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JP4831482B2 - 個体のキャリア移動度測定方法 - Google Patents
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JP4831482B2 - 個体のキャリア移動度測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、固体のキャリア移動度測定方法に関するものである。より詳しくは、本発明は、固体のレーザーパルス励起により生じたプラズモンライクな縦波光学(LO)フォノン−プラズモン結合モードの振動による固体の屈折率変化を実時間領域で測定し、その振動の減衰時定数から固体の移動度を直接決定する方法に関するもので、特に半導体などの材料からなるナノ構造デバイスの電気的特性評価法として応用できるものである。
近年、デバイスの極微細化が進み、ナノメートルサイズのデバイスが実現しつつある。ここで電子の平均自由行程(電子が散乱されるまでに進む平均距離;Siでは10〜50nm程度)がデバイスサイズ以下になると、電子が格子振動や格子欠陥に散乱されない領域(すなわちバリスティック伝導領域)になる。この領域が実現できれば、電界効果トランジスタ(FET)等のデバイス中で、電子はソースからドレインまで散乱されることなく進み、スイッチング速度が劇的に速いトランジスタが実現できる。
現在、バリスティック伝導に関する研究は、ほとんどが電子線リソグラフィー等の微細加工技術に依存したデバイスサイズを小さくする手法を取っている。一方、デバイスサイズを小さくする代わりに、電子の平均自由行程を長くする手法もある。例えば極低温にしてフォノン散乱の影響を無くすか、あるいは分子線エピタキシー(MBE)等の技術を駆使して高純度で欠陥の少ない結晶を生成することである。
しかし、デバイスを室温で使用するためには前者の極低温という選択は難しく、また後者の結晶性についても、欠陥密度をゼロにすることはほとんど不可能である。このような理由で、微細加工技術によるデバイスサイズのナノ構造化が進んできた訳である。
以上のような背景の中で重要になるのが、半導体、金属などのナノ構造における移動度の評価である。通常、半導体の移動度測定は、ホール効果を利用することが一般的である(例えば、非特許文献1など)。このホール効果は、1879年にE. H. Hallによって発見された現象であり、半導体や金属に電流が流れている時、電流に直角に磁場を印加すると両者に直角な方向に起電力が生じるというものである。このホール効果の実験では、生じた起電力と印加した磁場と電流密度との関係からホール係数が求まり、このホール係数から移動度を導き出すことができる。しかし、ナノ構造体については、ナノメートル(10−9m)オーダーの空間分解能でのホール測定は困難であると考えられる。
そのような背景で近年、レーザーを用いたラマン散乱を利用した光学的手法によっても、半導体の移動度を求めることができることが分かってきた(例えば、非特許文献2、3など)。空間分解能約1μmを達成できる顕微ラマン分光(例えば、非特許文献4など)や、空間分解能1μm以下を達成できる近接場ラマン分光(例えば、非特許文献5など)を利用すれば、ナノ構造体において非常に局所的な(ナノ構造体1個または数個の)キャリア移動度を評価できる可能性を持っている。
このラマン散乱を用いた方法では、まず、極性のある半導体(SiCなど)中に特有である、縦波光学(LO)フォノン(以下、LOフォノンとも称する)とプラズモン(電子の集団振動)とが結合して生じたLOフォノン−プラズモン結合モードの上の分枝(L)と下の分枝(L)のうち、プラズモンライクな分枝(L又はL)に相当するスペクトルを、カーブフィッティングすることによって、プラズモンの減衰定数γを求める。
ここで、プラズモンライクなモードとは、図1に示すように、結合モードの上の分枝(L)と下の分枝(L)のうち、裸の(フォノンと結合していない)プラズモンの周波数を示す直線Eに近い状態(図1中で、AやBの領域)を指す。CやDの領域は結合モードの減衰がフォノンの緩和に支配される「フォノンライク」な領域である。
また、カーブフィッティングでは、一般に非対称的なスペクトル波形になるLOフォノン−プラズモン結合モードを対象とするため、下記のような特殊な関数を用いる(例えば、前記非特許文献2、3など)。
ここで、Γはフォノンの減衰定数、γはプラズモンの減衰定数、ω,ω,ωはそれぞれTOフォノン周波数、LOフォノン周波数、プラズマ周波数、eは電子電荷、Nは電子密度、mは電子の有効質量、εは高周波数極限の誘電率、εは真空の誘電率である。このようにして求められたプラズモンの減衰定数γを次式に代入することによって、移動度が計算される。
このラマンを用いた方法では、測定試料に電極を付けたり、磁場を印加したりせずに、非接触に光学的手法で移動度を求めることができるので、極性がある半導体については有効であると思われる。
「半導体の物理」培風館, 西沢潤一編, 御子柴宣夫著, 1995年 Journal of Applied Physics, Vol. 78, No.3, pp.1996, 1995年 Journal of Applied Physics, Vol. 90, No.10, pp.5211, 2001年 Journal of Applied Physics, Vol. 78, No.5, pp.3357, 1995年 Journal of Chemical Physics, Vol. 117, No.3, pp.1296, 2002年
しかし、上記の方法は、ラマンスペクトルという周波数領域の測定手法で得られたスペクトルをかなり大がかりな数式群(式()〜式(11))でフィットし、元々時間領域の定数であるプラズモンの緩和時間τの逆数に相当する減衰定数γ=1/τを求めるので、非常に複雑なスペクトルのカーブフィットを必要とし、データ処理に時間がかかるという問題点があった。また、上記の方法は、静的な状態のキャリア移動度を測定しているが、動的な状態、すなわち、例えば光励起によって生じたキャリアが励起された表面から試料の深さ方向に伝導していく状態のキャリア移動度を感度良く測定することが望まれていた。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、動的な状態のキャリア移動度を短時間で且つ正確に測定することができる固体のキャリア移動度測定方法を提供することを課題としている。
本発明の固体のキャリア移動度測定方法は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
に、フォノンとプラズモンが結合する測定対象である固体に対し、ポンプ−プローブ分光法を用いて、反射率変化又は透過率変化におけるプラズモンライクな縦波光学フォ
ノン−プラズモン結合モードによる実時間振動構造を測定し、その測定データに対し、下記式()を用いて時間領域データのフィッティングを行うことにより、プラズモンライクな縦波光学フォノン−プラズモン結合モードの緩和時間τを求め、求めた緩和時間τの値を下記式(2)に代入することにより固体のキャリア移動度μを求めること。
(上記式中、tは時間、AL+は縦波光学フォノン−プラズモン結合モードのプラズモンライクモードによる振動の振幅、τ(=τL+)は縦波光学フォノン−プラズモ
ン結合モードのプラズモンライクモードの緩和時間、ΩL+は縦波光学フォノン−プラズモン結合モードのプラズモンライクモードの振動数、φL+は縦波光学フォノン−プラズモン結合モードのプラズモンライクモードの振動の初期位相、Bは縦波光学フォノンによる振動の振幅、τLOは縦波光学フォノンの緩和時間、ΩLOは縦波光学フォノンの振動数、φLOは縦波光学フォノンの振動の初期位相、Cは縦波光学フォノン−プラズモン結合モードのフォノンライクモードによる振動の振幅、τL−は縦波光学フォノン−プラズモン結合モードのフォノンライクモードの緩和時間、ΩL−は縦波光学フォノン−プラズモン結合モードのフォノンライクモードの振動数、φL−は縦波光学フォノン−プラズモン結合モードのフォノンライクモードの振動の初期位相、eは電子の電荷、mは電子の有効質量である)
に、フォノンとプラズモンが結合する測定対象である固体に対し、ポンプ−プローブ分光法を用いて、反射率変化又は透過率変化におけるプラズモンライクな縦波光学フォノン−プラズモン結合モードによる実時間振動構造を測定し、その測定データに対し、下記式()を用いてウェーブレット変換を行うことにより、プラズモンライクな縦波光学フォノン−プラズモン結合モードの緩和時間τを求め、求めた緩和時間τの値を下記式(2)に代入することにより固体のキャリア移動度μを求めること。
(上記式中、Ψ(x)はマザーウェーブレットと称される、波束を表す関数、xは入力信号で時間の関数、bはこの波束の時間遅延を表す変数、aはこの波束の時間軸に対する伸縮度、tは時間、f(t)は被変換関数である)
に、上記第の発明において、ウェーブレット変換のマザーウェーブレットとして下記式(5)で示す、ガウス関数を変形したGaborのマザーウェーブレットを用いること。
(上記式中、σはガウス関数の半値全幅、xは入力信号で時間の関数である)
を用いること。
に、フォノンとプラズモンが結合している測定対象である固体に対し、ポンプ−プローブ分光法を用いて、反射率変化又は透過率変化におけるプラズモンライクな縦波光学フォノン−プラズモン結合モードによる実時間振動構造を測定し、その測定データに対し、下記式()を用いて短時間フーリエ変換を行うことにより、プラズモンライクな縦波光学フォノン−プラズモン結合モードの緩和時間τを求め、求めた緩和時間τの値を下記式(2)に代入することにより固体のキャリア移動度μを求めること。
(上記式中、Ψ(x)は窓関数、xは入力信号で時間の関数、bは時間遅延、ωは周波数、tは時間、f(t)は被変換関数である)
に、上記第の発明において、短時間フーリエ変換の窓関数としてガウス関数を用い、下記式()により短時間フーリエ変換を行うこと。
(上記式中、σはガウス関数の半値全幅である)
本発明によれば、プラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モードの実時間振動波形を測定することにより、緩和時間を直接求め、それによって固体のキャリア移動度を求めるようにしたので、動的な状態のキャリア移動度を短時間で且つ正確に測定することができる固体のキャリア移動度測定方法を提供することが可能となる。
本発明は、特に半導体などの固体材料からなるナノ構造デバイスの電気的特性評価法として応用することができる。固体、特にナノ構造の固体中の動的な状態あるいは過程は、例えば、半導体ナノ構造を用いたキャリアによる超高速スイッチを開発する際に起きている現象であり、半導体ナノデバイスの電気的特性評価には移動度の測定が必須であり、これからの超高速デバイスの開発に非常に有用になると期待される。本発明によれば、様々な条件(温度や欠陥密度など)下におけるキャリア移動度の評価を行うことができ、HEMT(High Electron Mobility Transistor)などの高速電子移動によるテラヘルツ(1012Hz)電子デバイスの開発へ利用、超高速データ通信や超省電力機器の実現など、大容量データ送受信や省エネルギー問題に寄与することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明では、従来法のように周波数領域でプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モードの減衰定数γを求めるのではなく、時間領域で直接的にプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モードの緩和時間τを求めるという全く新しい発想で、極性半導体バルク結晶や薄膜、および半導体などを含む固体のナノ構造体などにおける移動度を測定するものである。
本発明において、プラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モードの緩和時間τを求めるには、ポンプ−プローブ分光法と呼ばれる一般的な時間分解測定法(例えば、時間分解反射率変化測定法や時間分解透過率変化測定法:特開2002-214137号公報などを参照)を用いて、反射率(あるいは透過率)変化においてプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モードによる実時間振動構造を測定することにより行う。
すなわち、極性物質(GaAs、InP、SiCなど)において、積極的にプラズモンとLOフォノンの結合を利用する手法である。この場合は、ラマン散乱の場合と同じように、LOフォノン−プラズモン結合モードに相当する実時間信号を取得することになる。ここで注意すべき点は、LOフォノン−プラズモン結合モードにもフォノンライクモード(モードの減衰時間はフォノンの減衰時間で決まる)とプラズモンライクモード(モードの減衰時間はプラズモンの減衰時間で決まる)が存在するので、プラズモンライクなモードを観測することにより、その減衰時間を求めれば、近似的にプラズモンの減衰時間と見なすことができる(τ=τL+)。ここで、プラズモンライクなモードとは、ラマンの場合と同様に図1に示すように、結合モードの上の分枝(L)と下の文枝(L)のうち、裸の(フォノンと結合していない)プラズモンの周波数を示す直線Eに近い状態を指す。すなわち、図1中で、AやBの領域を指す。CやDの領域は結合モードの減衰がフォノンの緩和に支配される「フォノンライク」な領域である。
プラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モードの信号は、同時に観測されるLOフォノンの信号(このLOフォノンは主に表面近傍の空乏層に存在している)に重畳することになり、単純な減衰振動の式ではフィットできない場合がある。
そこで、解決手段として下記の3つの手法をとる。まず、単純な減衰振動の式を、観測されうる全てのモードについて加算した次式、
で時間領域の振動波形をフィットすることである。ここで、第一項のAL+は縦波光学フォノン−プラズモン結合モードのプラズモンライクモード(例えばn型GaAsにおいてN>1×1018cm−3では、図1中AのL+に相当)による振動の振幅、τ(=τL+)はL+モードの緩和時間、ΩL+はL+モードの振動数、φL+はL+モードの振動の初期位相、第二項のBはLOフォノンによる振動の振幅、τLOはLOフォノンの緩和時間、ΩLOはLOフォノンの振動数、φLOはLOフォノンの振動の初期位相である。また、第三項のCはLOフォノン−プラズモン結合モードのフォノンライクモード(例えばn型GaAsにおいてN>1×1018cm−3では、図1中DのLに相当)による振動の振幅、τL−はLモードの緩和時間、ΩL−はLモードの振動数、φL−はLモードの振動の初期位相である。
もし、上記式()で振動波形を上手くフィットできない場合は、次にウェーブレット変換と呼ばれる独特な手法を用いる(「ウェーブレットビギナーズガイド」榊原進著(東京電機大学出版局,1995年)及び特開2003-296301号公報などを参照)。これは、数学的には確立されて来ている手法であるが、物理・計測分野ではほとんど利用されていない手法である。具体的には、ある被変換関数f(t)に対して、次式
で定義される。ここで、Ψ(x)はマザーウェーブレット(xは入力信号で時間の関数)と呼ばれ、波束を表す関数である。bはこの波束の時間遅延を表す変数、aはこの波束の時間軸に対する伸縮度、すなわち波束の包絡線の時間幅を表す変数である。変換後の信号強度は、[b,1/a]平面すなわち[時間,周波数]平面で二次元の等高線図になる。このような変換を施すことにより、同じ時間軸に別々の周波数で埋もれていた信号成分を別々に取り出すことができる。マザーウェーブレットの関数型としては、例えばガウス関数などがある。これによって、LOフォノンとは周波数の異なるプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モードの信号の時間変化を得ることができる。このようにして得られたプラズモンライクモードの緩和時間τは、ウェーブレット信号上でプラズモンライクモードのピーク周波数を見つけ、この周波数成分の時間遅延方向の緩和時間を指数関数e−t/τを用いてフィットし求めることができる。
また一方、ウェーブレット変換を用いず、ある窓関数Ψ(x)を用いた短時間フーリエ変換(「ウェーブレットビギナーズガイド」榊原進著(東京電機大学出版局,1995年)などを参照)を使って、プラズモンライクモードの緩和時間τの取得も可能である。この場合、次式

で表される変換を被変換関数f(t)に対して行い、様々な時間遅延bに対する短時間フーリエスペクトルを得る。このスペクトルは遅延時間と共に減衰していくので、プラズモンライクモードの緩和時間τがその減衰から求まる。なお、上記式中、ωは周波数である。
以上のようにして得られた緩和時間τを、前記式(12)ではなく、より一般的な下記式(2)(「半導体の物理」培風館,西沢潤一編,御子柴宣夫著,1995年などを参照)
に代入して移動度μを直接求めることができる。
このように、周波数領域の分光法では、非常に複雑なデータフィットを要した移動度の導出が、本発明によれば、時間領域で直接プラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モードの緩和時間τを求めることにより、非常に簡潔に行うことができるわけである。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
<実施例>
図2は、本発明による固体のキャリア移動度測定方法の原理を示したものである。フェムト秒パルスレーザーを光源としたポンプ−プローブ分光法による時間分解反射率(透過率)測定装置Aにおいて測定された試料の信号の種類によって、種類のデータ処理(図2のB、C)が考えられる。測定装置Aには反射型、透過型などがある。
まず第1は、図2のに示すように、時間分解反射率(透過率)の信号が単純な減衰調和振動ではないが、プラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モードとLOフォノンなど複数の減衰調和振動の和(上記式(1))で良く再現できる場合である。この場合、得られたプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モード(L)の緩和時間τをこのフィッティングで求めることができる。求めた緩和時間τは直ちに上記式(2)に代入され、移動度μが求められる。
は、図2ののように非常に複雑な振動構造で、上記式(1)でデータをフィットできない場合である。この場合は、ウェーブレット変換(上記式())もしくは短時間フーリエ変換(上記式())を用いることになる。
は、非常に複雑な振動構造であり上記式(1)でデータをフィットできない場合で、ウェーブレット変換(上記式())を用いてプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モード(L)の緩和時間を求めた実施例の解析結果を示す図である。図3(A)は、図2のを拡大したもので時間領域での振動波形を表す図である。この時間波形をウェーブレット変換する訳であるが、ここでマザーウェーブレットとしてガウス関数を変形したGaborのマザーウェーブレット:
を用いることでMeyerのマザーウェーブレットなど他のマザーウェーブレットを用いる場合よりもずっと滑らかな[時間, 周波数]平面でのスペクトルを得ることができ、従って、より明確にLOフォノン−プラズモン結合モードとLOフォノンを区別できる。ただし、式()でσはガウス関数の半値全幅(Full width at half maximum = FWHM)である。このGaborのマザーウェーブレットを用いて変換した信号の時間−周波数プロットが図3(B)である。図3(B)のウェーブレット変換スペクトルでは、約26THz付近にピークを持つプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モード(L)と約7THz付近にピークを持つLOフォノンとが時間−周波数領域で非常に良く分離観測されていることが分かる。このような分離は、図3(A)のような実時間領域では大変難しい。図3(B)から直ちにプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モード(L)の緩和時間τがおおよそ0.2ps(ピコ秒)であることが分かる。より正確にτを求めるためには、図3(B)でプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モード(L)のピーク周波数位置の強度の時間変化を抽出すればよい。その結果を図3(C)に示す。図3(C)はウェーブレット変換スペクトル上で、プラズモンライクモード(L)のピーク強度を遅延時間(b)に対してプロットした図である。
これから直ちにプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モード(L)の緩和時間τが約0.2ps(ピコ秒)であることが分かる。従って、上記式(2)から移動度μが約5250cm/Vsと求まる。ただし、ここで電子の電荷e=1.60219×10−19C、電子の有効質量m=0.067m(m=9.10956×10−31kg)を用いた。
図4は、非常に複雑な振動構造であり上記式()でデータをフィットできない場合(図2のもしくは図3(A)の場合)で、短時間フーリエ変換(上記式())を用いてプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モード(L)の緩和時間を求めた実施例の解析結果を示す図である。
短時間フーリエ変換(上記式())における窓関数はガウス関数とした。何故なら矩形関数など他の窓関数を用いる場合よりもずっと滑らかな短時間スペクトルを得ることができ、従って、より明確に縦波光学(LO)フォノン−プラズモン結合モードとLOフォノンを区別できるからである。すなわち、短時間フーリエ変換(上記式())で窓関数をガウス関数にすると、次式
となる。ただしここで、σはガウス関数の半値全幅(Full width at half maximum = FWHM)である。図4(A)には図2のDの時間領域振動波形データに短時間フーリエ変換を施した0.036ps毎のスペクトルを示した。約26THz付近にピークを持つプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モード(L)と約7THz付近にピークを持つLOフォノンとが周波数領域で非常に良く分離観測されていることが分かる。このような分離は、図3(A)のような実時間領域では大変難しい。図4(B)にはプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モード(L)のピーク周波数位置の強度の時間変化を遅延時間bに対してプロットした。これから直ちにプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モード(L)の緩和時間τが約0.2ps(ピコ秒)であることが分かる。従って、上記式(2)から移動度μが約5250cm/Vsと求まる。ただし、ここで電子の電荷e=1.60219×10−19C、電子の有効質量m=0.067m(m=9.10956×10−31kg)を用いた。
最後に図5は、実際の試料n型GaAs単結晶で測定されたプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モード(L)での実施例の測定結果である。時間領域振動の解析には短時間フーリエ変換(上記式(5))を用いた。図5(A)は、時間分解反射率変化測定で実際に得られた信号を示す。図5(B)は(A)の時間領域振動波形を短時間フーリエ変換したスペクトルを示す図であり、スペクトル毎の遅延時間bの間隔は可変(0.05〜1.0ps)である。図5(C)は、短時間フーリエ変換したスペクトル図5(B)上で、プラズモンライクモード(L)のピーク強度を遅延時間(b)に対してプロットした図である。図5(C)のプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モード(L)の強度時間依存性から、Lモードの緩和時間τがおおよそ0.2ps(ピコ秒)であることが分かる。従って、上記式(2)から移動度μが約5250cm/Vsと求まる。ただし、ここで電子の電荷e=1.60219×10−19C、電子の有効質量m=0.067m(m=9.10956×10−31kg)を用いた。得られた移動度μの値は、室温においてホール測定で得られている実験値μ=8800cm/Vsにほぼ近い値である。
以上図2〜図5記載の実施例の結果は、プラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モードとしてLに限定したものではなく、プラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モードとしてLモードを観測しても同様な結果が得られる。このように、本発明によって、これまで周波数領域で得られたラマンスペクトルを複雑な数式でフィットして求めていた半導体の移動度μが、実時間領域で簡単に求めることが可能であると示された。
また、本発明の測定対象の固体試料としては、図5の測定結果を得た実施例にあるような半導体単結晶に限るものではなく、金属単結晶や薄膜、半導体超格子や半導体量子井戸構造、金属・半導体ナノ結晶(量子ドットなど)及びナノワイヤーなどプラズモンを有する全ての固体とすることができ、本発明はこれらの電気的特性(移動度)の評価法として有効である。
LOフォノン−プラズモン結合モードの上の分枝(L)と下の分枝(L)の周波数のキャリア密度依存性を示す図である。 本発明による固体のキャリア移動度測定方法の原理の説明図である。 本発明の手法のうち、ウェーブレット変換を用いてプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モード(L)の緩和時間を求めた実施例の解析結果を示す図であり、(A)は図2のDを拡大したもので時間領域での振動波形を示す図、(B)はウェーブレット変換スペクトルを示す図、(C)はウェーブレット変換スペクトル上で、プラズモンライクモード(L)のピーク強度を遅延時間(b)に対してプロットした図である。 本発明の手法のうち、短時間フーリエ変換を用いてプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モード(L)の緩和時間を求めた実施例の解析結果を示す図であり、(A)は図2のDの時間領域振動波形を短時間フーリエ変換したスペクトルを示す図、(B)は短時間フーリエ変換したスペクトル図4(A)上で、プラズモンライクモード(L)のピーク強度を遅延時間(b)に対してプロットした図である。 本発明の手法のうち、短時間フーリエ変換を用いて、n型GaAsにおいて実験的にプラズモンライクなLOフォノン−プラズモン結合モード(L)の緩和時間を求めた実施例の測定結果を示す図であり、(A)は時間分解反射率測定で得られた信号、(B)は(A)の時間領域振動波形を短時間フーリエ変換したスペクトルを示す図、(C)は短時間フーリエ変換したスペクトルを示す図5(B)上で、プラズモンライクモード(L)のピーク強度を遅延時間(b)に対してプロットした図である。

Claims (5)

  1. フォノンとプラズモンが結合する測定対象である固体に対し、ポンプ−プローブ分光法を用いて、反射率変化又は透過率変化におけるプラズモンライクな縦波光学フォノン−プラズモン結合モードによる実時間振動構造を測定し、その測定データに対し、下記式()を用いて時間領域データのフィッティングを行うことにより、プラズモンライクな縦波光学フォノン−プラズモン結合モードの緩和時間τを求め、求めた緩和時間τの値を下記式(2)に代入することにより固体のキャリア移動度μを求めることを特徴とする固体のキャリア移動度測定方法。

    (上記式中、tは時間、AL+は縦波光学フォノン−プラズモン結合モードのプラズモンライクモードによる振動の振幅、τ(=τL+)は縦波光学フォノン−プラズモン結合モードのプラズモンライクモードの緩和時間、ΩL+は縦波光学フォノン−プラズモン結合モードのプラズモンライクモードの振動数、φL+は縦波光学フォノン−プラズモン結合モードのプラズモンライクモードの振動の初期位相、Bは縦波光学フォノンによる振動の振幅、τLOは縦波光学フォノンの緩和時間、ΩLOは縦波光学フォノンの振動数、φLOは縦波光学フォノンの振動の初期位相、Cは縦波光学フォノン−プラズモン結合モードのフォノンライクモードによる振動の振幅、τL−は縦波光学フォノン−プラズモン結合モードのフォノンライクモードの緩和時間、ΩL−は縦波光学フォノン−プラズモン結合モードのフォノンライクモードの振動数、φL−は縦波光学フォノン−プラズモン結合モードのフォノンライクモードの振動の初期位相、eは電子の電荷、mは電子の有効質量である)
  2. フォノンとプラズモンが結合する測定対象である固体に対し、ポンプ−プローブ分光法を用いて、反射率変化又は透過率変化におけるプラズモンライクな縦波光学フォノン−プラズモン結合モードによる実時間振動構造を測定し、その測定データに対し、下記式()を用いてウェーブレット変換を行うことにより、プラズモンライクな縦波光学フォノン−プラズモン結合モードの緩和時間τを求め、求めた緩和時間τの値を下記式(2)に代入することにより固体のキャリア移動度μを求めることを特徴とする固体のキャリア移動度測定方法。


    (上記式中、Ψ(x)はマザーウェーブレットと称される、波束を表す関数、xは入力信号で時間の関数、bはこの波束の時間遅延を表す変数、aはこの波束の時間軸に対する伸縮度、tは時間、f(t)は被変換関数である)
  3. ウェーブレット変換のマザーウェーブレットとして下記式()で示す、ガウス関数を変形したGaborのマザーウェーブレットを用いることを特徴とする請求項に記載の固体のキャリア移動度測定方法。
    (上記式中、σはガウス関数の半値全幅、xは入力信号で時間の関数である)
  4. フォノンとプラズモンが結合する測定対象である固体に対し、ポンプ−プローブ分光法を用いて、反射率変化又は透過率変化におけるプラズモンライクな縦波光学フォノン−プラズモン結合モードによる実時間振動構造を測定し、その測定データに対し、下記式()を用いて短時間フーリエ変換を行うことにより、縦波光学フォノン−プラズモン結合モードの緩和時間τを求め、求めた緩和時間τの値を下記式(2)に代入することにより固体のキャリア移動度μを求めることを特徴とする固体のキャリア移動度測定方法。


    (上記式中、Ψ(x)は窓関数、xは入力信号で時間の関数、bは時間遅延、ωは周波数、tは時間、f(t)は被変換関数である)
  5. 短時間フーリエ変換の窓関数としてガウス関数を用い、下記式(6)により短時間フーリエ変換を行うことを特徴とする請求項4に記載の固体のキャリア移動度測定方法。
    (上記式中、σはガウス関数の半値全幅である)
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