前記ホストコンピュータが,前記量子化学計算の結果に関する情報から,分子の構造が最適化されたかどうか判断する工程と,前記ホストコンピュータが,分子の構造が最適化されていたと判断した場合は,各クライアントコンピュータへ量子化学計算を中止するように指令を出す工程と,前記ホストコンピュータが,分子の構造が最適化されていなかったと判断した場合は,前記量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求める工程と,前記新たな試行構造に関する情報を,前記量子化学計算の結果を送信してきたクライアントコンピュータに送信する工程と,を含む工程により分子の安定構造を求める,分子の安定構造を求めるための分子構造最適化システムである。
〔2〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記“ホストコンピュータ”は,前記クライアントコンピュータが有する全ての手段を具備し,ホストコンピュータも前記複数のクライアントコンピュータのひとつとして機能する, 上記の〔1〕に記載の分子構造最適化システムである。
〔3〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記“ホストコンピュータが構造を最適化しようとする計算に関する情報を入力するための手段”における“計算に関する情報”は,理論レベル,基底関数,及びスピン多重度を考慮するかどうかに関する情報を含む,上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
〔4〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記“ホストコンピュータに構造を最適化しようとする分子の構造に関する情報を入力するための手段”における“分子の構造に関する情報”は,分子の構成元素に関する情報,又は分子の構成元素とそれらの位置関係に関する情報のいずれかである上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
〔5〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記“複数の試行構造を求めるための手段”は,前記入力された分子の構造に関する情報からあらかじめ設定した数値に基づき,構成分子の分子間距離及び構成分子のなす角を変化させた複数の分子構造の候補を求めるものである,上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
〔6〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記“複数の試行構造を求めるための手段”は,前記入力された分子の構造に関する情報が,分子の部分構成に関する情報である場合,あらかじめ登録された前記分子を構成する分子(部分分子)の安定構造に関する情報から,分子の構造に関する初期構造を求め,前記初期構造の構成分子の分子間距離及び構成分子のなす角を変化させた複数の試行構造を求めるものである,上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
〔7〕また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記“前記各クライアントコンピュータがホストコンピュータへ送信した量子化学計算の結果に関する情報を受け取るための手段”における“量子化学計算”は,量子化学計算,分子力場計算,密度汎関数計算,分子軌道計算,パラメーターを用いた分子計算,のいずれか,または,これらの複合計算である,上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
〔8〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記“量子化学計算の結果に関する情報から,分子の構造が最適化されたかどうか判断するための手段”は,量子化学計算により求められた“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分”ベクトルの絶対値が,一定値以下であるかどうか判断するものである,上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
〔9〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記“量子化学計算の結果に関する情報から,分子の構造が最適化されたかどうか判断するための手段”における“量子化学計算の結果に関する情報”は,“試行構造におけるエネルギーの値に関する情報”,及び“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”,を含む,上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
〔10〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記“量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段”における“量子化学計算の結果に関する情報”は,“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”,を含み,前記“量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段”は,前記“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”,に基づいて試行構造におけるエネルギーの,ヘシアンに関する情報を更新し,新たな試行構造を求めるものである,上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
〔11〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記“量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段”における“量子化学計算の結果に関する情報”は,“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”,を含み,前記“量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段”は,“前記試行構造に関する情報”,“他のコンピュータが求めたものも含めたエネルギーの最も低い構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”と,前記“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”,に基づいて試行構造におけるエネルギーの,ヘシアンに関する情報を更新し,新たな試行構造を求めるものである,上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
〔12〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記“量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段”における“量子化学計算の結果に関する情報”は,“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”,を含み,前記“量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段”は,前記“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”,に基づいて試行構造におけるエネルギーの,ヘシアンに関する情報を求め,前記ヘシアンに関する情報から正値をとる有効ヘシアンの情報を求め,前記試行構造に関する情報,前記有効ヘシアンに関する情報,及び“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”から新たな試行構造を求めるものである,上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
〔13〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記“量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段”における“量子化学計算の結果に関する情報”は,試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”,を含み,前記“量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段”は,前記新たな試行構造を,直前に計算された試行構造のエネルギーが最低の場合は式(I)により求め,直前に計算された試行構造のエネルギーが最低でない場合は式(II)により求めるものである上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
Figure 0004729889
(式(I)及び式(II)中,ベクトルqnewは,新たな試行構造の座標を表す。ベクトルqkは,直前に計算された試行構造の座標を表す。下付文字kは,量子化学計算が終了した順番を表す。行列βkはk番目の試行構造における有効ヘシアンを表す。gkは,“k番目の試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分”に関するベクトルを表す。Lproj k,rは,ベクトル−βk -1l に直交する多数の固有ベクトルからランダムに選ばれた一つの固有ベクトルであり,スカラーCはスケール因子である。また,ベクトルqlは,直前に計算された試行構造のエネルギーがk番目までの全ての試行構造の中で最低でない場合,k番目までの全ての試行構造の中でエネルギーが最も低い試行構造の座標を表し,直前に計算された試行構造のエネルギーがk番目までの全ての試行構造の中で最も低い場合,全ての試行構造の中で直前に計算された試行構造の最も近傍にある試行構造の座標を表す。)
〔14〕また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記有効ヘシアン(βk)の初期値として,すなわちβ1として,単位行列,又は二次微分行列(あらかじめ低い計算レベルで計算されたエネルギーの座標による二次微分行列,若しくは,上記のいずれかの量子化学計算で計算されたエネルギーの座標による二次微分行列)を用いる上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
〔15〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記有効ヘシアン(βk)として,下記式(III)〜式(V)のいずれかにより表される暫定へシアン(Bk)を用いる上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
Figure 0004729889
(式(III)中,太文字の1は単位行列を表し,Δqk-l=qk−qlであり,Δgk-l=gk−glである。以下,同様である。)
Figure 0004729889
Figure 0004729889
〔16〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,
前記有効ヘシアン(βk)として,上記に記載の暫定へシアン(Bk)のいずれかが正値でかつ下記式(VI)を満たす場合には当該暫定ヘシアンを用い,
それ以外の場合は,下記式(VII)を用いる上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。なお,いずれか2つ以上の暫定ヘシアンが正値かつ(VI)を満たす場合は,任意に暫定ヘシアンを選ぶことができる。
Figure 0004729889
上記式(VI)及び(VII)中,gmは,k番目までの全ての試行構造の中でエネルギーが最も低い試行構造(m番目の試行構造とする)での,エネルギーの座標による一次微分ベクトルである。スカラーRk maxは,探索距離の限界値である。ωkは,有効へシアンが正値になり,関係式(VIII)を満たすように求められるスカラーである。
Figure 0004729889
〔17〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記Rk maxの初期値として,すなわちR1 maxとして,0.0から10.0のいずれかの値を用いる上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
〔18〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,
前記Rk maxとして,直前の試行構造qkが,n番目の試行構造qn及びエネルギーの座標による一次微分ベクトルgn及びo番目のへシアンBoを用いて見出された構造であって,k番目までの試行構造の中で,直前の構造qkのエネルギーが最低の場合若しくはn番目の試行構造qnが最低のエネルギーを有する場合,下記式(IX)を用い,そうでない場合,Rk max=Rk-1 maxを用いる上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
Figure 0004729889
(上記式においてE(qi)は,量子化学計算によって求められた,試行構造qiでのエネルギーである。)
〔19〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記Lproj k,rとして,下記式(X)を満たすものを用いる上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
Figure 0004729889
(上記式においてNは,自由度の数を表す。)
〔20〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記スケール因子Cとして,〔17〕に定義されるλproj k,rがλproj k,r 2<0の場合,下記式(XI)を用い,λproj k,r 2≧0の場合,下記式(XII)を用いる上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
Figure 0004729889
〔21〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,前記スケール因子Cとして,C=0を用いる上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
〔22〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,“前記ホストコンピュータから送信された試行構造及び計算に関する情報を用いて,量子化学計算により前記試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分に関する情報を求めるための手段”における,“座標”は,分子を構成する原子の相対的位置関係を表す,原子間距離,3原子の接続角,4原子の2面対角,を含む内部座標である,上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
〔23〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,“前記ホストコンピュータから送信された試行構造及び計算に関する情報を用いて,量子化学計算により前記試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分に関する情報を求めるための手段”における,“座標”は,分子を構成する原子の位置を表す,デカルト座標である,上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
〔24〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,“前記ホストコンピュータから送信された試行構造に関する情報を用いて,量子化学計算により前記試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分に関する情報を求めるための手段”における,“前記試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分に関する情報”は,“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”,及び“試行構造におけるエネルギー”を含む,上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。ここで, エネルギーの,座標による一次微分は,ポテンシャルエネルギーの勾配を表す。
〔25〕 また,本発明の分子構造最適化システムの好ましい態様は,“前記ホストコンピュータから送信された試行構造及び計算に関する情報を用いて,量子化学計算により前記試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分に関する情報を求めるための手段”は,前記“ホストコンピュータが構造を最適化しようとする計算に関する情報を入力するための手段”における“計算に関する情報”に基づいて,量子化学計算を行う,上記のいずれかに記載の分子構造最適化システムである。
〔26〕 本発明の分子構造最適化方法は,ホストコンピュータと,前記ホストコンピュータに連結された複数のクライアントコンピュータによって構成される分子構造最適化システムを用いた分子の安定構造を求めるための分子構造最適化方法であって,前記ホストコンピュータに,構造を最適化しようとする計算に関する情報を入力する工程と,前記ホストコンピュータが,前記計算に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信する工程と,前記ホストコンピュータに,構造を最適化しようとする分子の構造に関する情報を入力する工程と,前記ホストコンピュータが,前記入力された分子の構造に関する情報から複数の試行構造を求める工程と,前記ホストコンピュータが,前記複数の試行構造に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信する工程と,前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記ホストコンピュータから送信された計算に関する情報を入力する工程と,前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記ホストコンピュータから送信された試行構造に関する情報を入力する工程と,前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記ホストコンピュータから送信された試行構造及び計算に関する情報を用いて,量子化学計算により前記試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分に関する情報を求める工程と,前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記量子化学計算が終了したかどうか判断する工程と,前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記量子化学計算が終了したと判断した場合に,量子化学計算の結果に関する情報を前記ホストコンピュータに送信する工程と,前記ホストコンピュータが,前記クライアントコンピュータがホストコンピュータへ送信した量子化学計算の結果に関する情報を受け取る工程と,前記ホストコンピュータが,前記量子化学計算の結果に関する情報から,分子の構造が最適化されたかどうか判断する工程と,前記ホストコンピュータが,分子の構造が最適化されていたと判断した場合は,各クライアントコンピュータへ量子化学計算を中止するように指令を出す工程と,前記ホストコンピュータが,分子の構造が最適化されていなかったと判断した場合は,前記量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求める工程と,前記新たな試行構造に関する情報を,前記量子化学計算の結果を送信してきたクライアントコンピュータに送信する工程と,を含む,分子構造最適化方法である。
本発明によれば,準ニュートン法とは異なるアルゴリズムを用いた量子化学計算を行うことで,複数のコンピュータによる並列計算を可能とし,それにより従来に比べ高速に対象分子の最適化構造を解明できる分子構造最適化システムを提供できる。
1.分子構造最適化システム
本発明の分子構造最適化システムは,ホストコンピュータと,前記ホストコンピュータに連結された複数のクライアントコンピュータによって構成される分子構造最適化システムであって,(A)前記ホストコンピュータは,(A-1)前記ホストコンピュータが構造を最適化しようとする計算に関する情報を入力するための手段と,(A-2)前記計算に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信するための手段と,(A-3)前記ホストコンピュータに構造を最適化しようとする分子の構造に関する情報を入力するための手段と,(A-4)前記入力された分子の構造に関する情報から,複数の試行構造を求めるための手段と,(A-5) 前記複数の試行構造に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信するための手段と,(A-6)前記各クライアントコンピュータがホストコンピュータへ送信した量子化学計算の結果に関する情報を受け取るための手段と,(A-7)前記量子化学計算の結果に関する情報から,分子の構造が最適化されたかどうか判断するための手段と,(A-8)分子の構造が最適化されていたと判断した場合は,各クライアントコンピュータへ量子化学計算を中止するように指令を出すための手段と,(A-9)分子の構造が最適化されていなかったと判断した場合は,前記量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段と,(A-10)前記新たな試行構造に関する情報を,前記量子化学計算の結果を送信してきたクライアントコンピュータに送信するための手段と,を具備し,(B)前記ホストコンピュータに連結されたクライアントコンピュータは,それぞれ,(B-1) 前記ホストコンピュータから送信された計算に関する情報を入力するための手段と, (B-2) 前記ホストコンピュータから送信された試行構造に関する情報を入力するための手段と, (B-3)前記ホストコンピュータから送信された試行構造及び計算に関する情報を用いて,量子化学計算により前記試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分に関する情報を求めるための手段と,(B-4)前記量子化学計算が終了したかどうか判断するための手段と,(B-5)前記量子化学計算が終了したと判断した場合に,量子化学計算の結果に関する情報を前記ホストコンピュータに送信するための手段と,を具備する。
そして,前記ホストコンピュータに,構造を最適化しようとする計算に関する情報を入力する工程(ステップ1)と,前記ホストコンピュータが,前記計算に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信する工程(ステップ2)と,前記ホストコンピュータに,構造を最適化しようとする分子の構造に関する情報を入力する工程(ステップ3)と,前記ホストコンピュータが,前記入力された分子の構造に関する情報から複数の試行構造を求める工程(ステップ4)と,前記ホストコンピュータが,前記複数の試行構造に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信する工程(ステップ5)と,前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記ホストコンピュータから送信された計算に関する情報を入力する工程(ステップ6)と,前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記ホストコンピュータから送信された試行構造に関する情報を入力する工程(ステップ7)と,前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記ホストコンピュータから送信された試行構造及び計算に関する情報を用いて,量子化学計算により前記試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分に関する情報を求める工程(ステップ8)と,前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記量子化学計算が終了したかどうか判断する工程(ステップ9)と,前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記量子化学計算が終了したと判断した場合に,量子化学計算の結果に関する情報を前記ホストコンピュータに送信する工程(ステップ10)と, 前記ホストコンピュータが,前記クライアントコンピュータがホストコンピュータへ送信した量子化学計算の結果に関する情報を受け取る工程(ステップ11)と,前記ホストコンピュータが,前記量子化学計算の結果に関する情報から,分子の構造が最適化されたかどうか判断する工程(ステップ12)と,前記ホストコンピュータが,分子の構造が最適化されていたと判断した場合は,各クライアントコンピュータへ量子化学計算を中止するように指令を出す工程(ステップ13)と,前記ホストコンピュータが,分子の構造が最適化されていなかったと判断した場合は,前記量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求める工程(ステップ14)と,前記新たな試行構造に関する情報を,前記量子化学計算の結果を送信してきたクライアントコンピュータに送信する工程(ステップ15)と,を含む工程により分子の安定構造を求める。
(A-1)ホストコンピュータが構造を最適化しようとする計算に関する情報を入力するための手段
“ホストコンピュータが構造を最適化しようとする計算に関する情報を入力するための手段”における“計算に関する情報”は,量子化学計算の計算レベルなどに関する情報であり,理論レベル,基底関数,及びスピン多重度を考慮するかどうかに関する情報などがあげられる。この情報は,量子化学計算を行う際に,通常用いられるものを適宜用いればよい。理論レベルとして,HF,UHF,ROHF,MP2,CCSD(T)などがあげられる。また,基底関数として,STO-3G,3-21G,6-31G,6-31+G, 6-31+G*,6-311+G*,cc-pVDZ,aug-cc-pVDZなどがあげられる。基底関数における“+”は,分子全体に広がる関数(diffuse function)を加えたものであり,基底関数における“*”は,分極関数を加えたものである。これらも量子化学計算において公知である。
(A-2) 前記計算に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信するための手段は,計算に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信することができれば特に限定されない。なお,ホストコンピュータと各クライアントコンピュータとは,好ましくはインターネット又はイントラネットにより連結されている。
(A-3)“ホストコンピュータに構造を最適化しようとする分子の構造に関する情報を入力するための手段”
“ホストコンピュータに構造を最適化しようとする分子の構造に関する情報を入力するための手段”における“分子の構造に関する情報”は,分子の構成元素に関する情報,又は分子の構成元素とそれらの位置関係に関する情報のいずれかがあげられる。安定構造を求める分子が二硫化炭素(CS2)である場合は,“分子の構成元素に関する情報”としてC,S,Sなどがあげられる。また,“分子の構成元素とそれらの位置関係に関する情報”として,構成分子C,S,S ,位置関係に関する情報S=C=S(C=S間の距離が1.56オングストローム,かつS=C=Sのなす角が0度)などがあげられる。なお,また,X線構造解析による情報や,NMRによる構造解析による情報からタンパク質などの分子の立体構造を求め,その構成分子及び立体構造に関する情報を“分子の構造に関する情報”として用いてもよい。
(A-4)入力された分子の構造に関する情報から,複数の試行構造を求めるための手段
“複数の試行構造を求めるための手段”は,入力された“分子の構造に関する情報”から各クライアントコンピュータ(又は各クライアントコンピュータとホストコンピュータ)が量子化学計算を行う試行構造を求めるための手段である。“複数の試行構造を求めるための手段”として,入力された分子の構造に関する情報から,あらかじめ設定した数値に基づき,構成分子の分子間距離及び構成分子のなす角を変化させた複数の分子構造の候補を求めるものがあげられる。たとえば,分子間距離を0.1オングストロームづつずらす,分子間角度を1度づつずらすというものであれば, S=C=S(C=S間の距離が1.56オングストローム,及び1.66オングストロームかつS=C=Sのなす角が0度),S=C=S(C=S間の距離が1.56オングストローム,及び1.66オングストロームかつS=C=Sのなす角が1度),S=C=S(C=S間の距離が1.66オングストローム,かつS=C=Sのなす角が0度),S=C=S(C=S間の距離が1.66オングストローム,かつS=C=Sのなす角が1度),及びS=C=S(C=S間の距離が1.56オングストローム,及び1.76オングストロームかつS=C=Sのなす角が1度)など複数の試行構造の候補を求める。
従来の構造最適化においては,ひとつの試行構造について量子化学計算を繰り返し,構造最適化を行っていた。このようなアルゴリズムに基づけば,複数のコンピュータを用いた並列計算を行っても,それほど処理速度は向上しない。さらには,コンピュータの台数を多くしても計算速度が速くならない収束状態に陥る。しかしながら,本発明によれば,それぞれ別の量子化学計算を,それぞれのコンピュータで行わせるので,それぞれのコンピュータの処理速度を最大限生かした構造最適化を迅速に行うことができる。
“複数の試行構造を求めるための手段”は,前記入力された分子の構造に関する情報が,分子の部分構成に関する情報である場合,あらかじめ登録された前記分子を構成する分子(部分分子)の安定構造に関する情報から,分子の構造に関する初期構造を求め,前記初期構造の構成分子の分子間距離及び構成分子のなす角を変化させた複数の試行構造を求めるものが好ましい。たとえば,二硫化炭素ダイマー(二量体)の構造を求める場合,あらかじめ登録してあった,二硫化炭素モノマーの構造を組み合わせ,二硫化炭素ダイマーの初期構造とすればよい。
(A-5)複数の試行構造に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信するための手段
“複数の試行構造に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信するための手段”は,複数の試行構造に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信することができれば特に限定されない。なお,ホストコンピュータと各クライアントコンピュータとは,好ましくはインターネット又はイントラネットにより連結されている。
(A-6)各クライアントコンピュータがホストコンピュータへ送信した量子化学計算の結果に関する情報を受け取るための手段
“各クライアントコンピュータがホストコンピュータへ送信した量子化学計算の結果に関する情報を受け取るための手段”は,各クライアントコンピュータがホストコンピュータへ送信した量子化学計算の結果に関する情報を,受け取ることができるものであれば特に限定されない。通常のコンピュータやサーバは,このような手段を具備している。
(A-7) 量子化学計算の結果に関する情報から,分子の構造が最適化されたかどうか判断するための手段
“量子化学計算の結果に関する情報から,分子の構造が最適化されたかどうか判断するための手段”は,量子化学計算の結果に関する情報から,分子の構造が最適化されたかどうか判断する。具体的には,この手段は,量子化学計算により求められた“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分” ベクトルの絶対値が,一定値以下であるかどうか判断し,一定値以下の場合に最適化されたと判断するものがあげられる。ここで,構造が最適化されたとは,ある分子がそのポテンシャルエネルギー曲面において,少なくともローカルミニマムのエネルギー位置に位置していることを意味する(好ましくは,最もエネルギーが低い構造に位置していることを意味する)。
“量子化学計算の結果に関する情報から,分子の構造が最適化されたかどうか判断するための手段”における“量子化学計算の結果に関する情報”は,“試行構造におけるエネルギーの値に関する情報”,及び“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”,を含むものがあげられる。“試行構造におけるエネルギーの値に関する情報”は,新たな試行構造を求める際に通常用いられる。構造最適化計算において,その試行構造(最適化構造)におけるエネルギー値に関する情報は,その分子の熱力学的安定性などを比較する上でも重要である。また,“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”は,新たは試行構造を求める際に用いられる。
(A-8)各クライアントコンピュータへ量子化学計算を中止するように指令を出すための手段
“各クライアントコンピュータへ量子化学計算を中止するように指令を出すための手段”は,ホストコンピュータが,分子の構造が最適化されていたと判断した場合に,各クライアントコンピュータへ量子化学計算を中止するように指令を出し,それ以降の計算を中止させるための手段である。
(A-9)量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段
量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段は,ホストコンピュータが分子の構造が最適化されていなかったと判断した場合に,量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段である。
“量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段”における“量子化学計算の結果に関する情報”として,“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”,を含むものがあげられる。または,“量子化学計算の結果に関する情報”として,“試行構造におけるエネルギーの値に関する情報”,及び“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”,を含むものがあげられる。
“量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段”として,“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”,に基づいて試行構造におけるエネルギーの,ヘシアンに関する情報を更新し,新たな試行構造を求めるものがあげられる。
また, “量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段”として,“前記試行構造に関する情報”,“他のコンピュータが求めたものも含めたエネルギーの最も低い構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”と,前記“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”,に基づいて試行構造におけるエネルギーの,ヘシアンに関する情報を更新し,新たな試行構造を求めるものがあげられる。
また,“量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段”,として,“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”,に基づいて試行構造におけるエネルギーの,ヘシアンに関する情報を求め,前記ヘシアンに関する情報から正値をとる有効ヘシアンの情報を求め,前記試行構造に関する情報,前記有効ヘシアンに関する情報,及び“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報”から新たな試行構造を求めるものがあげられる。
従来の準ニュートン法では,ヘシアンを更新する際に,ヘシアンの正値が維持される。そこで,ヘシアンをそのまま用いても,大きな問題にならなかった。しかし,本発明の手法により構造安定化を行うと,ヘシアンの正値が維持されないケースがたびたび見られた。ヘシアンが正値でなくなるとは,すなわち近似エネルギー曲面が凸曲面になることを意味する。そのため,新規試行構造を求める際に,上記のとおり更新したヘシアンではなく,正値を維持する有効へシアンを用いることが好ましい。この有効ヘシアンは,後述の式(III)及び(IV)で表されるヘシアンがあげられる。
“量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求めるための手段”として,新たな試行構造を,直前に計算された試行構造(その座標ベクトルをqkとする。)のエネルギーが最低の場合は式(I)により求め,直前に計算された試行構造のエネルギーが最低でない場合は式(II)により求めるものであることは,本発明の好ましい別の実施態様である。
Figure 0004729889
(式(I)及び式(II)中,ベクトルqnewは,新たな試行構造の座標を表す。ベクトルqkは,直前に計算された試行構造の座標を表す。下付文字kは,量子化学計算が終了した順番を表す。行列βkはk番目の試行構造における有効ヘシアンを表す。gkは,“k番目の試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分”に関するベクトルを表す。Lproj k,rは,ベクトル−βk -1l に直交する多数の固有ベクトルからランダムに選ばれた一つの固有ベクトルであり,スカラーCはスケール因子である。また,ベクトルqlは,直前に計算された試行構造のエネルギーがk番目までの全ての試行構造の中で最低でない場合,k番目までの全ての試行構造の中でエネルギーが最も低い試行構造の座標を表し,直前に計算された試行構造のエネルギーがk番目までの全ての試行構造の中で最も低い場合,全ての試行構造の中で直前に計算された試行構造の最も近傍にある試行構造の座標を表す。)
前記有効ヘシアン(βk)の初期値として,すなわちβ1として,単位行列,若しくは,エネルギーの座標による二次微分行列(前記量子化学計算より低い計算(理論)レベルで計算されたエネルギーの座標による二次微分行列,若しくは,前記量子化学計算と同じ理論レベルで計算された,エネルギーの座標による二次微分行列)のいずれかを用いることは,本発明の好ましい別の実施態様である。
なお,有効ヘシアン(βk)として,下記式(III)〜式(V)のいずれかにより表される暫定へシアン(Bk)を用いることは,本発明の好ましい別の実施態様である。
Figure 0004729889
(式(II)中,太文字の1は単位行列を表し,Δqk-l=qk−qlであり,Δgk-l=gk−glである。)
Figure 0004729889
Figure 0004729889
なお,式(III)は,BFGS法(C. G. Broyden, J. Inst. Math. Appl. 1970, 6, 76; R. Flether, Comput. J. 1970, 13, 317; D. Goldfarb, Math. Comput. 1970, 24, 23; D. F. Shanno, Math. Comput. 1970, 24, 647)に類似したヘシアン更新の式である。式(V)はDFP法(W. C. Davidon, AEC Res. and Dev. Report 1959, ANL-5990; R. Fletcher and M. J. D. Powell,Comput. J. 1963, 6, 163.)に類似したヘシアン更新の式である。
有効ヘシアン(βk)として,暫定へシアン(Bk)が正値でかつ下記式(VI)を満たす場合には暫定ヘシアンを用い,それ以外の場合は,下記式(VII)を用いることは,本発明の好ましい別の実施態様である。
Figure 0004729889
上記式(VI)及び(VII)中,gmは,k番目までの全ての試行構造の中でエネルギーが最も低い試行構造(m番目の試行構造とする)での,エネルギーの座標による一次微分ベクトルである。スカラーRk maxは,探索距離の限界値である。ωkは,有効へシアンが正値になり,関係式(VIII)を満たすように求められるスカラーである。なお,ωkは,自己無頓着になるようにすることで求めることができる。
Figure 0004729889
前記Rk maxの初期値として,すなわちR1 maxとして,0.0から10.0のいずれかの値を用いることは,本発明の好ましい別の実施態様である。
Rk maxは,経験的に求められるものであるが,Rk maxとして,直前の試行構造qkが,n番目の試行構造qn及びエネルギーの座標による一次微分ベクトルgn及びo番目のへシアンBoを用いて見出された構造であって,k番目までの試行構造の中で,直前の構造qkのエネルギーが最低の場合若しくはn番目の試行構造qnが最低のエネルギーを有する場合,下記式(IX)を用い,そうでない場合,Rk max=Rk-1 maxを用いることは,本発明の好ましい別の実施態様である。
Figure 0004729889
(上記式においてE(qi)は,量子化学計算によって求められた,試行構造qiでのエネルギーである。)

固有ベクトルLproj k,rとして,下記式(X)を満たすものを用いることは,本発明の好ましい別の実施態様である。
Figure 0004729889
(上記式においてNは自由度の数を表す。)
また,スケール因子として,λproj k,r 2<0の場合,下記式(XI)を用い,λproj k,r 2≧0の場合,下記式(XII)を用いることは,本発明の好ましい別の実施態様である。
Figure 0004729889
又はスケール因子Cとして,C=0を用いることは,本発明の好ましい別の実施態様である。
なお,本明細書において“座標”は,分子を構成する原子の相対的位置関係を表す,原子間距離,3原子の接続角及び4原子の2面対角を含む内部座標,又は,分子を構成する原子の位置を表すデカルト座標があげられる。
(A-10) 新たな試行構造に関する情報を,前記量子化学計算の結果を送信してきたクライアントコンピュータに送信するための手段
“新たな試行構造に関する情報を,前記量子化学計算の結果を送信してきたクライアントコンピュータに送信するための手段”は, 新たな試行構造に関する情報を,前記量子化学計算の結果を送信してきたクライアントコンピュータに送信することができるものであれば特に限定されない。
(B-1)前記ホストコンピュータから送信された計算に関する情報を入力するための手段
前記ホストコンピュータから送信された計算に関する情報を入力するための手段は,ホストコンピュータから送信されたに計算関する情報を,量子化学計算のためにクライアントコンピュータに入力しうるものであれば特に限定されない。
(B-2)ホストコンピュータから送信された試行構造に関する情報を入力するための手段
ホストコンピュータから送信された試行構造に関する情報を入力するための手段は,ホストコンピュータから送信された試行構造に関する情報を,量子化学計算のためにクライアントコンピュータに入力しうるものであれば特に限定されない。
(B-3)ホストコンピュータから送信された試行構造に関する情報を用いて,量子化学計算により前記試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分に関する情報を求めるための手段
“ホストコンピュータから送信された試行構造及び計算に関する情報を用いて,量子化学計算により前記試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分に関する情報を求めるための手段”は,たとえばGAUSSIANプログラムなど公知の量子化学計算プログラムにおけると同様,試行構造に関する情報(構成分子やその位置情報など)を用いて,量子化学計算を行い,試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分に関する情報を得るものである。“試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分に関する情報”として,試行構造におけるエネルギーの値や,試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分の値に関する情報などが含まれる。
“ホストコンピュータから送信された試行構造に関する情報を用いて,量子化学計算により前記試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分に関する情報を求めるための手段”として,“ホストコンピュータが構造を最適化しようとする計算に関する情報を入力するための手段”における“計算に関する情報”に基づいて,量子化学計算を行うものが好ましい。これは,たとえば,MP2/6-31+G*など所定の計算レベルや考慮する関数などを調整して,安定構造を求めるものである。たとえば,初期計算は,低い計算レベルで安定構造を求めた後,分子の物性などを考慮しつつ徐々に計算レベルを上げて計算する。
(B-4) 量子化学計算が終了したかどうか判断するための手段
“量子化学計算が終了したかどうか判断するための手段”は,量子化学計算が終了したかどうか判断できるものであれば,特に限定されない。“量子化学計算が終了したかどうか判断するための手段”として,前記一次微分ベクトルの値の絶対値が,所定の範囲内であるかどうか判断することにより行うものがあげられる。
(B-5) 量子化学計算が終了したと判断した場合に,量子化学計算の結果に関する情報を前記ホストコンピュータに送信するための手段
“量子化学計算が終了したと判断した場合に,量子化学計算の結果に関する情報を前記ホストコンピュータに送信するための手段”は,量子化学計算が終了したと判断した場合に,量子化学計算の結果に関する情報をホストコンピュータに送信することができる者であれば特に限定されない。“量子化学計算の結果に関する情報”には,試行構造の構造に関する情報,試行構造におけるエネルギーに関する情報,試行構造における一次微分に関する情報などがあげられる。
2.安定構造の求め方
以下では,上記のシステムを用いた構造最適化の方法について説明する。この方法は,以下の各工程により分子の安定構造を求めるものである。
ホストコンピュータに,構造を最適化しようとする計算に関する情報を入力する(ステップ1)。
ホストコンピュータが,前記計算に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信する(ステップ2)。
ホストコンピュータに,構造を最適化しようとする分子の構造に関する情報を入力する(ステップ3)。
ホストコンピュータが,前記入力された分子の構造に関する情報から複数の試行構造を求める(ステップ4)。
ホストコンピュータが,前記複数の試行構造に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信する(ステップ5)。
ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記ホストコンピュータから送信された計算に関する情報を入力する(ステップ6)。
ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記ホストコンピュータから送信された試行構造に関する情報を入力する(ステップ7)。
ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記ホストコンピュータから送信された試行構造及び計算に関する情報を用いて,量子化学計算により前記試行構造におけるエネルギーの,座標による一次微分に関する情報を求める(ステップ8)。
ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記量子化学計算が終了したかどうか判断する(ステップ9)。
ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記量子化学計算が終了したと判断した場合に,量子化学計算の結果に関する情報を前記ホストコンピュータに送信する(ステップ10)。
ホストコンピュータが,前記クライアントコンピュータがホストコンピュータへ送信した量子化学計算の結果に関する情報を受け取る(ステップ11)。
ホストコンピュータが,前記量子化学計算の結果に関する情報から,分子の構造が最適化されたかどうか判断する(ステップ12)。
ホストコンピュータが,分子の構造が最適化されていたと判断した場合は,各クライアントコンピュータへ量子化学計算を中止するように指令を出す(ステップ13)。
ホストコンピュータが,分子の構造が最適化されていなかったと判断した場合は,前記量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造を求める(ステップ14)。
新たな試行構造に関する情報を,前記量子化学計算の結果を送信してきたクライアントコンピュータに送信する(ステップ15)。そして,上記のステップ7に戻り,分子の構造が最適化されていたと判断するまで繰り返す。
以下本発明を,具体的な分子の安定構造最適化の計算例をあげて説明する。以下の実施例では,図1に示すようなシステムを用いて実験を行った。本発明のホストコンピュター(及びクライアントコンピューターのひとつ)として,Dell社製パワーエッジ2600(PowerEdge2600)を用いた。また,クライアントコンピュータとして,SGI社製オリジン2000(Origin2000),SGI社製テズロ(Tezro),及びNEC社製SX-6を用いた。そして,上記に説明したとおりのアルゴリズムに基づくシステムを用いて分子の構造最適化を行った。対象とした分子は,水2量体,水3量体,アゾベンゼン,テトラフェニルポルフィリン,シトシジン-グアノシンクラスターであった。図2は,水2量体の構造最適化を示す図である。図2Aは,初期試行構造を示す。図2Bは,構造安定化の結果得られた構造を示す。図3は,水3量体の構造最適化を示す図である。図3Aは,初期試行構造を示す。図3Bは,構造安定化の結果得られた構造を示す。図4は,アゾベンゼンの構造最適化を示す図である。図4Aは,初期試行構造を示す。図4Bは,構造安定化の結果得られた構造を示す。図5は,テトラフェニルポルフィリンの構造最適化を示す図である。図5Aは,初期試行構造を示す。図5Bは,構造安定化の結果得られた構造を示す。図6は,シトシジン-グアノシンクラスターの構造最適化を示す図である。図6Aは,初期試行構造を示す。図6Bは,構造安定化の結果得られた構造を示す。
表1に計算時間を示す。表1に示されているように,4台の計算機からなる本発明の分子構造最適化システムを用いて分子構造を最適化した場合,1台の計算機による計算に比べて,高速に計算できており,高い並列化効率が得られることがわった。このことから,本発明の分子構造最適化システムは,分子構造の最適化計算を高速に求めることができることがわかった。また,本発明の分子構造の最適化方法によれば,従来の分子構造最適化方法に比べ,高速に安定構造に関する計算を行うことができることがわかった。
Figure 0004729889
本発明は,コンピュータによる分子の構造解析に関するもので,特に,並列処理の活用により高速計算を可能にするものであり,ナノテクノロジー分野等での材料開発や医療分野での生体機能解明のための分子シミュレーションに利用可能なものである。
図1は,実施例1で用いたシステムの基本構成例を示す図である 図2は,水2量体の構造最適化を示す図である。図2Aは,初期試行構造を示す。図2Bは,構造安定化の結果得られた構造を示す。 図3は,水3量体の構造最適化を示す図である。図3Aは,初期試行構造を示す。図3Bは,構造安定化の結果得られた構造を示す。 図4は,アゾベンゼンの構造最適化を示す図である。図4Aは,初期試行構造を示す。図4Bは,構造安定化の結果得られた構造を示す。 図5は,テトラフェニルポルフィリンの構造最適化を示す図である。図5Aは,初期試行構造を示す。図5Bは,構造安定化の結果得られた構造を示す。 図6は,シトシジン-グアノシンクラスターの構造最適化を示す図である。図6Aは,初期試行構造を示す。図6Bは,構造安定化の結果得られた構造を示す。

Claims (7)

  1. ホストコンピュータ(A)と,前記ホストコンピュータ(A)に連結された複数のクライアントコンピュータ(B)によって構成される分子構造最適化システムであって,

    前記ホストコンピュータ(A)は,

    前記ホストコンピュータ(A)が構造を最適化しようとする計算に関する情報を入力するための第1の入力手段(A−1)であって,前記計算に関する情報は,理論レベル,基底関数,及びスピン多重度を考慮するかどうかに関する情報を含むものと,

    前記第1の入力手段(A−1)により入力された前記計算に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信するための第1の送信手段(A−2)と,

    前記ホストコンピュータ(A)に構造を最適化しようとする分子の構造に関する情報を入力するための第2の入力手段(A−3)であって,前記分子の構造に関する情報は,
    分子の構成元素に関する情報,及び前記分子の構成元素の位置関係に関する情報であるものと,

    前記第2の入力手段(A−3)により入力された分子の構造に関する情報から,複数の試行構造を求めるための試行構造取得手段(A−4)であって,あらかじめ設定した数値を読み出して,前記入力された分子の構造における分子間距離及び構成分子のなす角を前記数値ずつ変化させた複数の分子構造の候補を前記複数の試行構造とするものと,

    前記試行構造取得手段(A−4)により求められた複数の試行構造に関する情報のそれぞれを,前記複数のクライアントコンピュータのいずれかに送信するための第2の送信手段(A−5)と,を含み,

    前記ホストコンピュータ(A)に連結されたクライアントコンピュータ(B)は,それぞれ,
    前記ホストコンピュータの第1の送信手段(A−2)から送信された計算に関する情報を入力するための第3の入力手段(B−1)と,
    前記ホストコンピュータの第2の送信手段(A−5)から送信された前記試行構造に関する情報を入力するための第4の入力手段(B−2)と,
    前記第3の入力手段(B−1)により入力された計算に関する情報及び前記第4の入力手段(B−2)により入力された前記試行構造に関する情報を用いて,前記試行構造におけるエネルギーの座標による一次微分に関するベクトルを求めるための量子化学計算を行う量子化学計算手段(B−3)と,
    前記量子化学計算が終了したか否か判断するための計算終了判断手段(B−4)であって,計算終了のための一定の範囲に関する情報を読み出して,前記量子化学計算手段(B−3)により求められた前記試行構造におけるエネルギーの座標による一次微分のベクトルの絶対値が,前記一定の範囲内である場合には,前記量子化学計算が終了したと判断するものと,
    前記計算終了判断手段(B−4)が,量子化学計算が終了したと判断した場合には,量子化学計算の結果に関する情報を前記ホストコンピュータに送信するための第3の送信手段(B−5)であって,前記量子化学計算の結果は,前記量子化学計算により求められた試行構造についてのエネルギーの座標による一次微分ベクトルの絶対値であるものと,
    を具備し,

    前記ホストコンピュータ(A)は,さらに
    前記各クライアントコンピュータの第3の送信手段(B−5)が,ホストコンピュータへ送信した前記量子化学計算の結果に関する情報を受け取るための受信手段(A−6)と,

    前記受信手段(A−6)が受信した前記量子化学計算の結果に関する情報から分子の構造が最適化されたかどうか判断するための構造最適化判断手段(A−7)であって,最適化を判断するための一定値を読み出して,前記試行構造についてのエネルギーの座標による一次微分ベクトルの絶対値と,前記一定値とを比較して,前記絶対値が前記一定値以下であるかどうか判断するものと,

    前記構造最適化判断手段(A−7)が,前記分子の構造が最適化されていたと判断した場合は,前記各クライアントコンピュータ(B)へ量子化学計算を中止するように指令を出すための指令手段(A−8)と,

    前記構造最適化判断手段(A−7)が,前記分子の構造が最適化されていなかったと判断した場合は,前記量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造の座標を求めるための新試行構造取得手段(A−9)であって,

    前記受信手段(A−6)が受信した試行構造のエネルギーの座標による一次微分ベクトルを読み出して,当該エネルギーの座標による一次微分ベクトルが前記受信手段(A−6)が受信した試行構造のエネルギーの座標による一次微分ベクトルのうち最低の場合は前記新たな試行構造の座標(qnew)を式(I)により求め,前記受信手段(A−6)が受信した試行構造のエネルギーの座標による一次微分ベクトルが最低でない場合は前記新たな試行構造の座標(qnew)を式(II)により求めるものであり,
    Figure 0004729889
    (式(I)及び式(II)中,ベクトルqnewは,新たな試行構造の座標を表す。ベクトルqは,直前に計算された試行構造の座標を表す。下付文字kは,量子化学計算が終了した順番を表す。行列βはk番目の試行構造における有効ヘシアンを表す。gは,“k番目の試行構造におけるエネルギーの座標による一次微分”に関するベクトルを表す。Lproj k,rは,ベクトル−β −1に直交する多数の固有ベクトルからランダムに選ばれた一つの固有ベクトルである。スカラーCはスケール因子である。また,ベクトルqは,直前に計算された試行構造のエネルギーがk番目までの全ての試行構造の中で最低でない場合,k番目までの全ての試行構造の中でエネルギーが最も低い試行構造の座標を表し,直前に計算された試行構造のエネルギーがk番目までの全ての試行構造の中で最も低い場合,全ての試行構造の中で直前に計算された試行構造の最も近傍にある試行構造の座標を表す。)
    前記新たな試行構造を式(I)により求める場合は,前記受信手段(A−6)が受信した試行構造の座標を示すベクトル(q)と,当該試行構造における有効ヘシアンの逆行列(β −1)と,当該試行構造におけるエネルギーの座標による一次微分に関するベクトル(g)とを用いて,前記有効ヘシアンの逆行列(β −1)と前記当該試行構造におけるエネルギーの座標による一次微分に関するベクトル(g)との積(β −1)を求め,前記試行構造の座標を示すベクトル(q)と,前記積(β −1)との差分を求めることで,前記新たな試行構造の座標(qnew)を得るものであり,
    前記新たな試行構造を式(II)により求める場合は,全ての試行構造の中でエネルギーが最も低い試行構造の座標(q)を読出すとともに,前記受信手段(A−6)が受信した試行構造における有効ヘシアンの逆行列(β −1)と,前記全ての試行構造の中でエネルギーが最も低い試行構造におけるエネルギーの座標による一次微分に関するベクトル(g)との積(β −1)を求め,前記ベクトル−β −1に直交する多数の固有ベクトルから一つの固有ベクトルLproj k,rを求め,スケール因子Cを読み出し,前記固有ベクトルLproj k,rと前記スケール因子Cとの積(CLproj k,r)を求め,前記全ての試行構造の中でエネルギーが最も低い試行構造の座標(q),前記積(β −1)及び前記積(CLproj k,r)を用いて,q−β −1−CLproj k,rを得るものであり,

    前記新試行構造取得手段(A−9)が取得した新たな試行構造の座標に関する情報を,前記第3の送信手段(B−5)により前記量子化学計算の結果を送信してきたクライアントコンピュータ(B)に送信するための第4の送信手段(A−10)と,
    を具備し,

    前記ホストコンピュータに,構造を最適化しようとする計算に関する情報を入力する工程と,
    前記ホストコンピュータが,前記計算に関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータに送信する工程と,
    前記ホストコンピュータに,構造を最適化しようとする分子の構造に関する情報を入力する工程と,
    前記ホストコンピュータが,前記入力された分子の構造に関する情報から複数の試行構造を求める工程と,
    前記ホストコンピュータが,前記複数の試行構造のうちいずれかに関する情報を,前記複数のクライアントコンピュータのいずれかに送信する工程と,
    前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記ホストコンピュータから送信された計算に関する情報を入力する工程と,
    前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記ホ
    ストコンピュータから送信された試行構造に関する情報を入力する工程と,
    前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記ホストコンピュータから送信された試行構造及び計算に関する情報を用いて,量子化学計算により前記試行構造におけるエネルギーの座標による一次微分に関するベクトルを求める工程と,
    前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記量子化学計算が終了したかどうか判断する工程と,
    前記ホストコンピュータに連結されたそれぞれのクライアントコンピュータが,前記量子化学計算が終了したと判断した場合に,量子化学計算の結果に関する情報を前記ホストコンピュータに送信する工程と,
    前記ホストコンピュータが,前記クライアントコンピュータがホストコンピュータへ送信した量子化学計算の結果に関する情報を受け取る工程と,
    前記ホストコンピュータが,前記量子化学計算の結果に関する情報から,分子の構造が最適化されたかどうか判断する工程と,
    前記ホストコンピュータが,分子の構造が最適化されていたと判断した場合は,各クライアントコンピュータへ量子化学計算を中止するように指令を出す工程と,
    前記ホストコンピュータが,分子の構造が最適化されていなかったと判断した場合は,
    前記量子化学計算の結果に関する情報から,新たな試行構造の座標(q new を求める工程と,
    前記新たな試行構造の座標(q new に関する情報を,前記量子化学計算の結果を送信してきたクライアントコンピュータに送信する工程と,
    を含む工程により分子の安定構造を求める,
    分子の安定構造を求めるための分子構造最適化システム。
  2. 前記有効ヘシアン(βk)の初期値(すなわちβ1)として,単位行列,又はエネルギー
    の座標による二次微分行列,のいずれかを用いる
    請求項1に記載の分子構造最適化システム。
  3. 前記有効ヘシアン(βk)として,下記式(III)〜式(V)のいずれかにより表される暫
    定へシアン(Bk)を用いる
    請求項1に記載の分子構造最適化システム。
    Figure 0004729889

    (式(III)中,太文字の1は単位行列を表し,Δqk−l=qk−qlであり,Δgk−l=g−gである。以下,同様である。)
    Figure 0004729889

    Figure 0004729889
  4. 請求項3に記載の分子構造最適化システムであって,
    前記有効ヘシアン(βk)として,
    前記暫定へシアン(B)のいずれかが正値でかつ下記式(VI)を満たす場合には当該暫定ヘシアンを用い,
    それ以外の場合は,下記式(VII)を用いるシステム。
    Figure 0004729889

    (上記式(VI)及び(VII)中,gは,k番目までの全ての試行構造の中でエネルギーが
    最も低い試行構造(m番目の試行構造とする)での,エネルギーの座標による一次微分ベクトルである。スカラーR maxは,探索距離の限界値である。ωは,有効へシアンが正値になり,関係式(VIII)を満たすように求められるスカラーである。)
    Figure 0004729889
  5. 前記R maxの初期値(すなわちR max)として,0.0から10.0のいずれかの値を用いる請求項4に記載の分子構造最適化システム。
  6. 前記R maxとして,直前の試行構造qが,n番目の試行構造q及びエネルギーの座標による一次微分ベクトルg及びo番目のへシアンBoを用いて見出された構造であって,k番目までの試行構造の中で,直前の構造qのエネルギーが最低の場合若しくはn番目の試行構造qが最低のエネルギーを有する場合,下記式(IX)を用い,そうでない場合,R max=Rk−1 maxを用いる
    請求項4に記載の分子構造最適化システム。
    Figure 0004729889
    (上記式においてE(q)は,量子化学計算によって求められた,試行構造qでのエネルギーである。)
  7. 前記Lproj k,rとして,下記式(X)を満たすものを用いる
    請求項1に記載の分子構造最適化システム。
    Figure 0004729889
    (上記の式中,Bkは,上記式(III)〜(V)のいずれかを表す。λproj k,r 2は上記式(X)を満たすように求められる固有値を表す。Nは自由度の数を表す。)
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