以下、本発明を具体化したプラズマジェット点火プラグの第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、プラズマジェット点火プラグ100を一例とし、その構造について、図1〜図3を参照して説明する。図1は、プラズマジェット点火プラグ100の縦断面図である。図2は、プラズマジェット点火プラグ100の先端部分を拡大した断面図である。図3は、プラズマジェット点火プラグ100を軸線O方向先端側から見た図である。なお、図1において、プラズマジェット点火プラグ100の軸線O方向を図面における上下方向とし、下側をプラズマジェット点火プラグ100の先端側、上側を後端側として説明する。
図1に示すように、プラズマジェット点火プラグ100は、概略、自身の軸孔12内の先端側に中心電極20を保持し、後端側に端子金具40を保持した絶縁碍子10を有し、さらにその絶縁碍子10の径方向周囲を主体金具50で取り囲んで保持した構造を有する。
絶縁碍子10は、周知のようにアルミナ等を焼成して形成された絶縁部材であり、軸線O方向に軸孔12を有する筒状をなす。軸線O方向の略中央には外径の最も大きな鍔部19が形成されており、これより後端側には後端側胴部18が形成されている。また、鍔部19より先端側には後端側胴部18より外径の小さな先端側胴部17と、その先端側胴部17よりも先端側で先端側胴部17よりも更に外径の小さな脚長部13とが形成されている。この脚長部13と先端側胴部17との間は段部11として段状に形成されている。
軸孔12のうち脚長部13の内周にあたる部分は、先端側胴部17、鍔部19および後端側胴部18の内周にあたる部分よりも縮径された電極収容部15として形成されている。この電極収容部15の内部には中心電極20が保持される。また、軸孔12は、電極収容部15の先端側において内周が更に縮径されており、先端小径部61として形成されている。そして、先端小径部61の内周は絶縁碍子10の先端面16に開口している(以下、絶縁碍子10の先端面16に開口する軸孔12の先端を「開口端」14とよぶ。)。
次に、中心電極20は、Niまたはインコネル(商標名)600または601等のNiを主成分とする合金から形成された母材21の内部に、その母材21よりも熱伝導性に優れる銅または銅を主成分とする合金からなる芯材22を埋設した構造を有する棒状の電極である。中心電極20の先端には、貴金属やWを主成分とする合金からなる円盤状の電極チップ25が、中心電極20と一体となるように溶接されている。なお、第1の実施の形態では、中心電極20と一体になった電極チップ25も含め「中心電極」と称する。
中心電極20の後端側は鍔状に拡径され、この鍔状の部分が軸孔12内において電極収容部15の起点となる段状の部位に当接されており、電極収容部15内で中心電極20が位置決めされている。また、図2に示すように、中心電極20の先端面26(より具体的には中心電極20の先端部にて中心電極20と一体に接合された電極チップ25の先端面26)が、互いに径の異なる電極収容部15と先端小径部61との間の段部よりも軸線O方向の後端側に配置された状態となっている。この構成により、軸孔12の先端小径部61の内周面および電極収容部15の一部の内周面を側面とし、中心電極20の先端面26を底面とすると共に、軸孔12の先端を開口端14とする凹部状の小部屋(以下、「キャビティ」60とよぶ。)が形成される。
次に、図1に示すように、中心電極20は、軸孔12の内部に設けられた金属とガラスの混合物からなる導電性のシール体4を経由して、後端側の端子金具40に電気的に接続されている。このシール体4により、中心電極20および端子金具40は、軸孔12内で固定されると共に導通される。そして端子金具40にはプラグキャップ(図示外)を介して高圧ケーブル(図示外)が接続され、中心電極20と接地電極30との間で火花放電を行うための高電圧が印加されるようになっている。
次に、主体金具50は、図示外の内燃機関のエンジンヘッドにプラズマジェット点火プラグ100を固定するための円筒状の金具であり、絶縁碍子10を取り囲むようにして保持している。主体金具50は鉄系の材料より形成され、図示外のプラズマジェット点火プラグレンチが嵌合する工具係合部51と、エンジンヘッドの取付孔(図示外)に螺合するねじ山が形成された取付ねじ部52とを備えている。
また、主体金具50の工具係合部51と取付ねじ部52との間には鍔状のシール部54が形成されている。そして、取付ねじ部52とシール部54との間のねじ首49には、板体を折り曲げて形成した環状のガスケット5が嵌挿されている。ガスケット5は、プラズマジェット点火プラグ100をエンジンヘッドの取付孔(図示外)に取り付けた際に、シール部54の座面55と取付孔の開口周縁との間で押し潰されて変形し、両者間を封止することで、取付孔を介したエンジン内の気密漏れを防止するものである。
主体金具50の工具係合部51より後端側には薄肉の加締部53が設けられ、シール部54と工具係合部51との間には、加締部53と同様に薄肉の座屈部58が設けられている。そして、工具係合部51から加締部53にかけての主体金具50と絶縁碍子10の後端側胴部18との間には、円環状のリング部材6,7が介在されており、更に両リング部材6,7の間にタルク(滑石)9の粉末が充填されている。加締部53を加締めることにより、リング部材6,7およびタルク9を介して絶縁碍子10が主体金具50内で先端側に向け押圧される。これにより、主体金具50の内周で取付ねじ部52の位置に形成された段部56に、環状の板パッキン80を介し、絶縁碍子10の段部11が支持されて、主体金具50と絶縁碍子10とが一体となる。このとき、主体金具50と絶縁碍子10との間の気密性は板パッキン80によって保持され、燃焼ガスの流出が防止される。また、座屈部58は、加締めの際に、圧縮力の付加に伴い外向きに撓み変形するように構成されており、タルク9の軸線O方向への圧縮長を長くして主体金具50内の気密性を高めている。
次に、主体金具50の先端59には接地電極30が設けられている。図2,図3に示すように、接地電極30は棒状の部材からなり、基端36が主体金具50の先端59に接合され、先端31が、中心電極との間で火花放電間隙を形成している。より具体的に、接地電極30は、主体金具50の先端59に接合された自身の基端36から径P方向(図中1点鎖線P−Pで示す。)に沿って内側へ棒状に延び、自身の先端31を、軸線O方向において絶縁碍子10の先端面16に当接させた状態で、キャビティ60の開口端14の近傍に配置させている。すなわち、第1の実施の形態では、主体金具50とは別体に形成された接地電極30が、軸線Oと直交する径P方向において、主体金具50からキャビティ60の開口端14に向けて突出する形態をなしている。火花放電間隙は、この接地電極30の先端31と、中心電極20との間で、キャビティ60を介して形成されている。接地電極30は耐火花消耗性に優れた金属から形成されており、一例としてインコネル(商標名)600または601等のNi系合金が用いられる。
このような構造を有する第1の実施の形態のプラズマジェット点火プラグ100では、中心電極20と接地電極30との間に高電圧が印加されると、キャビティ60を介して両者間で火花放電が行われる。そして更に両者間にエネルギーが供給されると放電状態が遷移し、キャビティ60内でプラズマが形成される。このプラズマがキャビティ60内で膨張し、圧力が高まると、開口端14より火柱のような形状、いわゆるフレーム状となって噴出される。プラズマは高いエネルギーを持ち、混合気に対する着火性が高いため、より希薄な混合気に対しても確実に点火することができる。このようなプラズマジェット点火プラグ100の特性を十分に生かし、プラズマと、接地電極30(特に火花放電間隙を形成する先端31)との接触に起因する着火性の低下を防止するため、第1の実施の形態では、接地電極30の大きさや形成位置に規定を設けている。
具体的には図2,図3に示すように、軸線Oと直交する径P方向において、キャビティ60の開口端14の位置の径方向外側(軸線Oから遠ざかる側)0.2mmの位置から、内側(軸線Oに近づく側)に、接地電極30の先端31(より詳細には先端31において最も径方向内側の位置)があることを規定している。換言すると、図3に示すように、開口端14の直径Aよりも0.4mm大きな直径(半径で0.2mm)を有する仮想円F内(仮想円F上も含む)に、接地電極30の先端31があればよい。なお、仮想円Fは、図3において、その一例を点線で示している。
前述したようにプラズマジェット点火プラグ100では、接地電極30が主体金具50からキャビティ60の開口端14に向けて突出する形態をなすため、接地電極30の先端31は、開口端14の周囲全周に配置されず、一部に配置される形態となる。このため、開口端14の同一箇所が火花放電の経路となりやすい。さらに、図2に示すように、接地電極30の先端31が絶縁碍子10の先端面16に当接している。すなわち先端31と先端面16との間の間隙Hが0mmである。火花放電は、大気中で放電する気中放電よりも、絶縁碍子等の表面に沿って放電する沿面放電の方が、比較的低い電圧で生じ易く、火花放電間隙が広いほど、両者の絶縁破壊時における絶縁抵抗値の差が大きくなる。このため、接地電極30が絶縁碍子10に当接する場合、接地電極30と中心電極20との間で行われる火花放電は、接地電極30の先端31から絶縁碍子10の先端面16に沿って沿面放電する。さらに開口端14を通り、キャビティ60の(先端小径部61の)内周面に沿った沿面放電を経て中心電極20へと向かう経路を辿り易い。そして、絶縁碍子10の先端面16とキャビティ60の内周面とが略直交するため、火花放電は、開口端14を跨いで略直角に屈折することとなる。これにより、繰り返される火花放電によって絶縁碍子10の表面、特に稜角を構成する開口端14が削られる、いわゆるチャンネリングが発生し易くなる。チャンネリングの発生を抑制するには、接地電極30の先端31を、キャビティ60の開口端14の径方向外側0.2mmの位置から、内側に位置させ、先端31と開口端14との間では沿面放電のみならず、気中放電も行われ易くなるようにするとよい。このように、火花放電の経路のうち、接地電極30の先端31とキャビティ60の内周面とを結ぶ部分の距離を短くすれば、開口端14におけるチャンネリングの発生を抑え、先端31からキャビティ60の内周面へと火花放電の経路を接続することができる。このことは、後述する実施例1の結果により確認された。
なお、図4に示す、プラズマジェット点火プラグ200のように、接地電極201の先端203を絶縁碍子10の先端面16から軸線O方向に離間させた形態(すなわち間隙H>0[mm])としてもよい。この場合には、径P方向において、キャビティ60の開口端14の径方向外側0.5mmの位置から、内側に、接地電極201の先端203が位置すればよいとしている。換言すると、開口端14の直径Aよりも1.0mm大きな直径(半径で0.5mm)を有する仮想円(図示しない)内に、先端203があればよい。接地電極201が絶縁碍子10に接触しない場合、接地電極201と中心電極20との間で行われる火花放電は、接地電極201の先端203からキャビティ60の開口端14へ向けて気中放電し、開口端14を通り、キャビティ60の内周面に沿った沿面放電を経て中心電極20へと向かう経路を辿る。従って、絶縁碍子10の先端面16における沿面放電は生じない。接地電極201の先端203と中心電極20との間における火花放電は、キャビティ60の内周面を沿う沿面放電の部分と先端203とを結ぶ気中放電の部分とが開口端14を跨いで屈折する際に、その経路が鈍角となりやすい。このため、繰り返される火花放電によって絶縁碍子10の表面、特に稜角を構成する開口端14が削られる、いわゆるチャンネリングの発生を抑制することができる。なお、接地電極201の先端203が、キャビティ60の開口端14の径方向外側0.5mmの位置よりもさらに外側にある場合、開口端14の位置における気中放電と沿面放電との屈折角度は、より小さくなる。つまり、屈折角度が直角に近づくため、チャンネリングが開口端14の局所において発生しやすくなる虞が生ずる。このことは、後述する実施例2の結果よりわかった。
このように、接地電極30を設ける上で、先端31を絶縁碍子10の先端面16に対し位置決めするにあたり、開口端14の径方向外側0.2mmの位置から、内側に、先端31が位置すればよいとしている(図2,図3参照)。また、接地電極201の先端203を先端面16から離して配置させるのであれば(間隙H>0[mm]の場合)、開口端14の径方向外側0.5mmの位置から、内側に、先端203が位置すればよい(図4参照)。このことは、図5に示す、プラズマジェット点火プラグ250の接地電極251のように、先端253が、キャビティ60の開口端14よりも径方向内側に位置する構成も許容されることを意味する。もちろん、図6に示す、プラズマジェット点火プラグ300の接地電極301のように、先端303が、キャビティ60の開口端14に位置してもよい。チャンネリングの発生を抑制する上では、図3に示す接地電極30の先端31をキャビティ60の開口端14に近づけるほど、火花放電の経路が開口端14を跨ぎ屈折する角度をより大きくできるので、開口端14が火花放電により削られ難くでき、好ましいと言える。
もっとも、図3に示す、接地電極30の先端31の配置位置が、先端303(図6参照)のようにキャビティ60に近づき、さらに、先端253(図5参照)のように重なるほど、プラズマが、キャビティ60から噴出する際に接地電極30と接触し易くなる。プラズマは、開口端14から噴出する際には径方向に広がりつつ軸線O方向先端側へ延びるが、このときプラズマが接地電極30と接触すると、接触した部位において径方向への広がりが妨げられる。するとプラズマは、広がりが妨げられた部分に欠けを有する断面形状となって軸線O方向先端側へ延びることとなり、前方へ押し出されるエネルギーが低下し、混合気に対する着火性の低下を招く虞がある。また、接地電極30との接触によってプラズマ自身のエネルギーが奪われ易くなる。こうしたことから、プラズマジェット点火プラグ100を軸線O方向先端側から見たときに、接地電極30が、絶縁碍子10の先端面16にて占める大きさについても規定を設けている。
図3に示すように、図3の紙面を軸線Oと直交する仮想平面として想定し、その仮想平面において、更に、キャビティ60の開口端14と同心で、開口端14の直径Aの2倍の直径2Aを有する仮想境界線Q(図中点線で示す。)を想定する。この仮想平面に接地電極30を投影したときに、第1の実施の形態では、接地電極30の部位のうち仮想境界線Q内に配置される部位S(図3中、左下がり斜線部で示す。)の投影面積が、仮想境界線Q内の面積の30%以下となることを規定している。
上記のように、接地電極30の先端31を開口端14に近づけてチャンネリングを抑制しつつも、接地電極30によるプラズマの径方向への広がりの妨げを生じさせ難くするには、開口端14付近における接地電極30の大きさ、特に接地電極30の先端31側の大きさを小さくすればよい。後述する実施例3の結果によれば、仮想平面に投影した接地電極30の部位のうち仮想境界線Q内に配置される部位Sの投影面積を仮想境界線Q内の面積の30%以下とすれば、着火性を十分に確保できることがわかった。
さらに、図5に示すように、接地電極251の先端253がキャビティ60の開口端14よりも径方向内側にある場合において、上記同様に、軸線Oと直交する仮想平面(図5紙面)に接地電極251を投影する。このとき、キャビティ60の開口端14の輪郭線R内に配置される部位T(図5中、右下がり斜線部で示す。)の投影面積が、輪郭線R内の面積の15%以下となることを規定している。
接地電極251の先端253がキャビティ60の開口端14よりも径方向内側に位置する場合、接地電極251の一部がキャビティ60から噴出されるプラズマの噴出方向正面に位置することとなり、プラズマの噴出が部分的に妨げられ、前方へ押し出されるエネルギーが低下する。後述する実施例4の結果によれば、仮想平面に投影した接地電極251の部位のうち輪郭線R内に配置される部位Tの投影面積を開口端14の輪郭線R内の面積の15%以下とすれば、着火性を十分に確保できることがわかった。なお、この場合においても、仮想境界線Q内に配置される接地電極251の投影面積(部位S(図5中、左下がり斜線部で示す。)と部位Tの合計の投影面積)が、上記同様に、仮想境界線Q内の面積の30%以下を満たすことが好ましい。
次に、図3に示すように、軸線Oと直交する仮想平面(図3紙面)において、接地電極30の基端36側で、主体金具50の先端面57に、公知の抵抗溶接またはレーザ溶接により接合される溶接部位をW(図3中、右下がり斜線部で示す。)とする。また、接地電極30の部位のうち、その溶接部位Wから先端31へ向けて延びる部位を、延伸部位Dとする。そして、この仮想平面上で軸線Oと直交する径P方向において、溶接部位Wの長さをw、延伸部位Dの長さをdとする。なお、溶接部位Wの長さwは、接地電極30と主体金具50との溶融部分において合金化の影響を受けていない部分の長さとし、延伸部位Dの長さdは、接地電極30の径P方向の長さから、長さwを差し引いたものとして定義する。このとき、第1の実施の形態では、d/(d+w)≦0.8を満たすことを規定している。
延伸部位Dの長さdが長くなれば溶接部位Wの長さwは短くなり、溶接部位Wの面積は小さくなる。溶接部位Wの面積が小さくなれば、接地電極30と主体金具50との接合部位において、十分な接合強度を得られなくなる虞がある。後述する実施例5の結果によれば、延伸部位Dの長さdを、接地電極30全体の長さ(d+w)の80%以下とすれば、接地電極30と主体金具50との接合部位において、十分な接合強度を得られることがわかった。
なお、本発明の第1の実施の形態のプラズマジェット点火プラグについて、各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、主体金具50からの接地電極30の突出方向は、必ずしも径P方向と一致して軸線Oへ向かう方向である必要はなく、換言すると、軸線Oを中心とするその直交方向への放射線に沿う必要はない。具体的に、図7に示す、プラズマジェット点火プラグ350のように、軸線Oと直交する仮想平面(図7紙面)において、接地電極351の延伸方向が、接地電極351の基端352における主体金具50の先端面57との接合位置からキャビティ60の開口端14側へ向け、径方向外側から内側へ向かう方向であれば足りる。接地電極351の突出方向がキャビティ60の開口端14の中央(つまり軸線Oの位置)からずれ、接地電極351の先端353が、キャビティ60を介し、接地電極351の突出方向の前側において中心電極20に面する形態ではなくともよい。
また、接地電極の突出方向は、径P方向に対して軸線O方向にずらしてもよい。例えば、図8に示すプラズマジェット点火プラグ400は、主体金具405の先端面406がテーパ状をなすものであるが、この先端面406に棒状の接地電極401の基端402を接合した場合、主体金具405から接地電極401が突出する方向は、径P方向に対し斜めとなる。このような形態のプラズマジェット点火プラグ400であっても、接地電極401の先端403が、上記の各規定を満たす位置に配置されれば十分に、着火性を確保しつつチャンネリングの発生を抑制することが可能である。
また、図9に示す、プラズマジェット点火プラグ450のように、貴金属あるいは貴金属を主成分とする合金から形成した貴金属チップ459を接地電極451の先端453に接合してもよい。なお、この場合、接地電極451の本体と一体となった貴金属チップ459を含めて接地電極451と称してもよい。このように、耐火花消耗性の高い貴金属チップ459であれば、接地電極451本体の幅や外径よりも小さく形成しても十分な耐久性を得られる。ゆえに、貴金属チップ459を含めた接地電極451の先端453がキャビティ60の開口端14付近にて占める大きさを減少できるので、キャビティ60から噴出するプラズマの径方向への広がりが妨げられにくくなり、プラズマジェット点火プラグ450の着火性を確保できる。また、プラズマとの接触範囲が小さくなれば、プラズマの持つエネルギーが接地電極451との接触によって奪われることが生じ難くなる。よって、径P方向における接地電極451の先端453を、キャビティ60の開口端14の位置に、より近づけた構成とすることができ、チャンネリングの発生を効果的に抑制することができる。
そして貴金属を用いることで接地電極451の先端453側を小さく形成できれば、接地電極451を複数設けても、軸線Oと直交する仮想平面上で仮想境界線Q内に配置される接地電極451の部位S(図10中、左下がり斜線部で示す。)の投影面積を、仮想境界線Q内の面積の30%以下となるように調整しやすい。具体的な例として、図10に示す、プラズマジェット点火プラグ500や、図11に示す、プラズマジェット点火プラグ550のように、接地電極451を2つまたは3つ、あるいはそれ以上設けた構成を実現しやすい。このように、接地電極451をキャビティ60の開口端14の周囲に複数設ければ、火花放電間隙の形成位置を複数箇所に分散させることができ、火花放電の経路を一箇所に集中させた場合と比べ、チャンネリングによる開口端14の消耗を抑制することができ、好適である。もちろん、先端に貴金属チップを接合していない接地電極を複数設けてもよいことは言うまでもない。
また、接地電極の形状は、第1の実施の形態のような棒状をなすことが望ましいが、必ずしも棒状に限定するものではなく、先端がキャビティの開口端の近くに位置するように、主体金具から突出する形態を満たすことのできる形状であればよい。例えば図12に示す、プラズマジェット点火プラグ600のように、接地電極601を、例えば板状としてもよい。つまり、接地電極601は、主体金具50からキャビティ60の開口端14側へ向けて(径方向外側から内側へ向けて)突出する形態をなし、先端603が、開口端14の近傍に位置するものであれば足りる。さらに、上記した各規定が満たされるものであれば、なおよい。接地電極601がこのように板状をなせば、基端602側にて主体金具50の先端面57との溶接部位Wの面積を広くとることができ、両者の接合強度を高めることができる。さらに、この接地電極601のように、先端603に近い側ほどその幅(突出方向と直交する方向の長さ)を小さくすれば、仮想境界線Q内における接地電極601の投影面積を小さくすることができ、着火性を確保できる。
また、図13に示す、プラズマジェット点火プラグ650のように、接地電極651の先端653に貴金属チップ659接合するにあたり、その接合位置を、接地電極651の先端653でキャビティ60側(絶縁碍子10の先端面16と向き合う側)に接合するとよい。このようにすれば、接地電極651と中心電極20との間における火花放電が、確実に、貴金属チップ659を介して行われるようできる。また、接地電極651の先端653に接合した貴金属チップ659の脱落を防止するには、接地電極651の先端653を大きく形成し、貴金属チップ659との接合部位を広く確保できるようにするとよい。しかし、上記のように、キャビティ60から噴出するプラズマの径方向への広がりを妨げにくくするには、接地電極651の先端653側を小さく形成することが好ましい。ゆえに、火花放電間隙に面することとなる貴金属チップ659の大きさは、小さい方が望ましい。そこで図13のように、貴金属チップ659を、接地電極651の先端653と絶縁碍子10の先端面16との間に挟むように配置させれば、貴金属チップ659を小さく形成しても十分に接地電極651との間での接合状態を維持し、脱落を防止することができる。よって、接地電極651の先端653側も、小さく形成することができる。
また、図14,図15に示す、プラズマジェット点火プラグ700のように、主体金具705の先端面707が内周側を向くように先端部706を内向きに折り曲げ、この先端部706に接地電極701を接合してもよい。プラズマジェット点火プラグ700をこのような形態のものとすれば、主体金具705から開口端14側へ向けて突出する接地電極701の突出長さを短くすることができる。つまり、接地電極701の自重を減らすことができるので、接地電極701と主体金具705との接合部位にかかる接地電極701の自重による負荷の影響を低減できる。もっとも、図15に示すように、主体金具705の先端部706が仮想境界線Q内には含まれないように、先端部706を折り曲げた際の先端面707の位置を調整することが、着火性を確保する上で望ましい。
あるいは、図16,図17に示す、プラズマジェット点火プラグ750のように、主体金具755の先端面756に、絶縁碍子10の先端面16の一部を覆うような補助板757を接合し、この補助板757に、接地電極751を接合してもよい。このようにしても、上記のプラズマジェット点火プラグ700(図15参照)と同様に、主体金具755から開口端14側へ向けて突出する接地電極751の突出長さを短くして、補助板757との接合部位にかかる接地電極751の自重による負荷の影響を低減できる。また、図17に示すように、補助板757が仮想境界線Q内には含まれないように調整しつつ、主体金具755の先端面756との接合部位を広く取れる形態とすることが、着火性を確保する上で望ましい。
また、図18,図19に示す、プラズマジェット点火プラグ800,850のように、第1の実施の形態と同様の接地電極801,851とは別に、補助電極804,854を設けてもよい。プラズマジェット点火プラグ800では1本の補助電極804を設け、プラズマジェット点火プラグ850では2本の補助電極854を設けている。補助電極804,854は、それぞれ、主体金具50からキャビティ60の開口端14側への突出長さが接地電極801,851より短くし、仮想境界線Q内には配置されないようにしたものである。これら補助電極804,854を設けることによって、接地電極801,851の周囲の電界強度が高まり、中心電極20との間での火花放電を、より低い放電電圧で行えるようになる。すると、火花放電の経路上で、火花放電が開口端14を通る際にその開口端14を削るエネルギーが少なくなるため、チャンネリングの発生を抑制することが可能となる。
ところで、上記した、接地電極451の先端453に貴金属または貴金属を主成分とする合金を用いたプラズマジェット点火プラグ450(図9参照)を作製するには、以下に説明する製造過程に従うことが望ましい。以下、図20を参照して、接地電極451を主体金具50に接合する過程を中心に、プラズマジェット点火プラグ450の製造過程について説明する。なお、製造過程の公知の部分については、説明の一部を簡略化、あるいは省略するものとする。図20は、プラズマジェット点火プラグ450の製造過程を示す図である。
プラズマジェット点火プラグ450の製造過程では、耐腐食性の高いNi系合金(例えばインコネル601)等からなる断面矩形の線材を所望の長さに切断し、図20に示す、直方体形状をなす接地電極451が作製される。このとき、接地電極451には、別過程で作製される主体金具50の先端面57に接合する接合代(しろ)としての溶接部位Wが設定される。この溶接部位Wは、プラズマジェット点火プラグ450の完成時の径P方向(図9参照)と一致させる方向において、その溶接部位Wの長さwが所定の長さとなるように設定される。すなわち、溶接部位Wの長さwと、接地電極451が完成した状態(後述する貴金属チップ459が接合された状態)で、その溶接部位Wから先端453へ向けて延びる部位である延伸部位Dの長さdとの関係が、前述したように、d/(d+w)≦0.8を満たすように、溶接部位Wを含む接地電極451が作製される。なお、溶接部位Wをその他の部位に対して段状となるように形成して、後述する接地電極451の主体金具455への接合時に、接地電極451の先端453の位置決めと溶接部位Wの長さwの確保を容易に行えるようにしてもよい。もちろん、溶接部位Wは、主体金具50の先端面57にあわせて適宜その形状を調整すればよい。予めこのように溶接部位Wの大きさを設定することで、生産ロットによるバラツキを抑え、確実な溶融部(接地電極と主体金具との接合の際に形成される両者の構成成分が溶け合い混ざり合った部分)の形成をなすことができる。
さらに別工程にて、断面を接地電極451よりも小さく形成した直方体形状の貴金属チップ459が、貴金属合金から作製される。そして貴金属チップ459が、接地電極451の延伸方向で溶接部位W側とは反対側の先端453にレーザ溶接で接合されて、接地電極451と貴金属チップ459とが一体となる(接地電極形成工程)。
なお、上記接地電極451の形成時に、あらかじめ、図9の示すように、接地電極451の先端453に貴金属チップ459との接合面積を確保しつつ、接地電極451を溶接部位W側から貴金属チップ459側へ向かうにつれ細幅となるように加工すれば、プラズマジェット点火プラグ450の完成後に、貴金属チップ459を含めた接地電極451の先端453が、軸線Oと直交する仮想平面上において占める面積を減らすことができ、好ましい。
一方、図20に示すように、鉄系の材料より筒状に形成された筒状体(図示外)に対して切削加工を施し、鍔部や工具係合部等の形状(図示外)が形成され、さらに取付ねじ部52にねじ山が形成されて、主体金具50が作製される。この主体金具50の先端面57に、接地電極形成工程で形成された接地電極451の溶接部位Wが向かい合わせに配置され、接地電極451が主体金具50に、抵抗溶接により接合される(接地電極接合工程)。
そして、別工程において中心電極20および端子金具40(図1参照)が組み付けられた状態の絶縁碍子10が作製され、この主体金具50の筒孔内に挿通されて加締め保持されて、図9に示す、プラズマジェット点火プラグ450が完成する。なお、図1に示す、プラズマジェット点火プラグ100のように、接地電極30自身を、全体で、同一部材から形成した場合には、上記した接地電極形成工程を省けばよい。
次に、本発明の第2の実施の形態について、図21〜図23を参照して説明する。図21に示す、第2の実施の形態のプラズマジェット点火プラグ900は、接地電極901を主体金具905の一部として一体に形成した部分が、第1の実施の形態のプラズマジェット点火プラグ100(図1参照)と異なり、その他の部分の構成は同一である。したがって、以下では、プラズマジェット点火プラグ100と異なる部分について説明し、同一の部分については同一の符号を付し、説明を省略または簡略化して行うものとする。
図21〜図23に示すように、プラズマジェット点火プラグ900は、接地電極901が、主体金具905の一部位として、主体金具905と一体に形成されたものである。具体的に、接地電極901は、主体金具905の先端面907の一部をそのまま軸線O方向先端側に突出させた形態のものとして形成されている。そして接地電極901の先端902と中心電極20との間で火花放電間隙が形成されるように、接地電極901は、基端903を軸に先端902側が径方向内側へ折り曲げられ、先端902がキャビティ60の開口端14の近くに位置している。これにより、接地電極901は、径方向外側から内側へ向けて突出する形態をなしている。なお、プラズマジェット点火プラグ900のその他の部位(図21参照)は、プラズマジェット点火プラグ100(図1参照)と同様の構成となっている。
このような形態のプラズマジェット点火プラグ900においても、接地電極901の先端902が、キャビティ60の開口端14の径方向外側0.5mm(絶縁碍子10の先端面16に接地電極901を接触させた場合は0.2mm)の位置から、内側に位置するとよいことは、第1の実施の形態と同様である。また、図23に示すように、軸線Oと直交する仮想平面に投影した接地電極901の部位のうち、仮想境界線Q内に配置される部位S(図23中、左下がり斜線部で示す。)の投影面積が、仮想境界線Q内の面積の30%以下となるとよいことや、開口端14の輪郭線R内に配置される部位の投影面積が、輪郭線R内の面積の15%以下となるとよいことについても、第1の実施の形態と同様である。
なお、本発明の第2の実施の形態のプラズマジェット点火プラグについても、各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、図24に示す、プラズマジェット点火プラグ950のように、主体金具955の先端部956を延長し、径方向内側に折り曲げ、その先端面907に、前述したプラズマジェット点火プラグ900(図22参照)と同様、径方向内側に向けて突出する接地電極951を設けてもよい。すなわち、上記したプラズマジェット点火プラグ700と同様の形態であり、接地電極951の突出長さを短くすることができ、接地電極951の自重にともなう負荷の影響を低減できる。
また、図25に示す、プラズマジェット点火プラグ1000のように、前述したプラズマジェット点火プラグ650(図13参照)と同様の貴金属チップ1009を、主体金具1005と一体に形成した接地電極1001の先端1002に接合してもよい。このようにすれば、キャビティ60から噴出するプラズマの径方向への広がりが妨げられにくくなり、プラズマジェット点火プラグ1000の着火性を確保できる。さらに、貴金属チップ1009の接合位置を、接地電極1001の先端1002でキャビティ60側(絶縁碍子10の先端面16と向き合う側)とすれば、確実に、火花放電が貴金属チップ1009を介して行われ、また、貴金属チップ1009の脱落も防止でき、好ましい。
また、図26に示す、プラズマジェット点火プラグ1050のように、主体金具1055と一体に形成する接地電極1051を、前述したプラズマジェット点火プラグ500(図10参照)やプラズマジェット点火プラグ550(図11参照)と同様に、複数(ここでは3つ)設けてもよい。このようにすれば火花放電間隙の形成位置を複数箇所に分散させ、チャンネリングによる開口端14の消耗を抑制することができる。もちろん、接地電極1051の先端1052に貴金属チップを接合してもよいことは言うまでもない。また、軸線Oと直交する仮想平面上で、仮想境界線Q内に投影した各接地電極1051の投影面積の合計が、仮想境界線Q内の面積の30%以下(開口端14の輪郭線R内であればその面積の15%以下)となるとよいことも、第1の実施の形態と同様である。
このように、プラズマジェット点火プラグの接地電極の先端を、キャビティの開口端の近くに配置し、その接地電極が、絶縁碍子の先端側にて占める大きさを規定することで得られる効果について確認するため、評価試験を行った。
まず、径方向における接地電極の先端とキャビティの開口端の位置関係と、開口端におけるチャンネリングの発生の有無との関係について調べるため評価試験を行った。この評価試験では、インコネル601からなる幅が0.5mmの棒材を所定の長さに切断して接地電極を作製した。そして、図3紙面のような軸線Oと直交する仮想平面に接地電極を投影したときに、接地電極の先端とキャビティの開口端との間の径P方向の距離(以下では便宜上、「距離G」とする。)が−0.1〜0.5[mm]の範囲で適宜変更されるように、接地電極を主体金具に接合して作製した6種類の中間体を用い、プラズマジェット点火プラグのサンプルを各種類につき3本ずつ用意した。なお、この接合の際に、いずれのサンプルも、軸線O方向における接地電極の先端を絶縁碍子の先端面に接触させて(すなわち間隙H(図2参照)を0mmとして)保持した。また、各サンプルの組み立てに用いた絶縁碍子は、キャビティの開口端の直径A(図3参照)がφ1.0mmのものを使用した。また、距離Gの正負については、開口端の位置を基準(±0)とし、径P方向外側(軸線Oから遠ざかる側)を正、径P方向内側(軸線Oに近づく側)を負とした。つまり、距離Gが負となることは、接地電極の先端が、開口端の位置から、内側に位置することを意味する。
用意した各サンプルそれぞれに対し、窒素を0.4MPaの圧力で充填した加圧チャンバー内に入れ、50mJのエネルギー量で、周波数60Hzの放電周波数にて20時間の連続放電を行った後、キャビティの開口端付近の様子を観察した。そして各サンプルの種類ごとに、3本のうち1本でも0.1mmより深い放電溝が形成されたものがあれば、チャンネリングが発生したと評価し、3本とも放電溝の深さが0.1mm以下であれば、チャンネリングが発生しなかったと評価した。この試験の結果を表1に示す。
表1に示すように、間隙Hを0mm、すなわち接地電極の先端を絶縁碍子の先端面に当接させた場合、距離Gが0.2mm以下だったサンプルではチャンネリングが発生しなかったが、距離Gを0.2mmより大きくすると、チャンネリングが生ずることが確認できた。
さらに、接地電極の先端を絶縁碍子の先端面から離し、間隙Hを0.1mmとしたプラズマジェット点火プラグのサンプルを6種類、距離Gを−0.1〜1.0[mm]の範囲で適宜変更して作製した。なお、各サンプルのその他の部位の大きさについては、実施例1と同一である。そして各サンプルに対し、実施例1と同一の評価試験を行い、チャンネリングの発生の有無について評価を行った結果を表2に示す。次いで、軸線O方向における接地電極の先端と絶縁碍子の先端面との間隙Hを0.5mmとし、その他の部分については上記各サンプル同様とした6種のサンプルについて行った同一の評価試験の結果を表3に示す。
表2に示すように、間隙Hが0.1mmの場合、距離Gが0.5mm以下だったサンプルではチャンネリングが発生しなかったが、距離Gを0.5mmより大きくすると、チャンネリングが生ずることが確認できた。また、表3に示すように、間隙Hを0.5mmとしても同様であり、距離Gが0.5mm以下だったサンプルではチャンネリングが発生しなかったが、距離Gを0.5mmより大きくすると、チャンネリングが生ずることが確認できた。この評価試験の結果より、軸線O方向における接地電極の先端と絶縁碍子の先端面との間隙Hの大きさに関わらず、径P方向における接地電極の先端とキャビティの開口端との間の距離Gが0.5mmより大きくなると、チャンネリングの発生を抑制できなくなることが分かった。従って、実施例1および実施例2の結果から、接地電極の先端を絶縁碍子の先端面に対し離間させて配置する場合(H>0[mm])、距離Gは0.5mm以下、また、当接させて配置する場合には(H=0[mm])、距離Gを0.2mm以下とすれば、チャンネリングの発生を抑制できることがわかった。
次に、軸線Oと直交する仮想平面に投影した接地電極30の部位のうち、仮想境界線Q内に配置される部位S(図3参照)の投影面積が、仮想境界線Q内の面積に占める割合が及ぼす影響について確認するため評価試験を行った。この評価試験では、軸線Oと直交する仮想平面(図3紙面)において見た、キャビティの開口端の直径Aと、接地電極の幅と、接地電極の先端と開口端との間の距離Gとを適宜設定したプラズマジェット点火プラグのサンプルを、7種類作製した。その設定により、開口端の直径Aの2倍の直径2Aを持つ仮想境界線Q内に配置される接地電極の部位S(図3参照)の投影面積は、仮想境界線Q内の面積の14.6%〜37.4%の範囲で適宜変更された値となった。
そして各サンプルをそれぞれ加圧チャンバーに取り付け、着火性の確認を行った。具体的には、サンプルを取り付けた後、チャンバー内を、空気とC3H8ガスとの混合比(空燃比)を22とした混合気で充填し、気圧を0.05MPaとする。そしてサンプルに50mJのエネルギー量を供給可能な電源に接続し、高電圧を印加して点火を試みる。圧力センサでチャンバー内気圧を測定し、チャンバー内の圧力変化を確認することにより、混合気が着火したかどうかの確認を行う。これら一連の手順を100回試行し、着火確率として算出した。この試験の結果を図27のグラフに示す。
図27に示すように、仮想境界線Q内に配置される接地電極の部位Sの投影面積が仮想境界線Q内の面積の14.6%の場合には100%の着火確率が得られた。また、部位Sの投影面積が20.9%、24.1%、28.5%、30.0%と上昇しても、それぞれの着火確率は95%、97%、94%、90%であり、90%以上の高い着火確率を維持できた。しかし、部位Sの投影面積が31.2%に上昇すると着火確率は21%と大幅に低下し、部位Sの投影面積が37.4%ではさらに低下し、着火確率が5%となった。このグラフによれば、仮想境界線Q内に配置される接地電極の部位Sの投影面積が仮想境界線Q内の面積の30%以下であれば、90%以上の高い着火確率を得られることがわかった。
さらに、実施例3と同様に、軸線Oと直交する仮想平面に投影した接地電極251の部位のうち、輪郭線R内に配置される部位T(図5参照)の投影面積が、輪郭線R内の面積に占める割合が及ぼす影響について確認するため評価試験を行った。この評価試験でも、実施例3と同様、軸線Oと直交する仮想平面(図5紙面)において見た、キャビティの開口端の直径Aと、接地電極の幅と、接地電極の先端とキャビティの開口端との間の距離Gとを適宜設定したプラズマジェット点火プラグのサンプルを7種類作製した。その設定により、開口端の輪郭線R内に配置される接地電極の部位Tの投影面積を、輪郭線R内の面積の5.0%〜25.2%の範囲で適宜変更させた。これらサンプルをそれぞれ加圧チャンバーに取り付けて、実施例3と同様の100回試行する着火試験を行い、着火確率を算出した。この試験の結果を図28のグラフに示す。
図28に示すように、輪郭線R内に配置される接地電極の部位Tの投影面積が輪郭線R内の面積の5.0%および5.2%であった場合には100%の着火確率が得られた。また、部位Tの投影面積が11.4%、14.2%、15.0%と上昇しても、それぞれの着火確率は94%、95%、89%であり、89%以上の高い着火確率を維持できた。しかし、部位Tの投影面積が19.6%に上昇すると着火確率は9%と大幅に低下し、部位Tの投影面積が25.2%ではさらに低下し、着火確率が5%となった。このグラフによれば、輪郭線R内に配置される接地電極の部位Tの投影面積が輪郭線R内の面積の15%以下であれば、89%以上の高い着火確率を得られることがわかった。
次に、接地電極30の溶接部位Wの径P方向の長さwと、延伸部位Dの同方向の長さdとの関係が、接地電極30と主体金具50との接合強度に与える影響について確認するため評価試験を行った。まず、呼び径がM12の主体金具を作製する上で先端部における肉厚を異ならせ、筒孔の内径をφ6.0〜φ8.0[mm]の範囲で適宜異ならせた6種類の主体金具を作製した。断面積が1.0×1.0[mm]のPt−20Irからなる線材を、後述する大きさに適宜切断して作製した接地電極を、これら主体金具の先端面にそれぞれ抵抗溶接で接合し、さらに絶縁碍子等を組み付けて、6種類のプラズマジェット点火プラグのサンプルを作製した。
なお、主体金具への接地電極の接合は、接地電極の先端の位置を主体金具の軸線Oの位置に揃え、延長方向を径P方向に沿わせつつ、基端側を主体金具の先端面に接合する形態で行った。これにより、主体金具の先端面上に配置される接地電極の部分に、両者の接合に伴う溶接部位Wが形成されることとなり、先端面より内向きに突出する部分が、延伸部位Dに相当することとなる。従って、主体金具の筒孔の半径を、延伸部位Dの径P方向の長さdとみなすことができ、さらに接地電極作製時の切断長から長さdを差し引いた長さを、溶接部位Wの長さwとみなすことができる。そこで、接地電極全体の長さ(d+w)に対する溶接部位Wの長さwの割合、w/(d+w)を0.60〜0.88の範囲で適宜変更したサンプルを用意するため、6種の主体金具それぞれに合わせた線材の切断長を設定し、接地電極を作製した。なお、溶接部位Wの長さwは、必ずしも主体金具の先端部の肉厚と一致しない。つまり、軸線Oと直交する仮想平面に主体金具の先端面と接地電極とを投影してみたときに、サンプルによって、径P方向における接地電極の基端の位置と、先端面の外周側の縁の位置とが一致するものもあれば、間隙を有するものもある。
そして各サンプルをバーナーで200℃に加熱しながら、JIS B8031に規定された耐衝撃性試験を30分間行った。その後、接地電極と主体金具との接合によって形成された溶融部(図示しない)の断面を観察し、クラックや剥離等の有無について目視確認を行った。そして、僅かでも剥離が発生したものや、クラックが溶融部の断面全体の長さの50%以上の長さをもって発生したものについては、クラック、剥離等が発生したものと判定した。また、クラックが溶融部の断面全体の長さの50%未満の長さであるものは、クラック、剥離等の発生はなかったと判定した。この評価試験の結果を表4に示す。
表4に示すように、d/(d+w)を0.80以下に設定した4つのサンプルについてはクラック、剥離等の発生はなかったが、0.80より大きい2つのサンプルは、耐衝撃性試験において接地電極の自重による負荷が加熱に伴う負荷と共に溶融部にかかり、クラックや剥離等の発生に至った。従って、d/(d+w)を0.8以下とし、接地電極の自重による負荷が溶融部にかかるのを軽減すれば、溶融部におけるクラックや剥離等の発生を抑制でき、接地電極と主体金具との接合強度を高めることができることがわかった。