JP4822661B2 - 振動エネルギー吸収材 - Google Patents
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Description
振動エネルギー吸収材は使用される形態によって最適な硬さがあり、必ずしも柔軟であることが必要になるとは限らないが、製品としての取り扱いやすさや施工性の容易さから柔軟性が求められる用途は多い。
ここで、振動エネルギー吸収材の振動エネルギー吸収性能は、その材料の粘弾性特性を動的に測定した際に求められる損失係数(Tanδ=損失弾性率(E”)/貯蔵弾性率(E’))で評価され、損失係数が大きいほど振動エネルギーの吸収性能は大きくなる。また、損失係数は温度に依存し、材料を構成する高分子素材のガラス転移温度域で最も高い値を示すことになる。したがって、振動エネルギー吸収材を使用する温度域が、その吸収材を構成している高分子素材のガラス転移温度域と一致している場合に大きな振動エネルギーの吸収性能が得られることになる。
ここで、振動エネルギー吸収材として使用されているブチルゴム、ポリノルボルネン、特殊ウレタン系エラストマーは、各々、損失係数のピーク値が1.4、2.8、1.3であり、損失係数のピーク値が1.3ならば振動エネルギー吸収材として使用実績があることになる。ただし、振動エネルギー吸収材に用いられる上記の材料は成形加工性に難があるために適用できる用途範囲が限られている。また、ポリノルボルネンや特殊ウレタン系エラストマーは高価なため、その面からも使用範囲が限られている。
一方、5大汎用樹脂の一つとして長い歴史があり、経済性はもとよりほとんど成形加工法が確立しているポリ塩化ビニル系樹脂に着目してみると、当該樹脂は非結晶性であるために損失係数が大きく、動的な固体粘弾性測定より求められる損失係数は、約90℃でピークとなり、ピーク値は1.1となる。損失係数のピーク値としては、ブチルゴムや特殊ウレタン系エラストマーよりわずかに低いが、柔軟で、結晶性の低いポリオレフィンであるエチレン−酢酸ビニル共重合体の損失係数のピーク値が約0.3であることを踏まえると、振動エネルギー吸収材に適用できる可能性を有している。しかしながら、ポリ塩化ビニル系樹脂は損失係数がピークとなる温度が約90℃であることから、振動エネルギー吸収材が使用される一般的な温度域(0℃〜40℃を中心に−20℃〜60℃程度)では、大きな振動エネルギー吸収性能が発現できないことになる。また、振動エネルギー吸収材としての実用温度域では硬質であり、その面からも使用が限定される。
以上のことから、ポリ塩化ビニル系樹脂を広範な用途に展開できる振動エネルギー吸収材として使用するためには、損失係数のピーク温度を振動エネルギー吸収材としての実用温度域までに低下させ、実用温度域で柔軟なものにすることが必要である。ポリ塩化ビニル系樹脂に関しては、損失係数のピーク温度を低温域にもたらし、柔軟なものにする方法として、可塑剤を配合する方法がある。しかしながら、ポリ塩化ビニル系樹脂に可塑剤を配合すると、損失係数のピーク値が低下し、振動エネルギーの吸収性能が低下する。具体的には、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、代表的な可塑剤であるジ−2−エチルヘキシルフタレート(以下、DOPと記す)を配合すると、損失係数のピーク温度は約5℃まで低下するが、損失係数のピーク値は約0.7に低下する。この現象は、ポリ塩化ビニル樹脂の分子鎖中に可塑剤の異種分子が混ざり合い、その結果として分子鎖の緩和時間分布が広がることから当然理解されることである。
しかし、ある種の可塑剤に関しては、それをポリ塩化ビニル系樹脂に配合した時に損失係数のピーク温度は低温に移動するが、そのピーク値は大きくなることが報告されている(特許文献1)。具体的には、ジ−シクロヘキシルフタレート(以下、DCHPと記す)でピーク値が約1.6まで上昇することが見い出されている。しかし、この種の可塑剤は可塑化効率が低く、多量に配合しなければ、損失係数のピーク温度を振動エネルギー吸収材の実用温度域にもたらすことができず、そのように多量に配合すると、成形体にした際に成形体から可塑剤がブリードし、表面がべたつくことになる。また、損失係数を大きくする可塑剤は、一般に高価であり、振動エネルギー吸収材として利用する際に、価格面で適用できる用途が限られることになる。
損失係数を大きくする可塑剤に関わる上記の問題については、例えば、リン酸エステル系の可塑剤を配合する方法(特許文献1)やクロルスルフォン化ポリエチレン、ニトリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を配合する方法(特許文献2)が記載されている。ただし、リン酸エステル系の可塑剤を配合する方法に関しては臭気の発生や耐候性の低下を招くことになる。また、リン酸エステル系の可塑剤も一般には高価であり、価格面で適用できる用途が限定されることはになる。一方、クロルスルフォン化ポリエチレン、ニトリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を配合する方法に関しては、金属への粘着が起こり、加工法によっては成形体にできない場合がある。
したがって、安定に成形加工ができ、着色や劣化がなく、表面が平滑で、機械的強度も大きな振動エネルギー吸収材からなる成形体を得るには、ポリ塩化ビニル系樹脂の重合度は500〜2000の範囲が好ましいことになる。
ここで、可塑化効率が大きい可塑剤は、可塑剤がポリ塩化ビニル系樹脂に混ざりにくいことを意味しており、このような可塑剤の場合は、それをポリ塩化ビニル系樹脂に配合して、ポリ塩化ビニル系樹脂を柔軟にするためには可塑剤を多く配合しなければならない。可塑化効率が1.1を越える可塑剤に関しては、ポリ塩化ビニル系樹脂に配合して成形体にした際に、表面にべたつきがあり、べたつくことが使用の妨げになったり、粘着剤、接着剤の塗布性や密着性に悪影響を及ぼすなど、実用上好ましくない。
以上のことから、振動エネルギー吸収材としての実用温度域において、柔軟で、表面のべたつきがないものを得ようとすると、ポリ塩化ビニル系樹脂に配合される可塑剤は上記で定義した可塑化効率が1.1以下のものに限定されることになる。
なお、本発明においては、可塑化効率が1.1以下の可塑剤であれば、その種類は特に限定されない。可塑化効率が1.1以下となる可塑剤は、例えば、ジ−メチルフタレート、ジ−エチルフタレート、ジ−ブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−イソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジ−イソノニルフタレート、ジ−メチルアジペート、ジ−ブチルアジペート、ジ−イソブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−イソデシルアジペート、ジ−ブチルジグリコールアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジ−メチルセバケート、ジ−ブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジ−エチルサクシネート、メチルアセチルリシノレート、ポリ(1,3−ブタンジオールアジペート)などが挙げられる。その中でも、低コストで、揮発性が低く、耐加水分解性、耐光性、耐油性に優れていることから、ジ−2−エチルヘキシルフタレートやジ−イソノニルフタレートが好適に用いられる。
一方、可塑剤が100重量部を越えると、ポリ塩化ビニル系樹脂はかなり柔軟になるが、損失係数もかなり小さくなる。オリゴマー樹脂の配合量を多くすることで、振動エネルギー吸収材としての実用温度域において柔軟で、損失係数も大きくなるものにすることができるが、可塑剤を多量に配合した分、オリゴマー樹脂も多量に配合して、柔軟性と損失係数を満足させることになり、可塑化効率のよい可塑剤を配合したとしても、成形体の表面がべたつくことになる。また、溶融体の溶融張力が小さくなり、炭酸カルシウムやタルクなどの無機充填材を配合して材料の重量が大きくなると、自重による垂れ下がりが抑えられず、カレンダー成形や押出成形によってシートやフィルムを作製することができなくなる。
したがって、振動エネルギー吸収材としての実用温度域において柔軟で、損失係数が大きく、各種の成形加工法で安定的に成形体が作製でき、しかも得られた成形体の表面がべたつかないようにするためには、可塑剤の配合量は30重量部から100重量部であることが必要である。
ここで、本発明に用いられるオリゴマー樹脂については、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂との相溶性が良好で、固体の動的粘弾性測定で求められる損失係数の温度依存性曲線において、その損失係数のピークがポリ塩化ビニル系樹脂とオリゴマー樹脂に由来する二つのピークに分かれず、一つのピークとなるものが好ましい。この点から、オリゴマー樹脂としては、石油樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂、低分子量ポリスチレン、マレイン酸樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、キシレン系樹脂及びこれらの共重合体が好ましく、単独または2種以上併用して用いられる。
したがって、振動エネルギー吸収材としての実用温度域において、柔軟で、損失係数が大きく、各種の成形加工法で安定的に成形体が作製でき、しかも得られた成形体の表面がべたつかないようにするためには、オリゴマー樹脂の配合量は30重量部から100重量部であることが必要である。
ここで、無機充填材としては、特に限定されず、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、グラファイト、シリカ、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、クレー、カオリン、ベントナイト、パイロフェライト、セサリナイト、ゼオライト、ネフェリンシナイト、アパタルジャイト、ウオラストナイト、フェライト、ドロマイト、ケイソウ土、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられ、これらは単独もしくは2種以上を組み合わせて使用される。この中でも、低コストで目的とする性能が発現できる点で、炭酸カルシウムやタルクが好ましい。また、マイカやグラファイトなどのフレーク状の無機充填材は、炭酸カルシウムやタルクより高価で、低コスト化には寄与しないが、炭酸カルシウムやタルクを配合した場合よりも損失係数が大きくなり、損失係数を大きくすることが必要とされる場合に好適である。
加工助剤樹脂としては、本発明に用いる組成物の溶融張力を大きくするものであれば特に限定はないが、ポリ塩化ビニル系樹脂の特徴を保持した上で、少量で溶融張力を大きくできるという点で、ポリ塩化ビニル系樹脂との相溶性が良好なものが好ましく、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ポリウレタン、塩素化ポリエチレンが特に好ましい。これらの加工助剤樹脂は単独或いは2種以上併用して用いることが可能である。ここで、加工助剤樹脂の配合量が0.5重量部より少ない場合は、溶融張力の増大効果が十分でなく、かといって、加工助剤樹脂の配合量が20重量部より多くなると、加工助剤樹脂の種類によって影響は異なるが、成形体が硬くなったり、表面がべたつくようになり、いずれの加工助剤樹脂においても好ましくない。したがって、カレンダー成形や押出成形で、安定的にシートやフィルムを製造し、得られた成形体が柔軟で、べたつきのないものとするためには、加工助剤樹脂の配合量は0.5〜20重量部の範囲である必要がある。
上記の組成物に、安定剤として旭電化工業(株)製の商品名アデカスタブ、グレードAC288と商品名アデカスタブ、グレードAP616を、各々、1.65重量部、2.4重量部ずつ配合し、170℃に設定した金属ロールで10分間混練して厚さ1mmのシートを作製した。
そして、得られたシートの柔軟性、損失係数のピーク値および25℃における損失係数の値、表面におけるべたつきの有無、ならびに成形加工性の指標としてロールからの溶融体の剥離性を評価した。また、各評価項目に関する良否の判定は下記の評価基準にしたがって行なった。
(1)シートの柔軟性;柔軟性に関する判定は、固体の動的粘弾性測定から求められる貯蔵弾性率を指標として実施した。ここでは、一般的に使用されている軟質塩化ビニルシートの貯蔵弾性率と比較することで良否を判定し、軟質塩化ビニルシートの中で、柔軟性が低い部類に属するシート(塩化ビニル樹脂100重量部に可塑剤としてジ−2−エチルヘキシルフタレートを25重量部配合したもの)の25℃における貯蔵弾性率を基準値とし、測定した貯蔵弾性率が基準値と同等以下の場合は良(○)とし、基準値より大きな場合は不可(×)とした。なお、ここでは、シートから長さ21mm、幅10mmの短冊を切り出し、それを測定試料とした。測定には、非共振型強制振動法に基づく測定装置である東洋精機製作所(株)製の動的粘弾性測定装置、レオログラフソリッドを用い、チャック間距離を15mm、測定周波数10Hzで、25℃における貯蔵弾性率を測定した。
(2)シートの損失係数;損失係数に関する判定は、固体の動的粘弾性測定から求められる損失係数のピーク値、ならびに25℃における損失係数を指標として実施した。ここでも、軟質塩化ビニルシートの中で柔軟性が低い部類に属するシート(塩化ビニル樹脂100重量部に可塑剤としてジ−2−エチルヘキシルフタレートを25重量部配合したもの)の損失係数のピーク値ならびに25℃における損失係数を基準値とし、測定した損失係数のピーク値および25℃における値がいずれも基準値より大きい場合は(○)とし、一つでも基準値より小さくなる場合は不可(×)とした。損失係数についても、柔軟性と同様に、動的粘弾性測定装置(レオログラフソリッド)を用いて、昇温速度2℃/分、測定周波数10Hzの条件で、−60℃から180℃の温度範囲における貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)を求め、損失係数(Tanδ=E”/E’)を算出した。
(3)表面のべたつき;表面のべたつきは、シートの表面を指で触った感触で、一般的に使用されている軟質塩化ビニルシートのべたつきと比較することで良否を判定した。軟質塩化ビニルシートの中で、柔軟性が高い部類に属するシート(塩化ビニル樹脂100重量部に可塑剤としてジ−2−エチルヘキシルフタレートを40重量部配合したもの)のべたつき感に対して、表面に触れた感触としてべたべたした感触がない場合は良(○)とし、べたついていると感じる場合は不可(×)とした。
(4)成形加工性;成形加工性の判定は、170℃に設定した金属ロールからの溶融体の剥離性を指標として実施した。ロールから厚さ1mmのシート状の溶融体を剥離して引き取る際に自重による垂れ下がりが発生せず、シートとして引き出せる場合を成形加工性が良(○)とし、ロールから剥離すると同時に自重による垂れ下がりが発生し、シートが伸びたり、引き出せない場合を成形加工性が不可(×)とした。
上記の組成物に、実施例1と同じ種類と配合量の安定剤を配合し、実施例1と同条件で厚さ1mmのシートを作製した。表1に実施例5の評価結果を記す。
記すが、加工助剤樹脂として用いたMMA系樹脂の配合量が多すぎ、柔軟性が目標を満足しない。
記すが、加工助剤樹脂として用いたエチレン−酢酸ビニル共重合体の配合量が多すぎ、表面がべたついてくる。
Claims (3)
- ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100重量部に対して、可塑剤として可塑化効率が1.1以下である可塑剤(B)のみを30〜100重量部、石油樹脂、ケトン樹脂、低分子量ポリスチレン、マレイン酸樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、キシレン系樹脂及びこれらの樹脂から選ばれる単独または2種以上の脂環及び/または芳香環構造を含むオリゴマー樹脂(C)を30〜100重量部及び無機充填材(D)を50〜300重量部を含んでなり、前記可塑剤(B)と前記オリゴマー樹脂(C)の配合量の比率が、重量比率で、前記可塑剤(B)が1に対して前記オリゴマー樹脂(C)が0.6〜1.5の範囲であることを特徴とする振動エネルギー吸収材。
- 前記可塑化効率が1.1以下である可塑剤(B)がジ−メチルフタレート、ジ−エチルフタレート、ジ−ブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−イソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジ−イソノニルフタレート、ジ−メチルアジペート、ジ−ブチルアジペート、ジ−イソブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−イソデシルアジペート、ジ−ブチルジグリコールアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジ−メチルセバケート、ジ−ブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジ−エチルサクシネート、メチルアセチルリシノレート、ポリ(1,3−ブタンジオールアジペート)から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の振動エネルギー吸収材。
- 前記石油樹脂、ケトン樹脂、低分子量ポリスチレン、マレイン酸樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、キシレン系樹脂及びこれらの樹脂から選ばれる単独または2種以上の脂環及び/または芳香環構造を含むオリゴマー樹脂(C)が固体の動的粘弾性測定で求められる損失係数の温度依存性曲線において、その損失係数のピークがポリ塩化ビニル系樹脂とオリゴマー樹脂に由来する二つのピークに分かれず、一つのピークとなることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の振動エネルギー吸収材。
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