JP4802422B2 - エレクトロルミネッセント素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセント(以下ELと略称する場合がある。
)層形成用材料を塗工液化して有機EL層を形成するEL素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
EL素子は、対向する電極から注入された正孔および電子が発光層内で結合し、そのエネルギーで発光層中の蛍光物質を励起し、蛍光物質に応じた色の発光を行うものであり、自発光の面状表示素子として注目されている。その中でも、有機物質を発光材料として用いた有機薄膜ELディスプレイは、印加電圧が10V弱であっても高輝度な発光が実現するなど発光効率が高く、単純な素子構造で発光が可能で、特定のパターンを発光表示させる広告その他低価格の簡易表示ディスプレイへの応用が期待されている。
【0003】
このような有機EL素子としては、複数の陽極電極ラインと複数の陰極電極ラインを交差させたマトリクス構造が一般に用いられている。この場合、基材上に第1電極層をストライプ状に形成し、発光媒体である有機EL層を挟んで第1電極ラインと直交するようにストライプ状の第2電極層が形成される。
【0004】
この第2電極層の形成に際して、有機EL層上に微細なパターンを形成する必要があることから種々の課題があった。
【0005】
例えば、フォトリソグラフィ法で第2電極層をパターニングすると、フォトレジストの溶剤や現像液などが下地の有機EL層へ侵入してしまい、素子の破壊や劣化を招いてしまうといった問題があった。
【0006】
一方、マスク蒸着法では、有機EL層を蒸着マスクで傷つけることができないことから、蒸着マスクと基材との間の密着性の問題が生じてしまう。
【0007】
このような課題を解決したのが、特開平8−315981号公報等により提案されたオーバーハング隔壁法である。この方法は、基材上に上部にオーバーハング部を有する隔壁を形成し、このような基材に対して第2電極層形成用材料を蒸着させることにより、第2電極層のパターニングを行うものである。
【0008】
しかしながら、このように隔壁を用いる方法は有機EL層を例えば蒸着法により形成する場合は問題無く形成できるが、有機EL層を塗工液化して塗布する場合には問題が生じる場合がある。すなわち、このような有機EL層形成用塗工液を隔壁が形成された基材上に塗布した際に、このオーバーハング部を有する隔壁の基部に有機EL層形成用塗工液が溜まり、固化することにより隔壁のオーバーハング部を埋めてしまい、この状態で第2電極層を蒸着したとしても、隔壁上端面に蒸着された電極層材料と、有機EL層上端面に蒸着された電極層材料とが分離することなく連なってしまい、結果として第2電極層のパターニングができないという問題が生じるのである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、EL素子の製造にあたり、有機EL層を塗工液を用いて形成した場合でも、有機EL層上に蒸着法で形成する第2電極層のパターニング不良が生じることのないEL素子の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載するように、基材表面にストライプ状に形成された第1電極層上に、上記第1電極層に対して直交するように形成され、上部にオーバーハング部を有する第2電極層パターニング用隔壁(以下、隔壁と称する場合がある。)を形成する工程と、上記隔壁間に有機EL層形成用塗工液を用いて有機EL層を形成する工程と、上記有機EL層上に第2電極層を形成する工程とを有するEL素子の製造方法において、上記隔壁表面が撥液性を有することを特徴とするEL素子の製造方法を提供することにより上記課題を解決するようにした。
【0011】
このように、隔壁表面を撥液性とすることにより、有機EL層形成用塗工液を用いて有機EL層を形成した場合でも、隔壁側面が上記有機EL層形成用塗工液に対して濡れ難いため、隔壁下部に有機EL層形成用塗工液が溜まることがなく、したがってその後第2電極層を上面からの蒸着により形成した際にも、問題なくパターン化することが可能となる。
【0012】
上記請求項1に記載された発明においては、請求項2に記載するように、上記隔壁表面の水に対する接触角が90°以上であることが好ましい。有機EL層形成用塗工液を塗布する際の塗布面の濡れ性にもよるが、少なくとも上述した値以上の接触角を有するものであれば、塗布した有機EL素子形成用塗工液が隔壁の基部に溜まり、第2電極層のパターニングに悪影響を及ぼす可能性を大きく低下させることができるからである。
【0013】
上記請求項1または請求項2に記載された発明においては、請求項3に記載するように、上記隔壁が、撥液性を有する材料から形成されていてもよい。材料自体が撥液性を有するものであれば、隔壁に形成後撥液性を付与するための表面処理を施す等の手間が無く、工程上好ましいからである。
【0014】
上記請求項3に記載された発明においては、請求項4に記載するように、上記撥液性を有する材料が、撥液性を有する樹脂であってもよく、また請求項5に記載するように、撥液性を有する添加剤が添加された材料であってもよく、さらにはこれらの組み合わせであってもよい。
【0015】
また、上記請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項6に記載するように、上記隔壁表面を、撥液性が生じるように表面処理するようにしてもよい。
【0016】
隔壁形成後の処理により隔壁表面を撥液性とすることが可能であれば、隔壁材料の選択の幅が広がる。また、隔壁材料自体が撥液性を有するものであっても、さらに撥液性を増加させるために、撥液性を付与する処理を行うことが好ましい場合もあるからである。
【0017】
上記請求項6に記載された発明においては、請求項7に記載するように、上記撥液性が生じるような表面処理が、フルオロカーボンガスのプラズマを用いた処理であることが好ましい。フルオロカーボンガスによるプラズマ処理を施すことにより、隔壁等の材料の選択によっては、隔壁表面のみを撥液性にする処理が可能だからである。
【0018】
上記請求項7に記載された発明においては、請求項8に記載するように、酸素ガスのプラズマを用いた表面処理を行った後、上記フルオロカーボンガスを用いた表面処理が行なわれることが好ましい。酸素ガスを用いたプラズマ処理を先に施すことにより、有機EL層形成用塗工液の塗布面に親液性を付与し、次いでフルオロカーボンガスを用いたプラズマ処理を施すことにより、隔壁表面を撥液性とすれば、上記塗布面と隔壁表面との濡れ性の差が大きくなり、隔壁の基部に有機EL層形成用塗工液が付着することが無く、第2電極層のパターニング不良を大幅に低減させることができるからである。
【0019】
上記請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載された発明おいては、請求項9に記載するように、少なくとも光触媒およびバインダから成り、かつエネルギーの照射により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有層が形成された後、上記隔壁が形成されることが好ましい。このような光触媒含有層を露光することにより、有機EL層形成用塗工液の塗布面を非常に高い程度の親液性領域とすることができる。したがって、これにより隔壁表面との濡れ性の差を大きくとることが可能となり、隔壁基部への有機EL層形成用塗工液の付着を防止することができるからである。
【0020】
上記請求項1から請求項9までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項10に記載するように、上記隔壁が、上記隔壁の底面より幅広に形成された絶縁層上に形成されていることが好ましい。隔壁の形状およびその撥液性の程度にもよるが、有機EL層形成用塗工液を塗布した際に、塗工液が後退する可能性もある。この際に第1電極層と第2電極層とが短絡しないように、隔壁底面より幅広の絶縁層が形成されていることが好ましいのである。
【0021】
上記請求項10に記載された発明においては、請求項11に記載するように、上記絶縁層表面が撥液性を有することが好ましい。このように、絶縁層表面を撥液性とすることにより、有機EL層形成用塗工液が隔壁基部に付着する可能性をより低減させることができるからである。
【0022】
本発明はさらに、請求項12に記載するように、基材と、上記基材表面にストライプ状に形成された第1電極層と、上記第1電極層に対して直交するように形成され、上部にオーバーハング部を有する隔壁と、上記隔壁間に有機EL層形成用塗工液を用いて形成された有機EL層と、上記有機EL層上に形成された第2電極層とを有し、上記隔壁表面が撥液性を有することを特徴とするEL素子を提供する。
【0023】
本発明のEL素子は、隔壁表面が上述したように撥液性を有するものであるので、有機EL層形成用塗工液を用いて形成された有機EL層が隔壁基部に付着することがなく、したがって第2電極層のパターニングが良好になされており、高精細な画像を高品質で表示できるものである。
【0024】
上記請求項12に記載された発明においては、請求項13に記載するように、上記第2電極層パターニング用隔壁表面の水に対する接触角が90°以上であることが好ましい。有機EL層形成用塗工液を塗布する際の塗布面の濡れ性にもよるが、少なくとも上述した値以上の接触角を有するものであれば、塗布した有機EL素子形成用塗工液が隔壁の基部に溜まり、第2電極層のパターニングに悪影響を及ぼす可能性を大きく低下させることができるからである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のEL素子の製造方法について詳細に説明する。本発明のEL素子の製造方法は、基材表面にストライプ状に形成された第1電極層上に、上記第1電極層に対して直交するように形成され、上部にオーバーハング部を有する隔壁を形成する工程と、上記隔壁間に有機EL層形成用塗工液を用いて有機EL層を形成する工程と、上記有機EL層上に第2電極層を形成する工程とを有するEL素子の製造方法において、上記隔壁表面が撥液性を有することを特徴とするものである。
【0026】
このような本発明のEL素子の製造方法について、図1を用いて具体的に説明する。図1は、本発明のEL素子の製造方法により得られたEL素子の一例を示すものである。本発明においては、まず透明な基材1上に、ストライプ状に形成された第1電極層2を形成する。なお、図1ではストライプに平行な断面を示すものである。この第1電極層2は通常透明な電極層とされる。そして、この第1電極層2上には、発光層を含む有機EL層3が形成される。この有機EL層は、有機EL層形成用塗工液を用いて塗布され、固化されたものである。そして、この有機EL層3を挟むようにオーバーハング部を有する隔壁4が形成されている。このように隔壁4が形成された後、上面から垂直に第2電極層の電極層材料を蒸着させることにより、隔壁4の上端面と、有機EL層3の上面とにそれぞれ電極層蒸着物5aおよび5bが形成される。この際、隔壁4は上部にオーバーハング部を有するものであるので、上記電極層蒸着物5aおよび5bは通常分離され、有機EL層上の電極層蒸着物5bがパターニングされた第2電極層として用いられる。
【0027】
しかしながら、上述したように、本発明においては、有機EL層3が有機EL層形成用塗工液を塗布して形成されるものである。この有機EL層形成用塗工液の塗布に際して、上記隔壁4の基部4aにこの有機EL層形成用塗工液が通常付着してしまう。この隔壁4の基部4aに有機EL層形成用塗工液が付着すると、隔壁の下方部分が太くなることになり、結果的に隔壁4上部のオーバーハング部が無い形状としてしまう。このような状態で、第2電極層の電極層材料を蒸着させても、隔壁4の上面に形成される電極層蒸着物5aと有機EL層上面に形成される電極層蒸着物5bとが分離されず、繋がった状態となる可能性がある。その場合は、有機EL層上に形成される第2電極層がパターニングされていないことになり、発光に際して不具合が生じることになる。
【0028】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、上記隔壁4の表面に撥液性を有するようにした。このように隔壁4の表面が撥液性を有するようにすることにより、有機EL層形成用塗工液を塗布した場合でも、上記隔壁4の基部4aに有機EL層形成用塗工液が付着することがなく、よって第2電極層材料を蒸着させた場合でも、有機EL層表面への第2電極層のパターニングを行なうことができるのである。
【0029】
以下、このような本発明のEL素子の製造方法について、具体的に説明する。
【0030】
1.隔壁
本発明の特徴は、上述したように隔壁の表面が撥液性とされている点である。
【0031】
(1)隔壁表面の撥液性について
本発明においては、少なくとも有機EL層が塗布される側の側面が撥液性を発現するものであれば、特に全表面に撥液性を有する必要性は無いが、加工の容易性等の観点から、一般的には隔壁の全表面が撥液性を発現するように形成される。
【0032】
ここで、本発明における撥液性とは、基本的には、隔壁表面の水に対する接触角が90°以上、特に100°以上、中でも105°以上である場合をいう。水に対する接触角が上記範囲より低い場合は、撥液性が不十分であることから、隔壁の基部に有機EL層形成用塗工液が付着する可能性が生じるため好ましくない。
【0033】
また、例えば有機EL層が発光層である場合等においては、用いる発光層形成用塗工液の溶媒は、通常キシレン等の無極性溶媒である。したがって、このような無極性溶媒に対しても高い接触角を有することが好ましい。
【0034】
したがって、本発明においては、上記隔壁表面の表面張力28.1mN/m(常温にて)の液体(キシレン)に対する接触角が、40°以上であることが好ましく、特に50°以上であることが好ましい。
【0035】
また、本発明においては、上述したように隔壁表面自体の撥液性も重要であるが、実際に有機EL層形成用塗工液が塗布される塗布面の濡れ性と隔壁表面の濡れ性との差も大きな要因となる。具体的には、塗布面の水との接触角より隔壁表面の水との接触角が70°以上大きいことが好ましく、特に80°以上大きいことが好ましい。また、表面張力28.1mN/m(常温にて)の液体(キシレン)に対する隔壁表面の接触角が塗布面の接触角より、30°以上大きいことが好ましく、特に40°以上大きいことが好ましい。濡れ性の差が上記範囲より小さい場合は、隔壁基部における有機EL層形成用塗工液の付着が生じる可能性があることから好ましくない。
【0036】
なお、ここでいう液体との接触角は、液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから水滴を滴下して30秒後)し、その結果から得たものである。
【0037】
本発明において、隔壁に対して上述したような撥液性を付与する方法としては、隔壁自体を撥液性を有する材料で形成する方法と、隔壁表面を隔壁形成後表面処理することにより撥液性を付与する方法に分けることができる。以下、各方法に分けて説明する。
【0038】
a.隔壁自体を撥液性を有する材料で形成する方法
撥液性を有する材料としては、樹脂材料自体を選択することにより隔壁表面に撥液性を付与する場合と、樹脂材料に添加剤を付与して撥液性を付与する場合とがある。
【0039】
まず、樹脂材料自体が撥液性を有する材料としては、フッ素系のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シリコーン系樹脂等を挙げることができる。
【0040】
本発明においては、上述したような材料のみで隔壁を形成して撥液性を付与するようにしてもよいし、他の汎用の材料とブレンドして用いるようにしてもよい。この場合のブレンドの比率は、混合後の樹脂材料が、上述した濡れ性の条件を満たすように適宜調整して用いられるものである。添加剤としてモディバーF200(日本油脂製)を用いた場合、混合する樹脂に対して1wt%から樹脂が発現するが、10wt%添加することが好ましい。
【0041】
また、樹脂材料に添加することにより、その樹脂材料により形成される隔壁表面の撥液性を向上させる添加剤としては、発光層等の有機EL層に対して悪影響を及ぼさない材料であれば特に限定されるものではないが、具体的にはフッ素系樹脂、シリコン系樹脂、パーフルオロアルキル基含有アクリレートまたはメタクリレートを主成分とする共重合オリゴマー等を挙げることができ、中でもパーフルオロアルキル基含有アクリレートまたはメタクリレートを主成分とする共重合オリゴマーを用いることが好ましい。また市販品としては、サーフロン(ランダム型オリゴマー;セイミケミカル社製)、アロンG(グラフト型オリゴマー;東亜合成化学社製)、モディバーF(ブロック型オリゴマー;日本油脂社製)等を挙げることができる。
【0042】
このような添加剤の樹脂材料に対する添加量としては、添加剤の種類および樹脂の種類によっても大きく異なるものであるが、用いる樹脂材料を100重量部とした場合、1〜20重量部、好ましくは5〜10重量部の範囲内で用いられる。
【0043】
本発明においては、上記樹脂材料自体が撥液性を有する材料で形成した場合であっても、必要がある場合はさらに上述した撥液性を付与する添加剤を加えるようにしてもよい。
【0044】
b.隔壁表面を隔壁形成後表面処理する方法
隔壁表面を撥液性とするための他の方法としては、隔壁を汎用の樹脂で形成した後、表面処理を施して撥液性とする方法である。このように隔壁の表面を撥液性とするための処理方法としては、特に限定されるものではなく、例えば表面をシリコーン化合物や含フッ素化合物等の撥液処理剤でパターン状に処理する等の方法であってもよい。
【0045】
しかしながら、本発明においては、フルオロカーボンガスのプラズマを用いた表面処理であることが好ましい。
【0046】
このフルオロカーボンガスのプラズマを用いた表面処理であれば、有機物の部分を選択的に撥液性処理を行なうことが可能である。したがって、ITO膜等の透明な第1電極層上に隔壁を設けた場合においては、上記第1電極層自体は撥液性の処理がなされず、隔壁表面のみ撥液性処理がなされる。したがって、全面にこのような処理を施すことにより、隔壁の部分のみパターン状に撥液性付与処理を行なうことができるからである。
【0047】
これは、フルオロカーボンガスのプラズマを用いた場合は、有機物としか化学反応しないため選択的に有機物の部分が処理され、無機酸化物であるITO膜は処理されず通常の状態が保たれるからである。
【0048】
このフルオロカーボンガスのプラズマを用いた処理とは、チャンバー内に基板を入れ、真空にした後にCF4を導入して(流量:50sccm)内圧を一定に保ち(150mTorr)、RFパワーを150Wとし、5分間ほどプラズマ処理を行った。なお、用いるドライエッチング装置としては、例えば、DEA-506T(ANELVA社製)等を挙げることができる。
【0049】
本発明においては、この際用いるフルオロカーボンガスとしては、CF4、C2F6、C3F8、c−C4F8、CCl2F2、CClF3、C2Cl2F4、C2ClF5、CBrF3、CHF3、C2H3F3、CH3CHF2、NF3、SF6等を用いることが可能であり、中でも、CF4ガスが好適に用いられる。
【0050】
また、フルオロカーボンガスのプラズマを用いた表面処理を行なうに際して、予め酸素ガスのプラズマを用いた表面処理を施すことが好ましい。このように酸素ガスのプラズマを用いた表面処理を施して基材上を親液性としておき、その後フルオロカーボンガスのプラズマを用いた表面処理を施して隔壁部分のみ撥液性とすることにより、隔壁表面と有機EL層形成用塗工液の塗布面との濡れ性の差を大きくすることが可能となり、隔壁の基部への有機EL層形成用塗工液の付着をより効果的に防止することができるからである。
【0051】
(2)隔壁の形状について
本発明に用いられる隔壁の形状は、上部にオーバーハング部を有するものであれば特に制限されるものではない。具体的には、基材に垂直な側壁と基材に平行な頂部を有するT字状のものであっても、また図1に示すような底部から頂部にかけて広がるような、いわゆる逆テーパ形状であってもよい。
【0052】
(3)隔壁の材料について
隔壁を形成する材料は、上述したように材料自体で撥液性を発揮させる場合は、上述したような材料を用いることが可能であり、また表面処理で撥液性を付加させる場合は、従来より用いられてきた樹脂材料により形成される。このような樹脂材料としては、絶縁性の材料であれば特に制限されるものではないが、例えばノボラック系樹脂、ポリイミド等を挙げることができる。
【0053】
(4)隔壁の形成方法について
本発明に用いられる隔壁の製造方法は、例えば、基材上に隔壁材料層を成膜し、その上にフォトリソグラフィ法によって第1電極層の一部を露出させることができるようなフォトレジストマスクを形成し、ドライエッチング法またはウェットエッチング法により、上述したようなオーバーハング部を上部に有する隔壁を食刻するものである。
【0054】
2.基材
本発明に用いられる基材は、特に限定されるものではないが、この基材面側に通常発光させるものであることから、透明性が高いものが好ましく、ガラス等の無機材料や、透明樹脂等を用いることができる。
【0055】
上記透明樹脂としては、フィルム状に成形が可能であれば特に限定されるものではないが、透明性が高く、耐溶媒性、耐熱性の比較的高い高分子材料が好ましい。具体的には、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニル(PFV)、ポリアクリレート(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、非晶質ポリオレフィン、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリミクロイキシレンジメチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ABS樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、および非晶質ポリオレフィン等が挙げられる。
【0056】
3.第1電極層
本発明のEL素子の製造方法においては、ストライプ状に形成された第1電極層が上記基材上に形成される。上述したように、一般には基材面側に発光させるものであるので、基材上に形成される第1電極層は透明電極であることが好ましい。具体的には、酸化錫膜、ITO膜、酸化インジウムと酸化亜鉛との複合酸化物膜等が挙げられるが、本発明においては、ITO膜が好適に用いられる。
【0057】
このような第1電極層は、基材上においてライン状(ストライプ状)に形成される。通常はフォトリソグラフィ法等によりライン状のパターニングが施されて形成される。
【0058】
4.有機EL層
本発明においては、上記第1電極層が形成された基材上に、上述したような本発明の特徴部分である隔壁を形成した後、有機EL層を形成する工程が行われる。
【0059】
本発明は、このような有機EL層を形成する工程が、有機EL層形成用塗工液を用いて行なわれるところに特徴を有するものである。有機EL層の形成が蒸着法による場合は、隔壁基部への有機EL層の付着といった問題が生じないからであり、本発明は有機EL層形成用塗工液を用いた際に生じる特有の課題を解決するものだからである。
【0060】
(1)有機EL層の形成方法
本発明における有機EL層の形成方法は、上記有機EL層形成用塗工液を用いて行なう方法であれば特に限定されるものではないが、隔壁基部に有機EL層が付着する可能性の高い形成法ほど、本発明の利点を活かすことができる。このような観点からすると、印刷法による場合、インクジェット法による場合等のパターン状に有機EL層を形成する方法であってもよく、また全面に有機EL層形成用塗工液を塗布する方法で有機EL層を形成する方法であってもよい。全面に有機EL層を塗布する方法としては、具体的には、スピンコーティング法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等の塗布方法をあげることができ、本発明においてはスピンコーティング法が最も好適に用いられる。
【0061】
(2)有機EL層形成用塗工液
本発明における有機EL層とは、発光層、バッファー層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層等を挙げることができ、これらの各層を形成する際の塗工液が本発明でいう有機EL層形成用塗工液となる。しかしながら、有機EL層において、発光層を有することが必須であり、また発光効率を向上させる等の目的でバッファー層も好適に形成される。したがって、本発明のおいては、特に限定されるものではないが、有機EL層形成用塗工液として、発光層形成用塗工液およびバッファー層形成用塗工液を挙げることとし、これらについて以下説明する。
【0062】
(発光層形成用塗工液)
EL素子において、発光層は必須の層であり、かつフルカラーおよびマルチカラーのディスプレイを製造する際には、パターニングを必要とする層である。したがって、本発明においては、有機EL層形成用塗工液が発光層形成用塗工液である場合が、発明の有効性の面で最も好ましい態様であるといえる。
【0063】
本発明に用いられる発光層形成用塗工液は、通常、発光材料、溶媒、およびドーピング剤等の添加剤により構成されるものである。なお、フルカラー化等を行なう場合は、複数色の発光層が形成されるものであるので、複数種類の発光層形成用塗工液が通常用いられる。以下、これら発光層形成用塗工液を構成する各材料について説明する。
【0064】
A.発光材料
本発明に用いられる発光材料としては、色素系材料、金属錯体系材料、および高分子系材料を挙げることができる。
【0065】
▲1▼色素系材料
色素系材料としては、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
【0066】
▲2▼金属錯体系材料
金属錯体系材料としては、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。
【0067】
▲3▼高分子系材料
高分子系の材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体、金属錯体系発光材料を高分子化したもの等を挙げることができる。
【0068】
本発明は、発光層形成用塗工液を用いた際の課題を解決するものであるので、このような発光層形成用塗工液でのみ形成することができるという観点から、発光材料として上記高分子系材料を用いたものがより好ましい。
【0069】
B.溶媒
上述した発光材料を溶解もしくは分散させ、発光層形成用塗工液とする溶媒としては、上述した発光材料を溶解もしくは分散し、かつ所定の粘度とすることができる溶媒であれば特に限定されるものではない。
【0070】
具体的には、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。
【0071】
C.添加剤
本発明に用いられる発光層形成用塗工液には、上述したような発光材料および溶媒に加えて種々の添加剤を添加することが可能である。例えば、発光層中の発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的でドーピング材料が添加される場合がある。このドーピング材料としては例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィレン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等を挙げることができる。
【0072】
(バッファー層形成用塗工液)
本発明でいうバッファー層とは、発光層に電荷の注入が容易に行われるように、陽極と発光層との間または陰極と発光層との間に設けられ、有機物、特に有機導電体などを含む層である。例えば、発光層への正孔注入効率を高めて、電極などの凹凸を平坦化する機能を有する導電性高分子とすることができる。
【0073】
本発明に用いられるバッファー層を形成する材料としては、具体的にはポリアルキルチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、トリフェニルアミン等の正孔輸送性物質の重合体、無機酸化物のゾルゲル膜、トリフルオロメタン等の有機物の重合膜、ルイス酸を含む有機化合物膜等を挙げることができ、これらを、水、メタノール、エタノールをはじめとするアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒に溶解もしくは分散させたものが本発明でいうバッファー層形成用塗工液である。
【0074】
5.第2電極層
このようにして形成された有機EL層上に、蒸着法により第2電極層が形成される。この第2電極層は、蒸着法により形成される材料で構成されるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、MgAg等のマグネシウム合金、AlLi、AlCa、AlMg等のアルミニウム合金、Li、Caをはじめとするアルカリ金属類およびアルカリ土類金属類、それらアルカリ金属類およびアルカリ土類金属類の合金のような仕事関数の小さな金属等を挙げることができる。
【0075】
6.その他
(1)光触媒含有層
本発明においては、少なくとも光触媒およびバインダから成り、かつエネルギーの照射により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有層が形成された後、上記隔壁が形成されるようにしてもよい。すなわち、第1電極層を基材上に形成した後、上述したような光触媒含有層を形成し、その上に隔壁および有機EL層を形成することができる。なおここでいうエネルギーとは、光触媒含有層を親液性領域にし得るエネルギーであれば特に限定されるものではないが、一般的には紫外光を含む光が好適に用いられる。
【0076】
本発明においては、このように光触媒含有層を形成することにより、まず隔壁を形成する際、隔壁形成部のみをパターン状に露光することにより、親液性領域とすることが可能となり、これにより隔壁の形成が容易となる。そして、隔壁形成後は、全面露光することにより有機EL層形成用塗工液を塗布する塗工面を親液性領域とすることができる。したがって、隔壁の表面との濡れ性の差を大きくとることが可能となるので、より効果的に隔壁基部への有機EL層形成用塗工液の付着を防止することができる。
【0077】
また、このように形成した光触媒含有層は、バッファー層として機能する場合もあるので、その点からも効果的であるといえる。
【0078】
本発明に用いられる光触媒含有層は、上述したように、光触媒とバインダとを有するものである。
【0079】
この際用いられる光触媒としては、光半導体として知られる例えば酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0080】
本発明においては、特に酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の酸化チタンが好ましい。アナターゼ型酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0081】
このようなアナターゼ型酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0082】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径は50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。また、光触媒の粒径が小さいほど、形成された光触媒含有層の表面粗さが小さくなるので好ましく、光触媒の粒径が100nmを越えると光触媒含有層の中心線平均表面粗さが粗くなり、光触媒含有層の非露光部の撥液性が低下し、また露光部の親液性の発現が不十分となるため好ましくない。
【0083】
また、光触媒含有層に使用するバインダとしては、主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥液牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0084】
上記の(1)の場合、一般式:
YnSiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0085】
また、バインダとして、特にフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、フルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
【0086】
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0087】
【化1】
【0088】
ただし、nは2以上の整数であり、R1,R2はそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R1、R2がメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0089】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコン化合物をバインダに混合してもよい。
【0090】
本発明において光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL、BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL、FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることかでき、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0091】
また、光触媒含有層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0092】
光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0093】
上記光触媒含有層は、光触媒とバインダを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することかできる。
【0094】
(2)絶縁層
本発明においては、上記第1電極層上の隔壁が形成される部分に予め絶縁層を形成し、その上に隔壁を形成するようにしてもよい。
【0095】
従来より、ライン状の有機EL層側部における短絡防止のためこのような絶縁層は形成されているが、本発明においては、特に隔壁の側面が撥液性を有するものであるので、隔壁の形状およびその撥液性の程度にもよるが、有機EL層形成用塗工液を塗布した際に、塗工液が塗布部より後退する可能性もある。この際に第1電極層と第2電極層とが短絡しないように、隔壁底面より幅広の絶縁層が形成されていることが好ましいのである。
【0096】
ここで、絶縁層の幅としては、その端部が発光部の開口部を画する部分まで延設されていてもよく、具体的には、隔壁上部より幅広に形成することが好ましい。陰極は隔壁上部の幅の間に形成されるので、陰極エッジ部から少しでも陰極中央よりに形成されていれば短絡は防止できるからである。
【0097】
本発明に用いられる絶縁層の材料としては、従来より用いられているノボラック系樹脂、ポリイミド等を挙げることができる。
【0098】
また、本発明においては、上記絶縁層が撥液性を有するように形成されていることが好ましい。このように形成することにより、より隔壁基部への有機EL層の付着を防止することができるからである。
【0099】
絶縁層への撥液性の付与は、上述した隔壁への撥液性の付与と同様の方法を用いることが可能である。この際の撥液性の程度は、塗布された有機EL層形成用塗工液が後退して短絡を起さない程度である必要がある。したがって、有機EL層形成用塗工液の塗布面の濡れ性と、隔壁表面の濡れ性との中間程度の濡れ性であることが好ましいといえる。
【0100】
具体的には、水との接触角が70°〜90°の範囲内であることが好ましい。
【0101】
なお、この絶縁層は必ずしも隔壁の底部全面に形成されている必要はなく、少なくとも隔壁間に形成される有機EL層ラインの両側の側部に存在するように形成されていればよい。
【0102】
7.EL素子
本発明においては、さらに有機EL層が有機EL層形成用塗工液で形成されたものであるにもかかわらず、隔壁により第2電極層のパターニングを行なうことができるEL素子を提供する。
【0103】
このようなEL素子は、基材と、上記基材表面にストライプ状に形成された第1電極層と、上記第1電極層に対して直交するように形成され、上部にオーバーハング部を有する隔壁と、上記隔壁間に有機EL層形成用塗工液を用いて形成された有機EL層と、上記有機EL層上に形成された第2電極層とを有し、上記隔壁表面が撥液性を有することを特徴とするものであり、中でも隔壁表面の水に対する接触角が、90°以上、好ましくは100°以上、中でも105°以上であることが好ましい。
【0104】
本発明のEL素子の各構成については、上述したEL素子の製造方法において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0105】
本発明のEL素子は、隔壁表面が上述したような撥液性を有するものであるので、有機EL層形成用塗工液を用いて形成された有機EL層が隔壁基部に付着することがなく、したがって第2電極層のパターニングが良好になされており、高精細な画像を高品質で表示できるものである。
【0106】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0107】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明する。
【0108】
[実施例1]
厚さ1.1mmの所望のパターニングを施したITO付き基材上にポリイミドからなる絶縁層で各画素間を保護し、ノボラック樹脂からなる陰極パターニング用の隔壁をITOと直交するように設けた。その後、酸素プラズマにて表面処理を行い親液性を付与した後、連続してCF4プラズマによって隔壁に撥液性を付与して基材を作製した。
【0109】
このようにして作製した基材上にスピンコート法を用いて正孔輸送層としてPEDT/PSS水溶液、発光層としてポリフルオレン1.5重量%キシレン溶液を成膜し、陰極としてカルシウム200オングストローム、銀1500オングストロームを全面蒸着することによりEL素子を形成した。
【0110】
[実施例2]
厚さ1.1mmの所望のパターニングを施したITO付き基材上にポリイミドからなる絶縁層で各画素間を保護し、ノボラック樹脂からなる陰極パターニング用の隔壁材料を100重量部に対して表面改質材(モディバーF200;日本油脂製)10重量部を溶解し、ITOと直交するように隔壁を形成した。この混合樹脂の接触角は水に対して108°、キシレンに対して60°であった。
【0111】
このようにして作製した基材上にスピンコート法を用いて正孔輸送層としてPEDT/PSS、発光層としてポリフルオレン1.5重量%キシレン溶液を成膜し、陰極としてカルシウム200オングストローム、銀1500オングストロームを全面蒸着することによりEL素子を形成した。
【0112】
【発明の効果】
本発明によれば、隔壁表面を撥液性とすることにより、有機EL層形成用塗工液を用いて有機EL層を形成した場合でも、隔壁側面が上記有機EL層形成用塗工液に対して濡れ難いため、隔壁下部に有機EL層形成用塗工液が溜まることがなく、したがってその後第2電極層を上面からの蒸着により形成した際にも、問題なくパターン化することが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のEL素子の製造方法で得られたEL素子の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 … 基材
2 … 第1電極層
3 … 有機EL層
4 … 隔壁
5 … 第2電極層
Claims (11)
- 基材表面にストライプ状に形成された第1電極層上に、前記第1電極層に対して直交するように形成され、上部にオーバーハング部を有する第2電極層パターニング用隔壁を形成する工程と、前記隔壁間に有機エレクトロルミネッセント層形成用塗工液を用いて有機エレクトロルミネッセント層を形成する工程と、前記有機エレクトロルミネッセント層上に第2電極層を形成する工程とを有するエレクトロルミネッセント素子の製造方法において、
前記第2電極層パターニング用隔壁が、前記隔壁の底面より幅広に形成された絶縁層上に形成されており、
前記第2電極層パターニング用隔壁表面および前記絶縁層表面が撥液性を有することを特徴とするエレクトロルミネッセント素子の製造方法。 - 前記第2電極層パターニング用隔壁表面の水に対する接触角が90°以上であることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
- 前記第2電極層パターニング用隔壁が、撥液性を有する材料から形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
- 前記撥液性を有する材料が、撥液性を有する樹脂であることを特徴とする請求項3に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
- 前記撥液性を有する材料が、撥液性を有する添加剤が添加された材料であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
- 前記第2電極層パターニング用隔壁表面を、撥液性が生じるように表面処理することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
- 前記撥液性が生じるような表面処理が、フルオロカーボンガスのプラズマを用いた処理であることを特徴とする請求項6に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
- 酸素ガスのプラズマを用いた表面処理を行った後、前記フルオロカーボンガスを用いた表面処理が行なわれることを特徴とする請求項7に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
- 少なくとも光触媒およびバインダから成り、かつエネルギーの照射により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有層が形成された後、前記第2電極層パターニング用隔壁が形成されることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
- 基材と、前記基材表面にストライプ状に形成された第1電極層と、前記第1電極層に対して直交するように形成され、上部にオーバーハング部を有する第2電極層パターニング用隔壁と、前記隔壁間に有機エレクトロルミネッセント層形成用塗工液を用いて形成された有機エレクトロルミネッセント層と、前記有機エレクトロルミネッセント層上に形成された第2電極層とを有し、
前記第2電極層パターニング用隔壁が、前記隔壁の底面より幅広に形成された絶縁層上に形成されており、
前記第2電極層パターニング用隔壁表面および前記絶縁層表面が撥液性を有することを特徴とするエレクトロルミネッセント素子。 - 前記第2電極層パターニング用隔壁表面の水に対する接触角が90°以上であることを特徴とする請求項10に記載のエレクトロルミネッセント素子。
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