(1.発明の分野)
本発明は、リポキシゲナーゼ(LOX)酵素LOX−1の合成に欠陥のあるオオムギおよび麦芽を開示し、従って工業用の使用のための新規な原料を提供する植物バイオテクノロジーに関する。例えば、上記原料は、異臭化合物トランス−2−ノネナール(T2N)を有していないかまたはごく少量有する新規かつ特有の香味安定ビールを製造するために使用され得る。上記T2Nは、LOX回路の酵素の連続作用によって形成され、ここで、LOX−1は、主活性を示し、リノール酸の二原子酸素添加を与えて9−ヒドロペルオキシオクタデカジエン酸(9−HPODE)を生成する。本発明のオオムギおよび植物製品は、9−HPODEを全く示さないかまたはごくわずかな量の9−HPODEを示す。さらに、本発明は、上記オオムギおよび/または麦芽を使用して製造される飲料に関する。
(2.発明の背景)
現在のビール製造に関連した研究の目的の1つは、ビールの品質および安定性に関する分子的因子を決定することである。大部分のビールは、オオムギ(Hordeum vulgare,L.)を基にして製造される。オオムギは、ビールのような工業製品の供給源としてその経済的重要性に起因するだけでなく、動物飼料の供給源としても世界の多くの地域で栽培されている単子葉植物作物である。米国は、現在、麦芽用オオムギの主要な生産国の1つであり、世界の作物の約13%を有する;カナダ、オーストラリアおよびヨーロッパは、合わせて生産量の約70%を占める(Bios Intern.、2001)。
オオムギ栽培者の継続的な努力は、農学的に堅実である安定した多収穫品種を開発することにある。この目的を達成するために、種々の試みは、目的の形質を改変するために、例えば一般に植物成長および作物生産性に対してばかりではなく、作物から製造された製品に付加された品質を付与する形質に対しても悪影響を有し得る特異的遺伝子の発現を変えるための、化学的処理または照射によるランダム変異誘発を包含する。アジ化ナトリウム(NaN3)がオオムギに変異を誘発させるのに有用な化学物質であることが、十分に確立されている。具体的には、NaN3で誘導される変異誘発は、オオムギにおいて遺伝子の変化を誘発させてアントシアニン類およびプロアントシアニジン類の合成においてブロックされた変異体を生じさせるために使用されている(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。第2の例は、低フィチン酸変異体を同定する目的で高レベルの遊離リン酸をスクリーニングするための、NaN3を用いて変異を誘発させたオオムギ穀粒に関し(非特許文献6);スクリーニングされた2,000個の穀粒から全部で10個の変異体が同定された。オオムギ遺伝学の主な欠点は逆遺伝学によって遺伝子機能を具体的に研究することができないことであったが、正方向遺伝子スクリーニング(forward genetic screen)が、例えば、NaN3で誘導された変異誘発の後に、オオムギおよび麦芽の栄養学的パラメーターおよび製品品質パラメーターに関する改良に関して継続している。
全体的および一般的様式を除いて、栽培者は従来の植物栽培プロセスで発育中の新規な植物系統の結果を予測し得ない。この予測不可能性は、主として細胞レベルで、より詳細には核DNAのレベルで制御できないことにより生じ、その複雑さは莫大である。多数の他の因子、例えば植物の繁殖の地理的な場所での気候および土壌の質が、植物栽培プロセスの結果に影響を及ぼす。その結果として、従来の技術を使用する種々のオオムギ栽培者は、同じ特性を有する植物を決して育成しない。従来の栽培プロセスにおいて、最も困難な仕事は、目的の形質に関してばかりではなく、植物成長に関連する生理学的問題に関しても遺伝学的に優れている植物の同定である。選択プロセスは、他の混同する特性が目的の特性を遮蔽する場合には特に困難である。現在の植物栽培手順が変異遺伝子のDNA配列決定を含む場合には、その手順は、例えばシロイヌナズナおよび他の植物において化学的に誘発させた変異のスクリーニングについて最近記載されているように、育種プログラムの後期において、すなわち変異体の特徴付けの後である(非特許文献7)。
これまで、全ゲノム規模での遺伝子インデックス付き機能喪失型変異の作成が酵母Saccharomyces cerevisiaeについて報告されている(非特許文献8)。植物シロイヌナズナについては、約29,454個の予測された遺伝子の中の21,700個がアグロバクテリウムT−DMA配列の挿入によって不活性化されている(非特許文献9)。
これまで、最初の変異誘発または交配から植物または種子の販売までの従来の育種プロセスが10年以上を要することは珍しいことではない。特に、植物育種家に目的の形質に関連した遺伝子において変異を検出する方法を提供することはすばらしいことである。このような改良は、特に変異体の選択が、目的の遺伝子のタンパク質コード部分にナンセンス変異を有する変異体に向けられる場合には、育種プログラムにおける予測可能性のレベルを高めるであろう。他の場合には、DNA変異の早期同定により、例えば目的の遺伝子のプロモーター変異に特徴があるかまたは他のDNA変異が発現に影響を及ぼす系統についてさらなる育種を中止することが好ましくあり得る。これは、単に環境要因または生理学的要因が、変異原により誘発される形質の復帰を与え得るからである。従って、育種プログラムにおいて目的の変異を早期に検出する別の方法を見出すことに対する要求が存在する。これは、育種プロセス全体をより早くしかつ経済的により目的のものにし、このようにして土地で生産される穀粒の量を最大にすべきである。
生産されるオオムギの大部分は麦芽用品種からなり、その穀粒はオオムギの制御された浸漬、発芽および乾燥のプロセスによって麦芽に変えられる。麦芽の一部は食品産業において成分として使用されるが、これに対して大部分の麦芽は、麦芽から誘導される飲料(ビールおよびウイスキーが挙げられるが、これらに限定されない)の製造の主成分として引き続き使用される。醸造所では、粉砕麦芽が、例えば穀粒ポリマーであるデンプンおよびβ−グルカンの部分的な酵素分解および抽出を与える麦芽−水の懸濁液の温度を段階的に上げる工程を包含するマッシングプロセスに供される。濾過した後に、水性のどろどろにしたものをホップと一緒に煮沸して麦芽汁が得られる。上記麦芽汁を、その後に酵母を用いて発酵させてビール製品を得、これは熟成後に瓶詰めされる。麦芽汁はまた、非発酵麦芽飲料の製造にも使用することができる。
飲料の嗜好性および香味安定性は、オオムギおよび麦芽の組成に関する重要な因子である。これは、上記のオオムギおよび麦芽から誘導される(または上記オオムギおよび麦芽から抽出される酵素の作用によって生じる)天然香味分子が最終製品に望ましくない味覚特性を与え得るからである(非特許文献10)。この点において、ボール紙様の香味を与える揮発性化合物の形成が、特に生化学的および経済的な関心事であるようである。1970年に、ボール紙様の香味の原因である分子が単離され、T2N、すなわち炭素9個の(C9)アルケナールとして同定された(非特許文献11)。ヒトでのT2Nの香味閾値レベルは極めて低く、以前に約0.7nMまたは0.1ppbであると決定されている(非特許文献12)ので、たとえわずかなレベルでもアルデヒドを有する製品は製品の異臭香味により古くなっているとみなされる。さらに、ビールの貯蔵中のT2N付加物の分解によるT2Nの遊離は、製品の劣化を生じ得る(非特許文献13)。
植物組織を用いた放射性標識研究により、ノネナール類はC18脂肪酸であるリノール酸から誘導され、これに対してヘキサナール類およびノナジエナール類はC18脂肪酸であるリノレン酸から形成されることが証明された(非特許文献14;非特許文献15)。これらの観察および多数のその後の観察(例えば、非特許文献16、非特許文献17および非特許文献18によって要約されているような観察)は、T2NはLOX回路特異酵素の連続作用によって形成され、LOXの作用は初期酵素工程を代表するという証拠として解釈されている。この概念と一致して、Kurodoらは、麦芽が、LOXによって生成された生成物のT2Nへの変換に必要な熱安定性酵素因子を含むことを見出した(非特許文献19)。
オオムギ穀粒は、LOX−1、LOX−2およびLOX−3として知られている3種類のLOX酵素を含有する(非特許文献20)。LOX−1はリノール酸から9−HPODE(T2Nおよびトリヒドロキシオクタデセン酸(「THOE」または単に「THA」と略記される)の前駆物質−の形成を触媒するが、LOX−2はリノール酸の13−HPODEへの変換を触媒し、13−HPODEはヘキサナール、すなわち約0.4ppmの香味閾値レベルを有するC6アルデヒドへさらに代謝される(図1B)(非特許文献12、前出)。LOX−3の生成物特異性は理解されていないが、van Mechelenら(前出)によって示されているように、対応する遺伝子の非常に低い発現レベルは、T2N形成に対するその寄与がごくわずかであることを示唆している。LOX活性がT2N特異的異臭の形成に関連するリノール酸ヒドロペルオキシド前駆物質の生成のための唯一の酵素源であるか否か、または脂肪酸自動酸化のプロセスもまた寄与するか否かを調べるために、研究が進行中である。C18ヒドロペルオキシドは、植物の酵素および動物の酵素の7種より多い異なるファミリーによりさらに変換され得ることは、注目すべきであり、全ての反応はまとめてLOX経路と呼ばれ(非特許文献21);この経路はオキシリピン経路ともいわれる。オキシリピンは、その名前が暗示するように、酸素添加脂質由来の分子であり、LOX反応による不飽和脂肪酸の酸素添加反応によって生じ、またこのような酸素添加分子から誘導される任意の分子も包含する。
低下した活性に特徴があるLOX−1タンパク質を有するオオムギ穀粒およびオオムギ植物が、Doumaらの特許文献1として公開されているPCT出願第PCT/IB01/00207号に開示された。しかし、この出願は、不活性LOX−1酵素を用いるオオムギ穀粒の生成および分析を教示していない。
低レベルのLOXを合成する変異植物についてのいくつかの例が知られている。例えば、3種類のダイズ系統が1980年代初期に同定されており、それぞれは成熟ダイズ種子において下記の3種類のLOX酵素の1つを欠いている:
(i)LOX−1。LOX−1ヌル変異の分子基盤は不確かなままであるが、これは対応する成熟mRNAが存在しないことに関連する(非特許文献22;非特許文献23);
(ii)LOX−2。変異遺伝子について転写産物が検出され、またヒスチジンリガンドを活性部位の鉄に置換し、酵素不安定をもたらす1個の塩基の変化が観察された(非特許文献24;非特許文献25);
(iii)LOX−3。LOX−3ヌル変異体は、おそらくは遺伝子プロモーターにおけるシス−作用要素の結果として、検出可能なレベルの対応する転写産物を示さなかった(非特許文献26;非特許文献27)。
エンドウマメの種子では、ヌル−LOX−2系統は、大部分のLOX−2タンパク質の欠失をもたらす欠損を有することが見出された(非特許文献28)。この系統がLOX−2についてmRNAの量の大きな低下を示すので、変異がmRNA安定性の劇的な低下を引き起こすことが示唆された。
イネでは、抽出物の免疫ブロットスクリーニングにより、2種類の天然品種Daw DamおよびCI−115(それぞれ、3種類のLOX酵素のうちの1つを欠く)の存在が明らかにされた(非特許文献29)。3種類のLOX全てを有する正常なイネにおけるヘキサナール、ペンタナールおよびペンタノールの量が貯蔵中に著しく生じたが、Daw DamおよびCI−115では66%〜80%の範囲に減少したことが測定された。この結果がイネ穀粒中のLOX酵素の欠如が酸化劣化を軽減することを示唆するにもかかわらず、Daw DamおよびCI−115のLOXが少ないという特性を付与する分子的決定要因は相変わらず理解されていない。
LOXに関する遺伝子のアンチセンス介在性およびコサプレッション介在性の遺伝子導入の減少は、植物防御シグナル伝達における特異LOX酵素およびその対応産物の機能を解明するのに有用であることを証明している。シロイヌナズナでは、例えば、LOX酵素の減少はジャスモン酸の損傷誘導性蓄積の低下を生じる(非特許文献30)。そして、LOXをコードする遺伝子のアンチセンス介在性の減少の結果は、真菌類病原体に対するタバコ植物の耐性の不適合形質における対応酵素の関与を証明した(非特許文献31)。遺伝子導入アプローチがLOX機能を解明するために使用されている第3の例は、ジャガイモ植物の成長および発生におけるジャガイモLOX(LOX−H1と表す)の役割に関する(非特許文献32)。LOX−H1の減少が揮発性の脂肪族C6アルデヒド、すなわち植物防御応答に関与しかつ損傷誘発性遺伝子発現についてシグナル伝達分子としてまたは抗菌性物質として作用する化合物の著しい減少を生じることが示された。さらなる研究により、LOX酵素に関する遺伝子の発現において減少した遺伝子導入ジャガイモ植物が異常な塊茎の発育を示すことが示された(非特許文献33)。しかし、塊茎表現型の原因となる特異的オキシリピンは同定されなかった。別の研究では、ジャガイモLOX−H3のアンチセンス介在性の減少は、植物の誘導性防御応答を抑制し、より高い塊茎収量を伴う(非特許文献34)。集合的に、これらのデータは、LOX酵素をコードする遺伝子の発現が植物の発育に重要であり、おそらくはいくつかのLOX酵素が病原体に対する防衛的役割を果たし、これに対して他のLOX酵素が細胞の発育を調節するために作用し得る生成物を生成することを示唆する。
2〜20%減少したレベルの2種類のLOX酵素を有するトマト果実が、野生型果実と比べた場合に、香味揮発分の著しい変化を示さなかったことに注目することも重要である(非特許文献35)。この知見は、非常に低いレベルのLOXがアルデヒドおよびアルコールの生成に十分であること、または他のLOX酵素がこれらの化合物の生成において活性であることのどちらかであることを示唆する。
酸化酵素は、植物由来の製品の香味または色に関連した重要な局面に対するその影響により、食品および飲料産業に対する意識を高めつつある。この点において、LOXは、これらがフリーラジカルの形成を誘導し得ることにより重要であり、フリーラジカルは、他の成分(例えばビタミン、着色剤、フェノール、タンパク質など)を攻撃し得る。いくつかのフリーラジカルが遊離脂肪酸の自動酸化において役割を果たすと考えられることは注目に値する。いくつかのフリーラジカル生成物質は、加熱処理に耐え得、従って処理された食品中で十分に活性なままであり製品の貯蔵の間の品質変化を起こす。
酸化防止剤はLOXインヒビターとして広く使用され、その中のいくつかはまたLOX物質の自動酸化を阻害する。しかし、飲料用の香味改善添加剤として有用なLOXインヒビターは同定されていない。
LOX酵素の役割はまた、ビールの製造の分野外の問題点、例えばKellerの特許文献2に記載されているように、例えば真菌汚染に感受性の植物においてマイコトキシン形成を阻害するヒドロペルオキシ脂肪酸のLOXに触媒される生成に関する。植物防御応答および植物損傷応答におけるLOX酵素に関する役割は依然としてあまり明らかでないが、この酵素は損傷および病原体攻撃により誘導される(非特許文献36;非特許文献37;非特許文献38;非特許文献39)。損傷および植物防御におけるLOX酵素の役割は、病原体に対して反応性脂肪酸ヒドロペルオキシドを生成することであり得る(非特許文献40)。あるいは、LOXは、シグナル分子(例えばジャスモン酸メチル)を生成するためにストレスによって誘導され得る(Bellら、前出)。
LOX酵素の作用によって生成される13−HPODEが、ヒドロペルオキシド変換酵素の基質として作用して香味活性アルデヒドを製造する方法もまた記載されている(非特許文献41、非特許文献42)。同様のプロセスが、多数の特許(例えばHaeauslerらの特許文献3およびHoltzらの特許文献4)に開示されている。
また、LOX酵素がパンの製造にいくつかの有利な効果を与えることが示されている(非特許文献43)。さらに、HandaおよびKauschの特許文献5は、果実の品質がLOXの産生を阻害することによって、例えば製品により長い寿命を与えることによって高められ得ることを開示している。
国際公開第02/053721号パンフレット
米国特許第5,942,661号明細書
米国特許第6,150,145号明細書
米国特許第6,274,358号明細書
米国特許第6,355,862号明細書
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(3.発明の要旨)
従って、LOX−1活性を本質的に有していないオオムギ植物に対する未だ満たされていない要求が存在する。なぜならば、このような植物から調製される飲料は非常に低いレベルのT2Nを有するからである。さらに、本発明は、このような植物から調製される飲料が非常に低いレベルの9,12,13−THOEを有することを開示する。さらに、このような植物は他の目的に有用であり得る。
驚くべきことに、本発明は、LOX−1活性を全く有していないかまたは非常に少量しか有していないオオムギ植物を作製するための方法を開示する。特に、本発明はLOX−1の遺伝子におけるヌル変異を開示する。本発明の予期される利点としては、LOX経路の対応する分岐からのT2Nの完全な排除が挙げられ、従って本発明はオオムギ穀粒のT2Nレベルを制御するための優れた方法を提供し;またこれらの穀粒から製造されるビールは、例え高温であっても長期間貯蔵後に優れた香味安定性を示す。
興味深いことに、本発明はまた早期に変異を検出するための方法を提供し、従って最近の変異体特徴づけの不都合が本発明によって解決されている。これは、変異体群における標的遺伝子の表現型特徴付けおよびDNA配列決定の連続的な使用を育種プロセスの早い時点で導入して、改良された麦芽用オオムギ品種を作り出すための新しい魅力的な手順を使用する。単離された植物は、種々の植物育種法を使用してさらに改良され得る。
本発明は、オオムギ中の活性なLOX−1酵素の存在に関連した現在の問題、制限および不都合を解決する。第1に、本発明は、化学的に変異を誘発させたオオムギをスクリーニングするための時間および労力を著しく軽減する新規で効率的なスクリーニング方法を提供する。第2に、本発明は、例えば香味の安定なビールの製造に有用である新規のヌル−LOX−1オオムギを包含する。
上記のように植物LOX変異体に関する理論的背景は、LOX活性レベルの減少した植物に関する。これに対して、本発明は、ヌル−LOX−1オオムギ植物を効率的に作り出す方法を提供することによって低いLOX活性または残存LOX活性に関連した制限および不都合を克服する。具体的な相違としては、以下が挙げられる:
(i)DoumaらのWO02/053721A1号として公開されたPCT出願PCT/IB01/00207号に開示されたオオムギ植物に対して、本発明の植物はLOX−1活性を本質的に有さず、好ましくは本発明の植物は真のヌル−LOX−1植物である、すなわち本発明の植物はLOX−1タンパク質の完全な機能喪失を示す;
(ii)本明細書に記載の真のヌル−LOX−1の形質は、対応する遺伝子中のナンセンス変異の存在についてスクリーニングすることによって確認され得る。従って、この形質について同型接合オオムギ植物は、成長条件または環境効果に関係なく活性酵素の合成において完全にブロックされる。これは、植物育種の分野における理想的な性質でありかつ背景技術のダイズLOX変異体における可能な分子シナリオの結果とコントロール的であり、生物的条件または非生物的条件は、細胞の生理学的状態の変化に影響を及ぼし、LOXのその後の翻訳によりmRNA安定化を与え得る;
(iii)ダイズおよびイネのLOX変異体に関連する形質が、主要食品中の低減されたレベルの臭いの強い化合物ヘキサナールを含む場合には、本発明は飲料中のより低いレベルの香味特異的化合物T2Nおよび飲料中のより低いレベルの9,12,13−THOEに関する;
(iv)ダイズおよびイネのLOX変異体は13−HPODEの下流のLOX経路の分子に影響を及ぼし、これに対しヌル−LOX−1形質は9−HPODEの下流の分子を含むLOX経路の分岐に関する;
(v)ダイズ変異体がLOXに関する遺伝子の放射線照射によって誘発された変異を含み、かつDaw DamおよびCl−115がイネ育種系統の選択された天然に存在する品種にを表すのに対して、ヌル−LOX−1形質を有するオオムギ植物における変異は化学薬品NaN3によって誘発された。
従って、本発明の目的は、野生型オオムギ植物のLOX−1活性の5%未満、好ましくは1%未満を有するオオムギ植物またはその一部もしくは断片を提供することである。
本発明の第2の目的は、野生型オオムギ植物のLOX−1活性の5%未満、好ましくは1%未満を有するオオムギ植物由来の穀粒を提供することである。
本発明の第3の目的は、野生型オオムギ植物のLOX−1活性の5%未満、好ましくは1%未満を有するオオムギ植物またはその一部もしくは断片を有する組成物を提供することである。
本発明のさらなる目的は、野生型オオムギ植物のLOX−1活性の5%未満、好ましくは1%未満を有する加工されたオオムギ植物を含有する麦芽組成物を提供することである。麦芽組成物は好ましくは純粋な麦芽組成物であってもよい。しかし、麦芽組成物はまた、例えば、オオムギと麦芽との混合物であってもよい。
本発明の目的はまた、安定な感覚刺激品質を有する飲料であって、本発明のオオムギ植物またはその一部を使用して製造される飲料を提供することである。特に、上記飲料は、上記の麦芽組成物(例えば純粋な麦芽組成物)またはオオムギと麦芽との混合物を使用して製造されることが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、上記飲料はビールからなる。
本発明のさらなる目的は、安定な感覚刺激品質を有する飲料を提供することであり、この飲料は、オオムギ植物を使用して製造されかつこの飲料中の9,10,13−トリヒドロキシオクタデセン酸(本明細書では、9,10,13−THOEまたは単に9,10,13−THAと略記する)に対する9,12,13−トリヒドロキシオクタデセン酸(本明細書では、9,12,13−THOEまたは単に9,12,13−THAと略記する)の比率が多くても1.8である。上記飲料はビールであることが好ましい。
さらに、本発明の目的は、本発明のオオムギ植物またはその一部を含有する組成物(例えば食品組成物、飼料組成物、または芳香原料組成物)を提供することである。
さらに、本発明の目的は、本発明のオオムギ植物中で組換えタンパク質を発現するための方法を提供することであり、この方法は、作動可能に連結された要素としてオオムギ植物またはその一部中で発現可能なプロモーター、上記組換えタンパク質をコードするDNA配列、および転写終結領域を有する核酸配列を用いてこの植物を形質転換させ、それによってこのオオムギ植物中でこの組換えタンパク質を発現させる工程を包含する。
さらに、本発明の目的は、本発明のオオムギ植物中のタンパク質のレベルを低下させるための方法を提供することであり、この方法は、作動可能に連結された要素としてオオムギ植物またはその一部中で発現可能なプロモーター、DNA配列、および転写終結領域を有する核酸配列を用いてこの植物を形質転換させる工程を包含し、このDNA配列の発現がこのタンパク質をコードする遺伝子の発現をアンチセンス、またはコサプレッションまたはRNA干渉によって低下させる。
本発明のさらなる目的は、野生型オオムギ植物のLOX−1活性の5%未満、好ましくは1%未満を有するオオムギ植物を調製する方法を提供することでありこの方法は、以下:
(i)野生型オオムギ穀粒またはその一部におけるLOX−1活性を測定する工程;および
(ii)オオムギ植物および/またはオオムギ穀粒および/またはオオムギ胚に変異を誘発させ、それによってM0世代のオオムギを得る工程;および
(iii)上記の変異を誘発させたオオムギ植物、穀粒および/または胚を少なくとも2世代栽培し、それによってMx(ここで、xは≧2の整数である)世代のオオムギ植物を得る工程;および
(iv)上記Mx世代のオオムギ植物から穀粒またはその一部を得る工程;および
(v)上記穀粒またはその一部においてLOX−1活性を測定する工程;および
(vi) 変異を誘発させた穀粒またはその一部のLOX−1活性が野生型穀粒またはその一部のLOX−1活性の5%未満である植物を選択する工程
を包含し、それによって野生型オオムギ植物のLOX−1活性の5%未満を有するオオムギ植物を得る。
さらにまた、本発明の目的は、安定な感覚刺激品質を有する飲料を製造する方法を提供することであり、この方法は、以下:
(i)本発明の麦芽組成物を提供する工程;
(ii)上記麦芽組成物を飲料に加工する工程
を包含し、それによって安定な感覚刺激品質を有する飲料を得る。
本発明のさらなる目的は、低いLOX−1活性を有する麦芽組成物を製造する方法を提供することであり、この方法は、以下:
(i)本発明の穀粒を提供する工程;
(ii)上記穀粒を浸漬する工程;
(iii)上記浸漬した穀粒を所定の条件下で発芽させる工程;
(iv)発芽させた穀粒を熱で処理する工程;
を包含し、それによって低いLOX−1活性を有するかまたはLOX−1活性を全く有していない麦芽組成物を製造する。
1つの好ましい実施形態において、本発明は、主要な9−HPODE生成酵素LOX−1に関して完全な機能喪失を示したオオムギ変異体D112(本明細書中では、「変異体D112」または「オオムギD112」ともいう)の機能研究の予測されなかった成果に基づく。リノール酸のLOXに触媒された変換後の生成物プロフィールを決定するために設計された生化学アッセイにおいて、10%:90%の分布の9−HPODE:13−HPODEを検出することは意外な発見であった。T2Nの極めて低い香味閾値を考えると、変異体D112の穀粒中の残存9−HPODEなどの分解は、上記穀粒の麦芽から製造されたビール製品の熟成中に、T2Nの非常に少ない遊離(香味閾値レベルよりも十分に低い)を生じただけであることは、さらに意外なことであった。
野生型およびヌル−LOX−1の穀粒を使用する分析から得られた結果の調査は、高いLOX−1活性がT2Nの古いボール紙臭を強め、従ってアルケナールの生成の制御におけるLOX経路の重要な役割を確認することができるという明らかな証拠を提供する。この結論を、LOX活性のみが一部のT2N前駆物質分子に寄与することを示唆したLiegeoisら(前出)の概念と対比する。
ヌル−LOX−1形質は、任意の他のオオムギ植物(例えば確立されたオオムギ品種、例えば確立された麦芽用オオムギ品種)に導入され得、従って長期貯蔵寿命を有する香味安定飲料の製造を可能にする。このことは、例えば、当業者に周知の従来の育種法によって達成され得る。このアプローチは、変異体D112由来のオオムギが栽培される地理的領域と無関係であるばかりではなく、変異体D112由来のビールが製造され、顧客に販売される場所とも無関係である。変異体D112のオオムギ植物またはその誘導される植物は、潜在的に、作物を栽培する農家にとっておよびそれをビール製造用またはオオムギに基づく他の飲料の製造用の原料として使用する醸造所にとって重要な経済的要因である。9−HPODE/9−HPOTE形成活性を有さない原料に依存する他の適用もまた、オオムギ変異体D112の性質から利益を得ることが予測される。
本発明の1つの実施形態に従って、いくつかの新規な麦芽用オオムギ変異体、例えばオオムギ変異体D112またはオオムギ変異体A618(本明細書では「変異体A618「または「オオムギA618「ともいう)が提供される。従って、本発明は、オオムギ変異体D112またはA618の穀粒、オオムギD112またはA618の植物、およびオオムギ変異体D112またはA618をそれ自体または別のオオムギ系統と交配させることにより誘導されるオオムギ植物の作成方法に関する。さらに、本発明は、オオムギ変異体D112またはA618の変異誘発または形質転換によって作製されるヌル−LOX−1改変体を包含する。従って、オオムギ変異体D112もしくはA618(またはこれらの誘導体)を親植物として使用して作り出される全ての植物は、本発明の範囲内である。
別の局面において、本発明は、オオムギ変異体植物D112またはA618の組織培養に使用するための再生可能な細胞を提供する。組織培養は、前述のオオムギ植物の特徴(形態学的特徴および遺伝的特徴を含む)を有する植物の再生に使用されることが好ましい。このような組織培養で再生された細胞は、胚、プロトプラスト、分裂組織細胞、カルス、花粉、葯などである。本発明は本発明の組織培養により再生されたオオムギ植物を提供することが理解される。
好ましい実施形態において、本発明は、ヌル−LOX−1オオムギ穀粒から誘導される麦芽を包含する。
本発明はまた、ヌル−LOX−1オオムギ植物またはその一部から調製される麦芽汁組成物またはこのようなオオムギ植物から調製された麦芽組成物から調製される麦芽汁組成物に関する。
本発明は、さらに本発明のヌル−LOX−1オオムギ穀粒を使用するかまたはこの穀粒から誘導される麦芽のいずれかを使用して製造される飲料(例えばビール)を包含する。
さらに、本発明は、ヌル-LOX−1オオムギ植物またはその一部から製造される植物製品に関する。上記植物製品は、上記オオムギ植物またはその一部の処理から生じる任意の製品であり得る。好ましくは、上記植物製品は、麦芽、麦芽汁、発酵飲料(例えばビール)、非発酵飲料、食品(例えばオオムギ粗びき粉)および飼料製品からなる群より選択される。
本発明の目的はまた、野生型オオムギ植物と区別がつかないかまたはさらに向上した耐病性を有するようなレベルの耐病性を示すヌル−LOX−1オオムギ穀粒を提供することである。
なおさらに、本発明はヌル−LOX−1オオムギ穀粒、およびこの穀粒から誘導される麦芽を包含し、ここで、穀粒および麦芽は両方とも低下したレベルのマイトコトキシンを示す。
また、本発明は、野生型植物と比べて増強された耐病性を有するヌル−LOX−1オオムギ品種を包含する。さらに、野生型植物と比べて低下した耐病性を有するヌル−LOX−1オオムギが開示されるが、但し、この植物の他の特性は、低減された耐病性の性質よりも重要である利点を提供する。
さらに、本発明は、LOX経路由来の芳香(グリーンノート化合物が挙げられる)の製造に有用なヌル−LOX−1オオムギ穀粒を提供する。
さらに、本発明は、導入された遺伝子が除草剤抵抗性、昆虫抵抗性、細菌、真菌もしくはウイルスによる病気に対する抵抗性のような形質、増強された栄養価、および工業用の用法を与えるヌル−LOX−1オオムギ変異体D112もしくはA618、またはそれに由来する植物のトランスジェニック植物を提供する。この遺伝子は、内因性オオムギ遺伝子であってもよいし、あるいはまた遺伝子工学技術によって導入された導入遺伝子であってもよい。
最後に、本発明は、LOX−1インヒビターを使用することによってLOX−1活性を低下させる方法を提供する。上記の方法によって得られる植物製品、植物から誘導される製品(飲料およびビールが挙げられる)は、原料としてヌル−LOX−1オオムギから製造される製品と同様の特性を有し得る。
本発明のこれらの特徴および他の特徴、局面、ならびに利点は、以下の定義、記載、実施例、添付の特許請求の範囲ならびに添付の配列表および図面に関連付けた場合によりよく理解される。
(3.1 定義)
以下の記載、図および表において、多数の用語が使用される。明細書および特許請求の範囲を提供するために、このような用語に与えられるべき範囲を含む以下の定義が提供される。
本明細書で使用される場合、「a」は、それが使用される文脈に応じて1つ以上を意味し得る。
用語「作物学的形質」は、植物の性能または経済価値に寄与する植物の表現型形質を説明する。このような形質としては、耐病性、昆虫抵抗性、ウイルス抵抗性、線虫抵抗性、耐乾燥性、耐高塩性、収量、草高、成熟までの日数、穀粒粒度(すなわち穀粒サイズ分別)、穀粒窒素含有量などが挙げられる。
「アンチセンスヌクレオチド配列」とは、ヌクレオチド配列の標準的な5’から3’への向きのコーディングに対して逆の向きである配列を意図する。植物細胞中に存在する場合、アンチセンスDNA配列は、好ましくは内因性遺伝子に関するヌクレオチド配列の正常な発現を抑制し、対応する天然タンパク質の産生を破壊させ得る。
ビールの製造プロセスに関連して、用語「オオムギ」は、特に麦芽製造プロセスを説明するために使用される場合、オオムギ穀粒を意味する。他の全ての場合において、特に明記しない限り、「オオムギ」とは、任意の品種を含むオオムギ植物(Hordeum vulgare,L)を意味する。
「耐病性」とは、植物が植物−病原体の相互作用の結果である病徴を回避することを意図する。このようにして、病原体が植物病害および関連する病徴、あるいはまた病徴を引き起こすことが防止される。また、病原体によって引き起こされる病徴は最小限抑えられるかまたは軽減される。
本出願明細書で定義される「穀物」植物は、主としてデンプン含有種子用に栽培されるイネ科植物群の一員である。穀物植物としては、オオムギ、コムギ(パンコムギ)、イネ、トウモロコシ、ライムギ、カラスムギ、モロコシおよびライコムギ(Triticale)、すなわちライムギ−コムギハイブリッドが挙げられるが、これらに限定されない。
特定の核酸との関連で「コードする」または「コードされる」とは、特定のタンパク質への翻訳に関する情報を包含することを意味する。タンパク質をコードする核酸は、核酸の翻訳された領域内に非翻訳配列(例えば、イントロン)を含んでいてもよいし、またはこのような介在非翻訳配列を欠いていてもよい(例えば、cDNAにおいて)。タンパク質がコードされる情報は、コドンの使用により特定される。
本明細書で使用される場合、核酸との関連で「発現」とは、核酸断片から誘導されるセンスmRNAまたはアンチセンスRNAの転写および蓄積として理解されるべきである。タンパク質との関連で使用される「発現」とは、mRNAのポリペプチドへの翻訳をいう。
「香味分子」とは、植物中で生成され、臭気および/または香味の構成成分であるアルデヒドおよび/またはアルコールを意図する。特に、香味分子としては、特定の揮発性のアルコールおよびアルデヒドが挙げられる。揮発性の香味分子の例としては、ヘキサナール、(3Z)−ヘキセナール、(2E)−ヘキセナール、(2E)−ヘキセノール、(3Z)−ノネナール、(2E)−ノネナールが挙げられるが、これらに限定されない。本発明は、植物中の香味分子のレベルを調節するために使用され得る。
用語「遺伝子」は、ポリペプチド鎖の生成に関わるDNAのセグメントを意味する;セグメントとしては、コード領域の前および後の領域(プロモーターおよびターミネーター)が挙げられる。真核生物遺伝子は、それによってコードされるタンパク質に関して非連続的であり、イントロンによって中断されたエキソンからなる。RNAへの転写後に、イントロンはスプライシングによって除去されて成熟メッセンジャーRNA(mRNA)を生じる。エキソン間の「スプライス部位」は、代表的には一次RNA転写産物からのイントロンの欠失および切除されたイントロンのいずれかの側に残っているRNAの両端の結合または融合からなるスプライシングプロセスのためのスプライスシグナルとして作用する共通配列によって決定される。いくつかの場合には、交互または異なるパターンのスプライシングは、同じ単一の長さのDNAから種々のタンパク質を生じ得る。ネイティブの遺伝子は、内因性遺伝子と呼ばれ得る。
「遺伝子サイレンシング」は、遺伝子の発現を変えるための方法である。それは、種々の生物間で保存される転写後遺伝子サイレンシング機構であるRNAサイレンシングをいう。この方法としては、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)およびRNA干渉(RNAi)が挙げられる。PTGSは、内因性および外因性の相同性遺伝子の遺伝子サイレンシング現象である。PTGSに関する大部分の例は、コサプレッション構築物またはアンチセンス配向の導入遺伝子の発現によって生じる効果に関するものであるが、従来の育種プログラム(例えばイネでのLgc1変異)の植物でも認められている(Kusaba ら、2003)。この変異は、RNAサイレンシングによってグルテリン発現を抑制することが見出され、これはおそらくは二本鎖RNA分子、従ってRNAサイレンシングの強力な誘発物質を生成し得る尾部対尾部(tail−to−tail)の逆方向反復を形成するグルテリンに対する2つの高度に類似する遺伝子の間の3.5kbpの欠失に起因する。RNAサイレンシングの第2の型は、RNA干渉(RNAi)として知られており、根本的な前提は、細胞中に注入されるかまたは取り込まれた場合に、二本鎖のRNAがその相同な遺伝子の発現を特異的にブロックし得ることである(Goenczyら、2000)。
本明細書で使用される場合、核酸との関連で「異種」とは、外来種が起源である核酸であるか、または同種から生じる場合には組成および/またはゲノム遺伝子座におけるそのネイティブの形態から意図的なヒトの介入によって実質的に修飾される核酸である。
本明細書で使用される場合、用語「発芽」とは、種々の組成物(例えば天然に見出される標準的な土壌でのオオムギ穀粒による成長の開始または続行を意味する。発芽はまた、グロースチャンバなどに置かれた鉢の土壌で行なうこともできるし、あるいは例えば、標準的な実験用ペトリ皿に置かれた湿潤濾紙上で行なうこともできる。発芽は、一般に穀粒の水和、穀粒の膨張および胚の成長の誘導を包含すると理解される。発芽に影響を及ぼす環境要因としては、湿度、温度および酸素レベルが挙げられる。根および苗条の発育が観察される。
「グリーンノート」とは、多数の植物中に存在する揮発性の香味および芳香分子を説明する用語であり、感応用語においてフレッシュグリーンおよびグラッシー(fresh green and grassy)として特徴付けられる。これらの分子は、植物によって脂質および遊離脂肪酸(例えばリノール酸およびリノレン酸)の分解から生成される。
本明細書で使用される場合、用語「単離された」とは、物質がその本来の環境から取り出されることを意味する。例えば、生物中に存在する天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されないが、自然系に共存する物質のいくつかまたは全てから分離される同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離される。このようなポリヌクレオチドは、ベクターの一部分であり得るか、そして/またはこのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組成物の一部であり得、さらにこのようなベクターまたは組成物はその天然環境の部分ではないので、単離することができる。
用語「穀粒」とは、穀物穎果を包含することが定義され、内部種子、外花穎および内花穎も表す。大部分のオオムギ品種において、外花穎および内花穎は、穎果に付着し、また脱穀の後の穀粒の一部である。しかし、ハダカムギ品種も存在する。これらにおいて、穎果は外花穎および内花穎がなく、コムギのように自由に脱穀される。用語「穀粒」および「穀類」は、本明細書では交換可能に使用される。
「穀粒熟成」または「穀類発育」とは、受精によって開始し、代謝蓄積物(例えば糖、オリゴ糖、デンプン、フェノール、アミノ酸およびタンパク質)が液胞を標的するかまたは標的せずに穀粒(穀類)の種々の組織(例えば胚乳、種皮、糊粉および胚盤に蓄積し、穀粒(穀類)の拡大、穀粒(穀類)の充填をもたらし、そして穀粒(穀類)の乾燥により終結する期間をいう。
用語「LOX−1活性」とは、オオムギLOX−1酵素の酵素活性をいう。特に、本発明との関連で、「LOX−1活性」とは、リノール酸の9−HPODEへの酵素触媒二原子酸素添加である。LOX−1酵素が他の反応を触媒することができるとしても、本発明のLOX−1の活性を測定するためには、9−HPODE形成活性のみが考慮されるべきである。図1Bは、リノール酸がT2Nに変換される生化学的経路を概説する。
用語「低LOX」とは、好ましくは酵素活性(これに限定されない)に関して、部分的機能喪失型の特定のLOX酵素を生じる1個または数個の内因性遺伝子における1つまたは数個の変異の存在をいう。例えば、DoumaらのWO02/053721A1号として公開されたPCT出願PCT/IB01/00207号に開示されたオオムギ植物は、対応する野生型酵素と比べて10%の残留活性を有する変異LOX−1酵素を生成する。植物との関連で「低LOX」とは、部分的機能喪失型の特定のLOX酵素を有する植物をいう。
「麦芽製造」とは、制御された環境条件(例えば麦芽浸漬タンクおよび発芽箱が挙げられるが、これらに限定されない)の下で行うオオムギ穀粒の特殊な形態の発芽である。本発明のプロセスに従って、麦芽製造はオオムギ穀粒が浸漬されている間および/またはその後に生じ始める。麦芽製造プロセスは、オオムギ穀粒の乾燥によって停止させ得る。ヌル−LOX−1オオムギから調製された麦芽組成物は、ヌル−LOX−1麦芽(例えば純粋なヌル−LOX−1麦芽)またはヌル−LOX−1麦芽を含有する任意の麦芽混合物を含有すると理解される。
「マッシング」は、粉砕した麦芽の水中でのインキュベーションである。マッシングは、特定の温度および特定の体積の水で行うことが好ましい。上記温度および水の体積は、麦芽由来の酵素活性の低下の度合い、従って特に、生じ得るデンプン加水分解の量に影響及ぼすので重要である。マッシングは、添加物の存在下で行い得る。これは、主に抽出物のさらなる供給源として使用される麦芽以外の任意の炭水化物源(例えばオオムギ(ヌル−LOX−1オオムギが挙げられる)、トウモロコシまたはイネの添加物を含むと理解される。醸造所における添加物の処理についての要件は、使用される添加物の状態および種類、特にデンプン糊化または液化温度に依存する。糊化温度が標準麦芽糖化温度よりも高い場合、デンプンはマッシュに添加する前に糊化され、液状化される。
「変異」は、遺伝子のコード領域および非コード領域の欠失、挿入、トランスバージョンおよび点変異を包含する。欠失は、遺伝子全体についてまたは遺伝子の一部だけについてのものであり得る。点変異は、終止コドン、フレームシフト変異またはアミノ酸置換を生じ得る。体細胞変異は、植物の特定の細胞または組織においてのみ生じる変異であり、次の世代には遺伝しない。生殖細胞系統の変異は、任意の植物の細胞において見出され得、遺伝する。
用語「ヌル−LOX」とは、完全機能喪失型のコードされたLOX酵素を生じるLOXコード遺伝子中の変異の存在をいう。LOXをコードする遺伝子において未成熟終止(ナンセンス)コドンを生じる変異は、完全機能喪失型を得ることができる唯1つのメカニズムに相当する。完全機能喪失型のLOX酵素を得るための分子アプローチは、上記酵素について転写産物の完全欠損を生じる変異、またはコードされた酵素を完全に不活性化する変異の発生を含む。植物との関連で、「ヌル−LOX」とは、完全機能喪失型の特定のLOX酵素を有する植物をいう。
「作動可能に連結された」とは、一方の機能が他方の機能によって影響されるように1つのポリヌクレオチドに対する2個以上の核酸断片の会合を示すために使用される用語である。例えば、プロモーターは、それがコード配列の発現に影響を及ぼし得る場合にはコード化配列と作動可能に連結される(すなわちコード配列はプロモーターの転写調節下にある)。コード配列は、センスまたはアンチセンスの配向で調節配列に作動可能に連結させることができる。
「PCR」または「ポリメラーゼ連鎖反応」は、特異的DNAセグメントの増幅に使用される技術として当業者には周知である(Mullisらの米国特許第4,683,195号および同第4,800,159号)。
「植物」または「植物材料」としては、植物細胞、植物プロトプラスト、オオムギ植物を再生することができる植物細胞組織培養物、植物カルス、および植物細胞であって植物または植物部分(例えば胚、花粉、胚珠、花、穀粒、葉、根、根端、葯内のインタクトな植物細胞)あるいは植物の任意の部分または製品が挙げられる。
用語「植物製品」とは、植物または植物部分の加工により得られる製品を意味する。従って、上記植物製品は、例えば、麦芽、麦芽汁、発酵または非発酵の飲料、食品あるいは飼料製品であり得る。
本明細書で使用される場合、タンパク質との関連で「組換え体」とは、外来種が起源であるタンパク質であるか、または同じ種から生じる場合には、組成においてその固有の形から意図的なヒトの介入によって実質的に修飾されているタンパク質である。
「RNA転写産物」とは、DNA配列のRNAポリメラーゼ触媒転写により生じる生成物をいう。RNA転写産物がDNA配列の完全な相補的コピーである場合、RNA転写産物は一次転写産物と呼ばれる。RNA配列が一次転写産物の翻訳後処理により誘導される場合には、それは成熟RNAと呼ばれる。「メッセンジャーRNA」または「mRNA」とは、イントロンが存在せずかつ細胞によってタンパク質に翻訳され得るRNAをいう。「cDNA」とは、mRNAテンプレートに相補的でありかつmRNAテンプレートから得られるDNAをいう。cDNAは、一本鎖の形であり得るか、または例えばDNAポリメラーゼIのクレノウ断片を使用して二本鎖の形に転換され得る。「センスRNA」とは、mRNAを含み、従って細胞によってポリペプチドに転写され得るRNA転写産物をいう。「アンチセンスRNA」とは、標的一次転写産物またはmRNAの全体または一部に相補的でありかつ標的遺伝子の発現を遮断するRNA転写産物をいう。アンチセンスRNAの相補性は、特定のヌクレオチド配列(すなわち5’非コード配列、3’非コード配列、イントロン、またはタンパク質コード配列の任意の部分に対するものであり得る。「機能的RNA」とは、タンパク質へ翻訳され得ないが細胞プロセスに対してはなお影響を及ぼすセンスRNA、アンチセンスRNAまたはその他のRNAをいう。
他に明記しない限りは、「T2N」とは、遊離の形態のT2Nを意味する。「T2Nポテンシャル」という用語は、T2Nを放出する能力を有するか、または1つ以上の反応においてT2Nに変換され得る化学物質を説明する。T2Nポテンシャルは、高温(例えば100℃)および低い酸性度(例えばpH4.0)でインキュベーション(例えば2時間)の後の溶液(例えば麦芽汁またはビール)中のT2Nの濃度として測定することができる。この試料処理は、T2Nポテンシャルから、例えば「T2N付加物」(1種以上の物質(例えばタンパク質、亜硫酸塩、細胞砕片、細胞壁などが挙げられるが、これらに限定されない)に結合体化したT2Nを説明するのに使用される用語)からT2Nの遊離を生じる。一般的に、T2N付加物それ自体は、ヒトによって異臭として感じられない。しかし、上記T2N付加物から、例えば熱または酸によって放出されるT2Nは、異臭を生じ得る。
「組織培養物」とは、同じ種類または異なる種類の単離細胞、あるいは植物の部分(例えばプロトプラスト、カルス、胚、花粉、葯など)に組織化された細胞の集合を含有する組成物を示す。
「形質転換」とは、DNAが染色体外要素(組み込みおよび安定な遺伝なしに)としてまたは染色体組込み体(遺伝学的に安定な遺伝)のどちらかとして維持されるように生物内にDNAを導入することを意味する。他に明記しない限りは、E.coliの形質転換について本明細書で使用した方法はCaCl2法であった(SambrookおよびRussel、前出)。オオムギの形質転換については、アグロバクテリウム介在形質転換は、品種Golden Promiseなどの別の品種を宿主として使用し得ることを除いて、Tingayら(1997年)およびWangら(2001年)によって記載されているようにして基本的に行われ得る。
「導入遺伝子」とは、形質転換手順によってゲノムに導入されている遺伝子である。
本明細書で使用される場合、「トランスジェニック」とは、異種核酸の導入によって改変されている細胞についての言及または細胞がそのように改変された細胞から誘導されることについての言及を包含する。従って、例えば、トランスジェニック細胞は、天然型の細胞内で同じ型で見出されない遺伝子を発現するか、または、意図的なヒトの介入の結果として別の方法で異常に発現されるか、過少発現されるか、または全く発現されない天然の遺伝子を発現する。本明細書で使用される場合、植物、特にオオムギ植物との関連で「トランスジェニック」という用語は、伝統的な植物育種法(例えばNaN3で誘導される変異誘発)による細胞の変性、および自然に生じる事象(例えば意図的なヒトの介入なしで生じる事象)による細胞の変性を包含しない。
用語「野生型オオムギ植物」とは従来のオオムギ植物をいい、好ましくは、この用語は本発明のオオムギ植物が誘導されるオオムギ植物、すなわち親植物をいう。本発明の1つの好ましい実施形態においては、「野生型オオムギ植物」は、品種Celeste、Lux、Prestige、SaloonおよびNerudaからなる群より選択される。より好ましくは、「野生型オオムギ植物」は品種Barkeである。野生型オオムギ品種またはその種子は、一般的には例えば一般の種子会社から入手可能である。
(4.配列表の簡単な説明)
本発明は、以下の詳細な説明および本出願の一部を構成する添付の配列表(表9に要約する)からさらに十分に理解され得る。上記表は、本明細書に記載の核酸およびポリペプチド、これらのポリペプチドの全部またはかなりの部分に相当するポリペプチドをコードする核酸断片を含むcDNAクローンの指定、および対応する識別子(配列番号)を列挙する。配列の説明およびそれに添付された配列表は、特許出願のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列の開示を規定する規則に従う。
配列表は、標準化された勧告(Cornish−Bowden,1985;IUPAC−IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature,1984)(これらは本明細書中に参考として援用される)に準拠して定義されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列文字に関する一文字コードを含む。ヌクレオチドおよびアミノ酸の配列データについて使用される記号および書式は、特許出願の配列の開示を規定する規則に従う。
(6.発明の詳細な説明)
記載を明確にするためにおよび限定しないために、発明の詳細な説明を以下の小節に分ける:
(i) オオムギ植物;
(ii) ヌル−LOX−1オオムギの調製;
(iii) 組成物;
(iv) 化学的変異誘発;
(v) オオムギ変異体の選択;
(vi) 植物育種;
(vii) オオムギの交配;
(viii)LOX酵素;
(ix) LOX経路生成物;
(x) T2Nポテンシャル;
(xi) 耐病性;
(xii) マイコトキシン類;
(xiii) 芳香;
(xiv) LOXをコードする遺伝子の異種発現;
(xv) LOXインヒビター。
(6.1 オオムギ植物)
「野生型オオムギ」、Hordeum vulgare ssp.spontaneoumは、現在の栽培型のオオムギの祖先と考えられる。この穀物の開発は肥沃な三日月帯で穀類栽培の開始を説明するための手がかりを提供すると長い間認められている。ヒトが長い夏季を通じて穀類を集めることができたという事実は、穀類を栽培化に予め適応させた候補とした。初期の栽培化は、おそらくは遺伝学的に非常に多様性があり、これは、イスラエル、トルコおよびイランの野生型オオムギの研究によって支持された概念であった(Nevo,1992)。野生型オオムギ群はこれらの対立遺伝子含有量において相当に異なることが見出された。27個の共有遺伝子座での127個の対立遺伝子の中から、65個の対立遺伝子が固有であることが見出された、すなわちこれらは一つの国のみで生じた。
オオムギの野生状態から栽培状態への移行は、多数の遺伝子座での対立遺伝子頻度の急激な変化と一致すると考えられる。希少な対立遺伝子および新しい変異事象が、栽培化植物群(「オオムギ在来種」を意味する)において新しい形質を早く確認した農業者によって積極的に選択された。これらは、遺伝学的に野生型オオムギよりも現在の品種により密接に関連し、さらなる育種努力のための有用な対立遺伝子源に相当する(Ellisら、1998)。19世紀後半まで、オオムギ在来種は、近交系とハイブリッド分離物との高度に異質の混合物(初期世代においてランダム交配により誘導された数種の植物が挙げられる)として存在した。在来種の大部分は、先進的農業において純系品種によって置き換えられた。中間レベルまたは高レベルの遺伝子多様性が、残りの在来種を特徴付けている。
最初に、「現在のオオムギ」品種は、在来種から選ばれた品種に相当した。これらの品種は、その後、確立された純系(例えば多様な地理的起源の純系)の間での交配の連続サイクルに由来した。最終的には、これは、多くの、おそらくは全ての先進的農業において遺伝な基盤の著しい狭さをもたらした。在来種と比較すると、現在のオオムギ品種は、多数の改良された性質を有する(Nevo,1992およびvon Bothmerら、2003)。これらとしては、例えば以下:
(i) 殻付きおよび裸の穀粒
(ii) 種子休眠
(iii) 耐病性
(iv) リシンおよび他のアミノ酸の割合
(v) タンパク質含有量
(vi) 窒素含有量
(vii) 炭水化物組成
(viii)ホルデインパターン
が挙げられるが、これらに限定されない。
従って、本発明の1つの実施形態において、オオムギ植物は、対応する野生型オオムギ植物のLOX−1活性の1%未満を含有するように改変された最新のオオムギ品種である。従って、この実施形態においては、オオムギ植物はオオムギ在来種でないことが好ましい。
本発明は、野生型オオムギ植物のLOX−1活性を5%未満、好ましくは4%未満、より好ましくは3%未満、さらにより好ましくは2%未満、なおより好ましくは1%未満有するオオムギ植物およびその一部に関する。1%未満のLOX−1活性を有する本発明のオオムギ植物は、本明細書では「ヌル−LOX−1オオムギ植物」とも呼ばれる。
オオムギ植物は、任意の適当な形態であり得る。例えば、本発明のオオムギ植物は、生存オオムギ植物、乾燥植物、均質化された植物(例えば粉砕オオムギ穀粒)であり得る。この植物は成熟植物、胚、発芽穀粒、麦芽穀粒などであり得る。
オオムギ植物の一部は、植物の任意の適切な部分(例えば穀粒、胚、葉、茎、根、花またはこれらの部分)であり得る。部分は、例えば、穀粒、胚、葉、茎、根または花の切片であり得る。オオムギ植物の部分はまた、ホモジネートもしくは粉砕オオムギ植物または穀粒の部分であり得る。
本発明の1つの実施形態において、オオムギ植物の一部は、このオオムギ植物の細胞、好ましくはインビトロ組織培養で増殖させ得る生存細胞であり得る。
本発明の好ましい1つの実施形態において、ヌル−LOX−1オオムギ植物は、野生型オオムギ植物の活性の5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満、さらにより好ましくは0.1%未満を有する。この活性は、任意の適切な方法で測定され得るが、活性は以下の実施例1の方法を使用して測定することが好ましい。本発明の非常に好ましい実施形態において、ヌル−LOX−1オオムギ植物は、本質的にLOX−1活性を有さず、より好ましくは全くLOX−1活性を有さない。「本質的にLOX−1活性を有さない」とは、以下に記載のようなLOX−1活性のアッセイを使用してLOX−1活性が検出できないことを意味する。
ヌル−LOX−1オオムギのLOX−1活性がほとんどないことは、例えば、上記オオムギが正常に機能しないLOX−1タンパク質(例えば変異体LOX−1タンパク質)を含むという結果であり得る。しかし、ヌル−LOX−1オオムギは、野生型オオムギ植物に比べて、LOX−1タンパク質をごく少量しか有さないかまたはより好ましくはLOX−1タンパク質を有さない(例えばLOX−1タンパク質を5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.1%未満有する)。より好ましくは、ヌル−LOX−1オオムギは、本質的にLOX−1タンパク質を有さず、最も好ましくは全くLOX−1タンパク質を有していない。「本質的にLOX−1タンパク質がない」とは、検出可能なLOX−1タンパク質がないことを包含することを意味する。LOX−1タンパク質は当業者に知られている任意の適切な手段で検出され得るが、上記タンパク質はLOX−1タンパク質をLOX−1に特異的な抗体で検出する技術により検出することが好ましい。上記技術は、例えば、ウエスタンブロッティング法またはELISA法であり得る。上記特異的抗体は、モノクロナールまたはポリクロナールであり得るが、上記抗体はLOX−1タンパク質内の数種の異なるエピトープを認識するポリクロナールであることが好ましい。LOX−1タンパク質はまた、例えばLOX−1活性を測定する方法、LOX−1をコードする遺伝子中の変異を検出する方法、またはLOX−1遺伝子の発現を検出する方法によって間接的に検出され得る。LOX−1をコードする遺伝子の変異は、例えばこの遺伝子を配列決定することによって検出し得る。LOX−1に対する遺伝子の発現は、例えばノーザンブロッティングまたはRT−PCRにより検出され得る。本発明の1つの好ましい実施形態では、LOX−1タンパク質は、本明細書の実施例4に概説した方法を使用して検出される。
用語LOX−1タンパク質とは、配列番号3または配列番号7に示すようなオオムギの全長LOX−1タンパク質またはその機能的ホモログを包含することを意味する。LOX−1の活性部位は、LOX−1のC末端部分に位置する。具体的にはアミノ酸残基520−862またはLOX−1活性に関係のあるその部分に及ぶ領域である。従って、1つの実施形態では、ヌル−LOX−1オオムギは、好ましくはLOX−1のアミノ酸520−862のいくつかまたは全てを欠いているLOX−1の変異体型をコードする遺伝子を含む。上記変異体LOX−1はまた、野生型LOX−1に存在する他のアミノ酸残基を欠いていてもよい。
従って、ヌル−LOX−1オオムギは、LOX−1の短縮型(これは機能的でない、例えばN末端短縮型またはC末端短縮型)を含み得る。好ましくは、この短縮型は、LOX−1の800個以下、より好ましくは750個以下、さらにより好ましくは700個以下、なおより好ましくは690個以下、さらにより好ましくは680個以下、なおより好ましくは670個以下の連続するアミノ酸(例えば配列番号3のLOX−1の665個以下、例えば650個以下、例えば600個以下、例えば550個以下、例えば500個以下、例えば450個以下、例えば425個以下、例えば399個以下の連続するアミノ酸)を有する。好ましくは、上記短縮型は、LOX−1のN末端断片のみを有。従って、好ましくは、上記短縮型は、配列番号3の多くて800個、より好ましくは多くて750個、なおより好ましくは多くて700個、なおより好ましくは多くて690個、なおより好ましくは多くて680個、なおより好ましくは多くて670個、なおより好ましくは多くて665個のN末端アミノ酸(例えば配列番号3の665個以下、例えば650個以下、例えば600個以下、例えば多くとも550個、例えば多くとも500個、例えば多くとも450個、例えば多くとも425個、例えば多くとも399個のN末端アミノ酸)を有する。
1つの非常に好ましい実施形態では、上記短縮型は配列番号3のアミノ酸1−665からなり得る。
本発明の好ましい実施形態では、オオムギ植物は、LOX−1をコードするmRNA中に転写される遺伝子を有し、このmRNAは野生型LOX−1 mRNAの終止コドンの上流にナンセンスコドンまたは終止コドンを有する。このようなナンセンスコドンは、本明細書では中途ナンセンスコドンと呼ぶ。好ましくは、上記植物のLOX−1をコードするmRNA中に転写される全ての遺伝子は、中途ナンセンスコドンまたは終止コドンを有する。上記ナンセンスコドンまたは終止コドンは、開始コドンの下流に多くて800個、より好ましくは多くて750個、さらにより好ましくは多くて700個、なおより好ましくは多くて690個、さらにより好ましくは多くて680個、なおより好ましくは多くて670個、さらによりさらに好ましくは多くて665個のコドンで配置される。LOX−1をコードする野生型ゲノムDNA配列を、配列番号1または配列番号5に示す。
1つの好ましい実施形態では、オオムギ植物は、LOX−1をコードする遺伝子を有し、この遺伝子から転写されたmRNA前駆体は配列番号2に対応するリボ核酸配列を有する。
本発明の別の好ましい実施形態では、オオムギ植物は、変異体LOX−1をコードする遺伝子を有し、この遺伝子は、少なくとも1個、例えば1個、例えば2個、例えば3個のスプライス部位に少なくとも1個、例えば1個、例えば2個、例えば3個、例えば4個、例えば5個の変異を有する。好ましくは、この変異(1個または複数)は、上記少なくとも1個のスプライス部位が非機能的であることをもたらす。従って、このような遺伝子から転写されたmRNAは、異常なスプライシングに起因して異常である。従って、本発明のヌル−LOX−1オオムギ植物のLOX−1遺伝子から転写されたmRNAは、タンパク質をコードしないかまたはLOX−1のN−末端のみを有するタンパク質をコードすることが好ましい。上記タンパク質は、異常mRNAによってコードされる他の配列であって、LOX−1の遺伝子から誘導されていない配列を有し得る。これに関して、LOX−1のN−末端は、アミノ酸1〜アミノ酸Nを有し、Nは、2〜800の範囲、より好ましくは2〜750の範囲、なおより好ましくは2〜700の範囲、さらにより好ましくは2〜650の範囲、なおより好ましくは2〜600の範囲、なおより好ましくは2〜550の範囲、なおより好ましくは2〜500の範囲、なおより好ましくは2〜450の範囲、さらにより好ましくは2〜400の範囲、なおより好ましくは2〜378の範囲内の整数である。
本発明の1つの実施形態では、オオムギ植物は、変異体LOX−1をコードする遺伝子を有し、上記遺伝子は、配列番号3のアミノ酸1〜378およびLOX−1から誘導されていないさらなるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするmRNAを生じるスプライス部位中に変異を有する。好ましくは、上記変異体LOX−1は配列番号8に概要を示した配列からなる。
本発明の非常に好ましい実施形態では、ヌル−LOX−1オオムギ植物の変異体LOX−1をコードする遺伝子はナンセンス変異を有し、この変異は配列番号1の3574位のG→A置換に対応する。より好ましくは、ヌル−LOX−1オオムギ植物は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)寄託の受託番号PTA−5487を有するD112と命名される植物である。
本発明の別の非常に好ましい実施形態では、ヌル−LOX−1オオムギ植物のLOX−1をコードする遺伝子は、非機能的イントロン3供与スプライス部位を有する。従って、上記植物のLOX−1 mRNAは、配列番号8に含まれる、LOX−1のアミノ酸1−378およびイントロン3由来のさらなるアミノ酸を有するタンパク質をコードする。より好ましくは、ヌル−LOX−1オオムギ植物は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)寄託の受託番号PTA−5584を有するA618と命名される植物である。
本発明のオオムギ植物はまた、ヌル−LOXオオムギ植物の後代であり得る。従って、本発明のオオムギ植物は、ATCC寄託の受託番号PTA−5487を有するD112と命名される植物またはATCC寄託の受託番号PTA−5584を有するA618と命名される植物の後代であり得る。
本発明のオオムギ植物は、当業者に公知の任意の適当な方法で、好ましくは本明細書の以下に概説する方法の1つ(例えば、6.2節「ヌル−LOX−1オオムギの調製」を参照)で調製され得る。
本発明の1つの実施形態では、本発明のヌル−LOX−1オオムギ植物は、野生型オオムギに匹敵する植物成長生理機能および種子発生を有することが好ましい。従って、ヌル−LOX−1オオムギ植物は、草高、植物当たりの分げつの個数、開花の開始および/または穂状花序当たりの種子の数について野生型オオムギと同様であることが好ましい。
本発明の局面はまた、ヌル−LOX−1オオムギ植物を提供することであり、この植物は、以下:、
(i) 増強された耐病性を有すること;または
(ii) マイコトキシンの産生について低下した潜在能力を有すること;または
(iii)組織培養に使用される再生可能な細胞を有すること;または
(iv) 上記の特性(i)〜(iii)の任意の組み合わせ
を特徴とする。
本発明の1つの実施形態では、オオムギ植物は、ヌル−LOX−1オオムギ植物である(但し、このオオムギ植物はイントロン5のスプライス供与部位にGの変異を保有しない)。この実施形態では、本発明はまた、ヌル−LOX−1オオムギ植物またはその一部から調製される植物製品(例えば麦芽、麦芽汁、発酵飲料もしくは非発酵飲料、ビール、食品または飼料製品)に関する(但し、このオオムギ植物はイントロン5のスプライス供与部位にGの変異を保有しない)。上記Gは、例えば、配列番号1の位置2968のGに対応する。植物製品が所定の変異を有するオオムギ植物から調製されるか否かは、上記植物製品からDNAを単離し、上記変異の有無を当業者に公知の従来の方法により同定することによって決定し得る。DNAは、例えば、麦芽汁、ビールまたは別の飲料から凍結乾燥、水性緩衝液への再懸濁、クロロホルム/イソアミルアルコールを用いた抽出、次いでアルコール沈殿によって単離され得る。例えば、イントロン5のスプライス供与部位のGの変異は、HirotaらのWO2004/085652に記載の方法と同様の方法で同定され得る。
(6.2 ヌル−LOX−1オオムギの調製)
本発明のオオムギ植物は、当業者に公知の任意の適切な方法で調製され得る。好ましくは、本発明のオオムギ植物は、オオムギ植物またはその一部(例えばオオムギ穀粒)に変異を誘発させ、次いでオオムギ植物を5%未満のLOX−1活性を有する植物についてスクリーニングし、選択する工程を包含する方法によって作製される。興味深いことに、1つの局面の本発明は、例えばDoumaらのWO02/053721に記載のスクリーニング方法よりも著しく優れた新規かつ極めて効率的なスクリーニング方法に関する。上記の新規スクリーニング方法は、LOX−1活性を全くまたはほとんど有さないオオムギ植物を再現可能に同定すること可能にさせる。この新規スクリーニング方法は、変異を誘発させたオオムギから穀粒またはその一部(例えば胚)を得、この穀粒またはその一部のLOX−1活性を測定する工程を包含する。
従って、本発明の目的は、野生型オオムギ植物のLOX−1活性を5%未満有するオオムギ植物を作製する方法を提供することであって、この方法は、以下:
(i) 野生型オオムギ穀粒またはその一部のLOX−1活性を測定する工程;および
(ii) オオムギ植物および/またはオオムギ細胞および/またはオオムギ組織および/またはオオムギ穀粒および/またはオオムギ胚に変異を誘発させ、それによってM0世代のオオムギを得る工程;および
(iii)上記変異を誘発させたオオムギ植物、穀粒および/または胚を、少なくとも2世代栽培し、それによってMx(ここで、xは≧2の整数である)世代のオオムギ植物を得る工程;および
(iv) 上記Mx世代のオオムギ植物から穀粒またはその一部を得る工程;および
(v) 上記穀粒またはその一部においてLOX−1活性を測定する工程;および
(vi) 変異を誘発させた穀粒またはその一部のLOX−1活性が野生型穀粒またはその一部のLOX−1活性の5%未満である植物を選択する工程、
を包含し、それによって野生型オオムギ植物のLOX−1活性の5%未満を有するオオムギ植物を得る。
上記の工程(ii)は、オオムギ植物、オオムギ細胞、オオムギ組織、オオムギ穀粒およびオオムギ胚からなる群より選択される生体物質、好ましくはオオムギ植物、オオムギ穀粒およびオオムギ胚からなる群より選択される生体物質、より好ましくはオオムギ穀粒である生体物質に変異を誘発させることを包含し得る。変異を誘発させた穀粒のLOX−1活性は、野生型オオムギ穀粒のLOX−1活性の測定に使用される物質と同じ種類の物質を使用して測定することが好ましい、すなわち、工程(i)のオオムギ穀粒またはその一部は、工程(iv)に述べたものと同じ種類のオオムギ穀粒またはその一部であることが好ましい。例として、野生型オオムギのLOX−1活性が野生型オオムギの胚で測定される場合には、工程(iv)は変異を誘発させたオオムギ植物の胚のLOX−1活性を測定することを包含することが好ましい。
変異誘発は、任意の適切な方法で行い得る。1つの実施形態では、変異誘発は、オオムギ植物またはその一部(例えばオオムギ穀粒またはオオムギ由来の個々の細胞)を変異誘発剤と共にインキュベートすることによって行われる。上記変異誘発剤は当業者には公知であり、例えばアジ化ナトリウム(NaN3)、エチルメタンスルホネート(EMS)、アジドグリセロール(AG、3−アジド−1,2−プロパンジオール)、メチルニトロソ尿素(MNU)、およびマレイン酸ヒドラジド(MH)であるが、これらに限定されない。
別の実施形態では、変異誘発は、オオムギ植物またはその一部(例えば穀粒)に照射(例えばUVを)することによって行われる。本発明の好ましい実施形態では、変異誘発は、以下の6.4節「化学的変異誘発」に概説した方法のいずれかに従って行われる。適切な変異誘発プロトコールの非限定的な例を、実施例1に示す。
変異誘発は、M3オオムギをスクリーニングする場合には、所望の変異体の期待される頻度が種子10,000個当たり少なくとも0.5、例えば0.5〜5の範囲、例えば0.9〜2.3の範囲内にあるような方法で行われることが好ましい。
好ましい実施形態では、変異誘発は、オオムギ穀粒に対して行われる。変異を誘発させた穀粒は、M0世代と呼ばれる(図1Aも参照)。
変異誘発の後で、LOX−1活性を5%未満、好ましくは1%未満有するオオムギ植物またはその一部が選択される。選択は、当業者に公知の任意の適当な方法に従って行われ得る。好ましくは、選択は、試料をオオムギ植物(例えばオオムギ穀粒)から得、この試料中のLOX−1の活性を測定し、そして植物を選択する工程を包含し、この試料は野生型オオムギ植物のLOX−1活性を5%未満、好ましくは1%未満有する。
試料は上記植物の任意の適切な部分から採取され得る。しかし、好ましくは、試料は穀粒から採取され、より好ましくは試料は穀粒の胚組織から採取され、なおより好ましくは試料は穀粒の胚組織からなる。一般的に、試料は、LOX−1活性を測定する前に任意の適切な方法を使用してホモジナイズしなければならない。
好ましい実施形態では、試料はMx世代の穀粒から採取され、ここで、xは≧2の整数であり、好ましくはxは2〜10の範囲内の整数であり、より好ましくは3〜8の範囲内の整数である。非常に好ましい実施形態では、LOX−1活性は、M3穀粒または穀粒から誘導される試料について測定される。この実施形態では、変異誘発されたオオムギ穀粒(M0世代)を育ててオオムギ植物を得、これを交配させてM1穀粒を得ることが好ましい。この手順は、M3穀粒が入手できるまで反復される(図1Aも参照)。
LOX−1活性の測定は、任意の適切なアッセイを使用して、好ましくは以下に概説する方法の1つで実施され得る。特に、上記アッセイは、LOX−1によるリノール酸の9−HPODEへの二原子酸素添加をモニタリングすることが好ましい。従って、一般的に、アッセイは、以下:
(i) オオムギ穀粒またはその一部から調製した試料を提供する工程;および
(ii) リノール酸を提供する工程;および
(iii)上記試料を上記リノール酸と共にインキュベートする工程;および
(iv) リノール酸の9−HPODEへの二原子酸素添加を検出する工程;
を包含する。
検出は、直接的または間接的に行い得る。任意の適切な検出方法を本発明について使用し得る。本発明の1つの実施形態では、リノール酸ヒドロペルオキシドが検出される。リノール酸ヒドロペルオキシドは、例えば、上記リノール酸ヒドロペルオキシドの分解を検出可能な化合物を生じる酸化反応と結びつけることによって検出され得る。例えば、これは実施例1に記載のようにして行われ得る。別の実施形態では、9−HPODEは、例えば、分光光度法(例えば実施例9に記載されるHPLC)で直接的に検出される。本発明の1つの実施形態では、LOX−1活性は、オオムギ穀粒由来の試料中の9−HPODEの量を測定することによって簡単に決定される。これは、例えば、実施例9に概説したような当業者に公知の任意の適切な方法で行われ得る。
どのようなpHでLOX−1活性の測定を行うかが重要である。好ましくは、上記測定は、LOX−1の高い活性を可能にするが、LOX−2の低い活性のみを可能にするpHで行われる。従って、LOX活性の測定は、好ましくは3〜6.5の範囲内、例えば3〜4の範囲内、例えば4〜5の範囲内、例えば5〜6の範囲内、例えば6〜6.5の範囲内のpHで行うことが好ましい。好ましくは、pHは、約3、例えば約3.5、例えば約4、例えば約4.5、例えば約5、例えば約5.5、例えば約6、例えば約6.5、例えば約7である。また、上記試料は適当なpHで、例えば3〜6.5の範囲内、例えば3〜4の範囲内、例えば4〜5の範囲内、例えば5〜6の範囲内、例えば6〜6.5の範囲内のpHで調製されることが好ましい。好ましくは、pHは約3、例えば約3.5、例えば約4、例えば約4.5、例えば約5、例えば約5.5、例えば約6、例えば約6.5、例えば約7である。
本発明のオオムギ植物を選択するために好ましい方法は、以下の6.5節「オオムギ変異体の選択」で記載する。
LOX−1活性を測定するための方法の好ましい例を、実施例1に示す。
上記選択手順は、マイクロタイタープレートアッセイ手順または他の公知の多数の試料の迅速なスクリーニングを可能にする反復高速処理アッセイフォーマットに適合させ得る。少なくとも5,000個、例えば少なくとも7,500個、例えば少なくとも10,000個、例えば少なくとも15,000個の変異誘発オオムギ植物をLOX−1活性について分析することが好ましい。
5%未満のLOX−1活性を有する有用なオオムギ植物の選択の後に、必要に応じて1回以上のさらなるスクリーニングを行ってもよい。例えば、選択された変異体を、さらに繁殖させてもよいし、またその後の世代をLOX−1活性について再度スクリーニングしてもよい。
有用なオオムギ植物の選択の後に、これらの植物を育種(例えば従来の育種)に供し得る。育種の方法は、以下に記載する(6.6節「植物育種」および6.7節「オオムギの交配」)。
しかし、本発明のオオムギ植物は、他の方法、例えば、LOX−1の減少した転写および/または翻訳を生じる方法により調製してもよい。従って、ヌル−LOX−1オオムギ植物は、作動可能に連結された要素として、オオムギ植物の中で発現可能なプロモーター、DNA配列、および転写終結領域を有する核酸配列を用いてオオムギ植物を形質転換させることによって調製してもよい。ここで、このDNA配列の発現は、LOX−1をコードする遺伝子の発現を、以下:
(i) アンチセンスサイレンシング;または
(ii) コサプレッションサイレンシング;または
(iii)RNA干渉
によって減少させる。
1つの実施形態では、オオムギ植物は、オオムギ植物を、LOX−1をコードする遺伝子の転写または翻訳を減少することができる核酸配列(例えばアンチセンスLOX−1配列を有する核酸配列)を用いて形質転換させる工程を包含する方法によって調製される。上記アンチセンス配列は、例えば、配列番号1のアンチセンス配列、またはその断片であり得る。上記アンチセンス配列は、オオムギ植物中で発現される遺伝子由来のプロモーター配列に作動可能に連結されるべきである。このような方法の非限定的な例を以下の実施例16に概説する。
オオムギ植物は、任意の有用な方法(例えば、Agrobacterium tumefaciens媒介移入法または微粒子銃媒介DNA取り込み法)によって形質転換され得る。
ヌル−LOX−1オオムギ植物が、以下:
(i) オオムギ植物および/またはオオムギ穀粒および/またはオオムギ胚に変異を誘発させる工程;および
(ii) LOX−1に関する遺伝子内の変異の有無を測定する工程であって、ここで、上記変異は、配列番号3に示した配列の700未満の連続するアミノ酸を含むLOX−1のポリペプチド形態をコードするLOX−1の遺伝子を生じ、好ましくは上記ポリペプチドは配列番号3の多くとも700個のN末端アミノ酸を含むLOX−1のN末端断片である、工程;
(iii)上記変異を有する植物を選択し、それによって野生型オオムギ植物の5%未満のLOX−1活性を有するオオムギ植物を得る工程;
を包含する方法により調製されることもまた、本発明の範囲である。
より好ましくは、上記変異は、上記のN末端LOX−1断片のいずれかをコードするLOX−1の遺伝子を生じ得る。
上記変異は、任意の適切な方法(例えばLOX−1遺伝子の配列決定法または一塩基多型(SNP)分析)を使用して検出され得る。どのようにSNP分析を行うかについての一例を、以下の実施例13および実施例14に記載する。
一旦、LOX−1遺伝子中に特定の変異(例えば、上記変異のいずれか)を有するヌル−LOX−1オオムギ植物が作製されると、同じ変異を有するさらなるオオムギ植物は、当業者に周知の従来の育種法で生じさせ得る。例えば、上記ヌル−LOX−1オオムギ植物は、別のオオムギ品種バックグラウンドに戻し交配され得る。図9に、このような戻し交配のスキームの例を開示する。
(6.3 組成物)
本発明はまた、上記のオオムギ植物もしくはその一部を含有する組成物、または上記オオムギ植物もしくはその一部から調製される組成物に関する。上記オオムギ植物は5%未満、好ましくは1%未満のLOX−1活性を有するので、上記オオムギ植物もしくはその一部を含有する組成物、または上記オオムギ植物もしくはその一部から調製された組成物は、一般的に、非常に低いレベルのT2NおよびT2Nポテンシャルを含有する。ヌル−LOX−1オオムギを含有するかまたはそれから調製される有用な組成物の例を、以下に記載する。
上記組成物は、野生型オオムギ植物を含有するか野生型オオムギ植物から調製される同様の組成物と比べて、
(i) 30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、さらにより好ましくは5%未満、例えば2%未満、例えば1%未満のT2N;および/または
(ii)30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、さらにより好ましくは5%未満、例えば2%未満、例えば1%未満のT2Nポテンシャル;
を有することが好ましい。
本発明は、1つの局面において、野生型穀粒と比べて1%未満のLOX−1活性を有するオオムギ穀粒に関する。上記穀粒はLOX−1活性を有していないことが好ましい。本発明はまた、上記穀粒を含有する組成物および上記穀粒から調製される組成物に関する。
1つの局面では、本発明は、ヌル−LOX−1穀粒から麦芽製造によって調製される麦芽組成物に関する。用語「麦芽製造」は、(例えば、図11、工程2および3に例示するような)制御された環境条件下で行う浸漬されたオオムギ穀粒の発芽であると理解されるべきである。
麦芽製造は、オオムギ種子の制御された浸漬および発芽、その後の乾燥のプロセスである。この事象の順序は、種子の改変、すなわち主に死滅した胚乳細胞壁を脱重合させ、穀類栄養素を移動させるプロセスを生じる多数の酵素の合成に重要である。その後の乾燥プロセスにおいて、化学的褐変反応により香味および着色が生じる。麦芽の主な用途は飲料製造であるが、麦芽は他の工業プロセス(例えば、製パン産業において酵素源として、または食品産業において着香剤および着色剤として、例えば麦芽としてまたは麦芽粉として、あるいは間接的に麦芽シロップなどとして)において利用することもできる。
1つの局面では、本発明は、上記麦芽組成物の製造方法に関する。この方法は、好ましくは、以下:
(i) ヌル−LOX−1オオムギ穀粒を提供する工程;
(ii) 上記穀粒を浸漬する工程;
(iii)浸漬した穀粒を所定の条件下で発芽させる工程;
(iv) 上記の発芽させた穀粒を乾燥する工程;
を包含し、それによって低いLOX−1活性を有するかまたはLOX−1活性を全く有していない麦芽組成物を製造する。例えば、麦芽は、Hoseney(1994)に記載の方法のいずれかで製造し得る。しかし、任意の他の適切な麦芽製造方法、例えば特殊な麦芽の製造方法(例えば麦芽を焙煎する方法が挙げられるが、これに限定されない)も本発明と共に使用してもよい。1つの非限定的な例を実施例6に記載する。
別の局面では、本発明は、ヌル−LOX−1穀粒から調製された麦芽組成物から調製される麦芽汁組成物に関する。上記麦芽は、ヌル−LOX−1穀粒のみから調製されていてもよいしまたは他の穀粒を含む混合物から調製されていてもよい。本発明はまた、ヌル−LOX−1オオムギまたはその一部を単独であるいは他の成分と混合して使用して調製された麦芽汁組成物に関する。上記麦芽汁は、一次麦芽汁および/または二次麦芽汁および/またはさらなる麦芽汁であってもよい。一般的に、麦芽汁組成物は、高含有量のアミノ窒素および発酵可能な炭化水素(主としてマルトース)を有する。図11において、工程4および6は、麦芽からの麦芽汁の一般的な製造方法を説明する。一般的に、麦芽汁は、麦芽を水と共にインキュベートすることによって、すなわちマッシングによって調製される。マッシングの間に、麦芽/水の組成物は、さらなる炭水化物に富む組成物(例えばオオムギ添加物、トウモロコシ添加物またはコメ添加物)を補充されてもよい。麦芽化されていない穀物添加物は、通常は活性酵素を含有しておらず、従って麦芽または外因性酵素に応じて糖の変換に必要な酵素を提供する。
一般的に、麦芽汁製造プロセスの最初の工程は、水を、マッシングの間に穀類の粒に接近させ得ることを目的とした麦芽の粉砕であり、これは基本的には基質の酵素解重合を伴った麦芽製造プロセスの拡張である。マッシングの間に、粉砕された麦芽は、液体部分(例えば水)と共にインキュベートされる。その温度は、一定に保たれる(等温でのマッシング)かまたは徐々に上げられる。いずれの場合にも、麦芽製造およびマッシング工程で製造された可溶性物質は、上記液体画分に抽出され、その後に濾過により麦芽汁と、使用済み種子と呼ばれる残留固体粒子とに分離される。この麦芽汁はまた、一次麦芽汁とも呼ばれる。濾過後に、二次麦芽汁が得られる。さらなる麦芽汁は、上記手順を反復することによって調製してもよい。麦芽汁を調製するのに適当な手順の非限定的な例は、Hoseney(前出)に記載されている。
麦芽汁組成物はまた、ヌル−LOX−1オオムギ植物またはその一部(例えば麦芽化されていないヌル−LOX−1植物またはその一部)を、1種以上の適当な酵素、例えば酵素組成物または酵素混合組成物(例えばUltrafloまたはCereflo(Novozymes))と共にインキュベートすることによって調製され得る。麦芽汁組成物はまた、麦芽および麦芽化されていないオオムギ植物またはその一部の混合物を使用して、必要に応じて上記調製中に1種以上の適当な酵素を加えて調製され得る。
本発明はまた、ヌル−LOX−1オオムギ植物またはその一部を含有する食品組成物、飼料組成物、および芳香原料組成物に関する。食品組成物は、例えば、麦芽化されたオオムギ穀粒および麦芽化されていないオオムギ穀粒、オオムギ粗びき粉、パン、ポリッジ、オオムギを含有する穀物混合物、健康製品(例えばオオムギ、オオムギシロップを含有する飲料)、およびフレーク化、粉砕化または押出し成形したオオムギ組成物であり得るが、これらに限定されない。飼料組成物はとしては、例えば、オオムギ穀粒および/または粗びき粉を含有する組成物が挙げられる。芳香原料組成物を、以下に記載する。
本発明はまた本発明の組成物の混合物に関する。例えば、本発明は、1つの局面では、(i)オオムギ植物またはその一部を含有し、野生型オオムギ植物のLOX−1活性を5%未満有する組成物と、(ii)ヌル−LOX−1穀粒から調製される麦芽組成物との混合物によって調製される組成物に関する。
好ましい局面では、本発明は、飲料、より好ましくは麦芽から誘導される飲料、さらにより好ましくはアルコール飲料、例えば安定な感覚刺激品質を有するビールに関し、この飲料はヌル−LOX−1オオムギまたはその一部を使用して調製される。従って、発明の1つの好ましい実施形態では、飲料は好ましくはヌル−LOX−1オオムギまたはその一部あるいはこれらの抽出物の発酵によって(例えばヌル−LOX−1オオムギ単独、または他の成分との組み合わせから製造される麦芽を使用して製造される麦芽汁の発酵によって)調製される。
しかし、本発明の他の実施形態では、上記飲料は非発酵飲料(例えば麦芽汁)である。上記飲料が麦芽化されていないオオムギ植物またはその一部から調製され得ることも、本発明の範囲内に包含される。
しかし、好ましくは、上記飲料は、ヌル−LOX−1オオムギ穀粒から調製される麦芽組成物から調製される。より好ましくは、上記飲料はビールである。これは、当業者に公知の任意の種類のビールであり得る。1つの実施形態では、上記ビールは、例えばラガービールである。上記ビールは、好ましくは発芽ヌル−LOX−1オオムギを含有する麦芽組成物を使用して醸造される。しかし、麦芽組成物はまた、他の成分、例えば他の発芽穀類または未発芽穀類(例えば野生型オオムギ、ヌル−LOX−1オオムギ、コムギおよび/またはライムギ)、あるいは糖類または麦芽化されているかもしくは麦芽化されていない原料から誘導される組成物(例えばシロップ組成物)を含有する未発芽原料を含有し得る。
「感覚刺激品質」とは、嗅覚および味覚に訴える特性を意味する。この特性は、例えば、訓練された味覚感応評価集団によって分析される。好ましくは、上記の訓練された味覚感応評価集団は、アルデヒド異臭、例えばT2Nの認識について特別に訓練される。一般的に、上記味覚感応評価集団は、3〜30名の範囲内、例えば5〜15名の範囲内からなる。上記味覚感応評価集団は、種々の香味、例えば異臭、例えば紙臭(papery flavor)、酸化臭、熟成臭およびパン臭の存在を評価し得る。飲料の「感覚刺激品質」を調べる方法は、以下の実施例6に記載される。好ましい実施形態では、安定な感覚刺激品質は、少なくとも部分的にはT2NまたはT2Nポテンシャルの生成が少ないという結果である。
従って、本発明の目的は、オオムギ植物を使用して製造され、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも2週間、さらに好ましくは少なくとも3週間、さらにより好ましくは少なくとも4週間、例えば1〜3ヶ月の範囲、例えば3〜6ヶ月の範囲、例えば6〜12ヶ月の範囲、例えば1年を越える貯蔵の後に、野生型オオムギから調製される飲料と比べて、T2Nおよび/またはT2Nポテンシャルを50%未満、好ましくは40%未満、さらに好ましくは35%未満、例えば30%未満、例えば20%未満、例えば10%未満、例えば好ましくは5%未満、例えば2%未満、例えば1%未満含有することが好ましい飲料(例えばビール)を提供することにある。貯蔵は、15℃〜40℃の範囲の温度、好ましくは30℃〜37℃の範囲の温度、さらに好ましくは37℃で行われる。本発明の飲料は、15℃〜40℃の範囲内の温度、好ましくは30℃〜37℃の範囲内の温度、さらに好ましくは37℃で、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも2週間、さらに好ましくは少なくとも3週間、さらにより好ましくは少なくとも4週間、例えば1〜3ヶ月の範囲、例えば3〜6ヶ月の範囲、例えば6〜12ヶ月の範囲、例えば1年を越えて貯蔵した後に、遊離T2Nを多くて0.07ppb(パーツ パー ビリオン)、好ましくは多くて0.06ppb、さらに好ましくは多くて0.05ppb、さらにより好ましくは多くて0.04ppb、例えば多くて0.03ppb含有することが好ましい。好ましくは、上記飲料はまた、1〜10ppm(パーツ パー ミリオン)の範囲内の亜硫酸塩、さらに好ましくは2〜8ppmの範囲内、さらに好ましくは3〜7ppmの範囲、さらにより好ましくは4〜6ppmの範囲内の亜硫酸塩を含有する。1つの好ましい実施形態では、本発明の飲料は、37℃で2週間貯蔵した後に、遊離T2Nを多くて0.04ppb、さらに好ましくは多くて0.03ppb、例えば多くて0.025ppb含有する。本発明の別の好ましい実施形態では、本発明の飲料は、4〜6ppmの範囲の亜硫酸塩の存在下に37℃で4週間貯蔵した後に、遊離T2Nを多くて0.07ppb(パーツ パー ビリオン)、好ましくは多くて0.06ppb、さらに好ましくは多くて0.05ppb、さらにより好ましくは多くて0.04ppb、例えば多くて0.03ppb含有する。
本発明の飲料は、15〜25℃の範囲内で、例えば約20℃で少なくとも10ヶ月間貯蔵した後に、ヌル−LOX−1オオムギ以外の異なるオオムギから調製された類似の飲料と比べて紙臭が少ない。好ましくは、上記の紙臭は、訓練された香味感応評価集団によって評価されるように、90%未満、さらに好ましくは80%未満、例えば70%未満である。
1つの実施形態では、本発明は、低レベルのある種のトリヒドロキシオクタデセン酸を有する飲料(例えばビール)、特に低レベルの9,12,13−THOEを有する飲料に関する。トリヒドロキシオクタデセン酸は、苦味を有する(BaurおよびGrosch,1977ならびにBaurら,1977)ので好ましくない。
従って、9,12,13−THOEのレベルはできる限り低い、好ましくは1.3ppmよりも低い、例えば1ppmよりも低いことが望ましい。しかし、麦芽から誘導される飲料(例えばビール)中の9,12,13−THOEの全濃度はまた、上記の特定の飲料の調製に使用される麦芽の量に依存する。従って、一般的に、強いビールは、より軽いビールよりも多い9,12,13−THOEを含有し、そして9,12,13−THOEのさらに高い全体レベルは、強いビールでは受容可能である。従って本発明の飲料は、同じ種類の標準的ビールよりも少ないレベルの9,12,13−THOEを含有することが好ましい。このような飲料は、上記飲料の調製にヌル−LOX−1オオムギを使用することによって得られ得る。従って、本発明の好ましい飲料は、上記飲料の調製に使用される麦芽の量を補正する内部標準に比べて低い割合の9,12,13−THOEを含有する。上記標準は、例えば、別のトリヒドロキシオクタデセン酸であり得る。
従って、種々のトリヒドロキシオクタデセン酸(THA)の割合が特定の範囲内で保たれることが、飲料(例えば、ビール)の質にとって重要である。意外にも、低レベルのT2NであるLOX−1経路の生成物(図1Bを参照のこと)に加えて、本発明のヌル−LOX−1オオムギから調製される飲料はまた、極めて少ないレベルの9,12,13−THOE(図1Cを参照のこと)を有し、従って、9,10,13−THAに対して極めて低い比率の9,12,13−THAを有する。従って、1つの局面では、本発明は、安定な感覚刺激品質を有する飲料(例えば、ビール)に関し、この場合の上記飲料はオオムギ植物またはその一部、好ましくはヌル−LOX−1オオムギを使用して製造され、そして上記飲料中の9,10,13−THAに対する9,12,13−THAの比率は多くて1.8、好ましくは多くて1.7、さらに好ましくは多くて1.6、さらにより好ましくは多くて1.5、さらにより好ましくは多くて1.4である。従って、上記の比率は0〜1.8の範囲(好ましくは、0〜1.6の範囲、例えば0〜1.4の範囲)内にあることが極めて好ましい。1つの実施形態では、上記比率は約1.3である。飲料中の9,12,13−THOEと9,10,13−THOEの量は、標準法(例えば、Hamber,1991に記載のように例えばガスクロマトグラフィー−質量分析で測定され得る。
好ましくは、上記THAは、リノール酸転化のオキシリピン(oxylipin)である。興味深いことには、このようなTHA比率を有する飲料は、本発明のオオムギ植物を使用して調製され得る。好ましくは、上記飲料は、ヌル−LOX−1オオムギ以外のオオムギを使用せずに、例えばヌル−LOX−1オオムギから調製される麦芽以外の他の麦芽を使用せずに調製される。本発明の1つの好ましい実施形態では、飲料は、
(i)上記の9,10,13−THAに対する9,12,13−THAの比率;および
(ii)上記の貯蔵後の遊離T2Nのレベル
を含む。
1つの実施形態では、本発明は、同様の従来の飲料と比べて改良された泡安定性を有する飲料(例えば、ビール)に関する。このような飲料は、例えばヌル−LOX−1オオムギまたはその部分、例えば麦芽から調製される。泡安定性は、例えば、Brautechnische Analysenmetoden,2002に記載のようにして測定され得る。
本発明はまた、上記飲料の製造方法に関する。この方法は、好ましくは、
(i)発芽ヌル−LOX−1穀粒を含有する麦芽組成物を提供する工程;
(ii)上記麦芽組成物を飲料に加工する工程;
を包含し、それによって安定な感覚刺激品質を有する飲料を得る工程からなる。
1つの好ましい実施形態では、飲料はビールである。この場合に、加工工程は、好ましくは、上記麦芽組成物から麦芽汁を、例えば上記の方法のいずれかによって製造し調製する工程、および上記麦芽汁を発酵させる工程を包含する。
一般論として、アルコール飲料、例えばビールは、麦芽化されたおよび/または麦芽化されていないオオムギ穀類から製造され得る。麦芽は、ホップおよび酵母に加えて、ビールの香味または色に寄与する。さらに、麦芽は、醗酵性の糖および酵素の供給源として機能する。ビール製造の一般的なプロセスの概略図を図11に示す。一方、麦芽製造および醸造に適した方法の例の詳細な説明は、例えばHoseney(前出)による最近の刊行物に見出され得る。オオムギ、麦芽およびビール製品の多数の規則的に更新される分析方法が利用できる〔例えば、以下に限定されないがAmerican Association of Cereal Chemist(1995); American Society of Brewing Chemists(1992); European Brewery Convention(1998);Institute of Brewing(1997)〕。最も重要な変化は、地元の顧客の嗜好に関する点を除けば、多数の具体的手順が所定のビール醸造に用いられることが認められる。このようなビールの製造方法が本発明について使用され得る。1つの非限定的な例が実施例6に記載される。
上記飲料、例えばビール、麦芽飲料または非発酵麦芽汁用の麦芽組成物は、例えば上記の方法のいずれかの方法で得ることが可能である。麦芽汁は、上記の上記麦芽組成物から調製され得る。
麦芽汁からビールを製造する最初の工程は、好ましくは上記麦芽汁を煮沸する工程を伴う。煮沸中に、その他の成分(例えば、典型的な苦味と芳香性ビール特性とを提供するホップ)が、添加され得る。麦芽汁の煮沸はまた、ポリフェノールと変性タンパク質との間で凝集を生じ、これは主としてその後の麦芽汁冷却の工程の間に沈殿する。冷却された後に、麦芽汁は、酵母を入れた醗酵タンクに移される。好ましくは、上記酵母は、ビール醸造酵母、Saccharomyces carlsbergensisである。麦芽汁は、任意の適当な期間(一般的に、1日〜100日の範囲内の期間)醗酵される。数日の長さの醗酵中に、糖が、ある種の香味物質の発生と同時にアルコールとCO2とに転化される。
その後に、ビールはさらに処理され得る。一般的に、ビールは冷却される。ビールはまた、濾過されてもよいし、そして/または熟成(lager)(心地よい香りと酵母の少ない香味を発生するプロセス)させてもよい。最後に、ビールは包装(例えば、瓶詰めまたは缶詰め)される前に低温殺菌されてもよいし、または濾過されていてもよい。
ビール製造の分野でなされている進歩にもかかわらず、ビール中のT2N、その前駆物質、およびT2Nポテンシャルのレベルを減らすことは有益である。従って、少ない異臭により完成ビールに寄与する新規な原料、特にオオムギおよび麦芽に対する要求が未だに存在する。従って、本発明の目的は、このようなオオムギおよび麦芽を提供することにある。
(6.4 化学的変異誘発)
1つの局面では、本発明は、少なくとも部分的に、オオムギ穀粒の化学的変異誘発(ランダムに変異を誘発させることが知られている方法)の使用に基づいている。オオムギの変異誘発は、いずれの変異誘発化学物質を使用して行ってもよいが、好ましくは穀粒をNaN3で処理し、生存している穀粒を発芽させ、次いで子孫植物を分析することによって行われる。変異を誘発させた穀粒から成長する植物世代(M0と呼ばれる)は、任意の所定の変異について異型接合キメラを含有する。自家受粉後に収集された後代は、M1世代と呼ばれ、所定の変異について異型接合体と同型接合体の両方を分離する(図1Aおよび図9を参照のこと)。
穀粒をNaN3で処理することは、単一の細胞を処理することと等しくはない。なぜならば、処理後の穀粒がある種の非変異体細胞およびDNA変異を有する種々の細胞を含有するからである。生殖細胞系をもたらさない細胞系の変異が消滅するから、目的は、M1世代の発生に寄与する再生組織に成長する数個の細胞に対する変異原を標的とすることである。
全体的変異効率を評価するために、アルビノキメラおよびアルビノ植物の数が、世代M0およびM1それぞれにおいて数えられた。変異体の数を生存植物の関数として記録すると、変異効率について評価が得られ、一方、変異体の数を処理した種子の関数として記録して変異効率と穀粒の死滅の両方の組み合わせを評価する。
細胞は、おそらくは損傷を与える変異の効果を抑えるために、遺伝子発現の実質的に全ての段階で品質保証メカニズムを有することが注意されるべきである。真核生物において1つのよく研究された例は、ナンセンス介在mRNA崩壊(NMDと表される)であり、これは潜在的に有害な早期に切断されたタンパク質の合成を抑制する(MaquatおよびCarmichael、2001)。NMDにおいては、終止コドンは下流の不安定要素に対するその位置により未成熟と同定される。Saccharomyces cerevisiaeにおいて、これらは大まかに規定されたmRNA配列であり、そして哺乳動物細胞では、これらはプレmRNAスプライシング中にエキソン−エキソン接合部に置かれるタンパク質複合体である。これらが生成するナンセンスmRNAおよびタンパク質の分解がどのように調整されるかは、将来の研究の領域である。
未成熟終止(ナンセンス)コドン(PTC)を生じる変異は、ある場合には、原因となる変異をスキップする交互にスプライスされた転写産物のレベルを増やし、それによって潜在的にタンパク質機能を確保する(MendellおよびDietz、2001)。翻訳およびRNAスプライシングは種々の細胞内コンパートメントで生じると考えられることから、哺乳動物細胞においてスプライシングエンハンサーの破壊に関係なく機能するナンセンスコドン特異的mRNA上方調節メカニズムを見出すことは逆説的であった(Wangら,2002)。しかし、このようなメカニズムは、本発明のオオムギ植物でも、その他の植物でも認められなかった。
このような現象が目的の新しい形質を同定するためにスクリーニングされる選択すべき穀粒または穀類の数を高めることから、NMD、PCTなどは植物育種との関連で特に興味深い。
(6.5 オオムギの変異体の選択)
本発明の1つの局面は、LOX−2由来の活性を弱めるLOX−1活性のスクリーニング条件を提供することである。この方法は、スクリーニングすべきオオムギ組織の性質および反応条件が酵素LOX−1由来のLOX活性を高めかつ酵素LOX−2由来のLOX活性を弱めることができるという驚くべき知見に基づいている。Doumaらの国際公開第WO02/053721A1号として公開されたPCT出願第PCT/IB01/00207号に詳述されているような低LOX変異体のスクリーニングは、pH7.5での酵素活性の測定についてオオムギ葉頂のタンパク質様抽出物を利用したが、本明細書では再現可能にヌル−LOXオオムギ変異体を同定することを可能にする都合のよいスクリーニングパラメーターを詳述する。第1に、LOX−1活性をスクリーニングする場合には、オオムギ植物の特異組織を使用することが重要である。好ましくは、上記組織は、オオムギ穀粒、さらに好ましくはオオムギ穀粒の胚を含む。一般的に、このスクリーニングは、上記組織の抽出物、すなわちオオムギの穀粒またはオオムギ胚の抽出物について行われる。さらに好ましくは、LOX−1活性測定用の抽出物は、乾燥オオムギ穀粒のホモジナイズ胚組織を含むか、または最も好ましくはそれのみからなる。このようにして、LOX−2由来の限界活性(marginal activity)のみが活性測定に寄与する。第2に、LOX−1活性のアッセイは、アレンオキシドシンターゼ酵素を不活性化することが好ましいpH、従ってHPODEを良好な収率で生成するpHで行われる。
(6.6 植物育種)
本発明の1つの実施形態では、その目的はヌル−LOX−1形質を含有する作物学的に有用なオオムギ植物を提供することにある。作物の発育は、新しい特性の導入で開始するだけである長期にわたるプロセスとしてみなされ得る。植物育種家の見方から、この工程は、ほとんどの場合、現在市販の品種よりも農業形質についてあまり望ましくない全体的プロフィールを有する植物をもたらす。
ヌル−LOX−1形質に加えて、市販の麦芽用オオムギ品種を生成する技術で考慮されるべき他の重要な因子、例えば穀粒収量、穀粒サイズおよび麦芽製造性能に関連するその他のパラメーターが存在する。多数の(全部ではないが)このような特性は遺伝子制御下にあることが明らかにされていることから、本明細書に開示されるヌル−LOX−1オオムギ植物との交配から得られる最新の同型接合の高収量麦芽製造用品種を提供することが極めて望ましい。このようなオオムギ植物の穀粒は、リノール酸の9−HPODEへの転化について限界容量を全くもたないかまたは僅かしかもたない新規な優れた原料を提供する。従って、オオムギ栽培者は、LOX−1機能喪失型を有する優れた品種をもたらす形質を有するオオムギ植物を選択し、育てなければならない。あるいは、オオムギ栽培者は、更なる変異誘発がヌル−LOX−1オオムギから誘導される新規品種を作り出すために本発明の植物を利用し得る。
本発明のオオムギ植物は、任意の適当なスキームに従って育てられ得る。
(6.7 オオムギの交配)
本発明の別の目的は、ヌル−LOX−1形質を含有する作物学的に選りすぐりのオオムギ植物を提供することにある。従って、本発明はまた、第一の親オオムギ植物を第二の親オオムギ植物と交配する(この場合に、第一の植物または第二の植物はヌル−LOX−1オオムギである)ことによる新規ヌル−LOX−1オオムギ植物の製造方法に関する。さらに、第一の親オオムギ植物および第二の親オオムギ植物は、両方共にヌル−LOX−1オオムギ品種から生じ得る。従って、ヌル−LOX−1オオムギ品種を使用する任意のこのような方法:自家受粉、戻し交配、母集団に対する交配などは本発明の一部である。ヌル−LOX−1オオムギ品種を親として使用して作り出される全ての植物、例えばヌル−LOX−1オオムギ品種から誘導される品種から育てられる植物は、本発明の範囲内にある。ヌル−LOX−1オオムギはまた、外因性DNAがヌル−LOX−1植物または植物組織内に導入され、発現されるような場合において遺伝子形質転換に使用され得る。
戻し交配法は、変異したオオムギ植物のヌル−LOX特性を別の品種、例えば品種Scarlettまたは品種Jersey(これらは両方共に、同時期に存在する高収量の麦芽用オオムギ品種である)に導入するために本発明と共に使用され得る。標準戻し交配プロトコールにおいては、目的の元の品種(反復親)が、移入されるべき目的の単一遺伝子を有する二次品種(非反復親)に交配される。この交配から得られるヌル−LOX−1後代は、次いで反復親に再度交配される。但し、このプロセスはオオムギ植物が得られるまで反復され、非反復親のヌル−LOX−1形質に関する移入遺伝子構成に加えて、反復親によって特定される特徴の本質的に全部が転換植物において回復される。次いで、最後の戻し交配世代が、ヌル−LOX−1形質について純粋育種後代を得るために自家受粉される(図9を参照のこと)。
適当な反復親を持つことは、首尾よい戻し交配手順に重要であり、その目的はヌル−LOX−1形質を元の品種に導入することにある。これを達成するために、上記反復品種の遺伝子構成が、元の品種由来の形質の残りの本質的に全部を保持有しながら、非反復親由来の低LOX−1形質に関する遺伝子構成を用いて改変される。戻し交配法は、移入される特性が優性対立遺伝子である場合には簡略化されるが、劣性ヌル−LOX−1形質の特性を戻し交配することが可能であった。しかし、この場合には、所望の特性が移入されたか否かを評価するために生化学分析を導入することが必要であった。
植物育種のプロセスを促進する方法は、組織培養および再生技術を適用することによる生成変異体の初期増殖を包含する。従って、本発明の別の局面は、成長および分化するとヌル−LOX−1形質を有するオオムギ植物を生成する細胞を提供することにある。例えば、育種は、伝統的な交配、稔性葯(fertile anther)由来の植物を調製することまたは小胞子培養を使用することを含み得る。
(6.8 LOX酵素)
本発明の重要な目的は、活性LOX−1酵素を合成する能力を欠くオオムギ植物を提供することにある。LOXは、単一の非ヘム鉄因子を有する大きなモノマータンパク質である。http://www.rcsb.org/pdbでのタンパク質データバンクの調査により、数種のLOX酵素の構造がX線結晶学によって解明されていることが明らかにされた。上記タンパク質は、全体的な折りたたみおよびドメイン組織を共有し、タンパク質それぞれは小さなN末端8本鎖β−バレルドメインと、主として長いα−ヘリックスからなる大きなC末端ドメインを有する。鉄原子がC末端ドメインに配置されており、そこでは鉄原子がヒスチジン残基に、そして独特にはポリペプチドのカルボキシル末端(これはイソロイシンに起こる)に配位する。数個のチャンネルがタンパク質の表面から鉄部位の近くに通じ、これらのチャンネルはおそらくは基質、ポリ不飽和脂肪酸および分子状酸素が活性部位に接近することを与える。キュウリ脂質体LOXのリポソームおよび脂質体結合がN末端β−バレルの存在に依存し(Mayら,2000)かつダイズLOX−1がカルシウムイオンによって高められるプロセスにおいて二層膜に結合する(TatulianおよびSteczko,1998)ことから、LOX酵素が脂質二重層膜に結合すること、およびこれはおそらくはN末端ドメインの機能であることを推測することができる。LOX活性の決定方法、ならびにLOX触媒作用の直接生成物および下流生成物の単離、特徴付けおよび定量のための方法は、当業者には容易に利用可能である。
(6.9 LOX経路生成物)
種々の実施形態において、本発明は、アルケナール(alkenal)T2Nを形成する能力においてブロックされたオオムギ植物、またはその産物に関する。LOX酵素は、シス−1,シス−4ペンタジエン系を有するポリ不飽和脂肪酸の二原子酸素添加を触媒する。植物では、C18ポリ不飽和脂肪酸であるリノール酸(18:3Δ9,12)およびα−リノレン酸(18:3Δ9,12,15)が主要なLOX基質である。脂肪酸代謝のリポキシゲナーゼ経路は、対応する9−リノールおよび13−リノールまたはリノレン酸ヒドロペルオキシドを生成するアシル鎖のC−9位またはC−13位での分子状酸素の添加によって開始される。リノール酸を基質として用いると、9−ヒドロペルオキシオクタデカジエン酸または13−ヒドロペルオキシオクタデカジエン酸(HPODE)を形成し得、これに対して9−ヒドロペルオキシオクダデカトリエン酸または13−ヒドロペルオキシオクダデカトリエン酸(HPOTE)は基質がα−リノレン酸である場合の生成物である。LOX経路のヒドロペルオキシドリアーゼ分岐では、9−ヒドロペルオキシドと13−ヒドロペルオキシドの両方は、その後に短鎖オキソ酸およびアルデヒドに切断され得る(図1Bを参照のこと)。
9−HPODEが9,12,13−THOEにさらに代謝され得ることは注目に値する(図1Cを参照のこと)。THOEは苦味を有する(Baurら,1977;BaurおよびGrosch,1977)。従って、不活性化されたLOX−1を有する植物は、野生型植物で観察された比率と異なる比率でTHOEを形成する。
本発明は、LOX−1触媒作用の下流代謝産物の生成に影響を及ぼすことを包含することが認められる。上記下流代謝産物は、LOX−1−触媒反応の直接生成物としてではなく、その後の一連の反応物の反応の結果として生じ、LOX−1触媒作用の生成物を含む。これらの反応としては、自然発生の因子誘導または酵素触媒異性化が挙げられる。従って、これらの下流代謝産物の生成は、ヒドロペルオキシドリアーゼ(HPL)の発現を調節することによって影響され得る。
リノール酸の自動酸化はT2Nの形成に関連する前駆体分子を生成し得ると仮定すると、アルケナールのレベルをさらに減らすことが可能であり得る。具体的には、Δ9−デサチュラーゼ(ステアリン酸をオレイン酸に転化させる)またはΔ12−デサチュラーゼ(オレイン酸をリノール酸に転化させる)をコードする遺伝子のダウンレギュレーションは、関連酵素の下流の脂肪酸のレベルを減少させかつ中間体脂肪酸基質のレベルを増大させることによって、C18脂肪酸(ステアリン酸、オレイン酸およびリノール酸)の相対割合を変化させることが予想される。天然改変体または誘発した変異を利用する選択的育種を使用してナタネ作物中の改良された油の範囲を作り出す例としては、高ステアリン酸(HS)ダイズ(Graefら,1985)、高オレイン酸(HO)アブラナ(Auldら,1992)、ならびにOsorioら(1995)およびSoldatov(1976)によるHSおよびHOヒマワリそれぞれが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明がLOX−1作用の直接生成物ではないが、LOX経路の酵素の作用によって製造されるかまたは図1Bに示されるようなアルデヒドの異性化(例えば、(3Z)−ノネナールの(2E)−ノネナールへの異性化)によって製造されるアルデヒド製造を包含することは、特に重要である。本発明が、LOX経路の酵素によって製造されるアルデヒドに対応するおよび/または上記異性化の結果として製造されるアルデヒドに対応するこのようなアルコールの製造を包含することも認められる。上記アルコールは、典型的にはアルド−ケトレダクターゼスーパーファミリーの酵素メンバーの作用によって(例えば(2E)−ノネナールの(2E)−ノネノールへの酵素的転化)製造される(Srivastavaら,1999)によって製造される。
(6.10 T2Nポテンシャル)
本発明のさらに別の目的は、T2Nの形成、例えばT2N前駆物質およびアルデヒド付加物の形成に関連する分子を減らすかまたは排除することにある。ビールの香味熟成(staling)に関連したいくつかの化学反応は相変わらずつかみどころがないが、酸化プロセスはビール製品の熟成香味の発生の主原因として認められる(Narziss、1986;Ohtsuら,1986)。2節(「発明の背景」)で詳しく説明したように、熟成香味に寄与する主な分子がT2Nであることは周知である。このアルデヒドがビールの製造プロセスにおいて醗酵前の製造段階で生じると、このアルデヒドは、例えばアミノ酸およびタンパク質への結合による付加物の形成に関与し得(NoelおよびCollin、1995)(しかし、おそらくは核酸、グルタチオンなども)、その後に酵母を醗酵させることによる還元または酸化から保護され得る(Lermusieauら,1999)。しかし、T2N付加物もまた、醗酵中に亜硫酸塩と共に形成され得、アルデヒド臭を不活性化することができる(Nyborgら,前出)。
T2N付加物の大部分が完成ビールに移り、その中で遊離のT2Nが放出され(Liegeoisら,2002)、酸性および温度の条件がこのプロセスで重要な因子である。T2N付加物は、T2Nポテンシャル、すなわち規定された反応条件下(例えば、100℃、pH4.0で2時間のインキュベーション下)でT2N付加物の遊離T2Nへの分解についての尺度の一部を含有する。当業者は、例えば、Drostら(前出)によって記載されているように、どのようにビールが貯蔵中にT2Nを放出するかについての指標としてT2Nポテンシャルがどのように関連するかを知っている。
本発明のオオムギ穀粒は、9−HPODE(T2Nを生成するLOX経路分岐において前駆物質として正常に機能する分子)のLOX−1触媒による形成において制約される。従って、ヌル−LOXオオムギ穀粒を使用して製造されるビールは、極めて少ないレベルのT2Nを有するばかりではなく、極めて低いレベルのT2Nポテンシャルも有する。本発明の範囲には、T2Nを全く欠いているか、またはほんの僅かなレベルのT2Nポテンシャル(T2N付加物を含む)を含有するビールを生成するヌル−LOX−1オオムギ穀粒がある。その結果、ヌル−LOX−1オオムギを使用して製造されたビールの貯蔵中には、T2Nに特異的な異臭の発生は本質的にないか、またはごく僅かしかない。
(6.11 耐病性)
本発明はさらにまた、耐病性オオムギに関する。植物LOXは、まとめて、過敏性反応(HR)として知られている活性な耐病性メカニズムの発達、プログラムされた細胞死の形態の進行に関与すると考えられる(Rusterucciら,1999)。HRでは、感染事象の後に感染部位の周囲に局在する植物細胞の急速な細胞死が続き、これが壊死病斑の形成を招く。このようにして、病原体の蔓延が制限され、植物器官の残りに対するさらなる被害を防止する。いくつかの植物−病原体系では、HRは9−HPODEおよび9−HPOTEの生成について特異性を有するLOXの発現に関係する(Rusterucciら,前述;Jalloulら,2002)。なぜならば、おそらくはヒドロペルオキシ脂肪酸の大量生成が組織の壊死を与えるからである。
LOX−1をコードする遺伝子は主としてオオムギ穀粒で発現され、これに対して多数の別のLOX酵素は植物の葉で発現される。従って、9−HPODE、13−HPODE、9−HPOTEおよび13−HPODEの形成をもたらすLOX経路分岐は、オオムギの葉で機能し、オキシリピンの種々の組が別々の感染および損傷事象を反映する。同様の分子シナリオがジャガイモの葉について記載されている(Weberら,1999)。
天然に存在する揮発性アルデヒドは、植物のある種の病原体の成長を阻害し、また特定の病原体に対するある種の植物の自然抵抗性は揮発性アルデヒドの生成に起因すると考えられ得る(Croftら,1993;BleeおよびJoyard,1996;Vancanneytら,2001)。従って、野生型植物に比べて、本発明のヌル−LOX−1オオムギ植物の変性されたオキシリピンプロフィールは、病原体の存在、病原体の産物、または植物−病原体相互作用の産物を抑制、低減、改善または排除し得る。病原体の1つの非限定的な例は、アスペルギルス属である(以下を参照のこと)。
従って、1つの実施形態においては、本発明は、高められた耐病性を示すヌル−LOX−1オオムギ植物に関する。
(6.12 マイコトキシン)
本発明はまた、アスペルギルス属の定着に対して低下した感受性を有するオオムギの植物の使用を開示する。アスペルギルス属は、発癌性マイコトキシンであるアフラトキシンおよびステリグマトシスチンによる混入を生じる場合があるオオムギの穀粒の厄介なコロナイザー(colonizer)である。真菌によるアフラトキシン産生は高レベルの9−HPODE、9−HPOTE、13−HPODEおよび13−HPOTEによって影響を受けることから、Kellerの米国特許第5,942,661号は、真菌性マイコトキシンの産生を阻害するのに十分な量の上記ヒドロペルオキシ脂肪酸を産生するトランスジェニック作物植物を特許請求している。さらに、上記米国特許およびBurowらによるデータ(2000年)は、13−HPODEがアフラトキシンの産生を阻害し、これに対して9−HPODEはアフラトキシンの産生を促進することを明記している。
ヌル−LOX−1穀粒は活性LOX−1酵素がないことから、上記穀粒は野生型植物よりも幾分多いレベルの13−HPODEを含有するが、その遺伝的に改変されていない親植物の組織に比べてそれよりも少ないレベルの9−HPODEを含有する。従って、野生型穀粒と比べて、ヌル−LOX−1穀粒はアスペルギルス属が定着することを防ぐことができるか、またはアスペルギルス属による混入の後に低下したマイコトキシンレベルを示し得る。
従って、本発明は、野生型オオムギ植物と比べて低下したレベルのマイコトキシンを有するオオムギ植物に関する。
(6.13 芳香)
本発明の局面はまた、芳香剤およびグリーンノート(green note)化合物を製造するためのヌル−LOX−1オオムギの使用に関する。現在まで、オオムギにおけるLOX経路の種々の分岐に関連する大部分の研究努力は、13−HPOTEからジャスモン酸生成の局面(Turnerら,2002)、および上記の耐病性に集中している。別の商業目的のオオムギヒドロペルオキシ脂肪酸にはあまり注意が払われていない。しかし、ヌル−LOX−1オオムギ穀粒における活性LOX−1の完全な欠損が上記穀粒において13−HPODEおよび13−HPOTEを富ませることが予期されることは注目に値する。この新規な性質に基づいて、新規用途が、オオムギ作物の工業使用に関して、例えば短鎖脂肪族アルデヒドおよびアルコール(例えば、グリーンノート化合物 ヘキサナール/ヘキセナールおよびヘキサノール/ヘキセノール)の製造にあるように思われる。
グリーンノートの製造に関連するいくつかの局面は、論じられている特許明細書、例えば米国特許第6,008,034号、同第6,150,145号および同第6,274,358号(これらに限定されない)に開示されている。Haeuslerらの米国特許第6,008,034号には、グリーンノート化合物の製造用の特異的ヒドロペルオキシドリアーゼの使用が開示され、Haeuslerらの米国特許第6,150,145号およびHoltzらの米国特許第6,274,358号には、このようなプロセスのための標準植物物質の使用が記載されている。グリーンノート化合物の製造にヌル−LOX−1穀粒を使用することは、上記製造用の新規原料の使用を含む。本発明のヌル−LOX−1オオムギ穀粒由来の新規な原料は、本明細書の6.4〜6.7節に詳述したような変異誘発プロトコールの後に選択されている穀粒から誘導されることから、標準的な植物物質とみなすことはできない。ヌル−LOX−1オオムギ穀粒の工業使用は、上記のパラグラフに記載の特許明細書に列挙されている特許請求の範囲の範囲外であると考えられる。なぜならば、主として本発明のヌル−LOX−1穀粒から製造された新規な原料は、9−HPODEおよび9−HPOTE(すなわち、グリーンノートであるシス−3−ヘキセナールおよびシス−3−ヘキセノールの酵素的生成のための前駆体分子として機能することができない2種類のヒドロペルオキシ脂肪酸)のLOX−1によって触媒される生成によって課される正常限界(normal limitations)を大きく改善するという理由からである。
(6.14 LOXをコードする遺伝子の異種発現)
種々の実施形態において、本発明は、ヌル−LOX−1形質を有するトランスジェニックオオムギ植物に関する。植物の遺伝子工学の将来の進歩が、LOX−1の合成が抑制されたオオムギの植物の生成をもたらすと想像される。この概念は、異臭の生成を制御するための手段として提案されているが、このようなアプローチの結果は報告されていない(McElroyおよびJacobsen,1995)。本明細書に記載の発明は、このような今後の改良と共に使用して、組立てられることができるLOX−1配列に対するメッセンジャーRNA(mRNA)の少なくとも一部に相補的なアンチセンス構築物を有するアンチセンスLOX−1植物を生成させ得る。アンチセンスヌクレオチドは、例えば、トランスジェニックオオムギにおいてアンチセンスSnRK1プロテインキナーゼ配列の発現について記載されているアンチセンスヌクレオチド(Zhangら,2001)と同様に、対応するmRNAとハイブリダイズさせるために組立てられる。アンチセンス配列の改変は、該配列が対応するmRNAの発現にハイブリダイズしかつ対応するmRNAの発現を干渉する限りは、行い得る。このようにして、対応するアンチセンス配列に対して70%、好ましくは80%、さらに好ましくは85%の配列同一性を有するアンチセンス構築物を使用し得る。また、アンチセンスヌクレオチドの一部分は、標的遺伝子の発現を破壊させるのに使用し得る。一般に、少なくとも50個のヌクレオチド、100個のヌクレオチド、200個のヌクレオチドまたはそれ以上を有する配列を使用し得る。従って、本発明の適用は、従来の変異誘発法によって産生される植物だけに限定されない。
相同的組換えによる標的遺伝子置換は酵母では極めて容易であるが、大部分の多細胞真核生物でのその効率は未だ限定されており、かつこのようなオオムギ植物の生成、および一組のゲノム幅の遺伝子崩壊の発生を未だ考慮に入れていない(ParinovおよびSundaresan、2000)。遺伝子サイレンシングが、近年、いくつかの発生プロセスにおけるCaenorhabditis elegansゲノムの予測遺伝子の約86%の役割を研究するのに使用されている(Ashrafiら,2003;Kamathら,2003)。完全機能喪失型の特異的遺伝子(例えば、LOX−1をコードする遺伝子)を用いたオオムギの植物の生成については、RNA干渉(RNAi)法の使用は、いくつかの欠点を有する。これらの欠点としては、表現型の安定な遺伝率を欠くこと、可変レベルの残存遺伝子活性(Hannon,2002;Bargman,2001;Wesleyら,2001)、およびいくつかの非関連遺伝子を同時に沈黙させることができないこと(Kamathら,2000)が挙げられる。
本発明のヌクレオチド配列はまた、植物においてLOX酵素をコードする内因性遺伝子の発現を抑制するためにセンス配向で使用し得る。ヌクレオチド配列をセンス配向で使用して植物において遺伝子発現を抑制するための方法は、当該技術では公知である(例えば、JorgensenおよびNapoliに対する米国特許第5,283,184号を参照のこと)。この方法は、一般に、内因性遺伝子の転写産物に対応するヌクレオチド配列の少なくとも一部分に作動可能に連結された植物において発現を駆動するプロモーターを含有するDNA構築物を用いて植物を形質転換する工程を包含する。典型的には、このようなヌクレオチド配列は、内因性遺伝子の転写産物の配列と実質的な配列同一性、好ましくは約65%を越える配列同一性、さらに好ましくは約85%を越える配列同一性、最も好ましくは約95%を越える配列同一性を有する。
LOX酵素をコードする遺伝子の異種発現に関連する種々の局面がCahoonらの米国特許出願公開第2003/0074693A1号に記載および開示されていることは、注目に値する。上記特許出願明細書は、オオムギLOX酵素に関して従来技術を挙げ、多数のLOXをコードする遺伝子配列を開示しているが、LOX−1、LOX−2およびLOX−3をコードするオオムギ遺伝子のいずれも、Cahoonらの米国特許出願公開第2003/0074693A1号に挙げられた特許請求の範囲に含まれるのに十分な程度の同一性を示していない。
本発明は上記の記載に詳述されているが、本発明は例示でありかつその性質において限定されないと考えられ、本発明の精神の範囲に入る全ての変化および改変が保護されることが望ましいことが理解される。従って、ある種の変化および改変、例えば単一遺伝子の修飾および変異、体細胞繁殖系変異体、この品種の植物の大集団から選択される個々の改変体などは、添付の特許請求の範囲の範囲によってのみ限定されるような本発明の範囲内で実施され得ることは明らかである。本発明は、以下の具体的な実施例を参照してさらに説明される;これらの実施例は、本発明をさらに例証するために提供されるが、本発明の範囲を限定するとは解釈されない。
(6.15 LOXインヒビター)
本発明はまた、オオムギLOX−1の活性を低下または抑制する方法に関する。いくつかのLOXインヒビターは、酸化還元インヒビターおよび非酸化還元インヒビター、酸化防止剤、鉄キレート剤、イミダゾール含有化合物、ベンゾピラン誘導体などの分類から選択され得る。
従って、本発明は、1つの実施形態において、オオムギLOX(好ましくは、LOX−1)の活性を低下させる方法に関し、この方法は、
(i) オオムギ植物またはその一部あるいはオオムギから調製される植物製品を提供する工程、
(ii) LOXインヒビターを提供する工程、
(iii)上記オオムギ植物またはその一部あるいはオオムギから調製される植物製品を上記LOXインヒビターと共にインキュベートし、それによってオオムギLOX(好ましくは、LOX−1)の活性を低下させる工程
を包含する。
1つの実施形態では、上記植物製品は麦芽であり、そして上記LOXインヒビターはマッシングプロセス中に上記麦芽に加えられる。これは、好ましくは、上記マッシングプロセスで生成した麦芽汁中により少ないレベルのT2Nをもたらす。
上記オオムギ植物またはその一部、あるいはオオムギから調製される植物製品は、ヌル−LOX−1オオムギまたはその部分、あるいはヌル−LOX−1オオムギから調製される植物製品であり得る。しかし、他のオオムギは、好ましくは上記方法で使用され得る。
種々のLOXインヒビターの中で、酸化還元LOXインヒビターは、カテコールブタン誘導体、例えばJordanらの米国特許第5,008,294号、Allenの米国特許第4,708,964号およびJordanの米国特許第4,880,637号に記載のカテコールブタン誘導体のいずれか、例えばノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)またはその鏡像異性体の1つから選択され得る。
酸化防止剤LOXインヒビターは、フェノール、フラボノイドなどの中から都合よく選択される。酸化防止剤LOXインヒビターはまた、没食子酸塩(没食子酸オクチルが挙げられる)から選択され得る。化合物は、実際LOXインヒビターであることが、以下の実施例18に記載のアッセイによって確認され得る。
工業用には、没食子酸オクチルは、ダイズリポキシゲナーゼの公知のインヒビターであり(Haら,2004)、現在、食品において酸化防止添加剤として使用が認められているように、特に重要である(Aruomaら,1993)。この性質は、推定されるインヒビターの没食子酸オクチルの存在下での活性について精製オオムギLOX−1を試験することを興味深いものにする。興味深いことには、マッシングの間に没食子酸オクチルが存在することは、より少ないレベルのT2Nをもたらす。
従って、本発明の実施形態は、マッシュに加えた後に低減されたレベルのT2Nを与えるLOX−1のインヒビターおよびその使用を提供することである。
(7 実施例)
本明細書の実施例は、本発明の好ましい実施形態を例証し、かつ本発明に関する限定と考えられるべきではない。
特に示さない限りは、基本的な分子生物学技術をSambrookら,(1989)ならびにSambrookおよびRussell(2001)に記載のようにして核酸および細菌を操作するために行った。
記載を明確にするためにおよび限定を目的とせずに、この実施例の節を、以下の見出しに分けた:
(i) スクリーニングおよび変異体の選択
(ii) オオムギ変異体D112およびA618
(iii) オオムギの変異体D112およびA618の生理学的性質
(iv) 変異体D112およびA618はヌル−LOX−1植物である
(v) マッシング
(vi) 麦芽製造ならびに野生型オオムギおよび変異体オオムギの麦芽を使用するビール製造
(vii) ヌル−LOX−1麦芽のビール中のトリヒドロキシオクタデセン酸
(viii) ビール中のトリヒドロキシオクタデセン酸
(ix) オオムギにおけるLOX作用による酵素生成物の生化学的特徴
(x) オオムギ変異体D112のLOX−1の遺伝子を変異させる
(xi) オオムギ変異体A618のLOX−1の遺伝子を変異させる
(xii) LOX−1についての転写産物のRT−PCR検出
(xiii) D112変異を有するオオムギ変異体の遺伝子検出
(xiv) 試料混合物中の変異体の検出
(xv) 変異体D112の組換えLOX−1は不活性である
(xvi) トランスジェニックオオムギ植物
(xvii) グリーンノート化合物
(xviii)LOX−1インヒビター
(xix) 没食子酸オクチルを用いてマッシングする。
(実施例1)
(スクリーニングおよび変異体選択)
オオムギ変異誘発:品種Barke、Celeste、Lux、Prestige、SaloonおよびNerudaのオオムギ植物から採取した穀粒を、Kleinhofsら(1978年)によって提供された詳細に従って変異原NaN3と共に別々にインキュベートした。この手順は、オオムギゲノムDNAにおいて点変異を誘発させかつ変異を誘発したDNAによってコードされるこれらのタンパク質においてアミノ酸の置換または切断を与えることが知られていることから選択された。
本明細書の変異誘発実験では、上記方法は、M1世代の変異穀類を野外区画中で2つのその後の世代を経て繁殖させ、最終的にスクリーニングを目的とした高い割合の同型接合植物を得るために選択された(図1A)。得られたM3世代の変異体穀類は、穀類10,000個当たり0.9〜2.3の頻度で生じることが予想された(Kleinhofsら,前出)。M2穀類が、主としてこれらが比較的高い割合の異型接合点変異を含むという理由で選択されなかったことは、注目に値する。
スクリーニング:LOX−1活性を欠くM3変異体オオムギ穀類を検出するための迅速高性能スクリーニング手順を開発し、いくつかのLOX活性を含むことが知られている葉頂を使用する厄介なスクリーニング手順(Doumaらの国際公開第WO02/053721A1号として公開されたPCT出願第PCT/IB01/00207号に開示されている)を回避することが、目的であった。中心は、成熟オオムギ穀粒の胚(例えば、胚盤組織など胚)におけるLOX活性の測定に関するものであった。一般的に、アッセイ条件は、AnthonおよびBarrett(2001年)によって記載された条件と同様であった。アッセイは、リノール酸ヒドロペルオキシド(これは、ヘモグロビン触媒反応において3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンを3−(ジメチルアミノ)安息香酸と酸化的に結合し、分光光度法で測定することができる青色の形成をもたらす)のLOX触媒生成に基づいていた。
実際面で、1つのアッセイシリーズを、96個のオオムギ胚組織(例えば、胚盤)の微細粉末組成物への別個のホモジナイゼーションによって開始した。これら微細粉末組成物を氷冷保存プレート(ABgene)に移した。その1.2mlの96ウェルのそれぞれには円形5mmガラスビーズと200μlのH2Oを入れておいた。次いで、プレートを、27sec−1の振動数で振盪するために電気的に調節したMM300 laboratory mill(Retsch)中で35秒間インキュベートした。その後に、プレートをAllegra 6R Centrifuge(Beckman−Coulter)で、4,000rpmで4℃で15分間遠心分離して不溶物を沈降させ、その後にさらに処理するまで氷上で最大120分間保持した。
上記96ウェルプレートをBiomek2000 Laboratory Automaation Workstation(Beckman−Coulter)に移した。これは、AnthonおよびBarrett(前出)によって記載されているようなLOXアッセイに従って分注するためにプログラムされたものである。最終的に、96×26μl胚抽出物を標準96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc)に移し、次いで90μlの試薬A[12.5mM 3−(ジメチルアミノ)安息香酸、0.625mMリノール酸(実施例9に詳述したようにして調製した)]と、90μlの試薬B(0.25mM 3−メチル−2−ベンゾチアゾリンヒドラゾン、0.125mg/mlヘモグロビン)を加えた;試薬Aは、134mgの遊離酸に相当する155μlのリノール酸(Sigma、L−1376)と257μlのTween−20とを最初に混合し、次いでH2Oを加えて5mlの容量を得、次いで600μlの1M NaOHを加えることによって調製し、得られた溶液が透明になる場合にはさらにH2Oで20mlに調整した。プレートの96ウェルのそれぞれにおいてA595を、Flourostar Galaxy spectrophotometer(BMG Labtechnologies)を使用して測定した。この場合、ヒドロペルオキシド生成物の色の生成が、存在する全LOX活性の尺度である[従って、活性はA595単位(A595U)で示される]。
可能な変異体の同定:オオムギの品種Barke(合計2,160株に由来)、品種Celeste(2,867株)、品種Lux(2,625株)、品種Prestige(1,379株)、品種Saloon(1,743株)、および品種Neruda(3,780株)の穀類を、LOX活性について、野生型穀類と比べた場合に上記活性が大きく低下した穀類を同定することを目的としてスクリーニングした。全体で90個の可能な未精製(raw)変異体をM3世代において同定した[品種Barke(12株)、品種Celeste(38株)、品種Lux(9株)、品種Prestige(16株)、品種Saloon(12株)、および品種Neruda(3株)]。これらの変異体のそれぞれからの穀類を、M4世代まで繁殖させ、収穫し、次いできわめて低いLOX活性に関連した形質について再度スクリーニングした。最終的に、品種Barkeのわずか1つの株(変異体D112と表す)および品種Nerudaの1つの株(変異体A618と表す)が、上記の極めて低い全LOX活性を示すことを示した。
LOX活性の詳細な測定は、LOX活性がLOX−1によってほぼ例外なく付与されている成熟した休止穀類の抽出物を用いて行った(Schmittおよびvan Mechelen,1997)。変異体D112の乾燥成熟M3穀類の胚について、全LOX活性は、上記のように比色定量LOXアッセイによって測定した(図2;表1参照)ように、0.407±5.8%A595U/胚であり、これに対して品種Barkeの全LOX活性は1.245±7.6%A595U/胚であった。第2の組の実験では、変異体A618のM3世代の成熟乾燥穀類の胚抽出物のLOX活性は、0.221±2.6%A595U/胚であると認められ、これに対して野生型品種Nerudaの抽出物では0.721±3.6%A595U/胚が認められた(図3;表1)。
(実施例2)
(オオムギ変異体D112およびA618)
M4世代およびM5世代のヌル−LOX−1植物が対応する変異体表現型について同型接合性であるか否かを確認するために分析を行った。この種の分析は、M3世代の目的の変異の劣性性質または優性性質の決定に有用である。すなわち、M3世代の植物が優性変異について異種接合性であった場合には、その後の世代はその表現型について分離する。
全LOX活性をオオムギ変異体D112およびA618のM3、M4およびM5世代の胚で測定し、得られた活性を品種Barkeおよび品種Nerudaそれぞれから得られた胚の活性と比較した。LOX活性の測定は、本明細書の実施例1に記載の通りであった。実験の全てにおいて、品種Barkeの胚から得られた標準抽出物および品種Barkeの胚から得られた熱不活性化標準抽出物をコントロール試料として使用した。
変異体D112のM4世代の穀類の胚については、平均全LOX活性は0.334±1.5%A595U(n=12)であり、変異体D112のM5世代の穀類の胚の平均全LOX活性は0.294±4.1%A595U(n=90)であった。比較のために、M4世代およびM5世代の野生型品種Barkeの胚は、0.738±3.2%A595U(n=2)および0.963±7.5%A595U(n=90)それぞれを生じた(図4;図5;表1、実験1を参照のこと)。
オオムギ変異体A618のM4世代の胚は、0.222±2.1%A595U(n=4)の平均LOX活性を生じた。この実験の他の結果から、品種Nerudaの胚のLOX活性が0.684±5.8%A595U(n=90)であることが明らかにされた。結果を図6および表1、実験2に要約する。
要約すれば、実験データにより、変異体D112のM4世代およびM5世代の穀類が、極めて低い全LOX活性に特異的な遺伝形質について同型接合性であることが確認された。同じ性質は、変異体A618のM4世代の穀類について示された。
(実施例3)
(オオムギの変異体D112およびA618の生理学的性質)
温室での植物の繁殖:品種BarkeおよびD112変異体の穀類(M4世代およびM5世代)を発芽させ、相対湿度65%で12℃で20時間照明下の温室で育てた。変異体D112および野生型品種Barke植物の成育特性は、草丈、植物当たりの分げつの数、開花の開始および穂状花序当たりの穀類の数について同様であった。従って、変異体D112は野生型植物の生育生理機能を有すると結論付けることが可能なばかりではなく、正常な穀類発育も有すると結論付けることも可能である。
世代M4の変異体A618穀類および品種Nerudaの穀類を発芽させ、12℃および相対湿度65%で20時間/4時間の明/暗条件下の温室で育てた。変異体A618と品種Nerudaとを比較することによって、草丈、植物当たりの分げつの数、開花の開始および穂状花序当たりの穀類の数について差は認められなかった。しかし、変異体A618の背面側穀類は、異常穴様構造によって母品種Nerudaと異なっていた。要約すると、変異体A618は野生型様植物成育生理機能を示すが、異常な穀類生育を示すと結論付けることができる。
圃場条件下の変異体D112の作物学的性能:変異体D112と品種Barke植物とを、草高、出穂日、耐病性、倒伏、穂破損、成熟時間および収量に関して可能な相違を確認するために圃場試験で比較した(表2を参照のこと)。
試験は、圃場試験に関する標準手順に従って行った。従って、変異体D112および品種Barkeの等量の穀粒を、2箇所の7.88m2の区画に植えた。それぞれは3反復試験からなる。上記の特性に重点をおいた作物学的データの特徴を、成育期全体を通じて注意深く観察した。作物学的特性に関する相違は、変異体D112についても、品種Barkeについても観察されなかった。
(実施例4)
(変異体D112およびA618はヌル−LOX−1植物である)
タンパク質の分析:変異体D112およびA618の変異体表現型を特定するために以下の分析を行った。休眠オオムギ穀類から取り出した胚の抽出物のウェスタンブロット分析を行った。1つの胚を、乳鉢(matar)中で300μlの氷冷水に抽出し、抽出物を微小遠心管に移し、10,000×gで遠心分離した。10μlの粗製抽出物を含有する試料アリコートを、Laemmli(1970年)によって提供された記載に従ってドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で分離した。その後に、分離したタンパク質を、Towbinら(1979年)によって詳述されたような半乾燥ブロッテイングによりニトロセルロース膜に移した。得られたブロットを、LOX−1−特異的モノクロナール抗体5D2の1:500希釈物を用いてプローブし(Holtmanら,1996)、次いでアルカリ性ホスファターゼに連結されたヤギ抗マウス抗体と共にインキュベートし、Holtmanら(前出)によって記載されたようにしてアルカリ性ホスファターゼ基質ニトロブルーテトラゾリウムおよび5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−ホスフェートを用いて検出した。LOX−1は、品種Barkeの胚に抽出物中で5D2抗体によって認識され、上記タンパク質は品種Vintage由来のLOX−1のタンパク質と同様にSDS−PAGEで移動した。
免疫検出可能なLOX−1は、変異体D112の試料中に存在しなかったが、上記タンパク質は品種Barke、変異体株Gおよび品種Vintageの抽出物中に確認することができた。M4世代の品種Barkeおよび変異体D112後代株のウェスタン分析により、LOX−1タンパク質は品種Barkeの胚由来の穀類に存在したが、変異体D112の後代穀類のいずれにも存在しなかったことが明らかにされ(図7)、従ってヌル−LOX−1形質が遺伝学的に安定であることが確認された。得られたデータは、カイ二乗試験で測定されるように統計学的に有意であった(p<3.84)。
変異体A618および品種Nerudaを、上記のM3世代およびM4世代の胚中のLOX−1タンパク質について分析した。LOX−1タンパク質は、両方の世代の品種Nerudaの胚抽出物では検出できなかった。しかし、非常に弱いLOX−1タンパク質バンドが未精製変異体A618で観察され、後代株の胚でも観察された(図8)。これはおそらくは他のLOX酵素との交差反応のためであると思われる。
戻し交配:反復戻し交配を使用して、本明細書の品種Prestigeにおいて、ヌル−LOX−1表現型を変異体D112から反復親に移入した(図9参照)。戻し交配プログラムは、目的の形質に関する選択と組み合わせて、図9に例示するように計画した。その目的は、変異体D112のゲノムを反復親のゲノムと徐々に置換することにあった。このようにして、NaN3変異誘発処理中に変異体D112のゲノムに導入された他の可能な不都合な変異を排除し得る。
同型接合ヌル−LOX−1変異体D112(遺伝子型nnと表される)の品種Prestige(遺伝子型NNと表される)に対する一次戻し交配において、後代株は異型接合遺伝子型(遺伝子型Nnと表される)を含むことが予想された。低LOX表現型が、その劣性性質により、変異について異型接合性である株において検出を免れることは注目に値する。自家受粉後代植物は、標準メンデルパターンで、すなわち1NN:2Nn:1nnの比率で分離する植物の集団を生じることが予想された。ヌル−LOX−1遺伝子型を含みかつ一次戻し交配から得られる同型接合nn遺伝子型は、品種Prestigeの遺伝的背景の50%を含むことが期待された。10回の戻し交配の後に、反復親背のバックグラウンドは約99.9%に達することが予想された。
品種Prestigeおよびヌル−LOX−1変異体D112のオオムギ植物は、戻し交配プログラム全体を通して温室で繁殖させた。戻し交配後代穀類を、実施例1に記載のようにして、胚の抽出物中のLOX−1タンパク質の存在について分析した。一次および二次戻し交配世代の分離後代におけるヌル−LOX−1表現型の期待される頻度は、劣性変異について25%であった(図10)。LOX−1タンパク質バンドを欠くオオムギ変異体株の検出の基礎としてウェスタンブロット分析を使用すると、一次戻し交配世代の頻度は、12の戻し交配株の全体の中からの3株に対応していた。二次戻し交配世代では、28の戻し交配株の全体中からの9株がウェスタンブロット分析においてLOX−1タンパク質バンドを欠いていた(図10)。反復親バックグラウンドは二次戻し交配後代において約75%に達することから、LOX−1に関する変異遺伝子および対応するヌル−LOX−1表現型の同時遺伝は、これらの遺伝子連鎖について確認を与えた。カイ二乗試験により、観察データは統計学的に有意であると分類できることが明らかにされた。p値は低く(<3.84)、一次、二次、三次および四次の戻し交配世代について有意性を示す特性であった。
戻し交配プログラムにより、ヌル−LOX−1表現型を与える変異対立遺伝子が代替的な遺伝的バックグラウンドに移入することができることおよびメンデル型分離の後の劣性モノ階乗(monofactorial)様式で遺伝することが実証された。
(実施例5)
(マッシング)
麦芽汁の調製:新規オオムギ品種の性質を試験するために、麦芽試料25〜225gを製造した(図11を参照のこと)。外部攪拌機と、温度を十分に規定された勾配で温度勾配をつけることができるサーモスタットを備えた水浴とから構成される実験室用マッシュシステム(mashing system)を使用して、マッシング工程を小規模で行った。最終マッシュを、濾紙を使用して濾過した。麦芽汁煮沸を、実験室規模で加熱マントルおよび還流冷却管に接続した丸底フラスコを使用して行った。
(実施例6)
(麦芽製造ならびに野生型オオムギおよび変異体オオムギの麦芽を使用するビール製造)
品種Barkeおよび変異体D112のオオムギを、麦芽製造および醸造用の十分な穀類材料を得るために圃場で数シーズン繁殖させた。完成ビールのT2Nについての分析および感覚刺激分析により、変異体D112の麦芽を用いて醸造したビールの改善された香味安定性を実証した。
変異体D112および品種Barkeから得られた穀粒の麦芽製造:麦芽製造は20kg規模で麦芽製造室で次の通りに行った:変異体D112オオムギ穀類(2003年に収穫したもの)、品種Barke穀類(2002年に収穫したもの)。浸漬条件は:浸漬水中で16℃で8時間湿潤;14時間乾燥;8時間湿潤;10時間乾燥;4時間湿潤であった。麦芽製造条件は:18℃で12時間;16℃で24時間;14℃で24時間;12℃で60時間であった。乾燥条件は:60℃で12時間;68℃で3時間;74℃で4時間;80℃で3時間であった。
変異体D112および品種Barke麦芽から誘導された麦芽試料を使用する麦芽製造分析データを表3で比較する。結果は、変異体D112および品種Barkeの麦芽が麦芽規格を満たすことを実証しかつ麦芽が醸造に適していることを確認した。変異体D112から得られた麦芽において、品種Barkeの麦芽と比べると、約64%の低下に相当するT2Nレベルの著しい低下を観察した(表4)。
変異体D112および品種Barkeの麦芽を用いた醸造:醸造は、50リットル規模で行い、次の工程を包含した:(i)麦芽汁調製;(ii)麦芽汁分離;(iii)麦芽汁煮沸;(iv)醗酵;(v)貯酒(lagering);(vi)ブライトビール濾過;および(v)瓶詰め。麦芽汁を、変異体D112の麦芽、または品種Barkeの麦芽を使用して調製し、後者を比較試料として使用した。それぞれの醸造について、全体で13.5kgの麦芽を使用した。マッシング工程は、47℃で20分間、次いで18分の加熱であり、この温度を48℃から67℃に上げ;67℃で30分休止し;次いで72℃で5分間加熱し;72℃で15分休止し;78℃まで6分間加熱し;78℃で5分休止した。麦芽汁濾過および煮沸、ワールプール分離、醗酵、貯酒および緑色ガラス瓶への包装の醸造工程は、標準醸造実施の仕様に従った。全部で33リットルのビールを瓶詰めした。
香味安定性およびT2N分析:ビールを、上記の変異体D112および品種Barkeの麦芽を使用して製造した。新たに瓶詰めしたビールを5℃で貯蔵し、製造の2ヵ月以内に分析した。製造したてのビールと貯蔵ビールの香味安定性を、2種類異なる型のビール貯蔵条件の後に評価した。1つの実験系では、ビールを37℃で1〜4週間の強制熟成プロセスに供した。
ビール試料のT2Nレベルを、基本的にはGroenqvistら(1993年)によって記載されたように、O−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル)−ヒドロキシルアミンを用いたカルボニルの誘導体化の後に、質量分光分析検出器を備えるガスクロマトグラフィーで調べた。
訓練されたビール香味官能評価集団は、ビールの総合香味成績を評価した。試験は、ビール中の遊離T2Nを示すボール紙臭の検出を含んでいた。変異体D112および品種Barkeそれぞれの麦芽から誘導されたビールについて両方の種類の製造したてのビールが、同様のレベルの亜硫酸塩(すなわち、4ppmおよび5ppmの亜硫酸塩)を含有していたことは、注目に値する。
強制熟成:品種Barkeの麦芽から製造された瓶詰めビールと、変異体D112由来の麦芽から製造された瓶詰めビールとを調べ、図12Aおよび表5に示すように強制熟成中の遊離T2Nの発生に関する具体的なデータについて調べて比較した。両方のビールは、T2N発生の速度論の著しい相違によって区別し得ることが認められる。参照ビールは予期したように性能を発揮したが、変異体D112由来のビールでは予期しない、37℃で4週間にわたった0.01ppbに対応する著しく少ないT2Nの発生を認めた。
強制熟成実験は、上記2種類のビールの間の相違を強調した。すでに2.5週間後に、参照ビールのT2Nレベルは香味閾値レベルを越えており、これに対して変異体D112の麦芽を使用して製造したビールは、2〜3週間のインキュベーション後に0.025ppbのT2N濃度で横ばい状態であった。
風味および香味安定性に関して、香味専門家の評価集団は、ヌル−LOX−1オオムギ変異体D112の麦芽を使用して製造したビールを評価した。中心は37℃で強制熟成を行ったビール試料についてであった。香味評価集団は、製造したてのビールと強制熟成させたビール(37℃で1週間)の両方の種類について満足する香味プロフィールを認めた。しかし、紙臭についての評点は、ヌル−LOX変異体D112の麦芽を使用して製造したビールよりも参照ビールの方が高かった(表5)。すなわち参照ビールは上記の異臭についてより強い風味を有していた。一般に、香味官能評価集団は、ヌル−LOX−1変異体D112の麦芽から製造したビールの方を好んだ(香味許容評点、表5)。
20℃で12ヶ月間インキュベーションすると、専門家でありかつビールの異臭を味わうために訓練された10人のビールテイスターからなる官能評価集団は、ヌル−LOX−1変異体D112の麦芽から製造したビールとコントロール麦芽から製造したビールとを比較した。例えば“紙臭”、“酸化臭”、“熟成臭”、“パン臭”、“カラメル臭”、“焦げ臭”および“甘味臭”などのような風味特徴を含む全ての評価により、ヌル−LOX−1麦芽から作られたビールよりもコントロールビールにおいてより高いレベルの熟成特異的異臭が明らかにされた(図12B)。
また、0〜5の尺度での評価を使用することによって(この場合、高い値が好ましい)、一般的な香味許容評点は、コントロールビールおよびオオムギヌル−LOX−1変異体D112の麦芽を用いて製造したビールそれぞれについて1.0および2.0と判断された。
要約すれば、オオムギ変異体D112の麦芽から醸造したビールの改良された香味安定性は、主として37℃で貯蔵の後のビール中のT2Nのレベルが低いことに起因して、著しい。ヌル−LOX−1オオムギ麦芽の使用に焦点を合わせた醸造試験は、麦芽製造および醸造プロセス中のオオムギLOX−1作用が、T2Nの発生という熟成したビール中の主な異臭化合物について重要な決定因子を構成するという証拠を提供した。
(実施例7)
(ヌル−LOX−1麦芽のビール中のトリヒドロキシオクタデセン酸)
リノール酸から誘導されるビール特異的トリヒドロキシオクタデセン酸(THA;THOEとも略記し得る)は、30年前に記載された(Drostら,1974)。この時以来、種々のレポートがビール中のTHAの全含有量は5.7〜11.4μg/mlの範囲に及ぶことを確かめている(Hamberg,1991;およびそこに記載される参考文献)。9,12,13−THAは標準的にビール中のTHAの75〜85%を構成するが、9,10,13−THAの割合は標準的にはわずか15〜25%である。他の異性体は、微量で見出される。
オオムギ変異体D112の麦芽(すなわち、ヌル−LOX−1麦芽)から製造されたビールでは、9,12,13−THAの濃度は、品種Barkeの麦芽から製造された参照ビールに比べて20%(すなわち、ほぼ5分の1)にまで低下した(表6)。すなわち異性体9,12,13−THAおよび9,10,13−THAは、ヌル−LOX変異体D112の麦芽を使用して製造したビール中にほぼ等量で存在する。これらの測定は、標準的なHPLC−質量分光分析を使用して行った。
(実施例8)
(ビール中のトリヒドロキシオクタデセン酸)
種々様々な市販ビール試料中のTHAの濃度を表7に示す。表7に示すように、ビール試料中のTHAに関する結果の精査により、9,12,13−THA:9,10,13−THAの比率は常に3.5を越えることが明らかになった。対照的に、D112から製造されたビールでは、9,12,13−THA:9,10,13−THAの比率は1.3である。従って、ヌル−LOX−1オオムギから製造されたビールは、9,12,13−THA:9,10,13−THAについて著しく低い比率を有し、9,12,13−THA:9,10,13−THAの比率の測定は、ビールがヌル−LOXオオムギ変異体の麦芽(例えば、オオムギ変異体D112の麦芽)を使用して製造されるか否かを調べるためのツールを提供する。ヌル−LOX−1変異体D112のオオムギから誘導される麦芽から製造されたビールは、標準的な麦芽から製造されたビールと比べて著しく低いレベルの全9,12,13−THAを有することは、注目に値する。
(実施例9)
(オオムギ中のLOX作用による酵素生成物の生化学的特徴)
成熟野生型オオムギ穀類は、酵素LOX−1およびLOX−2由来の2つの主要なLOX活性を含む。これらの酵素は、リノール酸のヒドロペルオキシオクタデカジエン酸(HPODE)への二原子酸素添加を触媒し、酵素LOX−1は9−HPODEの形成を触媒し、酵素LOX−2は13−HPODEの形成を触媒する。成熟穀類では、LOX由来の活性は胚に限定される。どのようにLOX−1の遺伝子の変異がHPODE形成に影響を及ぼすかを調べるために、品種Barkeからの胚抽出物およびオオムギ株G(低LOX穀粒、Doumaらの国際公開第WO02/053721A1号として公開されたPCT出願第PCT/IB01/00207号)からの同様の抽出物、ならびにヌル−LOX変異体D112の胚抽出物を、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)分析で調べた。
オオムギの胚:胚からの粗製タンパク質抽出物の調製を、胚盤と胚乳の間で切断するために外科用メスを使用して成熟オオムギ穀類から器官を最初に切り裂くことによって行った。次いで、4個の胚からなるそれぞれの試料を、2枚の秤量用紙の間に置き、穏やかにハンマーでたたいて均質な粉末を作った。これを1.5ml微小遠心管に移し、600μlの200mM乳酸緩衝液(pH4.5)を加え、この微小遠心管を氷の上に10分間置き、その後にプラスチック乳棒(Kontes)を使用してさらに均質化した。その後に、600μlの水をそれぞれの管に加え、試料を20,000×gで2分間遠心分離した。得られた上清のアリコート100μlを15ml遠心分離管[Greiner Bio−Oneから購入したCellstar(カタログ番号188271)]に移し、LOX作用の後の反応生成物の分析用に、260μMリノール酸を含有する2mlの100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を調製した[基質は、10mlの100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を、100μlの24mMリノール酸原液と混合することによって調製した。後者は、最初に155μlのリノール酸(134mgの遊離酸に対応する;L−1376、Sigma)と257μlのTween−20とを混合し、次いで5mlの容量までH2Oを加え、次いで600μlの1M NaOHを加え、溶液が透明になった際に、最終容量をH2Oで20mlに調整した]。回転振盪機で15分インキュベートした後に、2mlの酢酸エチルを加え、9−HPODEおよび13−HPODEを抽出するために試料内容物を5秒間激しく振盪することによって混合した。次いで、試料を800×gで10分間遠心分離し、1ml酢酸エチルを1.5ml微小遠心管に移し、その中で酢酸エチルを窒素ガスの気流下で蒸発させた。その後に、HPODEを300μlのメタノールに再懸濁し、0.45μm膜(Millex−HNフィルター、Millipore)に通して濾過した
HPODE含有量の分析は、HPLCで行った。各試料から合計15μlを、4.6×250mmのSymmetry C18カラム(Waters)を備えたHPLC装置(HP1100 Series、Hewlett Packard)に注入した。使用した移動相は、水:メタノール:アセトニトリル:テトラヒドロフラン:トリフルオロ酢酸の16:12:12:10:0.5(v:v:v:v:v)混合物であった。移動相の流量は1分当たり1mlであり、そしてカラムの前で測定した圧力は140バールであった。分離は30℃で行った。共役二重結合を有するヒドロペルオキシドの検出は234nmで行った。標準試料は、図13Aに詳述するように、9(S)−ヒドロペルオキシ−10(E),12(Z)−オクタデカジエン酸[(9(S)−HPODE]と13(S)−ヒドロペルオキシ−9(Z),11(E)−オクタデカジエン酸[(13(S)−HPODE]との混合物からなっていた。
クロマトグラムの分析により、主として9−HPODEは品種Barkeの成熟オオムギ胚から抽出されたLOX酵素によって形成され(図13B)、これに対して9−HPODEおよび13−HPODEの両方は低LOX株Gの成熟胚の抽出物中で形成された(図13C)ことが明らかにされた。変異体D112胚の抽出物は、極めて少ない量の9−HPODEを形成したが、多量の13−HPODEを形成し、従ってLOX−1活性が存在しないことを立証した(図13D)。従って、変異体D112の胚抽出物は、野生型オオムギ株の胚抽出物よりもはるかに少ない9−HPODEを形成した。
オオムギ麦芽:オオムギ麦芽は、LOX−1およびLOX−2から誘導される2つの主要なLOX活性を含む。LOX−1が9−HPODEの形成を触媒する場合には、LOX−2作用は13−HPODEを生成する。LOXをコードする遺伝子の変異の麦芽抽出物中のHPODEの生成に対する効果を調べるために、品種Barke、オオムギ低LOX株Gおよび変異体D112由来の麦芽から調製した抽出物を用いてHPLC分析を行った。
麦芽からの粗製タンパク質抽出物の試料を次のようにして調製した。1つの麦芽化されるオオムギ穀類を2枚の秤量用紙の間に置き、穏やかにハンマーでたたいて均質な粉末を製造した。その後の処理の全て、インキュベーション混合物およびHPLC分析方法は、胚抽出物中のLOX産物の測定に関する本実施例の上記の節に記載したものと同じであった。
HPLC分析には、図14Aに例示するように、9(S)−ヒドロペルオキシ−10(E),12(Z)−オクタデカジエン酸[(9(S)−HPODE]と13(S)−ヒドロペルオキシ−9(Z),11(E)−オクタデカジエン酸[(13(S)−HPODE]との標準混合物を使用した。麦芽化されたBarke、低LOXおよびD112の抽出物中のHPODE生成活性の分析により、品種Barkeの麦芽における9−HPODEおよび13−HPODEの生成活性の60:40分布(図14B)、低LOXオオムギ由来の麦芽におけるいくつかの9−HPODE生成活性(図14C)、および変異体D112の麦芽における極めて低いレベルの9−HPODE生成(図14D)が実証された。これらのデータは、他のオオムギ株由来の麦芽抽出物よりも変異体D112の麦芽抽出物において著しく低い9−HPODEの形成を実証している。
(実施例10)
(オオムギ変異体D112中のLOX−1の遺伝子を変異させる)
変異体D112中のLOX−1の遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号2)および品種Barke中のLOX−1の遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号1)を得、変異体D112(これは穀類中に対応するLOX−1酵素が存在しないことに特徴があることが認められている)のヌル−LOX−1表現型について分子的基礎を調べるために比較した。
変異体D112および野生型品種Barke由来のゲノムオオムギDNAを、植物DNA単離キット(Roche Applied Science)を使用して、製造業者の推奨に従って苗の葉組織から単離した。変異体D112および品種BarkeのゲノムDNA中のLOX−1のタンパク質コード領域の側面に位置する4,224bpの配列を、プライマー
を使用してPCRで増幅した。プライマー配列の基礎は、LOX−1の遺伝子のゲノム配列であった(van Mechelenら,1995;Rousterら,1997;LOX−1をコードする領域の開始コドンおよび終止コドンに及ぶゲノム配列の概略図を図15に示す)。PCR反応は、5pmolの各プライマーおよび3.5UのExpand High Fidelityポリメラーゼ(Roche Applied Science)を含有する20μl容量中の100ngのゲノムDNAからなる。PCR増幅は、MJサイクラー中で次のサイクリングパラメーターを使用して行った:96℃で2分を1サイクル;95℃で1分、69℃で1分、および72℃で5分を30サイクル;72℃で10分を1サイクル。PCR産物を、1.0%アガロースゲル上で分離した。増幅した領域の長さに相当するDNA断片を、Qiaex II gel extraction kit(Qiagen)を使用して精製し、プラスミドベクターpCR2.1−TOPO(Invitrogen)に挿入した。コード領域の両方の鎖のヌクレオチド配列を、特異的オリゴヌクレオチドプライマーとのジデオキシヌクレオチド鎖終結反応を使用して調べ、MegaBACE 1000 DNA配列決定装置(Amersham)で分析した。配列の比較を、Lasergene配列分析ソフトウエアパッケージver.5(DNASTAR)を使用して行った。
野生型品種BarkeのLOX−1の配列(配列番号1)と変異体D112のLOX−1の配列(配列番号2)との間の直接比較において、変異体のヌクレオチド配列は、エキソン7において位置3574でG→A置換の形の1つの点変異を明らかにした(図15;図16)。LOX−1の野生型配列は、96.4kDaの予測質量を有する862残基の長さのタンパク質(配列番号3)をコードする。対照的に、変異体D112の対応する配列の位置3574での変異は、未成熟終止コドンの導入をもたらす。
変異体D112の遺伝子をコードするLOX−1中の終止コドンは、対応するタンパク質の197個のアミノ酸のC末端切断をもたらすことが予想され、従って74.2kDaのタンパク質をコードすると予測される。その配列を(配列番号4)に示す。
(実施例11)
(オオムギ変異体A618のLOX−1の遺伝子を変異させる)
オオムギ変異体A618および野生型品種NerudaのゲノムDNAの調製、PCR反応およびDNA配列決定ならびにゲノムDNAの分析は、変異体D112および品種Barkeについて実施例10に記載のものと同じであった。
オオムギ変異体A618のLOX−1のヌクレオチド(配列番号6)と親品種NerudaのLOX−1のヌクレオチド(配列番号5)の比較により、変異体配列がゲノム配列の位置2311でG→A置換に対応する1つの点変異を有することが示された(図15;図16)。
品種NerudaのLOX−1についての野生型配列は、96.4kDaの予測質量を有する862残基の長さのタンパク質(配列番号7)をコードする。対照的に、変異体A618の対応する配列の位置2311での変異は、イントロン3供与部位を変異させる。これは、イントロン3においてスプライスエラーを引き起こし、理論的に、399個のアミノ酸の翻訳後にイントロン3の未成熟終止コドンをもたらす。
変異体A618のLOX−1に関する遺伝子中の枠内終止コドンは、44.5kDaの切断された翻訳されたタンパク質(配列番号8)をもたらす。
(実施例12)
(LOX−1の転写産物のRT−PCR検出)
品種Vintage、変異体株G(低LOX、Doumaらの国際公開第WO02/053721A1号として公開されたPCT出願第PCT/IB01/00207号)、品種Barke、および変異体D112のオオムギ植物を、デンマーク国コペンハーゲンで2002年の春の間に温室で育てた。穂を開花の当日に標識し、穂状花序を開花後(DAF)20日目、40日目および60日目に収穫した。穂状花序を、全ての試料を同時に処理できるまで−80℃で保持した。時間点当たり合計10個の胚を成長する穎果から切り裂き、RNAをFastRNA、Green RNA単離キット(Qbiogene)を使用し、製造業者の推奨を使用して抽出した。
RT−PCR反応のテンプレートは、上記の胚のRNA100ngからなっていた。20μlのRT−PCR反応物は50pmolの各プライマーと5UのRT−PCR酵素混合物(Promega)を含有していた。RT−PCR増幅は、MJサイクラー中で、以下のように行った:48℃で45分を1サイクル;95℃で1分を1サイクル;94℃で1分、65℃で1分および72℃で1分を30サイクル;最後に72℃で10分間を1サイクル。
正方向プライマー
を使用して、292bpのRT−PCR断片を生成した。RT−PCR産物を1.0%アガロースゲル上で分離した。増幅された領域に長さが相当するDNA断片を、Qiaex II gel extraction kit(Qiagen)を使用して精製し、プラスミドベクターpCR2.1−TOPO(Invitrogen)に挿入した。プラスミド挿入物のヌクレオチド配列を、ABI Prism 310 Genetic Analyzer(ABI)を使用して配列決定した。DNA配列の比較を、Lasergene配列分析ソフトウエアパッケージver.5(DNASTAR)を使用して行った。
得られたPCR産物は、ゲノムクローンのヌクレオチド位置3283〜3659に対応する領域に及んだ(配列番号1)。この領域は、83bpの長さをもつイントロン5を含み、これはDNA−遊離RNA調製物のRT−PCRテンプレートには存在しなかった(図17A)。DNA配列分析により、単離断片はLOX−1の遺伝子の不可欠な部分であることが確認され、そしてイントロン5配列の不存在が実証されたことから、誤った増幅が酵素LOX−2のオオムギ遺伝子から断片を生じることを除外することができた(図17D)。従って、増幅された断片は、RNA転写産物の増幅の生成物に相当した。
品種Vintageおよび変異体株Gの20DAF、40DAFおよび60DAFのオオムギ胚から精製したRNAの比較RT−PCR分析により、LOX−1の転写産物のレベルは同様の成長段階で上記2つの品種について同様であることを明らかにした。LOX−1の転写産物のレベルは20DAFから60DAFまでの時間内で徐々に増加する(図17B)。
しかし、対照的に、一組の同様のデータを品種Barkeおよび変異体D112について調べると、著しい相違が認められた。ここで、RT−PCR実験により、変異体D112におけるLOX−1転写産物が、品種BarkeのLOX−1転写産物と比較した場合にその量において実質的に少ないことを明らかにした(図17C)。
要約すると、上記観察は、変異体D112のLOX−1の遺伝子のプロモーター領域における可能な変異によって説明することが可能である。他のまだ知られていない要因が、変異体D112のLOX−1の遺伝子の転写調節に関与し得る。この点において、変異体D112のLOX−1の転写産物における終止コドンがナンセンス介在mRNA崩壊を与えるということは除外され得ない(lsshikiら,2001)。
(実施例13)
(D112変異を有するオオムギ変異体の遺伝子検出)
最新のオオムギ育種の戦略は、変異誘発から商業化までのプロセスを促進するためにバイオテクノロジー技術をしばしば包含する。従って、目的の遺伝子内の一塩基多型の検出について植物材料の早期スクリーニングを実施することが有用であり得る。この技術をゲノムDNAと共におよび高速処理システムと組み合わせて使用すると、育種株の数を播種期で50%に狭めることが可能であり得る。
CAPSアッセイ:変異体D112後代株のLOX−1の遺伝子のクローニングおよび配列決定は、変異が次世代まで伝えられることを示した。この技術は、労力を要し、実用的なオオムギ育種には有用ではない。
低LOX株Gに特異的な変異は、育種材料において切断増幅多型配列アッセイ(cleaved amplified polymorphic sequence assay)(CAPSアッセイ)を使用してDoumaらの国際公開第WO02/053721A1号として公開されたPCT出願第PCT/IB01/00207号の実施例4の開示のようにして、同定することができる。しかし、変異体D112のLOX−1の遺伝子における変異の性質は、変異を含む60bpの領域中で改変された制限地図を作成するのに使用することはできない。
SNPアッセイ:このことに対する代替的な解決法は、一塩基多型(SNP)を包含する分析を行うことである。SNPは、1つの遺伝子座で表される少なくとも2種類のヌクレオチドを有する変異点である。この分析は、2組のゲノムPCR反応の組み合わせに基づく。両方の反応物は、遺伝子座特異的プライマーと、2個のSNPプライマーのうちの1つ(配列のそれぞれの対立遺伝子について1つ)を含む。2組のPCR反応は、植物株当たりにつき行われ、PCR反応の結果はいずれもSNPプライマーが変異体または野生型対立遺伝子の配列に結合するということである(図18A)。いくつかの方法の1つにおいて、SNP分析は、PCR産物の電気泳動の後のバンドパターンを評価することによる変異体株の同定に基づき得る。
17の育種株由来のゲノムオオムギDNAおよび野生型品種Barke由来のゲノムオオムギDNAを、苗の葉の組織から、Plant DNA isolation kit(Roche Applied Science)を使用して製造業者の推奨に従って単離した。
野生型LOX−1の遺伝子のSNPを増幅するのに使用したオリゴヌクレオチドプライマーは、
であった。変異体D112の対応する遺伝子については、プライマーは、
これらのプライマー組み合わせをPCR反応に使用して、変異体D112または品種BarkeのLOX−1のコード領域の一部を含む166bpのDNA断片を増幅した(図18A)。
25pmolのプライマーおよび2.5UのFastStart TaqDNAポリメラーゼ(Roche)を含有する20μl容量での100ngのゲノムDNAからなるPCR反応物を、製造業者者の指示書に従って使用した。PCR増幅は、MJサイクラー中で、以下のように行った:96℃で5分を1サイクル;95℃で1分、70℃で1分、72℃で1分を20サイクル;最後に72℃で10分を1サイクル。
PCR産物を1.0%アガロースゲル上で分離した。増幅した領域に長さが相当するDNA断片を、Qiaex II gel extraction kit(Qiagen)を使用して精製した。PCR産物をABI Prism 310 Genetic Analyzerでジデオキシヌクレオチド連鎖終結反応を使用して直接的に配列決定した。配列の比較を、Lasergene配列分析ソフトウエアパッケージver.5(DNASTAR)を使用して行った。
SNP分析による合計で17の育種株のスクリーニングから得られたデータおよびPCR産物の直接的な配列決定から得られた実験データをまとめると、同じ結果が得られた。これらの実験に基づいて、SNP技術を使用して、原料がオオムギ変異体D112のLOX−1の遺伝子の配列と同じ遺伝子配列を含むことを確認し得るということが、結論付けられ得る(図18B)。
(実施例14)
(試料混合物中の変異体の検出)
醸造業は、ビールの製造にオオムギと麦芽との混合物、特定の麦芽品種の望まれていない化学特性を遮蔽し得る性質を使用し得る。特定の種子材料の使用に関する簡単な確認は、PCR分析による変異体遺伝子の増幅を包含し得る。
混合麦芽試料のSNP分析は、変異体D112と品種Barkeとの試料混合物、および変異体株G(Doumaらの国際公開第WO02/053721A1号として公開されたPCT出願第PCT/IB01/00207号)と品種Barkeとの試料混合物を使用して行った。変異体D112の穀類を0%、20%、40%、60%、80%および100%含有する6種類のオオムギ試料を分析した。別のシリーズでは、変異体株Gの穀類を0%、20%、40%、60%、80%および100%含有する6種類のオオムギ試料を分析した。粉砕穀類からNucleon Phytopure DNA isolation kit(Amersham)を使用して、製造業者の推奨に従ってDNAを単離した。
変異体D112のLOX−1の遺伝子の166bpのSNPを増幅するのに使用したオリゴヌクレオチドプライマーは、
であった。変異体株GのLOX−1の遺伝子の370bpのSNPを増幅するのに使用したオリゴヌクレオチドプライマーは、
であった。4種類のプライマーを同時に使用する多重反応として、PCRを行った(図19A)。各反応物は、酵素の供給業者によって提供された指示に従って、50pmolの各プライマーおよび10μlのRedTaqポリメラーゼ溶液(Sigma)を含有する20μl容量に100ngのゲノムDNAを含有していた。PCR増幅は、MJサイクラー中で以下のように行った:95℃で1分を1サイクル;94℃で1分、66℃で1分、72℃で30秒を25サイクル;最後に72℃で10分を1サイクル。PCR産物を1.0%アガロースゲル上で分離した。増幅した領域に長さが相当するDNA断片を、Qiaex II gel extraction kit(Qiagen)を使用して精製し、プラスミドベクターpCR2.1−TOPO(Invitrogen)に挿入した。プラスミド挿入物の両方の鎖のヌクレオチド配列を、特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いたジデオキシヌクレオチド鎖終結反応を使用して決定し、MegaBACE 1000 DNA sequencer(Amersham)で分析した。配列の比較を、Lasergene配列分析ソフトウエアパッケージver.5(DNASTAR)を使用して行った。
図19Bに示したゲル分析により、変異体D112の穀類を含有する混合物に由来する試料の全部について陽性SNP分析を明らかにした。同様に、変異体系列G由来の物質を含有する試料を確認することができた。要するに、遺伝子分析は、変異体株Gまたは変異体D112いずれかの変異体LOX植物を含有するオオムギ混合物の使用を容易に確認することができる。
(実施例15)
(変異体D112の組換えLOX−1は不活性である)
変異体D112のLOX−1の遺伝子は、未成熟終止コドンを含むことを示した(実施例10を参照のこと)。従って、遺伝子の植物内での発現は、野生型LOX−1に認められる最初の665個のアミノ酸残基のみを含む対応するLOX酵素の切断バージョンの合成を生じることが予期された。LOX−1の切断バージョンを特定するヌクレオチド配列をE.coli細胞中で発現させて、それが酵素的に不活性であり、そしてオオムギ変異体D112の細胞中でHPODEの形成を触媒することができないことを確認した。
E.coli中で野生型および変異体のLOX−1を発現させるためのプラスミド:LOX−1をコードするオープンリーディングフレーム全体を、標準PCRプロトコールを使用することによって増幅させた。テンプレートは、オオムギcDNA(van Mechelen,1999)であり、使用したプライマーは、
であった。2,597bpの増幅DNA断片を得、精製した。PCR断片をNdeI−EcoRIで消化し、ベクターpET19b(Novagen)の大きなNdeI−EcoRI断片に結合し、LOX−1の遺伝子が、10残基の長さのHis末端の配列の枠内で、下流でクローン化される発現プラスミドpETL1を得た。DNA配列決定分析により、プラスミド挿入物が正しい配列を含むことを確認した。
次の実験は、LOX−1の切断バージョンの発現のためのプラスミドの構築を包含する。その目的は、E.coli細胞でのタンパク質合成がLOX−1の切断バージョンを生じるように、pETL1のLOX−1のオープンリーディングフレームのコドン番号666を終止コドンに変化させることにある。E.coliにおけるリボソームによって終止コドンの中の読み通しを完全に抑制するために、pETL1中のLOX−1の番号665のコドンの下流の全てのコドンが除去され、終止コドンTGAで置換されている発現プラスミドを構築した。以下のプロトコールを使用した。129bpの断片を、pETL1からプライマー
の存在下でのPCRを使用して増幅した。この増幅は、上記断片に終止コドンおよびEcoRI部位を導入した。これをその後にBsiWI−EcoRIで消化し、プラスミドpETL1の大きなBsiWI−EcoRI断片に結合した。得られた発現プラスミドをpETL2と命名し、挿入物の正しい配列をDNA配列決定によって確認した。
形質転換E.coli細胞は、組換えLOXタンパク質を合成する:E.coli BL21細胞(Novagenから購入した)を、ベクターpET19bならびに発現プラスミドpETL1およびpETL2(上記のもの)を用いて別々に形質転換した。プラスミドを有する細菌細胞を、標準ルリア・ブロス(LB)培地に接種し、37℃で2時間増殖させた。その後に、1mM IPTGを加えて異種遺伝子の発現を誘導し、その培養物を20℃で一夜増殖させた。細胞を14,000×gで1分間遠心分離することにより回収し、次いで得られた細胞ペレットを、6M塩酸グアニジン、0.3M NaClおよび10mMイミダゾールを補足した50mMリン酸Na緩衝液からなる変性溶液に再懸濁した。氷上で超音波粉砕した後に、溶解細胞を14,000×gで1分間遠心分離し、上清をNi樹脂(Novagen)と混合し、次いで4℃で30分間インキュベートした。Ni樹脂を遠心分離することにより沈殿させ、上記の変性溶液で2回洗浄した。最後に、His標識タンパク質を、上記樹脂から0.3M NaClおよび0.5Mイミダゾールを補足した50mMリン酸Na緩衝液を使用して2回溶出した。分画し、溶出した試料のアリコートをSDS−PAGEで分離した(図20)。約100kDaの明瞭なバンド(LOX−1対応する)、および約66kDaの明瞭なバンド(切断LOX−1の計算質量に対応する)が、pETL1およびpETL2それぞれを有する細胞から得られた。pET19bを有する細胞は、溶出した画分にバンドを生じなかった。
LOX−1の切断バージョンは不活性である:pET19b、pETL1およびpETL2を有するE.coli BL21を、標準LB培地に接種し、37℃で2時間増殖させた。その後に、1mM IPTGを加えて異種遺伝子の発現を誘導し、培養物を20℃で一夜増殖させた。この細胞を14,000×gで1分間遠心分離することにより回収した。得られた細胞ペレットをBugBusterとBenzonaseとの混合物(Novagen)に再懸濁することによって、細胞溶解液を得た。LOX活性を、上記溶解液中で、6.25mM 3−ジメチルアミノ安息香酸、0.3125mMリノール酸、0.1mM 3−メチル−2−ベンゾチアゾリンヒドラゾンおよび0.05mg/mlヘモグロビンを含有するリポキシゲナーゼアッセイ試薬を使用して測定した。180μlの上記試薬を10μlのそれぞれの細胞溶解液と混合し、室温で10分間インキュベートした。インキュベーション中に生成したインダミンの量(595nmでの吸光度として分光光度分析により決定された)は、細胞溶解液のリポキシゲナーゼ活性に対応する。pETL1を用いて形質転換した細胞(His標識LOX−1を生成する)が大きなLOX−1活性を示したのに対し、変異体D112特異的切断LOX−1を生成する細胞は、ベクターのみを用いて形質転換したコントロール細胞と同じLOX活性を有していた(表8)。これは、オオムギ変異体D112の切断LOX−1が不活性であることを実証している。
(実施例16)
(トランスジェニックオオムギ植物)
プラスミド構築:遺伝子配列を、標準プラスミドベクター(例えば、pUC18)のポリリンカー領域に挿入する。この挿入断片を図21に列挙する。1つの構築物(図21A)では、トウモロコシユビキチン−1プロモーター(Christensenら,1992;Jensenら,1996)(同じ遺伝子のイントロン1を含む)は、選択可能なマーカーのホスフィノトリシン(phoshinothricin)アセチルトランスフェラーゼ(PAT)をコードするbar遺伝子(Whiteら,1990)の転写を導く。LOX−1の遺伝子のセンス抑制(sense suppression)のために設計した第2の構築物(DoughertyおよびParks,1995)において、オオムギLOX−1のオープンリーディングフレームを、トウモロコシユビキチン−1プロモーターおよびイントロン1の下流に直接に挿入した(図21B)。LOX−1のオオムギ遺伝子の発現をサイレンシングするための構築物を図21Cに示す。オオムギ細胞中のこの構築物の発現は、イントロンがスプライスされたヘアピンRNAの形成によって上記遺伝子の完全なサイレンシングを与え、この構築体をSmithら(2000年)による刊行物の図1aに詳述されたデータに従って設計する。具体的には、図21Cで構築物の「イントロン1」と表される配列は、Smithら(前出)による刊行物の図1aに示されるイントロン配列と同じである。図21Cにおける構築物のセンスおよびアンチセンスアームは、オオムギLOX−1をコードするオープンリーディングフレームのセグメントを含む同じ約200bpの長さの断片の反対方向を表し、上記のリーディングフレームのセグメントは、LOX−1のオープンリーディングフレームのどこかに配置される。あるいは、200bpの長さの配列を、LOX−1をコードするオオムギ遺伝子の終止コドンの下流の配列から選択する。
トランスジェニック植物の形質転換および再生:品種Golden Promiseの温室で育てた供与体オオムギ植物由来の成熟オオムギ胚を、LOX−1をコードするオオムギ遺伝子を共抑制するための図21A、Bに示される挿入断片を含むプラスミドの混合物、および上記遺伝子をサイレンシングするための図21A、Cに示されるプラスミドの混合物と衝突させた。形質転換、形質転換細胞の選択、およびトランスジェニック植物の繁殖を、WanおよびLemaux(1994)およびJensenら(前出)によって詳述されたようにして行った。
トランスジェニック植物を、数世代にわたって育てるか、または異なるオオムギ品種を用いて受粉させ、次いで所望の表現型を有する子孫植物を同定した。2世代またはそれ以上の世代は、所望の表現型特性の発現が安定的に維持され、遺伝することを確実にするために生育させてもよい。種子を収穫して、所望の表現型特性が達成されていることを調べた。
LOX−1をコードするオオムギ遺伝子の共抑制またはサイレンシングの効果を調べるために、トランスジェニック穀粒を、本明細書の実施例1に詳述したように、最初にLOX−1由来の酵素活性について分析した。その後に、LOX−1活性を有していないかまたはほとんど有していないトランスジェニック穀粒を、本明細書の実施例5および実施例6でヌル−LOX−1穀粒について詳述したように麦芽製造および醸造実験で調べた。さらに、トランスジェニック穀粒の抽出物を、アスペルギルス属真菌の増殖に対する負の効果を有する穀粒を同定するために、Kellerの米国特許第5,942,661号に記載の方法を使用して分析した。
(実施例17)
(グリーンノート化合物)
グリーンノート化合物の製造プロセスは、
(i) ヌル−LOX−1オオムギ穀粒を微粉末に変える工程;
(ii) 得られた粉末を水または特定の緩衝液に懸濁する工程;
(iii)得られた懸濁物をインキュベートする工程。あるいは、得られた粉末懸濁物を、(a)脂肪酸(リノール酸またはリノレン酸あるいはこれらの混合物);または(b)13−HPODEまたは13−HPOTEあるいはこの両方に特異性を有するヒドロペルオキシドリアーゼ酵素;または(c)上記脂肪酸と上記酵素とを含有する混合物と反応させる工程;
(iv) 得られるアルデヒドをアルコールデヒドロゲナーゼと反応させる工程;
(v) アルデヒドまたはアルコールを精製し、そして芳香剤または香味組成物の有用な調製物を調製する工程
を包含する。
(実施例18)
(LOX−1インヒビター)
組換えLOX−1の新たに調製した溶液を分析のために使用した。この実験では、100mlのAB3増殖培地(100μg/mlのアンピシリンを補足した)を供給業者(Remel)による推奨を使用して調製し、次いでプラスミドpETL1(Hisタグ付きLOX−1をコードする;実施例15を参照のこと)を用いて形質転換したE.coli BL21(DE3)pLysS細胞の一夜培養物5mlを接種した。得られた細菌培養物を、細胞密度がOD600=0.8に達するまで37℃で増殖させた。培養物を20℃で30分間インキュベートし、次いで0.4mM IPTGを補足して異種遺伝子の発現を誘導し、20℃で一夜インキュベートした。
培養物の細胞を、15分間遠心分離することによってペレット化し、5mlのBugBuster HT(Novagen)に再懸濁し、穏やかに振盪しながら20分間インキュベートして核酸をハイブリダイズさせた。その後に、細胞砕片を遠心分離により取り除き、その上清を0.45μm濾紙に通して濾過することによりきれいにし、同容量の結合用緩衝液(0.3M NaCl、10mMイミダゾールを補足した50mMリン酸Na緩衝液、pH7.5)に加えた。得られた抽出物を、製造業者の推奨に従ってHisTrap HPカラム(Amersham Biosciences)に加え、洗浄用緩衝液([イミダゾール]=150mMである以外は上記の結合用緩衝液と同じ)で1回洗浄し、結合されたタンパク質を溶出用緩衝液([イミダゾール]=500mMである以外は上記の結合用緩衝液と同じ)を用いて溶出した。
洗浄液および溶出液のタンパク質を含有する画分1mlのアリコート3μlを、SDS−PAGEで分析し(図22A)、溶出液2の画分1mlが約0.7mgの組換えLOX−1を含有することを示した。
次いで、精製LOX−1をアッセイに使用して、選択したLOXインヒビターが酵素活性を低減するか否かを決定した。最初に、リノール酸の原液(実施例9に詳述したように調製した)を、その初期濃度の1/10まで希釈し、2.4mMリノール酸の溶液を得た。そのアリコート45μlに、0mM、5mM、12mMおよび24mMの没食子酸オクチル、またはNDGA(推定されるLOX−1インヒビター)を含有するエタノール溶液5μlを補足した。リノール酸−インヒビター混合物のアリコート10μlを、100mM Na−リン酸緩衝液(pH6.0)990μlに加え、20℃で1分間インキュベートし、その後に5μlの組換えLOX−1(溶出液2、上記を参照のこと)を加えた。
LOX−1の添加の後に、A254を3分間にわたって記録した。LOX−1酵素活性を、時間に対してプロットしたA254の傾きのグラフとして測定した。結果を図22Bに要約する。この結果は、インヒビターのマイクロモル濃度でのLOX−1の著しい阻害を示す。
(実施例19)
(没食子酸オクチル(LOX−1インヒビター)を用いるマッシング工程)
オオムギ品種Barkeの麦芽25gを含有するか、またはヌル−LOX−1変異体D112の麦芽25gを含有する100mlの小規模のマッシング工程を実施例5に記載の装置と同様の装置を使用して行った。マッシング工程の開始(mashing−in)は37℃で15分間であり、糖化は68℃で30分間であり、マッシング工程の終了(mashing−off)は77℃で10分間であり、次いで麦芽汁の最終煮沸は60分間であり;温度シフトは1分当たり1℃に調節した。
LOX−1インヒビターの存在下でのマッシング工程の効果を試験するために、オオムギ品種Barkeの麦芽を用いたマッシュに、マッシング工程の開始時に0.5mM没食子酸オクチルを補足した。平行操作のマッシング工程は、没食子酸オクチルを添加せずにオオムギ品種Barkeの麦芽を用いた実験、および0.5mM没食子酸オクチルの存在下または非存在下でのヌル−LOX−1オオムギ変異体D112の麦芽を用いたマッシング工程を包含する。
4回のマッシング工程の全ての試料アリコートを、15分のマッシング工程の開始工程後の麦芽汁煮沸工程の後に回収し、次いで実施例6に記載のようにしてT2Nレベルを決定した。結果を図23に要約する。
T2Nに著しい減少が、没食子酸オクチルの存在下でオオムギ品種Barkeの麦芽を用いたマッシング工程の麦芽汁試料で、マッシング工程開始後に分析した試料および煮沸麦芽汁の試料の両方で観察した。両方の種類の麦芽の煮沸麦芽汁中のT2Nの濃度が同様のレベルに達したことは注目に値する。
要するに、マッシュにマッシングする工程中にLOX−1インヒビターの没食子酸オクチルを補足すると、T2Nのレベルの減少を特徴とする麦芽汁の新規の製造法が提供される。
(表1.原料変異体(M3世代)および後代(M4世代およびM5世代)の胚抽出物中の全LOX活性)
a0〜9の尺度(但し、0は感染または倒伏無しを表し、そして9は極端な感染または倒伏を表す)
b2つの異なる場所での3回反復の相対平均収量
(表3.パイロット麦芽製造試験後の分析)
(表4.変異体D112の生成物中のT2Nの減少レベル)
a評価の尺度−0:存在しない;1:弱い;2:目立つ程度;3:中程度;4:強い;5:極端。低い値が好ましい
b評価の尺度は1〜5である;高い値が好ましい
nd=測定されなかった。
(表6.標準オオムギおよび変異体D112の麦芽から製造したビール中のTHA)
(表8.LBおよびIPTG中で一晩増殖させた下記に示したベクターを有する細胞からの粗製細胞抽出物由来のリポキシゲナーゼ活性)
a結果は示した変数を有する4つの個々の測定の平均値として示す。
(表9.配列表)
(8.寄託情報)
Carlsberg A/S所有のオオムギ変異体D112(上記に開示しかつ添付の特許請求の範囲に列記した)の寄託は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、10801 University Boulevard、Manassas、Va.20110、USAになされた。変異体D112の寄託の日は、2003年9月11日であり、本出願の出願日の前から、Carlsberg A/Sでの寄託から採取された2,500穀粒からなる。変異体A618の寄託の日は、2003年10月13日であり、本出願の出願日の前から、Carlsberg A/Sでの寄託から採取された2,500穀粒からなる。これらの寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタベスト条約およびその規則(ブダベスト条約)の規定の下になされた。これは、寄託の日から30年間の寄託物の生存培養物の保管を保障する。寄託は試料の生存の表示の提供を含む連邦法施行規則第37巻1.801−1.809の要件の全てを満たすことが意図される。変異体D112については、ATCC受託番号はPTA−5487である。変異体A618については、ATCC受託番号はPTA−5584である。寄託材料のアリコートは、ATCCから、受託番号を特定することによって、そしてATCCによって課され標準的な制限を受け入れることによって得ることができる。しかし、寄託の利用可能性は、政府の行為によって許可された特許権の減損において対象発明を実施するためのライセンスという性質ではないことが理解されるべきである。
本出願全体を通じて、種々の刊行物、特許および特許出願が参照される。これらの刊行物の開示は全体として、本発明が関係する技術の状態をより詳しく述べることを目的として、本出願明細書に参考として援用される。本発明の上記の説明は、例示および説明のための模範である。種々の改変が本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解されるべきである。従って、以下の特許請求の範囲は、このような改変を包含すると解釈されることが意図される。
(参考文献)
(特許文献)
図1は、3つのフローダイアグラムA、BおよびCに分けられる。図1Aは、NaN3で変異を誘発させたオオムギ穀粒がどのようにして増殖し得るかを表す。M0世代の穀粒は、M1世代の穀粒を生み出す植物に生育する。M1世代の穀粒は播種され、M2世代の新しい穀粒を産生するM1植物に成長し得る。次に、M2植物が生育し、そしてM3世代の穀粒をつけ、これらの穀粒は収穫され、スクリーニング分析に使用され得る。M3種子もまた播種され得、対応する植物の花がM4世代の植物を得るために交配に使用される。
図1は、3つのフローダイアグラムA、BおよびCに分けられる。図1Bは、リノール酸を分解し、最終的にT2Nを生じるために生化学的LOX経路がどのように作動するかを簡単に表した図である。
図1は、3つのフローダイアグラムA、BおよびCに分けられる。図1Cは、どのようにしてリノール酸がLOX−1の作用によって対応する9−ヒドロペルオキシ酸(9−HPODE)に変換され、次いでエポキシアルコールシンターゼおよびエポキシドヒドロラーゼによるさらなる酵素転換によって9,12,13−トリヒドロキシ−10−オクタデセン酸(9,12,13−THOE)に変換され得るかを説明する。
図2は、品種Barkeの胚抽出物、変異体D112の胚抽出物、および品種Barkeの胚の加熱不活性化抽出物を含有するコントロール試料において測定された全LOX活性の比較のグラフである。
図3は、変異体A618の胚抽出物、品種Nerudaの胚抽出物、および品種Barkeの胚の加熱不活性化抽出物を含有するコントロール試料において測定された全LOX活性の比較のグラフである。
図4は、変異体D112の12の個々のM4後代系統の穀粒で測定された全LOX活性の比較を表す。品種Barkeの穀粒抽出物からなるコントロール試料、および品種Barkeの加熱不活性化穀粒抽出物からなるコントロール試料の活性が比較に含まれる。
図5は、変異体D112のM5後代系統の90の個々の穀粒抽出物の全LOX活性についての分析の結果を要約する。品種Barkeのコントロール穀粒抽出物、および品種Barkeの加熱不活性化穀粒抽出物の活性が比較に含まれる。
図6は、変異体A618のM4後代系統の40の個々の穀粒抽出物で測定された全LOX活性の比較の要約を示す。品種Barkeの穀粒抽出物を用いたコントロール試料および品種Barkeの加熱不活性化穀粒抽出物を用いたコントロール試料の活性が比較に含まれる。
図7は、2つの別々の免疫ブロットからなり、免疫反応性LOX−1タンパク質が変異体D112、M3世代の穀粒抽出物において検出できないことを表す。それぞれの免疫ブロットは、オオムギLOX−1に対する抗体を用いて精査し、試料は組換え体LOX−1を発現するE.coli細胞の抽出物(レーン1)、品種Vintageの穀粒抽出物(レーン2)、変異体系統G(レーン3および7)、品種Barke(レーン6および8)、および変異体D112、M3世代の個々の系統(レーン4〜5および9〜16)からなる。免疫反応性LOX−1タンパク質の位置が示される。
図8は、変異体A618、M3世代およびM4世代の穀粒抽出物中にLOX−1が存在しないことを詳述する2つの個々の免疫ブロットを示す。それぞれの免疫ブロットは、オオムギLOX−1に対する抗体を用いて精査し、また試料は変異体系統G(レーン1)、品種Neruda(レーン6および16)の穀粒抽出物からなる。LOX選択手順によるものではなかった無作為に選択されたM3およびM4の穀粒の抽出物は、レーン2〜5および8〜12それぞれで分離された;これらの抽出物の全部がLOX−1免疫反応性タンパク質を含有していた。変異体A618、世代M3(レーン7)の穀粒抽出物のヌル−LOX−1表現型は、変異体A618−82(レーン8〜12)の個々のM4後代系統に遺伝していた。免疫反応性LOX−1タンパク質の位置が示される。
図9は、品種Prestigeに対する変異体D112についての戻し交配プログラムの遺伝学を模式的に説明する。野生型LOX−1形質にNNを割り当て、これに対してヌル−LOX−1変異体形質にはnnを割り当てる。下線を付した遺伝子型を有する植物が交配に供される。
図10は、7つの個々の免疫ブロットの例を提供し、それぞれはオオムギLOX−1に対する抗体を用いて精査した。免疫ブロットは、品種Prestigeに対する変異体D112の一次戻し交配世代の個々の植物の穀粒中の免疫反応性LOX−1タンパク質の有無(レーン1〜6およびレーン9〜14)、ならびに品種Prestigeに対する変異体D112の二次戻し交配世代の穀粒中の免疫反応性LOX−1タンパク質の有無(レーン17〜22、レーン25〜30、レーン33〜38、レーン41〜45およびレーン48〜52)を示す。免疫反応性LOX−1を欠いている変異体D112(レーン7、15、23、31、39、46、53)、および免疫反応性LOX−1を含む品種Prestige(レーン8,16、24、32、40、47、54)のコントロール穀粒抽出物を、コントロールとして使用した。免疫反応性LOX−1タンパク質の位置が示される。
図11は、添加物を使用しないビール製造プロセスの簡略化した概略図であるが、オオムギ穀粒の浸漬(1)、麦芽製造(2)、キルン乾燥(3)、乾燥麦芽の粉砕(4)、マッシング(5)、濾過(6)、添加ホップの存在下での麦芽汁煮沸(7)、酵母の存在下での発酵(8)、ビール熟成(9)、ビール濾過(10)、パッケージング(例えばビン、缶などへのパッケージングが挙げられるが、これらに限定されない)(11)、およびラベリング(12)を含む。個々のプロセスは、麦芽製造(1〜3)、麦芽汁製造(4〜7)、発酵(8〜9)、および完成ビールの調製(10〜12)を含む部分にグループ分けすることができる。
図12は、ヌル−LOX−1変異体D112のオオムギから誘導される麦芽を使用して製造されたビールの特性に焦点を合わせている。図12Aは、37℃で4週間強制熟成中の遊離T2Nの蓄積を例示する。このアルデヒドは、ヌル−LOX−1変異体D112の麦芽から製造されたビール(黒三角)および品種Barkeのコントロール麦芽から製造されたビール(黒丸)で測定した。ビール中のT2Nの香味閾値レベルは約0.05ppbである。
図12は、ヌル−LOX−1変異体D112のオオムギから誘導される麦芽を使用して製造されたビールの特性に焦点を合わせている。図12Bは、20℃で12ヶ月間インキュベートしたビールの個々の香味特性に関するビール味覚官能評価集団の評価に従ったデータのグラフ表示を提供する。ビールは、品種Barkeのオオムギ(黒塗りの棒グラフ)またはヌル−LOX−1変異体D112のオオムギ(白抜きの棒グラフ)のどちらかから誘導された麦芽で製造した。
図13は、オオムギ組織中の9−HPODEおよび13−HPODEの生成についてアッセイするのに使用したHPLC分析のクロマトグラムを表す。HPODEのレベルは、234nmで吸光度を測定することによって分析した。結果は、ミリ吸光度単位(mAU)で示した。9−HPODEおよび13−HPODEに対応する溶出プロフィールのピークを矢印で示す。図13Aは、9−HPODEおよび13−HPODE標準のクロマトグラムを表す。
図13は、オオムギ組織中の9−HPODEおよび13−HPODEの生成についてアッセイするのに使用したHPLC分析のクロマトグラムを表す。HPODEのレベルは、234nmで吸光度を測定することによって分析した。結果は、ミリ吸光度単位(mAU)で示した。9−HPODEおよび13−HPODEに対応する溶出プロフィールのピークを矢印で示す。図13Bは、品種Barkeの成熟胚から調製した抽出物中で形成されたHPODEのクロマトグラムである。
図13は、オオムギ組織中の9−HPODEおよび13−HPODEの生成についてアッセイするのに使用したHPLC分析のクロマトグラムを表す。HPODEのレベルは、234nmで吸光度を測定することによって分析した。結果は、ミリ吸光度単位(mAU)で示した。9−HPODEおよび13−HPODEに対応する溶出プロフィールのピークを矢印で示す。図13Cは、低LOX穀粒の成熟胚から調製した抽出物中で形成されたHPODEのクロマトグラムである。
図13は、オオムギ組織中の9−HPODEおよび13−HPODEの生成についてアッセイするのに使用したHPLC分析のクロマトグラムを表す。HPODEのレベルは、234nmで吸光度を測定することによって分析した。結果は、ミリ吸光度単位(mAU)で示した。9−HPODEおよび13−HPODEに対応する溶出プロフィールのピークを矢印で示す。図13Dは、ヌル−LOX−1変異体D112の成熟胚の抽出物中で形成されたHPODEのクロマトグラムである。
図14は、麦芽中の9−HPODEおよび13−HPODEの形成についてアッセイするのに使用したHPLC分析のクロマトグラムを表す。上記HPODEのレベルは、234nmで吸光度を測定することによって分析した。結果は、ミリ吸光度単位(mAU)で示した。9−HPODEおよび13−HPODEに対応する溶出プロフィールのピークを矢印で示す。図14Aは、9−HPODEおよび13−HPODEの標準のクロマトグラムを示す。9−HPODEおよび13−HPODEに対応するクロマトグラムのピークを矢印で示す。
図14は、麦芽中の9−HPODEおよび13−HPODEの形成についてアッセイするのに使用したHPLC分析のクロマトグラムを表す。上記HPODEのレベルは、234nmで吸光度を測定することによって分析した。結果は、ミリ吸光度単位(mAU)で示した。9−HPODEおよび13−HPODEに対応する溶出プロフィールのピークを矢印で示す。図14Bは、品種Barke由来の麦芽の抽出物中で形成されたHPODEのクロマトグラムである。
図14は、麦芽中の9−HPODEおよび13−HPODEの形成についてアッセイするのに使用したHPLC分析のクロマトグラムを表す。上記HPODEのレベルは、234nmで吸光度を測定することによって分析した。結果は、ミリ吸光度単位(mAU)で示した。9−HPODEおよび13−HPODEに対応する溶出プロフィールのピークを矢印で示す。図14Cは、低LOXオオムギ由来の麦芽の抽出物中で形成されたHPODEのクロマトグラムである。
図14は、麦芽中の9−HPODEおよび13−HPODEの形成についてアッセイするのに使用したHPLC分析のクロマトグラムを表す。上記HPODEのレベルは、234nmで吸光度を測定することによって分析した。結果は、ミリ吸光度単位(mAU)で示した。9−HPODEおよび13−HPODEに対応する溶出プロフィールのピークを矢印で示す。図14Dは、ヌル−LOX−1変異体D112由来の麦芽の抽出物中で形成されたHPODEのクロマトグラムである。
図15は、開始コドン(ATG)と終止コドン(TAA)とにおよぶオオムギLOX−1に対する遺伝子の構成を示す地図である。4,165bp長の配列の概略図は、7個のエキソン(黒塗り長方形)および6個のイントロン(直線)を示す。LOX−1に関する遺伝子において同定された変異の位置(すなわち、変異体系統G(低LOX)、変異体A618および変異体D112に特異的)を矢印で示す。
図16は、野生型、変異体A618および変異体D112のオオムギ植物のLOX−1に対する遺伝子に関連した予測される分子の相違を要約する。「結果」、「アミノ酸長」および「質量(kDa)」と示された欄に列挙した情報は、DNA配列から予測される。
図17は、LOX−1をコードするオオムギ遺伝子に関連したRT−PCR変異体分析および転写産物確認を行うのに使用した方法を提供する。Aには、品種Vintageおよび低LOX−1変異体系統Gの発生中の胚の中のLOX−1をコードする遺伝子に特異的な転写産物のRT−PCR検出についての原理を概略的に示す。プライマーはFL821配列番号11およびFL852配列番号12からなる(これらは、83bp長のイントロン5に隣接する複数のエキソンにおいてアニーリングする);ゲノムDNAまたはmRNAテンプレートのいずれかを使用するPCR産物の相違が示される。Bには、RT−PCRアガロースゲル分析の結果を示し、これはオオムギ、品種Vintageおよび変異体系統Gの発生中の胚の中のLOX−1をコードする遺伝子に関連した特異的転写産物の検出に焦点を当てた。レーン1およびレーン5はマーカー断片を含み、レーン2、3および4は開花後(DAF)20日、40日および60日それぞれの後の品種Vintageの胚組織から誘導されたPCR産物を含んでいた。レーン6、7および8は、20DAF、40DAFおよび60DAFそれぞれの後の変異体系統Gの胚組織から誘導されたPCR産物を含む。Cでは、レーン1〜5は、Bにおけるレーン1〜5について詳述した実験と同様の実験の結果を示し、これに対しレーン6、7および8は、20DAF、40DAFおよび60DAFそれぞれの後のLOX−1に対する遺伝子の変異体D112胚特異的転写産物のRT−PCR検出から誘導された産物を含む。Dには、LOX−1に対する遺伝子に特異的なRT−PCR断片の配列決定反応から得られた電気泳動図を示す。配列分析により、RT−PCR標的RNAがDNAを含有していないことが明らかにされた。黒色の三角は、スプライシング点を示し、転写産物の正確なスプライシングを示す。
図18は、オオムギ変異体D112のSNP支援検出の結果を詳述する。分析は、Aで概略的に説明したように、試料当たり2組のPCR反応を使用する特異的PCR断片パターンの生成に基づいていた(プライマー対1はFL820配列番号13およびプライマーFL823配列番号15からなり、プライマー対2はFL820配列番号13およびFL825配列番号14からなる)。Bには、選択した育種材料のPCRパターン分析の結果を示す。植物のゲノムDNAを、PCR分析に供した。レーン2〜3(植物1)、4〜5(植物2)、6〜7、(植物3)、8〜9(植物4)、10〜11(植物5)、12〜13(植物6)、14〜15(植物7)、16〜17(植物8)、および18〜19(植物9)に示した結果は、プライマーの組み合わせ1(偶数番号を付したレーン)またはプライマーの組み合わせ2(奇数番号を付したレーン)を使用した。得られたバンドパターンとAに示したバンドパターンとの比較により、植物1、2、4、5、7、および8が同型接合変異体であり、これに対して植物3、6および9の遺伝子型は同型接合の野生型として分類することができることが明らかにされた。マーカーDNAはレーン1および20で分離された。
図19は、変異体Gまたは変異体D112の物質を含むオオムギ試料の多重SNP分析の原理を実証する。分析は、増幅された断片の長さが加えられた物質の遺伝子型に関係し得るように多重PCR反応を利用した。370bp断片の増幅は、麦芽試料が変異体系統Gから誘導される物質を含有することを示し、これに対して166bp断片の増幅は変異体D112から誘導される物質の存在を示す。パネルAは、どのように特異的プライマーが対合するかを詳述する概略図であり、それぞれは目的の変異体に特異的な配列を含む1つのプライマーを有する(星印;LOX−1についてのゲノムクローン中の変異体系統Gヌクレオチド番号2279、および変異体D112位置3574を示す)。プライマーの組み合わせFL918配列番号16およびFL920配列番号17を、変異体系統G特異的変異の検出に使用した;これに対してFL820配列番号13およびFL823配列番号15を、変異体D112特異的塩基変化の検出に利用した。Bには、どのようにして試料中の変異体特異的物質(レーン2〜7:変異体系統G;レーン8〜13:変異体D112)の相対量が特異的PCR断片の合成を増強し得るかを示す(レーン2および8:変異体物質の添加なし;レーン3および9:20%変異体物質添加;レーン4および10:40%変異体物質添加;レーン5および11:60%変異体物質添加;レーン6および12:80%変異体物質添加;レーン7および13:100%変異体物質)。レーン1はマーカー断片からなる。
図20は、ベクタープラスミドpET19b(レーン2〜5)、発現プラスミドpETL1(レーン6〜10)、および発現プラスミドpETL2(レーン11〜15)によって形質転換されたE.coli細胞由来のアフィニティー精製されたHis標識LOX−1のSDS−PAGEの結果を示す。未結合タンパク質(レーン2、6、11)を含有する画分由来のタンパク質;一次洗浄液(レーン3、7,12);二次洗浄液(レーン4、8、13);一次溶出液(レーン5、9,14);および二次溶出液(レーン10および15)を分析した。上方の矢印は、組換え体LOX−1(野生型LOX−1に対応する)の位置を示し、これに対し下方の矢印は、短縮組換え体LOX−1(オオムギ変異体D112におけるLOX−1に対応する)の位置を示す。レーン1は分離された標識タンパク質を含む。
図21は、オオムギを形質転換するためのプラスミド挿入物を図示する。Aには、選択可能なマーカーホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼをコードするbar遺伝子(BAR)の構成的発現を導くトウモロコシユビキチン−1プロモーターおよびイントロン1(まとめてUBIプロモーターと示す)からなる発現カセットを図示する。転写終結は、NOSターミネーター配列(N)によって提供される。Bには、ここではセンスまたはアンチセンス向きでのLOX−1についてのオオムギcDNA配列の構成的発現を導く前述のUBIプロモーターからなる発現カセットを図示する。Cには、イントロン含有ヘアピン構築物の構成的発現を導くUBIプロモーターからなる発現カセットを図示し、ここで、脂肪酸デサチュラーゼFAD2イントロン1(Int)に対するシロイヌナズナ遺伝子のイントロン1の配列は、その両端にLOX−1の遺伝子の約200bp長の断片のセンスアーム(→)およびアンチセンスアーム(←)が配置される。転写終結は、NOSターミネーター配列(N)によって提供される。LOX−1に関する遺伝子のコサプレッションを示すオオムギ植物の作成については、AおよびBに詳述した挿入物を含む発現プラスミドを等量で含むプラスミド混合物が使用される。LOX−1に対する遺伝子の全てのサイレンシングを示すオオムギ植物の作成については、AおよびCにおける挿入物を含む発現プラスミドを等量で含む混合物が使用される。
図22は、LOX−1活性を低下させるインヒビターに関する実験結果を詳述する。Aには、10%SDS−PAGEでのタンパク質の電気泳動の分離を示し、個々のレーンはE.coli細胞由来のHis標識LOX−1の段階的精製の結果を示す(実施例18参照)。ベクターpET19bおよびプラスミドpETL1による形質転換体の粗製抽出物中のタンパク質を、レーン1および2にそれぞれ示し、一方、レーン3〜5は洗浄溶液2、3および4の分離タンパク質を含む。アフィニティーカラムの溶出液1mlからの3μlの試料のアリコートが、レーン6(溶出液1)、レーン7(溶出液2)、レーン8(溶出液3)、およびレーン9(溶出液4)で分離された。水平の矢印は、組換え体LOX−1の位置を示す。溶出液2からのLOX−1のアリコートを、Bに要約するように、インヒビターの研究に使用した。ここでは、残留LOX−1活性を、インヒビター(NDGA(黒丸)または没食子酸オクチル(黒三角)のどちらか)の存在下で5μlのLOX−1(溶出液2)と共にインキュベーションした後に測定した。
図23は、添加インヒビターなしで(白抜きの棒グラフ)、または0.5mMのLOX−1インヒビター 没食子酸オクチルの存在下(黒塗りの棒グラフ)でのマッシングにより調製した麦芽汁試料中のT2Nのレベルを詳述する要約を提供する。(37℃)でマッシングした後(mashing−in)に採取した試料または煮沸後に採取した試料(煮沸麦芽汁)は、オオムギ品種Barkeまたはヌル−LOX−1オオムギ変異体D112の麦芽を用いたマッシングして混ぜたものの麦芽汁を含む。