近年、光ファイバアクセスやADSL(Asymmetrical Digital Subscriber Line)等の技術を利用した高速インターネットの普及に伴い、光ファイバにより構築された基幹回線において、より広帯域・長距離に亘り信号を確実に伝送することを可能とする技術が求められている。
一般に、基幹回線においては、波長多重化された光信号が用いられており、光信号が減衰した際に、光ファイバアンプを用いて、まとめて増幅することによって、何千kmにも亘る伝送を、光電変換して電気信号に戻してから信号再生を行うことなく、光信号のままで、効率的な長距離伝送を行うように構成している。
しかしながら、伝送距離の延伸、WDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)方式による波長の高密度化、1チャネル当たりの伝送速度の増加に従い、信号波形の劣化が激しくなってくるため、減衰した光強度を光ファイバアンプで増幅するだけでは、十分に低いBER(Bit Error Ratio:ビット誤り率)を確保することができなくなってくる。
信号波形の主な劣化要因としては、CD(Chromatic Dispersion:波長分散)、PMD(Polarization Mode Dispersion:偏波モード分散)等がある。ここで、CDは、波長によって光ファイバを伝搬する速度が異なることを意味している。一般に、変調された光信号の波長は、完全に単一の波長ではなく、変調速度に応じた波長幅を有しているため、光ファイバ中を信号パルスが伝搬するにつれて、CDによって、信号パルスが次第に平均化され歪んできて、パルス幅が広がってきてしまう。
また、PMDは、光ファイバ中を伝搬する光信号の2つの偏光モードの伝搬速度が異なることを意味しているが、該PMDによっても、CDによる信号波形の劣化と類似した波形の劣化が生じてしまう。光ファイバ中を伝搬する光信号は、一般に、或る偏光の向きを有しているが、光信号が光ファイバを伝搬する際に、この偏光が2つの偏光モードに分離して伝搬する。しかし、PMDのために、長い距離を伝搬すると、両者の偏光モードのずれ量により、パルス幅が広がったり、さらには、1つのパルスが2つに分離したりするなどの波形の乱れが生じてしまう。
信号のビットレートが低いときには、CDによるパルス幅の広がりやPMDによる偏光モードのずれ量は、信号の1ビット当たりの時間幅と比べて小さく、隣のビットと干渉し合うISI(Inter-Symbol Interference:符号間干渉)が発生する頻度は少ないので、BER(ビット誤り率)に対する影響は小さい。しかし、信号のビットレートが高くなればなるほど、隣接するビットと干渉し易くなり、通信エラーが増加するという問題が生じる。
CD,PMD以外にも、信号波形の劣化要因として、例えば、帯域制限光フィルタによる波形劣化、非線形効果などが挙げられる。
これらの信号波形の劣化を抑制する方法として、例えば、CDについて言えば、光学的に波長分散を補償する分散補償ファイバを用いる方法などの、光学的な方法も提案されている。しかし、光学的な方法だけを用いて改善することが可能な波長分散の量としては限界があり、また、補償することができる波形劣化の要因についても限定されてしまう。
一方、最近は、基幹回線で用いられる10Gbit/s,40Gbit/s程度にも及ぶ高速の信号に関する信号劣化を改善する別の方法として、EE(Electronic Equalizer:電気等化回路)を用いた手法が注目されている。EE(電気等化回路)を用いた手法が注目されるのは、光学的な方法を用いる場合に比べて、小型、低価格、かつ、応答が高速であり適応等化が比較的し易く、また、種々の波形劣化要因に適用し易いというメリットがあるためである。
ここに、EE(電気等化回路)は、乱れた信号波形を電気的に等化するための回路であり、主に、以下の3種類の回路構成が用いられている。
すなわち、FFE(Feed Forward Equalizer:フィード・フォワード型等化回路)、DFE(Decision Feedback Equalizer:判定帰還型等化回路)、MLSE(Maximum Likelihood Sequence Estimation:最尤系列推定法)型の等化回路の3種である。このうち、前2者はアナログ等化回路であり、最後のMLSE型の等化回路はデジタル等化回路である。
なかでも、FFE型の電気分散等化回路は、構成が比較的容易であることのみならず、各種のISI(符号間干渉)の中でも、或るビットの波形が後ろのビットに影響を与えているISIについてのみ等化し、それ以外については等化することができないというDFE型の等化回路とは異なり、ビットの前・後ろの両方の信号(つまり両方のビット)のISIを等化することができる。また、MLSE型の等化回路では、信号のレートと同程度以上の速度のA/D変換器が必要になり、10Gbit/sクラスの高速の信号を取り扱うためには、精度や消費電力の面から、まだ実用上の困難が伴う点が多い技術であるのに対して、FFE型の電気分散等化回路は、高速信号に対しても、実用性が高く、現状でも最も広く用いられている。
かくのごとき従来技術におけるFFE型の電気分散等化回路の構成として、特許文献1の特開2005−277512号公報「トランスバーサルフィルタ」に記載されたものが挙げられる。図11は、前記特許文献1のような従来技術における電気分散等化回路のブロック構成を示すブロック構成図であり、加算回路、乗算回路、遅延回路が必須の回路となっている。
なお、図11は、単相4タップ構成の場合について示しており、入力端子INと出力端子OUTとの間に、タップ数4と同数の4個の遅延回路(第1の遅延回路11、第2の遅延回路12、第3の遅延回路13、第4の遅延回路14)と乗算回路(第1の乗算回路21、第2の乗算回路22、第3の乗算回路23、第4の乗算回路24)と、タップ数4よりも1つ少ない個数の3個の加算回路(第1の加算回路31、第2の加算回路32、第3の加算回路33)と、が配置されて構成されている。
遅延回路(第1の遅延回路11、第2の遅延回路12、第3の遅延回路13、第4の遅延回路14)は、縦列接続され、遅延回路のうち、第1、第2、第3の遅延回路11,12,13は、入力端子INからの入力信号を、あらかじめ決められた一定の遅延時間ずつ順次遅延させて出力する機能を有し、最終段の第4の遅延回路14は、負荷を調整するためのダミー回路として機能する。
乗算回路(第1の乗算回路21、第2の乗算回路22、第3の乗算回路23、第4の乗算回路24)は、入力端子INおよび各遅延回路(第1の遅延回路11、第2の遅延回路12、第3の遅延回路13)からそれぞれの乗算回路に入力される入力信号に対して、各乗算回路ごとにあらかじめ指定された一定のタップ係数(それぞれ、タップ係数a1,a2,a3,a4)を乗じた信号を出力する機能を有する。通常、タップ係数(タップ係数a1,a2,a3,a4)の値としては、−1〜1の範囲内の値を採るように設計される。
また、加算回路(第1の加算回路31、第2の加算回路32、第3の加算回路33)は、2つの入力信号を足し合わせた信号を出力する機能を有し、まず、第1の乗算回路21、第2の乗算回路22からの入力信号を加算し、しかる後、第1の乗算回路21、第2の乗算回路22からの入力信号の加算結果と第3の乗算回路23からの入力信号とを加算し、さらに、第1の乗算回路21、第2の乗算回路22、第3の乗算回路23からの入力信号の加算結果と第4の乗算回路24からの入力信号とを加算することによって、各乗算回路(第1の乗算回路21、第2の乗算回路22、第3の乗算回路23、第4の乗算回路24)それぞれからの入力信号を順次加算する機能を有する。
なお、FFE型の電気分散等化回路を構成する各遅延回路、各乗算回路、各加算回路は、全て線形の演算回路である。したがって、最終段の出力バッファにリミッタアンプを用いる場合、該出力バッファを除けば、図11のFFE型の電気分散等化回路全体は、線形の信号処理を行う回路となる。つまり、入力されてくる信号をあらかじめ定めた一定の遅延時間ずつ遅延させながら、あらかじめ定めた或る係数を乗じて、足し合わせることによって、PMD等の波形劣化要因が加わったとき、該波形劣化要因を打ち消すような特性を生み出すことができる。
図11の従来の回路構成において、各タップ係数a1,a2,a3,a4を入力するためのタップが接続されている乗算回路(第1の乗算回路21、第2の乗算回路22、第3の乗算回路23、第4の乗算回路24)それぞれを入力信号が通過していく場合について、FFE型の電気分散等化回路(IC)の各信号通過経路すなわち入力端子INから出力端子OUTに至るまでに通過する各演算回路の経路を記述すると、以下のようになる。
第1の乗算回路21を通過する場合、つまり、第1のタップ(タップ係数a1)スルーの経路の場合、
入力端子IN⇒第1の乗算回路21⇒第1の加算回路31
⇒第2の加算回路32⇒第3の加算回路33⇒出力端子OUT
の経路となる。
第2の乗算回路22を通過する場合、つまり、第2のタップ(タップ係数a2)スルーの経路の場合、
入力端子IN⇒第1の遅延回路11⇒第2の乗算回路22⇒第1の加算回路31
⇒第2の加算回路32⇒第3の加算回路33⇒出力端子OUT
の経路となる。
第3の乗算回路23を通過する場合、つまり、第3のタップ(タップ係数a3)スルーの経路の場合、
入力端子IN⇒第1の遅延回路11⇒第2の遅延回路12⇒第3の乗算回路23
⇒第2の加算回路32⇒第3の加算回路33⇒出力端子OUT
の経路となる。
第4の乗算回路24を通過する場合、つまり、第4のタップ(タップ係数a4)スルーの経路の場合、
入力端子IN⇒第1の遅延回路11⇒第2の遅延回路12⇒第3の遅延回路13
⇒第4の乗算回路24⇒第3の加算回路33⇒出力端子OUT
の経路となる。
すなわち、第1の乗算回路21〜第4の乗算回路24それぞれを経由するために要する時間が全て同じ時間であるものとすると、タップ係数a1を乗算する第1の乗算回路21の第1のタップを経由する場合と、タップ係数a2を乗算する第2の乗算回路22の第2のタップを経由する場合との信号の遅延時間の差(タップ遅延時間差τ21)は、ほぼ、第1の遅延回路11を経由する時間で決定されることがわかる。
また、タップ係数a2を乗算する第2の乗算回路22の第2のタップを経由する場合と、タップ係数a3を乗算する第3の乗算回路23の第3のタップを経由する場合との信号の遅延時間の差(タップ遅延時間差τ32)は、ほぼ、第1の加算回路31を経由する時間と第2の遅延回路12を経由する時間との差で与えられることがわかる。
さらに、タップ係数a3を乗算する第3の乗算回路23の第3のタップを経由する場合と、タップ係数a4を乗算する第4の乗算回路24の第4のタップを経由する場合との信号の遅延時間の差(タップ遅延時間差τ43)は、ほぼ、第2の加算回路32を経由する時間と第3の遅延回路13を経由する時間との差で与えられることがわかる。
第1の乗算回路21〜第4の乗算回路24のそれぞれにて乗算されるタップ係数を前述のようにa1〜a4とし、第1、第2のタップスルー間、第2、第3のタップスルー間、第3、第4のタップスルー間の遅延時間の差すなわちタップ遅延時間差を前述のようにτ21,τ32,τ43とすると、出力信号g(t)は、入力信号f(t)の関数として、次の式(1)によって書き表すことができる。
g(t)=a1・f(t)+a2・f(t+τ21)
+a3・f(t+τ32)+a4・f(t+τ43) …(1)
一般に、タップ遅延時間差τ21,τ32,τ43の設定としては、全て同じ値τ0に設定されることが多く、この値τ0は、伝送ビット間隔と同じ時間に設定する整数型の場合と、伝送ビット間隔の半分の時間に設定する場合との2種類が広く使用されている。前と後ろの双方のビット干渉を取り除く機能のみを有する図11のような4タップ構成のFEE型の電気分散等化回路の場合には、タップ遅延時間差τ21,τ32,τ43のいずれについても、伝送ビット間隔と同じ時間に設定する整数型または伝送ビット間隔の半分に設定する分数型の構成が用いられる。
なお、前記特許文献1においては、トランスバーサルフィルタ(Transversal Filter)の各遅延時間の差を等しくするための技術が提供されている。すなわち、通常は、第4の遅延回路14は、入力端子INから出力端子OUTへの信号経路として通過する回路ではないので、付加しなくても良い。しかし、かかる回路構成を用いた場合には、第1、第2の遅延回路11,12と比較して、第3の遅延回路13の出力部のみが、接続される負荷が小さくなり、第1、第2の遅延回路11,12と比較して遅延時間が短くなってしまう。
かくのごとき事態を避けるために、前記特許文献1の技術においては、第1、第2の遅延回路11,12と同一の負荷条件となるように、第3の遅延回路13の出力部には第4の遅延回路14を付加することとし、各遅延回路における遅延時間の差を等しくするように構成している。
特開2005−277512号公報
以下に、本発明に係る電気分散等化回路の最良の実施形態について、その一例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、1ないし複数の遅延回路、1ないし複数の乗算回路、1ないし複数の加算回路を少なくとも備えたFFE(Feed Forward Equalizer)型の電気分散等化回路において、乗算回路、遅延回路の後段に、電気容量を、電気分散等化回路特性の調整用として、挿入することを特徴とし、電気分散等化回路の遅延時間や帯域を所望の値に容易に調整することを可能としている点に特徴を有している。
つまり、本発明においては、信号を伝送する信号線と接地部との間に、もしくは、差動信号を扱う場合には、正の差動信号を伝送する正側の差動信号線と補の差動信号を伝送する補側の差動信号線との間に、特性の調整を図るために調整可能な範囲内の値として設定された容量値を有する電気容量を接続し、かつ、試作評価結果に基づいて該電気容量の容量値を適切な値に調整するという回路構成を採用するものである。
かくのごとき回路構成において、まず、あらかじめ、容量値が調整可能な範囲内の或る値に設定された電気容量を適当な位置に挿入した回路を構成する。ここで、電気容量の容量値としては、電気容量の挿入状態において、設計上、ほぼ所望の遅延時間、帯域が得られるように求められた値とする。しかし、実際に製造した電気分散等化回路について、設計値通りの特性が得られることは、通常、ほとんどの場合不可能である。たとえ、シミュレーション評価を事前に行ったとしても、モデリングの不完全性から、或る程度、特性のずれが起こることは避けられない。
このため、次の段階では、試作評価結果に基づいて、挿入した電気容量の容量値を微調整する。ここで、あらかじめ接続した電気容量の容量値は調整可能な範囲内に設定されているので、当該電気容量の容量値を微調整することが可能であり、遅延時間や帯域などの特性を或る程度自由に調整することが可能となる。最終的に、所望の特性に相当する容量値に調整された電気容量を接続した回路構成とすることによって、所望の遅延時間、帯域などの特性を有するFFE型の電気分散等化回路を構成することができる。
さらには、電気容量の容量値として、当該電気分散等化回路の特性としてあらかじめ定めた複数種類の水準に該当する複数の容量値を用意して、用意しておいた複数の容量値のうち、いずれかの容量値を採用することにより、同じ設計の回路を用いて、遅延時間や帯域を異なる値にずらした水準の電気分散等化回路を提供することも可能となる。
かくのごとく、適切に調整された容量値を有する電気容量を適切な位置に挿入する回路構成を採用することにより、遅延時間や帯域に対する要求が非常に厳しく、マージンが狭い場合であっても、要求される遅延時間や帯域のFFE型の電気分散等化回路を提供することが可能になるという効果が得られる。
なお、電気分散等化回路に、調整可能な範囲内の値として設定された容量値を有する電気容量を挿入する箇所としては、遅延時間や帯域を変化させようとする箇所であれば、任意の箇所で構わない。
例えば、FFE型の電気分散等化回路を構成する1ないし複数の遅延回路または1ないし複数の乗算回路のうち、少なくとも一部の回路の出力信号線に、例えば、該出力信号線と接地部との間に、電気容量を接続するようにしても良いし、もしくは、差動信号を扱うFFE型の電気分散等化回路の場合、該電気分散等化回路を構成する1ないし複数の遅延回路または1ないし複数の乗算回路のうち、少なくとも一部の回路の差動出力信号線に、例えば、正側の差動出力信号線と補側の差動出力信号線との間に、電気容量を接続するようにしても良いし、または、正側の差動出力信号線と接地部との間および補側の差動出力信号線と接地部との間に、電気容量を接続するようにしても良い。
あるいは、FFE型の電気分散等化回路を構成する1ないし複数の遅延回路または1ないし複数の乗算回路のうち、少なくとも一部の回路内に、電気容量を接続するようにしても良い。例えば、遅延回路の小型化を図るべく、トランジスタ等の能動素子を含む回路として遅延回路を構成した場合、遅延回路として能動素子からなる遅延用バッファを、1ないし複数、多段に縦列接続し、そのうち、少なくとも一部の遅延用バッファが利得1の電力増幅回路を含んで構成される場合、電気容量の一方の端子を、電力増幅回路を含む遅延用バッファのうち、少なくとも一部の遅延用バッファの電力増幅回路の出力端子に接続し、電気容量の他方の端子を接地部に接続するようにしても良い。
あるいは、遅延回路として能動素子からなる遅延用バッファを、1ないし複数、多段に縦列接続し、そのうち、少なくとも一部の遅延用バッファがエミッタフォロアを含んで構成されている場合、電気容量の一方の端子を、エミッタフォロアを含む遅延用バッファのうち、少なくとも一部の遅延用バッファのエミッタフォロア回路の出力端子に接続し、電気容量の他方の端子を接地部に接続するようにしても良い。
あるいは、差動信号を扱う場合、遅延回路として能動素子からなる遅延用バッファを、1ないし複数、多段に縦列接続し、そのうち、少なくとも一部の遅延用バッファが利得1の差動対を含んで構成される場合、差動対を含む遅延用バッファのうち、少なくとも一部の遅延用バッファの差動対の正側の差動出力端子と補側の差動出力端子との間に、または、差動対の正側の差動出力端子と接地部との間および補側の差動出力端子と接地部との間に、電気容量を接続するようにしても良い。
あるいは、差動信号を扱う場合、遅延回路として該能動素子からなる遅延用バッファを、1ないし複数、多段に縦列接続し、そのうち、少なくとも一部の遅延用バッファが正側・補側の一対のエミッタフォロアを含んで構成されている場合、一対のエミッタフォロアを含む遅延用バッファのうち、少なくとも一部の遅延用バッファの正側のエミッタフォロアの出力端子と補側のエミッタフォロアの出力端子との間に、または、正側のエミッタフォロアの出力端子と接地部との間および補側のエミッタフォロアの出力端子と接地部との間に、電気容量を接続するようにしても良い。
また、電気分散等化回路を構成する乗算回路についても遅延回路の場合と同様であり、例えば乗算回路が乗算用増幅回路を含んで構成されている場合、電気容量の一方の端子を乗算用増幅回路の一方の出力端子に接続し、電気容量の他方の端子を接地部に接続するようにしても良い。
あるいは、差動信号を扱う場合、乗算回路が乗算用双差動対を含んで構成されている場合、電気容量の一方の端子を乗算用双差動対の一方の差動出力端子(例えば、正側の出力端子)に接続し、電気容量の他方の端子を当該乗算用双差動対の他方の差動出力端子(例えば、補側の出力端子)に接続するか、または、乗算用双差動対の正側の差動出力端子と接地部との間および補側の差動出力端子と接地部との間に、電気容量を接続するようにしても良い。
(第一の実施の形態)
図1は、本発明によるFFE型の電気分散等化回路のブロック構成の第一の実施の形態を示すブロック構成図であり、単相4タップの構成例を示している。図1に示す電気分散等化回路は、入力端子INと出力端子OUTとの間に、タップ数4と同数の4個の乗算回路(第1の乗算回路21、第2の乗算回路22、第3の乗算回路23、第4の乗算回路24)と、タップ数4よりも1つ少ない個数の3個の遅延回路(第1の遅延回路11、第2の遅延回路12、第3の遅延回路13)と加算回路(第1の加算回路31、第2の加算回路32、第3の加算回路33)と、が配置されて構成されている。
つまり、図1に示す本発明においては、前記特許文献1の図11の場合と比べて、第4の遅延回路14は付属していない。また、配線長は、前記特許文献1の図11の場合とは異なり、全ての部位で同じ長さにする必要はない。
なお、遅延回路、乗算回路、加算回路のそれぞれは、図11の場合と同様の機能を有している。すなわち、遅延回路(第1の遅延回路11、第2の遅延回路12、第3の遅延回路13)は、縦列接続され、入力端子INからの入力信号を、あらかじめ決められた一定の遅延時間ずつ順次遅延させて出力する機能を有する。
乗算回路(第1の乗算回路21、第2の乗算回路22、第3の乗算回路23、第4の乗算回路24)は、入力端子INおよび各遅延回路(第1の遅延回路11、第2の遅延回路12、第3の遅延回路13)からそれぞれの乗算回路に入力される入力信号に対して、各乗算回路ごとにあらかじめ指定された一定のタップ係数(それぞれ、タップ係数a1,a2,a3,a4)を乗じた信号を出力する機能を有する。通常、タップ係数(タップ係数a1,a2,a3,a4)の値としては、−1〜1の範囲内の値を採るように設計される。
また、加算回路(第1の加算回路31、第2の加算回路32、第3の加算回路33)は、2つの入力信号を足し合わせた信号を出力する機能を有し、まず、第1の乗算回路21、第2の乗算回路22からの入力信号を加算し、しかる後、第1の乗算回路21、第2の乗算回路22からの入力信号の加算結果と第3の乗算回路23からの入力信号とを加算し、さらに、第1の乗算回路21、第2の乗算回路22、第3の乗算回路23からの入力信号の加算結果と第4の乗算回路24からの入力信号とを加算することによって、各乗算回路(第1の乗算回路21、第2の乗算回路22、第3の乗算回路23、第4の乗算回路24)それぞれからの入力信号を順次加算する機能を有する。
また、FFE型の電気分散等化回路を構成する各遅延回路、各乗算回路、各加算回路は、全て線形の演算回路である。したがって、図1のFFE型の電気分散等化回路全体は、線形の信号処理を行う回路となる。つまり、入力されてくる信号をあらかじめ定めた一定の遅延時間ずつ遅延させながら、あらかじめ定めた或る係数を乗じて、足し合わせることによって、PMD等の波形劣化要因が加わったとき、該波形劣化要因を打ち消すような特性を生み出すことができる。
また、図1の電気分散等化回路では、各乗算回路(第1の乗算回路21、第2の乗算回路22、第3の乗算回路23、第4の乗算回路24)の出力信号線と接地部との間に、調整可能な或る容量値を有する電気容量(第1の電気容量C1,第2の電気容量C2,第3の電気容量C3,第4の電気容量C4)がそれぞれあらかじめ接続されている。ここに、調整可能な或る容量値とは、シミュレーション等により電気分散等化回路が所望の特性を得られる値として算出された容量値のことであって、該容量値を有する電気容量を接続した状態の回路を試作した後、試作結果の評価に基づいて、所望の特性が得られるように容量値を調整することが可能である。つまり、試作時の電気容量の容量値を、あらかじめ定めた調整可能範囲内で調整することを可能とするだけの面積的な余裕を有する回路レイアウトを採用している。具体的には、あらかじめ接続した電気容量の容量値を、所望の遅延時間の調整範囲内または所望の帯域の調整範囲内において、さらに増加させて調整することを可能とするだけのレイアウト的な余裕を持たせた回路構成としている。かくのごとき回路レイアウトを採用して、あらかじめ接続された電気容量(第1の電気容量C1,第2の電気容量C2,第3の電気容量C3,第4の電気容量C4)の容量値を変化させることにより、各タップスルーにおける遅延時間や3dB帯域を変化させることができる。
なお、一般に、遅延回路としてトランジスタ等の能動素子を用いた回路を含む構成とした場合は、チップサイズを小型化することができるという利点がある。しかし、能動素子を用いた遅延回路とする場合、伝送線路を用いた遅延回路の場合に比し、遅延時間を調整し難いという問題があったが、本実施の形態のごとく、容量値を調整する電気容量を各乗算回路側の出力信号線に接続することによって、遅延時間を調整することを容易に可能としているので、所望の特性を満たしつつ、各遅延回路に能動素子を用いてチップサイズの小型化を図ることが可能である。
而して、本実施の形態における各遅延回路、各乗算回路、各加算回路は、主な構成素子をトランジスタとして構成して、遅延時間、帯域の調整を容易化しつつ、チップサイズの小型化を図ることを可能としている。
各タップスルーの遅延時間と3dB帯域との変化状況の一例を、第1のタップスルーの経路、つまり、第1の電気容量C1が出力信号線と接地部との間に接続されている第1の乗算回路21を信号が通過する場合についての特性を、図2に示している。つまり、図2は、本発明による電気分散等化回路において乗算回路の出力側に接続した電気容量の容量値と信号の遅延時間および3dB帯域との関係の一例を示す特性図であり、図2(A)は、第1の乗算回路21の出力信号線に接続した電気容量(第1の電気容量C1)の容量値を変化させた場合の第1のタップスルーの経路における信号の遅延時間(第1の遅延時間T1)の変化の様子を示し、図2(B)は、第1の乗算回路21の出力信号線に接続した電気容量(第1の電気容量C1)の容量値を変化させた場合の第1のタップスルーの経路における信号の3dB帯域(第1の帯域BW1)の変化の様子を示している。ここで、第1の遅延時間T 1 とは、図1において、第1の乗算回路21、第1、第2、第3の加算回路31,32,33を通過する信号経路に要する時間を意味している。
例えば、第1の電気容量C1の容量値を大きくすると、第1のタップスルーの場合に入力端子INから出力端子OUTまで通過するために要する第1の遅延時間T1が、図2(A)に示すように、容量値の増加に応じて長くなり、第1のタップスルーの3dB帯域である第1の帯域BW1は、図2(B)に示すように、容量値の増加に応じて逆に減少する。また、第1の電気容量C1の容量値を小さくすると、第1の遅延時間T1が、図2(A)に示すように、容量値の減少に応じて短くなり、第1の帯域BW1は、図2(B)に示すように、容量値の減少に応じて逆に増加する。
ここで、3dB帯域とは、ゲインが最大ゲインから3dB減少する周波数を意味している。図3は、第i番目のタップスルー(Tiスルー)の場合の周波数とゲインとの関係を示す特性図であり、第i番目のタップスルーの周波数特性(Tiスルー特性)として、3dB帯域の概念を説明するための説明図である。つまり、第i番目のタップスルーの信号経路が図3のような周波数特性を有している場合は、第i番目のタップスルー(Tiスルー)における3dB帯域は、ゲインが最大ゲインから3dB減少する周波数f0で与えられる。
図1の第1のタップスルーの場合のように、第1〜第4のタップスルーそれぞれに挿入されている電気容量C1〜C4の容量値を或る値を中心として変化させることによって、それぞれのタップスルーの信号経路において必要となる帯域BW1〜BW4(第1の帯域BW1、第2の帯域BW2、第3の帯域BW3、第4の帯域BW4)を満たす範囲内で、それぞれのタップスルーの遅延時間T1〜T4(第1の遅延時間T1、第2の遅延時間T2、第3の遅延時間T3、第4の遅延時間T4)を自在に変化させることができる。
ここで、電気容量C1〜C4をMIM(Metal−Insulator−Metal:金属層・絶縁体層・金属層)によって構成する場合、電気容量C1〜C4の容量値は、通常、二つの金属層で挟まれた絶縁体層の面積によって決定することができるので、絶縁体層の面積の値から容量値を正確に算出することができる。したがって、電気容量C1〜C4の容量値を正確に変化させることが可能であり、それぞれのタップスルーの遅延時間T1〜T4を正確に変化させることができる。
一方、第1〜第4のタップスルーそれぞれの間のタップ遅延時間差τ21,τ32,τ43(第1、第2のタップスルー間のタップ遅延時間差τ21、第2、第3のタップスルー間のタップ遅延時間差τ32、第3、第4のタップスルー間のタップ遅延時間差τ43)は、それぞれのタップスルーの遅延時間T1〜T4の差(τ21=T2−T1,τ32=T3−T2,τ43=T4−T3)として与えられる。したがって、タップ遅延時間τ21,τ32,τ43についても、電気容量C1〜C4の容量値により自在にかつ正確に変化させることができるようになる。
具体的に、電気容量C1〜C4の容量値を変化させることにより、実際に所望する特性を得る手順は以下の通りである。つまり、以下の第(1)項、第(2)項において、シミュレーションによって所望の特性になるように電気容量C1〜C4の容量値を設計値として設定することができ、さらに、第(3)項〜第(6)項において、実際の試作結果からのフィードバックも含めて調整することもできる。
(1)電気容量C1〜C4の容量値をはじめ電気分散等化回路内のデバイスパラメータやレイアウト上の寄生容量などを設定して、シミュレーションを行う。つまり、シミュレーション結果として、電気容量C1〜C4の容量値の変化に対して、電気分散等化回路の遅延時間や帯域などのグラフを出力する。
(2)シミュレーション結果を参照して、中心値として所望の特性が得られるように、電気容量C1〜C4の容量値を決定する。ここで、特性上、余裕がある場合は、或る値を中心にして、何種類かの容量値を振り分けた水準を用意するように設計することもできる。
(3)シミュレーション結果に基づいて、ウェハの試作を行う。
(4)試作したウェハを用いて評価を行い、試作ウェハの実際のデバイスパラメータを用いた場合のシミュレーション結果との間で、遅延時間や帯域に関する特性の比較を行う。
(5)試作結果とシミュレーション結果との間で特性にずれが生じていた場合、第(1)項のシミュレーション結果で得られているグラフを基にして、生じている当該ずれを補正する方向に、ずれを解消させる容量値分だけ変化させて、電気容量C1〜C4の容量値を決定する。(何種類かの容量値を振り分けた水準を用意するように設計した場合は、所望の容量値に最も近い値を基準にする。)
(6)しかる後、第(3)項に戻り、再試作を行う。ここで、再試作を行う際に、電気容量C1〜C4の容量値が、第(5)項で決定された値になるように、電気容量C1〜C4の電極間の絶縁体の面積を調整して設定する。
以上の手順を繰り返すことによって、電気容量C1〜C4の容量値を最終的に所望の特性を満たす値に調整することができる。つまり、かくのごとき手順を経て、あらかじめ調整された容量値を有する電気容量C1〜C4を乗算回路(第1の乗算回路21、第2の乗算回路22、第3の乗算回路23、第4の乗算回路24)それぞれの出力信号線と接地部との間に接続することによって、電気分散等化回路として所望の遅延時間や帯域を得ることができる。
電気分散等化回路に対する要求条件は、当該電気分散等化回路を適用するシステムの要求値によって異なり、電気分散等化回路のタップ数やタップ間隔が異なる。したがって、適用するシステムによっては、タップ遅延時間よりも、タップの帯域つまりタップスルーの3dB帯域に対する要求の方が厳しい場合も存在する。かくのごとき場合においても、前述したように、各乗算回路(第1の乗算回路21、第2の乗算回路22、第3の乗算回路23、第4の乗算回路24)の出力信号線と接地部との間に、或る容量値を有する電気容量(第1の電気容量C1,第2の電気容量C2,第3の電気容量C3,第4の電気容量C4)を挿入し、挿入した電気容量の容量値を変化させることによって、図2(B)に示したように、3dB帯域を変化させて、システム要求値を満足させる帯域とすることもできる。
(第二の実施の形態)
次に、本発明によるFFE型の電気分散等化回路の第二の実施の形態について説明する。図4は、本発明によるFFE型の電気分散等化回路のブロック構成の第二の実施の形態を示すブロック構成図であり、図1の第一の実施の形態の場合と同様に、単相4タップの構成例を示している。図4に示す電気分散等化回路を構成する各遅延回路、各乗算回路、各加算回路のそれぞれは、図1に示した電気分散等化回路の場合と同様の機能を有している。
ただし、図4に示す本実施の形態の電気分散等化回路は、図1に示した第一の実施の形態の電気分散等化回路のように、各乗算回路(第1の乗算回路21、第2の乗算回路22、第3の乗算回路23、第4の乗算回路24)の出力信号線と接地部との間に、電気容量(第1の電気容量C1,第2の電気容量C2,第3の電気容量C3,第4の電気容量C4)を接続する回路構成ではなく、各遅延回路(第1の遅延回路11、第2の遅延回路12、第3の遅延回路13)の出力信号線と接地部との間に、調整可能な或る容量値を有する電気容量(第1の電気容量C1,第2の電気容量C2,第3の電気容量C3)がそれぞれあらかじめ接続されている。ここに、調整可能な或る容量値とは、シミュレーション等により電気分散等化回路が所望の特性を得られる値として算出された容量値のことであって、該容量値を有する電気容量を接続した状態の回路を試作した後、試作結果の評価に基づいて、所望の特性が得られるように容量値を調整することが可能である。つまり、試作時の電気容量の容量値を、あらかじめ定めた調整可能範囲内で調整することを可能とするだけの面積的な余裕を有する回路レイアウトを採用している。具体的には、あらかじめ接続した電気容量の容量値を、所望の遅延時間の調整範囲内または所望の帯域の調整範囲内において、さらに増加させて調整することを可能とするだけのレイアウト的な余裕を持たせた回路構成としている。
したがって、図1に示した第一の実施の形態の電気分散等化回路においては、電気容量C1〜C4の容量値を変化させることによって、電気分散等化回路の第1〜第4のタップスルーの遅延時間T1〜T4や帯域BW1〜BW4を変化させるように構成していたが、図4の本実施の形態の電気分散等化回路においては、電気容量C1〜C3の容量値を変化させることによって、第1〜第4のタップスルーそれぞれの間のタップ遅延時間差τ21,τ32,τ43(第1、第2のタップスルー間のタップ遅延時間差τ21、第2、第3のタップスルー間のタップ遅延時間差τ32、第3、第4のタップスルー間のタップ遅延時間差τ43)を直接変化させることができ、タップ遅延時間差に対する制御性を改善することができる。
ここに、第1〜第4のタップスルーそれぞれの間のタップ遅延時間差τ21,τ32,τ43は、前述のように、それぞれのタップスルーの遅延時間T1〜T4の差(τ21=T2−T1,τ32=T3−T2,τ43=T4−T3)として与えられるものである。
ただし、図1に示した第一の実施の形態の電気分散等化回路においては、各乗算回路の出力信号線に接続した電気容量C1〜C4の容量値を変化させることによって、第1〜第4のタップスルーそれぞれにおける帯域や遅延時間等のスルー特性を全て独立に変化させることができた。これに対して、図4に示す本実施の形態の電気分散等化回路においては、例えば、第1の遅延回路11の出力信号線に接続した第1の電気容量C1の容量値を変化させた場合は、第2、第3、第4のタップスルーのスルー特性が、また、第2の遅延回路12の出力信号線に接続した第2の電気容量C2の容量値を変化させた場合は、第3、第4のタップスルーのスルー特性が、また、第3の遅延回路13の出力信号線に接続した第3の電気容量C3の容量値を変化させた場合は、第4のタップスルーのスルー特性が、変化してしまい、第1〜第4のタップスルーの全てのスルー特性が所望のものになるように配慮して設計することが必要となる。
(第三の実施の形態)
次に、本発明によるFFE型の電気分散等化回路の第三の実施の形態について説明する。図5は、本発明によるFFE型の電気分散等化回路のブロック構成の第三の実施の形態を示すブロック構成図であり、図1の第一の実施の形態の電気分散等化回路の全ての構成回路を、正・補の差動入出力信号を扱う差動4タップ型の回路構成とした場合に相当している。
つまり、図5に示す電気分散等化回路は、差動入力端子DT,DCと差動出力端子QT,QCとの間に、正・補の差動信号を扱う回路として、タップ数4と同数の4個の乗算回路(第1の乗算回路21A、第2の乗算回路22A、第3の乗算回路23A、第4の乗算回路24A)と、タップ数4よりも1つ少ない個数の3個の遅延回路(第1の遅延回路11A、第2の遅延回路12A、第3の遅延回路13A)と加算回路(第1の加算回路31A、第2の加算回路32A、第3の加算回路33A)と、が配置されて構成されている。
また、図5の電気分散等化回路を構成する各遅延回路、各乗算回路、各加算回路は、図1の場合と同様、全て線形の演算回路である。したがって、図5の電気分散等化回路全体は、線形の信号処理を行う回路となる。つまり、入力されてくる差動信号をあらかじめ定めた一定の遅延時間ずつ遅延させながら、あらかじめ定めた或る係数を乗じて、足し合わせることによって、PMD等の波形劣化要因が加わったとき、該波形劣化要因を打ち消すような特性を生み出すことができる。
また、図5の電気分散等化回路では、各乗算回路(第1の乗算回路21A、第2の乗算回路22A、第3の乗算回路23A、第4の乗算回路24A)の正側の差動出力信号線と補側の差動出力信号線との間に、調整可能な或る容量値を有する電気容量(第1の電気容量C1,第2の電気容量C2,第3の電気容量C3,第4の電気容量C4)がそれぞれあらかじめ接続されている。ここに、調整可能な或る容量値とは、シミュレーション等により電気分散等化回路が所望の特性を得られる値として算出された容量値のことであって、該容量値を有する電気容量を接続した状態の回路を試作した後、試作結果の評価に基づいて、所望の特性が得られるように容量値を調整することが可能である。つまり、試作時の電気容量の容量値を、あらかじめ定めた調整可能範囲内で調整することを可能とするだけの面積的な余裕を有する回路レイアウトを採用している。具体的には、あらかじめ接続した電気容量の容量値を、所望の遅延時間の調整範囲内または所望の帯域の調整範囲内において、さらに増加させて調整することを可能とするだけのレイアウト的な余裕を持たせた回路構成としている。かくのごとき回路レイアウトを採用して、あらかじめ接続された電気容量(第1の電気容量C1,第2の電気容量C2,第3の電気容量C3,第4の電気容量C4)の容量値を変化させることにより、図1の電気分散等化回路の場合と同様、各タップスルーにおける遅延時間や3dB帯域を変化させることができる。
なお、一般に、遅延回路としてトランジスタ等の能動素子を用いた回路を含む構成とした場合は、チップサイズを小型化することができるという利点がある。しかし、能動素子を用いた遅延回路とする場合、伝送線路を用いた遅延回路の場合に比し、遅延時間を調整し難いという問題があったが、本実施の形態のごとく、容量値を調整する電気容量を各乗算回路側の差動出力信号線に接続することによって、遅延時間を調整することを容易に可能としているので、所望の特性を満たしつつ、各遅延回路に能動素子を用いてチップサイズの小型化を図ることが可能である。
而して、本実施の形態における各遅延回路、各乗算回路、各加算回路は、主な構成素子をトランジスタとして構成して、遅延時間、帯域の調整を容易化しつつ、チップサイズの小型化を図ることを可能としている。
ここで、図5に示すように、電気分散等化回路を正・補の差動入出力信号を扱う回路構成とすることにより、以下のような利点が得られる。
FFE型の電気分散等化回路のごときアナログ信号回路の場合は、一般に、信号線から高周波信号が漏れて互いに干渉し合い、ノイズとなって特性に悪影響を及ぼす問題が発生する。しかし、正・補の差動入出力信号を扱う回路構成を用いた場合には、信号線から或る程度離れた場所では、正側の信号線と補側の信号線とからの高周波の漏れ信号が互いに相殺し合い、その結果、信号線から或る程度離れた場所への高周波信号の漏洩を著しく小さくすることができる。高周波信号の漏洩が少なくなる結果として、意図しない信号の干渉を削減することができ、アナログ信号回路の特性の向上を図ることができる。
かくのごとく、正・補の差動入出力信号を扱う回路構成を用いる場合であっても、図1に示した第一の実施の形態と同様に、各乗算回路(第1の乗算回路21A、第2の乗算回路22A、第3の乗算回路23A、第4の乗算回路24A)の正・補それぞれの差動出力信号線と接地部との間に、電気容量を接続して構成することも可能である。しかし、図5に示す電気分散等化回路のように、各乗算回路の正・補の差動出力信号線間に電気容量を挿入した方が、差動出力信号線それぞれと接地部との間に挿入する場合に比して、特性上の相乗効果が得られるので、挿入するトータルの電気容量の容量値を(1/4)に抑えることができ、挿入する電気容量として必要な占有面積を少なくすることができるという利点が得られる。
つまり、図1の第一の実施の形態と同様に、正・補の差動出力信号線それぞれと接地部との間に電気容量を接続した場合には、例えば容量値Coの電気容量を2個並列に接続することに相当するので、全体の電気容量の容量値は(2・Co)となる。一方、正・補の差動出力信号線間に電気容量を挿入する場合、容量値Coの電気容量を2個直列に接続することに相当するので、全体の電気容量の容量値は(Co/2)となる。したがって、正・補の差動出力信号線間に電気容量を挿入する場合の電気容量の容量値は、正・補の差動出力信号線それぞれと接地部の間に電気容量を接続した場合に比べて、(1/4)に低減することができる。
なお、図5のような差動信号を扱う回路構成を、例えばInP HBT(Hetero-junction Bipolar Transistor:ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)等の半導体素子を用いて実現した場合、配線について注意を払う必要がある。InP HBTを用いた回路の場合は、図6に示すように、一般に、電気分散等化回路を構成する遅延回路や乗算回路や加算回路が、電力増幅用の差動対とエミッタフォロアとのペアから構成される。図6は、電気分散等化回路をInP HBTを用いて構成する場合の接続構成例を説明するための説明図である。
つまり、InP HBTを用いた回路構成においては、図6に示すように、
差動対1a−エミッタフォロア1b−差動対2a−エミッタフォロア2b−…
と、差動対とエミッタフォロアとのペアが交互に接続される構成になる。
このとき、エミッタフォロア1b−差動対2aの間や他のエミッタフォロアと次段の差動対との間など、エミッタフォロアの後ろの配線の長さは、100μm以上の長さであっても構わないが、差動対1a−エミッタフォロア1bの間や差動対2a−エミッタフォロア2bの間など、差動対とエミッタフォロアとの間の配線の長さが、100μm未満となるように、レイアウトすることが必要である。その理由は、差動対1a,2aなどの差動対の方が、エミッタフォロア1b,2bなどのエミッタフォロアよりも出力インピーダンスが遙かに高いので、後ろに接続される配線の影響を受け易いためである。例えば、1μmエミッタ幅のInP HBTプロセスにより構成した場合、差動対の出力インピーダンスは、150Ω程度である。後ろに接続される配線のインピーダンスが、20GHzの周波数で、150Ω程度の差動対の出力インピーダンスよりも十分に高ければ、特性に対する影響は小さいことになる。
一般に、同プロセスで使用される2μm幅、100μmの長さの配線の容量値は、10fF程度であるので、20GHzの周波数の場合の2μm幅、100μm長の配線のインピーダンスZは
Z=1/(2×pi×f×C)=1/(2×3×2e10×10e−15)
=1/(1.2×e−3)=900Ω
となり、差動対の出力インピーダンス150Ωに比し十分に大きい。
したがって、差動対の後ろの配線の長さが、100μm以下の長さであれば、差動対の出力インピーダンス150Ωに比べて十分に大きいインピーダンスの配線となり、特性に対する影響を小さくすることができる。
つまり、電気分散等化回路においては、本実施の形態の図5のような回路構成のみならず、第一、第二の実施の形態における回路構成の場合であっても、遅延回路や乗算回路や加算回路が、電力増幅回路や差動対を含む回路構成であった場合、電力増幅回路の出力信号線の配線長や差動対の差動出力信号線の配線長を100μm以内に抑えることにより、電気分散等化回路の特性に対する影響を無視することができる程度に小さくすることができる。
また、使用する電気容量としては、MIM(Metal-Insulator-Metal:金属層・絶縁体層・金属層)の構成を用いるのが普通であり、電気容量専用として、絶縁体層に薄膜の絶縁体を用いた場合には、電気容量の絶縁体層の単位面積当たりの容量値は、例えば
0.2fF/μm2
程度である。
また、電気容量専用の部品を用いる代わりに、多層配線の、配線間の容量を用いることも可能である。多層配線間の容量を用いる場合、MIMの場合と同じ面積とするためには、より大きな容量値が必要になるが、電気容量専用のプロセスを利用することができなかった場合に適用するようにしても良い。
図5の電気分散等化回路の例において、第1のタップ(T1)スルー〜第4のタップ(T4)スルーとなる各乗算回路(第1の乗算回路21A、第2の乗算回路22A、第3の乗算回路23A、第4の乗算回路24A)に、それぞれ、例えば約100fF程度の容量値の電気容量をあらかじめ挿入しておく。該電気容量を挿入しておかない場合、第1のタップスルー〜第4のタップスルーの遅延時間を減少させる(つまり、電気容量の容量値を減少させる)方向の調整ができなくなってしまうからであり、特性的に不要な場合であっても、電気容量をあらかじめ挿入しておく。而して、第1のタップスルー〜第4のタップスルーの遅延時間を延長したり短縮したりすることが可能になる。
また、電気容量専用のプロセスを用いる場合、通常、プロセス上のレイアウトルールには制限があって、或るサイズ以下の電気容量を挿入することができない場合がある。そのため、該制限分をも加味して、容量値を可変に調整することが可能になるように、余裕を有する容量値の電気容量をあらかじめ挿入しておくことが必要である。つまり、レイアウト設計上、最小サイズと規定された際の容量値よりも、所望の遅延時間の調整範囲内または所望の帯域の調整範囲内における調整を可能とする容量値分以上に大きい容量値の電気容量をあらかじめ挿入した回路構成とすることが必要である。
例えば、MIM構成の電気容量において、レイアウト設計上、5μm×5μmのサイズよりも小さいサイズの電気容量を挿入することができない場合には、
0.2fF/μm2×(5μm×5μm)=5fF
よりも小さい容量値の電気容量を挿入することができなくなることから、例えば、±1ps程度の遅延時間の調整を必要とするような回路構成であった場合には、±1psの遅延時間の調整範囲に該当する容量値の調整範囲である、例えば±11fFを十分にカバーする、例えば、10μm×10μm(つまり20fF)のサイズの電気容量をあらかじめ挿入しておくことによって、−側であっても、最大15fFの容量値の調整を可能にすることができ、調整範囲とされる1psの遅延時間を十分にカバーすることができる。
図5において、例えば、第2の電気容量C2の容量値の変化に対して、第2のタップ(T2)スルーの帯域・遅延時間がどのように変化するかをプロットした図が、図7である。つまり、図7は、図5の電気分散等化回路において、第2の乗算回路22Aの差動出力信号線間に接続した第2の電気容量C2の容量値と差動信号の遅延時間T2および帯域BW2との関係を示す特性図であり、図7(A)は、第2の電気容量C2の容量値の変化ΔCに対して、第2のタップ(T2)スルーの遅延時間T2の変化△Tをプロットしたものであり、図7(B)は、第2の電気容量C2の容量値の変化ΔCに対して、第2のタップ(T2)スルーの3dB帯域BW2の変化f3dBをプロットしたものである。
例えば、試作の評価結果として、モデリングし切れていない配線などの影響によって、第2のタップ(T2)スルーの遅延時間つまり第2の遅延時間T2が、意図せずに、所望の値よりも1ps伸びてしまった場合は、図7(A)の点線に示すように、第2の電気容量C2の容量値を約11fF減少させることによって、ほぼ1ps遅延時間を短くすることができる。かくのごとく、第2の電気容量C2の容量値を約11fF減少させたとしても、3dB帯域BW2については、図7(B)の点線に示すように、高々0.5GHz程度しか増加しないので、帯域特性に対する影響は小さい。
なお、本発明の一例である図5に示す電気分散等化回路の回路動作においては、あらかじめ設定した遅延時間から可変に調整することが可能な遅延時間の変化△Tとして±2psecの範囲をカバーすることが必要となる。遅延時間の変化△Tとして±2psecの範囲をカバーするためには、図7(A)の一点鎖線に示すように、電気容量の容量値の変化△Cとして±25fFの範囲をカバーすることが必要となる。
一方、本発明の一例である図5に示す電気分散等化回路の回路動作において、電気容量の容量値の変化△Cによる3dB帯域の変化f3dBは、対象とする周波数の30%以内に収まれば良い。例えば、15GHz程度の周波数帯域においては、3dB帯域の変化f3dBは4〜5GHz以内に収まれば良い。前述のように、電気容量の容量値の変化△Cとして±25fFの範囲をカバーするようにした場合、3dB帯域の変化f3dBは、図7(B)の一点鎖線に示すように、±0.8GHzの範囲内になるので、十分に、前記4〜5GHz以内に収まっている。したがって、本発明の一例である図5に示す電気分散等化回路においては、例えば電気容量の容量値の変化△Cを±25fF以内に設定することが有効であることが分かる。
以上のように、電気分散等化回路として要求される特性を得る回路構成を設計する場合、本実施の形態のような差動信号を扱う場合のみならず、第一、第二の実施の形態のような場合についても、挿入する電気容量の容量値を、所望の遅延時間や帯域の調整範囲内における調整を可能とするいずれかの値に設定した場合について、各構成回路の回路パラメータや回路レイアウトを設計して、しかる後の試作評価結果に基づいて、挿入した電気容量の容量値を調整するようにすれば、要求される特性を正確に実現することが容易に可能となる。
なお、電気容量の構成方法としては、MIM方式ばかりでなく、ダイオードやトランジスタの電極間容量を用いて構成することも可能である。ダイオードやトランジスタの電極間容量を用いる場合、容量値の調節は、ダイオードやトランジスタの電極の対向面積を変化させることによって行うばかりでなく、再試作することなく、ダイオードやトランジスタへ印加する電圧の値を変化させることによって行うことも可能である。
さらに、製造プロセスの実施後に、製造されたチップ上で、レーザやFIB(Focused Ion Beam:収束イオンビーム)などの半導体加工技術を用いて電気容量のトリミングを行うことが可能であれば、プロセス後に、オンウェハ測定を行った評価結果を見ながら、電気容量のトリミングを施して容量値を変化させることによって、特性を調整することも可能である。
なお、図5の電気分散等化回路では、各乗算回路(第1の乗算回路21A、第2の乗算回路22A、第3の乗算回路23A、第4の乗算回路24A)の正・補の差動出力信号線の間に、調整可能な或る容量値を有する電気容量(第1の電気容量C1,第2の電気容量C2,第3の電気容量C3,第4の電気容量C4)をそれぞれあらかじめ接続している場合について示した。しかし、乗算回路の差動出力信号線側ではなく、遅延回路(第1の遅延回路11A、第2の遅延回路12A、第3の遅延回路13A)の正側の差動出力信号線と補側の差動出力信号線との間に、調整可能な或る容量値を有する電気容量(第1の電気容量C1,第2の電気容量C2,第3の電気容量C3)をそれぞれあらかじめ接続して構成するようにしても良く、かかる場合は、図4の第二の実施の形態の電気分散等化回路の全ての構成回路を、正・補の差動入出力信号を扱う差動4タップ型の回路構成とした場合に相当している。
(第四の実施の形態)
次に、本発明によるFFE型の電気分散等化回路の第四の実施の形態について説明する。図8は、本発明によるFFE型の電気分散等化回路のブロック構成の第四の実施の形態を示すブロック構成図であり、正・補の差動入出力信号を扱う差動4タップ型の回路構成とした場合を示している。
第一〜第三の実施の形態における電気分散等化回路は、図1、図4、図5にそれぞれ示したように、電気容量を挿入する部位は、遅延回路、乗算回路それぞれの回路の出力信号線の部位、つまり、図1、図5においては、各乗算回路の出力信号線の部位、図4においては、各遅延回路の出力信号線の部位であったが、電気容量を挿入する部位としては、必ずしも、遅延回路や乗算回路などの回路の出力信号線の部位である必要はなく、遅延回路や乗算回路などの回路の内部であっても良い。
つまり、図8に示す電気分散等化回路は、差動入力端子DT,DCと差動出力端子QT,QCとの間に、正・補の差動信号を扱う回路として、タップ数4と同数の4個の乗算回路(第1の乗算回路21B、第2の乗算回路22B、第3の乗算回路23B、第4の乗算回路24B)と、タップ数4よりも1つ少ない個数の3個の遅延回路(第1の遅延回路11B、第2の遅延回路12B、第3の遅延回路13B)と加算回路(第1の加算回路31B、第2の加算回路32B、第3の加算回路33B)と、が配置されて構成され、乗算回路、遅延回路、加算回路のいずれかのそれぞれの内部に電気容量を挿入した回路構成からなっている。
例えば、遅延回路内に電気容量を挿入する場合について、図8の電気分散等化回路における遅延回路(第1の遅延回路11B、第2の遅延回路12B、第3の遅延回路13B)の回路構成の一例を図9に示す。つまり、図9は、図8の電気分散等化回路における遅延回路の回路構成の一例を示す回路図であり、図9(A)は、遅延回路をトランジスタ等の能動素子によって構成する場合として、3段に多段接続された遅延用バッファからなる遅延回路のブロック構成を示し、図9(B)は、利得1の差動対と正側・補側の一対のエミッタフォロアとからなる遅延用バッファとして、内部に電気容量を挿入していない遅延用バッファBUFAの回路構成を示し、図9(C)は、利得1の差動対と正側・補側の一対のエミッタフォロアとからなる遅延用バッファとして、内部に電気容量を挿入している遅延用バッファBUFBの回路構成を示している。
図9(A)に示すように、各遅延回路(第1の遅延回路11B、第2の遅延回路12B、第3の遅延回路13B)のそれぞれが、遅延用バッファ(BUFA)41,遅延用バッファ(BUFB)42,遅延用バッファ(BUFA)43のごとく、複数段の遅延用バッファを縦列接続した回路構成であった場合、第2段目の遅延用バッファ(BUFB)42の差動出力端子間に(すなわち、正側の差動信号を出力するエミッタフォロアの出力端子と補側の差動信号を出力するエミッタフォロアの出力端子との間に)、図9(C)に示すように、電気容量Caを接続する構成としている。
なお、図9(A)においては、第2段目の遅延用バッファの差動出力端子間に電気容量を接続したが、他段の遅延用バッファの差動出力端子間に接続するようにしても良い。
ただし、図9(A)の回路構成の遅延回路において、最終段の遅延用バッファ(BUFA)43の差動出力端子間に電気容量を接続する構成とした場合は、第三の実施の形態で説明した場合と同様の回路構成となり、各遅延回路の差動出力信号線の部位に電気容量を挿入する構成と同等であり、第三の実施の形態と同様な効果を有することになる。
また、遅延回路として、図9(A)のような3段の遅延用バッファに限るものではなく、1ないし複数の遅延用バッファを多段に縦列接続しても良い。かかる場合において、少なくとも一部の遅延用バッファが正側・補側の一対のエミッタフォロアを含んで構成されている場合には、電気容量を挿入する遅延用バッファを1個に限るものではなく、エミッタフォロアを含む遅延用バッファのうち、少なくとも一部の遅延用バッファの一対のエミッタフォロアの出力端子間に電気容量を挿入するようにしても良い。なお、電気容量の接続形式として、一対のエミッタフォロアの出力端子間ではなく、一対のエミッタフォロアの出力端子それぞれと接地部との間に接続するようにしても良い。
また、差動信号の場合のみに限るものではなく、単相信号の場合であっても良く、遅延回路を構成する1ないし複数の遅延用バッファのうち、少なくとも一部の遅延用バッファが単相信号用のエミッタフォロアを含んで構成されている場合についても全く同様であり、単相信号用のエミッタフォロアを含む遅延用バッファのうち、少なくとも一部の遅延用バッファのエミッタフォロアの出力端子と接地部との間に電気容量を挿入するようにしても良い。
なお、乗算回路の回路内に電気容量を接続する場合についても、遅延回路の場合と同様である。1ないし複数の乗算回路が、単相信号用として一つのエミッタフォロアまたは差動信号用として正側・補側の一対のエミッタフォロアを含んで構成されている場合、前述の遅延回路の場合と同様に、一つのエミッタフォロアまたは一対のエミッタフォロアを含む乗算回路のうち、少なくとも一部の乗算回路の一つのエミッタフォロアの出力端子と接地部との間または一対のエミッタフォロアの正側・補側の出力端子それぞれと接地部との間に電気容量を接続するか、または、一対のエミッタフォロアの正側・補側の出力端子間に電気容量を接続する構成とすることも可能である。
なお、1ないし複数の乗算回路として、一つのエミッタフォロアまたは正側・補側の一対のエミッタフォロアを含んで構成されている場合において、乗算回路の最終の出力段に配置されているエミッタフォロアの出力端子に電気容量を挿入する場合は、乗算回路の出力信号線または差動出力信号線に電気容量を接続する構成と同等になり、第一または第三の実施の形態で説明した場合と同様の回路構成であり、第一または第三の実施の形態と同様な効果を有することになる。
(第五の実施の形態)
次に、本発明によるFFE型の電気分散等化回路の第五の実施の形態について説明する。図10は、本発明によるFFE型の電気分散等化回路における遅延回路の回路構成の図9とは異なる例を第五の実施の形態として示す回路図であり、図10(A)は、多段接続された遅延用バッファからなる遅延回路のブロック構成を示し、図10(B)は、利得1の差動対と正側・補側の一対のエミッタフォロアとからなる遅延用バッファとして、内部に電気容量を挿入していない遅延用バッファBUFAの回路構成を示し、図10(C)は、利得1の差動対と正側・補側の一対のエミッタフォロアとからなる遅延用バッファとして、内部に電気容量を挿入している遅延用バッファBUFB′の回路構成を示している。
図10(A)に示すように、各遅延回路(第1の遅延回路11B、第2の遅延回路12B、第3の遅延回路13B)のそれぞれが、遅延用バッファ(BUFA)51,遅延用バッファ(BUFA)52,遅延用バッファ(BUFB′)53のごとく、複数段の遅延用バッファを縦列接続した回路構成であった場合、最終段の第3段目の遅延用バッファ(BUFB′)53の差動対の出力端子間に(すなわち、差動増幅信号を出力する一対の出力端子間に)、図10(C)に示すように、電気容量Caを接続する構成としている。
つまり、第四の実施の形態における図9(C)の遅延用バッファBUFBの場合、差動信号を出力する一対の出力用エミッタフォロアの出力端子間に電気容量Caを接続していたが、本実施の形態における図10(C)の遅延用バッファBUFB′の場合は、差動入力信号を増幅する差動対の差動出力端子間に電気容量Caを接続して構成している。したがって、第四の実施の形態の場合とは異なり、第3段目という最終段の遅延用バッファであっても、遅延回路の差動出力信号線ではなく、当該遅延回路の内部に電気容量Caが接続される構成となる。
通常、差動対の方がエミッタフォロアよりも出力インピーダンスが高いため、本実施の形態においては、第四の実施の形態の場合と同様の特性を得るために接続する電気容量の容量値を、第四の実施の形態の場合に比べて小さくする必要があるが、遅延時間の調整については、第四の実施の形態の場合と同様な効果を得ることができる。
また、遅延回路として、図10(A)のような3段の遅延用バッファに限るものではなく、1ないし複数の遅延用バッファを多段に縦列接続しても良い。かかる場合において、少なくとも一部の遅延用バッファが利得1の差動対を含んで構成されている場合には、電気容量を挿入する遅延用バッファを1個に限るものではなく、差動対を含む遅延用バッファのうち、少なくとも一部の遅延用バッファの差動対の差動出力端子間に電気容量を挿入するようにしても良い。なお、電気容量の接続形式として、差動対の差動出力端子間ではなく、差動対の差動出力端子それぞれと接地部との間に接続するようにしても良い。
また、差動信号の場合のみに限るものではなく、単相信号の場合であっても良く、遅延回路を構成する1ないし複数の遅延用バッファのうち、少なくとも一部の遅延用バッファが利得1の単相信号用の電力増幅回路を含んで構成されている場合についても全く同様であり、単相信号用の電力増幅回路を含む遅延用バッファのうち、少なくとも一部の遅延用バッファの電力増幅回路の出力端子と接地部との間に電気容量を挿入するようにしても良い。
なお、乗算回路の回路内に電気容量を接続する場合についても、遅延回路の場合と同様である。1ないし複数の乗算回路として、乗算用増幅回路または乗算用双差動対を含んで構成されている場合、前述の遅延回路の場合と同様に、乗算用増幅回路または乗算用双差動対を含む乗算回路のうち、少なくとも一部の乗算回路の乗算用増幅回路の出力端子と接地部との間または乗算用双差動対の差動出力端子それぞれと接地部との間に電気容量を接続するか、あるいは、乗算用双差動対の差動出力端子間に電気容量を接続する構成とすることも可能である。
(その他の実施形態)
前述の各実施の形態においては、全体の回路構成として、図1、図4、図5、図8に示すように、遅延回路の後段に乗算回路、乗算回路の後段に加算回路を配置した回路構成からなる電気分散等化回路を用いて説明した。つまり、縦列接続され、入力端子から入力される入力信号または差動入力端子から入力される差動入力信号を、あらかじめ定めた一定の遅延時間ずつ、順次、遅延させる1ないし複数の遅延回路と、入力端子または差動入力端子、遅延回路それぞれから入力される入力信号または差動入力信号をあらかじめ指定したタップ係数それぞれと乗算する1ないし複数の乗算回路と、乗算回路それぞれから入力される入力信号または差動入力信号を順次加算した結果を出力する1ないし複数の加算回路と、を少なくとも備え、最終段の加算回路の加算結果を出力端子または差動出力端子から出力するFFE(Feed Forward Equalizer)型の電気分散等化回路の場合について説明した。
しかし、本発明は、かかる場合に限るものではない。例えば、遅延回路を乗算回路の後ろに配置した回路構成としたり、遅延回路を乗算回路の前や後ろの両方に配置した回路構成としたり、また、加算回路の接続順序が異なる回路構成としたり、加算回路として3つ以上の入力信号を同時に加算する回路としても良い。
さらに、前述の各実施の形態においては、タップ数が4の場合の電気分散等化回路であったが、任意のタップ数について適用することができ、1ないし複数の遅延回路、1ないし複数の乗算回路、1ないし複数の加算回路によって構成される回路構成であっても、全く同様である。
また、前述した各実施の形態においては、各遅延回路のすべてにあるいは各乗算回路のすべてに、電気容量を挿入する例を示したが、本発明は、かかる場合に限るものではなく、遅延時間、帯域の調整を必要とする箇所に、電気容量を挿入するようにすれば良い。つまり、単相信号を扱う回路構成においては、1ないし複数の遅延回路、1ないし複数の乗算回路、の各回路のうち、少なくとも一部の回路の出力信号線に、および/または、少なくとも一部の回路内に、電気容量を接続するように構成しても良い。また、差動信号を扱う回路構成とする場合には、1ないし複数の遅延回路、1ないし複数の乗算回路、の各回路のうち、少なくとも一部の回路の差動出力信号線に、および/または、少なくとも一部の回路内に、電気容量を接続するように構成しても良い。
また、電気分散等化回路の遅延回路、乗算回路、加算回路の各回路内に電気容量を接続する前述の第四の実施の形態と第五の実施の形態とを混在させて使用することも可能であり、1ないし複数の遅延回路、1ないし複数の乗算回路、1ないし複数の加算回路の各回路のうち、或る回路については、前述の第四の実施の形態のように、エミッタフォロアの出力端子に電気容量を接続し、他の回路については、前述の第五の実施の形態のように、電力増幅回路や差動対の出力端子に電気容量を接続するようにしても良い。
また、電気分散等化回路の遅延回路、乗算回路、加算回路の各回路を形成する半導体素子として、HBT(Hetero-junction Bipolar Transistor)を用いることが望ましく、前述の第3の実施の形態においては、一例として、InPの半導体材料をベースとしたHBTを用いる場合について説明したが、第3の実施の形態のみに限らず、本発明による電気分散等化回路を構成する各回路をHBTによって構成する場合、該HBTを形成する半導体材料として、前述のようなInPのみならず、InGaP,GaN,GaAs,AlGaAsであっても良いし、SiGeであっても良く、如何なる半導体材料を用いてもかまわない。
1a,2a…差動対、1b,2b…エミッタフォロア、11,11A,11B…第1の遅延回路、12,12A,12B…第2の遅延回路、13,13A,13B…第3の遅延回路、14…第4の遅延回路、21,21A,21B…第1の乗算回路、22,22A,22B…第2の乗算回路、23,23A,23B…第3の乗算回路、24,24A,24B…第4の乗算回路、31,31A,31B…第1の加算回路、32,32A,32B…第2の加算回路、33,33A,33B…第3の加算回路、41,42,43…遅延バッファ、51,52,53…遅延バッファ、BUFA,BUFB,BUFB′…遅延バッファ、BW1…第1の帯域、BW2…第2の帯域、BW3…第3の帯域、BW4…第4の帯域、C1…第1の電気容量、C2…第2の電気容量、C3…第3の電気容量、C4…第4の電気容量、Ca…電気容量、DT,DC…差動入力端子、IN…入力端子、OUT…出力端子、QT,QC…差動出力端子、T1…第1の遅延時間、T2…第2の遅延時間、T3…第3の遅延時間、T4…第4の遅延時間、τ21…第1、第2のタップスルー間のタップ遅延時間差、τ32…第2、第3のタップスルー間のタップ遅延時間差、τ43…第3、第4のタップスルー間のタップ遅延時間差。